JP6927717B2 - 絶縁材料及び電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料に関する。本発明は、上記絶縁材料を用いた電子部品に関する。
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂組成物が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、絶縁層内に金属配線を通して導通を果たすために、樹脂組成物を用いて絶縁層が形成されている。上記絶縁層の表面には、一般に金属配線が接触された状態になる。
また、近年、半導体チップなどの電子部品の小型化及び薄型化が進行している。このため、電子部品に形成される金属配線の微細化も進行している。例えば、複合構造体を微細にし、金属配線の電極幅を5μm以下にする要望が高まっている。
上記のような絶縁層を形成するための絶縁材料や配線形成技術については、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
WO2011/080827A1
特許文献1に記載のような従来の絶縁材料の硬化物を金属配線に接触させたときに、高温下において、金属配線における抵抗値が上昇することがある。さらに、従来の絶縁材料の硬化物を金属配線に接触させたときに、高温高湿下において、金属配線に対する硬化物の密着性が低下することがある。
従来、高温下での抵抗値の上昇の抑制と、高温高湿下での硬化物の密着性の低下の抑制との双方を満足することが困難であるという問題がある。
本発明の目的は、高温下での抵抗値の上昇を抑え、高温下又は高湿下での金属配線に対する硬化物の密着性を高めることができる絶縁材料及び電子部品を提供することである。
本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料であり、前記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、前記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、金属配線の表面上に接触された状態で前記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、前記金属配線に対する前記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上である、絶縁材料が提供される。
本発明に係る絶縁材料のある特定の局面では、前記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、前記硬化物の粘弾性測定から求められる架橋密度が1.0×10−4mol/cc以上である。
本発明に係る絶縁材料のある特定の局面では、前記絶縁材料は、無機充填材を含む。
本発明に係る絶縁材料のある特定の局面では、前記絶縁材料は、金属配線の表面上に硬化物を形成するために用いられる。前記金属配線が、配線幅5μm以下の金属配線であることが好ましい。
本発明の広い局面によれば、金属配線と、前記金属配線の表面上に接触された硬化物とを備え、前記硬化物が、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料の硬化物であり、前記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、前記金属配線に対する前記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上である、電子部品が提供される。
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、前記金属配線が、配線幅5μm以下の金属配線である。
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、前記硬化物の粘弾性測定から求められる架橋密度が1.0×10−4mol/cc以上である。
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、前記絶縁材料が、無機充填材を含む。
本発明に係る絶縁材料は、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料であり、上記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、上記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、金属配線の表面上に接触された状態で上記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、上記金属配線に対する上記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上であるので、高温下での抵抗値の上昇を抑え、高温下又は高湿下での金属配線に対する硬化物の密着性を高めることができる。
本発明に係る電子部品は、金属配線と、上記金属配線の表面上に接触された硬化物とを備え、上記硬化物が、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料の硬化物であり、上記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、上記金属配線に対する上記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上であるので、高温下での抵抗値の上昇を抑え、高温下又は高湿下での金属配線に対する硬化物の密着性を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁材料を用いた電子部品を模式的に示す断面図である。 図2は、実施例等の評価における評価基板を説明するための図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る絶縁材料は、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料である。本発明に係る絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、上記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下である。金属配線の表面上に接触された状態で本発明に係る絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、上記金属配線に対する上記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上である。
本発明に係る絶縁材料では、上記の構成が備えられているので、高温下での抵抗値の上昇を抑え、高温下又は高湿下での金属配線に対する硬化物の密着性を高めることができる。
本発明に係る電子部品は、金属配線と、上記金属配線の表面上に接触された硬化物とを備える。本発明に係る電子部品では、上記硬化物は、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料の硬化物である。本発明に係る電子部品では、上記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、上記金属配線に対する上記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上である。
本発明に係る電子部品では、上記の構成が備えられているので、高温下での抵抗値の上昇を抑え、高温下又は高湿下での金属配線に対する硬化物の密着性を高めることができる。
上記硬化物の酸素透過係数は、高温下での抵抗値の上昇を抑えることに大きく影響する。上記金属配線に対する上記硬化物の接着強度は、高温下又は高湿下での金属配線に対する硬化物の密着性を高めることに大きく影響する。
本発明では、高温下での抵抗値の上昇の抑制と、高温下又は高湿下での硬化物の密着性の低下の抑制との双方を満足することができる。
高温下での抵抗値の上昇をより一層抑える観点からは、上記酸素透過係数はより好ましくは1.0×10−16mol・m/m・s・Pa以下である。
高温下又は高湿下での硬化物の密着性をより一層高める観点からは、上記金属配線に対する上記硬化物の接着強度は、好ましくは0.3kN/m以上である。
本発明に係る絶縁材料において、上記酸素透過係数を測定するための上記硬化物は、以下のようにして得られる。
絶縁材料を40μmの厚みとなるように成形し、190℃で90分間の熱処理を行うことによって測定サンプルを得る。なお、本発明に係る絶縁材料を用いる際には、190℃で90分間加熱する条件以外の条件で、絶縁材料を硬化させてもよい。
本発明に係る絶縁材料において、上記接着強度を測定するための金属配線が接触された状態の硬化物は、以下のようにして得られる。
金属配線を模擬して電解銅箔の表面粗化を行っていないシャイニー面と絶縁材料とを貼り合せ、190℃で90分間の熱処理をすることにより測定サンプルを得る。なお、本発明に係る絶縁材料を用いる際には、190℃で90分間加熱する条件以外の条件で、絶縁材料を硬化させてもよい。
本発明に係る絶縁材料及び本発明に係る電子部品において、上記酸素透過係数は、以下のようにして測定される。
差圧式ガス・透過率測定装置を用いて、差圧法JIS K7126−1に準拠して行う。差圧式ガス・透過率測定装置としては、GTRテック社製・ヤナコテクニカルサイエンス社製「GTR−30XAD2、G2700T・F」等が挙げられる。
本発明に係る絶縁材料及び本発明に係る電子部品において、上記接着強度は、以下のようにして測定される。
90°剥離試験機を用いて、測定サンプルの金属配線面側又は銅箔面側に1cm幅となるように短冊状に切込みを入れ、つかみ具で切込みの入った金属配線又は銅箔の端部をつまみあげ、金属配線又は銅箔を20mm剥離して接着強度(密着強度)を測定する。90°剥離試験機としては、テスター産業社製「TE−3001」等が挙げられる。
本発明に係る絶縁材料及び本発明に係る電子部品において、上記硬化物の粘弾性測定により計測されたガラス状態の貯蔵弾性率から求められる架橋密度は、好ましくは1.0×10−4mol/cc以上、より好ましくは1.0×10−3mol/cc以上である。架橋密度が上記下限以上であると、硬化物の酸素透過係数をより一層効果的に低減させることができる。架橋密度の上限は特に限定されない。架橋密度は、5.0×10−4mol/cc以下であってもよい。
本発明に係る絶縁材料は、金属配線の表面上に硬化物を形成するために好適に用いられる。本発明に係る絶縁材料及び本発明に係る電子部品では、上記金属配線が、配線幅5μm以下の金属配線であることが好ましく、上記絶縁材料は、金属配線の表面上に硬化物を形成するために用いられる。上記金属配線が、配線幅3μm以下の金属配線であることがより好ましい。微細な配線では、高温下での接続抵抗、及び高湿下での剥離が顕著に生じやすい傾向がある。本発明によって、微細な配線であっても、高温下での抵抗値の上昇を抑え、高湿下での硬化物の密着性を高めることができる。
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁材料を用いた電子部品を模式的に示す断面図である。
図1に示す電子部品1は、硬化物11と、金属配線12A,12Bと、金属配線12A,12Bに接続された電子部品本体13A,13Bとを備える。硬化物11と、金属配線12A,12Bは接触している。金属配線12A,12Bは、硬化物11内に埋め込まれた部分を有する。電子部品本体13A,13B間が、金属配線12A,12Bにより導通されている。電子部品本体13A,13Bは、例えば半導体素子である。
以下、上記絶縁材料に用いられる各成分の詳細を説明する。
[熱硬化性化合物]
上記絶縁材料に含まれる熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物として、従来公知の熱硬化性化合物が使用可能である。上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物であることが好ましい。該エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物は特に限定されない。該エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物が使用可能である。該エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
上記エポキシ化合物は、ビフェニル骨格を有することが好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物であることが好ましい。上記エポキシ化合物がビフェニル骨格を有することで、硬化物と金属配線との接着強度がより一層高くなる。
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、無機充填材の含有量が60重量%以上であっても、流動性が高い絶縁材料が得られる。このため、絶縁材料を基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
上記エポキシ化合物の分子量及び後述する硬化剤の分子量は、上記エポキシ化合物又は硬化剤が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物又は硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物又は硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
[硬化剤]
上記絶縁材料に含まれる硬化剤は特に限定されない。該硬化剤として、従来公知の硬化剤が使用可能である。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
上記フェノール化合物としては、アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物、ノボラック型フェノール化合物、ビフェノール型フェノール化合物、ナフタレン型フェノール化合物、ジシクロペンタジエン型フェノール化合物、アラルキル型フェノール化合物及びジシクロペンタジエン型フェノール化合物等が挙げられる。上記硬化剤は、アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物を含むことが好ましい。特に、アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物には、プリント配線板等の電子部品の導体材料として用いられる銅との親和性を高める効果があり、アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物を用いることで、より一層高い密着力を得られる。上記硬化剤を2種以上併用する場合には、硬化剤の全体100重量%中、アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。アミノトリアジン骨格を有するフェノール化合物が上記範囲内であると、酸素透過係数の上昇を効果的に抑え、金属配線に対する硬化物の密着性を効果的に向上させることができる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEHC−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
上記活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006927717
上記式(1)中、X1及びX2はそれぞれ、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせ、並びに、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000−65T」及び「EXB−9416−70BK」等が挙げられる。
上記硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、無機充填材の含有量が60重量%以上であっても、流動性が高い絶縁材料が得られる。このため、絶縁材料を基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
絶縁材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、溶融粘度を調整することができるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に絶縁材料が濡れ拡がることを防止できる。さらに、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上であると、溶融粘度が低くなりすぎず、硬化過程で、意図しない領域に絶縁材料が過度に濡れ拡がりにくくなる傾向がある。また、上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限以下であると、最大の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが容易になり、さらに無機充填材が不均一に存在しにくくなる傾向がある。上記エポキシ化合物と上記硬化剤との含有量比は、エポキシ化合物が硬化するように適宜選択される。なお、絶縁材料が無機充填材を含まずかつ溶剤を含む場合には、絶縁材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%は、絶縁材料中の溶剤を除く成分100重量%である。絶縁材料が無機充填材を含みかつ溶剤を含まない場合には、絶縁材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%は、絶縁材料中の無機充填材を除く成分100重量%である。絶縁材料が無機充填材を含まずかつ溶剤を含まない場合には、絶縁材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%は、絶縁材料100重量%である。
[熱可塑性樹脂]
上記絶縁材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に絶縁材料が濡れ拡がり難くなる。上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
保存安定性により一層優れた樹脂フィルムを得る観点からは、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。絶縁材料の架橋密度を高め、酸素透過係数をより一層低くする観点からは、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは50000以上である。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。絶縁材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は好ましくは2重量%以上、より好ましくは4重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上であると、絶縁材料のフィルム化がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、酸素透過係数をより一層低くすることができる。絶縁材料の架橋密度を高め、酸素透過係数をより一層低くする観点から、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂は、剛直な骨格を有することが好ましい。剛直な骨格としては例えば、芳香族骨格が挙げられ、より具体的には例えばナフタレン骨格、アントラセン骨格及びビスフェノールアセトフェノン骨格等が挙げられる。従って、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂は、芳香族骨格を有することが好ましく、ナフタレン骨格、アントラセン骨格又はビスフェノールアセトフェノン骨格を有することが好ましい。
[無機充填材]
上記絶縁材料は、無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。さらに、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、無機充填材の使用により、酸素透過係数をより一層低くすることができる。一方で、無機充填材を単に多量に使用すると、硬化物の密着性がやや低下することがあるが、上記酸素透過係数を調整することにより、金属配線に対する硬化物の密着性の向上と、高温下での抵抗値の上昇の抑制とを両立することができる。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは150nm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理などにより形成される孔の大きさが微細になり、孔の数が多くなる。この結果、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材はそれぞれ、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に絶縁層と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材がそれぞれ球状である場合には、上記無機充填材それぞれのアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
絶縁材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。硬化物100重量%中、上記無機充填材の含有量は好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成されると同時に、この無機充填材量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることも可能である。
[硬化促進剤]
上記絶縁材料は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂フィルムを速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。絶縁材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上、好ましくは3.0重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムが効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、絶縁材料の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[溶剤]
上記絶縁材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、絶縁材料の粘度を好適な範囲に制御でき、絶縁材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記絶縁材料をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記絶縁材料における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記絶縁材料の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂組成物には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない
以下の配合成分を用意した。
(熱硬化性化合物)
エポキシ樹脂1:イソシアヌル酸骨格エポキシ樹脂(日産化学社製「TEPIC−SP」、エポキシ当量100g/eq)
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828EL」、エポキシ当量186g/eq)
エポキシ樹脂3:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ当量276g/eq)
エポキシ樹脂4:DCPD型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD1000」、エポキシ当量152g/eq)
(硬化剤)
ATCN硬化剤:アミノトリアジン変性クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA3018」、水酸基当量151g/eq)
ATN硬化剤:アミノトリアジン変性フェノールノボラック樹脂(DIC社製「LA1356」、水酸基当量146g/eq)
ビフェニルアラルキルフェノール型硬化剤:(明和化成社製「MEHC7851−H」、水酸基当量223g/eq)
シアネート硬化剤:ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、シアネート当量約232g/eq)
活性エステル硬化剤:ナフタレン骨格の活性エステル樹脂(DIC社製「EXB−9416」、エステル当量330g/eq)
(硬化促進剤)
2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2E4MZ」)
4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製)
(無機充填材)
平均粒径0.5μmシリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、表面処理はアミノフェニルシラン処理(信越化学工業社製「KBM573」))
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂(ビスフェノールアセトフェノン骨格フェノキシ樹脂、三菱化学社製「YX6954」)
(溶剤)
シクロヘキサノン
(実施例1〜5及び比較例1〜3)
絶縁材料の作製:
下記の表1に示す配合成分を下記の表1に示す配合量で用いて、以下の手順に従い各々の配合を行った。なお、表1に配合量を記載していないシクロヘキサノンは、樹脂組成物の塗工性を考慮して、適宜の量で用いた。
シリカを溶剤でスラリー化し、エポキシ樹脂を加えて攪拌機を用いて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、硬化剤を加えて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、フェノキシ樹脂及び硬化促進剤を加えて、1200rpmで30分間撹拌し、樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルムの離型処理面に、アプリケーターを用いて、得られたワニスを乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工し、100℃のギアオーブン内で1分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み40μmの樹脂フィルムの未硬化物(Bステージフィルム)を作製した。結果として、PETフィルムとBステージフィルムとの積層フィルムを得た。
得られたBステージフィルムをギアオーブン内で190℃で90分硬化させて、縦200mm×横200mm×厚み40μmの硬化フィルムを作製した。
得られたBステージフィルムを、金属配線を模擬して電解銅箔(三井金属社製、18μm電解銅箔)の表面粗化を行っていないシャイニー面に対向するように未硬化樹脂を貼り合せ、190℃及び90分間の熱処理をすることにより接着強度(密着強度)測定用のサンプルを得た。
電子部品(微細配線基板)の作製:
シリコンウェハー(4インチ)に絶縁フィルムを真空ラミネーターで貼り合せ、190℃で90分間オーブンで硬化させる。硬化した後に、感光性の液状レジストをスピンコートし、マスクを介してUV露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。その上から、銅を蒸着し、その後でレジストのみをリフトオフして、所定の位置に配線幅3μm、配線厚み1μmの銅配線を形成する(図2参照、51は4端子パッド、52は絶縁層、配線幅は3μm)。銅配線には、防錆処理や粗化処理などは行わず、表面は平滑で未処理の配線層とした。その配線層の上に未硬化の絶縁フィルム(20μm)を抵抗値測定パッド(4端子法測定)のみ被覆されないようにして、真空ラミネートした後で190℃及び90分の熱処理により、絶縁層を硬化させて評価基板(微細配線基板)を作製した。
(評価)
(1)酸素透過係数の測定
得られた硬化フィルムをサンプルとして、差圧式ガス・透過率測定装置(GTRテック社製・ヤナコテクニカルサイエンス社製「GTR−30XAD2、G2700T・F」)を用いることにより、差圧法JIS K7126−1に準拠して測定を行った。測定条件は、85℃及び85%RHとし、試験差圧は1atmとした。
(2)接着強度の測定
得られた接着強度測定用のサンプルの樹脂面を、SUS板に両面テープを介して固定した。そのあとで、銅箔面側に1cm幅となるように短冊状に切込みを入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE−3001」)にセットし、つかみ具で切込みの入った銅箔の端部をつまみあげ、銅箔を20mm剥離して接着強度を測定した。
(3)架橋密度の測定
得られた硬化フィルムをサンプルとして、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DMS6100」)を用いて評価を行った。まず、硬化フィルムのガラス転移温度(Tg)(℃)を求めた。また、硬化フィルムについて、そのガラス転移温度よりも50℃高い(Tg+50℃)領域(ゴム状領域)での貯蔵弾性率(E’)から、架橋密度=E’/3RTを用いて、架橋密度を算出した。※R:8.31J/mol・K、T:温度(Tg+50℃)。
(4)高温下での抵抗値の変化の評価
得られた微細配線基板に対して、小型マニュアルプローバー(ハイソル社製、HMP−600)を用いて4端子法により配線抵抗の測定を行った。測定は、180℃及び100時間の熱処理前後で行い、その抵抗変化率を算出した。
(5)高湿下での抵抗値の変化の評価
得られた微細配線基板に対して、小型マニュアルプローバー(ハイソル社製「HMP−600」)を用いて4端子法により配線抵抗の測定を行った。測定は、130℃、85RH%及び100時間の処理前後で行い、その抵抗変化率を算出した。
Figure 0006927717
1…電子部品
11…硬化物
12A,12B…金属配線
13A,13B…電子部品本体

Claims (9)

  1. 熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料であり、
    前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物であり、
    前記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、前記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、
    下記測定方法により測定される金属配線に対する硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上である、絶縁材料。
    金属配線に対する硬化物の前記接着強度の測定方法:シャイニー面を有する電解銅箔を金属配線として用意し、前記金属配線の前記シャイニー面と前記絶縁材料とを貼り合わせて、190℃で90分間の熱処理をすることにより、前記絶縁材料を硬化させて硬化物とし、測定サンプルを得る。90°剥離試験機を用いて、前記測定サンプルの前記金属配線面側に1cm幅となるように短冊状に切込みを入れ、つかみ具で切込みの入った前記金属配線の端部をつまみあげ、前記金属配線を20mm剥離して接着強度を測定する。
  2. 前記絶縁材料を190℃で90分間硬化させて硬化物を得たときに、前記硬化物の粘弾性測定から求められる架橋密度が1.0×10−4mol/cc以上である、請求項1に記載の絶縁材料。
  3. 無機充填材を含む、請求項1又は2に記載の絶縁材料。
  4. 金属配線の表面上に硬化物を形成するために用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁材料。
  5. 前記金属配線が、配線幅5μm以下の金属配線である、請求項4に記載の絶縁材料。
  6. 金属配線と、
    前記金属配線の表面上に接触された硬化物とを備え、
    前記硬化物が、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含む絶縁材料の硬化物であり、
    前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物であり、
    前記硬化物の酸素透過係数が1.3×10−16mol・m/m・s・Pa以下であり、かつ、
    下記測定方法により測定される前記金属配線に対する前記硬化物の接着強度が、0.1kN/m以上である、電子部品。
    前記金属配線に対する前記硬化物の前記接着強度の測定方法:90°剥離試験機を用いて、前記電子部品の前記金属配線面側に1cm幅となるように短冊状に切込みを入れ、つかみ具で切込みの入った前記金属配線の端部をつまみあげ、前記金属配線を20mm剥離して接着強度を測定する。
  7. 前記金属配線が、配線幅5μm以下の金属配線である、請求項6に記載の電子部品。
  8. 前記硬化物の粘弾性測定から求められる架橋密度が1.0×10−4mol/cc以上である、請求項6又は7に記載の電子部品。
  9. 前記絶縁材料が、無機充填材を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の電子部品。
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