JP2016162515A - 電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備 - Google Patents

電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備 Download PDF

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Abstract

【課題】
樹脂内での高熱伝導材及び低線膨張材の沈殿を抑制し、かつ樹脂の破壊靭性及び絶縁破壊寿命向上の両立を図ることができる電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備を提供することを目的とする。
【解決手段】
樹脂と、シリカからなる高熱伝導材と、シリカからなる低線膨張材と、シリカナノ粒子と、を含み、前記シリカナノ粒子が、前記高熱伝導材及び前記低線膨張材の周囲に配置されていることを特徴とする電気絶縁樹脂組成物を提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備に関する。
近年、電気絶縁樹脂(以下、単に樹脂とも称する)を活用する電気機器の小型化・高信頼化を目指し、多種の添加物を樹脂中に混在させる手法がとられている。特に、樹脂の高熱伝導率化、低線膨張係数化、破壊靭性向上及び絶縁寿命向上等のために、高熱伝導材、低線膨張材及びナノ粒子等の機能性材料が多種添加されている。
特許文献1(特開2012‐57121号公報)には、微粒子と樹脂成分とを含む硬化物であって、上記微粒子は表面に疎水基を有し、粒子径が200nm以下であって、上記樹脂成分が側鎖に親水基を有するものであって、かつ、上記微粒子が上記樹脂内部で複数の線状の凝集体を形成して、デンドライト状の構造を形成していることを特徴とする樹脂材料が開示されている。特許文献1によれば、高強度かつ高耐圧な絶縁用樹脂材料を形成することができ、この樹脂材料を用いた高電圧機器の小型化に貢献することができるとされている。
特開2012‐57121号公報
樹脂の高熱伝導率化及び低線膨張化等を目的に、高熱伝導材及び低線膨張材のような機能性材料(以下、添加材とも称する)を多種混在させている場合、樹脂内で上記添加材の比率が多くなると、上記添加材が硬化前の樹脂内にて沈殿(沈降)する可能性がある。樹脂内で添加材の沈殿が発生する場合、樹脂の輸送手段を高温化する等添加材の沈殿を抑える手段が必要となり、設備と維持管理コストが増大する。
特許文献1においては、疎水性の微粒子(シリカナノ粒子)の添加により、デンドライト網目構造を樹脂内に形成し、樹脂の破壊靭性向上と絶縁破壊寿命向上を図ることが可能となる。しかしながら、特許文献1では樹脂内の添加材(高熱伝導材及び低線膨張材等)の沈殿抑制については、何ら検討がなされていない。
本発明は、上記事情に鑑み、樹脂内での高熱伝導材及び低線膨張材の沈殿を抑制し、かつ樹脂の破壊靭性及び絶縁破壊寿命向上の両立を図ることができる電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、樹脂と、シリカからなる高熱伝導材と、シリカからなる低線膨張材と、シリカナノ粒子と、を含み、上記シリカナノ粒子が、上記高熱伝導材及び前記低線膨張材の周囲に配置されていることを特徴とする電気絶縁樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、上記電気絶縁樹脂組成物を硬化した電気絶縁樹脂硬化物及び上記電気絶縁樹脂組成物を絶縁性が要求される部分に用いた受変電設備を提供する。
本発明によれば、樹脂内の高熱伝導材及び低線膨張材の沈殿を抑制し、かつ樹脂の破壊靭性及び絶縁破壊寿命向上の両立を図ることができる電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備を提供することができる。
本発明に係る電気絶縁樹脂組成物(又は電気絶縁樹脂硬化物)を模式的に示す図である。 破砕シリカ、溶融シリカ及びシリカナノ粒子の分子構造の一部を模式的に示す図である。 添加材の沈殿量と疎水性シリカナノ粒子の平均粒径の関係を示すグラフである。 樹脂の絶縁破壊寿命と疎水性シリカナノ粒子の平均粒径の関係を示すグラフである。 乾式破砕シリカを模式的に示す図である。 湿式破砕シリカを模式的に示す図である。 本発明に係るスイッチギヤを模式的に示す断面図である。
以下、図面を用いて、本発明に係る電気絶縁樹脂組成物、電気絶縁樹脂硬化物及び受変電設備について詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されることは無く、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜改良や変更を加えることが可能である。なお、本発明において「電気絶縁樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物とも称する)」は、硬化前の樹脂を意味するものであり、「電気絶縁樹脂硬化物(以下、単に硬化物とも称する)」は、上記「電気絶縁樹脂組成物」を硬化したものである。
[電気絶縁樹脂組成物及び電気絶縁樹脂硬化物]
図1は本発明に係る電気絶縁樹脂組成物を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明に係る電気絶縁樹脂組成物10は、樹脂3と、シリカ(SiO)からなる高熱伝導材(破砕シリカ)1と、シリカからなる低線膨張材(溶融シリカ)2と、シリカナノ粒子4とを含み、シリカナノ粒子4が、破砕シリカ1及び溶融シリカ2の周囲に配置されていることを特徴とする。また、シリカナノ粒子4が三次元デンドライト構造を形成していることを特徴とする。なお、本発明において「シリカからなる高熱伝導材」とは、シリカを主骨格とする物質からなる高熱伝導材を意味するものとする。シリカからなる低線膨張材についても、同様である。
破砕シリカ1は樹脂3に高熱伝導性を付与する添加材であり、溶融シリカ2は高温度差環境での残留熱応力を低減し、樹脂3に耐クラック性を付与する添加材である。図1に示すように、シリカナノ粒子4が破砕シリカ1及び溶融シリカ2の周囲に配置し、かつシリカナノ粒子4がブラウン運動することによって樹脂内の添加材(破砕シリカ1及び溶融シリカ2)の重合が抑止されて高熱伝導材1及び低線膨張材2の沈殿を抑制することができる。なお、シリカナノ粒子4を破砕シリカ1及び溶融シリカ2の周囲に配置するためには、破砕シリカ1、溶融シリカ2及びシリカナノ粒子4を含有する樹脂3を十分に長い時間をかけて撹拌する必要がある。
通常、シリカナノ粒子は樹脂の粘度を上昇させるので、樹脂に添加材を添加した上にさらにシリカナノ粒子を積極的に添加することは、当業者の間では考えられない。本発明は、樹脂の粘度とのバランスを取りつつシリカナノ粒子を添加し、その効果(添加材の沈殿抑制)を最大限に得るものであり、この技術的思想は従来技術には無く、新規なものである。
本発明に係る電気絶縁樹脂組成物及び電気絶縁樹脂硬化物は、ともに図1に示すような形態を有する。硬化物については、断面SEM(Scanning Electron Microscope)写真の観察によって、図1に示す形態を確認することができる。
次に、シリカナノ粒子4の配置と添加材の重合抑制について説明する。図2は、破砕シリカ、溶融シリカ及びシリカナノ粒子の分子構造の一部を模式的に示す図である。図2に示すように、本発明では破砕シリカ1、溶融シリカ2及びシリカナノ粒子4の主要骨格は全てシリカであり、プラスの極性をもつSi(シリコン)と、マイナスの極性を持つO(酸素)が互いにクーロン引力で引き合い、水素結合のように強く結合する(10kcal/molオーダー)。これにより、破砕シリカ1と溶融シリカ2の重合が抑えられ、樹脂3内での沈殿が抑止される。
続いて、シリカナノ粒子のブラウン運動と添加材の重合抑制について説明する。溶液内の粒子のブラウン運動理論では、下記式1のように、粒子の拡散係数Dは、温度/(粒子半径×樹脂の粘性)に比例する。
D(拡散係数)∝温度/(粒子半径×樹脂の粘性)…式1
樹脂内のシリカナノ粒子4も、上記のように添加材と結合しながらも、樹脂内でブラウン運動を行っており、拡散係数は上記式1に従うと考えられる。このため、シリカナノ粒子4のサイズ(平均粒径)が小さいほど、式1から、拡散係数が大きくなり、樹脂内の破砕シリカ1と溶融シリカ2の周囲に配置されたシリカナノ粒子4の拡散性が大きくなる。これにより、添加材同士の重合が抑制され、沈殿を抑制することができる。
図3は、添加材の沈殿量とシリカナノ粒子の平均粒径の関係を示すグラフである。沈殿量は、樹脂溶媒を取り除いた沈殿物の重量から評価した。図3に示すように、シリカナノ粒子の平均粒径が減少するほど添加材の沈殿量が小さくなり、シリカナノ粒子の平均粒径が200nm以下のときに、400nmのときと比較して添加材の沈殿量を半分に抑制できることがわかった。樹脂内の添加材の沈殿を抑制することにより、樹脂の長期間保管時に高温化設備が不要となるため、コスト低減を図ることができる。
さらに、シリカナノ粒子4は樹脂3内で線状に凝集して三次元デンドライト構造5を形成し、樹脂のクラック及び電気トリー6の進展を抑止することができ、機械的な破壊進展と電気的な破壊進展を抑制することができる。
樹脂組成物(又は硬化物)におけるシリカナノ粒子4の含有量は、樹脂組成物の粘度との関係において重要である。0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、シリカナノ粒子4の添加効果が十分に得られない。また、5質量%を超えると、樹脂組成物の粘度が大きくなり過ぎて、樹脂の取り扱いが容易ではなくなるため、5質量%を超えないことが好ましい。
シリカナノ粒子4は、疎水性を示すものが好ましい。シリカ粒子は表面にヒドロキシル基(‐OH)を有し、親水性を示す。シリカナノ粒子4の表面を疎水基で修飾することにより、破砕シリカ1及び溶融シリカ2の表面のヒドロキシル基と結合してミセル構造(シェル構造)を形成し、上述したSiとOの結合に加えて、破砕シリカ1及び溶融シリカ2とシリカナノ粒子4との結合をより強固にし、シリカナノ粒子4が破砕シリカ1及び溶融シリカ2の周囲に配置されることを容易にすることができる。なお、シリカナノ粒子4の表面に疎水基がある場合であっても、バルクは、上記クーロン引力によるSi‐O‐Si結合を形成する。
また、疎水性シリカナノ粒子4は、図1に示すように、樹脂3内で3次元デンドライト構造を形成する。一方、疎水性シリカナノ粒子4ではなく、親水性シリカナノ粒子を添加した場合、樹脂内で均一に分散する。同一重量比率の親水性シリカナノ粒子と疎水性シリカナノ粒子を添加した樹脂を比較すると、破壊靭性と絶縁破壊寿命は疎水性シリカナノ粒子を添加した樹脂の方が大きくなる。これは、シリカナノ粒子が均一分散ではなく、3次元デンドライト構造を形成する方が樹脂のクラック進展と電気トリー進展を抑止するので、機械的な破壊進展と電気的な破壊進展をより抑制できるためである。樹脂の破壊靭性と絶縁破壊寿命は、それぞれ、衝撃試験(シャルピー衝撃試験)及びV(電圧)−t(時間)試験で評価することができる。
シリカナノ粒子4の表面を修飾する疎水基としては、メチル基、メトキシ基、アルキル基及びアルコキシ基等が挙げられ、この中から1種でもよいし、これらの中から2種以上を組み合わせたものであってもよい。
破砕シリカ1及び溶融シリカ2の含有量の合計は、0.1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。添加材の含有量が70質量%より多いと、粘度が高くなり過ぎて好ましくない。また、シリカナノ粒子4によって沈殿を十分に抑制することができなくなる。上記含有量の範囲において、樹脂3に付与したい熱伝導性及び耐クラック性の程度を考慮して添加材の含有量を決定することが好ましい。また、溶融シリカ2は平均粒径10μm以上の球状シリカが好ましい。球状シリカとすることで、線膨張係数の低減効果が等方的となり、線膨張係数の樹脂製造方向依存性が無くなる効果がある。
樹脂3としては、熱硬化性を有するものであれば特に限定は無く、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリフェノール樹脂、ノボラック樹脂、ABS(アクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン共重合体)樹脂、ポリアセタール樹脂及びこれらの複合材が挙げられる。エポキシ樹脂を用いる場合、プレポリマーの主骨格はビスフェノールA型が好ましい。
本発明に係る樹脂組成物(又は硬化物)は、さらにエラストマー又は鱗片状フィラーを含有していてもよい。エラストマー又は鱗片状フィラーは、樹脂の靭性を大幅に向上させ、クラック進展を阻害することが期待できる。エラストマーは、平均粒径が10μm以下のものが好ましく、沈降やほかの数密度を上げることによるクラック進展阻害作用が期待できる。また同様に鱗片状フィラーにも同様の作用が期待できる。
また、樹脂3に添加材としてポリオキシエチレンやポリオキシエチレンとアルキル類又はフェノール類を含むエーテル化合物を、最大でシリカナノ粒子4の1.5質量%以内の割合で含ませてもかまわない。これらの物質は非極性界面活性剤として知られているものであり、表面エネルギーを下げて潤滑性を向上させる効果があり、添加材間の潤滑を良くすることで、樹脂組成物の粘度を下げることが可能である。
樹脂3に、上記エラストマー、鱗片状フィラー及びポリオキシエチレン等の破砕シリカ1及び溶融シリカ2以外の添加材を加える場合、全ての添加材の含有量が0.1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。また、樹脂3の粘度は、80℃以下で5Pa・sであることが好ましい。樹脂3の粘度が5Pa・sよりも大きくなると、注型時の作業性が低下する。樹脂3の粘度が5Pa・sとなるよう、樹脂3内の添加材及びシリカナノ粒子4の含有量を調整することが好ましい。
なお、図1では高熱伝導材1として破砕シリカを、低線膨張材2として溶融シリカを例にして説明したが、シリカからなる高熱伝導材1及び低線膨張材2はこれらに限定されるものではない。また、添加材である高熱伝導材1、低線膨張材2及びシリカナノ粒子は、全てシリカを基本骨格としているが、この基本骨格として、アルミナ(Al)等の金属酸化物を用いても良い。すなわち、高熱伝導材1、低線膨張材2及びこれらの沈殿を抑制するナノ粒子として、シリカに代えてアルミナを用いても本発明と同様の効果を示すものと考えられる。アルミナを用いることにより、樹脂3の熱伝導率を更に高める効果が期待される。
[受変電設備]
図6は本発明に係るスイッチギヤの一例を模式的に示す断面図である。上述した本発明に係る樹脂組成物をモールド、加圧又は射出によって成型し、受変電設備の絶縁性が要求される部分に適用することができる。受変電設備としては、図6に示すスイッチギヤ23の他、変圧器、発電機及び変換器等の各種電気機器が挙げられる。また、この他の成型法及び製品にも適用可能である。本発明に係る樹脂組成物及び硬化物は、樹脂内の高熱伝導材及び低線膨張材の沈殿の抑制と、樹脂の破壊靭性及び絶縁破壊寿命向上の両立を図ることができるため、加熱設備を設ける必要無く、信頼性の高い受変電設備を得ることができる。
以下、実施例に基づいて、本発明について更に詳細に説明する。
本実施例では、図1に示す樹脂組成物を作製し、樹脂の絶縁破壊寿命を評価した。破砕シリカ1及び溶融シリカ2を含有する硬化前のエポキシ樹脂3に、平均粒径が50nmの疎水性シリカナノ粒子4を樹脂組成物の2.5質量%含有させ、攪拌器で十分攪拌した。破砕シリカ7により、安価に熱伝導率を増大し、樹脂3の線膨脹係数を増大させることができる。また、樹脂をアルミ又はセラミック等を封止する際のクラック発生防止のために、溶融シリカ2を加える。温度差が大きな環境では、樹脂3と、樹脂3が封止するアルミ又はセラミック等の他材料との線膨係数との差により、樹脂3に残留熱応力が発生する。このとき、線膨張係数の小さい溶融シリカ2により、この残留熱応力を低減でき、樹脂3の耐クラック性を向上することができる。
本発明では、破砕シリカ1と溶融シリカ2の総和の上限は70質量%としたが、特に線膨脹係数の差が大きくない場合は、30質量%程度においても十分な効果が得られる。破砕シリカ1を含有する樹脂3の硬化前の粘度が十分に小さくなるため、溶融シリカ2の様な粘度が増大する他の添加材を入れる事が可能となる。
図1に示したように、疎水性シリカナノ粒子4は、破砕シリカ1と溶融シリカ2の間隙で発生する機械的な破壊の進展を抑止するとともに、電気的な破壊の進展を抑止する。平均粒径50nmの疎水性シリカナノ粒子4を添加した場合は、樹脂3の破壊靭性は添加しない場合に比べ25%増大することが実験的に分かった。図4は樹脂の絶縁破壊寿命と疎水性シリカナノ粒子の粒径の関係を示すグラフである。図4に示すように、図3に示した沈殿抑制の効果と同様に、樹脂3の絶縁破壊寿命も疎水性シリカナノ粒子5の粒径の低減に伴い、長期化することが分かった。
本実施例では、破砕シリカの種類について検討した。図5Aは乾式破砕シリカを模式的に示す図であり、図5Bは湿式破砕シリカを模式的に示す図である。破砕シリカの中でも、特に湿式法と乾式法の2種の方法において破砕したものが存在する。上記実施例1では湿式破砕シリカ10を用いたが、一般的に、乾式法で作製した乾式破砕シリカ9の方が表面におけるOH基や残留水が少なく、樹脂製造における水の悪影響(硬化阻害及び副反応の誘発等)を避けることが可能となる。また、この効果により樹脂の熱伝導度を一層高めることができる。
一方、図5Bに示すように、湿式法で作製した湿式破砕シリカ10の表面にはHO等の付着があるほか、OH基が多くなる傾向にあり、またOH基によってHOが水素結合を引き起こして表面に水が多くなっている可能性が高い。下記表1に示すように、水は1分子あたり20kJ/mol以上のエネルギーで発熱的に結合しており(分子軌道計算にて算出)、この水を除去するには100℃以上で一昼夜にわたる乾燥工程を必要とする。また、水の存在は、エポキシ樹脂3の重合を阻害する等、好ましくない効果を与え得る。
乾式破砕シリカ9を用いた場合の樹脂3の粘度を測定したところ、2Pa・s(80℃)であり、湿式破砕シリカ10を用いた場合よりも粘度の低下に寄与していることが明らかになった。また、樹脂3の熱伝導率は、湿式破砕シリカ10を用いた場合の1.4W・m−1・K−1から1.5W・m−1・K−1に増大した。また、樹脂3の乾燥工程もより短い時間で行うことができる。さらには、乾式破砕シリカ9の方が湿式破砕シリカ10より、周囲に水分子がないため、シリカナノ粒子4が配置しやすい。このため、乾式破砕シリカ9の方が、樹脂内での沈殿が起こりにくい。
Figure 2016162515
以下、本発明の第3の実施例を説明する。本実施例においては平均粒径10μm以下のエラストマー粒子又は鱗片状フィラーを含む樹脂組成物を作製し、破壊靭性を評価した。
ここでは、エラストマーとして、アクリル基修飾スチレンブタジエンゴム(平均粒子径0.7μm)を添加した例についてまず説明する。含有量は、樹脂に対して8質量%とした。この結果、破壊靭性は添加前の2.4MPa√mから4.5MPa√mに向上させることができた。更に粒子径を増大させて効果を調べたが、徐々にその効果が落ちる減少が確認された。その理由として、同じ重量では数密度が小さくなり、進展したクラックと遭遇する確率が下がることが挙げられる。
なお、同様に鱗片状フィラーとしてマイカパウダー(長手方向径1μm)でも同様の効果が得られた。具体的には、2.4MPa√mの破壊靭性を4.0MPa√mに改善することができた。
以上説明したように、本発明によれば、樹脂内での高熱伝導材及び低線膨張材の沈殿を抑制し、かつ樹脂の破壊靭性及び絶縁破壊寿命向上の両立を図ることができる電気絶縁樹脂組成物及びこれを用いた電気絶縁樹脂硬化物、受変電設備を提供することができることが示された。
なお、上記した実施例は、本発明の理解を助けるために具体的に説明したものであり、本発明は、説明した全ての構成を備えることに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
1…高熱伝導材、2…低線膨張材、3…樹脂、4…シリカナノ粒子、5…3次元デンドライト構造、6…クラック及び電気トリー、7…クーロン引力、9…乾式破砕シリカ、10…湿式破砕シリカ、23…スイッチギヤ、61…真空バルブ、62A…固定側セラミックス絶縁筒、62B…可動側セラミックス絶縁筒、63A…固定側端板、63B…可動側端板、64A…固定側電界緩和シールド、64B…可動側電界緩和シールド、65…アークシールド、66A…固定側電極、66B…可動側電極、67A…固定側ホルダ、67B…可動側ホルダ、68…ベローズシールド、69…ベローズ、610…接地断路部、611…接地断路部ブッシング側固定電極、612…接地断路部可動電極、613…接地断路部中間固定電極、614…接地断路部接地側固定電極、615…フレキシブル導体、616…ばね接点、617…接続導体、620…真空バルブ用操作ロッド、621…接地断路部用操作ロッド、630…固体絶縁物(樹脂)、631…金属容器、640…母線用ブッシング、641…母線用ブッシング中心導体、642…ケーブル用ブッシング、643…ケーブル用ブッシング中心導体。

Claims (20)

  1. 樹脂と、シリカからなる高熱伝導材と、シリカからなる低線膨張材と、シリカナノ粒子と、を含み、
    前記シリカナノ粒子が、前記高熱伝導材及び前記低線膨張材の周囲に配置されていることを特徴とする電気絶縁樹脂組成物。
  2. 前記シリカナノ粒子が、線状に凝集して3次元デンドライト構造を形成していることを特徴とする請求項1記載の電気絶縁樹脂組成物。
  3. 前記シリカナノ粒子が表面に疎水基を有し、前記高熱伝導材及び前記低線膨張材と前記シリカナノ粒子とがミセル構造を形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  4. 前記シリカナノ粒子の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  5. 前記高熱伝導材及び前記低線膨張材の含有量の合計が、0.1質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  6. 前記高熱伝導材が破砕シリカであり、前記低線膨張材が溶融シリカであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  7. 前記破砕シリカが、乾式破砕シリカであることを特徴とする請求項6記載の電気絶縁樹脂組成物。
  8. さらに、エラストマー粒子、鱗片状フィラー、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンとアルキル類又はフェノール類を含むエーテル化合物を、前記シリカナノ粒子に対して0質量%より多く1.5質量%以下含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  9. 前記樹脂が、エポキシ系熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  10. 粘度が80℃以下で5Pa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物。
  11. 樹脂と、シリカからなる高熱伝導材と、シリカからなる低線膨張材と、シリカナノ粒子と、を含み、
    前記シリカナノ粒子が、前記高熱伝導材及び前記低線膨張材の周囲に配置されていることを特徴とする電気絶縁樹脂硬化物。
  12. 前記シリカナノ粒子が、線状に凝集して3次元デンドライト構造を形成していることを特徴とする請求項11記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  13. 前記シリカナノ粒子が表面に疎水基を有し、前記高熱伝導材及び前記低線膨張材と前記シリカナノ粒子とがミセル構造を形成していることを特徴とする請求項11又は12に記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  14. 前記シリカナノ粒子の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  15. 前記高熱伝導材及び前記低線膨張材の含有量の合計が、0.1質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  16. 前記高熱伝導材が破砕シリカであり、前記低線膨張材が溶融シリカであることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  17. 前記破砕シリカが、乾式破砕シリカであることを特徴とする請求項16記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  18. さらに、エラストマー粒子、鱗片状フィラー、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンとアルキル類又はフェノール類を含むエーテル化合物を、前記シリカナノ粒子に対して0質量%より多く1.5質量%以下含むことを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  19. 前記樹脂が、エポキシ系熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項11乃至18のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂硬化物。
  20. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電気絶縁樹脂組成物を、絶縁性が要求される部分に用いたことを特徴とする受変電設備。
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