JP7361066B2 - 黒鉛系負極活物質材料および該黒鉛系負極活物質材料の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
図1は、一実施形態に係る黒鉛系負極活物質材料の構成を模式的に示す図である。図示するように、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質材料1は、おおまかにいって、黒鉛質粒子10と、該黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部を被覆する非晶質炭素層12とを備えている。また、黒鉛質負極活物質材料1は、電荷担体を可逆的に放出可能な材料ということができる。以下、各構成要素について説明する。
黒鉛質粒子10は、黒鉛を主体として構成される粒子のことを意味する。ここで、「黒鉛を主体として構成される」とは、黒鉛質粒子10を構成する成分のうち、質量%基準で最も多く含まれている成分が黒鉛であることを意味する。特に限定されないが、黒鉛質粒子10を構成する黒鉛の割合は、該黒鉛質粒子全体を100質量%としたとき、概ね70質量%以上とすることができ、例えば80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上(例えば100質量%であってもよい)とすることができる。
黒鉛質粒子10としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、これらの混合物を含む黒鉛質粒子を用いることができる。あるいは、これらよりも結晶性の低い石炭系コークス、石油系コークス、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等を、1種または2種以上組み合わせた材料の焼成物を含む黒鉛質粒子を用いることもできる。
非晶質炭素層12は、結晶性の低い非晶質炭素材料を主として構成される層を意味する。ここで、「非晶質炭素材料を主体として構成される」とは、非晶質炭素層12を構成する成分のうち、質量%基準で最も多く含まれている成分が非晶質炭素材料であることを意味する。特に限定されないが、非晶質炭素層12を構成する非晶質炭素材料の割合は、該非晶質炭素層全体を100質量%としたとき、概ね70質量%以上とすることができ、例えば80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上(例えば100質量%であってもよい)とすることができる。
また、黒鉛系負極活物質材料1の断面について透過型電子顕微鏡(TEM)画像を取得し(例えば、黒鉛系負極活物質材料1を、厚み数μm~数十μmに薄片化した際に得られる薄片のうちの一薄片の断面について取得してもよいし、複数(概ね2~5程度)の薄片の断面について取得してもよい)、非晶質炭素層12における該黒鉛系負極活物質材料の表面から黒鉛質粒子10に至るまでの間を、該表面に近い方からA層、B層、C層に3等分したとき、該A層、B層、C層における結晶化の進行具合はこの順に大きくなることを特徴とする。ここで、図2は、一実施形態に係る黒鉛系負極活物質材料1の断面について取得したTEM画像を模式的に示す図である。図2では、結晶化の進行度を点および線の数で表現しており、かかる進行度が高い程点の数が減少し、線の数が増加する態様として表現している。なお、観察対象の薄片に対してOs(オスミウム)染色処理を施すと、結晶化の進行度合いが目視で確認し易くなるため好ましい。
以下、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質材料1の好適な製造方法について説明するが、製造方法を以下に示すものに限定することを意図したものではない。
ステップS1では、非晶質炭素層を構成する非晶質炭素材料と、黒鉛質粒子とを準備する。上記黒鉛質粒子としては、上記黒鉛質粒子の説明において記載したような粒子を用いることができる。また、上記非晶質炭素材料としては、この種の材料として用いられる従来公知のものを用いることができ、例えば、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素化合物、フェナジン、アクリジン等のN環化合物、チオフェン、ビチオフェン等のS環化合物、セルロール、マンナン、キトサン等の天然高分子化合物、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、上記黒鉛質粒子および非晶質炭素材料としては、例えば市販のものを購入して用いることができる。また、上述した非晶質炭素材料を有機溶媒に溶解させて、溶液等として用いることもできる。かかる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n-へキサン等が挙げられる。
ステップS2では、上記非晶質炭素材料と、上記黒鉛質粒子とを混合し、該黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部に、該非晶質炭素材料を付着させる。
具体的には、先ず、非晶質炭素材料と、黒鉛質粒子と、必要に応じてその他の成分(例えば、溶媒等)を、市販の撹拌装置、混合機、混錬機によって混合する。ここで、非晶質炭素層材料と黒鉛質粒子との混合割合は、用いる材料の種類や、黒鉛質粒子における非晶質炭素層の被覆率・比表面積の値等によって適宜調整されることが好ましい。また、混合条件(具体的には、混合時間や混合速度等)に関しても、用いる材料の種類や量等に応じて適宜調整されることが好ましい。上記混合割合や混合条件は、例えば予備実験等を行うことによって適宜決定することができる。
次に、ステップS3では、上記付着工程(ステップS2)後にマイクロ波加熱処理を行うことで、上記黒鉛質粒子の少なくとも一部を被覆する上記非晶質炭素層を形成する。なお、マイクロ波焼成装置の出力(W)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね1000W~2000Wの範囲内(例えば、1500W程度)とすることができる。また、焼成時間は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね20~240分程度とすることができる。そして、かかる焼成は、例えば窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス等のガス雰囲気下で行うことが好ましい。このようにして、黒鉛系負極活物質材料1を得ることができる。
(サンプル1)
非晶質炭素材料としての市販のコールタールピッチ5.0gと、平均粒子径が10μmの黒鉛質粒子(日本黒鉛工業株式会社製 CGB-10)50gとを、市販の撹拌装置(LAB MILL,回転速度20000rpm,30秒間)によって混合したものを、管状炉において窒素雰囲気下、1000℃で60分間焼成した。これによって、サンプル1に係る黒鉛系負極活物質材料を得た。
非晶質炭素材料としての市販のコールタールピッチと、平均粒子径が10μmの黒鉛質粒子(日本黒鉛工業株式会社製 CGB-10)とを、市販の撹拌装置(LAB MILL,回転速度20000rpm,30秒間)によって表1の該当欄に示す量で混合したものを、マイクロ波焼成装置(株式会社ヒロテック製のMDS-2015-X02)で、窒素雰囲気下、表1の該当欄に示す焼成条件で焼成することで、サンプル2~9に係る黒鉛系負極活物質材料を得た。
上記のとおり得られた各サンプルに係る黒鉛系負極活物質材料について、集束イオンビーム(FIB)法(マイクロサンプリング法)により薄片化を実施した。そして、得られた複数の薄片の中から無作為的に一薄片取り出し、かかる一薄片に対して適切なOs染色処理を施した後、TEM画像(倍率:4百万倍)を取得した。かかる取得は、株式会社日本電子製のJEM-ARM200Fを用いて行い、加速電圧は200kVとして行った。
そして、上記観察によって得られたTEM画像について、黒鉛系負極活物質材料の表面から黒鉛質粒子に至るまでの間(以下、単に「表面-黒鉛質粒子間」ともいう)を観察した。その結果、サンプル1に係る黒鉛系負極活物質材料では、表面-黒鉛質粒子間における結晶化の進行度合いが全体的に大きく、結晶性の傾斜はほとんど確認されなかった(辛うじて、2層に分けられる態様であった)。また、サンプル2に係る黒鉛系負極活物質材料では、焼成時間が不十分であったため、表面-黒鉛質粒子間における結晶化が全体的にほとんど進行しておらず、結晶性の傾斜は確認されなかった。そして、サンプル3~9に係る黒鉛系負極活物質材料では、表面-黒鉛質粒子間における結晶化の進行度合いは、表面から黒鉛質粒子にかけて大きくなることが確認され、結晶化の進行具合に従って3層(即ち、A層、B層、C層)に分かれることが確認された。
上記TEM観察に加えて、サンプル1に係るA2層、B2層と、サンプル3~9に係るA層、C層について、上記TEM装置に付属している電子回折装置を用いて、電子回折画像およびd002の値を取得した。このとき、ビーム径をΦ1nmとした。その結果、サンプル1に係る2層ではd002値を算出することができた。一方、サンプル3~9に係る2層では、C層に関してはd002値を算出することができたが、A層ではd002値を算出することができなかった。
上記のとおり得られた各サンプルに係る黒鉛系負極活物質材料の比表面積を求めた。かかる比表面積としては、窒素ガス吸着等温線からBET法により解析した値を採用した。また、上記比表面積はマウンテック社製のMacsorbを用いて測定し、かかる装置の手順書に従って測定を行った。結果を、表1の「BET比表面積」の欄に示した。
正極活物質粉末としてのLiNiCoMnO2(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、NCM:AB:PVdF=92:5:3の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔の表面に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、正極シートを作製した。
活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、SOC60%に調製した後、-10℃の環境下に置いた。この各評価用リチウムイオン二次電池に対し、10Cの電流値で2秒間の充電を行った。このときの電圧変化量ΔVを取得し、電流値とΔVを用いて、電池抵抗を算出した。具体的には、電池抵抗=ΔV/電流値として算出した。そして、サンプル1に係る黒鉛系負極活物質材料を用いた評価用リチウムイオン二次電池の抵抗を100とした場合の、他のサンプルに係る黒鉛系負極活物質材料を用いた評価用リチウムイオン二次電池の抵抗の比を求めた。結果を表1の「低温抵抗比」の欄に示した。なお、低温抵抗比の値が99.5以下の場合に、低温抵抗が好適に低減されていると評価することができる。
以上より、ここで開示される黒鉛系負極活物質材料によると、二次電池の低温抵抗が好適に低減されることが分かる。
10,10a,10b 黒鉛質粒子
12,12a,12b 非晶質炭素層
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池
Claims (5)
- 黒鉛質粒子と、
該黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部を被覆する非晶質炭素層と、
を備えた黒鉛系負極活物質材料であって、
前記黒鉛系負極活物質材料の断面のTEM画像において、前記非晶質炭素層における該黒鉛系負極活物質材料の表面から前記黒鉛質粒子に至るまでの間を、該表面に近い方からA層、B層、C層に3等分したとき、該A層、B層、C層における結晶化の進行具合はこの順に大きくなり、
BET法に基づく比表面積は、2.2m 2 /g~8.3m 2 /gの範囲内である、
黒鉛系負極活物質材料。 - 黒鉛質粒子と、
該黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部を被覆する非晶質炭素層と、
を備えた黒鉛系負極活物質材料であって、
前記黒鉛系負極活物質材料の断面のTEM画像において、前記非晶質炭素層における該黒鉛系負極活物質材料の表面から前記黒鉛質粒子に至るまでの間を、該表面に近い方からA層、B層、C層に3等分したとき、該A層、B層、C層における結晶化の進行具合はこの順に大きくなり、
前記A層、B層、C層について電子回折画像を取得した場合に、少なくとも該C層における格子面間隔dの値が判定可能であり、該A層における該d値は判定不可能である、黒鉛系負極活物質材料。 - BET法に基づく比表面積は、2.2m2/g~8.3m2/gの範囲内である、請求項2に記載の黒鉛系負極活物質材料。
- 黒鉛質粒子と、該黒鉛質粒子の少なくとも一部を被覆する非晶質炭素層と、を備えた黒鉛系負極活物質材料の製造方法であって、以下の工程:
前記非晶質炭素層を構成する非晶質炭素材料と、前記黒鉛質粒子とを準備する材料準備工程;
前記非晶質炭素材料と、前記黒鉛質粒子とを混合し、該黒鉛質粒子の表面の少なくとも一部に、該非晶質炭素材料を付着させる付着工程;および
前記付着工程後に、マイクロ波加熱処理を行うことで、前記黒鉛質粒子の少なくとも一部を被覆する前記非晶質炭素層を形成するマイクロ波加熱処理工程,ここで、該非晶質炭素層における該黒鉛系負極活物質材料の表面から該黒鉛質粒子に至るまでの間を、該表面に近い方からA層、B層、C層に3等分したとき、該A層、B層、C層における結晶化の進行具合はこの順に大きくなる;
を包含する、黒鉛系負極活物質材料の製造方法。 - 正極と、負極と、電解質と、を備える二次電池であって、該負極は、請求項1~3のいずれか一項に記載の黒鉛系負極活物質材料を含む、二次電池。
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