以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と導電層とを接着するために用いられる絶縁シートであるか、又は上記熱伝導体もしくは上記導電層上でシート化された後に該熱伝導体と該導電層とを接着するために用いられる絶縁ペーストである。本発明に係る絶縁材料(絶縁ペースト)は、上記熱伝導体上でシート化された後に、シート化された絶縁材料(絶縁シート)に上記導電層を積層して用いられてもよい。本発明に係る絶縁材料(絶縁ペースト)は、上記導電層上でシート化された後に、シート化された絶縁材料(絶縁シート)に上記熱伝導体を積層して用いられてもよい。
本発明に係る絶縁材料は、重量平均分子量が10000以上であるポリマー(A)と、分子量が10000未満であり、かつ環状エーテル基を有する結晶性化合物(B)と、分子量が10000未満であり、かつ熱硬化性官能基を有する非結晶性化合物(C)と、硬化剤(D)と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(E)とを含む。上記ポリマー(A)と上記結晶性化合物(B)と上記非結晶性化合物(C)と上記硬化剤(D)とを含む絶縁材料中の樹脂成分の合計100重量%中、上記結晶性化合物(B)の含有量が40重量%以上である。上記絶縁材料100重量%中、上記フィラー(E)の含有量は80重量%以上である。
本発明に係る絶縁材料における上記組成の採用により、フィラー(E)の含有量が多くても、シート状であるときにハンドリング性及び貯蔵安定性が良好になる。上記絶縁材料がシート状であるときにハンドリング性及び貯蔵安定性が良好であると、該絶縁材料をシート状で硬化させた硬化物層(絶縁層)が均質かつ良好になる。さらに、本発明に係る絶縁材料における上記組成の採用によって、硬化物の熱伝導性をかなり高くし、かつ該硬化物の耐電圧性を高くすることができる。本発明に係る絶縁材料では、上記フィラー(E)の含有量がかなり多いので、硬化物の熱伝導性がかなり高くなる。
本発明に係る絶縁材料における上記組成の採用により、シート状であるときに貯蔵安定
性が良好になり、硬化物の熱伝導性がかなり高くなることは、本発明者らによって見出された。なお、本発明における上記組成を有する絶縁材料は、特開2010−212209号公報に何ら示されておらず、かつ上記組成を有することにより得られる上記効果は、特に絶縁材料がシート状であるときに貯蔵安定性が良好になるという効果は、特開2010−212209号公報に何ら示されていない。シート状であるときに貯蔵安定性が良好であることは、均質かつ良好な硬化物を得るために重要な役割を果たす。
本発明に係る積層構造体は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体と、上記熱伝導体の表面に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記熱伝導体側とは反対の表面に積層された導電層とを備える。上記絶縁層は、絶縁材料をシート状で硬化させることにより形成されている。上記絶縁層は、上記絶縁材料が硬化した硬化物である。上記絶縁層は硬化物層である。上記絶縁層は、絶縁シートを硬化させることにより形成されていてもよい。また、上記熱伝導体もしくは上記導電層上で上記絶縁材料(絶縁ペースト)がシート化された後に、該絶縁材料をシート状で硬化させることにより形成されていてもよい。
本発明に係る積層構造体では、上記絶縁材料が、重量平均分子量が10000以上であるポリマー(A)と、分子量が10000未満であり、かつ環状エーテル基を有する結晶性化合物(B)と、分子量が10000未満であり、かつ熱硬化性官能基を有する非結晶性化合物(C)と、硬化剤(D)と、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(E)とを含む。上記ポリマー(A)と上記結晶性化合物(B)と上記非結晶性化合物(C)と上記硬化剤(D)とを含む上記絶縁材料中の樹脂成分の合計100重量%中、上記結晶性化合物(B)の含有量が40重量%以上である。上記絶縁材料100重量%中、上記フィラー(E)の含有量が80重量%以上である。
本発明に係る積層構造体では、シート状であるときにハンドリング性及び貯蔵安定性が良好である絶縁材料が用いられており、良好な絶縁層を形成できる。さらに、本発明に係る積層構造体における上記構成の採用により、上記絶縁層の熱伝導性をかなり高くし、かつ上記絶縁層の耐電圧性を高くすることができる。本発明に係る積層構造体では、上記絶縁材料中の上記フィラー(E)の含有量がかなり多いので、絶縁層の熱伝導性がかなり高くなる。
以下、先ず、本発明に係る絶縁材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
(ポリマー(A))
上記絶縁材料は、重量平均分子量が10000以上であるポリマー(A)を含む。ポリマー(A)は、芳香族骨格を有することが好ましい。この場合には、硬化物の耐熱性が高くなり、かつ硬化物の吸水率が低くなる。ポリマー(A)が芳香族骨格を有する場合には、ポリマー(A)は、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。硬化物の耐熱性をより一層高くし、かつ硬化物の吸水率をより一層低くする観点からは、ポリマー(A)は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。ポリマー(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。なかでも、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性がより一層高くなる。
ポリマー(A)として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂等が使用可能である。ポリマー(A)は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることが好ましい。ポリマ
ー(A)は硬化性樹脂であることが好ましい。ポリマー(A)は熱可塑性樹脂であることが好ましく、熱硬化性樹脂であることも好ましい。
上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、特に限定されない。上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂、フタレート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ケトン樹脂及びノルボルネン樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、アミノ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂及びアミノアルキド樹脂等が挙げられる。上記アミノ樹脂としては、尿素樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。
硬化物の酸化劣化を抑え、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高め、更に硬化物の吸水率をより一層低くする観点からは、上記ポリマー(A)は、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることがより好ましく、フェノキシ樹脂であることが更に好ましい。特に、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。また、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の弾性率がより一層低くなり、かつ硬化物の耐冷熱サイクル特性がより一層高くなる。なお、ポリマー(A)はエポキシ基などの環状エーテル基を有していなくてもよい。
上記スチレン樹脂として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、及びスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が使用可能である。中でも、スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン重合体が好ましい。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有することが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性が更に一層高くなる。
上記エポキシ樹脂は、上記フェノキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂としては、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタ
ン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリマー(A)の重量平均分子量は10000以上である。ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。ポリマー(A)の重量平均分子量が上記下限以上であると、絶縁材料が熱劣化し難い。ポリマー(A)の重量平均分子量が上記上限以下であると、ポリマー(A)と他の樹脂との相溶性が高くなる。この結果、未硬化状態のシート状の絶縁材料のハンドリング性がより一層良好になり、並びに硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
ポリマー(A)は、原材料として添加されていてもよく、また本発明の絶縁材料又は絶縁シートの作製時における攪拌、塗工及び乾燥などの各工程中における反応を利用して生成されたポリマーであってもよい。
絶縁材料及び絶縁シートに含まれている全樹脂成分(以下、全樹脂成分Xと略記することがある)の合計100重量%中、ポリマー(A)の含有量は好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下である。ポリマー(A)の含有量が上記下限以上であると、未硬化状態のシート状の絶縁材料のハンドリング性及び貯蔵安定性がより一層良好になる。ポリマー(A)の含有量が上記上限以下であると、フィラー(E)の分散が容易になる。上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、ポリマー(A)の含有量はより好ましくは15重量%以上であり、39重量%以下であってもよく、35重量%未満であってもよい。ポリマー(A)の含有量が上記下限以上であると、シート状で未硬化状態での絶縁材料のハンドリング性及び貯蔵安定性がより一層良好になる。ポリマー(A)の含有量が上記上限以下であると、フィラー(E)の分散が容易になる。なお、全樹脂成分Xとは、結晶性化合物(B)、非結晶性化合物(C)、硬化剤(D)及び必要に応じて添加される他の樹脂成分の総和をいう。全樹脂成分Xに、フィラー(E)は含まれない。
(結晶性化合物(B))
上記絶縁材料は、分子量が10000未満であり、かつ環状エーテル基を有する結晶性の結晶性化合物(B)を含む。結晶性化合物(B)は硬化性化合物であることが好ましい。ポリマー(A)と非結晶性化合物(C)と硬化剤(D)とフィラー(E)とともに、結晶性化合物(B)が用いられることにより、硬化物の熱伝導性及び耐熱性が充分に高くなる。上記結晶性化合物(B)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
「結晶性」を有する結晶性化合物とは、示差走査熱量計(DSC)での測定により結晶融点を示す化合物をいう。
上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。結晶性化合物(B)は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。
硬化物の耐熱性及び耐電圧性をより一層高める観点からは、硬化性化合物(B)は芳香族骨格を有することが好ましい。上記結晶性化合物(B)は、分子量が600以下であり、かつ環状エーテル基及び芳香族骨格を有する結晶性化合物であることが好ましい。
結晶性化合物(B)は、エポキシ基を有する結晶性のエポキシ化合物(B1)を含んでいてもよく、オキセタニル基を有する結晶性のオキセタン化合物(B2)を含んでいてもよい。
上記結晶性のエポキシ化合物(B1)の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、ジ−t−ブチルハイドロキノン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー又はトリアジン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
上記結晶性のエポキシ化合物(B1)の市販品としては、850CRP、830LVP、835LV及びHP−4032D(以上、いずれもDIC社製)、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR、YSLV−120TE、YSLV−50TE、YSLV−80DE、GK−8001及びZX−1598(以上いずれも新日鐵化学社製)、YX−4000、YX−4000K、YX−4000H、YX−4000HK、YL−6677、YL−6810、YL−6922及びYL−7172(以上いずれも三菱化学社製)、オグゾールPG(大阪ガスケミカル社製)、並びにTEPIC−G、TEPIC−P、TEPIC−S及びTEPIC−SP(日産化学工業社製)等が挙げられる。中でも、溶融後の再結晶性が低いために良好なハンドリング性を容易に維持できるので、ビフェニル型のYX−4000シリーズ及びナフタレン型のHP−4032Dが好ましい。結晶性のエポキシ化合物(B1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記結晶性のオキセタン化合物(B2)の具体例としては、例えば、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル等が挙げられる。結晶性のオキセタン化合物(B2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
結晶性化合物(B)の分子量は1万未満である。結晶性化合物(B)の分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは1200以下、更に好ましくは600以下、特に好ましくは550以下である。結晶性化合物(B)の分子量が上記下限以上であると、結晶性化合物(B)の揮発性が低くなり、シート状の絶縁材料のハンドリング性及び貯蔵安定性がより一層高くなる。結晶性化合物(B)の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。さらに、硬化物が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
なお、本明細書において、結晶性化合物(B)における分子量とは、重合体ではない場合、及び構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、結晶性化合物(B)の含有量は40重量%以上である。結晶性化合物(B)の含有量が40重量%以上であることは、シート状の絶縁材料の熱伝導性及び耐水性の向上に大きく寄与する。上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、結晶性化合物(B)の含有量は50重量%以上であってもよく、60重量%を超えていてもよく、64重量%を超えていてもよく、65重量%以上であってもよい。上記結晶性化合物(B)の含有量は好ましくは89.5重量%以下、より好ましくは89重量%以下、更に好ましくは84.5重量%以下、特に好ましくは80重量%以下、最も好ましくは78重量%以下である。
(非結晶性化合物(C))
上記絶縁材料は、分子量が10000未満であり、かつ熱硬化性官能基を有する非結晶性の非結晶性化合物(C)を含む。非結晶性化合物(C)は、熱硬化性官能基を有するので、熱硬化性を有する。ポリマー(A)と結晶性化合物(B)と硬化剤(D)とフィラー
(E)とともに、非結晶性化合物(C)が用いられることにより、絶縁材料のハンドリング性がより一層良好になる。上記非結晶性化合物(C)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
「非結晶性」を有する非結晶性化合物とは、示差走査熱量計(DSC)での測定により結晶融点を示さない化合物をいう。
上記熱硬化性官能基は特に限定されない。上記熱硬化性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基及びオキサゾリン基等が挙げられる。これらの熱硬化性官能基は、加熱により速やかに非結晶性化合物(C)の硬化を進行させる。上記非結晶性化合物は、上記熱硬化性化合物を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
上記熱硬化性官能基は、環状エーテル基、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基であることが好ましい。上記熱硬化性官能基は、環状エーテル基であることが好ましく、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基であることも好ましい。上記熱硬化性官能基は、水酸基であることが好ましく、アミノ基であることが好ましく、カルボキシル基であることも好ましい。また、上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。非結晶性化合物(C)は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。
上記熱硬化性官能基が水酸基である化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びビスフェノールA型エポキシアクリレートなどが挙げられる。このような化合物の市販品としては、共栄社化学社製「ライトエステルHO」(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、「ライトエステルHOP」(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、「ライトエステルHOA」(2−ヒドロキシエチルアタクリレート)などが挙げられる。
上記熱硬化性官能基がカルボキシル基である化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ダイマー、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、並びにノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させ、更に多塩基酸を付加させた化合物等が挙げられる。このような化合物の市販品としては、共栄社化学社製「ライトエステルHO−MS」(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)、「ライトエステルHO−HH」(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロコハク酸)、東亞合成化学社製「アロニックスM−5400」(アクリロイルオキシエチルモノフタレート)、並びに日本化薬社製「CCR−1159」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させ、更に多塩基酸を付加させた化合物)などが挙げられる。
上記熱硬化性官能基がイソシアネート基である化合物としては、2−メタクリロイロオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。このような化合物の市販品としては、例えば、昭和電工社製「MOI」などが挙げられる。
熱硬化性官能基がアミノ基である化合物としては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、及びN,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレート
等が挙げられる。
熱硬性官能基がメルカプト基である化合物としては、エチルチオアクリレート、エチルチオメタクリレート、ビフェニルチオアクリレート、ビフェニルチオメタクリレート、ニトロフェニルチオアクリレート、ニトロフェニルチオメタクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、トリフェニルメチルチオメタクリレート、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンのトリスアクリレート、2−プロペン酸の2−(メルカプトメチル)−メチルエステル、及びメタクリル酸の2−[(2−メルカプトエチル)チオ]エチルエステル等が挙げられる。
上記熱硬化性官能基がメトキシメチル基である化合物としては、メトキシメチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、ジメトキシメチルアクリレート及びジメトキシメチルメタクリレート等が挙げられる。このような化合物の市販品としては、三和ケミカル社製「ニカラックMX−302」(アクリル変性アルキル化メラミン)などが挙げられる。
上記熱硬化性官能基がメトキシエチル基である化合物としては、1−メトキシエチルアクリレート、1−メトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、1,1−メトキシエチルアクリレート及び1,1−メトキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
上記熱硬化性官能基がエトキシエチル基である化合物としては、1−エトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート及び2−エトキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
上記熱硬化性官能基がエトキシメチル基である化合物としては、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、エトキシメチルアクリレート及びエトキシメチルメタクリレート等が挙げられる。
上記熱硬化性官能基がオキサゾリン基である化合物としては、2−プロペン酸の2−メチル−2−{[3−(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾイル)ベンゾイル]アミノ}エチルエステル、2−プロペン酸の2−メチル−2−(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾイル)エチルエステル、及び2−プロペン酸の3−(4,5−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2−オキサゾイル)プロピルエステル等が挙げられる。
上記非結晶性化合物(C)は、エポキシ基を有するエポキシ化合物(C1)を含んでいてもよく、オキセタニル基を有するオキセタン化合物(C2)を含んでいてもよい。
エポキシ基を有するエポキシ化合物(C1)の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。エポキシ化合物(C1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキ
シモノマー等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
オキセタニル基を有するオキセタン化合物(C2)の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。オキセタン化合物(C2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、上記非結晶性化合物(C)は、環状エーテル基を2つ以上有することが好ましい。
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、上記非結晶性化合物(C)の全体100重量%中、環状エーテル基を2つ以上有する非結晶性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、100重量%以下である。上記非結晶性化合物(C)の合計100重量%中、環状エーテル基を2つ以上有する非結晶性化合物の含有量は10重量%以上、100重量%以下であってもよい。また、非結晶性化合物(C)の全体が、環状エーテル基を2つ以上有する硬化性化合物であってもよい。
硬化物の耐熱性及び耐電圧性をより高める観点からは、上記非結晶性化合物(C)は芳香族骨格を有することが好ましい。
上記非結晶性化合物(C)は、環状エーテル基及び芳香族骨格を有する非結晶性化合物であるか、又は水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する非結晶性化合物であることが好ましい。絶縁材料の放熱性をより一層良好にする観点からは、上記非結晶性化合物(C)は、環状エーテル基及び芳香族骨格を有する非結晶性化合物であることが好ましい。絶縁材料の相溶性をより一層良好にする観点からは、上記非結晶性化合物(C)は、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する非結晶性化合物であることが好ましい。
上記非結晶性化合物(C)は、分子量が600以下であり、かつ環状エーテル基及び芳香族骨格を有する非結晶性化合物であるか、又は分子量が600以下であり、かつ水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する非結晶性化合物であることが好ましい。上記非結晶性化合物(C)は、分子量が600以下であり、かつ環状エーテル基及び芳香族骨格を有する非結晶性化合物であることが好ましく、分子量が600以下であり、かつ水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する非結晶性化合物であることも好ましい。
非結晶性化合物(C)の分子量は1万未満である。非結晶性化合物(C)の分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは1200以下、更に好ましくは600以下、特に好ましくは550以下である。非結晶性化合物(C)の分子量が上記下限以上であると、非結晶性化合物(C)の揮発性が低くなり、シート状の絶縁材料のハンドリング性及び貯蔵安定性がより一層高くなる。非結晶性化合物(C)の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。さらに、硬化物が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
なお、本明細書において、非結晶性化合物(C)における分子量とは、重合体ではない場合、及び構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、非結晶性化合物(C)の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。非結晶性化合物(C)の含有量が上記下限以上であると、絶縁材料のハンドリング性がより一層良好になる。非結晶性化合物(C)の含有量が上記上限以下であると、絶縁材料の放熱性がより一層良好になる。
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、非結晶性化合物(C)の含有量は3重量%以上であることが好ましい。上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、上記ポリマー(A)の含有量が10重量%以上、50重量%以下であり、かつ上記非結晶性化合物(C)の含有量が3重量%以上であることが特に好ましい。この場合には、絶縁材料のハンドリング性と、硬化物の放熱性との双方をバランスよく高めることができる。
(硬化剤(D))
上記絶縁材料は硬化剤(D)を含む。硬化剤(D)は、絶縁材料を硬化させることが可能であれば特に限定されない。硬化剤(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、硬化剤(D)は、芳香族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましい。硬化剤(D)は、アミン硬化剤(アミン化合物)、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤(フェノール化合物)又は酸無水物硬化剤(酸無水物)を含むことが好ましく、アミン硬化剤を含むことがより好ましい。上記酸無水物硬化剤は、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むか、又は、脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むことが好ましい。
硬化剤(D)は塩基性の硬化剤を含むか、メラミン骨格もしくはトリアジン骨格を有するフェノール樹脂を含むか、又はアリル基を有するフェノール樹脂を含むことが好ましい。さらに、フィラー(E)の分散性を良好にし、更に硬化物の絶縁破壊電特性及び熱伝導性をより一層高める観点からは、硬化剤(D)は塩基性の硬化剤を含むことが好ましい。また、フィラー(E)の分散性をより一層良好にし、更に硬化物の絶縁破壊電特性及び熱伝導性をより一層高める観点からは、硬化剤(D)は、アミン硬化剤を含むことがより好ましく、ジシアンジアミドを含むことが特に好ましい。また、硬化剤(D)は、ジシアンジアミドとイミダゾール硬化剤との双方を含むことも好ましい。これらの好ましい硬化剤の使用により、フィラー(E)の絶縁材料中での分散性が高くなり、更に耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた硬化物が得られる。この結果、フィラー(E)の含有量が少なくても、熱伝導性がかなり高くなる。特にジシアンジアミドを用いた場合には、硬化物と熱伝導体及び導電層との接着性がかなり高くなる。
なお、上記硬化剤(D)が塩基性を有するか否かは、硬化剤1gをアセトン5gと純水5gとを含む液10g中に入れ、80℃で1時間撹拌しながら加熱し、次に加熱後の液中の不溶成分をろ過によって除去して抽出液を得たときに、該抽出液のpHが塩基性(7を超える)であることにより判断される。
上記アミン硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。硬化物と熱伝導体及び導電層との接着性をより一層高める観点からは、上記アミン硬化剤は、ジシアンジアミド又はイミダゾール硬化剤であることがより一層好ましい。絶縁材料の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、上記硬化剤(D)は、融点が180℃以上である硬化剤を含むことが好ましく、融点が180℃以上であるアミン硬化剤を含むことがより好ましい。
上記イミダゾール硬化剤としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)
]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記フェノール硬化剤としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。硬化物の柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール硬化剤の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びMEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(三菱化学社製)、LA−7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(以上いずれも群栄化学社製)等が挙げられる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA−10、リカシッドMTA−15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG−100、リカシッドTMEG−200、リカシッドTMEG−300、リカシッドTMEG−500、リカシッドTMEG−S、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMT−500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、並びに硬化物の耐湿性及び接着性がより一層高くなる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
硬化剤(D)は、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸であることも好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性が高くなる。
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、硬化剤(D)の含有量は好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは30重量%未満、より好ましくは29.5重量%以下、更に好ましくは29重量%以下である。硬化剤(D)の含有量が上記下限以上であると、絶縁材料を充分に硬化させることが容易である。硬化剤(D)の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な硬化剤(D)が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
(フィラー(E))
上記絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上であるフィラー(E)を含む。フィラー(E)の使用により、硬化物の熱伝導性がかなり高くなる。上記フィラー(E)は、熱伝導率が10W/m・K以上であれば特に限定されない。フィラー(E)は無機フィラーであることが好ましい。フィラー(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の熱伝導性をより一層高める観点からは、フィラー(E)の熱伝導率は好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。フィラー(E)の熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度であるフィラーは広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度であるフィラーは容易に入手できる。
フィラー(E)は、アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましく、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、硬化物の熱伝導性がより一層高くなる。
フィラー(E)は、球状アルミナ、破砕アルミナ及び球状窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、球状アルミナ又は球状窒化アルミニウムであることが更に好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、硬化物の熱伝導性がより一層高くなる。
フィラー(E)の新モース硬度は、好ましくは12以下、より好ましくは9以下である。フィラー(E)の新モース硬度が9以下であると、硬化物の加工性がより一層高くなる。
硬化物の加工性をより一層高める観点からは、フィラー(E)は、合成マグネサイト、結晶シリカ、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらのフィラーの新モース硬度は9以下である。
フィラー(E)は、球状のフィラー(球状フィラー)を含んでいてもよく、破砕されたフィラー(破砕フィラー)を含んでいてもよく、板状のフィラー(板状フィラー)を含んでいてもよい。フィラー(E)は、球状フィラーを含むことが特に好ましい。球状フィラーは高密度で充填可能であるため、球状フィラーの使用により硬化物の熱伝導性がより一層高くなる。
上記破砕フィラーとしては、破砕アルミナ等が挙げられる。破砕フィラーは、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー又はボールミル等を用いて、塊状の無機物質を破砕することにより得られる。破砕フィラーの使用により、硬化物中のフィラーが、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。従って、硬化物の熱伝導性がより一層高くなる。また、破砕フィラーは、一般的に、通常のフィラーに比べて安価である。このため、破砕フィラーの使用により、絶縁材料のコストが低くなる。
上記破砕フィラーの平均粒子径は、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、好ましくは1μm以上である。破砕フィラーの平均粒子径が上記上限以下であると、絶縁材料中に、破砕フィラーを高密度に分散させることが可能であり、硬化物の耐電圧性がより一層高くなる。破砕フィラーの平均粒子径が上記下限以上であると、破砕フィラーを高密度に充填させることが容易になる。
破砕フィラーのアスペクト比は特に限定されない。破砕フィラーのアスペクト比は、好ましくは1.5以上、好ましくは20以下である。アスペクト比が1.5未満のフィラーは、比較的高価であり、絶縁材料のコストが高くなる。上記アスペクト比が20以下であると、破砕フィラーの充填が容易である。
上記破砕フィラーのアスペクト比は、例えば、デジタル画像解析方式粒度分布測定装置(日本ルフト社製「FPA」)を用いて、フィラーの破砕面を測定することにより求めることが可能である。
フィラー(E)の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、好ましくは40μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、フィラー(E)を高密度で容易に充填できる。平均粒子径が上記上限以下であると、硬化物の耐電圧性がより一層高くなる。
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
上記絶縁材料100重量%中、フィラー(E)の含有量は80重量%以上である。上記絶縁材料はフィラー(E)をかなり多く含むので、硬化物の熱伝導性がかなり高くなる。一方で、上記絶縁材料が上述した組成を有することで、フィラー(E)の含有量が多くても、シート状の絶縁材料のハンドリング性及び貯蔵安定性が良好になり、更に硬化物の耐電圧性も高くなる。上記絶縁材料100重量%中、フィラー(E)は85重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよい。
(カップリング剤(F))
本発明に係る絶縁材料は、カップリング剤(F)を含むことが好ましく、シラン系、チタン系、アルミニウム系又はジルコン系のカップリング剤を含むことが好ましく、チタン系又はジルコン系のカップリング剤を含むことが好ましく、更にチタン系のカップリング剤を含むことが好ましい。チタン系又はジルコン系のカップリング剤の使用により、硬化物の耐水性及び耐湿性、並びに絶縁材料の硬化物の接着対象物に対する接着性がかなり高くなり、特に銅により形成された導電層に対する接着性がかなり高くなる。さらに、チタン系又はジルコン系のカップリング剤の使用により、硬化物の耐熱性も高くなる。また、
チタン系又はジルコン系のカップリング剤の使用により、フィラー(E)の凝集が抑えられ、かつ硬化物の熱伝導性及び耐電圧性がより一層高くなる。カップリング剤(F)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記カップリング剤(F)がシラン系のカップリング剤である場合には、上記カップリング剤(F)は、炭素数4〜10のアルキル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。このカップリング剤の使用により、フィラー(E)の凝集が抑えられ、かつ硬化物の熱伝導性及び耐電圧性がより一層高くなる。
上記炭素数4〜10のアルキル基は、直鎖であってもよく、分岐構造を有していてもよい。該炭素数4〜10のアルキル基としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。シラン系のカップリング剤における上記炭素数4〜10のアルキル基は、アルキル基の直鎖部分の炭素数が4〜10であることが好ましい。例えば、2−エチルヘキシル基の炭素数は8であり、直鎖部分の炭素数は6である。シラン系のカップリング剤は、炭素数4〜10の直鎖アルキル基を有することが好ましい。
硬化物の耐水性及び耐湿性をより一層高める観点からは、シラン系のカップリング剤は、好ましくは炭素数5以上のアルキル基を有し、より好ましくは炭素数6以上のアルキル基を有し、好ましくは炭素数10以下のアルキル基を有し、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基を有する。硬化物の耐水性及び耐湿性をより一層高める観点からは、シラン系のカップリング剤は、炭素数6〜10の直鎖アルキル基を有することが好ましい。
上記シラン系のカップリング剤の具体例としては、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、イソペンチルトリメトキシシラン、ネオペンチルトリメトキシシラン、t−ペンチルトリメトキシシラン、イソへキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘプチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、イソペンチルトリエトキシシラン、ネオペンチルトリエトキシシラン、t−ペンチルトリエトキシシラン、イソへキシルトリエトキシシラン及び2−エチルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。これら以外の炭素数4〜10のアルキル基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。シラン系のカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
カップリング剤(F)は、チタン系のカップリング剤であってもよく、ジルコン系のカップリング剤であってもよい。硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、カップリング剤(F)は、チタン系のカップリング剤であることが好ましい。
上記チタン系のカップリング剤は、チタン原子を含む。チタン系のカップリング剤としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン及びテトラブトキシチタン等が挙げられる。チタン系のカップリング剤の市販品としては、プレンアクトTTS、プレンアクト55、プレンアクト46B、プレンアクト338X、プレンアクト238S、プレンアクト38S、プレンアクト13
8S、プレンアクト41B、プレンアクト9SA及びプレンアクトKR44(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。これら以外のチタン系のカップリング剤を用いてもよい。チタン系のカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐水性及び耐湿性、並びに絶縁材料の硬化物の接着対象物に対する接着性をさらに一層高める観点からは、カップリング剤は、リン原子を含むことが好ましく、下記式(20)で表される構造単位を有することがより好ましく、下記式(21)〜(23)の内のいずれかで表されるチタン系のカップリング剤であることが更に好ましい。
上記式(21)中、n及びmはそれぞれ1〜3の整数を示し、nとmとの合計は4である。
上記ジルコン系のカップリング剤は、ジルコン原子を含む。ジルコン系のカップリング剤の市販品としては、NZ01、NZ09、NZ12、NZ33、NZ37、NZ38、NZ39、NZ44、NZ66A、NZ97、NZ38J、KZTPP及びKZ55(いずれもケンリッチ・ペトロケミカル社製)等が挙げられる。これら以外のジルコン系のカップリング剤を用いてもよい。ジルコン系のカップリング剤は、1種のみが用いられても
よく、2種以上が併用されてもよい。
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、カップリング剤(F)の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。カップリング剤(F)の含有量が上記下限以上であると、硬化物の耐熱性と耐湿性とがより一層高くなる。カップリング剤(F)の含有量が上記上限以下であると、絶縁材料の硬化物の耐熱性、及びシート状の絶縁材料のハンドリング性がより一層高くなる。さらに、カップリング剤(F)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、フィラー(E)の凝集がより一層抑えられ、かつ硬化物の熱伝導性及び耐電圧性がより一層高くなる。上記全樹脂成分Xには、カップリング剤(F)が含まれる。
(分散剤(G))
上記絶縁材料は、分散剤(G)を含むことが好ましい。該分散剤(G)の使用により、硬化物の熱伝導性及び耐電圧性がより一層高くなる。
上記分散剤(G)は、水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することが好ましい。上記分散剤が水素結合性を有する水素原子を含む官能基を有することで、硬化物の熱伝導率及び耐電圧性がより一層高くなる。上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基としては、例えば、カルボキシル基(pKa=4)、リン酸基(pKa=7)、及びフェノール基(pKa=10)等が挙げられる。
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基のpKaは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。上記官能基のpKaが上記下限以上であると、上記分散剤(G)の酸性度が高くなりすぎない。従って、シート状の絶縁材料の貯蔵安定性がより一層高くなる。上記官能基のpKaが上記上限以下であると、上記分散剤(G)の機能が充分に発揮され、硬化物の熱伝導性及び耐電圧性がより一層高くなる。
上記水素結合性を有する水素原子を含む官能基は、カルボキシル基又はリン酸基であることが好ましい。この場合には、硬化物の熱伝導性及び耐電圧性が更に一層高くなる。
上記分散剤(G)としては、具体的には、例えば、ポリエステル系カルボン酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリアクリル系カルボン酸、脂肪族系カルボン酸、ポリシロキサン系カルボン酸、ポリエステル系リン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリアクリル系リン酸、脂肪族系リン酸、ポリシロキサン系リン酸、ポリエステル系フェノール、ポリエーテル系フェノール、ポリアクリル系フェノール、脂肪族系フェノール、及びポリシロキサン系フェノール等が挙げられる。上記分散剤(G)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記全樹脂成分Xの合計100重量%中、上記分散剤(G)の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記分散剤(G)の含有量が上記下限以上及び上限以下であると、フィラー(E)の凝集が抑えられ、かつ硬化物の熱伝導性及び耐電圧性がより一層高くなる。
(他の成分)
上記絶縁材料は、ゴム粒子を含んでいてもよい。該ゴム粒子の使用により、絶縁材料の応力緩和性及び柔軟性が高くなる。
ハンドリング性をより一層高めるために、上記絶縁シートは、ガラスクロス、ガラス不織布、アラミド不織布等の基材物質を含んでいてもよい。ただし、上記基材物質を含まなくても、上記組成を有するシート状の絶縁材料(絶縁シート)は室温(23℃)において自立性を有し、かつ優れたハンドリング性を有する。よって、絶縁シートは基材物質を含まないことが好ましく、特にガラスクロスを含まないことが好ましい。上記絶縁材料はプリプレグではないことが好ましい。絶縁シートが上記基材物質を含まない場合には、絶縁シートの厚みを薄くすることができ、かつ硬化物の熱伝導性をより一層高めることができる。さらに、絶縁シートが上記基材物質を含まない場合には、必要に応じて絶縁シートにレーザー加工又はドリル穴開け加工等の各種加工を容易に行うこともできる。なお、自立性とは、PETフィルム又は銅箔といった支持体が存在しなくても、シートの形状を保持し、シートとして取り扱うことができることをいう。
さらに、上記絶縁材料は、必要に応じて、粘着性付与剤、可塑剤、チキソ性付与剤、難燃剤、光増感剤及び着色剤などを含んでいてもよい。
(絶縁材料の他の詳細)
上記絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を導電層に接着するために用いられる。
上記絶縁シートの製造方法は特に限定されない。絶縁シートは、例えば、上述した材料を混合した混合物を溶剤キャスト法又は押し出し成膜法等の方法でシート状に成形することにより得ることができる。シート状に成形する際に、脱泡することが好ましい。
絶縁シートの厚みは特に限定されない。また、絶縁材料をシート化したときのシート状の絶縁材料の厚みは特に限定されない。絶縁シート及びシート状の絶縁材料の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは120μm以下である。厚みが上記下限以上であると、硬化物の絶縁性が高くなる。厚みが上記上限以下であると、金属体を導電層に接着したときに放熱性が高くなる。
未硬化状態での絶縁材料のガラス転移温度Tgは、25℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が25℃以下であると、絶縁材料が室温において固く、かつ脆くなり難い。このため、シート状の絶縁材料のハンドリング性が高くなる。
絶縁材料の硬化物の熱伝導率は、好ましくは3.5W/m・K以上、より好ましくは4.0W/m・K以上、更に好ましくは4.5W/m・K以上である。熱伝導率が高いほど、硬化物の熱伝導性が十分に高くなる。
絶縁材料の硬化物の絶縁破壊電圧は、好ましくは40kV/mm以上、より好ましくは60kV/mm以上、更に好ましくは80kV/mm以上、特に好ましくは100kV/mm以上である。絶縁破壊電圧が高いほど、絶縁材料が例えば電力素子用のような大電流用途に用いられた場合に、絶縁性を十分に確保できる。
未硬化状態のシート状の絶縁材料の25℃での曲げ弾性率は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは500MPa以下である。上記曲げ弾性率が上記下限以上であると、未硬化状態のシート状の絶縁材料の室温での自立性が良好になり、未硬化状態のシート状の絶縁材料のハンドリング性が高くなる。上記曲げ弾性率が上記上限以下であると、加熱接着時に弾性率が充分に高くなり、硬化物が接着対象物に充分に密着し、かつ硬化物と接着対象物との接着性が高くなる。
上記曲げ弾性率は、例えば、万能試験機(オリエンテック社製「RTC−1310A」)を用いて、長さ8cm、幅1cm及び厚み4mmの試験片を用いて、JIS K 7111に準拠し、支点間距離6cm及び速度1.5mm/分の各条件で測定できる。
回転型動的粘弾性測定装置を用いて測定された25℃での未硬化状態のシート状の絶縁材料のtanδが好ましくは0.1以上、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下である。
上記tanδが上記下限以上であると、未硬化状態のシート状の絶縁材料の柔軟性が高くなり、未硬化状態のシート状の絶縁材料が破損しにくくなる。上記tanδが上記下限以上であると、未硬化状態のシート状の絶縁材料が柔らかすぎるため、未硬化状態のシート状の絶縁材料のハンドリング性が高くなる。
上記25℃での未硬化状態のシート状の絶縁材料のtanδは、回転型動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR−100」)を用いて、直径2cmの円板状の未硬化状態の絶縁シートを用いて、直径2cmのパラレル型プレートにより、25℃にて、オシレーション歪み制御モード、開始応力10Pa、周波数1Hz及び歪み1%の各条件で測定できる。
上記曲げ弾性率及び上記tanδが特定の上記範囲内にある場合には、製造時及び使用時に、未硬化状態のシート状の絶縁材料のハンドリング性が顕著に高くなる。さらに、絶縁材料を用いて、熱伝導体を導電層に接着したときに、接着強度が顕著に高くなる。また、上記熱伝導体の接着面が凹凸を有する場合に、絶縁材料の該凹凸に対する追従性が高くなる。このため、接着界面に空隙が形成され難くなり、従って熱伝導性が効果的に高くなる。
(積層構造体の他の詳細)
本発明に係る絶縁材料は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体の少なくとも片面に、絶縁層を介して導電層が積層されている積層構造体の絶縁層を構成するために好適に用いられる。
図1に、本発明の一実施形態に係る絶縁材料を用いた積層構造体の一例を示す。
図1に示す積層構造体1は、熱伝導体2と、熱伝導体2の第1の表面2aに積層された絶縁層3と、絶縁層3の熱伝導体2が積層された表面とは反対側の表面に積層された導電層4とを備える。熱伝導体2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2bには、絶縁層及び導電層は積層されていない。絶縁層3は、本発明に係る絶縁材料を硬化させることにより形成されている。熱伝導体2の熱伝導率は10W/m・K以上である。
熱伝導体の少なくとも一方の面に、絶縁層と導電層とがこの順に積層されていればよく、熱伝導体の他方の面にも、絶縁層と導電層とがこの順に積層されていてもよい。
積層構造体1では、絶縁層3が高い熱伝導率を有するので、導電層4側からの熱が絶縁層3を介して熱伝導体2に伝わりやすい。積層構造体1では、熱伝導体2によって熱を効率的に放散させることができる。
例えば、両面に銅回路が設けられた積層板又は多層配線板、銅箔、銅板、半導体素子又は半導体パッケージ等の各導電層に、絶縁材料を介して金属体を接着した後、絶縁材料を硬化させることにより、積層構造体1を得ることができる。
上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体は特に限定されない。上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体としては、例えば、アルミニウム、銅、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及びグラファイトシート等が挙げられる。中でも、上記熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体は、銅又はアルミニウムであることが好ましい。銅又はアルミニウムは、放熱性に優れている。
本発明に係る絶縁材料は、基板上に半導体素子が実装されている半導体装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を接着するために好適に用いられる。
本発明に係る絶縁材料は、半導体素子以外の電子部品素子が基板上に搭載されている電子部品装置の導電層に、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導体を接着するためにも好適に用いられる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
[ポリマー(A)]
(1)ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱化学社製「E1256」、Mw=51000、Tg=98℃)
(2)高耐熱フェノキシ樹脂(新日鐵化学社製「FX−293」、Mw=43700、Tg=163℃)
(3)エポキシ基含有スチレン樹脂(日油社製「マープルーフG−1010S」、Mw=100000、Tg=93℃)
(4)ポリスチレン(東洋スチレン製「HRM26」、Mw=30万)
[ポリマー(A)以外の他のポリマー]
(1)エポキシ基含有アクリル樹脂(日油社製「マープルーフG−0130S」、Mw=9000、Tg=69℃)
[結晶性化合物(B)]
(1)結晶性ビフェニル骨格エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX−4000」、Mw=350)
(2)結晶性ナフタレン骨格エポキシ樹脂(DIC社製「HP−4032D」、Mw=304)
(3)結晶性ビスフェノールS骨格含有エポキシ樹脂(新日鐵化学社製「YSLV−120TE」、Mw=434)
(4)結晶性ベンゼン骨格含有オキセタン樹脂(宇部興産社製「エタナコールOXTP」、Mw=362.4)
[非結晶性化合物(C)]
(1)ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート828US」、Mw=370)
(2)ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「806」、Mw=360)
[硬化剤(D)]
(1)ジシアンジアミド
(2)トリアジン骨格系フェノール樹脂(DIC社製「フェノライトKA−7052−
L2」)
(3)メラミン骨格系フェノール樹脂(群栄化学工業社製「PS−6492」)
(4)アリル基含有骨格フェノール樹脂(三菱化学社製「YLH−903」)
(5)イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(四国化成社製「2MZA−PW」)
[フィラー(E)]
(1)球状アルミナ(デンカ社製「DAM−10」、平均粒子径10μm、最大粒子径30μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12)
(2)破砕アルミナ(破砕フィラー、日本軽金属社製「LS−242C」、平均粒子径2μm、最大粒子径20μm、熱伝導率36W/m・K、新モース硬度12)
(3)板状窒化ホウ素(昭和電工社製「UHP−1」、平均長径8μm、熱伝導率60W/m・K、アスペクト比30〜50)
(4)窒化アルミニウム(東洋アルミニウム社製「TOYALNITE―FLX」、平均粒子径14μm、最大粒子径30μm、熱伝導率200W/m・K、新モース硬度11)
(5)結晶性シリカ(龍森社製「クリスタライトCMC−12」、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、熱伝導率10W/m・K、新モース硬度9)
(6)酸化亜鉛(堺化学工業社製「LPZINC−5」、平均粒子径5μm、最大粒子径20μm、熱伝導率54W/m・K、新モース硬度5)
(7)酸化マグネシウム(堺化学工業社製「SMO Large Particle」、平均粒子径1.1μm、最大粒子径7μm、熱伝導率35W/m・K、新モース硬度6)
(8)窒化ケイ素(デンカ社製「SN−7」、平均粒径44μm、最大粒子径100μm、熱伝導率23W/m・K、新モース硬度13)
(9)合成マグネサイト(神島化学社製「MSL」、平均粒子径6μm、最大粒子径20μm、熱伝導率15W/m・K、新モース硬度3.5)
[カップリング剤(F)]
(1)ヘキシルシランカップリング剤(炭素数6のn−ヘキシル基を有する、東京化成工業社製「ヘキシルトリメトキシシラン」)
(2)エポキシシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBE403」)
(3)チタン系カップリング剤(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト138S」)
(4)アルミニウム系カップリング剤(味の素ファインテクノ社製「プレンアクトAL−M」)
(5)ジルコン系カップリング剤(ケンリッチペトロケミカル社製「NZ38」)
(6)フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業社製「KBE103」)
[分散剤(G)]
(1)アクリル系分散剤(ビックケミージャパン社製「Disperbyk−2070」、pKaが4のカルボキシル基を有する)
(2)ポリエーテル系分散剤(楠本化成社製「ED151」、pKaが7のリン酸基を有する)
[溶剤]
(1)メチルエチルケトン
(実施例1〜32及び比較例1,3〜6)
ホモディスパー型撹拌機を用いて、下記の表1〜4に示す割合(配合単位は重量部)で各成分を配合し、混練し、絶縁材料を調製した。
厚み50μmの離型PETシートに、上記絶縁材料を100μmの厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート上に絶縁シートを作製した。
(評価)
(1)ハンドリング性
PETシートと、該PETシート上に形成された作製直後の絶縁シートとを有する積層シートを460mm×610mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを用いて、室温(23℃)でPETシートから熱硬化前の絶縁シートを剥離したときのハンドリング性を下記の基準で評価した。
[ハンドリング性の判定基準]
〇:絶縁シートの変形がなく、容易に剥離可能
△:絶縁シートを剥離できるものの、シート伸び又は破断が発生する
×:絶縁シートを剥離できない
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製「DSC220C」)を用いて、3℃/分の昇温速度で、作製直後の未硬化状態の絶縁シートのガラス転移温度を測定した。
(3)熱伝導率
熱伝導率計(京都電子工業社製「迅速熱伝導率計QTM−500」)を用いて、作製直後の絶縁シートの熱伝導率を測定した。
(4)半田耐熱試験(耐熱性)
厚み1.5mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に作製直後の絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。この銅張り積層板を50mm×60mmの大きさに切り出し、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを288℃の半田浴に銅箔側を下に向けて浮かべ、銅箔の膨れ又は剥がれが発生するまでの時間を測定し、以下の基準で判定した。
[半田耐熱試験の判定基準]
○○:10分経過しても膨れ及び剥離の発生なし
〇:3分経過後、かつ10分経過する前に膨れ又は剥離が発生
△:1分経過後、かつ3分経過する前に膨れ又は剥離が発生
×:1分経過する前に膨れ又は剥離が発生
(5)絶縁破壊電圧(耐電圧性)
作製直後の絶縁シートを100mm×100mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを120℃のオーブン内で1時間、更に200℃のオーブン内で1時間硬化させ、絶縁シートの硬化物を得た。耐電圧試験器(MODEL7473、EXTECH Electronics社製)を用いて、絶縁シートの硬化物間に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。絶縁シートの硬化物が破壊した電圧を、絶縁破壊電圧とした。
(6)接着強度
厚み1mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に作製直後の絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃
で1時間絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板の銅箔をエッチングして幅10mmの銅箔の帯を形成し、銅箔を基板に対して90度の角度及び50mm/分の引っ張り速度で剥離した際の引き剥がし強さ(接着強度)を測定した。
(7)放熱性
厚み1mmのアルミニウム板と厚み35μmの電解銅箔との間に作製直後の絶縁シートを挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間絶縁シートをプレス硬化し、銅張り積層板を形成した。得られた銅張り積層板の銅箔面を、同じサイズの60℃に制御された表面平滑な発熱体に196N/cm2の圧力で押し付けた。アルミニウム板の表面の温度を熱伝対により測定し、放熱性を下記の基準で判定した。
[放熱性の判定基準]
○:発熱体とアルミニウム板の表面の温度差が6℃以下
△:発熱体とアルミニウム板の表面の温度差が6℃を超え、10℃以下
×:発熱体をアルミニウム板の表面の温度差が10℃を超える
(8)曲げ試験(貯蔵安定性)
作製直後の絶縁シートを5cm×1cmの大きさに切り出した。この作製直後の絶縁シートを、直径1cmの円柱に巻き付けて、曲げ試験を行った。また、作製直後の絶縁シートを23℃で1週間放置した。放置後の絶縁シートを5cm×1cmの大きさに切り出した。この放置後の絶縁シートを用いて、作製直後の絶縁シートと同様にして、曲げ試験を行った。曲げ試験を下記の基準で判定した。
[曲げ試験の判定基準]
○:絶縁シートに割れ、ひび及び欠けなし
△:絶縁シートにひびが発生
×:絶縁シートに割れ又は欠けが発生
(9)曲げ弾性率
作製直後の絶縁シートを切断し、長さ8cm、幅1cm及び厚み4mmの試験片を得た。万能試験機(オリエンテック社製「RTC−1310A」)を用いて、JIS K7111に準拠し、支点間距離6cm及び速度1.5mm/分の各条件で得られた試験片の測定を行うことにより、未硬化状態の絶縁シートの25℃での曲げ弾性率を測定した。
(10)弾性率
作製直後の絶縁シートを直径2cmの円板状に切り出して、テストサンプルを得た。回転型動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR−100」)を用いて、直径2cmのパラレル型プレートにより、オシレーション歪み制御モード、開始応力10Pa、周波数1Hz及び歪み1%の各条件で、テストサンプルの25℃でのtanδを測定した。
結果を下記の表1〜4に示す。下記の表1〜4において、※1は、全樹脂成分X100重量%中での含有量(重量%)を示す。※2は、絶縁シート100重量%中での含有量(重量%)を示す。