JP7225279B2 - 被覆黒鉛系負極活物質 - Google Patents

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Description

本発明は、非晶質炭素で被覆された黒鉛系負極活物質に関する。
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
一般的に、二次電池、特にリチウムイオン二次電池の負極には、黒鉛系負極活物質が用いられている。二次電池はその普及に伴い、さらなる高性能化が望まれている。高性能化のための方策の一つとしては、黒鉛系負極活物質の改良が挙げられる。黒鉛系負極活物質の改良の例として、黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆した、複層構造の負極活物質が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012-74297号公報
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、従来技術においては、被覆を有する黒鉛系負極活物質(すなわち、被覆黒鉛系負極活物質)を用いた二次電池の、低温での低抵抗化が不十分であるという問題があることを見出した。
上記事情に鑑み、本発明は、二次電池の低温抵抗を小さくすることが可能な被覆黒鉛系負極活物質を提供することを目的とする。
ここに開示される被覆黒鉛系負極活物質は、黒鉛と、前記黒鉛を被覆する非晶質炭素層と、前記黒鉛と、前記非晶質炭素層との間に位置する中間層と、を備える。前記中間層は、ホウ素がドープされた炭素層である。前記非晶質炭素層は、ホウ素を実質的に含んでいない。このような構成によれば、二次電池の低温抵抗を小さくすることが可能な被覆黒鉛系負極活物質を提供することができる。
ここに開示される黒鉛系負極活物質の好ましい一態様においては、前記中間層におけるホウ素のドープ量が、0.1原子%以上5.5原子%以下である。このような構成によれば二次電池の低温抵抗を特に小さくすることができる。
ここに開示される被覆黒鉛系負極活物質は、炭素前駆体およびホウ素前駆体を含むガスを用いて化学蒸着法によって、黒鉛に、炭素およびホウ素を含有する第1被覆層を形成する工程と、ホウ素前駆体を含まず炭素前駆体を含むガスを用いて化学蒸着法によって、前記第1被覆層上に、炭素を含有する第2被覆層を形成する工程と、を包含する製造方法によって好適に製造することができる。
別の側面からここに開示される二次電池は、正極と、負極と、電解質と、を備える。前記負極は、上記の黒鉛系負極活物質を含む。このような構成によれば、低温抵抗が小さい二次電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質の一例の模式断面図である。 本発明の一実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。 図2のリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質は、黒鉛と、当該黒鉛を被覆する非晶質炭素層と、当該黒鉛と、当該非晶質炭素層との間に位置する中間層と、を備える。ここで、当該中間層は、ホウ素がドープされた炭素層である。当該非晶質炭素層は、ホウ素を実質的に含んでいない。図1に、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質の一例の断面を模式的に示す。なお、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質は、図1に示されたものに限定されない。
図1に示すように、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質10は、コア部として黒鉛12を含んでおり、被覆層として中間層14および非晶質炭素層16を有している。中間層14は、黒鉛12と、非晶質炭素層16との間に位置している。被覆黒鉛系負極活物質10は、典型的には、被覆層として中間層14および非晶質炭素層16のみを有するが、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、さらに別の層を有していてもよい。
黒鉛12は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよい。黒鉛12の形状は、特に限定されず、鱗片状、球状、不定形等であってよい。均一な厚みの中間層14および非晶質炭素層16を設けるのが容易であることから、黒鉛12は、球状であることが好ましい。
中間層14は、炭素層であり、この中間層14には、ホウ素(B)がドープされている。すなわち、中間層14は、ホウ素を含有する。ホウ素のドープ量(すなわち、含有量)としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されない。ドープ量が少な過ぎると、ホウ素ドープによる低温抵抗低減効果が小さくなる傾向にある。よって、中間層14におけるホウ素のドープ量としては、0.1原子%以上が好ましく、0.3原子%以上がより好ましく、0.5原子%以上がさらに好ましい。一方、ドープ量が多過ぎても、低温抵抗低減効果が小さくなる傾向にある。よって、中間層14におけるホウ素のドープ量としては、5.5原子%以下が好ましく、4.6原子%以下がより好ましく、4.0原子%以下がさらに好ましい。
なお、中間層14におけるホウ素のドープ量は、X線電子分光分析(XPS)装置を用いて、Arモノマーイオンを用いた深さ方向分析(デプス分析)を行うことにより求めることができる。
中間層14の厚みは特に限定されない。中間層14の厚みは、例えば3nm以上50nm以下であり、好ましくは10nm以上40nm以下であり、より好ましくは15nm以上30nm以下である。また、中間層14の厚みは、非晶質炭素層16の厚みよりも小さいことが好ましい。なお、中間層14の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて被覆黒鉛系負極活物質10の断面を観察することにより求めることができる。
図示例のように、中間層14は、典型的には、黒鉛12の全面を被覆している。しかしながら、本発明の効果が顕著に阻害されない限り、中間層14は、黒鉛12を部分的に被覆していてもよい。
一方で、非晶質炭素層16もまた炭素層であるが、ホウ素を実質的に含んでいない。本明細書において「層がホウ素を実質的に含んでいない」とは、ホウ素が積極的に添加されてはいないが、不純物として含んでいてもよいことを意味し、具体的には、層におけるホウ素の含有量が、0.005原子%未満であることをいう。非晶質炭素層16におけるホウ素含有量は、好ましくは0.001原子%未満であり、より好ましくは0原子%である。すなわち、より好ましくは、非晶質炭素層16はホウ素を含有しない。非晶質炭素層16におけるホウ素含有量は、中間層14におけるホウ素のドープ量と同様の方法により求めることができる。
非晶質炭素層16の厚みは特に限定されない。非晶質炭素層16の厚みは、例えば10nm以上500nm以下であり、好ましくは30nm以上400nm以下であり、より好ましくは30nm以上300nm以下である。なお、非晶質炭素層16の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて被覆黒鉛系負極活物質10の断面を観察することにより求めることができる。
図示例のように、非晶質炭素層16は、典型的には、中間層14の全面を被覆している。しかしながら、本発明の効果が顕著に阻害されない限り、非晶質炭素層16は、中間層14を部分的に被覆していてもよい。
被覆黒鉛系負極活物質10の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、平均粒子径(D50)とは、レーザ回折散乱法により測定される粒度分布おいて、小粒径側からの累積度数が体積百分率で50%となる粒子径のことをいう。
従来の被覆黒鉛系負極活物質においては、非晶質炭素の被覆と黒鉛との結晶性に差が大き過ぎるため、これらの界面でのリチウムイオンの拡散性が悪い。その結果、低温抵抗が悪くなる。
しかしながら、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質10では、非晶質炭素の被覆(すなわち、非晶質炭素層16)と黒鉛12との間に、ホウ素がドープされた炭素層(すなわち中間層14)が設けられている。この中間層14は、上記の結晶性の差に対して緩衝層(バッファ層)となるものであり、この中間層14によれば、非晶質炭素層16と黒鉛12との間のリチウムイオンの拡散性を向上させることができ、その結果、低温抵抗を改善することができる。すなわち、被覆黒鉛系負極活物質10を用いた二次電池の低温抵抗を小さくすることができる。
本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質は、以下の方法により好適に製造することができる。なお、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
本実施形態に係る黒鉛系負極活物質の好適な製造方法は、炭素前駆体およびホウ素前駆体を含むガスを用いて化学蒸着(CVD)法によって、黒鉛に、炭素およびホウ素を含有する第1被覆層を形成する工程(第1被覆工程)と、ホウ素前駆体を含まず炭素前駆体を含むガスを用いて化学蒸着法によって、当該第1被覆層上に、炭素を含有する第2被覆層を形成する工程(第2被覆工程)と、を包含する。
第1被覆工程に用いられる炭素前駆体としては、CVD法に用いられる公知の炭素前駆体を用いてよい。その具体例としては、メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素化合物が挙げられ、なかでも、メタンが好ましい。
第1被覆工程に用いられるホウ素前駆体としては、CVD法に用いられる公知のホウ素前駆体を用いてよい。その具体例としては、三塩化ホウ素、ジボラン等が挙げられ、なかでも、三塩化ホウ素が好ましい。
第1被覆工程において、化学蒸着(CVD)は公知方法に従い、公知のCVD装置を用いて行うことができる。黒鉛が粒子状であることから、黒鉛粒子の表面に均一に被覆層を形成するために、回転式のCVD装置を使用することが好ましい。第1被覆工程の実施により、黒鉛12上に炭素およびホウ素を含有する第1被覆層(すなわち、中間層14)を形成することができる。
第2被覆工程に用いられる炭素前駆体の例としては、第1被覆工程に用いられる炭素前駆体と同じである。第1被覆工程に用いられる炭素前駆体と、第2被覆工程に用いられる炭素前駆体とは、同じであっても異なっていてもよく、同じであることが好ましい。
第2被覆工程において、化学蒸着(CVD)は公知方法に従い、行うことができる。例えば、CVD装置を用いて第1被覆工程の実施した後、前駆体を含むガスを切り替えて(例えば、ホウ素前駆体ガスの供給を停止して)公知の条件を採用して行うことができる。第2被覆工程の実施により、第1被覆層(すなわち、中間層14)上に、炭素を含有する第2被覆層(すなわち、非晶質炭素層16)を形成することができる。
本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質10を用いて、公知方法に従って二次電池を構築することができる。具体的には、黒鉛系負極活物質を用いる公知の二次電池において、負極活物質に、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質を用いることにより、二次電池を構築することができる。
本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質を二次電池に用いることにより、二次電池の低温抵抗を小さくすることができる。本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質は、典型的には二次電池用の被覆黒鉛系負極活物質であり、好ましくはリチウムイオン二次電池用の被覆黒鉛系負極活物質である。当該二次電池は、非水電解質を備える非水電解質二次電池であってよく、固体電解質を備える全固体二次電池であってもよい。
そこで、別の側面から、本実施形態に係る二次電池は、正極と、負極と、電解質と、を備え、当該負極が、上記の被覆黒鉛系負極活物質を含む。
以下、本実施形態に係る二次電池について、扁平形状の捲回電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池を例にして、詳細に説明する。しかしながら、本実施形態に係る二次電池は、以下説明する例に限定されない。
図2に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。正負極端子42,44はそれぞれ正負極集電板42a,44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
捲回電極体20は、図2および図3に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。
正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル系複合酸化物(例、LiNiO等)、リチウムコバルト系複合酸化物(例、LiCoO等)、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物(例、LiNi0.8Co0.15Al0.5等)、リチウムマンガン系複合酸化物(例、LiMn等)、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物(例、LiNi0.5Mn1.5等)などのリチウム遷移金属複合酸化物;リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)などが挙げられる。
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、リン酸三リチウム、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上97質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上96質量%以下である。正極活物質層54中のリン酸三リチウムの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上12質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中の導電材の含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上13質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。負極集電体52としては、銅箔が好ましい。
負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
負極活物質層64は負極活物質として、上述の被覆黒鉛系負極活物質を含有する。負極活物質層64は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、上述の被覆黒鉛系負極活物質に加えて、その他の負極活物質を含有していてもよい。
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
負極活物質層中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
セパレータ70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上30μm以下である。
非水電解質は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。なかでも、カーボネート類が好ましく、その具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
以上、例として扁平形状の捲回電極体を備える角型のリチウムイオン二次電池について説明した。しかしながら、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質は、公知方法に従い、他の種類のリチウムイオン二次電池にも使用可能である。例えば、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質を用いて、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池を構築することもできる。また、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質を用いて、円筒型リチウムイオン二次電池、ラミネートケース型リチウムイオン二次電池等を構築することもできる。さらに、本実施形態に係る被覆黒鉛系負極活物質を用いて、公知方法に従い、リチウムイオン二次電池以外の非水電解質二次電池を構成することもできる。
また、公知方法に従い、非水電解質に代えて固体電解質(例、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質など)を使用し、セパレータの代わりに固体電解質を正極と負極との間に介在させて、全固体二次電池(特に、全固体リチウムイオン二次電池)を構築することもできる。
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<被覆黒鉛系負極活物質の作製>
(比較例1)
平均粒子径(D50)が約8μmの球状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製:SG-BH8)を用意した。管状炉を備える回転式CVD装置において、炭素前駆体にメタン(CH)を用いて、温度950℃、Ar導入量50sccm、CH導入量150sccmの条件で60分間、当該黒鉛20gに対して化学蒸着を行った。これにより、比較例1の被覆黒鉛系負極活物質を得た。
(比較例2)
比較例1と同じ方法により、黒鉛20gに対して化学蒸着を行って被覆層を形成した。得られた被覆黒鉛系負極活物質に対し、その後、Ar雰囲気下で1500℃で6時間焼成を行った。これにより、比較例2の被覆黒鉛系負極活物質を得た。
(実施例1)
平均粒子径(D50)が約8μmの球状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製:SG-BH8)を用意した。管状炉を備える回転式CVD装置において、炭素前駆体にメタン(CH)を用い、かつホウ素前駆体に四塩化ホウ素を用いて、温度950℃で5分間、当該黒鉛20gに対して化学蒸着(第1化学蒸着)を行った。その後、炭素前駆体としてメタン(CH)のみを用い、温度950℃で40分間、得られた黒鉛に対して化学蒸着(第2化学蒸着)を行った。これにより、実施例1の被覆黒鉛系負極活物質を得た。
(実施例2)
第1化学蒸着の時間を10分間に変更し、第2化学蒸着の時間を35分間に変更した以外は実施例1と同じ方法により、実施例2の被覆黒鉛系負極活物質を得た。
(実施例3)
第1化学蒸着の時間を15分間に変更し、第2の化学蒸着時間を30分間に変更した以外は実施例1と同じ方法により、実施例3の被覆黒鉛系負極活物質を得た。
(比較例3)
平均粒子径(D50)が約8μmの球状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製:SG-BH8)を用意した。管状炉を備える回転式CVD装置において、炭素前駆体にメタン(CH)を用い、ホウ素前駆体に四塩化ホウ素を用いて、温度950℃で45分間、当該黒鉛20gに対して化学蒸着を行った。これにより、比較例3の被覆黒鉛系負極活物質を得た。
<被覆層のXPS測定>
各実施例および各比較例の被覆黒鉛系負極活物質に対して、被覆層の組成を、XPS装置を用いて分析した。具体的には、これらの被覆黒鉛系負極活物質に対して、XPS装置(ULVAC-PHI社製「PHI 5000 VersaProbe2」)を用いて、X線源:AlKα線(単色光)、照射範囲:φ100μm、電流・電圧:25kW 15kVの条件で測定を行った。そして、Arモノマーイオンを用いて、電圧:3kV、電流:10nA、面積:3mm×3mm、レート:3.05nm/分の条件で深さ方向分析を行った。このとき、被覆層の最下部において組成分析を行った。具体的には、被覆がホウ素を含有する場合、コア部となる黒鉛と被覆層との界面に対して、ホウ素が未検出となる直前の深さでの検出値を採用した。組成分析結果を表1に示す。
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、LNCM:AB:PVdF=92:5:3の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔の表面に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、正極シートを作製した。
各実施例および各比較例の黒鉛系負極活物質(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=99:0.5:0.5の質量比でイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、厚み10μmの銅箔の表面に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、負極シートを作製した。
また、厚み20μmのPP/PE/PPの三層構造の多孔質ポリオレフィン層上に厚み4μmのセラミック粒子層(HRL)が形成されたセパレータシートを2枚用意した。
作製した正極シートと負極シートと用意した2枚のセパレータシートとを重ね合わせ、捲回して捲回電極体を作製した。このとき、セパレータシートのHRLを正極シートに対向させた。作製した捲回電極体の正極シートと負極シートにそれぞれ電極端子を溶接により取り付け、これを、注液口を有する電池ケースに収容した。
続いて、電池ケースの注液口から非水電解液を注入し、当該注液口を、封止用ネジにより気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。所定時間放置して、捲回電極体に非水電解液を含浸させた。その後、これに初期充電を施し、60℃でエージング処理することによって評価用リチウムイオン二次電池を得た。
<低温抵抗評価>
活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、SOC60%に調製した後、-10℃の環境下に置いた。この各評価用リチウムイオン二次電池に対し、15Cの電流値で2秒間の充電を行った。このときの電圧変化量ΔVを取得し、電流値とΔVを用いて電池抵抗を算出した。比較例1の被覆黒鉛系負極活物質を用いた評価用リチウムイオン二次電池の抵抗を100とした場合の、他の比較例および実施例の被覆黒鉛系負極活物質を用いた評価用リチウムイオン二次電池の抵抗の比を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0007225279000001
ホウ素がドープされた中間層を設けた実施例1~3では、比較例1と比べて、低温抵抗が小さくなった。これは、ホウ素がドープされた中間層が、黒鉛と非晶質炭素層との結晶性の差を緩和する緩衝層の役割を果たし、黒鉛と非晶質炭素層との間のイオン拡散性を向上させたためと考えられる。これに対し、比較例2では、被覆層の結晶性改善を目的に焼成を行ったが、比較例1と比べて低温抵抗が大きくなった。これは、被覆黒鉛系負極活物質全体が加熱されることで、上記の結晶性の差が小さくなると考えられるが、結晶性の差の低減による抵抗減少よりも最表層の炭素層の結晶性が高くなることによる抵抗増加の方が大きいためと考えられる。また、比較例3では被覆層にホウ素をドープしたが、被覆層にホウ素をドープしたのみでは低温抵抗低減効果は得られないことがわかる。
以上のことから、ここに開示される被覆黒鉛系負極活物質によれば、二次電池の低温抵抗を小さくすることが可能であることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 被覆黒鉛系負極活物質
12 黒鉛
14 中間層
16 非晶質炭素層
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池

Claims (4)

  1. 黒鉛と、
    前記黒鉛を被覆する非晶質炭素層と、
    前記黒鉛と、前記非晶質炭素層との間に位置する中間層と、
    を備える、被覆黒鉛系負極活物質であって、
    前記中間層は、ホウ素がドープされた炭素層であり、
    前記非晶質炭素層は、ホウ素を実質的に含んでいない、
    被覆黒鉛系負極活物質。
  2. 前記中間層におけるホウ素のドープ量が、0.1原子%以上5.5原子%以下である、請求項1に記載の被覆黒鉛系負極活物質。
  3. 炭素前駆体およびホウ素前駆体を含むガスを用いて化学蒸着法によって、黒鉛に、炭素およびホウ素を含有する第1被覆層を形成する工程と、
    ホウ素前駆体を含まず炭素前駆体を含むガスを用いて化学蒸着法によって、前記第1被覆層上に、炭素を含有する第2被覆層を形成する工程と、
    を包含する、被覆黒鉛系負極活物質の製造方法。
  4. 正極と、負極と、電解質と、を備える二次電池であって、前記負極が、請求項1または2に記載の被覆黒鉛系負極活物質を含む、二次電池。
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