JP7267032B2 - フィラー充填材及びその製造方法、並びに高熱伝導絶縁材及びその製造方法 - Google Patents

フィラー充填材及びその製造方法、並びに高熱伝導絶縁材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、小径フィラーと大径フィラーとの混合粉末からなるフィラー充填材と、このフィラー充填材を製造する方法と、フィラー充填材に樹脂を混合して調製された高熱伝導絶縁材と、この高熱伝導絶縁材を製造する方法に関するものである。
近年、電子機器の高性能化、小型化、ハイパワー化が進み、熱マネジメント(熱管理)は既に重要であり、車両の燃費向上や、電気自動車・プラグインハイブリッド車等のクロスEV化に対応するため、今後更なる熱性能の向上が求められると同時に、信頼性の観点から更に高い絶縁性能が要求されている。
このため、従来、相対的に大寸法のフィラーの周りに相対的に小寸法のフィラーが凝集してなる凝集体が、ポリマー母材内に分散された高熱伝導絶縁材が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1及び2、段落[0010]、[0015]~[0017]、図1、図2)参照。)。この高熱伝導絶縁材では、ポリマー母材はシリコン、ナイロン、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、LCP(液晶ポリマー)のいずれか一種からなり、フィラーは炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、シリカ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか一種またはそれらの混合物からなる。また、相対的に大寸法のフィラーが球状又は略球状の場合、その粒子径は1~100μm程度に生成でき、小寸法のフィラーの粒子径は0.1~10μm程度に生成することができる。
このように構成された高熱伝導絶縁材では、フィラーの充填量を多くしたり、フィラーの大きさを大きくすることなく、ポリマーとフィラー間の伝熱効率を高めることができる。これは、従来の一様な粗大フィラーがポリマー内に分散された絶縁材と比較した場合に、等しい伝熱量を得るために必要なフィラー間距離を長くすることができ、フィラー充填量を低減できることを意味する。フィラー充填量を低減できることから、その成形性を高めることができる。また、凝集体が大寸法のフィラー外周から小寸法のフィラーがランダムに突出した粒構造を呈していることで、伝熱方向が任意の一方向(異方性)を有することなく多様な方向となる(等方性)。更に、小寸法のフィラーがポリマー内に埋め込まれてアンカー効果を発揮でき、その結果としてポリマーとフィラー凝集体との界面強度が高められることで絶縁材の機械的強度を高めることができる。
特開2008-293911号公報
しかし、上記従来の特許文献1に示された高熱伝導絶縁材では、例えば図2の模式図に示すように、相対的に大寸法のフィラー(1種類)の周りに、相対的に小寸法のフィラー(粒径が異なる2種類)が凝集してなる凝集体を、ポリマー母材内に分散しているだけであるため、熱伝導性及び電気絶縁性の双方を向上させることができない不具合があった。なお、特許文献1の明細書の段落[0026]の表1において、実施例の粗大フィラー熱伝導率及び微小フィラー熱伝導率がともに30W/m・Kと記載されているが、これらの値は、粉末ではなくインゴットの代表的な物性値であると考えられる。粒径がミクロンオーダやサブミクロンオーダの粉末では、熱伝導率は極めて小さくなる。
本発明の目的は、相反する高熱伝導性と高電気絶縁性とを高い次元で両立させることができる、フィラー充填材及びその製造方法、並びに高熱伝導絶縁材及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点は、平均一次粒子径D17nm~40nmである小径フィラーと前記小径フィラーより平均一次粒子径が大きい平均一次粒子径D215μm~63μmである大径フィラーとの混合粉末からなるフィラー充填材であって、小径フィラーと大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2が2×10-4~3×10-3であり、上記混合粉末の体積抵抗率が2×1010Ω・m以上であり、小径フィラーの混合割合が混合粉末100質量%に対して0.5質量%~40質量%であり、小径フィラーが大径フィラーの外周面に付着しかつ小径フィラーが大径フィラー間の空隙内を数珠状に連なって空隙内に小径フィラーにより3次元網目構造が形成され、小径フィラーは、比表面積が40m 2 /g~380m 2 /gでありかつ疎水化率が80%以上である表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアであり、大径フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素であることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第の観点に基づく発明であって、更に表面処理ヒュームドシリカが、(R1)X(R2)Y(R3)ZSi-基(R1,R2,R3はアルキル基であり、X,Y,Zは0~3の整数である。)で修飾されたことを特徴とする。
本発明の第の観点は、第1又は第2の観点のフィラー充填材の製造方法であって、大径フィラーと小径フィラーとを室温下で乾式法により混合することを特徴とする。
本発明の第の観点は、第1又は第2の観点のフィラー充填材に樹脂が混合された高熱伝導絶縁材であって、表面抵抗率が1×1015 Ω以上であることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第の観点に記載の方法で製造されたフィラー充填材に樹脂を混合して製造された高熱伝導絶縁材の製造方法であって、表面抵抗率が1×1015 Ω以上であることを特徴とする。
本発明の第の観点は、第の観点に記載の高熱伝導絶縁材が、半導体チップ又はトランジスタからなる発熱体の冷却部材として用いられた車載電子機器である。
本発明の第の観点は、第の観点に記載の高熱伝導絶縁材が、ハウジングに内蔵されたステータの冷却部材として用いられたモータである。
本発明の第の観点は、第の観点に記載の高熱伝導絶縁材が、ケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材として用いられたインバータである。
本発明の第の観点は、第の観点に記載の高熱伝導絶縁材が、摺動部又は回転部で発生したの放熱部材として用いられたアクチュエータである。
本発明の第10の観点は、第の観点に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材を半導体チップ又はトランジスタからなる発熱体の冷却部材として用いた車載電子機器の製造方法である。
本発明の第11の観点は、第の観点に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材をハウジングに内蔵されたステータの冷却部材として用いたモータの製造方法である。
本発明の第12の観点は、第の観点に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材をケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材として用いたインバータの製造方法である。
本発明の第13の観点は、第の観点に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材を摺動部又は回転部で発生したの放熱部材として用いたアクチュエータの製造方法である。
本発明の第1の観点のフィラー充填材では、小径フィラーと大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2が2×10-4~3×10-3であり、小径フィラーの混合割合が混合粉末100質量%に対して0.5質量%~40質量%であると、小径フィラーが大径フィラー間に密に充填され、小径フィラーが大径フィラーの外周面に付着しかつ小径フィラーが大径フィラー間の空隙内を数珠状に連なって空隙内に小径フィラーにより3次元網目構造が形成されるので、高熱伝導性を損なわずに、小径フィラーと大径フィラーとの混合粉末の体積抵抗率を2×1010Ω・m以上と飛躍的に高くすることができる。即ち、本発明のフィラー充填材は、相反する高熱伝導性と高電気絶縁性とを高い次元で両立させることができる。
また、本発明の第の観点のフィラー充填材では、小径フィラーは、比表面積が40m2/g~380m2/gでありかつ疎水化率が80%以上である表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアであるので、この小径フィラーを大径フィラーと乾式法により混合できる。この結果、上記のように、小径フィラーが大径フィラーの外周面に付着しかつ小径フィラーが大径フィラー間の空隙内を数珠状に連なって空隙内に小径フィラーにより3次元網目構造を速やかに形成できる。
更に、本発明の第の観点のフィラー充填材では、大径フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素であるので、高熱伝導性という優れた効果が得られる。
本発明の第の観点のフィラー充填材では、表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアが、(R1)X(R2)Y(R3)ZSi-基(R1,R2,R3はアルキル基であり、X,Y,Zは0~3の整数である。)で修飾されたので、高電気絶縁性という優れた効果が得られる。
本発明の第の観点のフィラー充填材の製造方法では、大径フィラーと小径フィラーとを室温下で乾式法により混合して、上記フィラー充填材を製造したので、比較的簡単な方法で小径フィラーが大径フィラーの外周面に付着しかつ小径フィラーが大径フィラー間の空隙内を数珠状に連なって空隙内に小径フィラーにより3次元網目構造を形成できる。
本発明の第の観点の高熱伝導絶縁材では、上記フィラー充填材に樹脂を混合した高熱伝導絶縁材の表面抵抗率が1×1015 Ω以上と高いので、高熱伝導絶縁材の電気絶縁性を飛躍的に高くすることができる。
本発明の第の観点の高熱伝導絶縁材の製造方法では、上記フィラー充填材に樹脂を混合して高熱伝導絶縁材を製造したので、表面抵抗率が1×1015 Ω以上と高熱伝導絶縁材の電気絶縁性を飛躍的に高くすることができる。
本発明実施形態のフィラー充填材の充填状態を示す模式図である。 従来例のフィラー充填材の充填状態を示す模式図である。 本発明実施形態のフィラー充填材の一次粒子が焼結した最小粒子形態である凝集粒子を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真図である。 本発明実施形態のフィラー充填材の凝集粒子が集まった集塊粒子を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態のフィラー充填材は、平均一次粒子径D1が小さい小径フィラーと平均一次粒子径D2が大きい大径フィラーとの混合粉末からなる。そして、上記小径フィラーと大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2は2×10-4~3×10-3であり、好ましくは6×10-4~3×10-3である。また、上記混合粉末の体積抵抗率は、2×1010Ω・m以上であり、好ましくは4×1013Ω・m~3×1014Ω・mである。更に、小径フィラーの混合割合は、混合粉末100質量%に対して0.5質量%~40質量%であり、好ましくは10質量%~30質量%である。なお、小径フィラーの平均一次粒子径D1は透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析法により測定され、大径フィラーの平均一次粒子径D2は各フィラーメーカーの公称値とした。また、混合粉末の体積抵抗率は、高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-HT800』)及び粉体抵抗測定システム(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-PD-51』)を用いて測定される。
ここで、小径フィラーと大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2を2×10-4~3×10-3の範囲内に限定したのは、2×10-4未満ではフィラーの総表面積が大きくなりすぎ樹脂とのなじみが悪くなり、3×10-3を超えると電気絶縁性を向上できないからである。また、上記混合粉末の体積抵抗率を2×1010Ω・m以上に限定したのは、2×1010Ω・m未満では電気絶縁性能が不足してしまうからである。また、上記混合粉末の体積抵抗率の好ましい上限値を3×1014Ω・mとしたのは、3×1014Ω・mを超えると必要以上の電気絶縁性能となり費用対効果が低下してしまうからである。更に、小径フィラーの混合割合を混合粉末100質量%に対して0.5質量%~40質量%の範囲内に限定したのは、0.5質量%未満では電気絶縁性能を向上できず、40質量%を超えると十分な熱伝導性が得られないからである。
なお、小径フィラーの平均一次粒子径D1は、好ましくは7nm~40nm、更に好ましくは12nm~40nmである。また、大径フィラーの平均一次粒子径D2は、好ましくは15μm~63μm、更に好ましくは20μm~30μmである。ここで、小径フィラーの平均一次粒子径D1の好ましい範囲を7nm~40nmの範囲内に限定したのは、7nm未満ではフィラーの総表面積が大きくなりすぎ樹脂とのなじみが悪くなり、40nmを超えると電気絶縁性を向上できないからである。また、大径フィラーの平均一次粒子径D2の好ましい範囲を15μm~63μmの範囲内に限定したのは、15μm未満では十分な熱伝導性が得られず、63μmを超えると最密充填が困難になるからである。
このように構成されたフィラー充填剤では、小径フィラーと大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2が上記範囲内であり、小径フィラーの混合割合が上記範囲内であると、例えば図1の模式図に示すように、小径フィラーが大径フィラー間に密に充填され、小径フィラーが大径フィラーの外周面に付着しかつ小径フィラーが大径フィラー間の空隙内を数珠状に連なって空隙内に小径フィラーにより3次元網目構造が形成される。この結果、高熱伝導性を損なわずに、小径フィラーと大径フィラーとの混合粉末の体積抵抗率を2×1010Ω・m以上と飛躍的に高くすることができるので、フィラー充填材の相反する高熱伝導性と高電気絶縁性とを高い次元で両立させることができる。なお、ヒュームドシリカからなる小径フィラーは、気化原料としてSiCl4とH2とO2との混合ガスをバーナから噴射することにより、図3に示すように、一次粒子が焼結した最小粒子形態である凝集粒子が形成され、次に上記凝集粒子が水素結合やファンデル・ワールス力の弱い相互作用で集まって、図4に示すように、集塊粒子が形成される。
一方、小径フィラーとして、比表面積が好ましくは40m2/g~380m2/g、更に好ましくは40m2/g~200m2/gのヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ或いはヒュームドチタニアの表面処理により疎水化率が好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上にされた表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアを用いることが好ましい。ここで、表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアの好ましい比表面積を40m2/g~380m2/gの範囲内に限定したのは、40m2/g未満では小径フィラーの製造コストが高くなり、380m2/gを超えるとフィラーの総表面積が大きくなりすぎ樹脂のなじみが悪くなるからである。また、表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアの好ましい疎水化率を80%以上に限定したのは、80%未満では表面処理ヒュームドシリカの疎水性が低下してしまうからである。更に、表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアは、(R1)X(R2)Y(R3)ZSi-基(R1,R2,R3はアルキル基であり、X,Y,Zは0~3の整数である。)で修飾されることが更に好ましい。具体的には、表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアとして、疎水性ヒュームドシリカ(例えば、『RX50』:日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径40nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2))、疎水ヒュームドアルミナ(例えば、『C805』:エボニック株式会社製の平均一次粒子径13nmの疎水性ヒュームドアルミナ(Al23))、疎水性ヒュームドチタニア(例えば、『T805』:エボニック株式会社製の平均一次粒子径21nmの疎水性ヒュームドチタニア(TiO2))等を挙げることができる。
一方、大径フィラーは、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム及び四窒化三チタンからなる群より選ばれた1種又は2種以上のフィラーにより形成されることが好ましい。
上記フィラー充填材は、大径フィラーと小径フィラーとを室温下で乾式法により混合して調製される。この乾式混合には、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製:型番『ARE-310』)を用いることが好ましく、研究室レベルでは遊星撹拌混合装置(株式会社シンキー製:あわとり練太郎『R250』)等を用いることができる。
上記フィラー充填材に樹脂等を混合して上記自転・公転ミキサーで撹拌することにより樹脂組成物が調製される。樹脂等としては、エポキシ樹脂と硬化剤の混合物、EPDMゴム(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、シリコーン樹脂と硬化剤の混合物等が挙げられる。上記樹脂等の混合割合は、フィラー充填材と樹脂等の合計100質量%に対して、好ましくは4質量%~23質量%、更に好ましくは4質量%~6質量%である。ここで、樹脂等の好ましい混合割合を4質量%~23質量%の範囲内に限定したのは、4質量%未満では樹脂成形が困難になり、23質量%を超えると十分な熱伝導性が得られないからである。
上記樹脂組成物を金型に入れ、ヒートプレス(例えば、株式会社小平製作所製:型番『PY15-EA』)を使用して、130℃~200℃の温度で10kg/cm2~150kg/cm2の圧力をかけて5分間~60分間保持することにより樹脂を硬化させて、高熱伝導性及び高絶縁性を有する樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)をそれぞれ作製することが好ましい。ここで、ヒートプレスの好ましい温度を130℃~200℃の範囲内に限定したのは、130℃未満では硬化不良が発生してしまい、200℃を超えると樹脂が熱で劣化してしまうからである。また、ヒートプレスの好ましい圧力を10kg/cm2~150kg/cm2の範囲内に限定したのは、10kg/cm2未満では空気が内部に残存し十分な熱伝導性が得られず、150kg/cm2を超えると圧縮機械への負荷が過大になるからである。更に、ヒートプレスの好ましい保持時間を5分間~60分間の範囲内に限定したのは、5分間未満では硬化が不十分であり、60分間を超えると生産性が低下してしまうからである。
樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)の表面抵抗率は、好ましくは1×1015 Ω以上であり、更に好ましくは2×1015 Ω以上である。ここで、樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)の好ましい表面抵抗率を1×1015 Ω以上に限定したのは、1×1015 Ω未満では、使用箇所によっては十分な電気絶縁性でない場合があるからである。なお、樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)の表面抵抗率は、高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(三菱化学株式会社製:型番『MCP-HT800』)を用いて測定される。また、樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法によりそれぞれ測定される。具体的には、ULVAC株式会社製の型番『TC-7000』を用いて樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)の熱伝導率がそれぞれ測定される。更に、上記樹脂成形体(高熱伝導絶縁材)は、車載電子機器の半導体チップ又はトランジスタからなる発熱体の冷却部材、モータのハウジングに内蔵されたステータの冷却部材、インバータのケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材、アクチュエータの摺動部又は回転部で発生したの放熱部材等に利用できる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。以下に示す実施例7は実施例ではなく、参考例である。
<実施例1>
先ず、大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))を用意し、小径フィラーとして疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『AEROSIL- R974』(平均一次粒子径12nm))を用意した。次に、大径フィラー(球状α-アルミナ)74質量%と小径フィラー(疎水性ヒュームドシリカ)26質量%を自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製:型番『ARE-310』)にて2000rpmで3分間混合(乾式混合)してフィラー充填材を得た。このフィラー充填材を実施例1とした。なお、小径フィラーの平均一次粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析法により測定し、大径フィラーの平均一次粒子径は各フィラーメーカーの公称値とした。
<実施例2~10及び比較例1~4>
実施例2~10及び比較例1~4のフィラー充填材は、表1に示すように、大径フィラーの型番、材質及び平均一次粒子径、小径フィラーの型番、材質及び平均一次粒子径、大径フィラーと小径フィラーとの混合割合をそれぞれ変更した。
なお、表1において、大径フィラーの『W15』は東洋アルミニウム株式会社製の平均一次粒子径15μmの窒化アルミニウム(AlN)の型番であり、大径フィラーの『GCF180』は昭和電工株式会社製の平均一次粒子径63μmの炭化ケイ素(SiC)の型番である。また、表1において、小径フィラーの『R805』はエボニック株式会社製の平均一次粒子径12nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番であり、小径フィラーの『NX50』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径30nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番であり、小径フィラーの『RY50』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径40nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番である。
また、表1において、小径フィラーの『NK200』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径12nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番であり、小径フィラーの『300』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径7nmの親水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番であり、小径フィラーの『R7200』はエボニック株式会社製の平均一次粒子径12nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番である。また、表1において、小径フィラーの『C805』はエボニック株式会社製の平均一次粒子径13nmの疎水性ヒュームドアルミナ(Al23)の型番であり、小径フィラーの『T805』はエボニック株式会社製の平均一次粒子径21nmの疎水性ヒュームドチタニア(TiO2)の型番である。
また、表1において、小径フィラーの『AA-3』は住友アルミナ株式会社製の平均一次粒子径3.4μmの球状α-アルミナ(Al23)の型番であり、小径フィラーの『AA-04』は住友アルミナ株式会社製の平均一次粒子径0.44μmの球状α-アルミナ(Al23)の型番である。また、表1において、小径フィラーの『MF』は東洋アルミニウム株式会社製の平均一次粒子径2.5μmの窒化アルミニウム(AlN)の型番であり、小径フィラーの『P25』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径13nmの親水性ヒュームドチタニア(TiO2)の型番である。更に、表1において、小径フィラーの『col-SiO2』はエボニック株式会社製の平均一次粒子径10nmのコロイダルシリカである。
一方、表1の比較例4の混合方法『湿式方法』は、溶媒としてのエタノール100質量%に、大径フィラー(炭化ケイ素)74質量%と小径フィラー(親水性ヒュームドチタニア)26質量%とを混合し、この混合物をディゾルバー(VMA―GETZMANN社製のDISPERMAT:D-51580)にて4000rpmで5分間撹拌し、得られたスラリーを乾燥・粉砕することによりフィラー充填材を得る方法である。
Figure 0007267032000001
<比較試験1>
実施例1~10及び比較例1~4のフィラー充填材の平均一次粒子径D1の小径フィラーと平均一次粒子径D2の大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2を算出した。また、実施例1~10及び比較例1~4のフィラー充填材の体積抵抗率を、高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-HT800』)及び粉体抵抗測定システム(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-PD-51』)を用いて測定した。これらの結果を表1に示す。
<評価1>
表1から明らかなように、小径フィラーの混合割合が26質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であっても、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-1及び2×10-2と適切な範囲(2×10-4~3×10-3)より大きい比較例1のフィラー充填材では、体積抵抗率が4×108と低かった。
また、小径フィラーの混合割合が26質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であり、かつ小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が5×10-4と適切な範囲(2×10-4~3×10-3内にあっても、比較例2の小径フィラーを用いたため、比較例2のフィラー充填材では、体積抵抗率が1×109と低かった。
更に、小径フィラーの混合割合が26質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であっても、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-1と適切な範囲(2×10-4~3×10-3)より大きい比較例3のフィラー充填材では、体積抵抗率が7×108と低かった。
これらに対し、小径フィラーの混合割合が0.5質量%~40質量%と適切な範囲内であり、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-4~3×10-3と適切な範囲内である実施例1~10のフィラー充填材では、体積抵抗率が2×1010Ω・m~3×1014Ω・mと高くなった。
一方、小径フィラーの混合割合が5質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であり、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-4と適切な範囲内(2×10-4~3×10-3)であっても、小径フィラーとして日本アエロジル株式会社製の型番『P25』の平均一次粒径13nmの親水性ヒュームドチタニア(TiO2)を用い、かつ溶媒としてエタノールを用いて湿式法により混合された比較例4のフィラー充填材では、体積抵抗率が2×104と低かった。
これに対し、小径フィラーの混合割合が0.5質量%~40質量%と適切な範囲内であり、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-4~3×10-3と適切な範囲内であり、小径フィラーとして疎水性ヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドアルミナ又は疎水性ヒュームドチタニアを用いて乾式法により混合された実施例1~10のフィラー充填材では、体積抵抗率が2×1010Ω・m~3×1014Ω・mと高くなった。
<実施例11>
先ず、樹脂としてエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:型番『JER801N』)10体積%と、硬化剤(三菱化学株式会社製:型番『JER ST12』)5体積%とを混合して樹脂の混合物を調製した。次いで、大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))71体積%と、小径フィラーとして疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『VP RX40S』(平均一次粒子径40nm))14体積%とを混合して混合粉末を調製した。この混合粉末を自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製:型番『ARE-310』)にて2000rpmで3分間混合することによりフィラー充填材を得た。次に、上記樹脂の混合物とフィラー充填材を上記自転・公転ミキサーにて2000rpmで5分間混合することにより樹脂組成物を調製した。更に、この樹脂組成物を、キャビティの縦×横×深さが15cm×15cm×2cmである金型に入れて、ヒートプレス(株式会社小平製作所製:型番『PY15-EA』)を使用し、180℃の温度で100kg/cm2の圧力をかけて30分間保持することにより、樹脂を硬化させて樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を実施例11とした。
<実施例12>
先ず、樹脂としてEPDMゴム(三井化学株式会社製:型番『EPT3045』)57体積%を用意した。次いで、大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))37体積%と、小径フィラーとして疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『RX-50』(平均一次粒子径40nm))3体積%と、疎水性フュームドシリカ(エボニック社製:型番『R8200』(平均一次粒子径:12nm))3体積%とを用意し、これらのフィラーを自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製ARE-310)にて2000rpmで3分間混合することにより充填フィラーを調製した。次に、樹脂と充填フィラーとを練り込み機(井上製作所製:型番『KHD-3』)とヒートプレス(小平製作所製:型番『PY15-EA』温度:130℃)を交互に用いることにより樹脂組成物を調製した。更に、この樹脂組成物を、キャビティの縦×横×深さが15cm×15cm×2cmである金型に入れて、ヒートプレス(小平製作所製 PY15-EA)を使用し、130℃の温度で100kg/cm2の圧力をかけて10分間保持することにより樹脂を硬化させて、樹脂成形体を作製した。
<実施例13>
先ず、樹脂としてシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製:型番『BY16-801』)54体積%と、硬化剤としてオキシムシラン3体積%とを混合して樹脂の混合物を調製した。次いで、大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))37体積%と、小粒フィラーとして疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『NX90S』(平均一次粒子径40nm))6体積%とを混合し、自転・公転ミキサー(株式会社シンキ―製ARE-310)にて2000rpmで3分間混合することにより充填フィラーを調製した。次に、樹脂の混合物と充填フィラーとを自転・公転ミキサー(株式会社シンキ―製ARE-310)にて2000rpmで5分間混合することにより樹脂組成物を調製した。更に、この樹脂組成物を、キャビティの縦×横×深さが15cm×15cm×2cmである金型体に入れ、ヒートプレス(小平製作所製 PY15-EA)を使用して、150℃で100kg/cm2の圧力をかけて60分間保持することにより、樹脂を硬化させて樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を実施例13とした。
<実施例14>
大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))に替えて、窒化アルミニウム(東洋アルミニウム株式会社製:型番『TFZ-S30P』(平均一次粒子径28μm))を用いたこと以外は、実施例11と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を実施例14とした。
<比較例5>
大径フィラーと小径フィラーを用いないこと以外は、実施例11と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を比較例5とした。
<比較例6>
大径フィラーと小径フィラーを用いないこと以外は、実施例12と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を比較例6とした。
<比較例7>
大径フィラーと小径フィラーを用いないこと以外は、実施例13と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を比較例7とした。
<比較例8>
先ず、樹脂としてエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:型番『JER801N』)10体積%と、硬化剤(三菱化学株式会社製:型番『JER ST12』)6体積%とを混合して樹脂の混合物を調製した。次に、大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))76体積%を用意した。更に、小径フィラーとして疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『VP RX40S』(平均一次粒子径40nm))に替えて、球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-3』(平均一次粒子径3.4μm))4体積%と、球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-04』(平均一次粒子径0.44μm))4体積%とを用いた。上記以外は、実施例11と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を比較例8とした。
<比較例9>
大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))39体積%を用意した。次に、小径フィラーとして疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『RX-50』(平均一次粒子径40nm))と、疎水性フュームドシリカ(エボニック社製:型番『R8200』(平均一次粒子径12nm))とに替えて、球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-3』(平均一次粒子径3.4μm))2体積%と、球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-04』(平均一次粒子径0.44μm))2体積%とを用いた。上記以外は実施例12と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を比較例9とした。
<比較例10>
先ず、樹脂としてエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:型番『JER801N』)37体積%と、硬化剤(三菱化学株式会社製:型番『JER ST12』)18体積%とを混合して樹脂の混合物を調製した。次に、大径フィラーとして球状α-アルミナ(住友アルミナ株式会社製:型番『AA-18』(平均一次粒子径20μm))に替えて、炭化ケイ素(昭和電工株式会社製:型番『GCF180』(平均一次粒子径63μm))40体積%を用いた。更に、小径フィラーとして疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製:型番『VP RX40S』(平均一次粒子径40nm))14体積%に替えて、親水性ヒュームドチタニア(TiO2)(日本アエロジル株式会社製:型番『P25』(平均一次粒子径13nm))5体積%を用いた。上記以外は実施例11と同様にして樹脂成形体を作製した。この樹脂成形体を比較例10とした。
なお、表2において、樹脂等の『P1』はエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:型番『JER801N』)であり、樹脂等の『K1』は硬化剤(三菱化学株式会社製:型番『JER ST12』)である。また、表2において、樹脂等の『P2』はEPDMゴム(三菱化学株式会社製:型番『EPT3045』、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)であり、樹脂等の『P3』はシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製:型番『BY16-801』)であり、樹脂等の『K2』は硬化剤(オキシムシラン)である。
一方、表2において、大径フィラーの『AA-18』は住友アルミナ株式会社製の平均一次粒子径20μmの球状α-アルミナ(Al23)の型番であり、大径フィラーの『TFZ-S30P』は東洋アルミニウム株式会社製の平均一次粒子径28μmの窒化アルミニウム(AlN)の型番であり、大径フィラーの『GCF180』は昭和電工株式会社製の平均一次粒子径63μmの炭化ケイ素(SiC)の型番である。
また、表2において、小径フィラーの『VP RX40S』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径40nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番であり、小径フィラーの『RX50』は、日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径40nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番である。また、表2において、小径フィラーの『R8200』はエボニック株式会社製の平均一次粒子径12nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番であり、小径フィラーの『NX90S』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径40nmの疎水性ヒュームドシリカ(SiO2)の型番である。更に、表2において、小径フィラーの『AA-3』は住友アルミナ株式会社製の平均一次粒子径3.4μmの球状α-アルミナ(Al23)の型番であり、小径フィラーの『AA-04』は、住友アルミナ株式会社製の平均一次粒子径0.44μmの球状α-アルミナ(Al23)の型番であり、小径フィラーの『P25』は日本アエロジル株式会社製の平均一次粒子径13nmの親水性ヒュームドチタニア(TiO2)の型番である。
Figure 0007267032000002
<比較試験2>
実施例11~14及び比較例5~10の樹脂成形体の表面抵抗を、高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(三菱化学株式会社製:型番『MCP-HT800』)を用いて測定した。また、樹脂成形体の熱伝導率を、レーザーフラッシュ法によりそれぞれ測定した。具体的には、ULVAC株式会社製の型番『TC-7000』を用いて樹脂成形体の熱伝導率をそれぞれ測定した。その結果を表2に示す。
<評価2>
表2から明らかなように、樹脂として三菱化学株式会社製の型番『JER801N』のエポキシ樹脂を用い、硬化剤として三菱化学株式会社製の型番『JER ST12』を用いたけれども、フィラー充填材を添加しなかった比較例5の樹脂成形体では、表面抵抗率が8×1015 Ωと高かったけれども、熱伝導率は0.2W/m・Kと低くかった。
また、樹脂として三菱化学株式会社製の型番『EPT3045』のEPDMゴム(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)を用いたけれども、フィラー充填材を添加しなかった比較例6の樹脂成形体では、表面抵抗率が4×1015 Ωと高かったけれども、熱伝導率は0.2W/m・Kと低くかった。
更に、樹脂として東レ・ダウコーニング株式会社製の型番『BY16-801』のシリコーン樹脂)を用い、硬化剤としてオキシムシランを用いたけれども、フィラー充填材を添加しなかった比較例7の樹脂成形体では、表面抵抗率が7×1015 Ωと高かったけれども、熱伝導率は0.2W/m・Kと低くかった。
これらに対し、樹脂及び硬化剤の混合物又は樹脂に、大径フィラー及び小径フィラーを所定の割合で充填した実施例11~14の樹脂成形体では、熱伝導率が0.9W/m・K~20W/m・Kと高く、かつ表面抵抗率も2×1015 Ω~8×1015 Ωと高くなり、高熱伝導性及び高絶縁性を有する高熱伝導性絶縁材になった。
一方、樹脂として三菱化学株式会社製の型番『JER801N』のエポキシ樹脂を用い、硬化剤として三菱化学株式会社製の型番『JER ST12』を用い、大径フィラーとして住友アルミナ株式会社製の型番『AA-18』の平均一次粒子径20μmの球状α-アルミナ(Al23)を添加し、小径フィラーとして住友アルミナ株式会社製の型番『AA-3』の平均一次粒子径3.4μmの球状α-アルミナ(Al23)と、住友アルミナ株式会社製の型番『AA-04』の平均一次粒子径0.44μmの球状α-アルミナ(Al23)とを添加し、更に小径フィラーの混合割合が8質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であっても、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-1及び2×10-2と適切な範囲(2×10-4~3×10-3)より大きい比較例8のフィラー充填材では、熱伝導率が10W/m・Kと高かったけれども、表面抵抗率が1×1013 Ωと低かった。
また、樹脂として住友アルミナ株式会社製の型番『AA-18』のエポキシ樹脂を用い、大径フィラーとして住友アルミナ株式会社製の型番『AA-3』の平均一次粒子径3.4μmの球状α-アルミナ(Al23)を添加し、小径フィラーとして住友アルミナ株式会社製の型番『AA-4』の平均一次粒子径0.44μmの球状α-アルミナ(Al23)とを添加し、更に小径フィラーの混合割合が4質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であっても、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-2と適切な範囲(2×10-4~3×10-3)より大きい比較例9のフィラー充填材では、熱伝導率が1W/m・Kと高かったけれども、表面抵抗率が1×1012 Ωと低かった。
これらに対し、樹脂及び硬化剤の混合物又は樹脂のみに、大径フィラー及び小径フィラーを所定の割合で充填し、更に小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が1×10-3~2×10-3と適切な範囲内(2×10-4~3×10-3)である実施例11~14の樹脂成形体では、熱伝導率が0.9W/m・K~20W/m・Kと高く、かつ表面抵抗率も2×1015 Ω~8×1015 Ωと高くなり、高熱伝導性及び高絶縁性を有する高熱伝導性絶縁材になった。
一方、樹脂として三菱化学株式会社製の型番『JER801N』のエポキシ樹脂を用い、硬化剤として三菱化学株式会社製の型番『JER ST12』を用い、大径フィラーとして昭和電工株式会社製の型番『GCF180』の平均一次粒子径63μmの炭化ケイ素(SiC)を添加し、小径フィラーとして日本アエロジル株式会社製の型番『P25』の平均一次粒子径13nmの親水性ヒュームドチタニア(TiO2)を添加し、更に小径フィラーの混合割合が5質量%と適切な範囲内(0.5質量%~40質量%)であり、小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-4と適切な範囲内(2×10-4~3×10-3)であっても、小径フィラーと大径フィラーを湿式法により混合して得られたフィラー充填材を用いた比較例8の樹脂成形体では、熱伝導率が1W/m・Kと高かったけれども、表面抵抗率が3×108 Ωと低かった。
これに対し、樹脂及び硬化剤に、大径フィラー及び小径フィラーを所定の割合で充填し、更に小径フィラーと大径フィラーの平均一次粒子径の比(小径/大径)が2×10-4と適切な範囲内(2×10-4~3×10-3)であり、更に小径フィラーとして疎水性ヒュームドシリカを用いて乾式法により混合された実施例11~14の樹脂成形体では、体積抵抗率が2×1010Ω・m~3×1014Ω・mと高くなり、高熱伝導性及び高絶縁性を有する高熱伝導性絶縁材になった。
本発明の高熱伝導絶縁材は、車載電子機器の半導体チップ又はトランジスタからなる発熱体の冷却部材、モータのハウジングに内蔵されたステータの冷却部材、インバータのケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材、アクチュエータの摺動部又は回転部で発生したの放熱部材等に利用できる。


Claims (13)

  1. 平均一次粒子径D17nm~40nmである小径フィラーと前記小径フィラーより平均一次粒子径が大きい平均一次粒子径D215μm~63μmである大径フィラーとの混合粉末からなるフィラー充填材であって、
    前記小径フィラーと前記大径フィラーとの平均一次粒子径の比D1/D2が2×10-4~3×10-3であり、
    前記混合粉末の体積抵抗率が2×1010Ω・m以上であり、
    前記小径フィラーの混合割合が前記混合粉末100質量%に対して0.5質量%~40質量%であり、
    前記小径フィラーが前記大径フィラーの外周面に付着しかつ前記小径フィラーが前記大径フィラー間の空隙内を数珠状に連なって前記空隙内に前記小径フィラーにより3次元網目構造が形成され、
    前記小径フィラーは、比表面積が40m 2 /g~380m 2 /gでありかつ疎水化率が80%以上である表面処理ヒュームドシリカ、表面処理ヒュームドアルミナ或いは表面処理ヒュームドチタニアであり、
    前記大径フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素である
    ことを特徴とするフィラー充填材。
  2. 前記表面処理ヒュームドシリカ、前記表面処理ヒュームドアルミナ或いは前記表面処理ヒュームドチタニアが、(R1)X(R2)Y(R3)ZSi-基(R1,R2,R3はアルキル基であり、X,Y,Zは0~3の整数である。)で修飾された請求項記載のフィラー充填材。
  3. 請求項1又は2記載のフィラー充填材の製造方法であって、
    大径フィラーと小径フィラーとを室温下で乾式法により混合することを特徴とするフィラー充填材の製造方法。
  4. 請求項1又は2記載のフィラー充填材に樹脂が混合された高熱伝導絶縁材であって、
    表面抵抗率が1×1015 Ω以上であることを特徴とする高熱伝導絶縁材。
  5. 請求項記載の方法で製造されたフィラー充填材に樹脂を混合して製造された高熱伝導絶縁材の製造方法であって、
    表面抵抗率が1×1015 Ω以上であることを特徴とする高熱伝導絶縁材の製造方法。
  6. 請求項に記載の高熱伝導絶縁材が、半導体チップ又はトランジスタからなる発熱体の冷却部材として用いられた車載電子機器。
  7. 請求項に記載の高熱伝導絶縁材が、ハウジングに内蔵されたステータの冷却部材として用いられたモータ。
  8. 請求項に記載の高熱伝導絶縁材が、ケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材として用いられたインバータ。
  9. 請求項に記載の高熱伝導絶縁材が、摺動部又は回転部で発生したの放熱部材として用いられたアクチュエータ。
  10. 請求項に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材を半導体チップ又はトランジスタからなる発熱体の冷却部材として用いた車載電子機器の製造方法。


  11. 請求項に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材をハウジングに内蔵されたステータの冷却部材として用いたモータの製造方法。
  12. 請求項に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材をケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材として用いたインバータの製造方法。
  13. 請求項に記載の方法で製造された高熱伝導絶縁材を摺動部又は回転部で発生したの放熱部材として用いたアクチュエータの製造方法。
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