発明の詳細な説明
本発明の態様の説明において、明瞭さのために特定の専門用語を使用する。しかしながら、本発明は、そのように選択した特定の用語に限定されることを意図せず、特定の各用語は、同様の目的を達成するために同様の様式で機能するあらゆる技術的等価物を包含することを理解されたい。
定義
用語「親ポリペプチド」または「親抗体」は、本発明によるポリペプチドまたは抗体と同一であるが、親ポリペプチドまたは親抗体はFc-Fc増強変異である第1の変異を例えば位置E345、E430、またはS440に有しており、その結果として、増大されたFc-Fc媒介性オリゴマー化、増大されたFcエフェクター機能、例えばCDCを有し、また、他の増強されたエフェクター機能も有し得るポリペプチドまたは抗体であると理解される。
用語「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、本発明との関連において、免疫グロブリンのFc領域と、例えば細胞、細菌、またはビリオン上に存在する任意の分子、例えばポリペプチドに対する結合能を有する結合領域とを含むポリペプチドをいう。免疫グロブリンのFc領域は、典型的にはパパイン(これは当業者に公知である)での抗体の消化後に生成し得る抗体断片であって、免疫グロブリンの2つのCH2-CH3領域と連結領域、例えばヒンジ領域とを含む抗体断片と定義される。抗体重鎖の定常ドメインによって抗体アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、またはIgEが規定される。Fc領域は、Fc受容体と称される細胞表面受容体および補体系のタンパク質とともに、抗体のエフェクター機能を媒介する。結合領域は、ポリペプチド配列、例えばタンパク質、タンパク質リガンド、受容体、抗原結合領域、または細胞、細菌、もしくはビリオンに対する結合能を有するリガンド結合領域であり得る。結合領域が例えば受容体である場合、「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、免疫グロブリンのFc領域と結合領域との融合タンパク質として調製されたものであってもよい。結合領域が抗原結合領域である場合、「免疫グロブリンのFcドメインと結合領域とを含むポリペプチド」は、キメラ、ヒト化、もしくはヒト抗体などの抗体または重鎖のみの抗体またはScFv-Fc融合体であり得る。免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチドは典型的には、連結領域、例えばヒンジ領域と免疫グロブリンの重鎖の2つのCH2-CH3領域とを含むものであり得、したがって、「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」は、「少なくとも免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」であり得る。用語「免疫グロブリンのFc領域」は、本発明との関連において、免疫グロブリン、例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgM、またはIgEの抗体のサブタイプに応じた連結領域、例えばヒンジとCH2およびCH3領域とが存在していることを意味する。ポリペプチドはヒト起源に限定されず、例えばマウスまたはカニクイザル起源などの任意の起源であり得る。
用語「Fc-領域」、「Fc領域」、「Fc-ドメイン」、および「Fcドメイン」は、本明細書で用いる場合、抗体の結晶化できる領域の断片を指すことを意図する。これらの異なる用語は互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。用語「親ポリペプチド」または「親抗体」は、本発明によるポリペプチドまたは抗体と同一であるが、親ポリペプチドまたは親抗体には第2の変異がなく、Fc-Fc増強変異である第1の変異を例えば位置E345、E430、またはS440に有し、その結果として、親ポリペプチドまたは親抗体は、増大されたFc-Fc媒介性オリゴマー化、増大されたFcエフェクター機能、例えばCDCを有し、また、他の増強されたエフェクター機能も有し得るポリペプチドまたは抗体であると理解される。上記のように、特に記載のない限り、あるいは文脈と明らかに矛盾しない限り、用語「親ポリペプチド」または「親抗体」は、Fc-Fc増強の第1の変異を有するが、1つまたは複数のFcエフェクター機能を低減させる第2の変異は有しないポリペプチドまたは抗体をいう。したがって、ポリペプチドまたは抗体は「親ポリペプチド」または「親抗体」と比べて1つまたは複数の変異を含む。
用語「ヒンジ領域」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指すことを意図する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、EUナンバリングに従うアミノ酸216~230に対応する。
用語「CH2領域」または「CH2ドメイン」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指すことを意図する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、EUナンバリングに従うアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載のその他の任意のサブタイプのものであってもよい。
用語「CH3領域」または「CH3ドメイン」は、本明細書で用いる場合、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指すことを意図する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、EUナンバリングに従うアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載のその他の任意のサブタイプのものであってもよい。
用語「免疫グロブリン」は、1対の低分子量の軽(L)鎖と1対の重(H)鎖の2対のポリペプチド鎖からなり、これらの4つすべてがジスルフィド結合によって強力に相互連結されている、構造的に関連している一類型の糖タンパク質を指す。免疫グロブリンの構造は充分に特徴づけられている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul, W., ed., 2nd ed.Raven Press, N.Y.(1989))を参照のこと。簡単には、各重鎖は典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記)と重鎖定常領域とで構成されている。重鎖定常領域は典型的には、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3で構成されている。重鎖同士は、いわゆる「ヒンジ領域」でジスルフィド結合によって相互連結されている。各軽鎖は典型的には、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記)と軽鎖定常領域とで構成されている。軽鎖定常領域は典型的には、1つのドメインCLで構成されている。VH領域とVL領域は、超可変性の領域(または超可変領域、これは、配列および/または構造で規定されるループの形態が超可変的であり得る)であって相補性決定領域(CDR)とも称される領域と、散在する、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域とにさらに細分され得る。各VHおよびVLは典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成されており、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順に配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196, 901 917(1987)も参照のこと)。特に記載のない限り、あるいは文脈と矛盾しない限り、本明細書における定常領域内のアミノ酸位置に対する言及はEUナンバリングに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition - 1991 NIH Publication No.91-3242)。
用語「抗体」(Ab)は、本発明との関連において、抗原に対して特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはこれらのいずれかの誘導体をいう。本発明の抗体は、免疫グロブリンのFcドメインと抗原結合領域とを含む。抗体は一般的に、2つのCH2-CH3領域と連結領域、例えばヒンジ領域、例えば、少なくともFcドメインとを含む。したがって、本発明の抗体はFc領域と抗原結合領域とを含むものであり得る。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常または「Fc」領域は、宿主の組織または要素、例えば、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系の成分、例えば、補体活性化の古典的経路の第1成分であるC1qに対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。また、抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体または同様の分子であってもよい。用語「二重特異性抗体」は、少なくとも2種類の異なる、典型的には重複しないエピトープに対する特異性を有する抗体をいう。かかるエピトープは、同じ標的上に存在するものであっても異なる標的上に存在するものであってもよい。エピトープが異なる標的上に存在する場合、かかる標的は同じ細胞上に存在するものであってもよく、異なる細胞上または細胞型に存在するものであってもよい。上記のように、特に記載のない限り、あるいは文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書における抗体という用語は、Fc領域の少なくとも一部分を含んでおり、抗原に対して特異的に結合する能力を保持している抗体断片を包含する。かかる断片は、任意の公知の手法、例えば酵素的切断、ペプチド合成、および組換え発現手法によって得ることができる。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によっても発揮され得ることが示されている。用語「Ab」または「抗体」に包含される結合断片の例としては、非限定的に、一価抗体(GenmabによるWO2007059782に記載);2つの重鎖のみからなり、例えばラクダ科の動物に天然に存在する重鎖抗体(例えば、Hamers-Casterman(1993)Nature 363:446);ThioMabs(Roche, WO2011069104)、非対称である鎖交換改変操作ドメイン(SEEDまたはSeed-body)および二重特異性抗体様分子(Merck, WO2007110205);Triomab(Pharma/Fresenius Biotech, Lindhofer et al.1995 J Immunol 155:219;WO2002020039);FcΔAdp(Regeneron, WO2010151792)、Azymetric Scaffold(Zymeworks/Merck, WO2012/058768)、mAb-Fv(Xencor, WO2011/028952)、Xmab(Xencor)、二重可変ドメイン免疫グロブリン(Abbott, DVD-Ig,米国特許第7,612,181号);二重ドメインダブルヘッド抗体(Unilever;Sanofi Aventis, WO20100226923)、ジ-ダイアボディ(ImClone/Eli Lilly)、ノブ・イントゥ・ホール(Knobs-into-holes)による抗体フォーマット(Genentech, WO9850431 );DuoBody(Genmab, WO 2011/131746);二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/ Rinat, WO11143545)、DuetMab(MedImmune, US2014/0348839)、静電的ステアリング(Electrostatic steering)抗体フォーマット(Amgen, EP1870459およびWO 2009089004;Chugai, US201000155133;Oncomed, WO2010129304A2);二重特異性IgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation, WO11143545)、CrossMAb(Roche, WO2011117329)、LUZ-Y(Genentech)、Biclonic(Merus, WO2013157953)、二重ターゲティングドメイン抗体(GSK/Domantis)、2つの標的を認識するTwo-in-one AntibodiesまたはDual action Fab(Genentech, NovImmune、Adimab)、架橋型Mab(Karmanos Cancer Center)、共有結合融合mAb(AIMM)、CovX-body(CovX/Pfizer)、FynomAb(Covagen/Janssen ilag)、DutaMab(Dutalys/Roche)、iMab(MedImmune)、IgG様二重特異性(ImClone/Eli Lilly, Shen, J., et al.J Immunol Methods, 2007.318(1-2):p.65-74)、TIG-body、DIG-bodyおよびPIG-body(Pharmabcine)、二重親和性再ターゲティング分子(Fc-DARTまたはIg-DART, Macrogenics, WO/2008/157379, WO/2010/080538)、BEAT(Glenmark)、Zybody(Zyngenia)、一般的な軽鎖を用いたアプローチ(Crucell/ Merus, US7262028)または一般的な重鎖を用いたアプローチ(NovImmuneによるκλBody, WO2012023053)、ならびにFcドメインを含む抗体断片と融合させたポリペプチド配列を含む融合タンパク質、例えばscFv融合体、例えばZymoGenetics/BMSによるBsAb、Biogen IdecによるHERCULES(US007951918)、Emergent BioSolutions/TrubionおよびZymogenetics/BMSによるSCORPIONS、Ts2Ab(MedImmune/AZ(Dimasi, N., et al.J Mol Biol, 2009.393(3):p.672-92)、Genetech/RocheによるscFv融合体、NovartisによるscFv融合体、ImmunomedicsによるscFv融合体、Changzhou Adam Biotech IncによるscFv融合体(CN 102250246)、RocheによるTvAb(WO 2012025525, WO 2012025530)、f-StarによるmAb2(WO2008/003116)、ならびに二重scFv融合体が挙げられる。また、抗体という用語は、特に記載のない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体)、例えば、Symphogen and Merusが利用した技術によって得られる抗体混合物(組換えポリクローナル抗体)(Oligoclonics)、WO2015/158867に記載のような多量体型Fcタンパク質、WO2014/031646に記載のような融合タンパク質、ならびに抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体も包含することも理解されたい。作製される抗体は潜在的に任意のアイソタイプを有し得る。
用語「完全長の抗体」は、本明細書で用いる場合、そのアイソタイプの野生型抗体に通常みられるものに対応する重鎖と軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインのすべてを含む抗体をいう。
用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いる場合、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域とを有する抗体を包含することを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボで体細胞変異導入された変異、挿入、または欠失)を含んでもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いる場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞系列型に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を包含することは意図しない。
用語「キメラ抗体」は、本明細書で用いる場合、両方の鎖型が抗体の改変操作の結果としてキメラである抗体をいう。キメラ鎖は、ヒト起源の定常領域に連結された外来可変ドメイン(起源が非ヒト種であるか、または合成もしくはヒトを含む任意の種から改変操作されたもの)を含む鎖である。キメラ鎖の可変ドメインは、全体として解析すると、ヒトより非ヒト種に近いV領域アミノ酸配列を有する。
用語「ヒト化抗体」は、本明細書で用いる場合、両方の鎖型が抗体の改変操作の結果としてヒト化されている抗体をいう。ヒト化鎖は典型的には、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)は外来である(起源がヒト以外の種または合成である)が、鎖の残部はヒト起源のものである鎖である。ヒト化の評価は、方法論自体ではなく、得られるアミノ酸配列に基づくので、グラフト以外のプロトコルを使用することが可能である。ヒト化鎖の可変ドメインは、全体として解析すると、他の種よりヒトに近いV領域アミノ酸配列を有する。用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などは、本明細書で用いる場合、単分子組成のAb分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域とを有する単一結合特異性を示すAbをいう。ヒトmAbはハイブリドーマによって生成させ得、ハイブリドーマは、ヒト重鎖導入遺伝子レパートリーと軽鎖導入遺伝子レパートリーとを含み、機能性ヒト抗体を産生するように再編成されたゲノムを有するトランスジェニックまたは染色体導入非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られ、不死化細胞と融合させたB細胞を含む。
用語「アイソタイプ」は、本明細書で用いる場合、重鎖定常領域遺伝子にコードされている免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgE、もしくはIgM、またはその任意のアロタイプ、例えばIgG1m(za)およびIgG1m(f))をいう。さらに、各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)のいずれかの軽鎖と結合され得る。本明細書で用いる用語「混合アイソタイプ」は、あるアイソタイプの構造形体を別のアイソタイプに由来する類似領域と結合し、それによりハイブリッドアイソタイプを生じさせることにより得られる免疫グロブリンのFc領域をいう。混合アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgE、またはIgMから選択される2種類以上のアイソタイプで構成された配列を有するFc領域を含むものであってもよく、それにより、例えば、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、またはIgG1/IgAなどの組合せが作製され得る。
用語「抗原結合領域」、「抗原に結合する領域」、「結合領域」、または抗原結合ドメインは、本明細書で用いる場合、抗原に対する結合能を有する抗体領域をいう。この結合領域は典型的には抗体のVHおよびVLドメインによって規定される。VHおよびVLドメインは、超可変性の領域(または超可変領域、これは、配列および/または構造で規定されるループの形態が超可変的であり得る)であって相補性決定領域(CDR)とも称される領域と、散在する、より保存されたフレームワーク領域(FR)と称される領域とにさらに細分され得る。抗原は、例えば細胞、細菌、またはビリオン上に存在する任意の分子、例えばポリペプチドであり得る。
用語「標的」は、本明細書で用いる場合、抗体の抗原結合領域が結合する分子をいう。標的としては、生成された抗体が向かう任意の抗原が挙げられる。用語「抗原」および「標的」は、抗体に関連して互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。
用語「エピトープ」は、抗体可変ドメインに対する特異的結合能を有するタンパク質の決定基を意味する。エピトープは通常、表面分子群、例えばアミノ酸、糖側鎖、またはその組合せからなり、通常、特異的な三次元の構造的特徴ならびに特異的な荷電特徴を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、前者に対する結合は変性溶媒の存在下で失われるが後者に対する結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも称される)および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
本発明の「抗体変異体」または「親抗体の変異体」という用語は、「親抗体」と比べて1つまたは複数の変異を含む抗体分子である。これらの異なる用語は互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。同様に、本発明の「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチドの変異体」または「親免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチドの変異体」は、「親免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」と比べて1つまたは複数の変異を含む「免疫グロブリンのFc領域と結合領域とを含むポリペプチド」である。これらの異なる用語は互換的に用いられ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。例示的な変異としては、親アミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、挿入、およびアミノ酸の置換が挙げられる。アミノ酸置換は、天然アミノ酸が、天然に存在する別のアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸誘導体に交換され得る。アミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもよい。本発明との関連において、保存的置換は、以下の3つの表のうちの1つまたは複数に示されるアミノ酸クラス内での置換によって規定され得る。
本発明との関連において、変異体における置換は、
本来のアミノ酸 - 位置 - 置換されたアミノ酸
として示し;
コードXaaおよびXを含む3文字コードまたは1文字コードを使用してアミノ酸残基を示す。したがって、表記「E345R」または「Glu345Arg」は、変異体が、変異体において親抗体の345位のアミノ酸に対応するアミノ酸位置にグルタミン酸のアルギニンでの置換を含むことを意味する。
位置そのものは抗体に存在しないが、変異体がアミノ酸の挿入を含む場合、例えば、
位置 - 置換されたアミノ酸、例えば「448E」という表記を使用する。
かかる表記は、一連の相同なポリペプチドまたは抗体における1つまたは複数の修飾との関連において特に関係がある。
同様に、1つまたは複数の置換アミノ酸残基の実体が重要でない場合は、
本来のアミノ酸 - 位置、すなわち「E345」と表す。
1つまたは複数の本来のアミノ酸および/あるいは1つまたは複数の置換されたアミノ酸が、1つより多いが全部ではないアミノ酸を含み得る修飾、345位におけるグルタミン酸が、アルギニン、リジン、またはトリプトファンになる場合、
「Glu345Arg,Lys,Trp」または「E345R,K,W」または「E345R/K/W」または「E345 to R, K or W」
が、本発明との関連において互換的に使用され得る。
さらに、用語「置換」は、その他の19種類の天然アミノ酸のうちのいずれか1つ、または他のアミノ酸、例えば非天然アミノ酸への置換を包含する。例えば、345位のアミノ酸Eの置換には、置換345A、345C、345D、345G、345H、345F、345I、345K、345L、345M、345N、345P、345Q、345R、345S、345T、345V、345W、および345Yの各々が包含される。これは345Xという表示と等価であり、ここで、Xは任意のアミノ酸を示す。また、このような置換は、E345A,E345Cなど、またはE345A,Cなど、ならびにE345A/C/などとも表示され得る。同じことが、本明細書に記載のいずれの位置にも同様にあてはまり、かかる置換の任意の1つが本明細書において具体的に包含される。
本明細書で用いる場合、用語「エフェクター細胞」は、免疫応答の認識相や活性化相に対して、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞をいう。例示的な免疫細胞としては、骨髄系統またはリンパ系統が起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞、例えば細胞傷害性T細胞(CTL))、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば好中球、顆粒球、肥満細胞、および好塩基球が挙げられる。一部のエフェクター細胞はFc受容体(FcR)または補体受容体を発現し、特異的免疫機能を発揮する。一部の態様では、例えばナチュラルキラー細胞などのエフェクター細胞はADCC誘導能を有する。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、およびクッパー細胞は、標的細胞の特異的死滅および免疫系の他の成分への抗原提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。一部の態様では、ADCCは、抗体駆動型古典的補体活性化によってさらに増強され、標的細胞上への活性化C3断片の沈着をもたらし得る。C3切断産物は、骨髄系細胞上に発現される補体受容体(CR)、例えばCR3のリガンドである。エフェクター細胞上のCRによる補体断片の認識は、増強されたFc受容体媒介性ADCCを促進させ得る。一部の態様では、抗体駆動型古典的補体活性化により、標的細胞上にC3断片がもたらされる。このようなC3切断産物は、直接補体依存性細胞傷害(CDCC)を促進させ得る。一部の態様では、エフェクター細胞が標的抗原、標的粒子、または標的細胞を貪食し得る。エフェクター細胞上における特定のFcRまたは補体受容体の発現は、体液因子、例えばサイトカインによって調節され得る。例えば、FcγRIの発現は、インターフェロンγ(IFN γ)および/またはG-CSFによって上方調節されることがわかっている。この増強された発現により、標的に対するFcγRI担持細胞の細胞毒性活性が増大する。エフェクター細胞は標的抗原を貪食し得るか、または標的細胞を貪食して溶解させ得る。一部の態様では、抗体駆動型古典的補体活性化により、標的細胞上にC3断片がもたらされる。このようなC3切断産物は、エフェクター細胞による貪食を直接、または抗体媒介性貪食を増強させることにより間接的に促進させ得る。
用語「Fcエフェクター機能」は、本明細書で用いる場合、ポリペプチドまたは抗体が細胞膜上のその標的、例えば抗原に結合することの結果である機能を指すことを意図し、ここで、Fcエフェクター機能は、ポリペプチドまたは抗体のFc領域によるものである。Fcエフェクター機能の例としては、(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(iii)補体依存性細胞傷害(CDC)、(iv)抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、(v)Fcガンマ受容体結合、(vi)抗体依存性細胞貪食(ADCP)、(vii)補体依存性細胞傷害(CDCC)、(viii)補体増強型細胞傷害、(ix)オプソニン化抗体の、該抗体によって媒介される補体受容体に対する結合、(x)オプソニン化、および(xi)任意の(i)~(x)の組合せが挙げられる。
用語「低減された1つまたは複数のFcエフェクター機能」は、本明細書で用いる場合、同じアッセイで親ポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能と直接比較した場合に、ポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能が低減されていることを指すことを意図する。
用語「クラスタリング依存性機能」は、本明細書で用いる場合、任意で細胞上、細胞膜上、ビリオン上、または別の粒子上の抗原に結合したポリペプチドまたは抗体のオリゴマー化後の抗原複合体の形成の結果である機能を指すことを意図する。クラスタリング依存性エフェクター機能の例としては、(i)抗体オリゴマー形成、(ii)抗体オリゴマー安定性、(iii)抗原オリゴマー形成、(iv)抗原オリゴマー安定性、(v)アポトーシスの誘導、(vi)増殖のモジュレーション、例えば増殖の低減、阻害、または刺激、(vii)シグナル伝達のモジュレーション、例えば、タンパク質のリン酸化の低減、阻害、または刺激、および(viii)任意の(i)~(vii)の組合せが挙げられる。
用語「ベクター」は、本明細書で用いる場合、ベクター内にライゲーションされた核酸セグメントの転写の誘導能を有する核酸分子を指すことを意図する。ベクターの型の一例は「プラスミド」であり、これは、円環状の二本鎖DNAループの形態である。ベクターの別の型はウイルスベクターであり、この場合、核酸セグメントはウイルスゲノム内にライゲーションされ得る。一部の特定のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞内での自己複製能を有する(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよび哺乳動物エピソームベクター)。他のベクター(例えば、哺乳動物の非エピソームベクター)を宿主細胞のゲノム内に、宿主細胞内への導入の際に組み込んでもよく、それにより宿主のゲノムとともに複製される。さらに、一部の特定のベクターは、これに作動可能に連結されている遺伝子の発現指令能を有する。かかるベクターを本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称する。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは多くの場合、プラスミドの形態である。プラスミドはベクターの最も一般的な使用形態であるため、本明細書では「プラスミド」および「ベクター」を互換的に用い得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすかかる他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を包含することを意図する。
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書で用いる場合、内部に発現ベクターが導入されている細胞を指すことを意図する。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫も指すことを意図していることを理解されたい。後続世代において変異または環境的影響のいずれかにより、なんらかの修飾が起こる可能性があるため、かかる子孫は、実際には親細胞と同一でない可能性があるが、それでもなお本明細書で用いる用語「宿主細胞」の範囲に包含される。組換え宿主細胞としては、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)、例えばCHO細胞、HEK-293細胞、PER.C6、NS0細胞、およびリンパ系細胞、ならびに原核生物細胞、例えば大腸菌(E.coli)、および他の真核生物宿主、例えば植物細胞および真菌が挙げられる。
用語「トランスフェクトーマ」は、本明細書で用いる場合、Abまたは標的抗原を発現している組換え真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、PER.C6、NS0細胞、HEK-293細胞、植物細胞、または真菌、例えば、酵母細胞を包含する。
用語「調製物」は、細胞、細胞膜、ビリオン、または他の構造に関連する抗原(例えば、細胞表面上に発現された抗原)と相互作用した場合に増大されたオリゴマー形成能を有し得、抗原によって増強されたシグナル伝達および/または活性化がもたらされ得る、抗体変異体および異なる抗体変異体の混合物の調製物を指す。
本明細書で用いる場合、用語「親和性」は、単一の部位において1つの分子、例えば抗体が、別の例えば標的または抗原に結合する強度、例えば、抗原に対する抗体の個々の抗原結合部位の一価結合の強度である。
本明細書で用いる場合、用語「アビディティ」は、2つの構造間、例えば、標的と同時に相互作用する抗体の複数の抗原結合部位間または例えば抗体とC1qとの間の複数の結合部位の合計強度をいう。1つより多くの結合性相互作用が存在する場合、2つの構造は、すべての結合部位が解離した場合にのみ解離し、したがって、解離速度は個々の結合部位の場合より遅くなり、それにより、個々の結合部位が結合する強度(親和性)と比べてより大きな有効総結合強度(アビディティ)がもたらされる。
本明細書で用いる場合、用語「オリゴマー」は、少なくとも原則的には無限の数の単量体からなるポリマーとは対照的に、1つより多いが限定数の単量体単位からなる分子(例えば、抗体)をいう。例示的なオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、および六量体である。多くの場合、オリゴマー内の単量体単位の数を表示するのにギリシャ語の接頭語が使用され、例えば、四量体(tetramer)は4つの単位、六量体(hexamer)は6つの単位で構成されている。
用語「オリゴマー化」は、本明細書で用いる場合、単量体を有限の重合度まで変換させるプロセスを指すことを意図する。本明細書では、本発明による標的結合領域を含むポリペプチド、抗体、および/または他の二量体型タンパク質が、例えば細胞表面での標的結合後、Fc領域の非共有結合性会合によってオリゴマー、例えば六量体を形成し得ることが観察される。抗体のオリゴマー化は、例えば、細胞生存能アッセイにおいて、Fc-Fc増強変異、例えばE430GまたはE345Rを含む抗DR5抗体を用いて評価され得る(実施例13に記載の通り)。ポリペプチドまたは抗体のFc-Fc媒介性オリゴマー化は、(細胞)表面上での標的結合後に、隣接するポリペプチドまたは抗体間のFc領域の分子間会合によって起こり、E430、E345、またはS440に対応するアミノ酸への第1の変異(ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする)の導入によって増大される。したがって、(細胞)表面上での標的結合の際のFc-Fc媒介性オリゴマー化の形成は、アッセイにおいて、Fc-Fc相互作用をブロックするペプチドDCAWHLGELVWCTを用いて測定され得る。オリゴマー化の誘導は、アッセイにおいて以下のグループの応答を比較することにより評価され得る;グループI)野生型Fc領域を有する抗体、グループII)本発明による第1の変異、例えばE430Gを含むこと以外はグループI)の抗体と同一である抗体、グループIII)本発明による第1の変異、例えばE430Gを含むこと以外はグループI)の抗体と同一である抗体との組合せでのDCAWHLGELVWCTペプチド、グループIV)本発明による第1の変異、例えばE430Gと本発明による第2の変異、例えばP329Dを含むこと以外はグループI)の抗体と同一である抗体。グループIとグループIIの応答を比較することにより、増強されたオリゴマー化の応答を評価することが可能である。グループIIとIIIの応答を比較することにより、増強されたオリゴマー化をブロックする応答を評価することが可能である。グループIIとIVの応答を比較することにより、増強されたオリゴマー化が維持されているかどうかを評価することが可能である。オリゴマー化に依存性の応答の評価においてどのアッセイの使用が好適であるかは、抗体がどの標的抗原に結合するのか(これは当業者には明白である)に依存する。したがって、細胞内デスドメイン、例えばDR5、FAS、DR4、およびTNFR1を有するプログラム細胞死(PCD)を誘導する標的抗原、例えばTNFR-SFに結合する抗体では、オリゴマー化を調べるのに好適なアッセイは、実施例13に記載のような生存能アッセイであり得る。生存能アッセイは、BxPC-3細胞において、上記のアッセイグループに従う抗体、すなわち、グループI、グループII、グループIII、および/またはグループIVの存在下で行なわれ得る。BxPC-3細胞は、5μg/mLまたは10μg/mLの上記のアッセイグループに従う抗体とともに37℃で3日間インキュベートされる。生存細胞の割合は、CellTiter-Glo発光細胞生存能アッセイ(Promega, カタログ番号G7571)において求められ得る。デスドメインを有しない共刺激免疫受容体、例えばTNFR-SF、例えばOX40、CD40、CD30、CD27、4-1BB、RANK、およびGITRに結合する抗体では、オリゴマー化を調べるのに好適なアッセイはNFATレポーターバイオアッセイであり得る。NFATレポーターバイオアッセイは、標的抗原(これは当業者には明白である)を安定的に発現しているJurkat NFATレポーター細胞、例えば、NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現し、OX40の膜発現を有するNFκB-luc2/OX40 Jurkat細胞を用いて、上記のアッセイグループ、すなわち、グループI、グループII グループIII、および/またはグループIVの存在下で行なわれ得る。NFκB-luc2/OX40 Jurkat細胞は、1.5または5μg/mLの上記のアッセイグループに従う抗体とともに37℃で1日インキュベートされる。OX40の活性化によって誘導されたルシフェラーゼ発現は、発光シグナルを測定することにより測定され得る。
用語「クラスタリング」は、本明細書で用いる場合、非共有結合性相互作用による抗体、ポリペプチド、抗原、または他のタンパク質のオリゴマー化を指すことを意図する。
用語「Fc-Fc増強」は、本明細書で用いる場合、2つのFc領域含有抗体またはポリペプチドが標的結合後にオリゴマーを形成するように、ポリペプチドのFc領域間の結合強度を増大させること、またはFc領域間の相互作用を安定化することを指すことを意図する。
用語「C1q結合」は、本明細書で用いる場合、抗原に結合している抗体に対するC1qの結合の状況におけるC1qの結合を指すことを意図する。抗原に結合している抗体は、本明細書に記載の状況でインビボおよびインビトロのどちらにおいても起こることが理解される。C1q結合は、例えば、人工的な表面上に固定化した抗体を使用することにより、または細胞表面もしくはビリオン表面上の所定の抗原に結合させた抗体を使用することにより評価され得る(実施例3および11に記載の通り)。抗体オリゴマーに対するC1qの結合は、本明細書において、高アビディティ結合をもたらす多価相互作用であることが理解される。例えばポリペプチドまたは抗体への第2の変異の導入に起因するC1q結合の低減は、ポリペプチドまたは抗体のC1q結合を、第2の変異を有しないその親ポリペプチドまたは抗体のC1q結合と、同じアッセイにおいて、実施例3に例示する通りに比較することにより測定され得る。手短にいうと、抗体の抗原結合領域が結合する標的抗原を発現している適当な起源の細胞がこのアッセイにおいて使用され得、かかる細胞株または細胞型は当業者には明白であろう。したがって、がん細胞上の標的抗原、例えばDR5に結合する抗体では、がん細胞、例えば、BxPC-3ヒト膵がん細胞(ATCC CRL-1687)が本アッセイに好適であり得る。一方、T細胞上に発現されるOX-40に結合する抗体では、T細胞、例えばJurkatヒトT細胞(ATCC TIB-152)が本アッセイに好適であり得る。本発明による抗体の低減されたC1q結合は、1×106 mLの濃度の適切な細胞を、ポリスチレン製丸底96ウェルプレートで、i)一連の濃度(0.0003~100μg/mL)の、本発明による第1および第2の変異を含む抗体とともに20%のC4枯渇(depleted)血清の存在下で;ならびにii)一連の濃度(0.0003~100μg/mL)の、第1の変異を含むが第2の変異は含まない親抗体とともに20%のC4枯渇血清の存在下でインキュベートすることにより評価され得、ここで、i)およびii)の抗体は、適切な細胞とともに4℃で30分間インキュベートした後、標識された抗ヒトC1q抗体、例えばFITC標識ウサギ抗HuC1qとともにインキュベートし、C1q結合をフローサイトメトリーによって測定する。あるいはまた、本発明による抗体の低減されたC1q結合は、C1q結合の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)において、96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, カタログ番号655092)を、i)本発明による第1および第2の変異を含む抗体の希釈列(0.001から20μg/mLまで);ならびにii)第1の変異を含むが第2の変異は含まない抗体の希釈列(0.001から20μg/mLまで)でコートし(100μLのPBS中)、4℃で一晩インキュベートした後、後続のインキュベーションを、インキュベーション間に洗浄を伴って、0.025%のTween 20と0.1%のゼラチンを補った200μL/ウェルの0.5×PBSとともに室温で1時間(ブロック)、100μLの3%NHS(Sanquin, Ref.M0008AC)とともに37℃で1時間、100μLのウサギ抗ヒトC1q(DAKO, カタログ番号A0136、1/4.000)とともに室温で1時間、および検出抗体として100μLのブタ抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(DAKO, カタログ番号P0399, 1/10.000)とともに室温で1時間;最後に、1 mg/mLの2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS;Roche, カタログ番号11112 597001)を含む100μLの基質とともに室温で約15分間行ない;100μLの2%シュウ酸の添加によって反応を停止させ、吸光度を405 nmで測定することにより評価され得る。
本明細書で用いる場合、用語「補体活性化」は、表面上の抗体-抗原複合体に、C1と称される大きな巨大分子複合体が結合することによって開始される、古典的補体経路の活性化をいう。C1は、6つの認識タンパク質C1qとセリンプロテアーゼのヘテロ四量体C1r2C1s2とからなる複合体である。C1は、C4のC4aとC4bへの切断およびC2のC2aとC2bへの切断から開始する一連の切断反応を伴う古典的補体カスケードの初期事象における最初のタンパク質複合体である。C4bは沈着し、C2aと一緒にC3転換酵素と称される酵素活性転換酵素を形成し、これにより補体成分C3がC3bとC3aに切断され、C5転換酵素が形成される。このC5転換酵素はC5をC5aとC5bに分割し、最後の成分が膜上に沈着し、これによりさらに、終末補体成分C5b、C6、C7、C8、およびC9が膜侵襲複合体(MAC)へと構築される補体活性化の後期事象が誘発される。補体カスケードにより、補体依存性細胞傷害(CDC)としても知られる、細胞溶解を引き起こす原因となる孔の発生がもたらされる。補体活性化は、C1q有効性、CDC動態CDCアッセイ(WO2013/004842、WO2014/108198に記載のような)を使用することにより、またはBeurskens et al April 1, 2012 vol.188 no.7 3532-3541に記載の方法であるC3bおよびC4bの細胞沈着により評価され得る。
用語「補体依存性細胞傷害」(「CDC」)は、本明細書で用いる場合、MAC構築体によって作られた膜における孔の結果として、細胞またはビリオン上の標的に結合している抗体の溶解がもたらされる、抗体媒介性補体活性化のプロセスを指すことを意図する。CDCはインビトロアッセイによって、例えば、正常ヒト血清が補体源として使用されるCDCアッセイにより、実施例2、3、4、および6に記載の通りに、または一連のC1q濃度で評価され得る。例えばポリペプチドまたは抗体への第2の変異の導入に起因するCDC活性の低減は、ポリペプチドまたは抗体のCDC活性を、第2の変異を有しないその親ポリペプチドまたは抗体のCDC活性と、同じアッセイにおいて、実施例3および4に例示する通りに比較することにより測定され得る。
用語「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」(「ADCC」)は、本明細書で用いる場合、結合抗体の定常領域を認識するFc受容体を発現している細胞による、抗体で被覆された標的細胞またはビリオンの死滅の機構を指すことを意図する。ADCCは、実施例10に記載のADCCアッセイまたは実施例9に記載のLuminescent ADCC Reporter BioAssayなどの方法を用いて測定され得る。例えばポリペプチドまたは抗体への第2の変異の導入に起因するADCC活性の低減は、ポリペプチドまたは抗体のADCC活性を、第2の変異を有しないその親ポリペプチドまたは抗体のADCC活性と、同じアッセイにおいて、実施例10および9に例示する通りに比較することにより測定され得る。
用語「抗体依存性細胞貪食」(「ADCP」)は、本明細書で用いる場合、食細胞による内部移行による、抗体で被覆された標的細胞またはビリオンの除去機構を指すことを意図する。内部移行を受けた、抗体で被覆された標的細胞またはビリオンは、ファゴソームと称される小胞内に内包され、次いでこれが1つまたは複数のリソソームと融合してファゴリソソームを形成する。ADCPは、エフェクター細胞としてマクロファージおよびビデオ顕微鏡法を用いるインビトロ細胞傷害アッセイを使用することにより、van Bij et al.in Journal of Hepatology Volume 53, Issue 4, October 2010, Pages 677-685に記載のようにして評価され得る。
用語「補体依存性細胞傷害」(「CDCC」)は、本明細書で用いる場合、抗体媒介性補体活性化の結果として、標的細胞またはビリオンに共有結合している補体第3成分(C3)の切断産物を認識する補体受容体を発現している細胞による標的細胞またはビリオンの死滅の機構を指すことを意図する。CDCCは、ADCCについて記載のものと同様の様式で評価され得る。
用語「血漿半減期」は、本明細書で用いる場合、血漿中のポリペプチド濃度が、除去中(分布相後)に、その初期濃度の半分まで低下するのにかかる時間を指す。抗体では、分布相は典型的には1~3日間であり、この相中に、血漿と組織との間での再分布のため血漿濃度の約50%の低減がみられる。血漿半減期は、当技術分野において周知の方法で測定され得る。
用語「血漿クリアランス率」は、本明細書で用いる場合、ポリペプチドが、生きている生物に投与したときに血液から除去される速度の定量的測定値である。血漿クリアランス率は、用量/AUC(mL/日/kg)として計算され得、ここで、AUC値(曲線下面積)は濃度-時間曲線から求められる。
用語「抗体-薬物コンジュゲート」は、本明細書で用いる場合、少なくとも1つの型の悪性細胞に対する特異性、薬物、および薬物を例えば抗体とカップリングさせるリンカーを有する抗体またはFc含有ポリペプチドを指す。リンカーは、悪性細胞の存在下で切断性または非切断性である;この場合、抗体-薬物コンジュゲートは悪性細胞を死滅させる。
用語「抗体-薬物コンジュゲート取込み」は、本明細書で用いる場合、抗体-薬物コンジュゲートが細胞上の標的に結合された後、細胞膜によって取込み/封じ込みが行なわれ、それにより細胞内に引き込まれるプロセスをいう。抗体-薬物コンジュゲート取込みは、WO 2011/157741に記載の「インビトロ死滅アッセイにおける抗TF ADCによる抗体媒介性内部移行および細胞死滅(antibody-mediated internalization and cell killing by anti-TF ADC in an in vitro killing assay)」のようにして評価され得る。
用語「アポトーシス」は、本明細書で用いる場合、細胞において起こり得るプログラム細胞死(PCD)のプロセスをいう。生化学的事象により特徴的な細胞の変化(形態構造)および死がもたらされ得る。このような変化としては、細胞質の水疱様突起(blebbing)、細胞の収縮、核の断片化、クロマチンの凝集、および染色体DNAの断片化が挙げられる。ある特定の受容体に抗体が結合することによって、アポトーシスが誘導され得る。
用語「プログラム細胞死」または「PCD」は、本明細書で用いる場合、細胞内プログラムによって媒介される任意の形態の細胞の死をいう。異なる形態のPCDが存在し、種々の型のPCDは、細胞内シグナル伝達に干渉すると妨害され得る能動的細胞プロセスによって実行されることが共通している。特定の一態様において、細胞または組織における任意の形態のPCDの発生は、細胞または組織をコンジュゲート型アネキシンVで染色し、ホスファチジルセリン曝露と相関させることにより調べ得る。
用語「アネキシンV」は、本明細書で用いる場合、細胞表面上のホスファチジルセリン(PS)に結合する一群のアネキシンのタンパク質をいう。
Fc受容体結合は、実施例9に記載のようにして間接的に測定され得る。Fc受容体結合は、実施例21に記載のようにして直接測定され得る。例えば試験抗体またはポリペプチドへの第2の変異の導入に起因するFc受容体結合の低減は、ポリペプチドまたは抗体のADCC活性を、当該さらなる変異を有しないその親ポリペプチドまたは抗体のADCC活性と、同じアッセイにおいて、実施例21に例示するようにして比較することにより測定され得る。
用語「Fcガンマ受容体」、「FcガンマR」、「Fcγ受容体」、「FcγR」は、本明細書において、Fcガンマ受容体クラスを記述するために互換的に用い得る。この受容体クラスは、いくつかのファミリーメンバーFcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)を含み、これらは、分子構造が異なるため抗体親和性が異なっている。FcγRIはFcγRIIまたはFcγRIIIより強くIgGに結合する。
用語「FcRn」は、本明細書で用いる場合、Fc受容体である新生児型Fc受容体を指すことを意図する。これは、最初、齧歯類において、母乳から齧歯類新生仔の腸の上皮を通して新生仔の血流へのIgG輸送能を有する特有の受容体として見出された。さらなる研究により、ヒトにおける同様の受容体が明らかになった。しかしながら、ヒトでは、これは、成長中の胎児への母体のIgGの輸送の助長を補助する胎盤中に見出され、また、IgG代謝回転の監視に役割を果たしていることが示されている。FcRnは、6.0~6.5の酸性pHでIgGに結合するが中性またはそれより高いpHでは結合しない。したがって、FcRnは、わずかに酸性pHの腸管腔(腸内部)からIgGに結合することができ、pHが中性から塩基性(pH 7.0~7.5)である基底外側(身体内部)への効率的な一方向性輸送を確実にすることができる。また、この受容体は、内皮細胞内でのエンドサイトーシスの経路内に存在することにより成人のIgG再利用においても役割を果たす。酸性のエンドソーム内のFcRn受容体は、飲作用によって内部移行を受けたIgGに結合し、これを細胞表面に再利用させ、塩基性pHの血液中に放出し、それによりリソソーム分解を受けることを抑制する。この機構は、血中のIgGの半減期が他のアイソタイプと比べて長いことの説明となり得る。
用語「プロテインA」は、本明細書で用いる場合、最初に細菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁において見出された56 kDaのMSCRAMM表面タンパク質を指すことを意図する。これはspa遺伝子にコードされており、その調節は、DNAトポロジー、細胞オスモル濃度、およびArlS-ArlRと称される二成分系によって制御される。これは、その免疫グロブリンとの結合能のため、生化学の研究において有用性が見出されている。これは、3-ヘリックスバンドルにフォールディングされる5つの相同Ig結合ドメインで構成されている。各ドメインが、多くの哺乳動物種に由来するタンパク質、最も顕著にはIgGに対する結合能を有する。これは、ほとんどの免疫グロブリンの重鎖Fc領域(FcRn受容体の保存された結合部位と重複)に結合し、また、ヒトVH3ファミリーのFab領域とも相互作用する。血清中でのこのような相互作用により、IgG分子は、そのFab領域単独ではなくFc領域によって細菌に結合し、それにより、この細菌がオプソニン化、補体活性化、および貪食を攪乱する。
用語「プロテインG」は、本明細書で用いる場合、C群およびG群の連鎖球菌によって発現される免疫グロブリン結合タンパク質を指すことを意図しており、プロテインAとよく似ているが特異性が異なる。これは、Fc領域に対するその結合による抗体精製において用途が見出されている65 kDa(G148プロテインG)および58 kDa(C40プロテインG)の細胞表面タンパク質である。
本発明の具体的な態様
本発明は、標的細胞の表面上の対応する抗原に結合されると増強されたFc-Fc相互作用を有し、したがって、抗原への結合の際にオリゴマーを形成するが、結合の際にオリゴマー、例えば六量体を形成するポリペプチドおよび抗体で通常みられる増強されたFcエフェクター機能、例えばCDCおよび/またはADCCは有しないポリペプチドおよび抗体の治療薬の必要性を見出したことに基づいている。驚くべきことに、本発明者らは、アミノ酸位置E430、E345、またはS440のうちの1つに対応する第1の変異を有するポリペプチドまたは抗体のFc領域内にアミノ酸位置K322またはP329に対応する第2の変異を導入することにより、増強されたFc-Fc相互作用が維持され得るが、Fcエフェクター機能、例えばCDCおよび/またはADCCは、第1の変異のみを有し第2の変異は有しない同じポリペプチドまたは抗体の親と比べて低減されることを見出した。一部の態様では、1つまたは複数のエフェクター機能が、野生型ポリペプチドまたは抗体、すなわち第1および第2の変異を有しないこと以外は同一のものでみられるものより下のレベルにまで低減され得る。
一部の態様では、第2の変異の導入により、Fcエフェクター機能が、野生型ポリペプチドまたは抗体でみられるレベルと同等、またはそれより低いレベルまで低下した。一部の態様では、第2の変異の導入により、Fcエフェクター機能が、第1の変異のみを有する同一の抗体またはポリペプチド、すなわち親ポリペプチドまたは抗体でみられるレベルと同等、またはそれより低いレベルまで低下した。
一局面において、本発明により、ヒトIgGのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体であって、該Fc領域が、CH2およびCH3ドメインを含み、該Fc領域が、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する(i)第1の変異および(ii)第2の変異:
i. E430、E345、またはS440に第1の変異、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;および
ii. K322またはP329に第2の変異
を含む、ポリペプチドまたは抗体を提供する。
本発明による第1の変異は、アミノ酸位置E430、E345、またはS440のうちの1つにおけるものであり、ポリペプチドまたは抗体に増強されたFc-Fc相互作用およびオリゴマー化という効果を導入する。さらに、増強されたオリゴマー化は、ポリペプチドまたは抗体の抗原結合領域が対応する標的抗原に結合されている場合に起こる。この増強されたオリゴマー化により、例えば六量体などのオリゴマーが生成する。オリゴマー構造、例えば六量体の生成は、ポリペプチドまたは抗体のC1q結合アビディティが増大することにより、例えばCDCおよび/またはADCCなどのFcエフェクター機能を増大させるという効果を有する。アミノ酸位置K322またはP329のうちの1つに存在する本発明による第2の変異は、ポリペプチドまたは抗体におけるFcエフェクター機能の低減という効果を導入する。かかる低減されたFcエフェクター機能は、例えば、低減されたC1q結合またはCDC活性であり得る。したがって、第2の変異は、第1の変異によって導入された増強されたFcエフェクター機能に反作用し、それにより、増強されたFc-Fc相互作用およびオリゴマー化を有するが増大されたFcエフェクター機能は有しないポリペプチドまたは抗体が生成され得る。すなわち、Fcエフェクター機能が、第1の変異を有するが第2の変異は有しないポリペプチドまたは抗体と比べて低下する。野生型ポリペプチドまたは抗体が、増大されたFcエフェクター機能、例えばCDCを有する一部の場合では、第1および第2の変異の導入により、オリゴマー化レベルは増大し得るが、CDCレベルは野生型ポリペプチドまたは抗体でみられるものより低いレベルまで低減され得る。本発明によるポリペプチドまたは抗体は、例えばエフェクター細胞を活性化させる場合にFcエフェクター機能が望ましくない場合、特に好都合である。
本発明の一態様では、Fc領域は、L234およびL235に対応するアミノ酸位置に変異を含まない。すなわち、本発明の一態様では、Fc領域は、ヒトIgG1内のL234およびL235に対応する位置に野生型アミノ酸LおよびLを含み、ここで、位置はEUナンバリングに従う。
本発明の一態様では、Fc領域は第1および第2の変異を含み、ただし、Fc領域は、L234およびL235に対応する位置にLおよびLを含むものとする。
本発明の一態様では、第1の変異が、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される。本発明の好ましい一態様では、第1の変異がE430GまたはE345Kから選択される。これにより、細胞表面の抗原に結合するとポリペプチドまたは抗体の増強されたオリゴマー化を可能にする態様が提供される。
本発明の一態様では、ポリペプチドは、Fc-Fc増強変異である少なくとも1つの変異と、Fcエフェクター機能を低減させる少なくとも1つの変異を含む。すなわち、本発明の一態様では、ポリペプチドは、i)E430、E345、またはS440に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの第1の変異(ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする)と、ii)K322またはP329に対応するアミノ酸位置における少なくとも1つの第2の変異とを含む。
一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖と第2の重鎖を含むFc領域を含み、上記した第1の変異のうちの1つが第1および/または第2の重鎖内に存在し得る。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖と第2の重鎖を含むFc領域を含み、第1の変異が第1および第2の両方の重鎖内に存在する。本発明の好ましい一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖と第2の重鎖を含むFc領域を含み、第1の変異と第2の変異が第1および第2の両方の重鎖内に存在する。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖と第2の重鎖を含むFc領域を含み、第1の変異が第1および第2の重鎖内に存在し、第2の変異が第1および第2の両方の重鎖内に存在する。
本発明の一態様では、第2の変異は、K322E、K322D、K322N、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yからなる群より選択される。本発明の一態様では、第2の変異はK322Eである。これにより、1つまたは複数のFcエフェクター機能の阻害を可能にする態様が提供される。一態様では、第2の変異は、第1の変異によって高められたFcエフェクター機能を低減させる。一態様では、第2の変異は、第1の変異によって高められたFcエフェクター機能を部分的に低減させる。一態様では、ポリペプチドまたは抗体における第2の変異は、Fcエフェクター機能を、第1の変異を有するが第2の変異は有しないポリペプチドまたは抗体、すなわち親ポリペプチドまたは親抗体でみられるものより低いレベルまで低減させることができる。一態様では、ポリペプチドまたは抗体における第2の変異は、Fcエフェクター機能を、第1および第2の変異を有しないポリペプチドまたは抗体、すなわち野生型ポリペプチドまたは抗体でみられるものと同等、またはそれより低いレベルまで低減させることができる。一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の重鎖と第2の重鎖を含むFc領域を含み、上記の第2の変異のうちの1つが第1および/または第2の重鎖内に存在する。
一態様では、第2の変異は、K322E、K322D、およびK322Nの群から選択され、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異は、K322E、K322D、およびK322Nの群から選択され、C1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はK322Eであり、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はK322Eであり、C1q結合を低減させる。
一態様では、第2の変異は、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yの群から選択され、ADCC、ADCP、FcγR結合、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異は、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yの群から選択され、ADCC、FcγR結合、CDC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異は、P329R、P329K、P329D、P329E、およびP329Gの群から選択され、ADCC、ADCP、FcγR結合、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Rであり、ADCC、ADCP、FcγR結合、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Rであり、ADCC、ADCP、FcγR結合、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Rであり、ADCC、FcγR結合、CDC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Kであり、ADCC、FcγR結合、CDC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Dであり、ADCC、FcγR結合、CDC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Eであり、ADCC、FcγR結合、CDC、および/またはC1q結合を低減させる。一態様では、第2の変異はP329Gであり、ADCC、FcγR結合、CDC、および/またはC1q結合を低減させる。
本発明の一態様では、第2の変異はP329Aである。一態様では、第2の変異はP329Aであり、ADCCを低減させるがCDCは低減させない。
本発明の一態様では、第2の変異はP329位に存在し、ただし、第2の変異はP329Aでないものとする。
本発明の一態様では、第2の変異はアミノ酸位置P329に存在し、ただし、第2の変異はP329AまたはP329Gでないものとする。
本発明の好ましい一態様では、ポリペプチドまたは抗体が、P329Rである第2の変異を含み、ただし、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1内のL234とL235に対応する位置には変異を含まないものとする。
本発明の別の態様では、第2の変異は、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yからなる群より選択される。
本発明の別の態様では、第2の変異は、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yからなる群より選択される。
本発明の別の態様では、第2の変異は、P329R、P329K、およびP329Dの群から選択される。
本発明の一態様では、第1の変異がE430に対応するアミノ酸位置に存在し、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、Fc領域が第1の変異をE430に対応するアミノ酸位置に含み、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択され、ただし、Fc領域は、L234およびL235に対応する位置にLおよびLを含むものとする。
本発明の一態様では、第1の変異がE430に対応するアミノ酸位置に存在し、第2の変異が、
i. K322E、K322D、およびK322N、または、
ii. P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異がE430に対応するアミノ酸位置に存在し、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異が、E430G、E430S、E430F、およびE430Tからなる群より選択され、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、Fc領域が、E430Gである第1の変異と、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される第2の変異を含み、Fc領域は、L234およびL235に対応する位置にアミノ酸LおよびLを含む。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Gであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異がE345に対応するアミノ酸位置に存在し、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、Fc領域が第1の変異をE345に対応するアミノ酸位置に含み、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択され、ただし、Fc領域は、L234およびL235に対応する位置にLおよびLを含むものとする。
本発明の一態様では、第1の変異がE345に対応するアミノ酸位置に存在し、第2の変異が、
i. K322E、K322D、およびK322N、または、
ii. P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異がE345に対応するアミノ酸位置に存在し、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異が、E345K、E345R、およびE345Yからなる群より選択され、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Kであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Sであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Fであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE430Tであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Qであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Rであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はE345Yであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異が、S440YおよびS440Wからなる群より選択され、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異が、S440YおよびS440Wからなる群より選択され、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択され、ただし、Fc領域は、234および235に対応する位置にLおよびLを含むものとする。
本発明の一態様では、第1の変異が、S440YおよびS440Wからなる群より選択され、第2の変異が、
i. K322E、K322D、およびK322N、または、
ii. P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異が、S440YおよびS440Wからなる群より選択され、第2の変異が、
(i)K322E、K322D、およびK322N、または、
(ii)P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y
からなる群のうちの1つから選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Wであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される。
本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はK322Eである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はK322Dである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はK322Nである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Hである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Kである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Rである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Dである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Eである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Mである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Fである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Gである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Iである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Lである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Nである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Qである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Sである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Tである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Vである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Wである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Yである。本発明の一態様では、第1の変異はS440Yであり、第2の変異はP329Aである。
本発明の一態様では、Fc領域は、1つまたは複数のさらなる変異を含む。Fc領域は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、および任意でヒンジ領域を含む。本発明の一態様では、Fc領域は、1つまたは複数のさらなる変異をCH2またはCH3ドメイン内に含む。一態様では、1つまたは複数のさらなる変異はCH2ドメイン内に存在する。別の態様では、1つまたは複数のさらなる変異はCH3ドメイン内に存在する。
本発明の一態様では、Fc領域は、
(i)Fc-Fc増強変異である第1の変異;
(ii)1つまたは複数のFcエフェクター機能を阻害する第2の変異;
(iii)さらなる変異であって、同じさらなる変異を有するFc領域間のオリゴマー化を抑制する変異
を含む。
本発明の一態様では、Fc領域は、K439に対応するCH3ドメイン内にさらなる変異を含むか、または第1の変異がS440位に存在しない場合はさらなる変異はS440位に存在し得る。本発明の一態様では、Fc領域は、位置S440またはK439のうちの一方に対応するCH3ドメイン内にさらなる変異を含み、ただし、第1の変異はS440に存在しないものとする。本発明による第1および第2の変異ならびにS440位におけるさらなる変異、例えばS440Kを含むポリペプチドまたは抗体は、S440位におけるさらなる変異、例えばS440Kを含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。本発明による第1および第2の変異ならびにK439位におけるさらなる変異、例えばK439Eを含むポリペプチドまたは抗体は、K439位に変異、例えばK439Eを含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。本発明の一態様では、さらなる変異はS440KまたはK439Eから選択される。K439EまたはS440Kであるさらなる変異を含むポリペプチドまたは抗体は、同一の変異を有するポリペプチドとオリゴマーを形成しない。理論に拘束されないが、K439EとS440Kは相補的な変異として見ることができ、したがって、K439E変異を含むFc領域は、K439E変異を含む別のFc領域とはFc-Fc相互作用を生じない。しかしながら、K439E変異を含むFc領域は、S440K変異を含む別のFc領域とFc-Fc相互作用を生じる。同じ状況がS440K変異を含むFc領域でもみられ、これは、別のS440K変異を含むFc領域とはFc-Fc相互作用を生じない。したがって、K439E変異を含むポリペプチドまたは抗体は、S440K変異を含むポリペプチドまたは抗体と交互パターンでオリゴマーを形成する。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)K439またはS440におけるさらなる変異、ただし、該さらなる変異がS440に存在するならば、第1の変異はS440に存在しないものとする。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)さらなるK439EまたはS440K変異、ただし、該さらなる変異がS440Kであるならば、第1の変異はS440に存在しないものとし;ここで、Fc領域はL234およびL235に対応する位置に野生型アミノ酸LおよびLを含む。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)E430に対応するアミノ酸位置に第1の変異を含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2のおよび該さらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択される。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)E430に対応するアミノ酸位置に第1の変異を含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2のおよび該さらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群から選択され;
ここで、Fc領域はL234およびL235に対応する位置に野生型アミノ酸LおよびLを含む。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)第1の変異と、(ii)第2の変異と、(ii)さらなる変異とを含み、これら変異は、
(i)E430G、E430S、E430F、およびE430T;
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択される。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)E345に対応するアミノ酸位置に第1の変異を含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2のおよび該さらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され;
ここで、Fc領域はL234とL235に対応する位置に野生型アミノ酸LとLを含む。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)第1の変異、(ii)第2の変異、および(iii)さらなる変異を含み、第1の変異、第2の変異、およびさらなる変異は、
(i)E345K、E345R、およびE345Y;
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択される。
本発明の一態様では、Fc領域は、(i)第1の変異、(ii)第2の変異、および(iii)さらなる変異を含み、第1の変異、第2の変異、およびさらなる変異は、
(i)S440WおよびS440Y;
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439E
からなる群より選択される。
本発明の一態様では、Fc領域は、ヒトIgG1内のK439EまたはS440K(EUナンバリングに従う)に対応する六量体化阻害変異であるさらなる変異を含む。すなわち、本発明の一態様では、Fc領域は、六量体化増強変異、例えばE430Gと、六量体化阻害変異、例えばK439Eとを含む。本発明の一態様では、Fc領域は、六量体化増強変異、例えばE345Kと、六量体化阻害変異、例えばK439Eとを含む。本発明の別の態様では、Fc領域は、六量体化増強変異、例えばE430Gと、六量体化阻害変異、例えばS440Kとを含む。本発明の一態様では、Fc領域は、六量体化増強変異、例えばE345Kと、六量体化阻害変異、例えばS440Kとを含む。これにより、K439E変異を含む抗体とS440K変異を含む抗体との組合せ間の排他的六量体化を可能にする態様が提供される。
本発明によるポリペプチドまたは抗体は少なくとも第1および第2の変異を有するが、上記のように、さらなる機能をポリペプチドまたは抗体に導入するためのさらなる変異も有し得る。一態様では、Fc領域は、最大で10個の変異、例えば9個の変異、例えば8個の変異、例えば7個の変異、例えば6個の変異、例えば5個の変異、例えば4個の変異、例えば3個の変異、または例えば2個の変異を含む。
これにより、本発明のポリペプチドまたは抗体が、さらなる特質を該ポリペプチドまたは抗体に導入するさらなる変異を有すること可能にする態様が提供される。さらに、さらなる変異はまた、Fc領域内のFc-Fc相互作用に関与しない位置ならびにFcエフェクター機能に関与しない位置におけるバリエーションを可能にする。さらに、さらなる変異は、対立遺伝子変異によるものであってもよい。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である親ポリペプチドまたは抗体と比べて少なくとも20%低減されたFcエフェクター機能を有する。すなわち、第1および第2の変異を有するポリペプチドまたは抗体において、第2の変異は、ポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を第1の変異のみを有する親ポリペプチドまたは抗体と比べて少なくとも20%低減させる効果を有する。本発明の別の態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の変異のみを有する親ポリペプチドまたは抗体と比べて少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%低減されたFcエフェクター機能を有する。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体はFcエフェクター機能を誘導しない。
本発明による一態様では、第1および第2の変異を有するポリペプチドのFcエフェクター機能または活性の低減は、同一の抗原結合領域と同じ第1の変異を有するFc領域とを有するがFc領域内に第2の変異のない親ポリペプチドと当該ポリペプチドを比較した場合であることが理解される。
本発明による別の態様では、第1および第2の変異を有するポリペプチドのFcエフェクター機能または活性の低減は、同一の抗原結合領域とFc領域とを有しており、Fc領域内に第1および第2の変異を有しない親ポリペプチド、すなわち野生型抗体と当該ポリペプチドを比較した場合であることが理解される。
本発明による一態様では、第2の変異は少なくとも1つのエフェクター機能を低減させる。本発明による一態様では、第2の変異は1つより多くのエフェクター機能を低減させる。本発明による一態様では、第2の変異はCDC活性を低減させる。本発明による一態様では、第2の変異はADCC活性を低減させる。別の態様では、第2の変異はCDCおよびADCC活性を低減させる。本発明による一態様では、第2の変異はFcγRIIIaシグナル伝達を低減させる。本発明によるさらなる一態様では、第2の変異は、CDC活性を低減させるがADCC活性またはFcγRIIIaシグナル伝達は低減させない。すなわち、本発明による一部の態様では、第2の変異は、1つまたは複数のエフェクター機能を低減させる一方、他のエフェクター機能に対する低減効果は有しない。本発明による一態様では、第2の変異はCDC活性を低減させるが、なお相当なADCC活性を保持していた。
本発明の一態様では、Fcエフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞介在性細胞傷害、補体活性化、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞介在性貪食、C1q結合、およびFcγR結合の群から選択される。一態様では、Fcエフェクター機能はFcγRIIIaシグナル伝達である。すなわち、本発明による第2の変異は、少なくとも1つのFcエフェクター機能を低減させることができる。
一部の第2の変異は1つより多くのエフェクター機能の低減を示す。CDC活性を低減させる特定の変異は、低減されたADCC活性および低減されたFcγRIIIa結合もまた特徴とした。かかる変異としては、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yを含む群から選択される変異が挙げられる。ところが、CDC活性を保持しているがFcγRIIIa結合を低減させ、ADCC活性を低減させる他の変異も見出された。かかる変異としては、P329Aを含む群のものが挙げられる。一部の第2の変異、例えばP329RおよびP329Kは、FcγRIa結合を示さなかった。一部の第2の変異、例えばP329GおよびP329Aは、FcγRIa結合に対する結合のいくらかの低減を示した。
これにより、低減されたFcエフェクター機能を有する新規なポリペプチドまたは抗体ベースの治療薬が提供される。また、本発明により、Fc-Fc増強ポリペプチドまたは抗体の、より選択的なFcエフェクター機能発揮能を提供する。
本発明の一態様では、ポリペプチドは、抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。一態様では、ポリペプチドは、単一特異性ポリペプチド、二重特異性ポリペプチド、または多重特異性ポリペプチドである。
本発明のポリペプチドは、天然の、例えばヒトのFcドメインを有する抗体に限定されず、本発明のもの以外の変異、例えば、グリコシル化に影響を及ぼす変異または抗体が二重特異性抗体になることを可能にする変異などを有する抗体であってもよい。用語「天然抗体」は、遺伝学的に導入された変異を全く含まない任意の抗体を意図する。したがって、天然に存在する修飾を含む抗体、例えば、異なるアロタイプは、本発明の意味における「天然抗体」であり、それにより親抗体として理解され得ることが理解されよう。かかる抗体は、本発明による1つまたは複数の変異のテンプレートとしての機能を果たし得、それにより本発明の変異体抗体が提供され得る。本発明のもの以外の変異を含む親抗体の一例は、IgG4様CH3領域を含む2つの抗体の半分子交換を促進させるために還元条件を使用し、したがって凝集物の形成が付随することなく二重特異性抗体を形成する、WO2011/131746(Genmab)に記載の二重特異性抗体である。親抗体の他の例としては、非限定的に、二重特異性抗体、例えばヘテロ二量体型二重特異性のもの:Triomab(Fresenius);二重特異性のIgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation);FcΔAdp(Regeneron);ノブ・イントゥ・ホール(Genentech);静電的ステアリング(electrostatic steering)(Amgen、Chugai、Oncomed);SEEDbody(Merck);Azymetric骨格(Zymeworks);mAb-Fv(Xencor);ならびにLUZ-Y(Genentech)が挙げられる。他の例示的な親抗体フォーマットとしては、非限定的に、野生型抗体、完全長抗体もしくはFc含有抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはその任意の組合せが挙げられる。
上記ポリペプチドまたは抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgD、IgM、またはIgAの任意のヒト抗体、任意で、完全長のヒト抗体、例えば完全長のヒトIgG1抗体であり得る。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、図22に開示したFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:1のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:2のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:3のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:4のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:5のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:6のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:7のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:8のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:9のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、SEQ ID NO:10のFcセグメントを含むFc領域を含み、このFcセグメントが、本明細書に開示の第1の変異、第2の変異、および/またはさらなる変異もしくは第3の変異をさらに含む。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1抗体、例えば、IgG1m(za)またはIgG1m(f)アロタイプである。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgD、IgM、IgAアイソタイプまたは混合アイソタイプであるFc領域を有する。すなわち、本発明によるポリペプチドまたは抗体のFc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgD、IgM、IgAアイソタイプまたは混合アイソタイプに対応する、Fc領域内に導入された少なくとも第1および第2の変異を有する。本発明の一態様では、Fc領域は、IgG1/IgG2、IgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、およびIgG3/IgG4の群から選択される混合アイソタイプである。混合アイソタイプでは、Fc領域は、1種類より多くのアイソタイプのアミノ酸配列で構成されている。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であるFc領域を有する。
本発明の好ましい一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、ヒトIgG1アイソタイプであるFc領域を有する。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、IgG1m(f)、IgG1m(a)、IgG1m(z)、IgG1m(x)アロタイプまたは混合アロタイプであるFc領域を有する。
本発明の一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)は、細胞外システインリッチドメインによる腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)のリガンドへの結合能を特徴とする一群のサイトカイン受容体である。TNF受容体は、原形質膜内で三量体型複合体を形成している。TNFRSFとしては、以下の29種類のタンパク質;TNFR1(Uniprot P19438)、FAS(Uniprot P25445)、DR3(Uniprot Q93038)、DR4(Uniprot O00220)、DR5(Uniprot O14763)、DR6(Uniprot O75509)、NGFR(Uniprot P08138)、EDAR(Uniprot Q9UNE0)、DcR1(Uniprot Q14798)、DcR2(Uniprot Q9UBN6)、DcR3(Uniprot O95407)、OPG(Uniprot O00300)、TROY(Uniprot Q92956)、XEDAR(Uniprot Q9HAV5)、LTbR(Uniprot P36941)、HVEM(Uniprot Q92956)、TWEAKR(Uniprot Q9NP84)、CD120b(Uniprot P20333)、OX40(Uniprot P43489)、CD40(Uniprot P25942)、CD27(Uniprot P26842)、CD30(Uniprot P28908)、4-1BB(Uniprot Q07011)、RANK(Uniprot Q9Y6Q6)、TACI(Uniprot O14836)、BLySR(Uniprot Q96RJ3)、BCMA(Uniprot Q02223)、GITR(Uniprot Q9Y5U5)、RELT(Uniprot Q969Z4)のリストが挙げられる。
一部のTNFRSFはアポトーシスに関与しており、細胞内デスドメイン、例えばFAS、DR4、DR5、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、およびNGFRを含む。他のTNFRSFは他のシグナル伝達経路、例えば増殖、生存、および分化に関与し、例えばDcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、RELTである。TNF受容体は、哺乳動物の多種多様な組織、特に白血球において発現される。
一態様では、抗原結合領域はTNFR-SFのメンバーに結合する。一態様では、抗原結合領域は、細胞内デスドメインを含まないTNFR-SFのメンバーに結合する。一態様では、TNFR-SFは、OX40、CD40、CD30、CD27、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、RELT、およびGITRの群から選択される。一態様では、TNFR-SFは、FAS、DR4、DR4、TNFR1、DR6、DR3、EDAR、およびNGFRの群より選択される。
本発明によるポリペプチドまたは抗体は任意の標的に結合し得、本発明によるかかる標的または抗原は、TNFR1、FAS、DR3、DR4、DR5、DR6、NGFR、EDAR、DcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、RELTを例として非限定的に含む。
多重特異性抗体
一局面において、本発明により、ヒトIgGの第1のFc領域および第1の抗原結合領域、ヒトIgGの第2のFc領域および第2の抗原結合領域を含むポリペプチドまたは抗体であって、第1および第2のFc領域が、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下の位置に対応する(i)第1の変異および(ii)第2の変異および(iii)第3の変異:
(i)E430、E345、またはS440における第1の変異;
(ii)K322またはP329における第2の変異;
(iii)F405またはK409における第3の変異
を含み;
ここで、第3の変異は、第1のFc領域が変異を位置F405に有するならば第2のFc領域は変異をK409に有するように(逆も同様)、第1のFc領域および第2のFc領域と異なる、
ポリペプチドまたは抗体を提供する。
これにより、(iii)第3の変異が第1と第2のFc領域で同じ位置に存在しないため、第1のFc領域と第2のFc領域が同一でない態様が提供される。
本明細書に記載の本発明の任意の態様は、後述する多重特異性抗体の局面において使用され得ることを理解されよう。
したがって、一態様では、本発明の変異体は、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体から選択される抗体である。
特定の一態様では、二重特異性抗体は、WO 2011/131746に記載のフォーマットを有する。
別の局面において、本発明は、第1の抗原結合領域と、第2の抗原結合領域と、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3重鎖および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3重鎖を含むFc領域とを含む二重特異性ポリペプチドまたは抗体であるポリペプチドまたは抗体であって、第1および第2の抗原結合領域が同じまたは異なる抗原上の異なるエピトープに結合し、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(i)ヒトIgG1重鎖のFc領域におけるE430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440Y、およびS440Wに対応する群から選択される第1の変異、
(ii)E322E、P329R、P329K、P329Dに対応する群から選択される第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、ヒトIgG1のFc領域におけるK409、T366、L368、K370、D399、F405、およびY407に対応するものから選択されるアミノ酸残基に第3の変異を含み;
第2のCH2-CH3重鎖が、ヒトIgG1のFc領域におけるF405、T366、L368、K370、D399、Y407、およびK409に対応するものから選択されるアミノ酸残基に第3の変異を含み、第1のポリペプチドにおける第3の変異は第2のポリペプチドにおける該さらなる変異と異なっている、
ポリペプチドまたは抗体に関する。
本発明の二重特異性抗体は、特定のフォーマットに限定されず、本明細書に記載の任意のものであり得る。
本発明の特定の一態様では、(i)第1のCH2-CH3重鎖が、K409に対応するアミノ酸残基における第3の変異、例えばK409Rを含み;(ii)第2のCH2-CH3重鎖が、F405に対応するアミノ酸残基における第3の変異、例えばF405Lを含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(i)E430Gに対応する第1の変異、
(ii)E322E、K322D、K322N、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329f、P329G、P329I、P329L、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、P329Yからなる群より選択される第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(iii)E430Gに対応する第1の変異、
(iv)E322Eに対応する第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(i)E430Gに対応する第1の変異、
(ii)P329Rに対応する第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(i)E430Gに対応する第1の変異、
(ii)P329Kに対応する第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(i)E430Gに対応する第1の変異、
(ii)P329Dに対応する第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のFc領域が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(i)E345Kに対応する第1の変異、
(ii)E322E、K322D、K322N、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329f、P329G、P329I、P329L、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、P329Yからなる群より選択される第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(iii)E345Kに対応する第1の変異、
(iv)E322Eに対応する第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(iii)E345Kに対応する第1の変異、
(iv)P329Rに対応する第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(iii)E345Kに対応する群から選択される第1の変異、
(iv)P329Kに対応する群から選択される第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
本発明の一態様では、第1および/または第2のCH2-CH3重鎖が、
(iii)E345Kに対応する群から選択される第1の変異、
(iv)P329Dに対応する群から選択される第2の変異
を含み、
第1のCH2-CH3重鎖が、K409Rに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含み;第2のCH2-CH3重鎖が、F405Lに対応するアミノ酸残基における第3の変異を含む。
ポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能を低減させる方法
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3領域を含む第2のFc領域と第2の抗原結合領域とを有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
一局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能を低減させる方法であって、該Fc領域が、CH2およびCH3ドメインを含み、該Fc領域が、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の(i)位置E430、E345、またはS440に対応する第1の変異を含み、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の(ii)位置K322またはP329に対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。位置E430、E345、またはS440のうちの1つに存在する本発明による第1の変異は、ポリペプチドまたは抗体のFc-Fc相互作用の増強という効果を導入する。位置K322またはP329のうちの1つに存在する本発明による第2の変異は、上記ポリペプチドまたは抗体におけるFcエフェクター機能の低減という効果を導入する。
本発明の一態様では、第1の変異は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440W、およびS440Yからなる群より選択される。これにより、第1の変異によりFc-Fc相互作用が増強される態様が提供される。
本発明の好ましい一態様では、第1の変異はE430GまたはE345Kから選択される。
一態様では、本発明は、第2の変異を導入することにより、第1のFc-Fc増強変異を有するポリペプチドまたは抗体のFcエフェクター機能または活性を低減させる方法に関する。Fcエフェクター機能を低減させる方法は、ポリペプチドまたは抗体を、同一の抗原結合領域およびFc領域内に同一の第1の変異を有するFc領域を有するがFc領域内に第2の変異のない親ポリペプチドまたは抗体と比較した場合で判断されることを理解されたい。一部の態様では、Fcエフェクター機能または活性を低減させるための方法により、エフェクター機能は、同一の抗原結合領域とFc領域を有するがFc領域内に第1および第2の変異を有しない親ポリペプチドまたは抗体のレベルより低いか、または同等のレベルまで低下する。
本発明の一態様では、第2の変異は、K322E、K322D、K322N、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yからなる群より選択される。
本発明の一態様では、本方法は、Fcエフェクター機能、例えばCDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させることに関し、K322E、K322D、およびK322Nの群から選択される第2の変異を導入する工程を含む。
本発明の一態様では、本方法は、Fcエフェクター機能、例えばADCC、ADCP、FcγR結合、CDC、CDCC、および/またはC1q結合を低減させることに関し、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Yの群から選択される第2の変異を導入する工程を含む。
本発明の好ましい一態様では、第2の変異は、K322E、P329R、P329K、およびP329Dの群から選択される。
本発明の一態様では、第2の変異はP329位に存在し、ただし、第2の変異はP329Aでないものとする。
一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、E322Eに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、E322Dに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、E322Nに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Hに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Kに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Rに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Dに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Eに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Mに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Fに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Gに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Iに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Lに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Nに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Qに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Sに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Tに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Vに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Wに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Yに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E430Gに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、E322Eに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、E322Dに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、E322Nに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Hに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Kに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Rに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Dに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Eに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Mに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Fに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Gに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Iに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Lに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Nに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Qに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Sに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Tに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Vに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Wに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、P329Yに対応する第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、E345Kに対応する第1の変異をFc領域に含むポリペプチドまたは抗体のエフェクター機能を低減させる方法であって、K322E、P329R、P329K、およびP329Dからなる群より選択される第2の変異を導入する工程を含む方法に関する。
一態様では、本発明は、Fc領域が1つまたは複数のさらなる変異をCH3ドメイン内に含む方法に関する。
一態様では、本発明は、Fc領域が、さらなる変異を、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の位置S440またはK439のうちの1つに対応するCH3ドメイン内に含む方法に関する。本発明の一態様では、Fc領域が、さらなる変異を、位置S440またはK439のうちの1つに対応するCH3ドメイン内に含むが、ただし、第1の変異がS440に存在しているならば該さらなる変異は位置S440に存在しないものとする。本発明による第1および第2の変異ならびにS440位におけるさらなる変異、例えばS440Kを含むポリペプチドまたは抗体は、S440位に変異、例えばS440Kを含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。本発明による第1および第2の変異ならびにK439位におけるさらなる変異、例えばK439Eを含むポリペプチドまたは抗体は、K439位に変異、例えばK439Eを含むポリペプチドまたは抗体とオリゴマーを形成しない。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体がK439E変異を含み、第2のポリペプチドまたは抗体がS440K変異を含むポリペプチドまたは抗体間のオリゴマーの形成を可能にする方法が提供される。このようにして、オリゴマー、例えば六量体などが、一部の特定のパターンの第1および第2のポリペプチドにおいて形成されることが強いられ得る。これは、ポリペプチドが異なる標的またはエピトープに結合し、オリゴマーを、このような異なる標的またはエピトープの組合せにおいて形成すべきである方法において重要であり得る。
一態様では、本発明は、該さらなる変異がS440KまたはK439Eから選択される方法に関する。
一態様では、本発明は、Fcエフェクター機能を低減させる方法であって、Fcエフェクター機能が、同一の第1の変異を有するが第2の変異は有しないポリペプチドと同一である親ポリペプチドまたは親抗体と比べて少なくとも20%低下する方法に関する。本発明の別の態様では、ポリペプチドまたは抗体は、第1の変異のみを有する親ポリペプチドまたは抗体と比べて少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%低減されたFcエフェクター機能を有する。
一態様では、本発明は、Fcエフェクター機能を低減させる方法であって、Fcエフェクター機能が、補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞介在性細胞傷害(CDCC)、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞介在性貪食(ADCP)、C1q結合、およびFcγR結合の群から選択される方法に関する。
一態様では、本発明は、ADCCを低減させる方法であって、ADCCが、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
一態様では、本発明は、CDCを低減させる方法であって、CDCが、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
一態様では、本発明は、C1q結合を低減させる方法であって、C1q結合が、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
一態様では、本発明は、Fcガンマ受容体結合を低減させる方法であって、Fcガンマ受容体結合が、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
一態様では、本発明は、Fcガンマ受容体結合を低減させる方法であって、Fcガンマ受容体結合が、第1および第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
好ましい一態様では、本発明は、Fcガンマ受容体I結合を低減させる方法であって、Fcガンマ受容体I結合が、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
好ましい一態様では、本発明は、Fcガンマ受容体I結合を低減させる方法であって、Fcガンマ受容体I結合が、第1および第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%低減される方法に関する。
好ましい一態様では、本発明は、Fcガンマ受容体I結合を低減させる方法であって、Fcガンマ受容体I結合が、第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%または少なくとも100%低減される方法に関する。
好ましい一態様では、本発明は、Fcガンマ受容体I結合を低減させる方法であって、Fcガンマ受容体I結合が、第1および第2の変異を含まないこと以外は当該抗体と同一である比較抗体と比べて少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、または少なくとも100%低減される方法に関する。したがって、本方法は、Fcガンマ受容体I結合を、野生型Fc領域と比べて低減されたレベルまで低減させることを含む。
組成物
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、第1の抗原結合領域、第2の抗原結合領域、および免疫グロブリンの第1のCH2-CH3重鎖と免疫グロブリンの第2のCH2-CH3重鎖とを含むFc領域を含む多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体およびその異型形態を含む組成物に関する。具体的な局面および態様を以下に記載する。さらに、かかるポリペプチドまたは抗体は、本明細書に記載の任意の方法に従って得ることができる。
一局面において、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1種類のポリペプチドまたは抗体を含む組成物に関する。
本発明の一態様では、組成物は、本明細書に記載の任意の局面または態様による1種または複数種のポリペプチドまたは抗体を含む。
本発明の一態様では、組成物は、本明細書における任意の局面または態様に記載の第1のポリペプチドまたは抗体および第2のポリペプチドまたは抗体を含む。
本発明の一態様では、組成物は、第1および第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のポリペプチドまたは抗体が、
(i)Fc-Fc増強変異である第1の変異;
(ii)1つまたは複数のFcエフェクター機能を阻害する第2の変異;
(iii)さらなる変異であって、同一のさらなる変異を有するFc領域間のオリゴマー化を抑制する変異、ここで、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は同じさらなる変異を含むものでない
を含むFc領域を含む。
本発明の一態様では、組成物は、第1のポリペプチドまたは抗体と第2のポリペプチドまたは抗体とを含み、第1および第2のポリペプチドまたは抗体が、i)第1の変異、ii)第2の変異、およびiii)さらなる変異を含み、ここで、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は同じさらなる変異を含むものでない。したがって、組成物は、第1のFc領域を含む第1のポリペプチドまたは抗体と、第2のFc領域を含む第2のポリペプチドまたは抗体とを含む。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異が、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)K439またはS440におけるさらなる変異、ただし、該さらなる変異がS440に存在するならば、第1の変異はS440に存在しないものとし、第1および第2のFc領域は、さらなる変異を同じアミノ酸位置に含まないものとする。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)第1のFc領域内のK439におけるさらなる変異および第2のFc領域内のS440におけるさらなる変異、ただし、該さらなる変異がS440に存在するならば、第1の変異はS440に存在しないものとする。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)第2のFc領域内のK439におけるさらなる変異および第1のFc領域内のS440におけるさらなる変異、ただし、該さらなる変異がS440に存在するならば、第1の変異はS440に存在しないものとする。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)第1のFc領域内のさらなる変異K439Eおよび第2のFc領域内のさらなる変異S440K。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が(i)第1の変異、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)第1のFc領域内のさらなる変異S440Kおよび第2のFc領域内のさらなる変異E439E。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が(i)第1の変異、(iii)さらなる変異を含み、第1および/または第2のFc領域は(ii)第2の変異を含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(i)第1の変異E430、E345、またはS440、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする;
(ii)E322またはP329における第2の変異;
(iii)第1のFc領域内のさらなる変異K439Eおよび第2のFc領域内のさらなる変異S440K。
これにより、第1および第2のポリペプチドまたは抗体の両方が、低減されたFcエフェクター機能を有するか、または第1のポリペプチドのみもしくは第2のポリペプチドのみが、低減されたFcエフェクター機能を有するかのいずれかである態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が、(i)E430に対応するアミノ酸位置に第1の変異を含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が、(i)E345に対応するアミノ酸位置に第1の変異を含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E430Gを含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E430Gを含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、P329K、P329R、P329D;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E430Gおよび(ii)第2の変異K322Eを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E430Gおよび(ii)第2の変異P329Kを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E430Gおよび(ii)第2の変異P329Rを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E430Gおよび(ii)第2の変異P329Dを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Kを含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Kを含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、P329K、P329R、P329D;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Kおよび(ii)第2の変異K322Eを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Kおよび(ii)第2の変異P329Kを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Kおよび(ii)第2の変異P329Rを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Kおよび(ii)第2の変異P329Dを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Rを含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、K322D、K322N、P329A、P329H、P329K、P329R、P329D、P329E、P329F、P329G、P329I、P329L、P329M、P329N、P329Q、P329S、P329T、P329V、P329W、およびP329Y;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Rを含み、かつ(ii)第2の変異および(iii)さらなる変異を含み、第2の変異およびさらなる変異は、
(ii)K322E、P329K、P329R、P329D;
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Rおよび(ii)第2の変異K322Eを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Rおよび(ii)第2の変異P329Kを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Rおよび(ii)第2の変異P329Rを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1の変異E345Rおよび(ii)第2の変異P329Dを含み、かつ(iii)さらなる変異を含み、このさらなる変異は、
(iii)K439EおよびS440K
からなる群より選択され、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでない。
本発明の別の態様では、組成物は、第1および第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のポリペプチドまたは抗体が、
(i)Fc-Fc増強変異である第1の変異;
(ii)さらなる変異であって、同一のさらなる変異を有するFc領域間のオリゴマー化を抑制する変異、ここで、第1および第2のポリペプチドまたは抗体は同じさらなる変異を含むものでない
を含むFc領域を含み、
(iii)第1または第2のいずれかのFc領域が第2の変異を含む。したがって、一部の態様では、第1のポリペプチドもしくは抗体または第2のポリペプチドもしくは抗体のみが、Fcエフェクター機能を低減させる第2の変異を含む。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1および第2のFc領域が、(i)E430、E345、またはS440からなる群より選択されるアミノ酸位置における第1の変異、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする、(ii)第2の変異、(iii)さらなる変異Eを含み、これら変異は、EUナンバリングに従うヒトIgG1内の以下のアミノ酸位置に対応する:
(iii)さらなるK439EまたはS440K変異、ここで、第1および第2のFc領域は同じさらなる変異を含むものでなく、第1の変異がS440YまたはS440Wであるならば、該さらなる変異はS440Kでない;
(ii)第1または第2のいずれかのFc領域がE322またはP329に第2の変異を含むが、両方を含むことはない。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)E430、E345、またはS440からなる群より選択されるアミノ酸位置における第1の変異、ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする、およびii)E322およびP329の群から選択されるアミノ酸位置における第2の変異、ならびにiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)E430およびE345からなる群より選択されるアミノ酸位置における第1の変異、ならびにさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)E430またはE345からなる群より選択されるアミノ酸位置における第1の変異、ii)E322およびP329の群から選択されるアミノ酸位置における第2の変異、ならびにiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)E430、E345、またはS440からなる群より選択されるアミノ酸位置における第1の変異(ただし、S440における変異はS440YまたはS440Wであるものとする)、およびさらなる変異K439Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異E322E、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異E322E、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異P329R、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異P329R、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異P329K、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異P329K、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異P329D、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE430G、ii)第2の変異P329D、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E430G、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異E322E、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異E322E、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異P329R、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異P329R、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異P329K、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異P329K、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異P329D、およびiii)さらなる変異K439Eを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異S440Kを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、第1の抗原結合領域と第1のFc領域とを含む第1のポリペプチドまたは抗体、第2の抗原結合領域と第2のFc領域とを含む第2のポリペプチドまたは抗体を含み、第1のFc領域が、(i)第1のE345K、ii)第2の変異P329D、およびiii)さらなる変異S440Kを含み;第2のFc領域が、i)第1の変異E345K、およびさらなる変異K322Eを含む。これにより、第1のポリペプチドまたは抗体のみが、低減されたFcエフェクター機能を有する態様が提供される。
本発明の一態様では、組成物は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFR-SF)のメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
本発明の一態様では、組成物は、TNFR1、FAS、DR3、DR4、DR5、DR6、NGFR、およびEDARからなる群より選択される細胞内デスドメインを有するTNFR-SFのメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
本発明の一態様では、組成物は、DcR1、DcR2、DcR3、OPG、TROY、XEDAR、LTbR、HVEM、TWEAKR、CD120b、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、RELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しないTNFR-SFのメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
本発明の一態様では、組成物は、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる免疫活性化因子の群に属するTNFR-SFのメンバーに対する結合能を有するポリペプチドまたは抗体を含む。
本発明の一態様では、組成物はポリペプチドまたは抗体を含み、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドが、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しない1つまたは複数のTNFR-SFのメンバー上の異なるエピトープに結合する。
本発明の一態様では、組成物はポリペプチドまたは抗体を含み、第1のポリペプチドの、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しない1つのTNFR-SFのメンバーに対する結合は、第2の抗体の、OX40、CD40、CD27、CD30、4-1BB、RANK、TACI、BLySR、BCMA、GITR、およびRELTからなる群より選択される細胞内デスドメインを有しない1つのTNFR-SFのメンバーに対する結合である結合をブロックしない。
本発明の一態様では、第1のポリペプチドまたは抗体と第2のポリペプチドまたは抗体を含む組成物は、組成物中で1:49~49:1のモル比、例えば1:1のモル比、1:2のモル比、1:3のモル比、1:4のモル比、1:5のモル比、1:6のモル比、1:7のモル比、1:8のモル比、1:9のモル比、1:10のモル比、1:15のモル比、1:20のモル比、1:25のモル比、1:30のモル比、1:35のモル比、1:40のモル比、1:45のモル比、1:50のモル比、50:1のモル比、45:1のモル比、40:1のモル比、35:1のモル比、30:1のモル比、25:1のモル比、20:1のモル比、15:1のモル比、10:1のモル比、9:1のモル比、8:1のモル比、7:1のモル比、6:1のモル比、5:1のモル比、4:1のモル比、3:1のモル比、2:1のモル比で存在している。
本発明の一態様では、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドおよび/または任意のさらなるポリペプチドを含む組成物は、組成物中で等モル比で存在している。
本発明の一態様では、任意の局面または態様による組成物は、薬学的組成物である。
治療用途
本発明の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、二重特異性抗体、または組成物は、医薬として、すなわち治療用途のために使用され得る。
一局面において、本発明により、医薬としての使用のための、本明細書に開示の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を提供する。
別の局面において、本発明により、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患の処置における使用のための、本明細書に開示の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を提供する。
別の局面において、本発明は、有効量の本明細書に開示の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を個体に投与する工程を含む、疾患を有する個体を処置する方法に関する。
本発明の一態様では、疾患は、がん、自己免疫疾患、炎症性疾患、および感染性疾患の群から選択される。
本発明の一態様では、本明細書に開示の任意の局面または態様による方法は、さらなる治療剤をさらに投与することに関する。
本発明の一態様では、上記さらなる治療剤は、化学療法薬(非限定的にパクリタキセル、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、ペメトレキセドを含む)、キナーゼ阻害薬(非限定的にソラフェニブ、スニチニブ、もしくはエベロリムスを含む)、アポトーシス調節剤(非限定的に組換えヒトTRAILもしくはビリナパントを含む)、RAS阻害薬、プロテアソーム阻害薬(非限定的にボルテゾミブを含む)、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬(非限定的にボリノスタットを含む)、栄養補助食品、サイトカイン(非限定的にIFN-γ)、抗体または抗体模倣物(非限定的に抗EGFR、抗IGF-1R、抗VEGF、抗CD20、抗CD38、抗HER2、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4、抗CD40、抗CD137、抗GITR抗体および抗体模倣物を含む)、抗体-薬物コンジュゲートからなる群より選択される1種または複数種の抗がん剤である。
パーツキット(kit-of-parts)
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3領域を含む第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドまたは抗体を含む、治療において同時、別々、または逐次の使用のためのパーツキットに関する。さらに、かかる変異体は、本明細書に記載の任意の方法に従って得ることができる。
一局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を含むパーツキットであって、ポリペプチド、抗体、または組成物が、1つまたは複数の容器内、例えばバイアル内に存在しているパーツキットに関する。
本発明の一態様では、パーツキットは、治療において同時、別々、または逐次の使用のための、本明細書に記載の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、または組成物を含む。
別の局面において、本発明は、診断方法における使用のための、本明細書に記載の態様のいずれかによるポリペプチド、抗体、組成物、またはパーツキットの使用に関する。
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の態様によるポリペプチド、抗体、組成物、またはパーツキットを、ヒトまたは他の哺乳動物の身体の少なくとも一部分に投与する工程を含む、診断方法に関する。
別の局面において、本発明は、ヒトまたは他の哺乳動物の身体の少なくとも一部分のイメージングにおける、本明細書に記載の態様のいずれかによるポリペプチド、抗体、組成物、またはパーツキットの使用に関する。
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の任意の態様による変異体、組成物、またはパーツキットを投与する工程を含む、ヒトまたは他の哺乳動物の身体の少なくとも一部分のイメージングのための方法に関する。
組み合わせ
さらに、本発明により、上記の任意の局面または態様による任意のポリペプチドまたは抗体の調製物、すなわち、複数のポリペプチドまたは抗体を含む調製物を提供する。また、本発明により、上記の任意の局面または態様によるポリペプチドまたは抗体を含む組成物、例えば薬学的組成物を提供する。また、本発明により、医薬としての、任意のかかるポリペプチドもしくは抗体、調製物、または組成物の使用を提供する。
また、本発明により、1種類のポリペプチドまたは抗体が少なくとも本発明による第1および第2の変異を含むポリペプチドまたは抗体の組み合わせ、ならびにかかる変異体の組み合わせの調製物および薬学的組成物ならびにその医薬としての使用を提供する。好ましくは、2種類のポリペプチドまたは抗体が、同じ抗原、または同じ細胞、細胞膜、ビリオン、および/または他の粒子の表面上に典型的に発現される異なる抗原に結合する。
コンジュゲート
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3領域を含む第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
一局面において、本発明は、変異体が薬物、毒素、または放射性標識にコンジュゲートされているポリペプチドまたは抗体、例えば変異体がリンカーを介して毒素にコンジュゲートされているポリペプチドまたは抗体に関する。
一態様では、変異体は融合タンパク質の一部である。
別の局面において、本発明のポリペプチドまたは抗体は、C末端で別の分子、例えば毒素または標識にコンジュゲートされているものでない。一態様では、変異体は別の分子に別の部位で、典型的には、オリゴマー形成に支障がない部位でコンジュゲートされている。例えば、抗体変異体は他の部位で、毒素(例えば、放射性同位体)、プロドラッグ、または薬物からなる群より選択される化合物に連結されていてもよい。かかる化合物は、例えばがん治療において標的細胞をより有効に死滅させ得る。したがって、得られる変異体はイムノコンジュゲートである。
したがって、さらなる一局面において、本発明により、1つまたは複数の治療性部分、例えば細胞毒素、化学療法薬、サイトカイン、免疫抑制薬、および/または放射性同位体に連結またはコンジュゲートされた抗体を提供する。かかるコンジュゲートを本明細書において「イムノコンジュゲート」または「薬物コンジュゲート」と称する。1つまたは複数の細胞毒素を含むイムノコンジュゲートは「イムノトキシン」と称される。
細胞毒素または細胞傷害剤としては、細胞に対して有害である(例えば、死滅させる)任意の作用物質が挙げられる。本発明のイムノコンジュゲートを形成するための好適な治療剤としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、マイタンシンまたはそのアナログもしくは誘導体、エンジイン抗腫瘍抗生物質、例えば、ネオカルチノスタチン、カリケアミシン、エスペラミシン、ダイネミシン、リダマイシン、ケダルシジンまたはそのアナログもしくは誘導体、アントラサイクリン、ミトザントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシン、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えばカルボプラチン;ならびにデュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、CC-1065(別名ラケルマイシン(rachelmycin))、またはCC-1065のアナログもしくは誘導体)、ドラスタチン、ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン(PDB)またはそのアナログ、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトザントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC))、抗有糸分裂剤(例えば、チューブリン阻害薬)、例えば、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、またはドラスタチン10の他のアナログもしくは誘導体;ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、例えば、ヒドロキサム酸系のトリコスタチンA、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット、LAQ824、およびパノビノスタットならびにベンズアミド系のエンチノスタット、CI994、モセチノスタットおよび脂肪族酸化合物、例えば、フェニルブチレートおよびバルプロ酸、プロテアソーム阻害薬、例えば、ダノプレビル、ボルテゾミブ、アマトキシン、例えば、α-アマンチン、ジフテリア毒素および関連分子(例えば、ジフテリアA鎖およびその活性断片ならびにハイブリッド分子);リシン毒素(例えば、リシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素)、コレラ毒素、志賀様毒素(SLT-I、SLT-II、SLT-IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズBowman-Birk型プロテアーゼ阻害薬、シュードモナス外毒素、アロリン、サポリン、モデシン、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害薬、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害薬、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、およびエノマイシン(enomycin)毒素が挙げられる。他の好適なコンジュゲート型分子としては、抗菌/溶解性ペプチド、例えばCLIP、マガイニン2、メリチン、セクロピン、およびP18;リボヌクレアーゼ(RNase)、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ポークウィード抗ウイルスタンパク質、ジフテリア毒素、および緑膿菌(Pseudomonas)内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al., Cell 47, 641(1986)およびGoldenberg, Calif.A Cancer Journal for Clinicians 44, 43(1994)を参照のこと。本明細書の別の箇所に記載の本発明の抗体と併用して投与され得る治療剤、例えば、抗がん性のサイトカインまたはケモカインなどもまた、本発明の抗体とのコンジュゲーションに有用な治療性部分の候補である。
一態様では、本発明の薬物コンジュゲートは、アウリスタチンまたはアウリスタチンペプチドアナログおよび誘導体(US5635483;US5780588)にコンジュゲートされた本明細書に開示の抗体を含む。アウリスタチンは、微小管ダイナミクス、GTP加水分解、ならびに核および細胞の分裂に干渉し(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580-3584)、抗がん(US5663149)および抗真菌活性(Pettit et al., (1998)Antimicrob.Agents and Chemother.42:2961-2965)を有することが示されている。アウリスタチン薬物部分は、リンカーを介して、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端またはC(末端)で抗体に結合され得る。
例示的なアウリスタチン態様としては、Senter et al., Proceedings of the American Association for Cancer Research.Volume 45, abstract number 623, presented March 28, 2004に開示され、US 2005/0238649)に記載されているN末端結合型モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDFが挙げられる。
例示的なアウリスタチン態様はMMAE(モノメチルアウリスタチンE)である。別の例示的なアウリスタチン態様はMMAF(モノメチルアウリスタチンF)である。
一態様では、本発明の抗体は、コンジュゲート型の核酸または核酸会合分子を含む。かかる一態様では、コンジュゲート型の核酸は、細胞傷害性リボヌクレアーゼ、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えば、siRNA分子)、または免疫賦活性核酸(例えば、免疫賦活性CpGモチーフ含有DNA分子)である。別の態様では、本発明の抗体はアプタマーまたはリボザイムにコンジュゲートされている。
一態様では、1つまたは複数の放射性標識されたアミノ酸を含む抗体を提供する。放射性標識された変異体は、診断目的および治療目的の両方に使用され得る(放射性標識分子とのコンジュゲーションは考えられ得る別の特質である)。ポリペプチド用の標識の非限定的な例としては、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、および125I、131I、および186Reが挙げられる。放射性標識されたアミノ酸および関連ペプチド誘導体を調製するための方法は当技術分野において公知である(例えば、Junghans et al., in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686(2nd Ed., Chafner and Longo, eds., Lippincott Raven(1996)を参照のこと)ならびにU.S.4,681,581、U.S.4,735,210、U.S.5,101,827、U.S.5,102,990(US RE35,500)、U.S.5,648,471およびU.S.5,697,902。例えば、放射性同位体はクロラミン-T法によってコンジュゲートされ得る。
一態様では、本発明のポリペプチドまたは抗体は、放射性同位体または放射性同位体含有キレートにコンジュゲートされる。例えば、当該変異体は、当該抗体が放射性同位体と錯体形成することを可能にするキレート剤リンカー、例えば、DOTA、DTPA、またはチウキセタンにコンジュゲートされ得る。また、あるいは代替的に、変異体に、1つまたは複数の放射性標識されたアミノ酸または他の放射性標識分子を含めるか、またはこれらにコンジュゲートさせてもよい。放射性標識された変異体は、診断目的および治療目的の両方に使用され得る。一態様では、本発明の変異体はアルファ放射体にコンジュゲートされる。放射性同位体の非限定的な例としては、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、111In、131I、186Re、213Bs、225Acおよび227Thが挙げられる。
一態様では、本発明のポリペプチドまたは抗体は、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα、IFNβ、IFNγ、GM-CSF、CD40L、Flt3 リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、およびTNFαからなる群より選択されるサイトカインにコンジュゲートされ得る。
また、本発明のポリペプチドまたは抗体を、例えばその循環半減期を長くするために、ポリマーとの共有結合コンジュゲーションによって化学修飾してもよい。例示的なポリマーおよびこれをペプチドに結合させるための方法は、例えば、US 4,766,106、US 4,179,337、US 4,495,285およびUS 4,609,546に例示されている。さらなるポリマーとしては、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000の分子量を有するPEG)が挙げられる。
本発明のポリペプチドまたは抗体を1つまたは複数のコンジュゲート型分子にコンジュゲートさせるための当技術分野において公知の任意の方法、例えば、上記のもの、例えば、Hunter et al., Nature 144, 945(1962)、David et al., Biochemistry 13, 1014(1974)、Pain et al., J.Immunol.Meth.40, 219(1981)およびNygren, J.Histochem.and Cytochem.30, 407(1982)に記載の方法が使用され得る。かかる変異体は、その他の部分を変異体またはその断片(例えば、抗体のH鎖またはL鎖)のN末端側またはC末端側に化学的にコンジュゲートさせることで作製され得る(例えば、Antibody Engineering Handbook, Osamu Kanemitsu編集, Chijin Shokan出版(1994)を参照のこと)。また、かかるコンジュゲート型変異体の誘導体は、適切な場合は、内部の残基または糖鎖におけるコンジュゲーションによっても作製され得る。
上記作用物質は、直接または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたは抗体にカップリングされ得る。第2の作用物質の間接的カップリングの一例は、二重特異性抗体におけるスペーサーまたはリンカー部分を介したシステインまたはリジン残基とのカップリングである。一態様では、ポリペプチドまたは抗体は、インビボで治療用薬物へと活性化され得るプロドラッグ分子に、スペーサーまたはリンカーを介してコンジュゲートされる。一部の態様では、リンカーは、リンカーの切断によって薬物単位が抗体から細胞内環境に放出されるように細胞内条件下で切断性である。一部の態様では、リンカーは、細胞内環境内(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断性因子によって切断性である。例えば、スペーサーまたはリンカーは、腫瘍細胞結合酵素または他の腫瘍特異的条件によって切断性であり得、それにより活性薬物が生じる。かかるプロドラッグ技術およびリンカーの例は、WO02083180、WO2004043493、WO2007018431、WO2007089149、WO2009017394およびWO201062171(Syntarga BV, et al.による)に記載されている。また、好適な抗体-プロドラッグ技術およびデュオカルマイシンアナログは米国特許第6,989,452号(Medarex)において見出され、参照により本明細書に組み入れられる。また、あるいは代替的に、リンカーは、例えば、細胞内のペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素、例えば非限定的にリソソームまたはエンドソームのプロテアーゼによって切断されるペプチジルリンカーであってもよい。一部の態様では、ペプチジルリンカーは少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断剤としてはカテプシンBおよびDならびにプラスミンが挙げられ、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解し、標的細胞内部で活性薬物の放出をもたらすことが知られている(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照のこと)。具体的な一態様では、細胞内プロテアーゼによって切断性のペプチジルリンカーはVal-Cit(バリン-シトルリン)リンカーまたはPhe-Lys(フェニルアラニン-リジン)リンカーである(例えば、US6214345参照、これには、Val-Citリンカーを有するドキソルビシンの合成およびPhe-Lysリンカーの異なる例が記載されている)。Val-CitおよびPhe-Lysリンカーの構造の例としては、非限定的に、後述するMC-vc-PAB、MC-vc-GABA、MC-Phe-Lys-PAB、またはMC-Phe-Lys-GABAが挙げられ、ここで、MCはマレイミドカプロイルの略号であり、vcはVal-Citの略号であり、PABはp-アミノベンジルカルバメートの略号であり、GABAはγ-アミノ酪酸の略号である。治療剤のタンパク質分解性細胞内放出の使用の利点は、作用物質が典型的にはコンジュゲートされると弱力化され、コンジュゲートの血清安定性が典型的には高くなることである。
また別の態様では、リンカー単位は切断性でなく、薬物は抗体の分解によって放出される(US 2005/0238649参照)。典型的には、かかるリンカーは細胞外環境に実質的に感受性でない。本明細書で用いる場合、「細胞外環境に実質的に感受性でない」とは、リンカーとの関連において、変異体抗体薬物コンジュゲート化合物が細胞外環境(例えば、血漿)に存在する場合に、変異体抗体薬物コンジュゲート化合物の試料中、リンカーの20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、さらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下が切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に実質的に感受性でないかどうかは、例えば、変異体抗体薬物コンジュゲート化合物を血漿とともに所定の時間(例えば、2、4、8、16、または24時間)インキュベートし、次いで、血漿中に存在する遊離薬物の量を定量することにより測定され得る。MMAEまたはMMAFおよび種々のリンカー成分を含む例示的な態様は以下の構造を有する(Abは抗体を意味し、pは薬物負荷(または抗体1分子あたりの細胞増殖抑制薬もしくは細胞傷害薬の平均数)を表し、1~約8であり、例えば、pは4~6、例えば3~5であり得るか、あるいはpは1、2、3、4、5、6、7、または8であり得る)。
切断性リンカーをアウリスタチンと組み合わせた例としては、MC-vc-PAB-MMAF(vcMMAFとも表示される)およびMC-vc-PAB-MMAF(vcMMAEとも表示される)が挙げられ、ここで、MCはマレイミドカプロイルの略号であり、vcはVal-Cit(バリン-シトルリン)ベースのリンカーの略号であり、PABはp-アミノベンジルカルバメートの略号である。
他の例としては、非切断性リンカー、例えばmcMMAF(mc(MCはこの状況のmcと同じ)はマレイミドカプロイルの略号である)と組み合わせたアウリスタチンが挙げられる。
一態様では、薬物リンカー部分はvcMMAEである。vcMMAE薬物リンカー部分およびコンジュゲーション法はWO2004010957、US7659241、US7829531、US7851437、およびUS 11/833,028(Seattle Genetics, Inc.)(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に開示されており、vcMMAE薬物リンカー部分は、これらに開示されたものと同様の方法を用いて、システインにおいて抗体に結合される。
一態様では、薬物リンカー部分はmcMMAFである。mcMMAF薬物リンカー部分およびコンジュゲーション法は、US7498298、US 11/833,954、およびWO2005081711(Seattle Genetics, Inc.)(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に開示されており、mcMMAF薬物リンカー部分は、これらに開示されたものと同様の方法を用いて、システインにおいて変異体に結合される。
一態様では、本発明のポリペプチドまたは抗体は、二重特異性抗体が放射性同位体にコンジュゲートされることを可能にするキレート剤リンカー、例えばチウキセタンに結合される。
一態様では、ポリペプチドまたは抗体の各アーム(またはFabアーム)が、同じ1つまたは複数の治療性部分に直接または間接的にカップリングされる。
一態様では、抗体の一方のアームのみが、1つまたは複数の治療性部分に直接または間接的にカップリングされる。
一態様では、抗体の各アームが、異なる治療性部分に直接または間接的にカップリングされる。例えば、変異体が二重特異性抗体であり、2種類の異なる本明細書に記載の単一特異性抗体、例えば第1および第2の抗体の制御型Fabアーム交換によって調製される態様では、かかる二重特異性抗体は、異なる治療性部分とコンジュゲートまたは会合されている単一特異性抗体を使用することにより得ることができる。
さらなる使用
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3領域を含む第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
さらなる一局面において、本発明は、医薬としての使用のための、特に、疾患または障害の処置用の医薬としての使用のための、上記の通りの本発明のポリペプチド、抗体に関する。かかる疾患および障害の例としては、非限定的に、がん、および細菌、ウイルス、または真菌による感染が挙げられる。
別の局面において、本発明は、疾患、例えばがんの処置のための、本明細書に記載のポリペプチド、抗体、二重特異性抗体、組成物、およびパーツキットに関する。
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の変異体、組成物、またはパーツキットの投与を含む、ヒト疾患の処置のための方法に関する。
別の局面において、本発明は、変異体、組成物、またはパーツキットの投与を含む、ヒトのがんの処置のための方法に関する。
「処置」は、症状または疾患状態を緩和する、軽快させる、停止させる、または根絶する(治癒する)目的を伴う有効量の本発明の治療活性化合物の投与をいう。
「有効量」または「治療有効量」は、必要な投薬量および期間で所望の治療結果が得られるのに有効な量をいう。抗体の治療有効量は、疾患の状態、個体の年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘起する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。また、治療有効量は、抗体または抗体の一部分の任意の毒性効果または有害な効果より治療有益性効果の方が勝る量である。
投薬量
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3領域を含む第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
抗体の効率的な投薬量および投薬量レジメンは、処置対象の疾患または病状に依存し、当業者によって決定され得る。本発明の抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲は約0.1~100 mg/kg、例えば約0.1~50 mg/kg、例えば約0.1~20 mg/kg、例えば約0.1~10 mg/kg、例えば約0.5、例えば、約0.3、約1、約3、約5または約8 mg/kgである。
また、本発明のポリペプチドまたは抗体を、併用療法で投与してもよい、すなわち、処置対象の疾患または病状に関連する他の治療剤と組み合わせてもよい。したがって、一態様では、抗体含有医薬は、1種または複数種のさらなる治療剤、例えば細胞傷害剤、化学療法剤、または血管新生抑制剤との併用のためのものである。かかる併用投与は同時であっても、別々であっても、逐次であってもよい。
さらなる一態様では、本発明により、疾患、例えばがんを処置または予防するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の変異体または薬学的組成物を放射線療法および/または手術との併用で投与する工程を含む方法を提供する。
調製方法
ポリペプチドまたは抗体に関して以下に記載する態様は、免疫グロブリンのCH2-CH3領域を有するFc領域と抗原結合領域とを含むポリペプチドまたは抗体に言及していることが理解され、ポリペプチドまたは抗体はまた、免疫グロブリンの第1のCH2-CH3領域と第1の抗原結合領域および免疫グロブリンの第2のCH2-CH3領域を含む第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する第2のポリペプチドまたは抗体を有する多重特異性ポリペプチドまたは抗体であってもよい。
本発明によりまた、上記の局面のいずれか1つによる変異体をコードする単離された核酸およびベクター、ならびに変異体をコードするベクターおよび発現系も提供する。抗体およびその変異体に好適な核酸構築物、ベクター、および発現系は当技術分野において公知であり、本実施例に記載している。変異体が重鎖(またはそのFc含有断片)だけでなく軽鎖も含む態様では、重鎖部分と軽鎖部分をコードするヌクレオチド配列を、同じ核酸またはベクターに存在させても、異なる核酸またはベクターに存在させてもよい。
本発明によりまた、宿主細胞内で上記の局面のいずれか1つによるポリペプチドまたは抗体を産生させるための方法であって、ポリペプチドまたは抗体が重鎖の少なくともFc領域を含み、以下の工程:
a)変異体のFc領域をコードするヌクレオチド構築物を準備する工程、
b)ヌクレオチド構築物を宿主細胞内で発現させる工程、および
c)抗体変異体を宿主細胞の細胞培養物から回収する工程
を含む方法も提供する。
一部の態様では、抗体は重鎖抗体である。しかしながら、ほとんどの態様では、抗体は軽鎖も含み、したがって、宿主細胞は、同じかまたは異なるかのいずれかであるベクター上の軽鎖コード構築物をさらに発現する。
抗体の組換え発現に適した宿主細胞は当技術分野において周知であり、CHO、HEK-293、Expi293T、PER-C6、NS/0、およびSp2/0細胞が挙げられる。一態様では、宿主細胞は、タンパク質のAsn結合グリコシル化が行なわれ得る細胞、例えば真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。さらなる一態様では、宿主細胞は、ヒト様グリコシル化またはヒト型グリコシル化を有する糖タンパク質を産生するように遺伝子改変された非ヒト細胞である。かかる細胞の例は、遺伝子修飾されたメタノール資化性酵母(Pichia pastoris)(Hamilton et al., Science 301(2003)1244-1246;Potgieter et al., J.Biotechnology 139(2009)318-325)および遺伝子修飾されたコウキクサ(Lemna minor)(Cox et al., Nature Biotechnology 12(2006)1591-1597)である。
一態様では、宿主細胞は、C末端リジンK447残基を抗体重鎖から効率的に除去することのできない宿主細胞である。例えば、Liu et al.(2008)J Pharm Sci 97:2426(参照により本明細書に組み入れられる)の表2には、いくつかのかかる抗体産生系、例えば、Sp2/0、NS/0、またはトランスジェニック動物の乳腺(ヤギ)が列記されており、これらの場合、部分的なC末端リジン除去のみが得られる。一態様では、宿主細胞は、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞である。かかる細胞は当技術分野において報告されており、本発明の変異体を発現させ、それにより、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生させるための宿主細胞として使用され得る。例えば、Shields, R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740;Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-1、ならびにEP1176195;WO03/035835;およびWO99/54342を参照のこと。改変されたグリコフォームを作製するためのさらなる方法は当技術分野において公知であり、非限定的に、Davies et al., 2001, Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shields et al, 2002, J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawa et al., 2003, J Biol Chem 278:3466-3473)、US6602684、WO00/61739A1;WO01/292246A1;WO02/311140A1;WO 02/30954A1;Potelligent(商標)技術(Biowa, Inc.Princeton, N.J.);GlycoMAb(商標)グリコシル化改変技術(GLYCART biotechnology AG, Zurich, Switzerland);US 20030115614;Okazaki et al., 2004, JMB, 336:1239-49に記載のものが挙げられる。
本発明はまた、上記の本発明の方法によって得られる、または得ることができる抗体に関する。
さらなる一局面において、本発明は、本発明のポリペプチドまたは抗体の産生能を有する宿主細胞に関する。一態様では、宿主細胞は、本発明のヌクレオチド構築物で形質転換またはトランスフェクトされている。
本発明を、さらなる限定と解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに例示する。
実施例1:
抗体の生成、産生、および精製
抗体の発現構築物
抗体発現のため、可変重(VH)鎖および可変軽(VL)鎖の配列を遺伝子合成(GeneArt Gene Synthesis;ThermoFisher Scientific, Germany)によって調製し、IgG1の重鎖(HC)と軽鎖(LC)の定常領域を含むpcDNA3.3発現ベクター(ThermoFisher Scientific, US)にクローニングした。所望の変異を、遺伝子合成または部位特異的変異誘発のいずれかによって導入した。本出願に記載の抗体は、既報のCD38抗体HuMAB 005(WO2006/099875)、DR5抗体hDR5-01、hDR5-05(WO2014/009358)、CD52抗体IgG1-Campath(アレムツズマブ、Crowe et al., Clin Exp Immunol.1992, 87(1):105-110)、ならびにCD20抗体IgG1-7D8およびIgG1-11B8(WO2004/035607)に由来するVH配列およびVL配列を有する。一部の実施例では、gp120特異的抗体であるヒトIgG1抗体b12を陰性対照として使用した(Barbas et al., J Mol Biol.1993 Apr 5;230(3):812-23)。
一過性発現
抗体はIgG1,κとして発現させた。抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードするプラスミドDNA混合物でExpi293T細胞(Life/Thermo Scientific, USA)を、293fectin(Invitrogen, US)を用いて本質的にVink et al.(Vink et al., Methods, 65(1), 5-10 2014)に記載のとおりに一過的にトランスフェクトした。
タンパク質の精製および解析
抗体をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。培養上清を0.20μMデッドエンドフィルターで濾過し、5 mL MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)に負荷し、洗浄し、0.02 Mクエン酸ナトリウム-NaOH, pH 3を用いて溶出させた。精製直後に、溶出液をHiPrep Desaltingカラム(GE Healthcare)に負荷し、抗体を、12.6 mM NaH2PO4, 140 mM NaCl, pH 7.4バッファー(B.BraunまたはThermo Fisher)へバッファー交換した。バッファー交換後、試料を0.2μmデッドエンドフィルターで滅菌濾過した。精製タンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲルでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)および高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)を含む複数の生物分析アッセイによって解析した。濃度を280 nmにおける吸光度によって測定した。精製抗体を2~8℃で保存した。
実施例2:
野生型抗体におけるC1q結合およびCDCを阻害することが以前に示された変異の、増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG-005変異体のインビトロCDC有効性に対する効果の解析
ヒトIgG1のCH2ドメインにおけるC1q結合中心は、アラニン置換により残基D270、K322、P329、およびP331にマッピングされた(Idusogie et al., 2000 J.Immunol.)。変異型D270A、K322A、およびP329Aは、リツキシマブによるC1q結合および補体活性化を補体濃度依存的様式で有意に低減させることができた(Idusogie et al., 2000 J.Immunol)。
細胞表面上での標的結合の際のIgG六量体化が、C1q六量体型構造の効率的な結合を補助し、強いC1q結合をもたらすことが示されている(Diebolder et al., Science 2014)。細胞表面上でのIgG六量体化は、分子間の非共有結合性Fc-Fc相互作用によって媒介され、CH2ドメインにおける点変異、例えばE345RおよびE430Gによって増強され得る(Diebolder et al., 2014 Science;De Jong et al., 2015 PloS Biology)。Fc-Fc増強変異は細胞表面上の六量体型抗体構造におけるC1q結合アビディティを高めるが、C1q結合親和性は影響されない。したがって、C1q結合親和性を低減させることが報告されている変異が、増強されたFc-Fc相互作用のための変異を有するIgG1抗体変異体によるCDCをブロックし得るかどうかは予測不可能である。
ここで、本発明者らは、補体活性化を増強させることが公知の安定化されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体IgG1-005-E430GおよびIgG1-005-E345R(WO2013/004842、WO2014/108198)ならびにIgG1-005-E345R/E430G/S440Y(WO2014/006217)にD270A/K322A(AA)二重変異を導入することの効果を解析した。
CDCアッセイのため、0.1×106個のDaudi細胞(ATCC番号CCL-213(商標))を、一連の濃度の精製抗体を80μLの総体積で入れたポリスチレン製丸底96ウェルプレート(Greiner bio-oneカタログ番号650101)内で15分間、振盪機にて室温でプレインキュベートした。次に、20μLのヒト正常血清(NHS;カタログ番号M0008 Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)を補体供給源として添加し、37℃のインキュベータ内で45分間インキュベートした(20%の最終NHS濃度;3倍希釈で0.001~10.0μg/mLの最終抗体濃度)。プレートを氷上に置いた後、遠心分離によって細胞をペレットにし、20μLの2μg/mLヨウ化プロピジウム溶液(PI;Sigma Aldrich, Zwijnaarde, The Netherlands)で交換される上清を交換することにより反応を停止させた。PI陽性細胞の数を、Intellicyt iQue(商標)選別機(Westburg)でのFACS解析によって調べた。データを、非線形用量-応答フィットの最良適合値を用いて解析し、GraphPad PRISM 5での対数変換濃度値を使用した。溶解割合を(PI陽性細胞の数 / 細胞の総数)×100%として計算した。
D270A/K322A(AA)二重変異を野生型(WT)IgG1-005に導入すると、Daudi細胞に対するCDCの完全阻害がもたらされた(図1)。対照的に、Fc-Fc相互作用増強変異E430GまたはE345Rの存在下では、D270A/K322Aの導入はCDC有効性に対して軽微な効果しか有しなかった(図1):IgG1-005-E430GおよびIgG1-005-AA-E430Gでは、それぞれ、EC50 0.01±0.01(μg/mL±SD)および0.06±0.02μg/mLで同じ最大死滅100%;IgG1-005-E345RおよびIgG1-005-AA-E345Rでは、それぞれ、EC50 0.01μg/mLおよび0.14μg/mLで最大死滅100%および74.3%。溶液中で抗体の六量体化をもたらす三重変異E345R/E430G/S440Y(Diebolder et al., 2014 Science;Wang et al., 2016 Mol.Cell)の存在下では、D270A/K322AはCDCに対してなんらの効果も有しなかった(図1)。
これらのデータは、WT IgG1抗体のCDC活性を阻害した変異が、増強されたFc-Fc相互作用のための変異を有する抗体変異体のCDC活性をブロックすることができなかったことを示す。
実施例3:
増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体のインビトロCDC有効性に対する、C1q結合コアのD270、K322、およびP329位における変異の選択の効果の解析
ヒトIgG1 C1q結合部位のD270、K322、およびP329位における変異を、C1qがIgG1に結合されている場合に確立されるタンパク質間相互作用に干渉する目的で設計した。したがって、WTアミノ酸を、新しい、または反対の電荷を有する荷電アミノ酸で置換した:D270R、K322E、P329D、およびP329R。これらのさらなる変異型を、増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異を有するIgG1-005変異体のCDC有効性に対する効果について試験した。一連の濃度の精製抗体(3倍希釈で0.001~10.0μg/mLの最終抗体濃度)を、インビトロCDCアッセイでDaudi細胞において、20%NHSを用いて実施例2に記載のようにして試験した。
K322E、P329D、またはP329R変異の導入により、IgG1-005-E430GによるDaudi細胞のCDC媒介性死滅が強く阻害された(図2A)。対照的に、D270Rの導入では、効力の低減およびEC50値の上昇(IgG1-005-E430GおよびIgG1-005-D270R/E430Gで、それぞれ0.005μg/mLおよび0.15μg/mL)がもたらされたが、IgG1-005-E430GによるDaudi細胞の最大死滅は低減されなかった。D270A/K322Aでのデータを、実施例2に記載のようにIgG1-005-E430GによるCDC有効性に対して軽微な効果にすぎないことを示すための参照として含めた。
IgG1-005-E430GのCDC有効性を阻害したK322E、P329D、およびP329R変異について、Daudi細胞に結合している抗体へのC1q結合に対する効果をFACS解析によって測定した。0.1×106個のDaudi細胞を4℃で30分間、一連の濃度の精製抗体(3.33倍希釈で0.0003~100.0μg/mLの最終抗体濃度)およびC1q供給源として20%のC4枯渇血清を入れたポリスチレン製丸底96ウェルプレート内の100μLの反応液中でインキュベートした。100μLのFACSバッファー(PBS/0.1% BSA/0.01%アジ化Na)を添加し、細胞を遠心分離によってペレットにした。細胞を150μLのFACSバッファーで洗浄し、4℃で30分間、50μLのFITC標識ウサギ抗HuC1q抗体(DAKO, カタログ番号F0254;20μg/mLの終濃度)とともにインキュベートした。細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、30μLのFACSバッファー中に再懸濁させ、平均蛍光強度をIntellicyt iQue(商標)選別機において調べた。
K322E、P329D、またはP329R変異の導入により、Daudi細胞に結合しているIgG1-005-E430GへのC1q結合が阻害された(図2B)。
総合すると、これらのデータは、K322E、P329D、またはP329R変異をIgG1-005-E430Gに導入すると、C1q結合および付随するDaudi細胞のCDC媒介性死滅の阻害がもたらされたことを示す。
実施例4:増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体のインビトロCDC有効性に対するK322X変異の効果
抗体を、実施例1に記載の一過性トランスフェクションの上清を採取することによって収集した。一連の抗体濃度(3倍希釈で0.001~30.0μg/mLの終濃度)を、インビトロCDCアッセイでDaudi細胞において、20% NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。322位のリジン(K)の、アラニン(A)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン(N)への置換とE430G変異との組合せを試験した(図3)。
この実験では、特異的な変異K322D、K322E、およびK322Nが、増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005-E430Gによる補体活性化およびCDCをブロックすることができた。
実施例5:変異K322D、K322E、またはK322Nを含むIgG1-005-E430G変異体の生物物理学的特性評価
K322E、K322D、またはK322N変異を有するIgG1-005-E430G変異体の精製抗体バッチをCE-SDSおよびHP-SECによって解析した。
CE-SDSを還元条件および非還元条件下で行なった。試料の純度および断片化を、CE-SDS(Caliper Labchip GXII, PerkinElmer)を用いてLabchip GXII(High Sensitivityプロトコル)で、ほとんど変更なしで解析した。非還元試料および還元試料(DTT添加)はどちらも、HT Protein Express Reagent Kit(CLS960008)を用いて調製し、70℃で10分間のインキュベーションによって変性させた。試料を、HT抗体解析200高感度設定で泳動させた。分子量および純度(全体に対する率)のデータをLabchip GXIIソフトウェアを用いて解析した。図4Aは、IgG1-005-K322E/E430Gが、ジスルフィド結合された重鎖と軽鎖を有する野生型IgG1アッセイ対照と同等の挙動を示したことを示す。およそ150 kDaの見かけMWを有する単分子種が非還元条件下で視認可能であり、一方、還元条件下では、50 kDaの見かけMWを有する重鎖と26 kDaの軽鎖が視認可能であった。抗体変異体IgG1-005-K322D/E430GおよびIgG1-005-K322N/E430Gは、非還元条件下では高分子量凝集物を含有しており、これは還元後に分解されるようであった。
HP-SEC分画を、TSK HP-SECカラム(G3000SWxl;Toso Biosciences, via Omnilabo, Breda, The Netherlands)とWaters 2487デュアルλ吸光度検出器(Waters)と連結したWaters Alliance 2975分離ユニット(Waters, Etten-Leur, The Netherlands)を用いて行なった。1.25μg/mLのタンパク質を含む50μLの試料を1 mL/分で、0.1 M Na2SO4 /0.1 M リン酸ナトリウム緩衝, pH 6.8中で分離した。結果をEmpowerソフトウェアバージョン3を用いて処理し、ピークごとにピーク総面積に対する割合として示した。図4Bは、抗体IgG1-005-K322E/E430Gは圧倒的に、単量体型の種について予測される溶出時間に溶出された(98%が単量体型)が、変異体IgG1-005-K322D/E430G(70%凝集)およびIgG1-005-K322N/E430G(43%凝集)は相当な量の高分子量種を示したことを示す。したがって、HP-SEC解析により、二重変異型K322E/E430Gは溶液中で二重変異型K322D/E430GおよびK322N/E430Gより均一であることが示唆された。
実施例6:増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体のインビトロCDC有効性に対するP329X変異の効果
ここでは、インビトロCDC有効性に対するP329X変異の効果を、増強されたCDCを有する抗体IgG1-005-E430Gにおいて試験した。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでDaudi細胞において、20%NHSを用いて、本質的に実施例2に記載のようにして試験した。
Daudi細胞に対するIgG1-005-E430GのCDC有効性は、P329位のプロリンを、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、またはチロシン(Y)に置換することにより完全に阻害された(図5)。対照的に、329位のプロリンのアラニン(A)への置換ではCDC有効性は一部しか低下せず、IgG1-005-E430Gでの0.01μg/mLからIgG1-005-P329A/E430Gでの0.11μg/mLへのEC50のシフトがみられたが、最大死滅に対する効果はみられなかった。これらのデータは、329位のプロリンを別のアミノ酸に置換すると、IgG1-005-E430GによるCDC有効性の阻害(P329D/E/F/G/H/I/K/L/N/Q/R/S/T/V/W/Yの場合)または阻害なし(P329Aの場合)のいずれかがもたらされたことを示す。
実施例7:P329位に変異を含むIgG1-005-E430G変異体の生物物理学的特性評価
329位のプロリンがシステイン以外の任意の他のアミノ酸で置換されているIgG1-005-E430G変異体の精製抗体バッチをCE-SDSおよびHP-SECによって解析した。
CE-SDSを、還元条件下および非還元条件下で実施例5に記載のようにして行なった。アミノ酸P329のさらなる変異を含む試験したIgG1-005-E430G抗体変異体はすべて、ジスルフィド結合された重鎖と軽鎖を有する野生型IgG1アッセイ対照抗体と同様の挙動を示した:およそ150 kDaの見かけMWを有する単分子種が非還元条件下で視認可能であり、一方、還元条件下では、50 kDaの見かけMWを有する重鎖と26 kDaの軽鎖が視認可能であった(表1に要約している)。これらのデータは、変性条件下では、野生型IgG1抗体に典型的な挙動を示す単量体型分子が形成されることを示唆する。
HP-SEC分画を、実施例5に記載のようにして行なった。アミノ酸P329がさらに変異された試験したIgG1-005-E430G抗体変異体には、さまざまな量の高分子量種が含まれていた(表1)。変異体IgG1-005-P329R/E430G、IgG1-005-P329D/E430G、およびIgG1-005-P329T/E430Gは、溶液中で本質的に均一であった。
(表1)IgG1-005-P329X/E430G抗体変異体(XはPまたはC以外の任意のアミノ酸を表す)のCE-SDSおよびHP-SECによる生物物理学的特性評価
実施例8:P329位に変異を含むIgG1-005-E430G変異体の熱安定性の解析
329位のプロリンがシステイン以外の任意の他のアミノ酸で置換されているIgG1-005-E430G変異体の精製抗体バッチを示差走査蛍光測定(DSF)によって解析した。
DSFを、外因性色素Sypro-Orange(ThermoFisher-Scientific, S6651)がIgGの変性によって露出した疎水性領域に結合することによって引き起こされる蛍光強度の変化を検出することができるiQ5 96ウェルRT-PCR機(Bio-Rad)で行なった。熱融解曲線は、解析対象のIgGの制御された段階的熱変性中における蛍光の増大を測定することにより得ることができる。したがって、PBS(pH 7.4)(B.Braun, Netherlands)中または30 mM NaAc(pH 4)中のいずれかの20μLの75 mM Sypro-Orangeと混合した5μLの0.6 mg/mL IgGタンパク質の試料を二連で調製した。蛍光を、25℃~95℃の範囲の温度で、0.5℃ずつ段階的に上げ、15秒の持続時間に、すべてのウェルの蛍光の記録に必要な時間を加えて、記録した。
解析した各抗体について、温度漸増時の蛍光強度の急上昇として観察される第1の温度遷移(Tm)の中間点を、二連の両方を平均して表2に要約する。IgG1-005およびIgG1-005-E430GにおけるP329RまたはP329Kの導入では、抗体のTm温度の緩やかな上昇がもたらされたが、P329Dの導入では、WT IgG1-005およびIgG1-005-E430Gの両方のTm温度が低減された。これらのデータは、P329RまたはP329GKの導入はIgG1-005およびIgG1-005-E430Gの熱安定性を高めたが、P329Dはこれらの抗体の熱安定性を低減させたことを示唆する。
(表2)IgG1-005-P329X/E430G抗体変異体のDSF解析
1IgG1-005抗体変異体は、Tmの低減に従ってランク付けした
2温度漸増時に観察された第1の熱遷移の中間点。各値は、二連の測定値の平均を表す。
実施例9:増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体によるFcγRIIIa活性化に対するP329位における変異の効果
ADCC誘導に対する効果を、329位のプロリンが、システイン、アスパラギン酸、メチオニン、またはアルギニン以外の任意のアミノ酸で置換されたIgG1-005-E430G変異体について試験した。P329位に変異(P329A/E/F/G/H/I/K/L/N/Q/S/T/V/W/Y)を含むIgG1-005-E430G変異体によるFcγRIIIa媒介性シグナル伝達の活性化を、Luminescent ADCC Reporter BioAssay(Promega, カタログ番号G7015)を用いてDaudi細胞において、製造業者の推奨(Promega, #TM383)に従って定量した。エフェクター細胞として、キットは、高親和性FcγRIIIa(V158)およびホタルルシフェラーゼ発現を駆動する活性化T細胞核内因子(NFAT)応答エレメントを安定的に発現するように改変操作されたJurkatヒトT細胞を含む。簡単には、Daudi細胞(5,000個の細胞/ウェル)を、384ウェル白色OptiPlate(Perkin Elmerカタログ番号6007290)内のADCCアッセイバッファー[3.5%の低IgG血清を補ったRPMI-1640培地(Lonza, カタログ番号BE12-115F)]中に播種し、37℃/5%CO2で6時間、一連の濃度(5倍希釈で0.128~2.000 ng/mLの終濃度)の抗体および解凍したADCC Bioassay Effector Cellを含む30μLの総体積でインキュベートした。プレートを室温(RT)で15分間インキュベートした後、30μLのBio Glo Assay Luciferase Reagentを添加し、室温で5分間インキュベートした。ルシフェラーゼの生成を、EnVision Multilabel Reader(Perkin Elmer)での発光読み出し情報によって定量した。発光シグナルを、培地のみの試料(Daudi細胞なし、抗体なし、エフェクター細胞なし)で測定されたバックグラウンド発光シグナルを差し引くことにより正規化した。
IgG1-005-E430Gによる用量応答性FcγRIIIa活性化は、3.2 ng/nL - 16 ng/mL - 80 ng/mLの一連の抗体濃度について図6に示されるように、すべてのP329X変異体(示さない)の全試験濃度で完全に阻害された。これらのデータは、329位のプロリンがFcγRIIIaの結合および活性化に必須であることを示す。
実施例10:増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体のADCC有効性に対するK322およびP329位変異の効果の解析
良好な生物物理学的特徴(実施例5、実施例7、および実施例8に記載)を示すIgG1-005-E430GのCDC阻害性変異型(実施例4および実施例6に記載)を、そのADCC有効性について試験した。K322E、P329A、P329D、P329K、またはP329R変異を含むIgG1-005-E430G変異体を、インビトロADCCアッセイにおいてDaudi細胞に対して適用し、異なる3例の健常ドナーに由来する新たに単離した末梢血単核細胞(PBMC)をエフェクター細胞として使用した。PBMCはバフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)から、標準的なFicoll密度勾配遠心分離のためのLymphocyte Separation Medium(Lonza, カタログ番号17-829E)を用いて製造業者の使用説明書に従って単離した。10%のDBSI(Donor Bovine Serum with Iron, ThermoFischer, カタログ番号10371029)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)(Lonza, カタログ番号DE17-603E)を補ったRPMI-1640培地(Lonza, カタログ番号BE12-115F)中への細胞の再懸濁後、細胞をトリパンブルー排除によってカウントし、1×107個の細胞/mLまで濃縮した。
Daudi細胞を回収し(5×106個の細胞/mL)、洗浄し(PBS中で2回、1200 rpm, 5分間)、10%のDBSIおよびPen/Strepを補った1 mLのRPMI-1640培地中に収集し、これに100μCiの51Cr(クロム-51;PerkinElmer, カタログ番号NEZ030002MC)を添加した。混合物を振盪水浴中で37℃にて1時間インキュベートした。細胞の洗浄(50 mLのPBS中で2回、1200 rpm, 5分間)後、細胞を、10%のDBSIとPen/Strepを補ったRPMI-1640培地中に再懸濁させ、トリパンブルー排除によってカウントし、1×105個の細胞/mLの濃度まで希釈した。
ADCC実験のため、50μLの51Cr標識Daudi細胞(5,000個の細胞/ウェル)を一連の濃度(3倍希釈で0.3~1.000 ng/mLの終濃度)のIgG1-005-E430G抗体変異体とともに、10%のDBSIおよびPen/Strepを補ったRPMI-1640培地100μLの総体積で、96ウェル丸底マイクロタイタープレート(Greiner Bio-One;カタログ番号650101)内でプレインキュベートした。室温で20分後、50μLのPBMC(500,000個の細胞)を添加してエフェクター:標的比を100:1にし、37℃/5% CO2で4時間インキュベートした。細胞溶解の最大量を調べるため、50μLの51Cr標識Daudi細胞(5,000個の細胞)を100μLの5%Triton-X100とともにインキュベートした。自然溶解の量を調べるため、5,000個の51Cr標識Daudi細胞を、抗体またはエフェクター細胞が全くない150μLの培地中でインキュベートした。抗体非依存性細胞溶解レベルを、5,000個のDaudi細胞を500,000個のPBMCとともに抗体なしでインキュベートすることによって調べた。放出された51Crの量をカウントするため、プレートを遠心分離し(1200 rpm, 10分間)、25μLの上清を、96ウェルプレート内の100μLのMicroscint-40溶液(Packard, カタログ番号6013641)に移した。プレートを密封し、800 rpmで15分間振盪し、放出された51Crを、ガンマカウンターを用いてカウントした。測定されたカウント毎分(cpm)を用いて抗体媒介性溶解の割合を以下のとおりに計算した:(cpm 試料 - cpm Ab非依存性溶解)/(cpm 最大溶解 - cpm 自然溶解)×100%。
IgG1-005-E430GによるDaudi細胞の用量応答性ADCC媒介性死滅は、一連の抗体濃度0.3 ng/mL - 3 ng/mL - 30 ng/mL - 300 ng/mLについて図7に示されるように、P329D、P329K、またはP329R変異を導入することによって完全に阻害された。対照的に、K322EまたはP329A変異を有するIgG1-005-E430G変異体は、Daudi細胞に対して相当なADCC有効性を保持していた。
実施例4と実施例6に記載したCDCデータ、実施例9に記載したADCCレポーターデータ、およびこの実施例に記載したインビトロADCCデータを要約すると、P329D、P329K、またはP329R変異の導入により、Fc-Fc相互作用および細胞表面上での標的結合時の六量体化に対するE430G変異の増強効果にもかかわらず、IgG1-005-E430GのCDC活性およびADCC活性の両方の阻害がもたらされた。対照的に、K322EおよびP329A変異ではCDC阻害がもたらされたが、IgG1-005-E430GによるADCC有効性は保持された。
実施例11:P329D変異は、増強されたFc-Fc相互作用のための変異を有するIgG1抗体による補体活性化およびCDCを阻害するために一般的に適用可能である
実施例3および実施例6は、増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異を含む抗CD38 mAb IgG1-005変異体にP329D変異を導入すると、Daudi細胞に対するCDC活性の完全阻害がもたらされたことを示す。次に、P329D変異の導入が、他のFc-Fc増強変異を含むIgG1-005変異体に対して同じ効果を有するかどうかを試験した。したがって、P329D変異を、E345R、E345K、またはE345R/E430G/S440Y(RGY)変異の1つまたは複数を有するIgG1-005変異体に導入し、C1q結合について、Daudi細胞においてインビトロCDCアッセイで試験した。
Daudi細胞に結合している抗体へのC1q結合をFACS解析により、実施例3に記載のようにして測定した。CDCアッセイのため、一連の抗体濃度(3.33倍希釈で0.0003~100.0μg/mLの終濃度)をDaudi細胞において、20%NHSを用いて実施例2に記載のようにして試験した。
P329D変異の導入により、Daudi細胞において、増強されたFc-Fc相互作用のためのE345K、E345R、またはE345R/E430G/S440Yのいずれかの変異を有するIgG1-005変異体によるC1q結合(図8A)およびCDC有効性(図8B)の完全阻害がもたらされた。
この実施例に提示したE345K、E345R、およびRGY変異でのデータは、実施例3に記載したE430Gでのデータとともに、Fc-Fc相互作用の増強のための変異を有するIgG1-005抗体によるC1q結合およびCDC有効性はP329D変異の導入によって一般的に阻害され得ることを示す。
実施例12:K322EまたはP329D変異を含む六量体型IgG1-005-E345R/E430G/S440Y変異体の生物物理学的特性評価
IgG1の六量体化に対するK322EおよびP329Dの効果を試験するため、本発明者らは、3つのFc-Fc相互作用増強変異E345R、E430G、およびS440Y(RGY)を併せ持ち、溶液中で抗体六量体を形成することが示された三重変異型IgG1-005-E345R/E430G/S440Yを利用した(Diebolder et al., Science 2014)。K322EまたはP329DをIgG1-005-RGYに導入してIgG1-005-K322E/E345R/E430G/S440Y(IgG1-005-ERGY)およびIgG1-005-P329D/E345R/E430G/S440Y(IgG1-005-DRGY)を作製し、抗体の六量体化に対する効果をCE-SDS、HP-SEC、およびネイティブ質量分析によって解析した。HP-SEC分画を、実施例5に記載のようにして行なった。IgG1-005-RGYで観察された挙動(Diebolder et al., Science 2014)と整合して、IgG1-005-ERGYおよびIgG1-005-DRGYはどちらも、溶液中でのオリゴマー化能を保持していた(図9A)。オリゴマー(溶出時間 約6.3分)および単量体(溶出時間 約9~9.3分)に対応する2つのピークが観察され、おそらくオリゴマー状態と単量体状態間の動的転換によってもたらされた中間強度があった。IgG1-005-ERGYにおけるオリゴマー分率は58.4%と測定され、一方、31.4%が単量体型であり;10.2%が中間種として溶出された。IgG1-005-DRGYにおけるオリゴマー分率は78.8%と測定され、一方、単量体分率は12.5%であり;8.7%の中間種が観察された。
CE-SDSを還元条件および非還元条件下で行なった。IgG1-005-RGYで観察された結果(Diebolder et al., Science 2014)と合致して、IgG1-005-ERGYおよびIgG1-005-DRGYの両方でおよそ150 kDaの見かけMWを有する単分子種が非還元条件下で示され、一方、還元条件下では、50 kDaの見かけMWを有する重鎖と26 kDaの軽鎖が視認可能であった(図9B)。これらのデータにより、IgG1-005-ERGYおよびIgG1-005-DRGYの挙動がWT単量体型IgG1アッセイ対照抗体と同様であったことが示され、六量体化は変性CE-SDS条件下で乱れ、非共有結合性Fc-Fc相互作用と整合することを示す。
2μMのIgG1-005-DRGYのネイティブ質量分析解析を、過剰のC1qの非存在下または存在下、150 mMの酢酸アンモニウム, pH 7.5中での緩衝下で、高質量検出での至適性能のために調整された改良LCT飛行時間型(Waters, UK)質量分析計を用いて実施した。試料を、標準的な固定ナノスプレー源に載置したホウケイ酸ガラスキャピラリーから噴霧した。データ解析を、MassLynx(Waters, UK)およびOrigin Pro(Origin Lab, USA)ソフトウェアを用いて実施した。IgG1-005-DRGYは、IgG1-005-RGYで観察されたような六量体を形成した(図9)。IgG1-005-DRGY六量体にC1qを添加すると検出可能なC1q結合は得られなかったが、IgG1-005-RGYは等価な条件下でC1qに容易に結合した(図9C)。
要約すると、この実施例に記載した生物物理学的解析は、C1q結合阻害変異P329DまたはK322Eの導入により、溶液中でのIgG1-005-RGYの六量体化はブロックされなかった(HP-SEC、ネイティブMS)がC1q結合は完全に消失した(ネイティブMS)ことを示す。さらに、抗体変異体IgG1-005-ERGYおよびIgG1-005-DRGYによって溶液中で形成されたオリゴマーは、IgG1-005-RGYについて報告されたFc-Fc相互作用(Diebolder et al., Science 2014)と整合して、非共有結合性相互作用(CE-SDS)によって形成された。
実施例13:増強されたFc-Fc相互作用を有し、P329D変異が存在する作動性DR5抗体による死滅を誘導するための有効性の解析
作動性デスレセプター5(DR5)抗体は、DR5ハイパークラスタリング(hyperclustering)による外因性アポトーシス経路の活性化によって、アダプタータンパク質である、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)の細胞内DR5デスドメインへの動員をもたらし、これによってさらに、カスパーゼ-8の結合および活性化ならびにアポトーシスを開始するDISC(細胞死誘導性シグナル伝達複合体)の形成をもたらすことにより、DR5陽性腫瘍細胞の死滅を誘導することができる。Fc-Fc相互作用が、増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異を含むDR5抗体の組合せ(IgG1-hDR5-01-G56T-E430G + IgG1-hDR5-05-E430G)による死滅に関与していることを示すため、本発明者らは、Fc-Fc相互作用に関与する疎水性パッチ内のコアアミノ酸を含む領域内のFcに結合する13残基のペプチドDCAWHLGELVWCT(DeLano et al., Science 2000 Feb 18;287(5456):1279-83)を利用した(Diebolder et al., Science.2014 Mar 14;343(6176):1260-3)。生存能アッセイをBxPC-3細胞において、DCAWHLGELVWCTペプチドの存在下または非存在下で行なった。付着BxPC-3(ATCC, CRL-1687)細胞をトリプシン処理によって回収し、セルストレーナーに通した。細胞を1,200 rpmで5分間の遠心分離によってペレットにし、培養培地中に0.5×105個の細胞/mLの濃度で再懸濁させた[25mM HepesおよびL-グルタミン(Lonza カタログ番号BE12-115F)+ 10%のDBSI(Life Technologies カタログ番号10371-029)+ Pen/Strep(Lonza カタログ番号DE17-603E)を含むRPMI 1640]。100μLの単一細胞懸濁液(5,000個の細胞/ウェル)をポリスチレン製96ウェル平底プレート(Greiner Bio-One, カタログ番号655182)内に播種し、37℃で一晩インキュベートした。培養培地を除去し、100μg/mLのFc結合性DCAWHLGELVWCTペプチド、非特異性対照ペプチドGWTVFQKRLDGSVを含むか、またはペプチドを含まない100μLの培養培地に交換した。次に、50μLの抗体の組合せIgG1-hDR5-01-G56T-E430G + IgG1-hDR5-05-E430G(833 ng/mLの終濃度)を添加し、37℃で3日間インキュベートした。最大死滅を調べるため、試料を5μMのスタウロスポリン(Sigma Aldrich, カタログ番号S6942)とともにインキュベートした。生存細胞の割合を、存在するATP(これは代謝活性細胞のインジケーターである)を定量するCellTiter-Glo発光細胞生存能アッセイ(Promega, カタログ番号G7571)で調べた。キットから、ウェル毎に20μLのルシフェリン溶液試薬を添加し、プレートを500 rpmで2分間振盪することにより混合した。次に、プレートを37℃で1.5時間インキュベートした。100 uLの上清を白色OptiPlate-96(Perkin Elmer, カタログ番号6005299)に移し、発光をEnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)で測定した。データを解析し、GraphPad Prismソフトウェアを使用した非線形回帰(傾きが可変のシグモイド用量-応答)を用いてプロットした。生存細胞の割合を、以下の式:% 生存細胞 = [(抗体試料の発光 - スタウロスポリン試料の発光)/(抗体なしの試料の発光 - スタウロスポリン試料の発光)]*100を用いて計算した。
抗体の組合せIgG1-hDR5-01-G56T-E430G + IgG1-hDR5-05-E430GがBxPC-3細胞の死滅を誘導する能力は100μg/mLのFc結合性DCAWHLGELVWCTペプチドによって強く阻害された(図10A)。これらのデータは、Fc-Fc増強変異を有する抗体の組合せIgG1-hDR5-01-G56T-E430G + IgG1-hDR5-05-E430Gが、がん細胞の細胞表面上におけるDR5クラスタリングおよびアポトーシスの誘導を誘導するために、Fc-Fc相互作用が必要とされることを示す。
次に、増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異を有する作動性DR5抗体によるDR5クラスタリングおよびアポトーシスの誘導に対する変異P329Dの導入の効果を試験するため、生存能アッセイを行なった。生存能アッセイはBxPC-3細胞において、本質的に上記のとおりに行なった。簡単には、一晩付着させたBxPC-3細胞(5,000個の細胞/ウェル)を37℃で3日間、5μg/mLまたは10μg/mLの最終抗体濃度で、150μLの総体積でインキュベートした。生存細胞の割合を、CellTiter-Glo発光細胞生存能アッセイで調べた。
P329D(図10B)またはK322E(図10C)変異の導入後、増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異を有する組合せIgG1-hDR5-01-E430G + IgG1-hDR5-05-E430Gは飽和抗体濃度でなお、BxPC-3細胞の死滅を誘導することができた。
総合すると、これらのデータは、P329DおよびK322E変異では、標的細胞上におけるクラスタリングに必要とされるFc-Fc相互作用およびDR5結合時のアポトーシスの誘導が、増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異を有する飽和濃度の作動性DR5抗体によってブロックされなかったことを示す。
実施例14:K322E、P329D、またはP329R変異を含む増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体のグリコシル化プロファイリング
精製抗体IgG1-005-K322E/E430G、IgG1-005-P329D/E430G、およびIgG1-005-P329R/E430GのN結合型グリカンを質量分析によって解析した。
IgG試料をDTTとともに37℃で1時間インキュベートした。次に、試料をUltimate 3000 UPLCシステム(Dionex)で、Proswift RP-4H 1×250 mmカラム(Thermo Scientific)において10分間のブロック勾配を60℃で使用し、MilliQ water(溶離剤A)およびLC-MS等級のアセトニトリル(溶離剤B)(どちらも0.05%のギ酸(Fluka)を含む)を用いることにより脱塩した。このUPLCシステムを、エレクトロスプレーイオン化のHESI源を備えたQ-Exactive Plus Orbitrap MSシステム(Thermo Scientific)とカップリングした。解析の前に、800~3000 m/zの目盛を、LTQ Velos ESIポジティブキャリブレーションミックスを用いて較正した。記録された質量スペクトルを、Protein Deconvolutionソフトウェア(Thermo Scientific)を用いてデコンボルーションし、個々のN結合型グリカンの相対存在量の定量に使用した。
抗体変異体IgG1-005-K322E/E430G、IgG1-005-P329D/E430G、およびIgG1-005-P329R/E430Gはすべて、EXPI293細胞において発現されたIgG1抗体で一般的に観察されたものと同様のグリコシル化プロファイルを示し、低レベルのマンノース-5または荷電種、高レベルのフコシル化、および10%~30%のガラクトシル化種を伴った(表3)。これらのデータは、変異K322E、P329D、およびP329RがIgG1-005-E430Gのグリコシル化プロファイルに実質的に影響しなかったことを示唆する。
(表3)IgG1-005-E430G変異体のN結合型グリカンの分布
実施例15:K322E、P329D、またはP329R変異を含む増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG-005変異体の薬物動態(PK)解析
IgG1-005-E430Gのクリアランス率に対するK322E、P329D、およびP329R変異の効果を、SCIDマウスでのPK実験において試験した。IgG1-005-K322E/E430G、IgG1-005-P329D/E430G、およびIgG1-005-P329R/E430Gのクリアランス率を、CDC阻害性変異なしのIgG1-005-E430Gおよび増強されたFc-Fc相互作用のためのE430G変異なしのWT IgG1-005のものと比較した。
この試験でのマウスは、Central Laboratory Animal Facility(Utrecht, The Netherlands)に収容し、FELASAによって規定された実験動物基準に従って、AAALACおよびISO 9001:2000認証動物施設(GDL)にて取り扱った。実験はすべて、指令(2010/63/EU)から翻訳され、ユトレヒト大学動物倫理委員会によって承認されたオランダ動物保護法(WoD)に準拠して実施した。11~12週齢の雌SCID(C.B-17/IcrHan@Hsd-Prkdc<scid, Envigo)マウス(1群あたり3匹のマウス)に、500μgの抗体(25 mg/kg)を210μL(IgG1-005-K322E/E430Gの場合)または200μL(その他のバッチの場合)の注射容量で静脈内注射した。50~100μLの血液試料を伏在静脈から、抗体投与後10分目、4時間目、1日目、2日目、7日目、14日目、および21日目に採取した。血液はヘパリン含有バイアル内に収集し、14,000 gで10分間、遠心分離した。20μLの血漿試料を、0.2%のウシ血清アルブミン(BSA)を補った980μLのPBST(0.05%のTween 20を補ったPBS)で希釈し、抗体濃度の測定まで-20℃で保存した。全ヒトIgG濃度を、サンドイッチELISAを用いて測定した。マウス抗ヒトIgG-カッパmAbクローンMH16(CLB Sanquin, カタログ番号M1268)を捕捉抗体として使用し、100μLで4℃にて一晩、96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, Germany)を2μg/mL(PBS中)の濃度でコートした。プレートを、プレートシェーカー上で室温にて1時間、0.2%のBSAを補ったPBSとともにインキュベートすることによりブロックした。洗浄後、100μLの希釈血漿試料を添加し、プレートシェーカー上で室温にて1時間インキュベートした。プレートを300μLのPBSTで3回洗浄し、続いて、プレートシェーカー上で室温にて1時間、100μLのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG免疫グロブリン(#109-035-098, Jackson, West Grace, PA;0.2%のBSAを補ったPBST中1:10.000)とともにインキュベートした。プレートを再度、300μLのPBSTで3回洗浄した後、室温で15分間、100μLの基質2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)[ABTS;Roche, カタログ番号11112 422001;1錠を50 mLのABTSバッファー(Roche, カタログ番号11112 597001)中に]とともに、遮光下でインキュベーションした。100μLの2%シュウ酸を添加し、室温で10分間インキュベーションすることにより反応を停止させた。吸光度をマイクロプレートリーダー(Biotek, Winooski, VT)で405 nmにて測定した。注入済み材料を参照曲線として使用することにより濃度を計算した。プレート対照として、IgGを含むヒト骨髄腫タンパク質(The binding site, UK)を含めた。Graphpad prism 6.0を用いてヒトIgG濃度(単位:μg/mL)をプロットし(図11A)、曲線下面積(AUC)を計算した。血液試料採取の最終日(21日目)までのクリアランスを、式D*1.000/AUC(式中、Dは注射用量(25 mg/kg)である)によって求めた(図11B)。
CDC阻害変異型IgG1-005-K322E/E430G、IgG1-005-P329D/E430G、およびIgG1-005-P329R/E430Gはすべて、IgG1-005-E430GおよびWT IgG1-005と同じ範囲のクリアランス率を示した(図11)。これらのデータは、増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005-E430G抗体のクリアランス率が、K322E(CDCを阻害するがADCC有効性は保持する)またはP329DおよびP329R(CDCおよびADCCの両方の有効性を阻害する)によって影響されなかったことを示す。
実施例16:増強されたFc-Fc相互作用を有するIgG1-005変異体のインビトロCDC有効性に対するP329X変異の効果
ここでは、インビトロCDC有効性に対するP329X変異の効果を、IgG1-005と比べて増強されたCDCを有する抗体IgG1-005-E430Gにおいて試験した。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでDaudi細胞において、20%NHSを用いて、本質的に実施例2に記載のようにして試験した。
Daudi細胞に対するIgG1-005-E430GのCDC有効性は、P329位のプロリンを、メチオニン(M)、アスパラギン酸(D)、またはアルギニン(R)に置換することにより完全に阻害された(図12)。対照的に、329位のプロリンのアラニン(A)への置換ではCDC有効性は一部しか低下せず、IgG1-005-E430Gでの0.01μg/mLからIgG1-005-P329A/E430Gでの0.10μg/mLへのEC50のシフトがみられたが、最大死滅に対する効果はみられなかった。これらのデータは、329位のプロリンを別のアミノ酸に置換すると、IgG1-005-E430GによるCDC有効性の阻害(P329M/D/Rの場合)または阻害なし(P329Aの場合)のいずれかがもたらされたことを示す。
実施例17:増強されたFc-Fc相互作用を有するCampath IgGアイソタイプ変異体のインビトロCDC有効性に対するP329RおよびP329D変異の効果
インビトロCDC有効性に対するP329RおよびP329D変異の効果を、IgG1-Campathと比べて増強されたCDCを有する抗体IgG1-Campath-E430Gの異なるIgGアイソタイプ変異体を用いて試験した(図13)。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでWien 133細胞において、20%NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。三連の実験の用量-応答曲線下面積を、対数変換濃度軸を用いてGraphPad Prism 7.02により計算し、アイソタイプ対照抗体IgG1-b12で測定された細胞溶解(0%)およびIgG1-Campathで測定された細胞溶解(100%)に対して正規化した。
Wien 133細胞におけるIgG1-Campath-E430GのCDC用量応答曲線下面積はWTと比べておよそ3倍増大したが、CDC活性は、329位のプロリンをアルギニン(R)またはアスパラギン酸(D)に置換することによりバックグラウンドレベルまで低下した(図13)。同様に、IgG2-Campath-E430GによるCDCも、変異P329RまたはP329Dを導入するとバックグラウンドレベルまで低下した。また、E430GとP329RまたはP329Dのいずれかの変異との両方を含むIgG3およびIgG4アイソタイプ変異体は、バックグラウンドレベルより上のCDC溶解を示さなかった。
これらのデータは、329位のプロリンをアルギニンまたはアスパラギン酸に置換すると、IgG1-Campath-E430GのIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4アイソタイプ変異体によるCDC有効性の効率的な阻害がもたらされたことを示す。
実施例18:増強されたFc-Fc相互作用を有するCampath IgGアイソタイプ変異体のインビトロCDC有効性に対する変異K322Eの効果
インビトロCDC有効性に対する変異K322Eの効果を、IgG1-Campathと比べて増強されたCDCを有する抗体IgG1-Campath-E430Gの異なるIgGアイソタイプ変異体を用いて試験した(図14)。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでWien 133細胞において、20%NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。三連の実験の用量-応答曲線下面積を、対数変換濃度軸を用いてGraphPad Prism 7.02により計算し、アイソタイプ対照抗体IgG1-b12で測定された細胞溶解(0%)およびIgG1-Campathで測定された細胞溶解(100%)に対して正規化した。
Wien 133細胞におけるIgG1-Campath-E430GのCDC用量応答曲線下面積はWTと比べておよそ3倍増大したが、322位のリジンをグルタミン酸(E)に置換することにより約18%まで低下した(図14)。同様に、IgG2-Campath-E430GによるCDCは、変異K322Eを導入するとバックグラウンドレベルまで低下した。また、E430GとK322Eの両方の変異を含むIgG3およびIgG4アイソタイプ変異体は、バックグラウンドレベルより上のCDC溶解を示さなかった。これらのデータは、322位のリジンをグルタミン酸に置換すると、IgG1-Campath-E430GのIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4アイソタイプ変異体によるCDC有効性の効率的な阻害がもたらされたことを示す。
実施例19:増強されたFc-Fc相互作用を誘導する異なる変異を有するCampath変異体のインビトロCDC有効性に対する変異P329RおよびK322Eの効果
インビトロCDC有効性に対する変異P329RおよびK322Eの効果を、抗体IgG1-Campathの異なるFc-Fc相互作用促進変異体を用いて試験した。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでWien 133細胞において、20%NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。三連の実験の用量-応答曲線下面積を、対数変換濃度軸を用いてGraphPad Prism 7.02により計算し、アイソタイプ対照抗体IgG1-b12で測定された細胞溶解(0%)およびIgG1-Campathで測定された細胞溶解(100%)に対して正規化した。Wien 133細胞におけるFc-Fc相互作用促進変異E345Kを含むIgG1-Campath-E345KのCDC用量応答曲線下面積はWTと比べておよそ2.4倍増大した。329位のプロリンをアルギニン(R)に置換するとCDCがおよそ8%に制限された。さらに、増大したFc-Fc相互作用を有する他の2つの変異体E345RおよびE345R/E430G/S440Y(RGY)へのP329Rの導入により、CDC活性が、親IgG1-Campath抗体で観察されたものより低いレベルまで制限された(図15)。
抗体IgG1-Campath-E345Kにおいて322位のリジンをグルタミン酸(E)に置換すると、CDC用量応答曲線下面積が親IgG1-Campath抗体のもののおよそ240%から24%に減少した。増大したFc-Fc相互作用を有する変異体E345RへのK322Eの導入により、この変異体のCDC活性が親IgG1-Campath抗体で観察されたものの60%に制限された(図15)。しかしながら、K322Eでは、変異P329Rと対照的に、変異体RGYのCDCはIgG1-Campathのものより下のレベルまでは制限できなかった。
これらのデータは、C1q結合部位での変異P329RまたはK322Eによる直接C1q結合の阻害が、増強されたFc-Fc相互作用を促進させる変異、例えば、細胞表面でのIgG六量体における多価C1q結合部位の形成を促進させるE345RおよびRGYによって一部代償され得ることを示唆する。IgG1-Campath-P329R-RGYはIgG1-Campath-K322E-RGYより低いCDC活性を示したため、P329RはK322Eより強力な直接C1q結合の阻害因子のようである。
要約すると、これらのデータは、329位のプロリンをアルギニンに、または322位のリジンをグルタミン酸に置換することによって、異なるFc-Fc相互作用強度を有するIgG1-Campath変異体のCDC有効性を阻害することができたことを示す。
実施例20:増強されたFc-Fc相互作用を有する抗CD20抗体のインビトロCDC有効性に対する変異P329R、P329D、およびK322Eの効果
インビトロCDC有効性に対する変異P329R、P329D、およびK322Eの効果を、抗CD20抗体IgG1-11B8(II型)およびIgG1-7D8(I型)(WO2004/035607)の変異体を用いて試験した。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでWien 133細胞において、20%NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。
IgG1-11B8は検出可能なCDCを示さなかったが、増強されたFc-Fc相互作用を誘導する変異E430Gを導入すると効率的な細胞溶解が促進された(IgG1-11B8-E430G, 図16)。変異P329RおよびK322Eではどちらも、IgG1-11B8-E430GのCDC活性が、非結合性アイソタイプ対照抗体IgG1 b12で観察されたバックグラウンド溶解レベルまで制限された。
IgG1-7D8は、Wien 133細胞のCDCの誘導能を有していたが、CDC有効性はFc-Fc相互作用増強変異E430Gの導入によって刺激された。変異P329RまたはP329Dの導入により、CDC活性が野生型親抗体IgG1-7D8のものより下のレベルまで抑制された。理論に制限されないが、B細胞受容体会合によって媒介されるFc領域非依存性の付属的なCDCが、CD20に対するI型抗体に典型的な、IgG1-7D8-P329R-E430GおよびIgG1-7D8-P329D-E430Gで検出された残留CDCに寄与しているのかもしれない。
これらのデータは、322位のリジンをグルタミン酸に、または329位のプロリンをアルギニンもしくはアスパラギン酸に置換すると、2種類の異なる抗CD20抗体のCDC有効性の阻害がもたらされたことを示す。
実施例21 増強されたFc-Fc相互作用を有する抗CD38抗体のインビトロFcγR結合に対するK322EまたはP329X変異の効果
FcγRIの単量体型細胞外ドメイン(ECD)、ならびにFcγRIIAアロタイプ131H、FcγRIIAアロタイプ131R、FcγRIIB、FcγRIIIAアロタイプ158F、およびFcγRIIIAアロタイプ158VのECDの二量体型変異体に対するIgG1-005抗体変異体の結合を、精製抗体を用いたELISAアッセイにおいて試験した。
FcγRIに対する結合の検出のため、96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, Germany)をHisタグ化FcγRI ECD(1μg/ml)(PBS中)で一晩4℃にてコートし、洗浄し、200μL/ウェルのPBS/0.2%のBSAで1時間、室温(RT)にてブロックした。インキュベーション間に洗浄を伴って、プレートを逐次、100μL/ウェルのIgG1-005抗体変異体の希釈列(5倍段階で0.0013から20μg/mLまで)とともにPBST/0.2%のBSA中で室温にて1時間、および100μL/ウェルの抗ヒト-カッパLC-HRP(Sigma-Aldrich, A-7164, 1:5,000)とともにPBST/0.2%のBSA中で室温にて30分間、検出抗体として室温で30分間、インキュベートした。1 mg/mLの2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS;Roche, Mannheim, Germany)を用いて発色を約15分間、行なった。100μLの2%シュウ酸の添加によって反応を停止させた。
二量体型FcγR変異体に対する結合の検出のため、96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, Germany)をヤギF(ab')2-抗ヒト-IgG-F(ab')2(Jackson Laboratory, 109-006-097, 1μg/ml)(PBS中)で一晩4℃にてコートし、洗浄し、200μL/ウェルのPBS/0.2%のBSAで1時間、室温(RT)にてブロックした。インキュベーション間に洗浄を伴って、プレートを逐次、100μL/ウェルのIgG1-005抗体変異体の希釈列(5倍段階で0.0013から20μg/mLまで)とともにPBST/0.2%のBSA中で室温にて1時間、100μL/ウェルの二量体型のHisタグ化C末端ビオチン化FcγR ECD変異体(1μg/mL)とともにPBST/0.2%のBSA中で室温にて1時間、および検出抗体として100μL/ウェルのストレプトアビジン-ポリHRP(CLB, M2032, 1:10.000)とともにPBST/0.2%のBSA中で室温で30分間、インキュベートした。1 mg/mLのABTS(Roche, Mannheim, Germany)を用いて発色を約10分間(IIA-131H、IIA-131R、IIIA-158V)、20分間(IIIA-158F)、または30分間(IIB)行なった。100μLの2%シュウ酸の添加によって反応を停止させた。
吸光度を405 nmにおいて、マイクロプレートリーダー(BioTek, Winooski, VT)で測定した。対数変換データを、傾きが可変のシグモイド用量-応答曲線をGraphPad Prism 7.02ソフトウェアを用いてフィッティングすることによって解析した。用量-応答曲線下面積を、対数変換濃度軸を用いて計算した。
K322Eは、Fc-Fc増強変異を含む抗CD38抗体によるCDCを強力に阻害したが(実施例3および4)、この変異が異なるFcγR変異体への抗体結合に対して有する効果は限定的であり(図17)、実施例10で観察されたADCC活性の保持と整合する。対照的に、Fc-Fc増強抗体変異体にP329の変異(P329A/G/D/K/R)を導入すると、FcγRIIA-131H(図17C)、FcγRIIA-131R(図17D)、FcγRIIB(図17B)、FcγRIIIA-158F(図17E)、およびFcγRIIIA-158V(図17F)に対する結合がL234A/L235A/P329G/E430G(AAGG)およびL234F/L235E/P329D/E430G(PEDG)と同等の本質的にバックグラウンドレベルまで低下した。興味深いことに、異なるP329の置換を含む抗体は、FcγRIに対するその結合が異なっていた(図17A)。変異P329AおよびP329GではFcγRIに対して相当な結合が保持されたが、置換P329D、P329K、およびP329Rでは同様にFcγRIに対する結合がL234A/L235A/P329G/E430G(AAGG)およびL234F/L235E/P329D/E430G(PEDG)と同等の本質的にバックグラウンドレベルまで低下した。
結論として、変異体K322EはCDCを強力に抑制することができた(実施例3、4)が、試験したすべてのFcγR変異体に対する結合を保持した。P329D、P329K、およびP329Rの置換はCDC(実施例3、6、11)を強力に阻害したが、加えて、試験したすべてのFcγRに対するFc-Fc増強抗体の結合もブロックした(図17)。対照的に、変異P329AまたはP329Gを含むFc-Fc増強抗体では、FcγRIに対して相当な結合が保持された。
実施例22:増強されたFc-Fc相互作用を有する抗CD20+抗CD52抗体混合物のインビトロCDC有効性に対する変異P329Rの効果
インビトロCDC有効性に対する変異P329Rの効果を、抗CD20抗体IgG1-11B8と抗CD52抗体IgG1-Campathの変異体混合物を用いて試験した。異なる濃度の精製抗体(0.001~60.0μg/mLの範囲の終濃度)を、インビトロCDCアッセイでWien 133細胞において、20%NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。異なる変異:増強されたFc-Fc相互作用を誘導するE430G;抗体に対する直接C1q結合を阻害するP329R;および自己Fc-Fc相互作用を抑止し、交差相補的Fc-Fc相互作用によるヘテロ六量体型抗体複合体の形成を促進させる変異K439EまたはS440Kのいずれかを、抗体IgG1-11B8およびIgG1-Campathに導入した。また、対照として、1種類の抗体を非結合性アイソタイプ対照抗体IgG1-b12またはIgG1-b12-E430Gと1:1で混合し、個々の成分およびこれらの成分で構成された混合物の濃度の直接比較を可能にした。三連の実験の用量-応答曲線下面積を、対数変換濃度軸を用いてGraphPad Prism 7.02により計算し、アイソタイプ対照抗体IgG1-b12で測定された細胞溶解(0%)およびIgG1-Campath-E430G + IgG1-11B8-E430Gの混合物で測定された細胞溶解(100%)に対して正規化した。
IgG1-Campath-E430GとIgG1-11B8-E430Gの1:1の混合物では効率的な細胞溶解が促進された(図18)。変異K439Eの導入によってIgG1-Campath-E430GのCDC有効性が低減されたが、IgG1-Campath-P329R-E430G-K439Eをもたらすためにさらなる変異P329Rを導入すると、CDC活性が、アイソタイプ対照IgG1-b12およびIgG1-b12-E430Gで観察された溶解によって規定されるバックグラウンドレベルまで低下した(図18)。単独変異S440Kおよび二重変異S440K-P329Rではともに、IgG1-11B8-E430GのCDC有効性がバックグラウンドレベルに制限された。
IgG1-11B8-E430G-S440Kを部分活性抗体IgG1-Campath-E430G-K439Eに添加すると、CDC活性が、IgG1-Campath-E430G+IgG1-11B8-E430Gのものと同様のレベルまで復活したが、IgG1-11B8-P329R-E430G-S440KをIgG1-Campath-E430G-K439Eに添加すると、IgG1-Campath-E430G-K439Eと比べた場合、CDC活性の一部回復がもたらされた。ともに検出可能なCDC活性を示さなかったIgG1-11B8-E430G-S440KをIgG1-Campath-P329R-E430G-K439Eに添加すると、飽和標的結合時のおよそ56%細胞溶解を回復した。対照的に、IgG1-11B8-P329R-E430G-S440KをIgG1-Campath-P329R-E430G-K439Eに添加すると、バックグラウンドレベルより上のCDC活性は生じなかった。
これらのデータは、P329R変異により、IgG-E430G-K439E+IgG-E430G-S440K抗体混合物の選択性が、この2つの成分のうちの一方の単剤活性が抑制されることによって改善されたことを示す。驚くべきことに、個々の成分の両方が検出可能なCDC活性を示さなかった場合であっても、なお、2種類の抗体のうちの一方のみがP329R変異を含む混合物でCDC活性が一部復活した。理論に制限されないが、ヘテロ六量体型IgG構築体内の3つの非変異型P329R不含結合部位に対するC1qのアビディティが、部分CDC活性を回復させるのに充分に高いのかもしれない。対照的に、例えば、ともにP329R変異を含むAbの混合物の6つのすべてのC1q結合部位をなくすと、CDC活性がバックグラウンドレベルまで低下した。
実施例23:増強されたFc-Fc相互作用を有する抗CD20+抗CD52抗体混合物のインビトロCDC有効性に対する変異K322Eの効果
インビトロCDC有効性に対する変異K322Eの効果を、抗CD20抗体IgG1-11B8と抗CD52抗体IgG1-Campathの変異体混合物を用いて試験した。異なる濃度の精製抗体(0.001~30.0μg/mLの終濃度範囲)を、インビトロCDCアッセイでWien 133細胞において、20%NHSを用いて本質的に実施例2に記載のようにして試験した。異なる変異:増強されたFc-Fc相互作用を誘導するE430G;抗体に対する直接C1q結合を阻害するK322E;および自己Fc-Fc相互作用を抑止し、交差相補的Fc-Fc相互作用によるヘテロ六量体型抗体複合体の形成を促進させる変異K439EまたはS440Kのいずれかを、抗体IgG1-11B8およびIgG1-Campathに導入した。三連の実験の用量-応答曲線下面積を、対数変換濃度軸を用いてGraphPad Prism 7.02により計算し、アイソタイプ対照抗体IgG1-b12で測定された細胞溶解(0%)およびIgG1-Campath-E430G + IgG1-11B8-E430Gの混合物で測定された細胞溶解(100%)に対して正規化した。
IgG1-Campath-E430GとIgG1-11B8-E430Gの1:1の混合物では効率的な細胞溶解が促進された(図19)。変異K439Eの導入によってIgG1-Campath-E430GのCDC有効性が低減されたが、IgG1-Campath-K322E-E430G-K439Eをもたらすためにさらなる変異K322Eを導入すると、CDC活性が、非結合性対照IgG1-b12で観察されたバックグラウンドレベルまで低下した(図19)。単独変異S440Kおよび二重変異S440K-K322Eではともに、IgG1-11B8-E430GのCDC有効性がバックグラウンドレベルに制限された。
IgG1-11B8-E430G-S440Kを部分活性抗体IgG1-Campath-E430G-K439Eに添加すると、CDC活性が、IgG1-Campath-E430G+IgG1-11B8-E430Gで観察された最大レベルと同様のレベルまで復活し、また、一方で、IgG1-11B8-K322E-E430G-S440KとIgG1-Campath-E430G-K439Eとの組合せでは、ほぼ最大のCDC活性が回復した。ともに単剤としては検出可能なCDC活性を示さなかったIgG1-11B8-E430G-S440KとIgG1-Campath-K322E-E430G-K439Eの混合物では細胞溶解がおよそ90%まで回復した。対照的に、IgG1-11B8-K322E-E430G-S440KをIgG1-Campath-K322E-E430G-K439Eに添加すると、およそ31%の最大細胞溶解がもたらされた。
これらのデータは、直接C1q結合を阻害する変異K322Eの導入により、K439E + S440K抗体混合物中の個々の成分のCDC活性をさらに抑制することができたことを示す。驚くべきことに、個々の成分の両方が単剤として検出可能なCDC活性を示さなかった場合であっても、2種類の抗体のうちの一方のみがK322E変異を含む混合物で、なおCDCによるほぼ最大の細胞溶解が復活し得た。
実施例24:増強されたFc-Fc相互作用を有する抗CD20+抗CD52抗体混合物による異なる細胞株の選択的死滅
実施例23では、Fc-Fc増強型のCD20に対する抗体とCD52に対する抗体の特定の組合せで、これら抗体の各々が、Fc-Fc相互作用による自己オリゴマー化をブロックするK439EまたはS440Kのいずれかの変異を含んでいるのなら、両成分が同時に存在している場合のみ、Wien 133標的細胞を認識可能なレベルで選択的に溶解させることができることが示された。混合物の選択的活性は、さらなるK322E変異(実施例23)またはP329R変異(実施例22)を導入することにより抗CD52抗体の直接C1q結合が抑制された場合、その個々の成分と比べて改善された。個々の成分と比べた場合の抗CD20 + 抗CD52抗体の混合物の選択的なCDC媒介性細胞溶解を異なる7種類の細胞株について、インビトロCDCアッセイを使用して20%NHSを用いて、本質的に実施例2に記載のようにして試験した。異なる変異:増強されたFc-Fc相互作用を誘導するE430G;抗体に対する直接C1q結合を阻害するK322E;および自己Fc-Fc相互作用を抑止し、交差相補的Fc-Fc相互作用によるヘテロ六量体型抗体複合体の形成を促進させる変異K439EまたはS440Kのいずれかを、抗体IgG1-11B8およびIgG1-Campathに導入した。
インビトロCDC有効性を、抗CD20抗体IgG1-11B8と抗CD52抗体IgG1-Campathの変異体混合物を用いて試験した。終濃度30.0μg/mLの精製抗体を、インビトロCDCアッセイで20%NHSを用いて、本質的に実施例2に記載のようにして、7種類のヒトがん細胞株:Daudi(ATCC #CCL-213)、Raji(ATCC #CCL-86)、Ramos(ATCC #CRL-1596)、REH(DSMZ #ACC22)、U266B1(ATCC #TIB-196)、U-698-M(DSMZ #ACC4)、およびWien 133(Dr.Geoff Hale(BioAnaLab Limited, Oxford, UK)の厚意による提供)において試験した。細胞溶解は三連の実験を平均し、細胞株ごとに、どの抗体が最も高度な溶解を誘導したかに応じて、アイソタイプ対照抗体IgG1-b12で測定された細胞溶解(0%)ならびにIgG1-Campath-E430Gで測定された細胞溶解(100%, REH、U266B1、およびWien 133細胞の場合)またはIgG1-11B8-E430Gで測定された細胞溶解(100%, Daudi、Raji、Ramos、およびU-698-M 細胞の場合)に対して正規化した。
この7種類の細胞株の細胞表面におけるCD52およびCD20の発現を、間接免疫蛍光によりQIFIKIT(Biocytex, カタログ番号CP010)を用いて調べた。100,000個の細胞/ウェルをポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greiner Bio-One, カタログ番号650101)に播種した。次の工程を4℃で実施した。細胞を300×gで3分間の遠心分離によってペレットにし、飽和濃度10μg/mLのヒトモノクローナル抗CD52抗体IgG1-Campathまたは抗CD20抗体IgG1-11B8を含む50μLのPBS中に再懸濁させた。4℃で30分間のインキュベーション後、細胞を、300gで3分間の遠心分離によってペレットにし、150μLのFACSバッファー(PBS + 0.1%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)+ 0.02%(w/v)のアジ化ナトリウム)中に再懸濁させた。製造業者の使用説明書に従ってセットアップ/キャリブレーションビーズをプレートに添加した。細胞とビーズを並行して、150μLのFACSバッファーでもう2回洗浄し、50μLのFITCコンジュゲートマウスIgG吸収ヤギ抗ヒトIgG(BioCytex)中に再懸濁させた。二次抗体を4℃で30分間インキュベートした。細胞とビーズを150μLのFACSバッファーで2回洗浄し、150μLのFACSバッファー中に再懸濁させた。細胞を固定剤(BioCytex)中に再懸濁させ、遮光下で4℃にて5~60分間インキュベートした。免疫蛍光をFACS Canto ll(BD Biosciences)で、生存細胞集団において10,000回の事象を記録することにより測定した。キャリブレーションビーズの蛍光強度の幾何平均を用いて検量線を計算し、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software 7, San Diego, CA, USA)を用いてゼロ強度およびゼロ濃度にした。各細胞株について、原形質膜上に発現された抗原分子の数の推定値である抗体結合能(ABC)を、ヒト抗体染色細胞の幾何平均蛍光強度を用いて、検量線の方程式(標準曲線から未知部分の内挿、GraphPad Softwareを使用)に基づいて計算した後、一次抗体なしでインキュベートしたウェルで測定されたバックグラウンドを差し引いた。ABCとして発現された分子の数を、2つの独立した実験で平均し、表4にCD52発現から順に要約する。
IgG1-Campath-E430GまたはIgG1-11B8-E430Gによって誘導された溶解は、標的発現により異なっていた(図20):低CD20発現のU-266B1およびREH細胞は、抗CD20 Ab IgG1-11B8-E430Gによる溶解に対して復活性であり、抗CD52 Ab IgG1-Campath-E430Gに対して感受性であった。対照的に、低CD52発現のDaudi細胞は、IgG1-Campath-E430Gに対して復活性であったがIgG1-11B8-E430Gに対して感受性であった。
CD52とCD20の両方が細胞表面に存在している場合にのみAb六量体の選択的形成を得るため、さらなる変異K439E、S440K、および/またはK322EをIgG1-Campath-E430GまたはIgG1-11B8変異体に導入し、単剤活性を抑制した。IgG1-Campath-E430G-K439Eは、比較的低CD52発現の細胞株U-698-MおよびRajiにおいてIgG1-Campath-E430Gと比べて低下した単剤活性を示したが、高CD52発現の細胞株U-266B1、Wien 133、Ramos、およびREHではIgG1-Campath-E430Gと同様の最大溶解レベルを示した。IgG1-Campath-K322E-E430G-K439E(Campath-EGE)をもたらすさらなる変異K322Eを導入することによってC1q結合を低下させた場合、試験した7種類すべての細胞株で単剤活性が消失した。IgG1-11B8-E430Gの活性は、IgG1-11B8-E430G媒介性溶解に感受性のすべての細胞株で、S440K変異のみの使用で既にブロックされ得;また、K322E、E430G、およびS440K変異を含むIgG1-11B8-EGKは、非結合性IgG1-b12によって規定されるバックグラウンドと同等の単剤活性を示した。
IgG1-Campath-E430G-K439EをIgG1-11B8-E430G-S440Kと混合した場合、7種類の細胞株はすべて溶解され、選択性の非存在が示された。著しく対照的に、IgG1-Campath-K322E-E430G-K439E(Campath EGE)とIgG1-11B8-E430G-S440Kの混合物は、20,000コピー/細胞より上のレベルでのCD20とCD52の両方の表面発現を示す細胞株のみ、すなわち、Wien 133、Ramos、U-698-M、およびRajiの選択的な溶解を示した。IgG1-Campath-EGE活性は、細胞表面に動員されないIgG1-b12-E430G-S440K対照抗体を用いて回復できなかった。対照的に、U-266B1、REH、およびDaudiは、CD20またはCD52のいずれかの低発現のため溶解されなかった。これは、IgG1-Campath-EGEによるC1qの動員がIgG1-11B8-E430G-S440Kとのそのヘテロオリゴマー化に依存性であることを示唆する。実際、C1q結合を低下させるK322E変異を同じく含むCD20抗体IgG1-11B8-K322E-E430G-S440K(IgG1-11B8-EGK)は、IgG1-Campath-EGEに添加した場合、効率的な細胞溶解は回復できなかった。
結論として、認識可能なレベルのCD20とCD52をともに発現している細胞の選択的死滅は、抗体IgG1-Campath-K322E-E430G-K439EとIgG1-11B8-E430G-S440Kの混合物を用いて達成できた;対照的に、この混合物は、CD20またはCD52のいずれかを<20,000コピー/細胞のレベルで発現する細胞株のバックグラウンド溶解レベルを示した。
表4に、異なる細胞株のCD52およびCD20の細胞表面発現を、QIFIKITを用いて測定された、細胞あたりの特異的抗体結合単位の数で表示して要約する。
実施例25:増強されたFc-Fc相互作用を有する抗OX40抗体によるJurkat細胞上のOX40の活性化に対するK322EまたはP329R変異の効果
OX40リガンドによるOX40/CD134受容体の架橋は、OX40受容体発現T細胞の増殖を誘導し得る(Gramaglia, I., Weinberg, A. D., Lemon, M., and Croft, M. (1998) Ox-40 ligand:a potent costimulatory molecule for sustaining primary CD4 T cell responses. J. Immunol. 161, 6510-6517)。OX40/CD134シグナル伝達に対する変異K322EまたはP329Rの効果を、抗OX40抗体IgG1-SF2(米国特許2014/0377284)の異なる変異体を用いて、OX40 Bioassay Kit(Promega, #CS197704)を用いて製造業者によって供給された使用説明書に本質的に従って試験した。Thaw-and-Use GloResponse NFκB-luc2/OX40 Jurkat細胞(Promega, #CS197704)は、ヒトOX40およびNFAT応答エレメントの下流のルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現し、OX40が活性化されるとルシフェラーゼを発現する。25μLの新たに解凍した細胞を一晩、96ウェル白色F字底Optiplate(Perkin Elmer, # 6005299)内の25μLのRPMI 1640培地(Promega, #G708A)中、以下に詳述する異なる供給源に由来する8%の血清の存在下でインキュベートした。翌日、2.5μg/mL(最終濃度)の抗体または1.5μg/mL(最終濃度)の精製組換えOX40リガンド(Biolegend, #555704)を、培地中の細胞に最終体積80μLになるまで添加した。細胞をさらに5時間インキュベートした後、Bio-Glo Reagent(Promega, #CS197704)を添加した。周囲温度で5~10分間のインキュベーション後、発光を、Envision MultiLabel Plateリーダーを用いて記録した。比較した血清供給源は、ウシ胎仔血清(FBS, Promega Ref.J121A)、56℃で30分間熱不活化したFBS、ヒトC1q枯渇血清(Quidel, #A509)、ヒト組換えC1qを補ったヒトC1q枯渇血清(1.0μg/mLの最終濃度;Quidel, #A400)、またはヒト正常血清(NHS, Sanquin, Ref.M0008AC)であった。
OX40応答アッセイにおける陽性対照として使用した組換えOX40リガンドは、非結合性の陰性対照抗体IgG1-b12と比べて明白な応答シグナルを誘導した(図21)。試験化合物によって誘導されたOX40応答を、抗体なしのインキュベーション(0%)およびOX40リガンドとのインキュベーション(100%)に対して正規化した。野生型抗OX40抗体IgG1-SF2は、血清の供給源に関係なく、本質的に陰性対照抗体IgG1-b12と同様のOX40応答レベルを誘導した。対照的に、細胞表面結合後に抗体間のFc-Fc相互作用を誘導するE345R変異のみを含むIgG1-SF2変異体は、さまざまなOX40応答を誘導し、C1qを不活性化または枯渇させた場合、OX40リガンドのレベルを超えた(>100%)(図21B/D)。
IgG1-SF2-E345RへのK322EまたはP329R変異の導入は、活性な補体の非存在下では、すなわち、熱不活化FBS(図21B)およびC1q枯渇血清(図21D)中ではOX40応答に有意に影響しなかった。驚くべきことに、K322EまたはP329R変異をIgG1-SF2-E345Rに導入すると、活性な補体の存在下で、すなわち、非熱不活化FBS(図21A)、1.0μg/mLのヒト組換えC1qの存在下のヒトC1q枯渇血清(図21C)およびNHS(図21E)中でOX40活性化の増強がもたらされた。
この実施例に記載した驚くべき観察結果は、理論に制限されないが、おそらく、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC)における差によって説明することができるであろう:活性なC1qが存在しない場合(図21B/D)、IgG1-SF2-E345Rは、OX40活性化を誘導するために既に最適にクラスター形成することができ、この場合、C1q阻害変異K322EまたはP329Rの導入は効果を有しない。対照的に、IgG1-SF2-E345Rによる至適OX40活性化は、活性なC1qが存在する場合は障害され(図21A/C/E)、C1q阻害変異K322EまたはP329Rの導入により、活性なC1qの非存在下の活性と同等の至適OX40活性化の復活がもたらされる。C1qの非存在下で記録されたルシフェラーゼ活性と比較した場合の活性なC1qの存在下におけるIgG1-SF2-E345Rで観察されたルシフェラーゼ活性の低下はCDC活性によって説明することができよう。それは、Jurkatレポーター細胞株における高OX40発現が該細胞を、E345R Fc-Fc増強変異を有するIgG1-SF2-E345R抗体によるCDCに対して感受性にし得るためである。そのため、さらなる変異K322EまたはP329R(これらはどちらも、Fc-Fc増強変異を含む抗体のC1q結合およびCDC活性を強く低下させ得る(実施例3に記載;図2))の導入により、このCDC活性が有効にブロックされ、したがって、活性な補体の存在下でも至適OX40応答誘導が可能となり得る。
要約すると、組換えOX40リガンドによって誘導されるものを超える強力なOX40応答が、Fc-Fc増強変異E345RとC1q結合阻害変異K322EまたはP329Rの両方を含む抗OX40抗体で、活性な補体の存在下または非存在下の両方において観察された。対照的に、野生型抗OX40抗体IgG1-SF2は、このようなアッセイ条件下で検出可能なOX40応答を誘導できず、抗体IgG1-SF2-E345Rのみ、補体が不活性である条件下で最大OX40応答が可能であった。結論として、Fc-Fc増強変異とC1q阻害性変異K322EまたはP329Rの組合せにより、驚くほど強力なOX40作動性抗体が得られ、これは、生理学的に重要な血清条件下でT細胞の増殖を最大限にし得る。
均等物
当業者は、常套的な範囲内の実験手法を用いて、本明細書に記載した発明の具体的な態様の多くの均等物を認識し、または確認することができよう。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。また、従属項に開示した態様の任意のあらゆる組合せが本発明の範囲に含まれることが想定される。