JP2004269763A - 電気絶縁被覆用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハロゲン化合物等の環境負荷物質を含有せずに不燃性を有し、かつ、電子部品との密着強度、耐溶剤性、耐湿性などにおいて充分な特性を有し、さらに、塗装作業性に優れ、取り扱いが容易な電気絶縁被覆用組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂、無機充填材、及び無機系チクソ性付与剤を含有することを特徴とする電気絶縁被覆用組成物である。熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂が好ましく、また、無機系チクソ性付与剤はスメクタイト系膨潤物質で、組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.1〜2重量%含有されることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気絶縁被覆用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バリスタ、コンデンサー、抵抗、コイルなどの電子部品は、衝撃等の外力や湿気からの保護を目的として絶縁被覆塗料により外装を施している。この電子部品の被覆方法には、溶剤系ディップコート法、注型法、粉体外装法、成形法などがある。この中で溶剤系ディップコート法は、熱硬化性樹脂、充填材、添加剤等よりなる組成物に溶剤を配合してペースト状塗料とし、これに電子部品を浸漬被覆し、風乾操作により溶剤を部分蒸発させた後、加熱硬化処理して電子部品を被覆する方法である。
【0003】
溶剤系ディップコート法に使用する組成物は、通常、80〜90重量%の無機充填材を含んだものであり、樹脂が溶剤により溶解して無機充填材を均一にコーテイングした形態となっており、このように無機充填材を多量に含有することから、硬化収縮が小さく、その硬化塗膜の熱膨張率がセラミック並に小さく、内部ストレスも小さいので耐熱衝撃性に優れるという特長を有している。
このような組成物は、臭素系難燃剤やアンチモン系難燃助剤などの環境負荷物質を添加しないで、UL難燃規格(V−0)を満足することができる。しかし、上記の組成物は樹脂分を10〜20重量%程度含有するため、これで被覆された電子部品が過負荷により発熱した場合や、外部からの発炎を受けた場合には、着火や発炎がなく、発煙が少ないという不燃材料の基準を満たしてはいない。特に最近では、電子部品使用時の発炎・発煙、及び有害物質の発生が問題となっており、不燃性材料で被覆された無発炎、無発煙の電子部品の開発が望まれている。
【0004】
不燃性塗料としては、一般には水性コロイダルシリカや水性アルミナ質コロイドを用いた不燃性無機材料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、このような材料により形成された硬化塗膜は脆いことに加えて、塗料中の水分に起因する使用時の問題や耐湿性が不充分であった。
また、シリコン樹脂を用いた不燃性塗料が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この材料は電気的特性、耐熱性、耐水性は良好な特性を有しているが、電子部品との密着性、耐溶剤性、耐湿性が不充分で、使用時に高温硬化が必要である等の欠点があった。
また、樹脂分の含有量を全体の5重量%以下とすることにより不燃性を向上させた材料も知られているが、充填材を多量に含んでいるため、低粘度化するには多量の溶剤が不可欠であり、また、低樹脂分のため塗料中の充填材を保持できず、タレや沈降が発生してしまうなど、作業性が低く、電子部品用の不燃塗料として使用するには問題があった。
さらに、このような低樹脂分の塗料は多量の充填材を含むため、移送等に使用する配管内等で流動抵抗が大きく、塗装ラインや製造ライン等の配管を閉塞することがあり、実用性に乏しかった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−002955号公報
【特許文献2】
特開平05−017720号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン化合物等の環境負荷物質を含有せずに不燃性を有し、かつ、電子部品との密着強度、耐溶剤性、耐湿性などにおいて充分な特性を有し、さらに、塗装作業性に優れ、取り扱いが容易な電気絶縁被覆用組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(8)により達成される。
(1)熱硬化性樹脂、無機充填材、及び無機系チクソ性付与剤を含有することを特徴とする電気絶縁被覆用組成物。
(2)さらに、カップリング剤を含有する上記(1)に記載の電気絶縁被覆用組成物。
(3)前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂である上記(1)又は(2)に記載の電気絶縁被覆用組成物。
(4)前記無機充填材全体に対して、平均粒径が5〜40μmである球状充填材を50重量%以上含有する上記(1)ないし(3)に記載の電気絶縁被覆用組成物。
(5)前記無機充填材全体に対して、平均粒径が0.5〜5μmである細粒充填材を2〜7重量%含有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
(6)前記無機系チクソ性付与剤が、スメクタイト系膨潤物質である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
(7)前記熱硬化性樹脂が、前記組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.5〜5重量%含有されるものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
(8)前記無機系チクソ性付与剤が、前記組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.1〜2重量%含有されるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の電気絶縁被覆用組成物(以下、単に「組成物」ということがある)について説明する。本発明の組成物は、熱硬化性樹脂、無機充填材、及び無機系チクソ性付与剤を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の組成物で用いられる熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
フェノール樹脂としては例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、特に、自消性をもつフェノール樹脂を用いることが好ましい。これにより、不燃性塗料を簡易かつ安価に製造することができる。
【0010】
上記熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合は特に限定されないが、通常、レゾール型フェノール樹脂を単独で用いるか、あるいは、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を併用する。併用する場合の両者の配合割合は特に限定されないが、レゾール型フェノール樹脂20〜80重量%、ノボラック型フェノール樹脂80〜20重量%とすることが好ましい。これにより、良好な硬化性を付与することができる。
【0011】
上記フェノール樹脂を用いる場合、その数平均分子量としては特に限定されないが、レゾール型フェノール樹脂の場合は300〜500、ノボラック型フェノール樹脂の場合は500〜1200であるものを用いることが好ましい。これにより、塗料とした際の粘度を容易に調整することができる。
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。GPC測定はテトラヒドロフランを溶出溶媒とし、流量1.0ml/min、カラム温度40℃の条件で実施した。
・本体:TOSOH社製・「HLC−8020」
・検出器:波長280nmにセットしたTOSOH社製・「UV−8011」
・分析用カラム:昭和電工社製・「SHODEX KF−802、KF−803、KF−805」
をそれぞれ使用した。
【0012】
上記レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール類1モルに対しアルデヒド類を1モル以上、好ましくは1.1〜1.8モルとして反応させ、触媒として含窒素化合物触媒、あるいは含窒素化合物とアルカリ土類金属触媒を併用して、常法により縮合脱水させた樹脂を用いることができる。
ここでいうフェノール類としては特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、あるいはパラターシャリーブチルフェノールのようなアルキルフェノールなどを用いることができる。また、アルデヒド類としては特に限定されないが、通常、ホルムアルデヒドが用いられる。ホルムアルデヒドとしてはホルマリン水溶液の他に、パラホルムアルデヒドを用いてもよい。
触媒として用いる含窒素化合物としては特に限定されないが、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アニリン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属としては特に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0013】
上記ノボラック型フェノール樹脂としては、上記レゾール型フェノール樹脂の場合と同じフェノール類とアルデヒド類とを用い、触媒としてシュウ酸などの有機酸及び硫酸などの無機酸、酢酸亜鉛などの有機酸塩の一種又はそれ以上を使用して、常法により縮合脱水させた樹脂を用いることができる。
【0014】
上記熱硬化性樹脂の含有量としては特に限定されないが、上記組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.5〜5重量%であることが好ましい。さらに好ましくは1〜3重量%である。これにより、組成物に不燃性を付与することができるとともに、被覆物である電子部品との密着性を向上させることができる。熱硬化性樹脂の含有量が上記下限値未満では、電子部品との密着性が充分でない場合があり、上記上限値を越えると、非発煙、非発炎などの不燃特性に影響を与えることがある。
【0015】
本発明の組成物に用いられる無機充填材としては特に限定されないが、例えば、球状溶融シリカ、球状アルミナ等の平均粒径が5〜40μmである球状充填材、溶融シリカ粉末、結晶シリカ粉末、炭酸カルシウム粉末、アルミナ粉末、水和アルミナ粉末等の平均粒径が5〜40μmである破砕粉末充填材、あるいは、タルク、クレー、カオリン、バライト、炭酸カルシウム、シリカなどの、平均粒径が0.5〜5μmである細粒充填材などが挙げられる。
【0016】
上記充填材の中でも、平均粒径が5〜40μmである球状充填材を、無機充填材全体に対して50重量%以上配合することが好ましい。さらに好ましくは90重量%以上である。これにより、組成物に配合される熱硬化性樹脂が少量であっても、組成物に充分な流動性を付与することができるとともに、最密充填効果により塗膜の機械的強度を向上させることができる。
また、平均粒径が0.5〜5μmである細粒充填材を、無機充填材全体に対して2〜7重量%配合することが好ましい。さらに好ましくは3〜5重量%である。これにより、形成される塗膜の緻密化を図ることができるとともに、電子部品のエッジカバー性を向上させることができる。
さらに、微粉末シリカなどの微粒充填材を少量配合することにより、形成された塗膜表面の平滑性を向上させることができる。
【0017】
本発明の組成物に用いられる無機系チクソ性付与剤としては特に限定されないが、例えば、ステアリル酸アルミニウム、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、表面処理炭酸カルシウム、カオリン、クレー、スメクタイト系膨潤物質などが挙げられる。
これらの中でも、スメクタイト系膨潤物質を用いることが好ましい。スメクタイトとは膨潤性粘土鉱物の一種であり、例えば、モンモリナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポタイト、ヘクトライト、ベントナイト等が挙げられる。
【0018】
これらのスメクタイト系膨潤物質を用いることにより、組成物に対して、剪断速度が高くなると粘度が低くなる、いわゆる構造粘性挙動を促進させる効果を付与することができる。
この結果、組成物に溶剤を配合して塗料を調製した場合でも、その粘度を大きく低下させることがなく、組成物中の無機充填材を沈降させずに保持することができるので、塗料を電子部品に塗装した後でも、タレや沈降の発生を抑えることができる。一方、組成物や塗料を移送する際などには大きな剪断力が作用するので粘度が低くなり、移送配管等の内部での流動抵抗を低減できるので、移送性を向上させることができる。 さらに、スメクタイト系膨純物質は膨潤により構造粘性を向上させるため、枝分かれの多い分子構造をもつ高分子化合物や表面積の大きい微細粒子など、他のチクソ性付与剤を用いた場合と比較すると、組成物等の温度変化に対する粘度の変動が小さく、諸条件下において上記の効果を安定して発現させることができる。
【0019】
上記無機系チクソ性付与剤の配合量としては特に限定されないが、組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.1〜2重量%含有されることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。配合量が上記下限値未満では、組成物の粘性改良効果が充分でないことがある。一方、上記上限値を越えると、組成物の粘性が高くなりすぎることがある。また、非発炎性、非発煙性などの不燃特性が低下したり、含有されるイオン性の金属不純物により、被外装物である電子部品の耐湿性を低下させたりすることがある。このため、例えば無機系チクソ性付与剤として上記スメクタイト系膨潤物質を用いる場合は、不純物が少ないものを用いることが好ましく、具体的には、天然物では精製品、合成物でも高純度品の使用が有効である。
【0020】
本発明の組成物には、上記に挙げたもののほか、さらに、上記組成物に用いられる熱硬化性樹脂と無機充填材との化学的親和性を向上する効果を有するカップリング剤を配合することができる。
このようなカップリング剤は、配合する熱硬化性樹脂、無機充填材の種類などにより適宜選択して用いることができるが、例えば、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂やエポキシ樹脂、無機充填材としてシリカを用いた場合は、エポキシシランなどのシランカップリング剤を用いることができる。
上記カップリング剤の配合量としては特に限定されないが、例えば、上記エポキシシランを用いる場合は、無機充填材100重量部に対して0.1〜1.5重量部配合することが好ましい。これにより、電子部品と塗膜との密着強度を大きく向上させることができる。
【0021】
本発明の組成物には、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を加えることができる。このような添加剤としては例えば、揺変剤、消泡剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0022】
本発明の組成物は、輸送上の取り扱い性を良好なものにするため、粉末組成物として製造し、これを使用する時に溶剤を添加混合してペースト状にすることも好ましい態様として採用できる。ここで用いられる溶剤としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、エチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、その他、エステル系、エーテル系、エーテルアルコール系、エーテルエステル系などの溶剤1種または2種以上使用することができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、ここに記載している「部」および「%」はすべて「重量部」および「重量%」を示す。
【0024】
(製造例1)
フェノール94部、37%ホルマリン146部、触媒として28%アンモニア水15部と水酸化カルシウム0.5部を仕込み、温度100℃で40分間反応を行い、次いで真空下で脱水を行なって融点67℃(数平均分子量=420)の固形のレゾール型フェノール樹脂(以下、「レゾール樹脂」)という)を得た。
【0025】
(製造例2)
フェノール94部、37%ホルマリン60部、触媒としてシュウ酸1部を仕込み、温度100℃で3時間反応を行い、次いで、真空下で脱水を行って融点70℃(数平均分子量=910)のノボラック型フェノール樹脂(以下、「ノボラック樹脂」という)を得た。
【0026】
(実施例1〜12、比較例1〜3)
表1に示した配合割合で原材料を粉砕混合して粉末状の混合物を得た。
これらの混合物100部に対し、メチルエチルケトン対メタノール=1対1の混合溶剤と、エポキシシランカップリング剤(実施例12と比較例3を除く)とを配合して、これを2時間混合してペースト状の組成物を調製し、更に上記混合溶剤で希釈して、25℃における粘度を2.0Pa・sに調整した。調整したペースト状の組成物を用いて、不燃性試験、密着強度、耐溶剤性、煮沸試験及び、移送性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 2004269763
【0028】
表の注:原材料
(1)エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1003」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
(2)シリコン樹脂:信越化学工業社製・「KR−220L」
(3)球状充填材:電気化学工業社製・球状溶融シリカ「FB−74」(平均粒径=28μm)
(4)破砕充填材:電気化学工業社製・溶融シリカ「FS−74」(平均粒径=17μm)
(5)細粒充填材:扶桑化学社製・球状溶融シリカ「クォートロンSP」(平均粒径=1μm)
(6)無機系チクソ性付与剤1:コープケミカル社製・「合成スメクタイトSPN」(スメクタイト系膨潤物質)
(7)無機系チクソ性付与剤2:ホージュン社製・「エスベンC」(スメクタイト系膨潤物質)
(8)カップリング剤:信越シリコーン社製・「KBM−403」
(9)ディップコート樹脂:住友ベークライト社製・「PR−16382」(溶剤希釈型フェノール樹脂塗料)100部を、メタノール/アセトン=2/1の混合溶剤25部でペースト化したものを用いた。
【0029】
表の注:評価方法
(1)不燃性試験(発炎時間):セラミック基板上に上記ペースト状の組成物 0.6gをドロップコートし、12時間風乾後、150℃で1時間硬化して試験サンプルを作成した。この試験サンプルを1000℃の電気炉中に挿入して、発炎時間(秒)を測定した。
(2)不燃性試験(発煙時間):鉄板上に上記ペースト状の組成物0.6gをドロップコートし、12時間風乾後、150℃で1時間硬化して試験サンプルを作成した。この試験サンプルを高周波誘導加熱により赤熱(約1200℃)して、発煙時間(秒)を測定した。
(3)密着強度:アルミナセラミック基板上に上記ペースト状の組成物0.1mlを滴下して5mmφに広げ、12時間風乾後、150℃で1時間硬化して試験サンプルを作成した。この試験サンプルについてプッシュプルゲージにより硬化物が剥離する荷重(kg/5mmφ)を測定した。
(4)耐溶剤性:アルミナセラミック基板上に上記ペースト状の組成物0.1mlを滴下して5mmφに広げ、12時間風乾後、150℃で1時間硬化して試験サンプルを作成した。この試験サンプルをアセトン溶剤に1時間浸漬した後、プッシュプルゲージにより硬化物が剥離する荷重(kg/5mmφ)を測定した。
(5)煮沸密着性:アルミナセラミック基板上に上記ペースト状の組成物0.1mlを滴下して5mmφに広げ、12時間風乾後、150℃で1時間硬化して試験サンプルを作成した。この試験サンプルを煮沸1時間後、プッシュプルゲージにより硬化物が剥離する荷重(kg/5mmφ)を測定した。
(6)移送性:エイブル社製・小型卓上ポンプを用い、吐出圧力約0.3kg/cmにて上記ペースト状の組成物の循環を連続して実施し、移送性を評価した。各符号は以下の通りである。
◎:連続でスムーズに移送できる
○:基本的に移送可能であり、一時間を越えても配管詰まりが生じない
△:基本的に移送可能であるが、一時間以内に配管詰まりが生じる
×:全く移送できない
【0030】
実施例1〜12はいずれも、熱硬化性樹脂、無機充填材、及び無機系チクソ性付与剤を含有する本発明の電気絶縁被覆用組成物であり、ハロゲン化合物等の環境負荷物質を含有せずに不燃性を有し、塗膜の密着強度、耐溶剤性、煮沸密着性においても充分な特性を有し、移送性も良好なものであった。特に実施例1〜6は、各成分の配合が最適であったので、これらの特性のバランスに特に優れたものとなった。
一方、比較例はいずれも無機系チクソ性付与剤を配合しなかったものであるが、フェノール樹脂を用いた比較例1は移送ができなかった。また、比較例2はシリコン樹脂を用いたが、塗膜の密着強度、耐溶剤性、煮沸密着性が不充分なものであった。そして比較例3は市販のディップコート樹脂を用いたが、不燃性を付与することができず、移送性にも劣るものであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、熱硬化性樹脂、無機充填材、及び無機系チクソ性付与剤を含有することを特徴とする電気絶縁被覆用組成物であり、不燃特性に優れることはもとより、エッジカバー性、リード部への塗料の流動性などの塗装作業性が良好な材料が得ることができ、シリコン樹脂と異なり塗膜の密着性に優れ、耐溶剤性の良好な材料が得ることができる。本発明の電気絶縁被覆用組成物は、例えば電子部品用絶縁塗料、特にバリスタ、コンデンサー、抵抗、コイルなど過負荷や自己発熱を伴う電子部品に電気絶縁保護皮膜を形成するための不燃性塗料として好適に用いられるものである。

Claims (8)

  1. 熱硬化性樹脂、無機充填材、及び無機系チクソ性付与剤を含有することを特徴とする電気絶縁被覆用組成物。
  2. さらに、カップリング剤を含有する請求項1に記載の電気絶縁被覆用組成物。
  3. 前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂である請求項1又は2に記載の電気絶縁被覆用組成物。
  4. 前記無機充填材全体に対して、平均粒径が5〜40μmである球状充填材を50重量%以上含有する請求項1ないし3に記載の電気絶縁被覆用組成物。
  5. 前記無機充填材全体に対して、平均粒径が0.5〜5μmである細粒充填材を2〜7重量%含有する請求項1ないし4のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
  6. 前記無機系チクソ性付与剤が、スメクタイト系膨潤物質である請求項1ないし5のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
  7. 前記熱硬化性樹脂が、前記組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.5〜5重量%含有されるものである請求項1ないし6のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
  8. 前記無機系チクソ性付与剤が、前記組成物中の溶剤分を除く成分全体に対して0.1〜2重量%含有されるものである請求項1ないし7のいずれかに記載の電気絶縁被覆用組成物。
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