JP7255514B2 - 希土類磁石粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)本発明は、希土類焼結磁石からなる磁石原料に、吸水素させて不均化反応を生じさせる不均化工程と、該不均化工程後の磁石原料から脱水素して再結合反応を生じさせる再結合工程と、を備える希土類磁石粉末の製造方法である。
本発明は、上述した製造方法により得られる希土類磁石粉末としても把握される。その磁石粉末は、例えば、粒度が106―300μmさらには150―212μmで、残留磁化(σr)が110emu/g以上さらには115emu/g以上および配向度が0.9以上さらには0.93以上である磁石粒子を含む。
特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、「x~ykOe」はxkOe~ykOeを意味し、他の単位についても同様である。なお、粒度「x―y(μm)」は、公称目開きx(μm)を通過せず、公称目開きy(μm)を通過する大きさの粒子であることを意味する。
水素処理(HDDR処理)される磁石原料(出発原料)は焼結磁石からなる。焼結磁石の一部または全部は、磁石合金(原料)から新規に製造されたものでもよいし、焼結磁石のスクラップを利用したものでもよい。スクラップの利用により、焼結磁石のリサイクルが促進される。なお、本明細書でいうスクラップには、廃棄された各種機器(電磁気製品等)から回収された焼結磁石の他、その製造過程で生じた焼結磁石の不良品や加工屑等のスラッジが含まれてもよい。
水素処理は、主に、不均化工程(HD)と再結合工程(DR)からなる。不均化工程は、処理炉に入れた磁石原料を所定の水素雰囲気に曝し、吸水素させた磁石原料に不均化反応(三相分解反応)を生じさせる工程である。不均化工程は、例えば、水素分圧:5~300kPaさらには10~100kPa、雰囲気温度:750~950℃さらには800~900℃、処理時間:1~7時間さらには2~5時間としてなされる。
本発明に係る磁石粉末の用途は、種々あり得るが、その代表例はボンド磁石である。ボンド磁石は、主に希土類磁石粉末とバインダ樹脂からなる。バインダ樹脂は、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。またボンド磁石は、圧縮成形されたものでも射出成形されたものでもよい。希土類異方性磁石粉末を用いたボンド磁石は、配向磁場中で成形されると、高磁気特性を発揮し得る。
(1)原料1
出発原料となる焼結磁石を次のように製作した。先ず、ストリップキャストされた磁石合金(株式会社三徳製)を用意した。この合金組成は、その全体を100質量%(単に「%」という。)として、31.8%Nd-0.98%B-0.9%Co-0.1%Cu-0.15%Al-0.05%Ga-Fe(残部)であった。その合金組成を原子%に換算すると、Nd:14.5原子%、Fe:78.0原子%、B:1.00原子%となる。
原料1に溶体化処理を施して、粒成長させた原料2も用意した(溶体化工程)。溶体化処理は、処理炉に入れた原料1を、真空雰囲気(<10-2Pa)中で加熱(1100℃×10時間)した後、同雰囲気で炉冷した。こうして得られた焼結磁石を「原料2」という。
既述したストリップキャストされた磁石合金に溶体化処理した比較原料も用意した。溶体化処理は、真空雰囲気(<10-2Pa)中で加熱(1100℃×10時間)した後、同雰囲気で炉冷した。こうして得られた比較原料を「原料C」という。
各原料を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られたSEM像を画像処理して、各原料の平均結晶粒径(d50)を求めた。平均結晶粒径は、原料1:13μm、原料2:250μm、原料C:100μmであった。
(1)解砕工程
各原料を水素雰囲気中で加熱(500℃×1時間)し、水素を吸蔵させた各原料を解砕した(解砕工程)。水素雰囲気は、水素ガス(H2)とアルゴンガス(Ar)の混合気流中(H2:400ml/min+Ar:100ml/min)とした。原料1、原料2および原料Cの各解砕粉を、それぞれ「原料1H」、「原料2H」、「原料CH」という。
各原料の解砕粉を大気中で篩って分級した。各原料を粒度毎にSEMで観察した。原料1Hと原料2Hについて、各粒度毎のSEM像を図1Aに示した。また原料1Hの一部(粒度:150―212μm)を図1Bに拡大して示した。
(1)HDDR処理
水素解砕した各原料に、水素処理を施して磁石粉末を製作した。具体的にいうと、真空排気した処理炉内の各原料に対して、図5に示す脱水素処理、HD処理(不均化工程)およびDR処理(再結合工程)を順次施した。
各磁石粉末の磁気特性を、各粒度毎に振動試料磁力計(東英工業株式会社製VSM)で測定した。得られた磁化曲線に基づいて、既述した方法で算出した配向度(S)と、減磁曲線と縦軸の交点である残留磁化(σr)とを、各試料について粒度毎に求めた。こうして求めた配向度(S)と残留磁化(σr)の関係を図6にまとめて示した。
(1)原料
図3から明らかなように、焼結磁石を水素解砕した原料1H、2Hは、粒度が小さいときは勿論、粒度が大きくなっても高配向度(≧0.96)が確保されていた。特に、溶体化処理して結晶粒を粗大化させると、粒度に依らず、安定してより大きな配向度(≧0.98)が確保されることがわかった。なお、各原料の粒子が多結晶体であることは図1Aおよび図1Bからわかる。
図6から明らかなように、焼結磁石を水素解砕した原料1H、2Hに水素処理(HDDR処理)を施すと、粒度に拘わらず配向度が高い磁石粉末が得られることがわかった。一方、ストリップキャスト合金を水素解砕した原料CHに水素処理して得られた磁石粉末は、配向度および残留磁化が大幅に低下した。このことから、磁石粉末の配向度は、原料の配向度が反映されているといえる。
Claims (6)
- 希土類焼結磁石からなる磁石原料に、吸水素させて不均化反応を生じさせる不均化工程と、
該不均化工程後の磁石原料をArガス気流中で加熱して再結合反応を生じさせる再結合工程とを備え、
ボンド磁石に用いられる希土類磁石粉末の製造方法。 - 前記磁石原料は、前記希土類焼結磁石を熱処理して磁石粒子を粒成長させる溶体化工程が施されている請求項1に記載の希土類磁石粉末の製造方法。
- 前記磁石原料は、前記希土類焼結磁石を水素解砕する解砕工程が施されている請求項1または2に記載の希土類磁石粉末の製造方法。
- 前記磁石原料は、粒度が106―300μmで配向度が0.96以上である粒子を含む請求項1~3のいずれかに記載の希土類磁石粉末の製造方法。
- 前記希土類焼結磁石は、スクラップを含む請求項1~4のいずれかに記載の希土類磁石粉末の製造方法。
- 前記希土類磁石粉末は、粒度が106―300μm、残留磁化(σr)が110emu/g以上、および配向度が0.9以上である磁石粒子を含む請求項1~5のいずれかに記載の希土類磁石粉末の製造方法。
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