JP7266431B2 - 飲料の香味改良剤およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、飲料の香味改良剤およびその製造方法に関する。
嗜好性の高い飲料を提供する目的で、飲料の香味を改良する試みは、従来から多面的に行われている。例えば、果汁フレーバーを有する飲料では、アルコール飲料であるか否かを問わず、果汁感を増強するための香味改良剤の開発がなされており、その有効成分も多種多様のものが存在する(例えば、特許文献1~3)。
しかし、飲料の香味改良剤は、苦味や渋味が生じるなど、副作用ともいうべき悪影響を与えることも少なくない。また、飲料の香味に関する需用者の好みは多種多様であり、さらに、時代とともに変化するものでもある。このような状況に鑑みれば、これまでとは異なる香味改良剤へのニーズは依然として存在するものといえる。
特開2016-198025号公報 特開2016-198026号公報 特開2016-73275号公報
本発明者らは、モモ果実の核を除去して得られる果実部分を、低濃度のアルコール(エタノール)水溶液で抽出処理することにより、飲料の香味を顕著に改良しうる抽出液が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
従って、本発明は、核を除去した後のモモ果実を原料とする新規な香味改良剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)飲料の香味改良剤を製造する方法であって、
(a)モモ果実から核を除去処理する工程、ならびに
(b)工程(a)で得られたモモの果実部分を、5~30質量%のエタノール水溶液で抽出する工程
を含んでなる、方法。
(2)抽出が10~40℃の温度条件下で行われる、前記(1)の方法。
(3)抽出が、前記果実部分の破砕物の前記エタノール水溶液における懸濁液を10~120分間攪拌することにより行われる、前記(1)または(2)の方法。
(4)抽出の前に、前記果実部分を破砕し、得られた破砕物を、固形物を分解するための酵素処理に供する工程をさらに含んでなる、前記(1)~(3)のいずれかの方法。
(5)前記酵素処理に用いられる酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼからなる群から選択される少なくとも一種の酵素を含む、前記(4)の方法。
(6)前記(1)~(5)のいずれかの方法によって得られる、飲料の香味改良剤。
(7)前記(6)の香味改良剤を含んでなる、飲料。
(8)前記香味改良剤の含有量が、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上である、前記(7)の飲料。
(9)アルコール飲料である、前記(7)または(8)の飲料。
(10)非アルコール飲料である、前記(7)または(8)の飲料。
(11)前記(6)の香味改良剤を原料に添加することを含んでなる、飲料の製造方法。
(12)前記香味改良剤の添加量が、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上である、前記(11)の製造方法。
(13)前記(6)の香味改良剤を飲料に添加することを含んでなる、飲料の香味を改良する方法。
(14)前記香味改良剤の添加量が、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上である、前記(13)の方法。
(15)飲料の香味の改良が、果実らしい甘味の増強、後苦味の低減、果汁の味厚みの増強、またはこれらの任意の組合せである、前記(13)または(14)の方法。
本発明によれば、飲料の香味を顕著に改良することができ、例えば、果実らしい甘味を増強し、自然な果汁の香味を増強することができる。また、本発明によれば、飲料の後苦味、特にアルコール飲用時後半の苦味を低減することも可能である。また、本発明によれば、飲料において、果汁らしい味厚みの増強や、低果汁または無果汁の飲料への果汁らしい味厚みの付与も可能である。さらに、本発明の香味改良剤は、ごく少量の飲料への添加によってこれらの効果を奏することができるため、副作用としての悪影響を著しく低減できる点でも有利である。
発明の具体的説明
定義
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
本発明において「非アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされない、アルコール度数1度未満の飲料を意味する。「非アルコール飲料」のうち、アルコールが全く含まれない、すなわち、アルコール含量が0v/v%である飲料については特に「完全無アルコール飲料」と表現することができる。本発明における非アルコール飲料としては、例えば、チューハイ様飲料、カクテル様飲料、ワイン様飲料や、その他アルコール飲料との代替性がある飲料が挙げられる。さらに、本発明における非アルコール飲料には、果汁飲料や炭酸飲料などの清涼飲料や、茶飲料等も含まれる。
本発明において「果実らしい甘味」とは、まさに果実の甘味を意味し、例えば、十分な量の果汁を配合した飲料が呈する豊かな甘味を意味する。本発明において「後苦味」とは、その飲料を飲用したときの飲用時後半に感じられる舌上の苦味を意味する。本発明において「果汁の味厚み」とは、十分な量の果汁を配合した飲料が呈する味の濃さ(酸味、甘味等の様々な味の総合的な強さ)を意味する。
本明細書において、「ppm」は「mg/L」と同義であり、「ppb」は「μg/L」と同義である。
本発明の香味改良剤は、モモ果実の核を除去して得られる果実部分を、5~30質量%のエタノール水溶液で抽出することにより製造される。
モモ果実中には、果肉を包むように薄い果皮が存在し、また、果肉の内側には種を含む核が存在する。本発明に用いられるのは、モモ果実から核を除去処理して得られる果実部分である。また、モモ果実から核および果皮を除去処理して得られる果実部分(例えば果肉)も好適に用いられる。モモの前記果実部分または果肉は、そのままの状態で用いてもよいが、抽出処理の効率の観点から、破砕、摩砕等の加工を加えてもよいし、ペレット状にしてもよい。
本発明の好ましい実施態様では、抽出処理の前に、前記果実部分を破砕し、得られた破砕物が、固形物を分解するための酵素処理に供される。この酵素処理に用いられる酵素は当業者により適宜選択されるが、好ましくはセルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼのうちの少なくとも一種の酵素(これら酵素の任意の組合せを含む)、より好ましくはこれら3種の組合せとされる。酵素の添加量、反応溶液のpH、酵素処理の温度および時間などの条件は、当業者であれば適宜設定することができる。この酵素処理では、固形物を完全に分解する必要はなく、ある程度分解されれば十分である。例えば、酵素処理は、使用する酵素の至適温度および至適pHの近傍(例えば、20~60℃、pH3~6)において、15~300分間、好ましくは60~250分間の条件で行うことができる。酵素処理が終わった後は、酵素の失活処理が行われることが望ましく、例えば、タンパク質が変性する温度(例えば80℃)で10分程度インキュベートすることにより失活処理を行うことができる。
エタノール水溶液による抽出処理は、室温、例えば-10~40℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは10~30℃の温度条件下で行うことができる。抽出処理は、例えば、果実部分の破砕物のエタノール水溶液における懸濁液を攪拌することにより行われる。攪拌時間は、典型的には10~120分間、好ましくは30~90分間、さらに好ましくは40~80分間とされる。
抽出処理が終わった後、得られる混合物の濾液を、本発明の香味改良剤とすることができる。本発明の香味改良剤には、保存安定性の観点から、食品としての安全性が確認された保存剤、例えばエタノールを添加して保存することができる。
本発明の香味改良剤は、飲料に添加することによりその飲料の香味を改良することができる。従って、本発明の他の態様によれば、本発明の香味改良剤を含んでなる飲料が提供される。このような飲料は、飲料の原料に本発明の香味改良剤を添加することにより製造することができる。本発明のさらに別の態様によれば、本発明の香味改良剤を飲料に添加することを含んでなる、飲料の香味を改良する方法が提供される。
飲料における本発明の香味改良剤の含有量(つまり添加量)は、特に制限されるものではなく、その飲料の種類や、所望の改良効果とその程度に応じて、当業者により適宜決定される。例えば、本発明の香味改良剤は果実らしい甘味を増強する効果を有するため、清涼飲料水やチューハイなどに配合することが考えられる。また、本発明の香味改良剤は後苦味を低減する効果を有するため、アルコール飲料、特にアルコール度数の高い飲料(例えばアルコール5~12v/v%の飲料)に配合することが考えられる。また、本発明の香味改良剤は果汁らしい味厚みを増強または付与する効果を有するため、低果汁または無果汁の飲料に配合することが考えられる。当業者であれば、様々な濃度で本発明の香味改良剤を含有する飲料のサンプルを実際に調製し、各サンプルについて所望の効果を確認することにより、その飲料に最適な香味改良剤の量を見出すことができる。
本発明の好ましい実施態様によれば、飲料における本発明の香味改良剤の含有量・添加量は、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上とされる。ここで、香味改良剤の含有量・添加量をリンゴ酸の量に換算する理由は、香味改良剤の原料となるモモ果実とエタノール水溶液との量の比率によって有効成分の濃度が異なり、このような濃度の違いにかかわらず有効成分の量を反映した指標を定義するためである。つまり、モモに多く含まれるリンゴ酸の濃度は、香味改良剤の単位量あたりに使用されたモモ果実の量に比例するものであり、よって、モモ果実部分から得られる有効成分の量に比例するものである。従って、本発明においては、本発明の香味改良剤の含有量・添加量を、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して示す。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、飲料における本発明の香味改良剤の含有量・添加量は、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、114.6ppb以上とされる。本発明の香味改良剤の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、飲料の香味のバランスに鑑み、香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して11.46ppmとしてもよく、好ましくは2.292ppm未満、より好ましくは1.146ppm未満とされる。
飲料における本発明の香味改良剤の含有量・添加量は、実際に調製した香味改良剤におけるリンゴ酸濃度を予め測定しておき、このリンゴ酸濃度と香味改良剤の添加量に基づいて算出することができる。香味改良剤におけるリンゴ酸濃度は、BCOJビール分析法-2003 8.24.2キャピラリー電気泳動法により測定することができる。
本発明における飲料は、アルコール飲料であっても、非アルコール飲料であってもよい。飲料のアルコール濃度は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.0~20.0v/v%、より好ましくは0.0~15.0v/v%、さらに好ましくは0.0~12.0v/v%、さらに好ましくは0.0~9.0v/v%とすることができる。一つの実施態様によれば、飲料のアルコール濃度は5.0v/v%以上とされ、好ましくは5.0~20.0v/v%、より好ましくは5.0~15.0v/v%、さらに好ましくは5.0~12.0v/v%、さらに好ましくは5.0~9.0v/v%とされる。
本発明における飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料であってもよい。
本発明における飲料のpHは、特に制限されるものではないが、好ましくは2.5~5.0に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
本発明における飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
本発明における飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明の香味改良法は、飲料における果実らしい甘味を増強する方法である。
本発明の他の一つの実施態様によれば、本発明の香味改良法は、飲料における後苦味(例えばアルコールの後苦味)を低減する方法である。アルコールの後苦味を低減する方法では、飲料のアルコール濃度は、好ましくは5.0v/v%以上とされ、より好ましくは5.0~20.0v/v%、さらに好ましくは5.0~12.0v/v%、さらに好ましくは5.0~9.0v/v%とされる。
本発明の他の一つの実施態様によれば、本発明の香味改良法は、飲料における果汁らしい味厚みを増強する方法である。
本発明の他の一つの実施態様によれば、本発明の香味改良法は、低果汁または無果汁の飲料に果汁らしい味厚みを付与する方法である。
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:香味改良剤の調製
(1)香味改良剤
モモ(黄桃)の果実から核と皮を除去し、得られた果肉を小さくカットした後に、ミキサー(WARING社製 MODEL700BUJ、100V、50/60Hz、300W)で2分間破砕した。
得られたモモ果肉破砕物800gを密閉可能なガラス瓶に入れた。別の容器に水70mLを入れ、そこに3種類の酵素(セルラーゼT「アマノ」4、ペクチナーゼG「アマノ」およびヘミセルラーゼ「アマノ」90;各4g)を投入して溶解させた。得られた酵素溶液をモモ果肉破砕物の入ったガラス瓶に投入し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50℃に調節した湯浴中で210分間インキュベート(酵素反応)した後、80℃で10分間インキュベート(酵素の失活)した。その後、内容物の重量が900gになるまで水を加え、常温になるまで自然放冷した。
得られた内容物の56.3gを、93.7gのエタノール水溶液を含有する300mL容三角フラスコに投入し、全量を150gとした。エタノール水溶液におけるエタノールと水の量は、全量150gの懸濁液におけるエタノール濃度が10質量%となるように調節した。得られた懸濁液を、室温(約25℃)、大気圧下で1時間撹拌(スターラーADVANTEC社 SRS360YA使用)した。
次いで、固形分が液中に均質に浮遊している状態で45gを計りとり、遠沈管に分注し、遠心機(TOMY社 EX-136/ローター:TS-39N/バケット:S-439、ラック:3950-CF05P)にて3000rpmで5分間遠心分離した。その後、ろ紙濾過(ADVANTEC社 FILTER PAPER No.2 90mm)を実施し、38gのろ液を得た。得られたろ液に水とエタノールを添加し、エタノール40質量%、全量76gに調整した。得られた液体を、香味改良剤サンプルとして用いた。
さらに、抽出の際のエタノール濃度を検討するための香味改良剤サンプルとして、上記の手順に従って、エタノール濃度を0質量%、5質量%、15質量%、20質量%、30質量%および40質量%として抽出処理したものも用意した。
(2)香味改良剤サンプルに含まれるリンゴ酸の定量
香味改良剤サンプルに含まれるリンゴ酸濃度を、BCOJビール分析法-2003 8.24.2キャピラリー電気泳動法により測定した。結果を以下の表1に示す。
Figure 0007266431000001
実施例2:アルコール飲料および非アルコール飲料への香味改良剤の添加試験
(1)飲料サンプルの調製
以下のように、飲料サンプルのベースとなる(つまり香味改良剤サンプルを含まない)ベース液Aおよびベース液Bを調製した。
ベース液Aは、アセスルファムKを0.015%(w/v)、スクラロースを0.006%(w/v)、クエン酸(無水)を0.110%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.030%(w/v)、およびぶどう香料を0.100%(w/v)の濃度で含有する水溶液とした。
ベース液Bは、アセスルファムKを0.015%(w/v)、スクラロースを0.006%(w/v)、クエン酸(無水)を0.110%(w/v)、クエン酸ナトリウムを0.030%(w/v)、およびぶどう香料を0.100%(w/v)の濃度で含有し、さらに、原料用アルコールを様々な濃度で含有する水溶液とした。
ベース液Aおよびベース液Bに対し、試験の目的に応じて実施例1で調製した香味改良剤サンプルを様々な濃度で添加することにより、飲料サンプルを調製した。
(2)飲料サンプルの評価
上記(1)で調製された各飲料サンプルを、官能評価試験に供した。官能評価試験では、良く訓練されたパネル5名により、以下の基準で各項目の官能評価を行った。
[味厚み、甘味および後苦味の評価]
「味厚み」は、十分な量の果汁を配合した飲料が呈する味の濃さ(酸味、甘味等の様々な味の総合的な強さ)を意味する。「甘味」は、一般的な甘味と同様の意味を有する。「後苦味」は、飲用時後半に感じられる舌上の苦味を意味する。これらの項目の評価は、香味改良剤サンプルを含有していない対照サンプルのスコアを「5」として、以下の基準による9点法によって行い、全パネルのスコアの平均値を評価スコアとした。
9:対照サンプルと比較して、極めて強く感じる。
8:対照サンプルと比較して、かなり強く感じる。
7:対照サンプルと比較して、強く感じる。
6:対照サンプルと比較して、やや強く感じる。
5:対照サンプルと比較して、違いが無い。
4:対照サンプルと比較して、やや弱く感じる。
3:対照サンプルと比較して、弱く感じる。
2:対照サンプルと比較して、かなり弱く感じる。
1:対照サンプルと比較して、極めて弱く感じる。
[ウリ様の青臭さの評価]
「ウリ様の青臭さ」は、スイカ、メロン、キュウリなどのウリ科の生野菜の果皮付近から香るような青臭い香気を意味する。この項目の評価は、香味改良剤サンプルを含有していない対照サンプルのスコアを「1」として、以下の基準による5点法によって行い、全パネルのスコアの平均値を評価スコアとした。
5:飲料として明らかに不適なほどの青臭さを感じる。
4:かなり強い青臭さを感じる。
3:強い青臭さを感じる。
2:わずかに青臭さを感じる。
1:青臭さを全く感じない。
(3)香味改良剤の製造条件の検討
香味改良剤の製造条件を検討するため、モモ果肉の抽出処理に用いられるエタノール水溶液のエタノール濃度を変更して得られた幾つかの香味改良剤サンプルを含有する飲料サンプル(ベース液Aをベースとする)を用意し、官能評価結果を比較した。香味改良剤サンプルの添加濃度は、飲料サンプル全体に対して0.10%(v/v)とした。対照サンプルは、香味改良剤サンプルを含有しないベース液Aとした。結果を以下の表2に示す。
Figure 0007266431000002
表2から、香味改良剤の製造において、5~30質量%のエタノール水溶液で抽出することが望ましいことが認められた。
(4)香味改良剤の添加量の検討
香味改良剤の好ましい添加量を検討するため、抽出時エタノール濃度10質量%の香味改良剤サンプルを様々な濃度で含有する飲料サンプル(ベース液Aをベースとする)を用意し、官能評価結果を比較した。対照サンプルは、香味改良剤サンプルを含有しないベース液Aとした。結果を以下の表3に示す。
Figure 0007266431000003
表3には、香味改良剤サンプルの添加量として、香味改良剤サンプルに含まれるリンゴ酸の濃度に換算した添加量も併記した。この換算添加量は、飲料サンプル中における香味改良剤サンプル由来のリンゴ酸の濃度を示すものである。
表3から、香味改良剤の添加量は、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上とすることが望ましく、114.6ppb以上とすることがさらに望ましいものと考えられた。
(5)飲料のアルコール度数の影響
香味改良剤の効果に対する飲料のアルコール度数の影響を検討するため、様々なアルコール濃度を有するベース液Bに対して香味改良剤サンプルを添加し、各サンプルについての官能評価結果を比較した。香味改良剤サンプルは抽出時エタノール濃度10質量%の香味改良剤サンプルとし、その添加濃度は、飲料サンプル全体に対して0.03%(v/v)または0.3%(v/v)とした。対照サンプルは、香味改良剤サンプルを含有しないベース液B(飲料サンプルのアルコール度数と同じアルコール度数のベース液Bを使用。アルコール度数0%のものは、ベース液Aと同じ)とした。結果を以下の表4に示す。
Figure 0007266431000004
表4から、本発明の香味改良剤の効果を得る上で、飲料のアルコール度数は、0~12v/v%とすることが好ましく、0~9v/v%とすることがさらに好ましいことがわかった。

Claims (15)

  1. 飲料の香味改良剤を製造する方法であって、
    (a)モモ果実から核を除去処理する工程、ならびに
    (b)工程(a)で得られたモモの果実部分を、5~30質量%のエタノール水溶液で抽出する工程
    を含んでなり、
    抽出が、前記果実部分の破砕物の前記エタノール水溶液における懸濁液を10~120分間攪拌することにより行われる、方法。
  2. 抽出が10~40℃の温度条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 抽出が、前記果実部分の破砕物の前記エタノール水溶液における懸濁液を30~90分間攪拌することにより行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 抽出の前に、前記果実部分を破砕し、得られた破砕物を、固形物を分解するための酵素処理に供する工程をさらに含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記酵素処理に用いられる酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼからなる群から選択される少なくとも一種の酵素を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の方法によって得られる、飲料の香味改良剤。
  7. 請求項6に記載の香味改良剤を含んでなる、飲料。
  8. 前記香味改良剤の含有量が、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上である、請求項7に記載の飲料。
  9. アルコール飲料である、請求項7または8に記載の飲料。
  10. 非アルコール飲料である、請求項7または8に記載の飲料。
  11. 請求項6の香味改良剤を原料に添加することを含んでなる、飲料の製造方法。
  12. 前記香味改良剤の添加量が、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上である、請求項11に記載の製造方法。
  13. 請求項6に記載の香味改良剤を飲料に添加することを含んでなる、飲料の香味を改良する方法。
  14. 前記香味改良剤の添加量が、該香味改良剤に含まれるリンゴ酸の量に換算して、22.9ppb以上である、請求項13に記載の方法。
  15. 飲料の香味の改良が、果実らしい甘味の増強、後苦味の低減、果汁の味厚みの増強、またはこれらの任意の組合せである、請求項13または14に記載の方法。
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