JP7274440B2 - 電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、本出願人の研究から、ポリエチレングリコール等は、陽極等に含まれるアルミニウムを溶解させやすいことがわかっている(特開2018-164024号公報参照)。
本発明者らの研究から、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等を含む溶媒を採用しても、溶質として、α位にヒドロキシル基を有するジカルボン酸またはポリカルボン酸等を含む溶質を採用することにより、アルミニウムが溶解しにくいという知見が得られた。さらに、上記溶媒および溶質を用いることにより、高温高湿環境下で、より長期に亘って、電解コンデンサを使用しても、アルミニウムが溶解しにくいという知見が得られた。
溶媒に含まれるエチレングリコール、ポリエチレングリコール等も、上述したように、高温環境下において電解コンデンサのESRの上昇を抑制させることから、上述した溶質と溶媒を併用することにより、高温環境下で電解コンデンサのESRの上昇を抑制できる効果が高められる。
しかし、本発明者らの研究から、上記溶質を採用することにより、陽極箔11および/または図示しないリードタブからアルミニウムが溶解しにくいという知見が得られた。
この理由として、カルボキシル基と該カルボキシル基からみてα位のヒドロキシル基と、陽極箔11および/または図示しないリードタブに含まれるアルミニウムとの間で、キレート結合のような作用が生じることにより、アルミニウムがこの結合から分離しにくくなるとともに、上記作用に寄与しない残りのカルボキシル基が陽極箔に形成されている酸化皮膜を修復する作用が生じると推測される。これにより、陽極箔11および/または図示しないリードタブからアルミニウムが溶解しにくいと考えられる。
導電性高分子のドーパント(酸成分)が電解液に溶出(脱ドープ)することにより、導電性高分子が酸化することによって、導電性高分子の導電性が低下することにより、高温環境下におけるESRが高くなると考えられる。上記ヒドロキシル基が導電性高分子の表面に付着することにより、ドーパント(酸成分)の溶出(脱ドープ)が抑制されるため、高温環境下においてESRの上昇が抑制されると考えられる。
また、低温環境下でハイブリッドコンデンサ1の容量低下を抑制できる。
所定の幅に切断された陽極箔および陰極箔に外部引き出し電極用のリードタブを接続した。リードタブはアルミニウムからなる。陽極箔および陰極箔を、天然繊維を主体としたセパレータを介して巻回することにより、巻回素子を作製した。
陰極箔として、以下のいずれかを用いた。
a)アルミニウムの純度が99.8wt%未満であり、且つ、銅を0.05wt%以上0.50wt%以下含む合金箔をエッチング処理によって粗面化したもの
b)アルミニウム箔をエッチング処理によって粗面化した後、耐電圧0.8Vの化成処理を施すことにより、表面の少なくとも一部に酸化皮膜が形成された化成箔
・静電容量変化率
周囲温度20℃の静電容量(A)と、周囲温度-55℃の静電容量(B)とを測定し、静電容量(A)に対する静電容量(B)の容量変化率を「静電容量変化率」とした。
・ESRの測定
室温25℃でハイブリッドコンデンサのESR(初期ESR)を測定した。その後、150℃の環境下で、ハイブリッドコンデンサを2000時間保持した後、室温(25℃)まで冷却し、ESRを測定した。本実験では、150℃という高温下で、2000時間という非常に長い期間、電解コンデンサを保持した。ESRの測定時の周波数は100kHzである。
・加速高温高湿負荷試験
リード端子を封口ゴム(封口体)の孔に通して外部に引き出した状態(ハイブリッドコンデンサからケースを外し、電解液を含浸した巻回素子が外気に曝されている状態)で、以下の試験を実施した。試料数を10とした。
周囲温度85℃および相対湿度(Rh)85%の環境下で、60時間という長時間、ハイブリッドコンデンサの巻回素子に定格電圧35Vを印加した。そして、拡大鏡を用いて、陽極箔の端面とリードタブ(特に巻回素子から出ている部分)を目視観察し、溶解(腐食)が存在するかを確認した。表1には、10個の試料のうち、溶解(腐食)の存在が確認された試料数を示している。
表1から、従来例1、2では、静電容量変化率が-20%以下であったが、その他の例(従来例3、実施例1~7、比較例1、2)では、静電容量変化率が-20%未満であった。
従来例1では、長期高温保持後のESRが40mΩを超えた。長期高温保持後のESRは、初期ESRの約6倍大きくなった。
一方、従来例2、3、実施例1~7、比較例1、2では、初期ESRが20mΩ以内であり、且つ、高温長期保持後のESRが40mΩ以内であり、初期ESRの3倍以下となった。
実施例1~7では、全試料(試料数:10)に、陽極箔およびリードタブに溶解(腐食)が確認されなかった。このことから、実施例1~7のハイブリッドコンデンサを、高温高湿環境下で、長期間使用しても、アルミニウムが殆ど溶解しないといえる。
一方、従来例1~3および比較例1、2では、陽極箔および/またはリードタブに溶解(腐食)が確認された。
さらに、実施例1~7のハイブリッドコンデンサは、上記効果に加え、低温環境下で容量が低下しにくいコンデンサであることがわかった。
これは、導電性高分子層に含まれるポリグリセリンとエチレングリコールとの溶媒親和性が高いため、電解液の含浸性が向上し、静電容量出現率が高くなったと考えられる。
2 外装ケース
3 コンデンサ素子
4 封口体
11 陽極箔(陽極)
12 陰極箔(陰極)
21,22 リード端子
Claims (4)
- 誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に配置されたセパレータと、前記セパレータに保持された導電性高分子層および電解液とを備えた電解コンデンサにおいて、
前記電解液は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む溶媒と、主溶質としてα位にヒドロキシル基を有するジカルボン酸、α位にヒドロキシル基を有するポリカルボン酸、および、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有し、
前記導電性高分子層にポリグリセリンが含まれていることを特徴とする電解コンデンサ。 - 前記電解液100wt%に対して、α位にヒドロキシル基を有するジカルボン酸、α位にヒドロキシル基を有するポリカルボン酸、および、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を0.2wt%以上7.0wt%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
- 前記陰極は、アルミニウムと0.05wt%以上0.50wt%以下の銅とを含有する合金、または、表面の少なくとも一部に酸化皮膜が形成されたアルミニウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
- 誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を作製する工程と、
ポリグリセリンが添加された導電性高分子分散体水溶液に前記コンデンサ素子を浸漬させて前記コンデンサ素子に導電性高分子層を形成する工程と、
エチレングリコール、ポリエチレングリコール、および、これらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む溶媒と、主溶質としてα位にヒドロキシル基を有するジカルボン酸、α位にヒドロキシル基を有するポリカルボン酸、および、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有した電解液を前記コンデンサ素子に含浸させる工程とを備えた電解コンデンサの製造方法。
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