以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、既に説明した部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
以下に用いる記録ヘッド用基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built-in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
次に、インクジェット記録装置の実施例について説明する。この記録装置は、ロール状に巻かれた連続シート(記録媒体)を使用し、そのシートにB0やA0サイズの画像を記録する大判プリントを行う装置である。なお、使用する記録媒体にカット紙を用いても良いことは言うまでもない。
図1は、本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の構成概略を示す部分破断斜視図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置)50は互いに向き合った2つの脚部55の上端部に跨るように固定されている。キャリッジ60には、インクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)1が搭載されている。記録時は搬送ロールホルダユニット52にセットされた記録媒体を記録位置まで給紙し、キャリッジ60がキャリッジモータ(不図示)及びベルト62より矢印Bで示す方向(主走査方向)に往復移動しながら、記録ヘッド1の各ノズルからインク滴が吐出される。キャリッジ60が記録媒体の一端まで移動すると、搬送ローラ51が所定量だけ記録媒体を矢印Aで示す方向(副走査方向)へ搬送する。このように記録動作と搬送動作とを交互に繰り返すことにより記録媒体全体に画像を形成する。画像形成後は、カッタ(不図示)によって記録媒体をカットし、カットされた記録媒体はスタッカ53に積載されていく。
インク供給ユニット63には、黒、シアン、マゼンタ、イエロなどといったインク色ごとに分かれた(装置に脱着可能な)インクタンク5が備えられており、インクタンク5は供給チューブ2に接続されている。また、供給チューブ2はキャリッジ60の往復運動の際に暴れることのないように、チューブガイド61によって束ねられている。
記録ヘッド1の記録媒体に対向した面には主走査方向と略直交した方向(交差した方向)に複数のノズル列(不図示)を持ち、ノズル列単位で供給チューブ2と接続している。
さらに回復ユニット70が主走査方向に記録媒体範囲外で、かつ記録ヘッド1のノズル面に対向する位置に設けられている。回復ユニット70は、必要に応じて記録ヘッド1のノズル面からインク又は空気(エア)を吸い出すノズルのクリーニングや記録ヘッド内部に溜まった空気を強制的に吸い出す吸引動作を実行する。
記録装置50の右側には操作パネル54が設けられており、インクタンク5内のインクが空になった際に警告メッセージを表示してユーザにその旨を通知し、インクタンク5の交換を促すことができる。
記録ヘッド1には、1280個のインク吐出口(ノズル)が、それぞれの間隔が1,200dpi(ドット/インチ)になるように配列されてノズル列を構成している。また、記録ヘッド1にはこの記録装置が用いるインクの数に対応して複数のノズル列が備えられている。また、各インク吐出口の内部には、電気熱変換素子が備えられており、この電気熱変換素子に駆動信号に基づいた電気信号を印加することによって、インクに気泡を発生させ、その気泡の圧力によって、インク滴をインク吐出口から吐出させる。
図2に図1に示した記録装置のインク供給系の構成を示す図である。前述のように、記録装置50は複数の色のインクを使用するがインク供給系の構成は、複数のインクにわたって共通な構成なので、ここでは一色のインクの供給系について示す。
図2に示すように、記録ヘッド1は鉛直方向(図中のZ方向)にインクを吐出するように、ノズル列101とインク吐出口面(吐出口面)102を下方に向けてキャリッジ60に搭載されている。また、インク吐出口からのインク中の溶媒の蒸発を抑制するためのキャップ130がインク吐出口面102に対向して備えられる。
図1で言及した回復ユニット70は、図2に示すように、キャップ130、ポンプチューブ131、吸引ポンプ132、廃インクチューブ133などから構成されている。キャップ130は、ポンプチューブ131を介して、吸引ポンプ132に接続されており、吸引ポンプ132を駆動することによって、インク吐出口からインク及びまたはエアを吸引排出することができる。そして、吸引排出されたインクは、廃インクチューブ133を介して、メンテナンスカートリッジ(不図示)内に収容される。
なお、キャップ130は、周知の手段(不図示)によって、キャッピング位置と離間位置との間を、図2に示した矢印Z方向に往復移動可能である。図2は、キャップ130が、離間位置に位置している場合を示している。また、キャップ130内には、インク吸収体が備えられている。
記録装置に脱着可能な容積一定のインクタンク5は、その底部に2か所のジョイント部201、202を有しており、そのジョイント部がサブタンク210の第1の中空管211及びバッファ室220の第2の中空管222と連結している。なお、各ジョイント部201、202はゴムでできており、第1の中空管211及び第2の中空管222は金属製の中空の針で構成されている。
具体的には、インクタンク5の記録装置への装着時に、第1の中空管211が、インクタンク5の底部に設けられたジョイント部201を貫通することによって、サブタンク210とインクタンク5とは連通する。一方、第2の中空管222が、インクタンク5の底部に設けられたジョイント部202を貫通することによって、インクタンク5とバッファ室220とは連通する。バッファ室220には大気連通路221が設けられているため、第2の中空管222がジョイント部202を貫通すると、インクタンク5の内部は大気と連通する。
さらに、サブタンク210と記録ヘッド1とは、供給チューブ2を主構成要素とするインク供給路230を介して連通されており、インク供給路230のサブタンク210近傍には、開閉弁235が備えられている。なお、開閉弁235は、可撓性部材等から成る開閉部236を有している。
また、図2に示すように、サブタンク210の上部には金属製の中実管(電極部)213が設けられている。
以上の構成により、中実管213と第1の中空管211との間に微弱な電流を流した際の電圧値を検出することによって、サブタンク210に貯留されているインクの量が、所定の閾値以上(第2の所定量以上)であるか否かを検知する。
もう少し詳しく説明すると、サブタンク210のインクの液面位置が、中実管213及び第1の中空管211に接触するほど高い位置にある場合、インクによって中実管213と第1の中空管211とが導通するため検出電圧値は低くなる。これに対して、サブタンク210のインクの液面位置が、中実管213及び第1の中空管211に接触しないような低い位置にある場合、中実管213と第1の中空管211との間にインクによる導通がないため、検出電圧値は高くなる。即ち、検出電圧値が所定の閾値以上であるか否かによって、サブタンク210のインク量が第2の所定量以上であるか否かを検知することができる。
なお、図2において、サブタンク210のインク量が所定量であるときの、サブタンク210のインクの液面位置をRで示している。このときのサブタンク210のインク量は、サブタンク210に貯留可能な最大インク量とおおよそ同量である。
以下、検出電圧値によって、サブタンク210内のインク量が第2の所定量以上であるか否かを検知することを「サブタンクインク残検」、あるいは、「サブタンク残検」とも言う。また、検出電圧値が所定電圧値以上であることを「残検オフ(インク残量が所定量未満)」、所定電圧値未満であることを「残検オン(インク残量が所定量以上)」とも言う。さらに、サブタンク残検の結果が残検オンであることを、「サブタンク残検オン」、サブタンク残検の結果が残検オフであることを、「サブタンク残検オフ」とも言う。
さらに、第1の中空管211と第2の中空管222の間に微弱な電流を流した際の電圧値を検出することによって、インクタンク5内に貯留されているインクの量が、第1の所定量以上であるか否かを検知することができる。
図2に示した例では、インクタンク5内のインクの液面位置が、図2に“T”で示した位置よりも高い場合、インクによって第1の中空管211と第2の中空管222とが導通するため、検出電圧値は低くなる。これに対して、インクタンク5内のインクの液面位置が、図2に“T”で示した位置よりも低い場合、第1の中空管211と第2の中空管222との間にインクによる導通がないため、検出電圧値は高くなる。即ち、検出電圧値が所定電圧値以上であるか否かによって、インクタンク5内のインクの量が第1の所定量以上であるか否かを検知することができる。なお、インクタンク5内のインクの量が第1の所定量未満であるとき、インクタンク5内に貯留されているインクの量は若干量である。
以下、検出電圧値によって、インクタンク5内のインクの量が第1の所定量以上であるか否かを検知することを、「インクタンクインク残検」、あるいは、「インクタンク残検」ともいう。なお、「インクタンク残検」において、検出電圧値が所定電圧値以上、即ち、インクタンク5のインク残量は第1の所定量以上であることを「インクタンク残検オン」という。これに対して、その検出電圧値が所定電圧値未満、即ち、インクタンク5のインク残量は第1の所定量未満(インクの量は若干量)であることを「インクタンク残検オフ」という。
図3は図1に示す記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、記録装置50は、例えば、USBインタフェース等によって、プリンタドライバ391がインストールされたホストコンピュータ390と接続されている。プリンタドライバ391は、ユーザによるプリント指令に応じて、ユーザ所望の文書や写真等の画像データからプリントデータを生成し、これを記録装置50へと送信する。ホストコンピュータ390から記録装置50へと送信されたプリントデータ等は受信バッファ310で一時的に保持される。
記録装置50には装置全体を制御するCPU300、制御ソフトウエアを内蔵するROM330、記録装置50は制御ソフトウエアを動作させる際に一時的に使用するRAM320、電源供給はなくとも情報を保持するNVRAM340が備えられる。受信バッファ310に保持されたプリントデータ等は、CPU300の管理下で、RAM320に転送されて、一次的に記憶される。CPU300は、RAM320、ROM330、NVRAM340などにアクセスしながら、演算、制御、判定、設定等の各種動作を実行する。
また、CPU300は、ヘッドドライバ350を介して記録ヘッド1を駆動し、操作パネルコントローラ380を介して操作パネル54を制御し、モータドライバ360を介して各種モータ365を駆動する。各種モータ360は、キャリッジモータや搬送モータ、キャップ130を上下動させるためのモータ、開閉弁235を開閉させるためのモータなどを含む。さらに、CPU300は、センサコントローラ370を介して各種センサ375を制御する。
次に、以上のような構成の記録装置におけるインクの充填シーケンスについての実施例について図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、二次輸送後充填シーケンスの例について、図4~図8を参照して説明する。
二次輸送後充填シーケンスとは、設置後の記録装置を輸送するに際して、インクの漏れ出しを防止するために、記録装置内のインクを抜いてから輸送を行い、その後、再び、その記録装置にインクを充填する際の、充填シーケンスをいう。なお、このシーケンスは、装置の故障等によって、インク供給系を交換した後、インクを充填する際にも適用可能である。このシーケンスは、記録装置の操作パネル54に設けられた電源キーが押され、記録装置に電源が投入されたときに、二次輸送後フラグ(後で詳述)がオンであると、開始される。なお、この二次輸送後フラグは、輸送前に記録装置からインクが抜かれた後にオンにされる。
図4~図5は二次輸送後充填シーケンスの進行に伴うインク供給系の状態の変化を示す図である。また、図6~図8は二次輸送後充填シーケンスを示すフローチャートである。
二次輸送後充填シーケンスが開始されると、まず、ステップS601において、インクタンク5を記録装置への装着を促す旨の通知が操作パネル54のディスプレイなどを用いてユーザに向けて行われる。次に、ステップS602では、インクタンク5が記録装置に装着されるのを待ち合わせ、その装着が確認されたら、処理はステップS603へと進み、インクタンク装着を促す旨の表示がOFFになる。なお、インクタンク5の装着の確認には、周知の電気的接続を検知する等の構成が用いられる。
図4(a)は新品ではない(使いかけの)インクタンク5を記録装置に装着した時点におけるインク供給系の状態を示している。なお、図4(a)にも示唆されているが、記録装置に電源が投入された後、インクタンク5が装着されるタイミングまでにはキャップ130はキャッピング位置に位置しており、開閉弁235は閉じられている。また、第1の中空管211及び第2の中空管222は、両方とも内径が約1mm、長さが約30mmであって、これら中空管内での気液交換は生じない。そのため、インクタンク5を記録装置に装着しただけでは、インクタンク5内のインクがバッファ室220内やサブタンク210内へと流出していくことはない。但し、インクタンク5内の圧力と記録装置の設置環境の気圧とに差がある場合には、その限りではない。
インクタンク装着を促す旨の表示がOFFになると、処理はステップS700に進み、サブタンク充填シーケンスを実行する。サブタンク充填シーケンスについては、図4と図7に示すフローチャートを参照して説明する。
サブタンク充填シーケンスが開始されると、ステップS701では、カウンタN及びFの値をゼロ“0”にリセットする。なお、カウンタN及びFは、開閉弁235の開閉回数をカウントするためのカウンタである。
その後、処理はステップS702へ進み、開閉弁235を開状態にする。
図4(b)は、開閉弁235の開閉部236を開いた状態を示している。このとき、昇降機構(不図示)が駆動され、開閉弁235の開閉部236が、図4(b)中に矢印Uで示した方向に持ち上げられ、開閉弁235が開けられる。開閉弁235が開けられると、開閉弁235よりもサブタンク210側のインク供給路230内のエアが、図4(b)中の矢印QS方向に、開閉弁235よりも記録ヘッド1側のインク供給路230内のエアが、図4(b)中の矢印QR方向に吸引される。QS方向のエア吸引によって、サブタンク210内は減圧され、その減圧を解消すべく、インクタンク5内のインクが、第1の中空管211を介して、サブタンク210内へと移動(図4(b)中のD参照)する。このとき、サブタンク210内へと移動したインクの分だけ、バッファ室220内のエアが、第2の中空管222を介して、インクタンク5内へと移動(図4(b)中のE参照)する。さらに、インクタンク5内へと移動したエアの分だけ、大気が大気連通路221を介して、バッファ室220内へと流入する。
以下、インク供給路230において、開閉弁235よりもサブタンク210側を「弁より上流側」ともいい、開閉弁235よりも記録ヘッド1側を「弁より下流側」ともいう。
また、ステップS703では、開閉弁235を閉状態にする。
図4(c)は、開閉弁235の開閉部236を閉じた状態を示している。このとき、昇降機構(不図示)が駆動され、今度は、開閉弁235の開閉部236が、図4(c)中に矢印Kで示した方向に押し下げられ、開閉弁235が閉じられる。開閉弁235が閉じられると、開閉弁235内のエアが、サブタンク210側(図4(c)中の矢印HS方向)と、記録ヘッド1側(図4(c)中の矢印HR方向)へと押し出される。HS方向のエア押出によって、サブタンク210内は加圧され、その加圧を解消すべく、サブタンク210内のエアが、第1の中空管211を介して、インクタンク5内へと移動(図4(c)中のG参照)する。このとき、インクタンク5内へと移動したエアの分だけ、インクタンク5内のインクが、第2の中空管222を介して、バッファ室220内へと移動(図4(c)中のJ参照)する。さらに、バッファ室220内へと移動したインクの分だけ、エアが大気連通路221を介して、バッファ室220の外へと流出する。
即ち、ステップS702~S703における開閉弁235の開閉動作によって、インクタンク5内のインクはサブタンク210内へと移動し、サブタンク210内のエアは、インクタンク5内へと移動する。以下、このような開閉弁235の開閉動作を、サブタンク充填動作ともいう。実行する。また、このサブタンク充填動作に伴って、弁より下流側のインク供給路230内のエアは、図4(b)中の矢印QR方向と、図4(c)中の矢印HR方向に往復移動する。
その後、処理はステップS710へ進み、上述したインクタンク残検を実行する。ここで、インクタンク残検の結果が残検オン(Yes)である場合、処理はステップS711へ進み、カウンタNの値をインクリメント(“+1”)する。これに対して、インクタンク残検の結果が残検オフ(No)である場合、処理はステップS712へ進み、カウンタFの値をインクリメント(“+1”)する。このように、インクタンク5内にインクが十分あるとき、具体的には、インクタンク5内のインクの液面位置が、図2中のTで示した位置よりも高いときに、サブタンク充填動作が行われた場合、カウンタNの値がインクリメントされる。これに対して、インクタンク5内のインクの量が若干量未満であるとき、具体的には、図2中のTで示した位置よりも低いときに、サブタンク充填動作が行われた場合、カウンタFの値が、インクリメントされる。
ステップS711又はステップS712が終了後、処理はステップS720へ進み、上述したサブタンク残検を実行する。ここで、サブタンク残検の結果が残検オフ(No)である場合、処理はステップS730へ進み、カウンタFの値がFth以上であるか否かを調べる。ここで、F<Fth、即ち、カウンタFの値がFth未満(閾値未満)である場合、処理はステップS740へ進み、カウンタNの値がNth以上であるか否かを調べる。ここで、NA<Nth、即ち、カウンタNの値がNth未満である場合、処理はステップS702へと戻り、再び、サブタンク充填動作が実行される。このように、サブタンク残検の結果が残検オンになるか、又は、カウンタFの値がFth以上になるか、又は、カウンタNの値がNth以上になるかの内、いずれかになるまでサブタンク充填動作が繰り返される。
なお、このサブタンク充填シーケンスにおける、FthとNthの具体的な値はそれぞれ、“20”と“100”である。
さて、ステップS740において、N≧100、即ち、カウンタNの値が100以上である場合、処理はステップS741へ進む。カウンタNの値が100以上であるということは、インクタンク5内にインクが十分にある状態で100回以上のサブタンク充填動作を実行したにも関わらず、サブタンク残検の結果が残検オンにならなかったことを意味する。ここでは、このような現象の発生原因を、インクタンク5の記録装置に対する装着不良であると想定し、ステップS741では、ユーザに対しインクタンク5の脱着を促すメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。
その後、処理はステップS742へと進み、ユーザによりインクタンク5が脱着されるのを待ち合わせる。ここで、インクタンク5の脱着が確認されたなら、処理はステップS743へ進み、インクタンク5の脱着を促すメッセージ表示をオフにして、その後、処理はステップS701へ戻る。そして、ステップS701から処理を再開する。
また、ステップS730において、F≧20、即ち、カウンタFの値が20以上である場合、処理はステップS731へ進む。なお、カウンタFの値が20以上であるということは、インクタンク5内のインクの量が若干量以下である状態で、20回以上のサブタンク充填動作を行ったとことを意味し、インクタンク5内には、サブタンク210内へと移動可能なインクがない。そこで、ステップS731では、ユーザに対しインクタンク5の交換を促すメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。
その後、処理はステップS732へ進み、ユーザによりインクタンク5が交換されるのを待ち合わせる。ここで、インクタンク5の交換が確認されたなら、処理はステップS733へ進み、インクタンク5の交換を促すメッセージ表示をオフにして、その後、処理はステップS701へ戻る。そして、ステップS701から処理を再開する。
また、ステップS720において、サブタンク残検の結果が残検オン(Yes)である場合、処理はステップS790へ進む。ステップS790では、サブタンクカウンタ(後述)のカウント値をゼロ“0”にリセット後、サブタンク充填シーケンスを終了する。
まとめると、サブタンク充填シーケンスは、サブタンク残検の結果が残検オンになるまでサブタンク充填動作を繰り返し、サブタンク残検の結果が残検オンになったら、サブタンクカウンタ(後述)のカウント値をゼロにリセットするシーケンスである。
図4(e)は、サブタンク残検の結果が残検オンであるときの状態を示している。つまり、図4(e)に示すように、サブタンク210内のインクの液面位置がRで示した位置になるまでサブタンク充填動作を行っているので、サブタンク210内のインク量は、サブタンク210内に貯留可能な略最大インク量となる。以下、サブタンク210内に貯留可能な略最大インク量を「略満タン量」という。
図4(d)は、サブタンク充填シーケンス実行中のインク移動の様子を示している。図4(d)に示したような状態において、開閉弁235が開けられると、弁より上流側のインク供給路230内のインクが、図4(b)の矢印QS方向に吸引される。また、同時に、弁より下流側のインク供給路230内のインクが、図4(b)の矢印QR方向に吸引される。QS方向のインク吸引によって、サブタンク210内は減圧され、その減圧を解消すべく、インクタンク5内のインクが、第1の中空管211を介して、サブタンク210内へと移動(図4(b)のD参照)する。このとき、サブタンク210内へと移動したインクの分だけ、バッファ室220内のインクが、第2の中空管222を介して、インクタンク5内へと移動する。なお、ここでは、図4(b)のEに示したような泡の発生はない。さらに、インクタンク5内へと移動したインクの分だけ、大気が大気連通路221を介して、バッファ室220内へと流入する。
また、図4(d)に示したような状態において、開閉弁235が閉じられると、開閉弁235内のインクが、サブタンク210側(図4(c)の矢印HS方向)と、記録ヘッド1側(図4(c)の矢印HR方向)へと押し出される。HS方向のインク押出によって、サブタンク210内は加圧され、その加圧を解消すべく、サブタンク210内のエアが、第1の中空管211を介して、インクタンク5内へと移動(図4(c)のG参照)する。このとき、インクタンク5内へと移動したエアの分だけ、インクタンク5内のインクが、第2の中空管222を介して、バッファ室220内へと移動する。さらに、バッファ室220内へと移動したインクの分だけ、エアが大気連通路221を介して、バッファ室220の外部へと流出する。
以上のような開閉弁235の開閉動作によって、弁より下流側のインク供給路230内のインクは、図4(b)の矢印QR方向、及び、図4(c)の矢印HR方向に往復移動する。しかし、その往復移動距離は、開閉弁235の開閉動作開始当初に弁より下流側のインク供給路230がエアで満たされていた時点におけるエアの往復移動距離よりは短い。また、開閉弁235の1開閉動作あたりにインクタンク5からサブタンク210へと移動するインクの量(以下、サブタンク充填効率)は、開閉弁235の開閉動作開始当初よりも多い。言い換えると、サブタンク充填効率は高くなる。
再び図6へ戻って説明を続けると、ステップS700におけるサブタンク充填シーケンスが終了したら、処理はステップS800に進み、吸引動作Aシーケンスを実行する。吸引動作Aシーケンスについては、図8に示したフローチャートを参照して説明する。
吸引動作Aシーケンスが開始されると、ステップS801において、開閉弁235が開けられる。次に、ステップS802へと進んで、吸引動作Aが実行される。具体的には、吸引ポンプ132が10秒間駆動される。吸引動作Aによって、サブタンク210内のインクは供給チューブ2内へと吸引されていく。
なお、このとき、サブタンク210内には十分な量のインクが貯留されているので、前述したような、インクがサブタンク210内のエアと混じり合いながら、供給チューブ2内へと進入するようなことはない。即ち、インク供給路230への泡の混入は防止される。また、インクタンク残検の結果が残検オフであっても、インクタンク残検の結果には関わりなく、吸引動作Aが実行されるので、前述したような、交換されるインクタンク内に若干量のインクが残ってしまうという問題が発生することも防止される。
このときに、インクタンク5内に十分な量のインクが貯留されていれば、供給チューブ2内へと吸引された量と略同量のインクが、第1の中空管211を介して、インクタンク5内からサブタンク210内へと流入してくる。それに伴って、その分のエアが、大気連通路221、バッファ室220、第2の中空管222を介して、インクタンク5内へと流入していく。しかしながら、図4(e)に示したような状態、即ち、インクタンク5内に貯留されているインクの量が若干量程度であるような状態から、吸引動作Aが実行されると、初めはインクが、後にはエアが、サブタンク210内へと流入する。そして、吸引動作Aが終了時点での、インク供給系の状態は、図5(a)に示したようになる。
図5(a)に示したように、吸引動作A終了時点では、インクタンク5内に残っているインクの量は略零となり、サブタンク210内に貯留されているインクの量も、略満タン量よりも少なくなる。
ステップS802における吸引動作Aが終了後、処理はステップS803へ進み、インクタンク残検を実行する。ここで、その結果が残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS804へ進む。なお、図5(a)に示したような状態では、インクタンク5内に残っているインク量が略零であるため、具体的には、インクタンク5内のインクの液面位置が“T”で示した位置よりも低いため、インクタンク残検の結果は、残検オフとなる。
ステップS804では、サブタンク残検を実行する。ここで、その結果が残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS805へ進む。なお、図5(a)に示したような状態では、サブタンク210内のインクの量が、略満タン量よりも少ないため、具体的には、サブタンク210内のインクの液面位置が“R”で示した位置よりも低いため、サブタンク残検の結果は、残検オフとなる。
ステップS805では、サブタンク210内のインクの量が、略満タン量よりもどれだけ少ないかをカウントするためのサブタンクカウンタに、吸引動作Aによる吸引量Aを加算する。なお、サブタンクカウンタは、インクタンク残検オフ、かつ、サブタンク残検オフの状態で、記録ヘッド1のインク吐出口から吐出あるいは吸引排出される、インク量またはエア量をカウントする。そして、このカウント値によって、サブタンク210内のインク量が、略満タン量よりもどれだけ少ないかを把握する。
なお、吸引動作に関しては、吸引動作中のいつ、インクタンク残検オフかつサブタンク残検オフの状態になったかを把握することは困難である。言い換えると、この吸引動作による吸引量のうち、どれほどの割合がサブタンク210内のインクの量を略満タン量よりも少なくすることに貢献したかを把握することは困難である。そのため、吸引動作Aシーケンスでは、吸引動作終了後に、インクタンク残検オフかつサブタンク残検オフの状態であった場合には、その吸引動作による全吸引量をサブタンクカウンタに加算する。
ステップS805が終了後、吸引動作Aシーケンスを終了する。
なお、ステップS804においてサブタンク残検の結果が残検オン(Yes)と判定された場合、吸引動作Aシーケンスを終了する。また、ステップS803においてインクタンク残検の結果が残検オン(Yes)と判定された場合も、そのまま、吸引動作Aシーケンスを終了する。即ち、吸引動作Aの終了後に、インクタンク残検オフかつサブタンク残検オフの状態であった場合には、サブタンクカウンタに吸引動作Aによる吸引量Aが加算され、そうでない場合には、何も行われることなく、吸引動作Aシーケンスは終了する。
ここで再び図6へ戻って説明を続ける。ステップS800における吸引動作Aシーケンスが終了したら、処理はステップS809へ進み、吸引動作Aシーケンスの実行回数をカウントためのカウンタMの値をゼロ“0”にリセットする。
その後、処理はステップS810へ進み、再び、インクタンク残検を実行する。ここで、その結果が残検オフ(No)である場合、処理は、ステップS820へと進む。
ステップS820では、サブタンク残検を実行し、その結果が残検オフ(No)である場合、処理はステップS821へ進み、開閉弁235を閉じる。これは開閉弁235を閉じておかないと、この後行われるインクタンク5の交換に必要な比較的長い時間の間に、供給チューブ2の途中まで吸引されたインクが重力の作用によってサブタンク210内へと逆流してしまう可能性があるという理由からである。
ここで、その理由をもう少し詳しく説明する。
ステップS802における吸引動作Aの終了時点において、記録ヘッド1のインク吐出口にメニスカスが形成されていない可能性がある。記録ヘッド1のインク吐出口にメニスカスが形成されていないと、キャップ130内のエアまたはインクは、インク吐出口を通って、記録ヘッド1へ移動可能となる。キャップ130内のエアまたはインクが記録ヘッド1へと移動可能ならば、サブタンク210内のインクの液面位置よりも鉛直方向上方に位置している供給チューブ2内のインクは重力の作用によって、鉛直方向下方へと移動する。即ち、供給チューブ2内のインクは、サブタンク210内へと逆流する。このとき、吸引ポンプ132が、動作停止中にはキャップ130内と大気とが連通するような構成である場合には、供給チューブ2内のインクは、その液面位置が、サブタンク210内のインクの液面位置と略同位置になるまで逆流する。以下、サブタンク210内のインクの液面位置よりも鉛直方向上方に位置している供給チューブ2内のインクが重力の作用によって、サブタンク210内へと逆流することを「インク落ち」という。
ただし、このとき、開閉弁235を閉じておけば、このような逆流の可能性を確実に排除することができる。そのため、ステップS821で、開閉弁235を閉じるのである。
その後、処理はステップS822において、ユーザに対しインクタンク5の交換を促すメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。その後、ステップS823では、インクタンク5の交換を待ち合わせる。ここで、インクタンク5の交換が確認されたなら、処理はステップS824へ進み、インクタンク5の交換を促すメッセージの表示をOFFにする。そして、処理はステップS810へと戻り、再びインクタンク残検を実行する。
図5(b)は、インクタンク交換において、その内部に若干量よりも少し多い量のインクが貯留されたインクタンク5へと交換が行われた場合の、インク供給系の状態を示している。
さて、ステップS820におけるサブタンクインク残検の結果が残検オン(Yes)であると判定された場合、処理はステップS840へ進み、上述した吸引動作Aシーケンスを再度実行する。なお、このとき開閉弁235は既に開いているので、図8を参照して説明した吸引動作AシーケンスのステップS801は実行されない。以降、同様に既に開閉弁235が開いている場合には、吸引動作AシーケンスのステップS801は実行されない。
以上のことから、ステップS810におけるインクタンク残検の結果が残検オフ(OFF)であっても、ステップS820におけるサブタンク残検の結果が残検オン(ON)であれば、ステップS840において吸引動作Aシーケンスが実行される。従って、このような場合でも、交換されるインクタンク内に若干量のインクが残ってしまうという問題が生じることは防止される。
また、ステップS810におけるインクタンク残検の結果が残検オン(Yes)であると判定された場合、処理はステップS830へ進み、サブタンクカウンタのカウント値がSth未満であるか否かを調べる。ここで、サブタンクカウンタのカウント値がSth未満であると判定された場合、処理はステップS840へ進み、吸引動作Aシーケンスを再度実行する。なお、Sthの値は、吸引量Aの値よりも大きいので、図5(b)に示したような状態では、ステップS830ではサブタンクカウンタのカウント値がSth未満である(Yes)と判定される。これに対して、サブタンクカウンタのカウント値がSth以上である(No)と判定される場合、処理はステップS831へ進み、上述したサブタンク充填シーケンスを再び実行する。これは、サブタンクカウンタのカウント値がSth以上である場合、サブタンク充填シーケンスを実行することなく、吸引動作Aシーケンスを実行すると、インク供給路230内に泡が混入してしまうという理由からである。
ここで、その理由をもう少し詳しく説明する。
サブタンクカウンタのカウント値がSth以上であるということは、サブタンク210内に貯留されているインクの量が少ないということを意味する。サブタンク210内のインクの量が少ない状態で吸引動作Aシーケンスが実行されると、たとえインクタンク5内に十分な量のインクが貯留されていたとしても、インク供給路230へは泡が混入してしまう。これは、吸引動作Aによるサブタンク210内の減圧速度に、インクタンク5からのインク流入による減圧解消速度が追い付かないからである。吸引動作Aシーケンスの実行によって膨張したサブタンク210内のエアは、サブタンク210内のインクと混じり合いながらインク供給路230内へと進入してしまう。
このような理由から、サブタンクカウンタのカウント値がSth以上である場合には、サブタンク充填シーケンスを実行し、サブタンク210内のインクの量を「略満タン量」にまで増加させた後に、吸引動作Aシーケンスを実行する。なお、上述したように、サブタンク充填シーケンス実行後、サブタンクカウンタのカウント値はゼロ“0”にリセットされる。
また、サブタンク充填シーケンス実行中、短時間ながらも度々、開閉弁235が開けられる。開閉弁235が開けられると、上述した「インク落ち」の可能性がある。即ち、前回の吸引動作Aシーケンスの実行による供給チューブ2へのインク吸引効果が減じられてしまう可能性が生じる。これが、ステップS830におけるサブタンクカウンタのカウント値がSth未満である場合には、サブタンク充填シーケンスを実行することなく吸引動作Aシーケンスを実行する理由である。
なお、このときの「インク落ち」の程度は、記録ヘッド1のインク吐出口におけるメニスカスの形成具合に大きく依存するが、一般的に、二次輸送後充填時においては、それ程大きくはない。二次輸送(装置の設置後の輸送)時には、その輸送前に記録装置内のインクを抜くが、このときに記録ヘッド1内のインクを完全に抜き切ることは困難であるからである。また、このときの「インク落ち」の程度が、二次輸送後充填シーケンスに影響を与えるような程度であったか否かは、後述する方法で確認される。そして、影響を与えるような程度であったと確認された場合には、後述する方法でその対応が図られる。
ステップS831におけるサブタンク充填シーケンスが終了後、処理はステップS840へ進み、吸引動作Aシーケンスを再度実行する。
図5(c)は、図5(b)に示したような状態から吸引動作Aシーケンス実行後のインク供給系の状態の変化を示している。
インクタンク5内には、若干量より少し多めのインクしか貯留されていないために、吸引動作A終了時には、インクタンク残検もサブタンク残検も、それらの結果は残検オフとなる。従って、吸引動作Aシーケンス実行中に、サブタンクカウンタには、再び吸引動作Aによる吸引量Aが加算されて合計値は吸引量Aの2倍となる。なお、吸引量Aの2倍という値はSthの値よりも大きい。
吸引動作Aシーケンス終了後、処理はステップS841へ進み、カウンタMの値がインクリメントされ、その後、処理はステップS850へ進み、カウンタMの値が2以上であるか否か、即ち、吸引動作Aシーケンスの実行回数が2回以上であるか否かを調べる。ここで、M<2、つまり、ステップS840における吸引動作Aシーケンスの実行回数が1回である場合には、処理はステップS810へと戻る。
なお、図5(c)に示した状態で、処理がステップS810へと戻ると、インクタンク残検オフ、かつ、サブタンク残検オフの状態であるので、ステップS810では残検オフ(No)と判定され、その後のステップS820でも残検オフ(No)と判定される。従って、ステップS822でインクタンク交換を促すメッセージが表示され、そのメッセージに応じて、インクタンク交換が行われると、処理は再びステップS810へ戻る。
図5(d)は、インクタンク交換の際に、その内部に十分な量のインクを貯留しているインクタンクへと交換が行われた場合のインク供給系の状態を示している。
インクタンク交換が行われ、図5(d)に示した状態で、処理がステップS810へ戻り、インクタンク残検が実行されると、その結果は残検オン(Yes)となり、処理はステップ830へ進む。ここで、サブタンクカウンタのカウント値が吸引量Aの2倍であって、Sthよりも大きく、サブタンクカウンタのカウント値>Sthと判定され、処理はステップS831へ進む。ステップS831では、再びサブタンク充填シーケンスが実行される。なお、上述したように、このときサブタンク充填シーケンスを実行することなく吸引動作Aを実行すると供給チューブ2へと泡が混入する。また、上述したように、サブタンク充填シーケンス実行後には、サブタンクカウンタのカウント値はゼロ“0”にリセットされる。
図5(e)は、図5(d)に示した状態から、サブタンク充填シーケンス実行後のインク供給系の状態を示している。上述したように、二次輸送後充填時には多くの場合、記録ヘッド1のほとんどのインク吐出口にメニスカスが形成されているため、上述した「インク落ち」は、ほとんど発生しない。
その後、ステップS840では、再々度の吸引動作Aシーケンスが実行され、ステップS841では、カウンタMの値がインクリメントされる。そして、ステップS850では、カウンタMの値が2となっているので、その判定は肯定(Yes)となり、処理はステップS851へ進む。
図5(f)は、図5(e)に示した状態から、吸引動作Aシーケンス実行後のインク供給系の状態を示している。図5(f)に示すように、ステップS800で吸引動作Aシーケンスを1回、ステップS840で吸引動作Aシーケンスを2回、合計、吸引動作Aシーケンスを3回実行することで、サブタンク210内のインクは、記録ヘッド1内にまで達している。
ステップS851では開閉弁235を閉じる。上述した「インク落ち」のリスクを排除するためである。ステップS831におけるサブタンク充填シーケンスにおいて、上述した「インク落ち」が発生していた場合には、上記3回の吸引動作Aシーケンスの実行によっても、記録ヘッド1にまでインクが充填されていない可能性がある。記録ヘッド1にまでインクが充填されていないと、記録ヘッド1のインク吐出口にメニスカスが形成されていない可能性がある。記録ヘッド1のインク吐出口にメニスカスが形成されていないと、「インク落ち」の可能性がある。そのリスク排除のために、ステップS851では、開閉弁235を閉じる。
その後、処理はステップS852へ進み、キャップ閉/空吸引を実行する。具体的には、キャップ130に備えられた大気弁(不図示)が開けられるのとほぼ同時に、吸引ポンプ132の駆動を開始し、その駆動を5秒間、続ける。キャップ閉/空吸引によって、キャップ130内のインクが、ポンプチューブ131や廃インクチューブ133を介して、メンテナンスカートリッジ(不図示)内へと排出される。
さらに処理はステップS853において、キャップ130を離間位置へ移動させる。その後、ステップS854では、周知のワイピング機構(不図示)により、記録ヘッド1のインク吐出口面102をワイピングし、インク吐出口面102上の不要なインクや埃等の異物を除去する。その後、ステップS855では、周知の予備吐出を実行する。
具体的には、記録ヘッド1の全インク吐出口から、キャップ130内に向けて、インク滴が500回程度吐出される。この予備吐出によって、記録ヘッド1のインク吐出性能の向上が図られる。このとき、開閉弁235は閉じられているので、この予備吐出によって記録ヘッド1内から失われた分のインクが、サブタンク210側から供給されてくることはない。従って、記録ヘッド1内の負圧は、その分、その絶対値が若干上昇する。
その後、処理はステップS856へ進み、キャップ130を離間位置に位置させたまま、吸引ポンプ132を駆動してキャップ開/空吸引を実行する。キャップ開/空吸引によって、予備吐出によってキャップ130へと吐出されたインクがポンプチューブ131や廃インクチューブ133を介して、メンテナンスカートリッジ(不図示)へと排出される。さらに、ステップS857では、キャップ130をキャピングポジションへと移動させる。
その後、ステップS860では、記録装置に記録媒体のセットをユーザに促すメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。その後、ステップS861では、記録媒体が記録装置にセットされるのを待ち合わせる。ここで、記録媒体のセットが確認されたなら、処理はステップS862へ進み、記録媒体のセットを促すメッセージの表示をOFFにする。なお、記録媒体のセットの確認には、周知のフォトインタラプタ(不図示)等を用いて実行される。
その後、ステップS870では、キャップ130を離間位置へと移動させた後、ステップS871において、周知の吐出チェックパターンの印刷を行う。このときも、開閉弁235は閉じられているので、この吐出チェックパターンの印刷によって、記録ヘッド1から失われた分のインクがサブタンク210側から供給されてくることはない。従って、記録ヘッド1内の負圧はさらにその分、その絶対値が若干上昇する。印刷終了後、ステップS872では、キャップ130をキャピングポジションへと移動させる。
その後、ステップS880では、ユーザが印刷された吐出チェックパターンを目視チェックして、その結果を入力するのを待ち合わせる。このときにも、記録装置の操作パネル54を用い、ユーザは目視チェックの結果、吐出OKである場合には「OKキー」を、OKでない場合には、「NGキー」を押す。
吐出チェックパターンの目視チェック結果入力を終了後、処理はステップS881に進み、その入力結果がOKであるかNGであるかを調べる。ここで、その入力結果がNGである場合、処理はステップS810へと戻り、もう一度、ステップS840における吸引動作Aシーケンスや、その他の処理を実行した後、再び、吐出チェックパターンを印刷する。そして、ユーザによる吐出チェックパターンの目視チェック結果の入力を待ち合わせる。これに対して、その入力結果がOKである場合、処理はステップS890へ進み、二次輸送後フラグをオフにした後、二次輸送後充填シーケンスを終了する。
以上のように、二次輸送後充填シーケンスは、ユーザによって吐出OKが確認されるまで、つまりユーザによって記録ヘッド1へのインクの充填が確認されるまで、吸引動作Aシーケンスやその他の処理を実行する。なお、二次輸送後フラグは、記録装置の輸送前に、記録装置からインクが抜かれた後にオンにされている。
従って以上説明した実施例に従えば、二次輸送後充填シーケンスにおいて、サブタンク内に十分な量のインクがあるときには、インクタンク内にインクがないときであっても、インク供給路へのインクの充填のための吸引動作を実行することができる。これにより、交換されるインクタンクに若干量のインクが残ってしまう場合を、極力少なくするようにしている。これに対して、サブタンク内に十分な量のインクがないときには、サブタンク充填シーケンスを実行して、サブタンク内のインクの量を十分な量にしてから、インク供給路へのインク充填のための吸引動作を実行するようにしている。このようにして、インク供給路内への泡の混入を防止できる。
次に、以上のような構成の記録装置のインク供給系における初期充填シーケンスを図面を参照して説明する。なお、初期充填シーケンスは、インクタンク5が記録装置に初めて装着されたことが検知されると開始される。このように、初期充填シーケンスとは、インクが未だ供給されていない、サブタンク、供給チューブ、記録ヘッド等にインクタンク内のインクを、最初に供給充填する際の充填シーケンスをいう。
まず、図9は、図1に示した記録装置の記録ヘッドが移動する経路に沿って備えられる構成要素の一部を模式的に示す断面図である。図9において、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ60は矢印X方向にガイドシャフト110に沿ってプラテン120の上を往復移動する。また、図9に示すように、キャリッジのホームポジション付近には、記録ヘッド1から吐出されるインク液滴を検出する検出ユニット900が設けられている。
検出ユニット900そのものは周知のフォトインタタプティブ型のものであり、その内部に図9の紙面に垂直な方向(Y方向)に、発光素子(不図示)とその光を受光する受光素子(不図示)とを備えている。また、検出ユニット900は、その内底部に、インク吸収体901が備えられている。検出ユニット900のインク吸収体901に向けて、記録ヘッド1のインク吐出口からインク滴を吐出させ、その際の受光素子に受光される光量の変化から、インク滴の吐出の有無を検出する。
なお、その他の構成要素については、図2を参照して説明したので、同じ参照番号を付し、その説明は省略する。また、検出ユニット900も、各種センサ375と同様、センサコントローラ370によって制御される。
以下、このように構成された記録装置において実行される初期充填シーケンスを、図10~図11に示すインク供給系の状態を示す図と、図12~図15に示すフローチャートを参照して説明する。
初期充填シーケンスは、記録装置に電源が投入されたときに、初期フラグがオンであるとされる。なお、初期フラグは、記録装置が出荷される前にオンにされている。
まず、ステップS1201では、ユーザに向けて、記録ヘッドを記録装置への装着を促す旨のメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。その後、ステップS1202では、記録ヘッドが記録装置に装着されるのを待ち合わせ、その装着が確認されたなら、処理はステップS1203へ進み、記録ヘッドの装着を促す旨のメッセージの表示をOFFにする。なお、記録ヘッドの装着確認は、実施例1で説明したようなインクタンクの接続確認と同様に電気的接続を検知する構成が用いられる。
その後、処理はステップS1204へ進み、ユーザに向けて、インクタンクを記録装置への装着を促す旨のメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。その後、ステップS1205では、インクタンクが記録装置に装着されるのを待ち合わせ、その装着が確認されたなら、処理はステップS1206へ進み、インクタンク装着を促す旨のメッセージの表示をOFFにする。なお、インクタンクの装着の確認は、実施例1で説明したのと同様である。
図10(a)は、新品ではない(使いかけの)インクタンク5を記録装置に装着した場合のインク供給系の状態を示す図である。このとき、実施例1と同様、キャップ130はキャッピング位置に位置しており、開閉弁235は閉じられている。また、実施例1と同様、第1の中空管211と第2の中空管222内での気液交換は生じないため、インクタンク5を記録装置に装着しただけでは、インクタンク5内のインクがバッファ室220内やサブタンク210内へと流れ出していくことはない。但し、インクタンク5内の圧力と記録装置の設置環境の気圧との間に差がある場合には、その限りではない。
その後、処理はステップS1210へ進み、上述したインクタンク残検を実行する。ここで、その結果が残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS1300へと進んで、インクタンク交換シーケンスを実行される。
図13はインクタンク交換シーケンスを示すフローチャートである。ここで、図13を参照しながら、インクタンク交換シーケンスについて説明する。
インクタンク交換シーケンスが開始されると、ステップS1301では、開閉弁235を閉じる。なお、このときには、既に開閉弁235は閉じられているので、ステップS1301では何も実行されない。以降についても同様で、既に開閉弁235が閉じられている場合には、ステップS1301では何も実行されない。開閉弁235を閉じる目的は、上述したように、「インク落ち」のリスクを排除することであるが、このときは「インク落ち」のリスクは生じていない。
次に、ステップS1302では、ユーザに向けて、インクタンクの交換を促す旨のメッセージを操作パネル54の表示部に表示する。その後、処理はステップS1303へ進み、インクタンクの交換を待ち合わせる。ここで、インクタンク交換が確認されたなら、処理はステップS1304へ進み、インクタンク5の交換を促す旨のメッセージの表示をOFFにした後、インクタンク交換シーケンスを終了する。インクタンク交換シーケンス終了後、処理はステップS1210へと戻り、再びインクタンク残検を実行する。
これに対して、ステップS1210におけるインクタンク残検の結果が残検オン(Yes)であると判定された場合、処理はステップS1310へ進む。即ち、インクタンク残検オン、具体的には、内部に貯留されているインクの液面位置が、図10において“T”で示した位置よりも高い、インクタンク5が記録装置に装着されたなら、処理はステップ1310へと進む。なお、図10(a)に示したような場合には、ステップS1210におけるインクタンク残検の結果は残検オン(Yes)となる。
ステップS1310では、吸引動作Bを実行する。具体的には、吸引ポンプ132が、30秒間駆動される。このとき、開閉弁235は閉じられているので、吸引動作Bによって、記録ヘッド1内及び弁より下流側のインク供給路230内が減圧される。その後、処理はステップS1311へ進み、開閉弁235を開ける。開閉弁235が開けられると、記録ヘッド1内及び弁より下流側のインク供給路230内の減圧を解消すべく、サブタンク210内のエアがインク供給路230の弁より下流側へと流れる。すると、その分のインクがインクタンク5から、第1の中空管211を介して、サブタンク210へと流れ込む。すると、その分のエアがバッファ室220から、第2の中空管222を介して、インクタンク5へと流れ込む。そして、その分のエア(大気)が、大気連通路221を介して、バッファ室220へと流入する。このような、インクとエアの流れが生じて、上記減圧は解消される。
そして、ステップS1312では、記録ヘッド1内及び弁より下流側のインク供給路230内の減圧が解消され終わるのを、5秒間待つ。5秒のウェイトの間に、上述したような、インク及びエアの流れが生じて、上記減圧は解消される。
以下、開閉弁235を閉じ、吸引動作Bを実行し、開閉弁235を開け、5秒ウェイトすることの一連の動作からなる吸引動作を、チョーク吸引Bという。
図10(b)は、図10(a)に示した状態から、チョーク吸引Bを実行後のインク供給系の状態を示している。チョーク吸引Bによって、インクタンク5のインクは、サブタンク210の底部と、インク供給路230の開閉弁235による開閉部を含んだ一部分へと吸い出される。なお、前述したように、この状態からもう一回チョーク吸引、例えば、チョーク吸引Bを実行すると、サブタンク210内のエアと混じり合ったインクが、弁より下流側のインク供給路230へと進入してしまう。言い換えると、弁より下流側のインク供給路230内のインクに、多量の泡が混入してしまう。
その後、ステップS1313では、上述したサブタンク充填シーケンスを実行する。サブタンク充填シーケンスについては、実施例1において、図7等を参照しながら説明しているので、ここでは説明を省略する。
なお、ステップS1313におけるサブタンク充填シーケンスの実行は、ステップS700におけるサブタンク充填シーケンスの実行とは、状況が少し異なる。
ステップS700におけるサブタンク充填シーケンスの実行時には、サブタンク210内にインクが貯留されていない状態からサブタンク充填動作を開始している。これに対して、ステップS1313におけるサブタンク充填シーケンスの実行時には、サブタンク210の底部などに、既にインクが充填されている状態からサブタンク充填動作を開始している。従って、サブタンク充填シーケンス終了までに要する時間は、ステップS1313におけるサブタンク充填シーケンスの実行時の方が、ステップS700におけるサブタンク充填シーケンスの実行時よりも、かなり短い。サブタンク210内へと移動されるべきインク量が少なく、また、上述したように、サブタンク充填効率も高い状態となっているからである。
なお、このようなサブタンク充填補助のための吸引には、チョーク吸引Bのようなチョーク吸引方式が望ましい。実施例1において説明した開閉弁235を開けたまま吸引ポンプ132を駆動する吸引方式よりも、供給チューブ2への泡の混入を防止しつつ、より多くのインクをサブタンク210へと移動させることができるからである。
図10(c)は、図10(b)に示した状態から、サブタンク充填シーケンス実行後のインク供給系の状態を示している。サブタンク充填シーケンス終了まで、即ち、サブタンク残検の結果が残検オンになるまで、サブタンク充填動作が行われているので、サブタンク210のインク量は「略満タン量」となる。このとき、インクタンク5のインク量は、若干量以下、具体的には、インクタンク5のインクの液面位置が、図10において“T”で示した位置より下となっている。
サブタンク充填シーケンスの実行終了後、ステップS1400では、吸引動作Cシーケンスを実行する。
吸引動作Cシーケンスについては、図10と図14に示したフローチャートを参照して説明する。
吸引動作Cシーケンスが開始されると、ステップS1401では、開閉弁235を閉じる。なお、このときには、既に開閉弁235は閉じられているので、ステップS1401では何も実行されない。その後、ステップS1402で、吸引動作Cを実行する。具体的には、吸引ポンプ132が20秒間駆動される。吸引動作Cによって、記録ヘッド1内と弁より下流側のインク供給路230内が減圧される。
その後、ステップS1403では、開閉弁235を開け、ステップS1404では、記録ヘッド1内と弁より下流側のインク供給路230内の減圧が、上述したようなインクとエアの流れにより解消されるのを5秒間待ち合わせる。
以下、ステップS1401~S1404からなる動作をチョーク吸引Cという。
図10(d)は、図10(c)に示したような状態からチョーク吸引Cを実行後のインク供給系の状態を示している。チョーク吸引Cによって、インクタンク5に残っているインクの量は略零となり、サブタンク210に貯留されているインク量は、「略満タン量」よりも少なくなる。
このときにも、サブタンク210内には十分な量のインクが貯留されているので、供給チューブ2内への泡の混入は防止される。また、インクタンク残検の結果が残検オフであっても、その結果には関わりなく、チョーク吸引Cが実行されるので、交換されるインクタンクに若干量のインクが残ってしまうという問題が生じることも防止される。
その後、処理はステップS1405へ進み、インクタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS1406へ進む。なお、図10(d)に示したような例では、インクタンク5に残っているインクの量が略零であるため、インクタンク残検の結果は、残検オフとなる。
ステップS1406では、サブタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS1407へと進む。なお、図10(d)に示したような例では、サブタンク210のインクの量が「略満タン量」よりも少ないため、サブタンク残検の結果も残検オフとなる。ステップS1407では、サブタンクカウンタにチョーク吸引Cによる吸引量Cを加算する。その後、吸引動作Cシーケンスを終了する。これに対して、ステップS1406におけるサブタンク残検の結果が残検オン(Yes)と判定された場合、そのまま吸引動作Cシーケンスを終了する。
また、ステップS1405におけるインクタンク残検の結果が残検オンであると判定された場合にも、そのまま吸引動作Cシーケンスを終了する。
従って、チョーク吸引C終了後に、インクタンク残検オフ、かつ、サブタンク残検オフである場合には、サブタンクカウンタにチョーク吸引Cによる吸引量Cが加算され、そうでない場合には、何も行われることなく吸引動作Cシーケンスは終了する。
再び図12へ戻って説明を続けると、ステップS1400における吸引動作Cシーケンスの実行が終了すると、処理はステップS1409へ進み、カウンタLの値が零“0”にリセットされる。カウンタLは、この後に実行される吸引動作Cシーケンスの実行回数をカウントするためのカウンタである。
その後、処理はステップS1410において、再びインクタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、その結果が残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップステップS1420へ進む。ステップS1420では、サブタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、その結果が残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS1421へ進み、上述したインクタンク交換シーケンスを実行する。
なお、図10(d)に示したような例においては、インクタンク残検オフ、かつ、サブタンク残検オフの状態であるので、インクタンク交換が行われる。
図10(e)は、インクタンク交換の際に、その内部のインクの液面位置が、図10における“T”で示した位置よりも若干高いインクタンクへと交換が行われた場合のインク供給系の状態を示している。
インクタンク交換シーケンスの終了後、処理はステップS1410へ戻り、再びインクタンク残検が実行される。
さて、ステップS1420におけるサブタンク残検の結果が残検オン(Yes)であると判定された場合、処理はステップS1440へ進み、上述した吸引動作Cシーケンスを再度実行する。つまり、インクタンク残検の結果が残検オフであっても、サブタンク残検の結果が残検オンであれば、処理はステップS1440へ進み、吸引動作Cシーケンスが実行される。従って、このときも、前述したような、交換されるインクタンク内に若干量のインクが残ってしまうという問題が生じることが防止される。
また、ステップS1410におけるインクタンク残検の結果が残検オンである場合、処理はステップS1430へ進み、サブタンクカウンタのカウント値が、SSth未満であるか否かを判定する。ここで、サブタンクカウンタのカウント値がSSth未満であると判定された場合、処理はステップS1440へ進み、吸引動作Cシーケンスを再度実行する。なお、SSthの値は、吸引量Cの値よりも大きいので、図10(e)に示したような状態では、サブタンクカウンタのカウント値がSSth未満であると判定される。
これに対して、サブタンクカウンタのカウント値がSSth以上であると判定された場合、処理はステップS1431へ進み、上述したサブタンク充填シーケンスを再び実行する。なぜなら、サブタンクカウンタのカウント値がSSth以上であるときに、サブタンク充填シーケンスを実行することなく、吸引動作Cシーケンスを実行すると、インク供給路230内に泡が混入してしまうからである。なお、このときのサブタンク充填シーケンスの実行中においても、「インク落ち」の可能性は生じる。ステップS1431が終了後、処理はステップS1440へと進んで、吸引動作Cシーケンスを再度実行する。
図10(f)は、図10(e)に示した状態から吸引動作Cシーケンスを実行後のインク供給系の状態を示している。
インクタンク5には、もはや若干量より少し多めのインクしか貯留されていないため、吸引動作Cシーケンス終了時には、インクタンク残検もサブタンク残検も、それらの結果は残検オフとなる。従って、吸引動作Cシーケンス実行中において、サブタンクカウンタには、再び吸引量Cが加算されて、合計値は、吸引量Cの2倍となる。なお、この吸引量Cの2倍という値は、上記SSthの値よりも大きい。
吸引動作Cシーケンスが終了後、処理はステップS1441へ進み、カウンタLの値がインクリメントされる。その後、ステップS1450では、カウンタLの値が2以上であるか否か、即ち、ステップS1440における吸引動作Cシーケンスの実行回数が2回以上であるか否かを判定する。ここで、L<2、つまり、ステップS1440における吸引動作Cシーケンスの実行回数が1回である場合、処理はステップS1410へと戻る。
なお、図10(f)に示したような状態で、ステップS1410へと戻ると、インクタンク残検オフ、かつ、サブタンク残検オフの状態であるので、処理はステップS1421に進んで、インクタンク交換シーケンスが実行される。ここで、インクタンクの交換が行われ、処理は再びステップS1410へと戻る。
図11(a)は、インクタンク交換の際に、内部に十分な量のインクを貯留しているインクタンクへと交換が行われた場合のインク供給系の状態を示している。
図11(a)に示したような状態で、処理がステップS1410へと戻ると、インクタンク残検の結果は残検オンとなり、処理はステップ1430へ進む。そして、ステップ1430では、サブタンクカウンタのカウント値が吸引量Cの2倍であって、SSthよりも大きいので、その判定結果は否定判定(No)となって、処理はステップS1431へと進む。そして、ステップS1431では、再び、上述したような、サブタンク充填シーケンスが実行される。なお、このときサブタンク充填シーケンスを実行することなく吸引動作Cシーケンスを実行すると、上述したように、供給チューブ2内へ泡が混入していってしまう。
図11(b)は、図11(a)に示したような状態から、サブタンク充填シーケンス実行後のインク供給系の状態を示している。なお、ステップS1431におけるサブタンク充填シーケンス実行後には、上述したように、サブタンクカウンタのカウント値は、ゼロ“0”にリセットされる。
その後、ステップS1440において、再々度の吸引動作Cシーケンスが実行され、ステップS1441において、カウンタLの値がインクリメントされる。その後のステップS1450における判定では、L=2であるので、処理はステップS1451へ進む。
図11(c)は、図11(b)に示したような状態から、吸引動作Cシーケンス実行後のインク供給系の状態を示している。
この場合、ステップS1400における吸引動作Cシーケンスを1回、ステップS1440における吸引動作Cシーケンスを2回、合計、吸引動作Cシーケンスを3回実行することで、サブタンク210内のインクは記録ヘッド1にまで達している。
再び図12を参照して説明を続けると、ステップS1451では、開閉弁235を閉じる。上述した「インク落ち」のリスクを排除するためである。ステップS1431におけるサブタンク充填シーケンスにおいて、上述した「インク落ち」が発生していた場合、上記3回の吸引動作Cシーケンスの実行によっても、記録ヘッド1にまでインクが充填されていない可能性がある。記録ヘッド1にまでインクが充填されていないと、記録ヘッド1のインク吐出口にメニスカスが形成されていない可能性がある。記録ヘッド1のインク吐出口にメニスカスが形成されていないと、「インク落ち」が発生するリスクがある。そのリスクの排除のために、ステップS1451では、開閉弁235を閉じるのである。
その後、処理はステップS1452において、キャップ閉/空吸引を実行する。具体的には、キャップ130に備えられた大気弁(不図示)が開けられるのとほぼ同時に、吸引ポンプ132の駆動を開始し、その後、5秒間、駆動を継続する。キャップ閉/空吸引によって、キャップ130内のインクが、ポンプチューブ131や廃インクチューブ133を介して、メンテナンスカートリッジ(不図示)へと排出される。
次に、ステップS1453では、キャップ130を離間位置へ移動させる。その後、ステップS1454では、周知のワイピング機構(不図示)により、記録ヘッド1のインク吐出口面102をワイピングして、インク吐出口面102上の不要なインクや埃等の異物を除去する。さらに、ステップS1455では、上述した予備吐出を実行する。具体的には、記録ヘッド1の全インク吐出口から、キャップ130内に向けて、インク滴が500回程度吐出される。予備吐出により、記録ヘッド1のインク吐出性能の向上が図られる。このとき、開閉弁235は閉じられているので、予備吐出によって記録ヘッド1内から失われた分のインクがサブタンク210側から供給されてくることはない。従って、記録ヘッド1内の負圧は、その分、その絶対値が若干上昇する。
予備吐出終了後、ステップS1456では、キャップ130を離間位置に位置させたまま吸引ポンプ132を駆動し、キャップ開/空吸引を実行する。キャップ開/空吸引によって、予備吐出によってキャップ130内へと吐出されたインクが、ポンプチューブ131や廃インクチューブ133を介して、メンテナンスカートリッジ(不図示)へと排出される。
その後、処理はステップS1460へ進み、キャリッジ60を検出ユニット900に対向する位置にまで移動させる。そして、ステップS1461では、吐出検出を行う。具体的には、記録ヘッド1のインク吐出口から、検出ユニット900に向けてインク滴を吐出し、その際の受光素子の受光光量の変化からインク吐出の有無を判定する。このときも、開閉弁235は閉じられているので、インク滴の吐出によって記録ヘッド1内から失われた分のインクが、サブタンク210側から供給されてくることはない。従って、記録ヘッド1内の負圧は、さらにその分、その絶対値が若干上昇する。
ステップS1461における吐出検出の結果、インク吐出が確認されない場合、処理はステップS1462へ進み、キャリッジ60をホームポジション(キャッピング位置)へ戻す。その後、ステップS1463では、キャップ130をキャッピング位置へと移動させる。その後、処理はステップS1410へと戻る。
インク吐出が確認されないということは、上述した「インク落ち」等の影響によって、記録ヘッド1にまでインクが充填されていないということが想定される。そのため、この初期充填シーケンスでは、ステップS1462~S1463を実行後、ステップS1410へと戻り、ステップS1410~S1431の処理を実行後、再び、吸引動作Cシーケンスを実行する。そして、さらに、ステップS1441~S1456の処理を実行後、再び、ステップS1460において吐出検出を行う。
これに対して、ステップS1461において、インク滴の吐出が確認された場合、処理はステップS1465へ進む。ステップS1465では、キャリッジ60がホームポジションへと戻される。その後、ステップS1466では、キャップ130をキャッピング位置へ移動させる。
その後、処理はステップS1470において、インクタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、その結果が残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップステップS1480へ進む。ステップS1480では、サブタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、その結果も残検オフ(No)であると判定された場合、処理はステップS1481へ進み、上述したインクタンク交換シーケンスを実行する。その後、処理はステップS1470へ戻り、再びインクタンク残検を実行する。
さて、ステップS1480におけるサブタンク残検の結果が残検オン(Yes)であると判定された場合、処理はステップS1500へ進み、後述する吸引動作Vシーケンスを実行する。つまり、ステップS1470におけるインクタンク残検の結果が残検オフであっても、ステップS1480におけるサブタンク残検の結果が残検オンであれば、ステップS1500へと進む。ステップS1500では、後述する吸引動作Vシーケンスが実行されるので、このときも、前述したような交換されるインクタンク内に若干量のインクが残ってしまうという問題が生じることは防止される。
また、ステップS1470におけるインクタンク残検の結果が残検オンであると判定された場合、処理はステップS1490へ進む。ステップS1490では、サブタンク残検を実行し、その結果を判定する。ここで、その結果が残検オフであると判定された場合、処理はステップS1491へ進み、サブタンク充填シーケンスを実行する。このときには、記録ヘッド1のインク吐出口からのインク吐出が確認されている、即ち、記録ヘッド1のインク吐出口におけるメニスカス形成が確認されているので、上述した「インク落ち」の発生リスクはない。そのため、インクタンク残検オン、かつ、サブタンク残検オフであるときには、サブタンクカウンタのカウント値には関わりなく、サブタンク充填シーケンスを実行する。
一方、ステップS1490におけるサブタンク残検の結果が残検オンであると判定された場合、処理はステップS1500へ進む。即ち、インクタンク残検オン、かつ、サブタンク残検オンであるときには、何もすることなく、処理はステップS1500へ進み、後述する吸引動作Vシーケンスを実行する。
図11(c)に示した状態では、インクタンク残検オン、かつ、サブタンク残検オンの状態であるので、何もすることなく、後述する吸引動作Vシーケンスが実行される。
ステップS1500では、吸引動作Vシーケンスを実行する。
図15は吸引動作Vシーケンスの詳細を示すフローチャートである。なお、図15において、図14の吸引動作Cにおける処理と同じ処理ステップには、同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。図15と図14とを比較すると分かるように、吸引動作Vシーケンスは、ステップS1402における吸引動作CがステップS1402’として吸引動作Vに、ステップS1407における吸引量CがステップS1407’として吸引量Vに置換しただけである。なお、吸引動作Vにおいて、吸引ポンプ132は40秒間駆動される。
図11(d)は、図11(c)に示したような状態から、吸引動作Vシーケンスを実行後のインク供給系の状態を示している。吸引動作Vは、実施例1で説明した吸引動作Aシーケンスのような開閉弁235を開けた状態での吸引動作ではなく、チョーク吸引を実行するので、記録ヘッド1に貯留されるインクの量を大幅に増やすことができる。
再び図12に戻って説明を続けると、ステップS1501の終了後、処理はステップS1510へ進み、吸引動作Pを実行する。具体的には、吸引ポンプ132が2秒間駆動される。なお、吸引動作Pによって、記録ヘッド1のインク吐出口内のインクがリフレッシュされる。
その後、処理はステップS1511において、上述したキャップ閉/空吸引を実行し、これにより、キャップ130内のインクが、ポンプチューブ131や廃インクチューブ133を介して、メンテナンスカートリッジ(不図示)へと排出される。
その後、上述したステップS1453~ステップS1456の処理と同様の処理が、同様の目的で、ステップS1512~ステップS1515において実行される。その後、処理はステップS1516へ進み、キャップ130をキャッピング位置へ移動させる。
最後に、ステップS1550では、初期フラグがオフにして、初期充填シーケンスを終了する。
以上のように、初期充填シーケンスは、検出ユニット900を用いて、少なくともインク吐出口にまでインクが充填されたことを確認してから、吸引動作Vシーケンスを実行して、記録ヘッド1内に十分な量のインクを充填した後に終了する。なお、初期フラグは、記録装置が出荷される前にオンにされているものとする。
従って以上説明した実施例に従えば、初期充填シーケンスにおいて、サブタンク内に十分な量のインクがあるときには、インクタンク内にインクがないときであっても、インク供給路へのインクの充填のための吸引動作を実行することができる。これにより、交換されるインクタンクに若干量のインクが残ってしまう場合を極力少なくすることができる。一方、サブタンク内に十分な量のインクがないときには、サブタンク充填シーケンスを実行し、サブタンク内のインクの量を十分な量にしてから、インク供給路へのインク充填のための吸引動作を実行する。これにより、インク供給路内への泡の混入が防止される。
また、以上説明した実施例1、2では、インクジェット記録装置が用いるインクは1種類として説明したが、本発明はこれによって限定されるものではなく、例えば、複数種類のインクを吐出するインクジェット記録装置に対しても適用可能である。
さらに、以上説明した実施例1、2では、記録素子としてインク吐出口の内部に電気熱変換素子を備えた構成の記録ヘッドを用いたが、本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、記録素子として電気機械変換素子(ピエゾ素子)を備えた構成の記録ヘッドを用いても良い。