本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
液体を吐出する複数のヘッドと、前記複数のヘッドのそれぞれに対応したメンテナンスユニットであって、前記液体を消費するメンテナンスを行うメンテナンスユニットと、前記複数のヘッドのうち、ヘッドによる印刷可能範囲が所定範囲内となるメンテナンス対象ヘッドに対してのみ、前記メンテナンスユニットに前記メンテナンスを定期的に行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置が明らかとなる。
このような画像形成装置によれは、印刷に使用しないヘッドは定期的なメンテナンスが行われないので、メンテナンスで消費される液体の量の低減を図ることができる。
かかる画像形成装置であって、前記複数のヘッドは、媒体の搬送方向と交差する交差方向に並んでおり、前記所定範囲は、前記媒体の前記交差方向の幅であってもよい。
このような画像形成装置によれば、メンテナンス対象ヘッドを簡易に判断できる。
かかる画像形成装置であって、前記複数のヘッドは、前記媒体の搬送方向と交差する交差方向に並んでおり、前記所定範囲は、印刷ジョブにおける前記交差方向の長さの最大値であってもよい。
このような画像形成装置によれば、メンテナンスで消費される液体の量をより低減させることができる。
かかる画像形成装置であって、前記制御部は、前記媒体のセット時に前記複数のヘッドのうちから前記メンテナンス対象ヘッドを判定し、印刷を開始してから所定期間経過する毎に、当該メンテナンス対象ヘッドに対して前記メンテナンスユニットに前記メンテナンスを行わせてもよい。
かかる画像形成装置であって、前記制御部は、印刷開始時に前記複数のヘッドのうちから前記メンテナンス対象ヘッドを判定し、印刷を開始してから所定期間経過する毎に、当該メンテナンス対象ヘッドに対して前記メンテナンスユニットに前記メンテナンスを行わせてもよい。
かかる画像形成装置であって、各ヘッドに吐出不良のノズルが有るか否かのノズル検査を行う検査ユニットを有し、前記制御部は、前記メンテナンス対象ヘッドに対する前記メンテナンスを行った後、前記複数のヘッドに対して前記検査ユニットに前記ノズル検査を行わせ、前記メンテナンス対象ヘッドに対しては、前記ノズル検査で吐出不良のノズルが有ると判断された場合には、再度前記メンテナンスを行ない、前記メンテナンス対象ヘッド以外の未使用ヘッドに対しては、前記ノズル検査で吐出不良のノズルが有ると判断された場合にも、直ちに前記メンテナンスを行わないことが望ましい。
このような画像形成装置によれば、メンテナンス対象ヘッドに対しては吐出不良のノズルが検出されると再度メンテナンスを行うことで吐出不良のノズルの回復を図ることができる。また、未使用ヘッドに対しては、吐出不良のノズルが検出されても直ちにメンテナンスを行わないことで液体の消費量の低減を図ることができる。よって、吐出不良のノズルの検出結果に対して最適な対応を行うことができる。
かかる画像形成装置であって、前記ノズル検査において前記未使用ヘッドに吐出不良のノズルが有ると判断されたことを示す抜け有り情報を保持する保持部を有し、前記制御部は、前記保持部に前記抜け有り情報が保持され、且つ、前記抜け有り情報が前記保持部に保持されてからの時間が閾値を超える場合、前記未使用ヘッドに対して前記メンテナンスユニットに前記メンテナンスを行わせることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、未使用ヘッドの吐出不良のノズルが回復不能になるのを防止することができる。
かかる画像形成装置であって、前記抜け有り情報は、前記複数のヘッド毎に用意されている情報であることが望ましい。
このような画像形成装置によれば、未使用ヘッドのメンテナンスの際に消費される液体の量を低減させることができる。
かかる画像形成装置であって、前記メンテナンスは、クリーニング、フラッシング、ワイピングの何れか1つ、又は、それらの組み合わせであってもよい。
このような画像形成装置によれば、メンテナンスにより消費される液体の量を減らすことができる。
以下の実施形態では、画像形成装置としてラテラル方式のインクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
===第1実施形態===
<プリンター1の構成例について>
プリンター1の構成例について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、プリンター1の概略断面図である。図2は、プリンター1のブロック図である。図3は、ヘッドの構成を示す概略図である。なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向を示すものとする。なお、図3は、キャリッジ42の上方からキャリッジ42を透過してヘッドを見た図である。
また、本実施形態においては、プリンター1が画像を形成する媒体としてロール紙2(連続紙)を用いて説明する。
本実施形態に係るプリンター1は、図1及び図2に示すように、搬送ユニット20と、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路に沿って、給送ユニット10と、プラテン29と、巻き取りユニット80と、を有している。さらに、プリンター1は、ヘッドユニット30と、キャリッジユニット40と、クリーニングユニット70と、ノズル検査ユニット90と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、第一搬送ローラー23から見て右方(ロール紙2が搬送される方向において、プラテン29から見て下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する印刷領域Rへ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、印刷領域R上のロール紙2の部位に対して画像形成がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている(すなわち、後述するように、ヘッドが、左右方向及び前後方向へ移動しつつ、停止しているロール紙2の当該部位にインクを吐出することにより、当該部位に1ページ分の画像が形成されることとなる)。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量(ロール紙の部位の長さ)が調整される。
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙2の部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が形成された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて巻き取りユニット80に送り出すようになっている。
プラテン29は、搬送経路上の印刷領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとともに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路上の印刷領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット20により、印刷領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される(すなわち、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像が形成される毎に、間欠的な当該搬送が行なわれる)。
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の印刷領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、液体の一例としてのインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、同じ構成の8個のヘッド31を有している。これらの8個のヘッド31は、図3に示すように、キャリッジ42において千鳥状に配置されている。以下の説明において、8個のヘッド31を列方向の後側から順に31A〜31Hとする。
なお、ヘッド31の構成の詳細については後述する。
キャリッジユニット40は、ヘッドユニット30の各ヘッド(ヘッド31A〜31H)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、搬送方向(左右方向)に延びるキャリッジガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、キャリッジガイドレール41に沿って搬送方向(左右方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。
キャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、各ヘッドと一体となって搬送方向(左右方向)へ移動するよう構成されている。また、キャリッジ42には、列方向(前後方向)に延びる不図示のヘッドガイドレールが設けられており、各ヘッドは、前記モーターの駆動により、当該ヘッドガイドレールに沿って列方向(前後方向)へ移動するよう構成されている。
クリーニングユニット70(メンテナンスユニットに相当する)は、ヘッドユニット30の各ヘッドをクリーニング(メンテナンスの一種)するためのものである。このクリーニングユニット70は、ホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図1参照)に設けられておりヘッドのノズルからインクを吸引することによってクリーニングを行う。
なお、クリーニングユニット70の詳細については後述する。
巻き取りユニット80は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像形成済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット80は、送り出しローラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するための中継ローラー81と、回転可能に支持され中継ローラー81から送られたロール紙2を巻き取る巻き取り駆動軸82と、を有している。
ノズル検査ユニット90(検査ユニットに相当する)は、ヘッドユニット30の各ヘッドのノズルからインクが吐出されるか否か(吐出不良のノズルの有無)を自動的に検出するためのものである。
なお、ノズル検査ユニット90の詳細については後述する。
コントローラー60(制御部に相当する)は、プリンター1の制御を行なうための制御ユニットである。このコントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、タイマー65とを有している。インターフェース部61は、外部装置であるホストコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行なうためのものである。なお、プリンター1がホストコンピューター110から受信するデータとしては、印刷データや、コマンドデータなどがある。
CPU62は、プリンター1全体の制御を行なうための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
また、メモリー63は、不図示のレジスタ等を有し、ノズル検査ユニット90による検査結果を示す情報(後述するノズル抜けフラグ)を保持する。すなわちメモリー63は保持部に相当する。
タイマー65は、例えば、一定周期の内部クロックのパルスの数をカウントすることにより時間(経過時間)を測定するものである。本実施形態では、ノズル検査で吐出不良のノズルが検出されてからの時間を測定する。なお、タイマー65のカウント値はリセットにより初期値(例えばゼロ)に戻る。
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラーに取り付けられてロール紙2の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送されるロール紙2の有無を検出する紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の搬送方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。また、本実施形態では、ロール紙2の列方向の長さ(すなわち紙幅)を検出する紙幅検出センサー(不図示)が、例えばキャリッジ42に設けられており、プリンター1の搬送経路にロール紙2がセットされることで、ロール紙2の列方向の紙幅を検出できる。
<ヘッドの構成について>
前述したように、プリンター1のヘッドユニット30は、8個のヘッド31(31A〜31H)を有している。これらの、各ヘッドの構成はすべて同じである。よって、そのうちの1つのヘッド(ここではヘッド31A)を用いてヘッドの構成について説明する。
図4は、図3のヘッド31Aを拡大して示した図である。
図4に示すように、ヘッド31Aの下面には、4色のインク毎に(色毎に)、n個(例えば180個)のノズルが設けられている。すなわち、ヘッド31Aには、シアンインクが吐出されるノズル、マゼンタインクが吐出されるノズル、イエローインクが吐出されるノズル、ブラックインクが吐出されるノズルが、それぞれ180個(合計で、180×4=1720個)備えられている。そして、それぞれの180個のノズルは、列方向(前後方向)に沿って列状に並んでおり、シアンノズル列C、マゼンタノズル列M、イエローノズル列Y、ブラックノズル列Kを形成している。
図5は、ヘッド31の内部構造の一例を説明するための断面図である。図では搬送方向に隣接する2つのノズルに対応する部分の断面が示されている。ヘッド31は、駆動ユニット32と、駆動ユニット32を収納するためのケース33と、ケース33に装着される流路ユニット34とを備えている。
駆動ユニット32は、複数のピエゾ素子321によって構成されるピエゾ素子群と、このピエゾ素子群が固定される固定板323と、各ピエゾ素子321に給電するためのフレキシブルケーブル324とから構成される。各ピエゾ素子321は、所謂片持ち梁の状態で固定板323に取り付けられている。固定板323は、ピエゾ素子321からの反力を受け止め得る剛性を備えた板状部材である。フレキシブルケーブル324は、可撓性を有するシート状の配線基板であり、固定板323とは反対側となる固定端部の側面でピエゾ素子321と電気的に接続されている。そして、このフレキシブルケーブル324の表面には、ピエゾ素子321の駆動等を制御するための制御用ICであるヘッド制御部HCが実装されている。
ケース33は、駆動ユニット32を収納可能な収納空部331を有する直方体ブロック状の外形である。このケース33の先端面には上記の流路ユニット34が接合される。この収納空部331は、駆動ユニット32が丁度嵌合可能な大きさである。また、このケース33には、対応するインクカートリッジ(不図示)からのインクを流路ユニット34に供給するためのインク供給管332も形成されている。
流路ユニット34は、流路形成基板35と、ノズルプレート36と、弾性板37とを有し、流路形成基板35がノズルプレート36と弾性板37に挟まれるようにそれぞれを積層して一体的に構成される。ノズルプレート36は、ノズル(Nz)が形成されたステンレス鋼製の薄いプレートである。
流路形成基板35には、圧力室351及びインク供給口352となる空部が各ノズルNzに対応して複数形成される。リザーバー353は、インクカートリッジに貯留されたインクを各圧力室351に供給するための液体貯留室であり、インク供給口352を通じて対応する圧力室351の他端と連通している。なお、インクカートリッジから供給されるインクは、インク供給管332を通って、リザーバー353内に導入されるようになっている。
駆動ユニット32は、ピエゾ素子321の自由端部を流路ユニット34側に向けた状態で収納空部331内に挿入され、この自由端部の先端面が対応する島部373に接着される。また、固定板323の背面が収納空部331を区画するケース33の内壁面に接着される。この収納状態でフレキシブルケーブル324を介してピエゾ素子321に駆動信号を供給すると、ピエゾ素子321は伸縮して圧力室351の容積を膨張・収縮させる。このような圧力室351の容積変化により、圧力室351内のインクには圧力変動が生じる。そして、このインク圧力の変動を利用することで対応するノズルNzからインク滴を吐出させることができる。
<プリンター1の動作例について>
上述した通り、本実施形態に係るプリンター1には、列方向(前後方向)にノズルが並んだノズル列を有する8個のヘッド31(31A〜31H)が設けられている。そして、コントローラー60が、これらの各ヘッドを搬送方向(左右方向)に移動させながら、ノズルからインクを吐出させ、搬送方向(左右方向)に沿ったラスタラインを形成することにより、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像形成を行なう。
ここで、本実施形態に係るコントローラー60は、複数パス(2パス、4パス等)の印刷を実行する。すなわち、列方向における画像の解像度を高くするために、パス毎に列方向における各ヘッドの位置を少しずつ変えて印刷を行なう。また、画像形成方法としては、例えば、公知のインターレース(マイクロウィーブ)印刷が実行される。
これについて、図6を用いてより具体的に説明する。図6は、4パスで印刷するケースにおいて各パスで形成されるラスタラインを示した模式図である。
図6の左側にはヘッド31(例えばヘッド31A)のノズル列(ノズル)が表されており、当該ヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動しながらノズルからインクが吐出されることにより、ラスタラインが形成される。図に表されているヘッド31(ノズル列)の列方向における位置は、1パス目のときの位置であり、かかる位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、1パス目の印刷が実行され、図に表された3つのラスタライン(右端にパス1と書かれているラスタラインL1)が形成される。
そして、次に、ヘッド31(ノズル列)が列方向に移動して、移動後の位置を維持したままヘッド31(ノズル列)が搬送方向に移動すると、2パス目の印刷が実行され、図に表された2つのラスタライン(右端にパス2と書かれているラスタラインL2)が形成される。なお、インターレース(マイクロウィーブ)印刷が採用されているため、前記ラスタラインL1に隣接するラスタラインL2は、ラスタラインL1を形成するインクが吐出されたノズルとは異なるノズルから吐出されたインクにより形成されることとなる。そのため、ヘッド31(ノズル列)の列方向への移動距離は、ノズル間距離(例えば、1/180インチ)の1/4分(1/180×1/4=1/720インチ)ではなく、これより大きな距離(以下では、この距離を距離dとする)となる。
以下、同様の動作が行なわれることにより、3パス目、4パス目の印刷が実行されて、図に表された残りのラスタライン(右端にパス3、パス4と書かれているラスタラインL3、L4)が形成される。このように、4パスでラスタラインが形成されることにより、列方向における画像の解像度を4倍(=720÷180)の解像度とすることが可能となる。
なお、本実施形態においては、所謂双方向印刷が行なわれる。すなわち、1パス、3パス目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向と2パス、4パス、目の印刷が行なわれるときのヘッド31(ノズル列)の移動方向は互いに逆方向となる(後に、詳述する)。
以下では、プリンター1の動作例としてプリンター1の画像形成動作(換言すれば、インク吐出動作)を説明するが、上述した4パスで印刷する図6のケースを例に挙げて説明する(以下の説明で、図6も随時参照する)。
<プリンター1の画像形成動作例について>
ここでは、プリンター1の印刷動作例について、図6、図7を用いて説明する。図7は、ヘッドの移動を説明するための模式図である。印刷動作を説明する前に、先ず、図7(の見方)について説明する。
図7には、印刷処理(すなわち、画像形成に係る一連の処理)が行なわれている間に、ヘッドがどのように移動するかが示されている。なお、プリンター1のヘッドユニット30は、8個のヘッド31(ヘッド31A〜31H)を有している。そして、これらの8個のヘッド31は、全てキャリッジ42に設けられているため、ロール紙2に対して相対的に同じ方向に移動する。ここでは、説明を分かり易くするために、ヘッド31(およびノズル列)の数は、複数個ではなく1つであることとして、説明を行なう。
ヘッドは、便宜上、丸印で表され(図には、大きな丸と小さな丸があるが、双方の区別に意味は無い)、ヘッドの移動が矢印で表されている。ここで、図中左右方向に向いた矢印は、搬送方向におけるヘッドの移動を表し、上下方向に向いた矢印は、列方向におけるヘッドの移動を表している。また、各矢印には、S1〜S10の符号が付けられているが、これは、以降の印刷処理の説明で用いられるステップ番号である。
また、パス1乃至パス4が付されているステップ番号があるが、これらのステップ番号はインクが吐出されることにより画像形成動作が実行されるステップを表している。
以下、図6、図7を参照しつつ、印刷処理について説明する。なお、当該印刷処理は、主としてコントローラー60により実現される。特に、本実施形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行なうためのコードから構成されている。
前述した間欠的なロール紙2の搬送が行なわれてロール紙2が停止すると、印刷領域R上のロール紙2の部位に1ページ分の画像形成を行なうための印刷処理が開始される。
先ず、コントローラー60は、キャリッジ42(すなわち各ヘッド)をHP位置から往方向(ロール紙2が搬送される方向において、上流側から下流側へ向かう方向)へ移動させる(ステップS1)。なお、ステップS1の移動によりキャリッジ42が到達する位置(後述するステップ2開始前の位置)を原点位置ともいう。
コントローラー60は、ヘッド31の往方向への移動を継続しつつ、ヘッドにインクを吐出させて、1パス目の印刷を実行する(ステップS2)。そして、このことにより、図6に示されたラスタラインL1(パス1のラスタライン)が形成される。
ヘッドが第一折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッドを列方向へ移動させる(ステップS3)。本実施形態においては、前記距離dだけヘッドを移動させる。
その後、コントローラー60は、ヘッドを復方向(ロール紙2が搬送される方向において、下流側から上流側へ向かう方向)へ移動させながら、ヘッドにインクを吐出させて、2パス目の印刷を実行する(ステップS4)。そして、このことにより、図6に示されたラスタラインL2(パス2のラスタライン)が形成される。
ヘッドが第二折り返し位置へ至ると、コントローラー60は、ヘッドを列方向へ移動させる(ステップS5)。本実施形態においては、前記距離dだけヘッドを移動させる。
次に、コントローラー60は、ステップS2乃至ステップS4の処理と同じ処理をさらになう(ステップS6乃至ステップS8)。この処理において、3パス目の印刷(ステップS6)により図6に示されたラスタラインL3(パス3のラスタライン)が、4パス目の印刷(ステップS8)により図6に示されたラスタラインL4(パス4のラスタライン)が、それぞれ形成される。コントローラー60は、ヘッドの列方向における位置を元に戻す(ステップS9)。すなわち、ステップS3、S5、S7でヘッドが移動した方向とは逆方向に、距離3dだけヘッドを移動させる。
そして、コントローラー60は、ヘッドをHP位置へ移動させることにより(ステップS10)、1ページ分の画像形成を行なうための印刷処理を終了させる。なお、本実施形態では、1ページ分の画像形成を4パスで行うこととしたがこれには限られない、例えば2パスで1ページ分の画像形成を行うようにしてもよい。
<プリンタードライバーによる処理の概要>
上記の印刷処理は、前述したように、プリンター1に接続されたホストコンピューター110から印刷データが送信されることにより開始する。当該印刷データは、プリンタードライバーによる処理により作成される。以下、プリンタードライバーによる処理について、図8を参照しながら説明する。図8は、プリンタードライバーによる処理の説明図である。
プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・ラスタライズ処理・コマンド付加処理などを行う。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。この階調値は、RGB画像データに基づいて定められるものである。
色変換処理は、RGBデータをCMYK系色空間のデータに変換する処理である。なお、CMYK系色空間は、プリンター1で使用するインク(色)に対応した色空間である。言い換えると、プリンタードライバーは、RGBデータに基づいて、CMYK系平面の画像データを作成する。例えば、使用するインクがCMYKの4色の場合、CMYK平面の画像データを作成する。
この色変換処理は、RGBデータの階調値と使用するインクに応じたCMYK系データの階調値とを対応づけたテーブルに基づいて行われる。このテーブルのことを色変換ルックアップテーブル(LUT)という。なお、色変換処理後の画素データは、CMYK系色空間により表される256階調のデータである。
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。このハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素ごとに1ビット又は2ビットの画素データが対応しており、この画素データは各画素でのドットの形成状況(ドットの有無、ドットの大きさ)を示すデータになる。例えば2ビット(4階調)の場合、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応する小ドットの形成、ドット階調値[10]に対応する中ドットの形成、及び、ドット階調値[11]に対応する大ドットの形成のように4段階に変換される。その後、各ドットのサイズについてドット作成率が決められた上で、ディザ法・γ補正・誤差拡散法等を利用して、プリンター1がドットを分散して形成するように画素データが作成される。
ラスタライズ処理は、マトリクス状に並ぶ画素データを、プリンター1に転送すべきデータ順に、画素データごとに並べ替える。例えば、各ヘッドのノズルの並び順に応じて、画素データを並べ替える。
コマンド付加処理は、ラスタライズ処理されたデータに、印刷方式に応じたコマンドを示すデータを付加する処理である。コマンドとしては、例えば、搬送コマンド、吸着コマンド、キャリッジ移動コマンドなどがある。
これらの処理を経て作成された印刷データは、プリンタードライバーによりプリンター1に送信される。
<ノズル検査ユニットについて>
図9は、ノズル検査ユニット90の構成の一例を示す説明図である。ノズル検査ユニット90は、検出用電極91と、高圧電源ユニット92と、第一制限抵抗93と、第二制限抵抗94と、検出用コンデンサ95と、増幅器96と、検出制御部97と、平滑コンデンサ98と、電圧検出部99とを有する。なお、ヘッド31のノズルプレート36は、グランドに接続されてグランド電位になっており、ノズル検査ユニット90の一部として機能する。
検出用電極91は、金属ワイヤで蜘蛛の巣状に形成されている。この検出用電極91を高電位にすると、蜘蛛の巣状の金属ワイヤの領域だけでなく、広い範囲で高電位になる。
高圧電源ユニット92は、検出用電極91を所定電位にする電源である。本実施形態の高圧電源ユニットは、600V〜1000V程度の直流電源によって構成される。
第一制限抵抗93及び第二制限抵抗94は、高圧電源ユニット92と検出用電極91との間に配置され、高圧電源ユニット92と検出用電極91との間に流れる電流を制御する。本実施形態の第一制限抵抗93及び第二制限抵抗94は、同じ抵抗値(例えば1.6MΩ)である。
検出用コンデンサ95は、検出用電極91の電位変化成分を抽出するための素子である。検出用コンデンサ95の一端は検出用電極91に接続され、他端は増幅器96に接続されている。検出用コンデンサ95により、検出用電極91のバイアス成分(直流成分)を除去している。検出用コンデンサ95の容量は、例えば4700pFである。
増幅器96は、検出用コンデンサ95の他端側の信号を増幅する。本実施形態の増幅器96は、4000倍の増幅率である。これにより、増幅器96から3V程度で電位が変化する検出信号を取得できる。
検出制御部97は、ノズル検査ユニット90を制御するとともに、増幅器96の出力する検出信号に基づいて各ノズルの目詰まりの有無を判定する。
平滑コンデンサ98は、電位の急激な変化を抑制する。平滑コンデンサ98の一端は第一制限抵抗94及び第二制限抵抗95に接続され、他端はグランドに接続されている。平滑コンデンサ98の容量は、例えば0.1μFである。
電圧検出部99は、検出用電極91が所定の電圧になっているか否かを検出する。電圧検出部99は、分圧回路を構成する第1抵抗99a及び第2抵抗99bを有する。第1抵抗99aと第2抵抗99bは直列に接続されており、第1抵抗99aの一端は検出用電極91と同じ電位になっており、第2抵抗99bはグランドに接続されている。第1抵抗99aと第2抵抗99bとの間の電位をコントローラー60が検出することによって、検出用電極91が所定の電圧になっているか否かを検出できる。本実施形態の第1抵抗99aは6MΩの抵抗値であり、第2抵抗99bは33kΩの抵抗値である。
次にノズル検査ユニット90によるノズル検査の動作について説明する。
ノズルプレート36に形成されたノズル(Nz)からインクが吐出されると、検出用電極91の電位が変化し、この電位変化を検出用コンデンサ95及び増幅器96が検出し、検出信号が検出制御部97に出力される。ノズルに目詰まりがあると、インクが吐出されないため、検出用電極91の電位は変化せず、検出信号に電圧変化は現れないことになる。
この電圧変化の違いを検出することにより、ノズルからインクが吐出されたか否かを判別することが可能となる。
なお、本実施形態では検出用電極91の電圧変化を検出することによって、ノズル検査を行うようにしているが、ノズル検査の方法はこれには限られず、他の方法でノズル検査行ってもよい。また、以下の説明において、ノズルが目詰まり等によってインクを吐出しないノズル(吐出不良のノズル)があることをノズル抜けともいう。
<クリーニングユニットについて>
本実施形態のプリンター1のクリーニングユニット70は、インクを吸引することによりクリーニング(メンテナンスの1種)を行うものである。このクリーニングユニット70は、図1に示すように、キャリッジ42がホームポジション(HP)に位置する際に、ヘッドが対向する位置に設けられている。そして、クリーニングユニット70は、ヘッドユニット30の吐出不良を解消するためのクリーニング処理(インクの吸引)を行う。
図10は、クリーニングユニット70の配置例を示す図である。本実施形態のクリーニングユニット70は、千鳥状に配置されたヘッド31A〜31Hのうち隣接する2つのヘッドと対応する一対のヘッドキャップ73を有している。この一対のヘッドキャップ73は昇降台72に設けられている。すなわち、不図示の昇降機構により昇降台72が昇降すると、一対のヘッドキャップ73もそれに伴って昇降する。なお、図の左のヘッドキャップ73は、図の左側の列のヘッド(ヘッド31A、ヘッド31C、ヘッド31E、ヘッド31G)と対応しており、図の右側のヘッドキャップ73は、図の右側の列のヘッド(ヘッド31B、ヘッド31D、ヘッド31F、ヘッド31H)と対応している。キャリッジ42を列方向及び搬送方向に移動させてヘッドキャップ73上に目的のヘッドを配置することで、2つのヘッドのクリーニングを行うことができるようになっている。
図11は、クリーニングユニット70の構成の一例を示した概念図である。なお、図11は、一対のヘッドキャップ73のうちヘッド1個分に相当する部分を示している。クリーニングユニット70は、図11に示すように、ヘッドキャップ73とホース74と吸引ポンプ75とを備えている。
ヘッドキャップ73においては、その内部空間が4つの吸引室73aに区画されている。そして、ヘッドキャップ73が上昇すると、ヘッドキャップ73はヘッド31の下面に密着し、このとき、4つの吸引室73aの各々は前述した4つのノズル列のうちの対応するノズル列を覆う閉塞空間を形成する。すなわち、ヘッドキャップ73は、上昇することにより、ヘッド31の下面(ノズル面)を封止するようになっている。
吸引ポンプ75は、その周縁部近傍に2つの小ローラー75aを有しており、これら2つの小ローラー75aの周囲には、ホース74が巻回されている。そして、不図示のモーターに駆動されて吸引ポンプ75が矢印方向に回転すると、小ローラー75aによってホース74内の空気が押され、これによってヘッドキャップ73内の閉塞空間において排気がなされるようになっている。そして、当該閉塞空間において排気が成されると、当該閉塞空間が負圧となり、ヘッド31のノズルからインクが吸引されることとなる。吸引されたインクはホース74を介して不図示の廃インク排出部に排出される。このようにして、ノズルの目詰まりを防止したり、あるいはノズルの目詰まりから回復させたりする。
なお、本実施形態では、クリーニングユニット70のヘッドキャップ73は2つであったが、これには限られず、複数のヘッド31に対してそれぞれクリーニングを行うことが出来るようになっていればよい。例えば、ヘッドキャップ73は、1つでもよい。あるいは、ヘッドキャップ73が8個のヘッド31の全てに対応して8つ設けられていてもよい。この場合、前記ヘッドキャップ73は、吸引ポンプ75が作動することなく、以下の機能を発揮するようにすることができる。すなわち、プリンター1が印刷を行わないときには(そして、キャリッジ42がホームポジションに位置しているときには)、ヘッドキャップ73は上昇してヘッド31の下面に密着する。そして、このことにより、ノズルからのインクの蒸発(換言すれば、インクの乾燥)を抑制する。すなわち、ヘッドキャップ73は、印刷休止中にヘッド31の下面(ノズル面)を封止して、インクの蒸発を抑制する蓋体としての機能を発揮するようにすることができる。
上述したクリーニングユニット70によるヘッドのクリーニングを定期的に行うようにすることによってノズルの目詰まりを防止することができる。ここで定期的とは、例えば、印刷を開始してから一定期間経過する毎や、パスを所定回数行う毎(所定ページ印刷する毎)である。ただし、本実施形態のプリンター1のように複数のヘッドが設けられている場合に、定期的なクリーニングを全てのヘッドに対して実行すると、クリーニングにより消費されるインク量が増大してしまう。本実施形態では、以下に説明するようにクリーニングで消費されるインク量の低減を図っている。
<使用ヘッドと未使用ヘッドについて>
本実施形態のプリンター1のように、複数のヘッドが備えられている場合、印刷の際に複数のヘッド全てが使用されないことがある。
図12は、使用ヘッドと未使用ヘッドについての説明図である。図は最初のパス(パス1)を行うときのキャリッジ42(各ヘッド)の位置(原点位置)を示している。つまり、この後、パスによりキャリッジ42(各ヘッド)が搬送方向の下流側と上流側、及び、前後方向の前方側に3d移動して、1ページ分の印刷を行うことになる(図7参照)。
図12において、記号aは、8個のヘッド31で印刷できる最大印刷幅(すなわち8個のヘッド31による印刷可能な範囲)を示している。また、記号bは、印刷対象となるロール紙2の幅(紙幅)を示している。なお、ロール紙2は、列方向の一方の端部が最大印刷幅aの列方向後端(基準位置)に位置するようにセットされる。また、キャリッジ42が原点位置にあるとき、ヘッド31Aの#1ノズルが図の基準位置に位置しているとする。また、ヘッド31の各ノズル列の長さ(列方向の長さ)をLとする。1ページの印刷でキャリッジ42が列方向の前方側に3d移動するため、例えば、ヘッド31A〜31Dの4つのヘッド(斜線で示すヘッド)による印刷可能な範囲(列方向の範囲)は、基準位置から4L+3dの範囲になる。
図12では、最大印刷幅aに対して、プリンター1にセットされたロール紙2の紙幅bが小さい。この場合、ロール紙2の紙幅bよりも広い範囲には印刷することがない。また図に示すように、キャリッジ42が原点に位置するときヘッド31A〜31Dのノズルの長さ4Lがロール紙2の紙幅bと等しくなっている(4L=b)。すなわち、ロール紙2の紙幅bの範囲内に印刷可能なヘッドは、ヘッド31A〜31Dの4個である。つまり、図のロール紙2に印刷する場合には、ヘッド31E〜ヘッドHの4個のヘッドが使用されず、ヘッド31A〜31Dの4個のヘッドのみが使用される。以下の説明において、ヘッド31A〜31Dのように印刷に使用されるヘッドのことを使用ヘッド(メンテナンス対象ヘッドに相当する)と呼び、ヘッド31E〜31Hのように印刷に使用されないヘッドのことを未使用ヘッドと呼ぶ。なお、ヘッドの複数のノズルのうち1ページの印刷(4パス)において1個でもノズルを使用する場合は、そのヘッドは使用ヘッドであることとする。
もし仮に、ロール紙2に連続して印刷を行う際に、全てのヘッドに対して前述したクリーニングを定期的に行うようにすると、クリーニングのために多くのインクが排出されることになる。つまり印刷に使用されずに捨てられるインクが増大する。なお、印刷に使用しないヘッド(未使用ヘッド)については、ノズルの目詰まりする可能性が低く、また目詰まりしたとしても、ロール紙2への印刷には使用されないため、ロール紙2に形成される画像の画質が劣化することはない。
そこで、本実施形態では、使用ヘッド(メンテナンス対象ヘッド)は定期的にクリーニングを行い、未使用ヘッドは、定期的なクリーニングを行わないようにしている。こうすることで、クリーニングにより消費されるインク量の低減を図るようにしている。ただし、未使用ヘッドに吐出不良のノズルが有る場合、そのままの状態で放置しておくと、クリーニング等のメンテナンスを行っても不良が回復しなくなるおそれがある。よって、使用ヘッドのクリーニングの後全ヘッドのノズル検査を行ない、未使用ヘッドに吐出不良のノズルが有る場合、不良が検出されてからの時間が閾値を超えると、当該未使用ヘッドのクリーニングを行うようにしている(後述する)。
<メンテナンス処理について>
図13は、本実施形態におけるメンテナンス処理の流れを示すフロー図である。なお、以下の説明では図12も参照しつつ説明する。
まず、コントローラー60は、プリンター1にロール紙2がセットされた際に、紙幅検出センサー(不図示)によりロール紙2の紙幅bを検出し、ロール紙2の紙幅b(列方向の長さ)に応じてヘッドユニット30のうちの使用ヘッドを選択(判定)する(S101)。例えば、図12の場合、上述したようにヘッド31A〜31Dの4つのヘッドを使用ヘッド(メンテナンス対象ヘッド)とし、ヘッド31E〜31Hの4つのヘッドを未使用ヘッドとする。そして、前述したような印刷処理(画像形成動作)を開始する(S102)。なお、本実施形態では不図示の紙幅検出センサーによってロール紙2の紙幅bを検出していたがこれには限られない。例えば、列方向に移動可能でありロール紙2の搬送をガイドするガイドレール(不図示)を設け、そのガイドレールの位置(列方向の位置)でロール紙2の紙幅bを検出してもよい。また、例えばホストコンピューター110におけるユーザーインターフェースにおいて、ユーザーによって選択されたロール紙2の種類(大きさ)に応じて、ロール紙2の紙幅を設定するようにしてもよい。
コントローラー60は、印刷を開始してから所定期間が経過したか否かの判断(S103)を行う。所定期間が経過していなければ(S103でNO)、再度ステップS103を行う。そして、所定期間が経過したと判断すると(S103でYES)、ノズル抜けフラグが立ち、且つ、タイマー65のカウント値が閾値よりも大かを判断する(S104)。最初には、ノズル抜けフラグもタイマー65も初期状態(ノズル抜けフラグが立たず、タイマー65のカウント値がゼロ)なので、ステップS104でNOと判断し、使用ヘッド(ヘッド31A〜31D)のみに対して、クリーニングユニット70にクリーニングを実施させる(S105)。そして、使用ヘッドのクリーニング終了後、続いて、ヘッドユニット30の8個の全ヘッド31(ヘッド31A〜31H)に対して、ノズル検査ユニット90にノズル検査(ノズルチェック)を実施させる(S106)。ノズル検査で全てのヘッドにノズル抜け(吐出不良のノズル)が無ければ(S107でNO)、ステップS102に戻り印刷を開始(再開)する。一方、ノズル検査でノズル抜けが有ると判断した場合、そのノズル抜けの有るヘッドが使用ヘッド(ヘッド31A〜31D)か否かを判断する(S108)。ノズル抜けの有るヘッドが使用ヘッドの場合(S108でYES)、クリーニング実施回数が所定回数n(nは2以上の整数、例えば3とする)よりも小さいかを判断する。最初はクリーニングの実行回数が1回なのでYES(S109でYES)と判断し、ステップS105に戻り、使用ヘッドのクリーニングを再度行う。
ステップS108においてノズル抜けの有るヘッドが使用ヘッド以外である(すなわち未使用ヘッド)と判断した場合(S108でNO)、例えばメモリー63のレジスタに、ノズル抜けが有ることを示すノズル抜けフラグ(抜け有り情報に相当)を立てる(S110)。そして、タイマー65にカウントを開始させて(S111)、ステップS102に戻る。すなわち、未使用ノズルにノズル抜けがある場合には、直ちにクリーニングを実行せずに、続けて印刷処理を行う。その後所定期間が経過すると(S103でYES)、ステップS104の判断を行う。ここでも、ノズル抜けフラグが立ち、且つ、タイマー65のカウント値が閾値よりも大でなければ、使用ヘッドのみをクリーニングするステップS105を実施する。一方、ステップS104で、ノズル抜けフラグが立ち、且つ、タイマー65のカウント値が閾値よりも大であると判断すると(S104でYES)、コントローラー60は、全ヘッドに対して、クリーニングユニット70にクリーニングを実施させる(S112)。その後、全ヘッドに対して、ノズル検査ユニット90にノズル検査を行わせ(S113)、各ヘッドにノズル抜けが有るかの判断(ノズル検査)を行う(S114)。
ノズル検査の結果、全ヘッドにノズル抜けが無いと判断した場合(S114でNO)、コントローラー60は、ノズル抜けフラグとタイマー65のカウント値を初期化し(S115)、ステップS102に戻る。ノズル抜けが有ると判断した場合(S114でYES)、ノズル抜けの有るヘッドが使用ヘッドか否かを判断する(S116)。使用ヘッドである場合(S116でYES)は、ノズル抜けフラグとタイマー65のカウント値を初期化して(S117)、ステップS105に戻り使用ヘッドのクリーニングを行う。
また、ステップS116でノズル抜けの有るヘッドが未使用ヘッドである場合(S116でNO)、及び、ステップS109でクリーニングの実施回数がn回(例えば3回)以上であると判断した場合(S109でNO)、例えば、ホストコンピューター110の表示部等にエラーを表示させる(S118)。
このように、本実施形態では、定期的なクリーニングはロール紙2への印刷に使用するヘッド(ヘッド31A〜ヘッド31D)のみ実行し、印刷に使用しないヘッド(ヘッド31E〜ヘッド31H)については、定期的なクリーニングを行わないようにしている。こうすることにより、ロール紙2への印刷画像の画質に影響を与えることなく、クリーニングで消費されるインク量を低減させることができる。
また、本実施形態では、使用ヘッドのクリーニングの後、全てのヘッドのノズル検査を実行している。そして使用ヘッドにノズル抜けが有る場合は再度クリーニングを行なってノズル抜けの回復を図っている。一方、未使用ヘッドにノズル抜けが有る場合は、印刷には影響がないので、直ちにクリーニングを行わずにノズル抜けフラグを立て、且つ、タイマー65のカウントを開始して、印刷を続けるようにしている。こうすることで、ノズル抜けが検出された場合に対して最適な対応をとることができる。ただし、未使用ヘッドにノズル抜けがある場合、そのままの状態で放置しているとクリーニング等でノズル抜けが回復しなくなるおそれがあるので、タイマー65のカウント値が閾値を超えると未使用ヘッドのクリーニングを行うようにしている。これによりノズル抜けの有るヘッドが回復不能になるのを防止することができる。
また、本実施形態では、ロール紙2の紙幅に応じて使用ヘッドを選択している。ロール紙2の紙幅はセンサー等により簡易に検出することが可能であるので、複数ヘッドのうちから使用ヘッドを簡易に判断することができる。
なお、本実施形態では、ステップS106のノズル検査の結果、未使用ヘッドにノズル抜けが有る場合、ステップS110にて未使用ヘッド(本実施形態では4個のヘッド)に対してノズル抜けフラグを立てていたが、ノズル抜けフラグをヘッド毎に用意するようにしてもよい。そして、未使用ヘッドのうちの或るヘッドにノズル抜けが検出された場合は、当該或るヘッドのみに対してノズル抜けフラグを立て、ステップS112で、使用ヘッド、及び、前記或るヘッドのクリーニングを行うようにしてもよい。こうすることで、ステップS112でクリーニングを行うヘッドの数を減らすことができ、メンテナンスで消費されるインク量をより低減させることができる。
===第2実施形態===
第2実施形態では、使用ヘッドの選択方法が第1実施形態と異なる。なお、プリンターの構成や印刷動作については第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
第2実施形態では、印刷ジョブのうちで列方向の長さの最大値の範囲内に印刷可能なヘッドを使用ヘッド(メンテナンス対象ヘッド)とする。なお、印刷ジョブとは、印刷データに応じた内容の印刷物をプリンター1に印刷させるジョブのことである。
例えば、図12において紙幅bのロール紙2に対して、ホストコンピューター110から受信した印刷データにおける印刷ジョブの最大幅(基準位置からの列方向の長さの最大値)が紙幅bの半分(例えば図の上側半分)の範囲の場合、使用ヘッドをヘッド31Aとヘッド31Bの2つとする。すなわち、ロール紙2の紙幅bの範囲にかかわらず、実際に印刷に使用しないヘッド31C〜ヘッド31Hについては未使用ヘッドとする。なお、メンテナンス処理については第1実施形態と同様である。ただし、第1実施形態では、ロール紙2のセット時に紙幅に応じて使用ヘッドを選択していたが、第2実施形態では、印刷開始時(より具体的には印刷データ受信後)に、印刷ジョブに応じて使用ヘッドを選択することになる。
このように印刷ジョブに応じて使用ヘッドを定めることによって、メンテナンスで消費されるインク量をさらに低減させることができる。
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<液体吐出装置について>
前述の実施形態では、画像形成装置の一例としてインクジェットプリンターが説明されている。但し、画像形成装置はインクジェットプリンターに限られるものではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を吐出したりする装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
また、前述した実施形態ではラテラル式のプリンターについて説明したが、これには限られない。例えば、媒体を搬送方向に搬送しつつヘッドから媒体にインクを吐出するプリンター(いわゆるラインプリンター)であってもよい。なお、ラインプリンターの場合、クリーニングユニットは、搬送経路から離れた位置(例えば、印刷領域に対して媒体の搬送方向と交差する方向に離れた位置)設け、定期的にヘッドをその位置まで移動させてクリーニングさせるようにすればよい。この場合も印刷に使用しないヘッドは定期的なクリーニングを行わないようにすることで、クリーニングによって消費されるインク量の低減を図ることができる。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンターの実施形態だったので、インクをノズルから吐出しているが、このインクは水性でも良いし、油性でも良い。また、ノズルから吐出する液体は、インクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから吐出しても良い。
また、前述の実施形態では各ヘッドで4色のインク(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)を用いていた(ノズル列の数が4つであった)がこれには限られず、使用するインクが3色以下でもよいし、5色以上であってもよい。
<吐出方式について>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、ヘッドユニット30のヘッドの数は8個(ヘッド31A〜31H)だったが、複数(2個以上)であればよい。例えば、4個でもよいし、9個以上でもよい。なお、複数のヘッドのうち印刷に使用しないヘッドが多いほど、定期的なクリーニングで消費されるインク量を低減させるという効果が顕著になる。また、前述の実施形態では、各ヘッドが千鳥状に配置されていたが、これには限られない。例えば、複数のヘッドが直線状に配置されていてもよい。
<メンテナンスについて>
前述した実施形態では、各ヘッドに対するメンテナンスとしてノズルからインクを吸引するクリーニングを行っていたが、メンテナンスの方法は、これには限られない。例えば、ヘッドのインク流路を加圧することによってノズルからインクを吐出させるクリーニングを行ってもよい。また、クリーニング以外のメンテナンスを行ってもよい。例えば、ユニット制御回路64から出力される駆動信号に含まれる駆動パルスに基づいてヘッドのピエゾ素子321を伸縮動作させて、ノズルからインクを吐出させるフラッシングを行っても良い。または、ノズル形成面(ノズルプレート36の下面)に付着したインク滴や塵埃を払拭清掃するワイピングを行ってもよい。さらに、クリーニング、フラッシング、ワイピングを組み合わせて行ってもよい。そして、前述の実施形態のように、印刷に使用しないヘッドは定期的なメンテナンスを行わないようにすることで、メンテナンスで消費されるインク量の低減を図ることができる。