JP7275401B2 - ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンの製造方法 - Google Patents
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Description
具体的には、本発明は、高い結晶化温度Tcを有するポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンの製造方法に関する。
本発明によれば、以下のポリエーテルエーテルケトン等を提供できる。
1.下記式(1)で表される繰り返し単位を含み、結晶化温度Tcが255℃以上であり、下記条件(A)及び(B)の一方又は両方を満たす、ポリエーテルエーテルケトン。
(B)塩素原子の含有量bが2mg/kg以上である。
2.原料に4,4’-ジクロロベンゾフェノンを含む、1に記載のポリエーテルエーテルケトン。
3.メルトフローインデックスが100g/10min以下である、1又は2に記載のポリエーテルエーテルケトン。
4.還元粘度ηsp/cが0.40~1.50dl/gである、1~3のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトン。
5.4,4’-ジクロロベンゾフェノンとハイドロキノンとを、反応混合物の最高温度を260~320℃とする条件で反応させることを含む、ポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
6.前記反応混合物を150℃以上に昇温した後、温度保持することを含む、5に記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
7.前記反応混合物を150℃以上に昇温した後、昇温と温度保持とを複数回繰り返すことを含む、5又は6に記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
8.前記反応混合物を180~220℃において0.5~2時間保持することを含む、5~7のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
9.前記反応混合物を230~270℃において0.5~2時間保持することを含む、5~8のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
10.前記反応混合物を280~320℃において1~8時間保持することを含む、5~9のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
11.前記反応混合物の温度が150℃に達した時点から前記最高温度に達する時点までの時間が2.0~10時間である、5~10のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
12.製造されるポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度Tcが255℃以上である、5~11のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
13.製造されるポリエーテルエーテルケトンのメルトフローインデックスが100g/10min以下である、5~12のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
14.製造されるポリエーテルエーテルケトンの還元粘度ηsp/cが0.40~1.00dl/gである、5~13のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
15.前記最高温度が290℃超である、5~14のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
16.前記反応混合物が、溶媒として1種の溶媒のみを含む、5~15のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
17.前記反応混合物が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム及びフッ化セシウムのいずれも含まない、5~16のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
また、以下において記載される本発明に係る態様の個々の実施形態のうち、互いに相反しないもの同士を2つ以上組み合わせることが可能であり、2つ以上の実施形態を組み合わせた実施形態もまた、本発明に係る態様の実施形態である。
本発明の一態様に係るPEEKは、下記式(1)で表される繰り返し単位を含み、結晶化温度Tcが255℃以上であり、下記条件(A)及び(B)の一方又は両方を満たす。
(B)塩素原子の含有量bが2mg/kg以上である。
PEEKの結晶化温度Tcの上限は格別限定されず、例えば、300℃以下、295℃以下、290℃以下、285℃以下又は280℃以下であり得る。これにより、例えば、融解させたPEEKを加工する際に、加工の途中(例えば金型への充填の途中)で結晶化が開始されることを好適に防止できる。また、成形温度(例えば金型の温度)を低くすることもできる。
PEEKの結晶化温度Tcは、260℃以上であることが好ましい。また、PEEKの結晶化温度Tcは、例えば255~300℃、好ましくは258~290℃、より好ましくは260~280℃である。
尚、PEEKの結晶化温度Tcは、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
ここで、フッ素原子の含有量aは、PEEKの分子構造中に含まれるフッ素原子の含有量a1と、PEEKの分子構造中に含まれない成分(遊離成分)として含まれるフッ素原子の含有量a2との合計である。
また、PEEKの塩素原子の含有量bは、例えば2~10000mg/kg、好ましくは700~9000mg/kg、より好ましくは1000~8000mg/kgである。
ここで、塩素原子の含有量bは、PEEKの分子構造中に含まれる塩素原子の含有量b1と、PEEKの分子構造中に含まれない成分(遊離成分)として含まれる塩素原子の含有量b2との合計である。
一実施形態において、塩素原子の含有量b2は、0mg/kg以上、2mg/kg以上、5mg/kg以上又は10mg/kg以上である。上限は格別限定されず、例えば500mg/kg以下、400mg/kg以下又は300mg/kg以下であり得る。
<PEEKに遊離成分である塩化カリウムとして含まれる塩素原子の測定方法>
固体試料(PEEK)をブレンダーで粉砕してアセトン、水の順で洗浄し、180℃の防爆乾燥機で乾燥する。尚、PEEKを生成する反応の直後の反応混合物(生成物)を試料として用いる場合は、反応終了後、生成物を冷却固化して上記固体試料とする。使用するブレンダーは格別限定されず、例えばワーリング社製7010HSを用いることができる。
乾燥した試料約1gを秤量し、そこに超純水100ml(l:リットル)を加え、液温50℃において20分間撹拌し、放冷後、濾過することで、固形分と水溶液とに分離する。水溶液をイオンクロマトグラフィーで分析し、水溶液中の塩化物イオンを、既知濃度のリファレンスから作成した検量線に基づいて定量する。イオンクロマトグラフの条件は下記のとおりである。
<イオンクロマトグラフ>
分析装置:Metrohm 940 IC Vario
カラム:ガードカラムとして(Metrosep A Supp 5 Guard)及び分離カラムとして(Metrosep A Supp 4)を連結して使用(カラムは共にMetrohm社製)
溶離液:Na2CO3(1.8mmol/l)+NaHCO 3 (1.7mmol/l)
流速:1.0ml/min
カラム温度:30℃
測定モード:サプレッサ方式
検出器:電気伝導度検出器
<PEEKに遊離成分である4,4’-ジクロロベンゾフェノンとして含まれる塩素原子の測定方法>
固体試料(PEEK)をブレンダーで粉砕してアセトン、水の順で洗浄し、180℃の防爆乾燥機で乾燥する。尚、PEEKを生成する反応の直後の反応混合物(生成物)を試料として用いる場合は、反応終了後、生成物を冷却固化して上記固体試料とする。使用するブレンダーは格別限定されず、例えばワーリング社製7010HSを用いることができる。
乾燥した試料約1gをナスフラスコに秤量し、そこにアセトン10mlと沸騰石を加えウォーターバスで5時間加熱還流する。室温に放冷後、濾過により固形分を除去する。得られたアセトン溶液をエバポレーターにて乾固させたのち、ホールピペットでアセトン10mlを加えて再溶解する。これをガスクロマトグラフィーで測定することで、試料中の4,4’-ジクロロベンゾフェノンの量(mg/kg)を算出する。PEEKに遊離成分である4,4’-ジクロロベンゾフェノンとして含まれる塩素原子の量(mg/kg)は、以下の計算式より換算する。
PEEKに遊離成分である4,4’-ジクロロベンゾフェノンとして含まれる塩素原子の量(mg/kg)=試料中の4,4’-ジクロロベンゾフェノンの量(mg/kg)÷251.11(4,4’-ジクロロベンゾフェノンの分子量)×35.45(塩素の原子量)×2
4,4’-ジクロロベンゾフェノンの定量値は、既知濃度のリファレンスから作成した検量線を元に求める。以下に測定条件を示す。
<ガスクロマトグラフ>
分析装置:Agilent Technologies 7890B
GCカラム:Agilent Technologies DB-5MS(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
注入口温度:250℃
オーブン温度:100℃(1min)→30℃/min→250℃(10min)
流速:1ml/min
注入量:1μl
スプリット比:40:1
検出器:FID
検出器温度:250℃
一実施形態に係るPEEKにおいて、式(3)で表される構造単位が分子鎖の1以上の末端に配置される。この場合、該構造単位に結合する末端構造は例えば水素原子(H)等であり得る(末端構造が水素原子(H)であるとき、該構造単位中の酸素原子(O)と共に水酸基が形成される。)。
PEEKの末端構造は、例えば、上述した塩素原子(Cl)や水酸基が水素原子(H)等に置き換わった構造等であってもよい。尚、末端構造はこれらの例に限定されず、任意の構造であり得る。
一実施形態において、PEEKは、式(2)及び式(3)で表される構造単位以外の他の構造単位を含まない。但し、分子鎖の末端には上述したように末端構造を有することができる。
式(2)で表される構造単位のmol数は、式(3)で表される構造単位のmol数より大きくても、小さくても、同じでもよい。
PEEKを構成する全モノマーに含まれる式(2)及び式(3)で表される構造単位の合計の割合が100質量%であれば、通常、上記のmol比は1:1である。
また、PEEKのメルトフローインデックスは、例えば0.0001~1500g/10min、好ましくは0.0005~500g/10min、より好ましくは0.001~100g/10minである。
PEEKのメルトフローインデックスは100g/10min以下であることが好ましい。メルトフローインデックスが100g/10min以下であるPEEKは、十分に高分子量化されており、例えば押出機によるペレタイズを好ましく適用できる。
PEEKのメルトフローインデックスは、実施例に記載の方法により測定される値である。
PEEKのメルトフローインデックスは、反応混合物の温度条件(最高温度、温度保持時間、昇温速度など)や反応混合物における原料(4,4’-ジクロロベンゾフェノンとハイドロキノンなど)の比率により調整できる。
PEEKのメルトフローインデックスを、株式会社立山科学ハイテクノロジーズ製メルトインデクサ(L-220)を用いて、JIS K 7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、下記の測定条件で測定する。
[測定条件]
・測定温度(樹脂温度):380℃
・測定荷重:2.16kg
・シリンダ内径:9.550mm
・ダイ内径:2.095mm
・ダイ長さ:8.000mm
・ピストンヘッドの長さ:6.35mm
・ピストンヘッドの直径:9.474mm
・ピストン重量:110.0g(上記測定荷重はピストン重量を含む)
・操作:
試料は事前に150℃で2時間以上乾燥する。試料をシリンダに投入し、ピストンを差し込み6分間予熱する。荷重を加え、ピストンガイドを外してダイから溶融した試料を押し出す。ピストン移動の所定範囲および所定時間(t[s])で試料を切り取り、重量を測定する(m[g])。次式からMIを求める。MI[g/10min]=600/t×m
また、PEEKの還元粘度ηsp/cの好適範囲は、例えば、0.36~1.50dl/g、0.36超1.50dl/g以下、0.37~1.50dl/g、0.40~1.50dl/g、0.46~1.30dl/g又は0.48~1.20dl/gである。これにより、成形時の適切な溶融流動性を確保しつつ、十分な強度を示す成形材料が得られる。
PEEKの還元粘度ηsp/cは、実施例に記載の方法によって測定される値である。この実施例に記載の方法において、測定用の硫酸溶液(試料溶液)におけるPEEK濃度は0.1g/dlである。
PEEKの還元粘度ηsp/cは、反応混合物の温度条件(最高温度、温度保持時間、昇温速度など)や反応混合物における原料(4,4’-ジクロロベンゾフェノンとハイドロキノンなど)の比率により調整できる。下記還元粘度η’sp/cも同様である。
PEEKを120℃で6時間、真空乾燥する。次いで、このPEEKを濃硫酸(純度98質量%)に溶解し、PEEKの濃度C[g/dl]が0.1g/dlとなるようにメスフラスコで調製し、試料溶液を得る。次いで、JIS K 7367-5:2000(ISO 1628-5:1998)に準拠して、25℃の恒温水槽(動粘度測定用恒温槽(トーマス科学器械(株)TV-5S))及びウベローデ粘度計(No.2)を用いて、溶媒(濃硫酸(純度98質量%))の流下時間t0[s]と、試料溶液の流下時間t[s]とを測定し、次式から還元粘度ηsp/cを求める。還元粘度ηsp/c[dl/g]=(t-t0)/(t0×C)
PEEKの還元粘度η’sp/cの好適範囲は、例えば、0.36超1.50dl/g以下、0.37~1.50dl/g、0.40~1.50dl/g、0.46~1.30dl/g又は0.48~1.20dl/gである。これにより、成形時の適切な溶融流動性を確保しつつ、十分な強度を示す成形材料が得られる。
また、PEEKの固有粘度ηinhの好適範囲は、例えば、0.47~2.00dl/g、0.47~1.50dl/g、0.48~1.30dl/g又は0.50~1.20dl/gである。これにより、成形時の適切な溶融流動性を確保しつつ、十分な強度を示す成形材料が得られる。
尚、PEEKの固有粘度ηinhは、下記の測定方法により測定される値である。
PEEKを120℃で6時間、真空乾燥する。次いで、このPEEKを濃硫酸(純度95質量%以上)に溶解し、PEEKの濃度C[g/dl]を変えた複数の試料溶液を得る。その後、JIS K 7367-5:2000(ISO 1628-5:1998)に準拠して、25℃の恒温水槽(動粘度測定用恒温槽(トーマス科学器械(株)TV-5S))及びウベローデ粘度計(No.2)を用いて、溶媒(濃硫酸(純度95質量%以上))の流下時間t0[s]と、試料溶液の流下時間t[s]とを測定し、次式から還元粘度ηsp/cを求める。還元粘度ηsp/c[dl/g]=(t-t0)/(t0×C)
各試料溶液の濃度C[g/dl]を横軸、還元粘度ηsp/cを縦軸として二次元プロットして一次相関式を求め、濃度ゼロ(切片)における還元粘度ηsp/cの値を固有粘度ηinhとして求めることができる。
PEEKの引張強度は、例えば48~200MPa、好ましくは54~150MPa、より好ましくは60~100MPaである。
PEEKの引張強度は、実施例に記載の方法により測定される値である。
本態様に係るPEEKの用途は格別限定されない。PEEKは、例えば、航空宇宙用途、ギア、ベアリング等のような摺動部材、各種樹脂組成物等として好適である。
本態様に係るPEEKを含む成形体は、例えば、航空宇宙用成形体、摺動部材用成形体、3Dプリンター用フィラメントとして好適である。また、該PEEKを含む成形体は、例えば、航空宇宙用射出成形体、摺動部材用射出成形体として好適である。
本発明の一態様に係るPEEKの製造方法は、4,4’-ジクロロベンゾフェノンとハイドロキノンとを、反応混合物の最高温度を260~320℃とする条件で反応させることを含む。
4,4’-ジクロロベンゾフェノン及びハイドロキノンを反応させる工程を経て、これら化合物(モノマー単位)の共重合体として、PEEKを得ることができる。
4,4’-ジクロロベンゾフェノン及びハイドロキノンは、容易に合成でき、また市販品としても入手可能である。
昇温と温度保持とを複数回繰り返すことによって、反応を効率的に進行させることができる。
一実施形態において、本態様に係るPEEKの製造方法は、反応混合物を230~270℃において0.5~2時間、好ましくは0.6~1.8時間、より好ましくは0.7~1.5時間、保持すること(以下、「温度保持(ii)」ともいう)を含む。これにより、原料の揮発を抑制しながら反応を促進することができ、より高分子量のPEEKを得ることができる。
一実施形態において、本態様に係るPEEKの製造方法は、反応混合物を280~320℃において1~8時間、好ましくは1~6時間、より好ましくは1~4時間、保持すること(以下、「温度保持(iii)」ともいう)を含む。これにより、所望の分子量のPEEKを得ることができる。
一実施形態において、本態様に係るPEEKの製造方法は、上記の温度保持(i)~(iii)からなる群から選択される2つ又は3つを含むことができる。2つ又は3つの温度保持は、温度が低いものから順に実施することが好ましい。2つ又は3つの温度保持の間には、反応混合物を昇温することを含むことができる。
溶媒は格別限定されず、例えば、中性極性溶媒を用いることができる。中性極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジメチル安息香酸アミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-イソブチル-2-ピロリドン、N-n-プロピル-2-ピロリドン、N-n-ブチル-2-ピロリドン、N-シクロへキシル-2-ピロリドン、N-メチル-3-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-3-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-3,4,5-トリメチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-エチル-2-ピペリドン、N-イソプロピル-2-ピペリドン、N-メチル-6-メチル-2-ピペリドン、N-メチル-3-エチルピペリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、1-メチル-1-オキソスルホラン、1-エチル-1-オキソスルホラン、1-フェニル-1-オキソスルホラン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
(A)炭酸カリウムの嵩密度が1.2g/ml(l:リットル)以下である。
(B)炭酸カリウムの平均粒子径をD(μm)、比表面積をS(m2/g)としたとき、D/S≦600を満たす。
また、炭酸カリウムの嵩密度は、例えば、0.05g/ml~1.2g/ml、0.05g/ml~1.1g/ml、0.05g/ml~1.0g/ml、0.10g/ml~1.2g/ml、0.10g/ml~1.1g/ml、又は0.10g/ml~1.0g/mlであり得る。
炭酸カリウムの嵩密度が1.2g/ml以下であることによって、得られるPEEKを高分子量化できる。
炭酸カリウムの嵩密度は、下記の方法によって測定される値である。
0.1質量%の精度で秤量した約50gの炭酸カリウム(質量m(g))を圧密せずに、乾燥させた100mlメスシリンダー(最小目盛単位:1ml)に静かに入れる。粉体層の上面を圧密せずに注意深くならし、ゆるみ嵩体積V0(ml)を最小目盛単位まで読み取り、下記式より嵩密度を算出する。
嵩密度(g/ml)=m/V0
尚、ゆるみ嵩体積V0が100mlを超える場合は、試料とする炭酸カリウムの質量mを減じて、ゆるみ嵩体積V0が100ml以下の容量になるよう調整して、ゆるみ嵩体積V0を読み取り、嵩密度を算出する。
また、D/Sの値は、例えば、1~600、1~550、1~500、2~600、2~550、2~500、5~600、5~550、又は5~500であり得る。
D/S≦600であることによって、得られるPEEKを高分子量化できる。
炭酸カリウムの平均粒子径D(μm)は、以下に記載の方法によって測定される値である。
マイクロトラック・ベル(株)製のCAMSIZERを用いて、乾式法により粒度分布測定を行う。試料(炭酸カリウム)を振動フィーダーで測定部に落として、カメラで粒子を撮影して粒子径を測定する。観察した画像を処理する際に、粒子画像の短径からのデータを処理した数値を用いて、測定装置に具備されたプログラムによる自動計算により平均粒子径Dを算出する。
炭酸カリウムの比表面積S(m2/g)は、以下に示す方法によって測定される。
(i)前処理
試料(炭酸カリウム)の前処理として、マイクロトラック・ベル社製のBELPREP vacIIを用いて、100℃、1時間以上の加熱真空排気を実施し、真空度が10Pa(75mTorr)に到達したら前処理完了とする。
(ii)測定
マイクロトラック・ベル社製のBELSORP-miniIIを用いて、液体窒素温度での窒素吸着法による比表面積測定を行う。窒素導入量の設定は、本装置の「簡易モード」で行い、目標相対圧は、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30とする。
(iii)解析
解析ソフトとしてBEL Masterを用いた。解析方法はJIS Z 8830:2013に準拠し、相対圧が高い方の測定結果から4点以上を用いて、BET多点法により比表面積Sを算出する。
炭酸カリウムと併用可能なアルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
これらのアルカリ金属塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
一実施形態において、反応混合物におけるアルカリ金属塩の合計の配合量は、反応混合物に配合するハイドロキノン100mol部に対して、100mol部以上であり、また、180mol部以下、160mol部以下、140mol部以下又は120mol部以下である。アルカリ金属塩の合計の配合量が、100mol部以上であれば、反応時間を短縮できる。アルカリ金属塩の合計の配合量が、180mol部以下であれば、ゲル成分の生成を抑制できる。また、反応混合物におけるアルカリ金属塩の合計の配合量は、反応混合物に配合するハイドロキノン100mol部に対して、例えば100~180mol部、好ましくは100~140mol部、より好ましくは100~120mol部である。
一実施形態において、アルカリ金属塩として炭酸カリウムを上記の配合量で配合する。
mol比([DCBP]:[HQ])は、得られるPEEKの分子量を制御する等の目的で適宜調整できる。
一実施形態において、mol比([DCBP]:[HQ])は、47.5:52.5~52.5:47.5、48.0:52.0~52.0:48.0、48.5:51.5~51.5:48.5、49.0:51.0~51.0:49.0又は49.5:50.5~50.5:49.5である。
4,4’-ジクロロベンゾフェノン(DCBP)のmol数は、ハイドロキノン(HQ)のmol数より大きくても、小さくても、同じでもよい。
一実施形態において、反応混合物の容量は、0.1l以上、0.2l以上、0.3l以上、0.5l以上、1l以上、2l以上、5l以上、10l以上である。上限は格別限定されない。
4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキノン、アルカリ金属塩及び溶媒であるか、
4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキノン、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上のアルカリ金属塩並びにジフェニルスルホンであるか、又は
4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキノン、炭酸カリウム及びジフェニルスルホンである。
尚、「実質的に100質量%」の場合、不可避不純物を含んでもよい。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管に接続した水回収容器を備えた300mlの四口フラスコに、4,4’-ジクロロベンゾフェノン40.572g(0.162mol)、ヒドロキノン17.787g(0.162mol)、炭酸カリウム25.699g(0.186mol)及びジフェニルスルホン139.60gを入れ、窒素ガスを流通させた。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から260℃に昇温
(6)260℃において2時間保持
PEEKのメルトフローインデックスを、株式会社立山科学ハイテクノロジーズ製メルトインデクサ(L-227)を用いて、ASTM D 1238-13に準拠し、樹脂温度380℃、荷重2.16kgにおいて測定した。
PEEK5mgをアルミニウム製のパンに計り取り、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「DSC8500」)を用いて温度走査測定を行った。温度走査は20℃から420℃まで20℃/分での昇温、420℃から20℃まで-20℃/分での降温の順で行い、降温時に観測された結晶化の発熱ピークを読み取って結晶化温度Tcを求めた。
燃焼イオンクロマトグラフ法により、PEEKにおけるフッ素原子の含有量a及び塩素原子の含有量bを測定した。
具体的には、試料を燃焼炉内に導入し、酸素を含む燃焼ガス中で燃焼させ、発生したガスを吸収液に捕集させた後、その吸収液をイオンクロマトグラフにて分離定量した。定量値は、既知濃度のリファレンスから作成した検量線を元に求めた。以下に測定条件を示す。
<試料燃焼>
燃焼装置:株式会社三菱化学アナリテック製AQF-2100H
燃焼炉設定温度:前段800℃、後段1100℃
アルゴン流量:400ml/min
酸素流量:200ml/min
吸収液:過酸化水素水
<イオンクロマトグラフ>
分析装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Integrion
カラム:ガードカラムとして(Dionex IonPac AG12A)及び分離カラムとして(Dionex IonPac AS12A)を連結して使用(カラムは共にDIONEX社製)
溶離液:Na2CO3(2.7mmol/l)+NaHCO 3 (0.3mmol/l)
流速:1.5ml/min
カラム温度:30℃
測定モード:サプレッサ方式
検出器:電気伝導度検出器
尚、上記の測定方法におけるフッ素原子及び塩素原子の検出限界は2mg/kgである。これらの原子が検出限界未満の場合は、表1中、「<2」(mg/kg)と表記する(後の表2も同様である。)。
濃硫酸(純度95質量%以上)に、PEEKを濃度が0.1g/dlとなるように溶解して得られた溶液について、25℃においてJIS K7367-5:2000に準拠しウベローデ粘度計を用いて還元粘度ηsp/cを測定した。
実施例1において、温度制御を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状のPEEKを得た。得られたPEEKを実施例1と同様の測定に供した結果を表1に示す。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から280℃に昇温
(6)280℃において2時間保持
実施例1において、温度制御を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状のPEEKを得た。得られたPEEKを実施例1と同様の測定に供した結果を表1に示す。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から300℃に昇温
(6)300℃において2時間保持
実施例1において、温度制御を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状のPEEKを得た。得られたPEEKを実施例1と同様の測定に供した結果を表1に示す。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から320℃に昇温
(6)320℃において2時間保持
実施例1において、温度制御を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粉末状のPEEKを得た。得られたPEEKを実施例1と同様の測定に供した結果を表1に示す。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から340℃に昇温
(6)340℃において2時間保持
表1より、本発明に係るPEEKの製造方法によれば、高い結晶化温度Tc(具体的には255℃以上)を有するPEEKが得られることがわかる。また、反応混合物の最高温度が300℃に近い程、メルトフローインデックス(MI)が低下しており、PEEKが高分子量化していることがわかる。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び冷却管に接続した水回収容器を備えた300mlの四口フラスコに、4,4’-ジクロロベンゾフェノン41.224g(0.164mol)、ヒドロキノン17.803g(0.162mol)、炭酸カリウム25.717g(0.186mol)及びジフェニルスルホン140.00gを入れ、窒素ガスを流通させた。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から280℃に昇温
(6)280℃において2時間保持
<引張強度>
PEEKを、井元製作所製真空プレスを用いて380℃で2mm厚にプレス成形し、200℃でアニールし、プレス成形板を得た。このプレス成形板を、JIS K7161に規定するダンベル状5A形に切削して試験片とした。得られた試験片について、試験速度5mm/分、チャック間距離50mmで引張試験を行い、引張強度を測定した。
実施例5において、温度制御を下記に変更したこと以外は実施例5と同様にして、粉末状のPEEKを得た。得られたPEEKを実施例5と同様の測定に供した結果を表2に示す。
<温度制御>
(1)150℃に昇温した後、30分間かけて200℃に昇温
(2)200℃において1時間保持
(3)30分間かけて200℃から250℃に昇温
(4)250℃において1時間保持
(5)30分間かけて250℃から300℃に昇温
(6)300℃において2時間保持
表2より、高い結晶化温度Tcを有するPEEKは、引張強度に優れる傾向を示すことがわかる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。
Claims (16)
- 原料に4,4’-ジクロロベンゾフェノンを含む、請求項1に記載のポリエーテルエーテルケトン。
- メルトフローインデックスが100g/10min以下である、請求項1又は2に記載のポリエーテルエーテルケトン。
- 還元粘度ηsp/cが0.40~1.50dl/gである、請求項1~3のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトン。
- 4,4’-ジクロロベンゾフェノンとハイドロキノンとを、反応混合物の最高温度を260~280℃とする条件で反応させることを含む、ポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物を150℃以上に昇温した後、温度保持することを含む、請求項5に記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物を150℃以上に昇温した後、昇温と温度保持とを複数回繰り返すことを含む、請求項5又は6に記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物を180~220℃において0.5~2時間保持することを含む、請求項5~7のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物を230~270℃において0.5~2時間保持することを含む、請求項5~8のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物を280℃において1~8時間保持することを含む、請求項5~9のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物の温度が150℃に達した時点から前記最高温度に達する時点までの時間が2.0~10時間である、請求項5~10のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 製造されるポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度Tcが270℃以上である、請求項5~11のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 製造されるポリエーテルエーテルケトンのメルトフローインデックスが100g/10min以下である、請求項5~12のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 製造されるポリエーテルエーテルケトンの還元粘度ηsp/cが0.40~1.00dl/gである、請求項5~13のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物が、溶媒として1種の溶媒のみを含む、請求項5~14のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
- 前記反応混合物が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム及びフッ化セシウムのいずれも含まない、請求項5~15のいずれかに記載のポリエーテルエーテルケトンの製造方法。
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