以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳述する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。また以下の実施例を説明するための各図面において同一の符号は同一或いは類似の機能を備えた構成要素又は処理を示し、後出の説明を省略する。また各実施例及び各変形例は、本発明の技術思想の範囲内かつ整合する範囲内で一部又は全部を組合せることができる。
以下の実施例では、現金自動取引装置の装置筐体の鉛直方向(上部方向、上方)をZ軸の正方向、現金自動取引装置の装置筐体の利用者側(正面側、前方)から反対側(背面側、後方)に向かう方向をY軸の正方向、及び現金自動取引装置の利用者側に向かって左側から右側に向かう方向をX軸の正方向とする。そして、以下の実施例の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸がそれぞれ直交する正系のXYZ座標系を用いる。なお以下の実施例において“上”“下”“左”“右”“前”“後”“背”等で表す方向及び位置は相対的なものに過ぎず、またXYZ座標系により現金自動取引装置や紙幣取扱装置、並びにその他の構成要素の向き、形状、又は大きさが限定されるものではない。
以下の実施例では、紙葉類取扱装置は、紙葉類として紙幣を取り扱う紙幣取扱装置を例として説明するが、これに限られず、小切手や商品券等の他の様々な紙葉類についても同様に取り扱うことができる。
<A:現金自動取引装置の全体構成>
図1は、実施例1の現金自動取引装置の外観斜視図である。図2は、実施例1の現金自動取引装置を背面側から見た外観斜視図である。
現金自動取引装置101は、キャッシュカードや紙幣、明細票等を取引媒体とし、利用者の操作によって現金の預け入れや支払い、振り込み等の処理を行う。現金自動取引装置101の上部には、利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する通帳処理機構106と、利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード及び明細票処理機構107が備えられる。
通帳処理機構106は、現金自動取引装置101の正面のスロット106aから投入された利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する。カード及び明細票処理機構107は、現金自動取引装置101の正面のスロット107aから投入された利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出する。現金自動取引装置101の正面前方には、利用者の取引の内容を表示すると共に、取引のための種々の情報や項目を入力する画面操作部104が備えられる。現金自動取引装置101の正面の入金部120は、シャッタ120aが開状態の場合、略水平にセットされた紙幣の入金を受け付ける入金取引が実行できる。
現金自動取引装置101の装置筐体内の下部において、右側には紙幣を処理する紙幣取扱装置1がセキュリティをするための強固な金庫1000の内部に備えられ、紙幣取扱装置1の入金部120及び入出金部20に設けられたシャッタ120a及びシャッタ20aの開閉に応じて紙幣の入出金取引が行なわれる。すなわち、現金自動取引装置101は、従来の現金自動取引装置と同様に少数の紙幣の入出金を行う入出金部20に加え、大量の紙幣の入金が可能な入金部120を別途設けた構成となっている。
なお、現金自動取引装置101の入出金部20にも開閉式のシャッタ20aが設けられている。後述のように紙幣取扱装置1の入出金部20にはシャッタ20aとは異なる開閉式のシャッタ(上板23)も別途設けられているため、入出金部20は二重のシャッタ構造となっている。
現金自動取引装置101の下部左側には、硬貨を処理する硬貨処理装置105が備えられ、硬貨処理装置105の入出金部に設けたシャッタ105aの開閉に応じて硬貨の入出金取引が行なわれる。なお、現金自動取引装置101において、硬貨処理装置105が省略されてもよい。
図2は、背面の扉102及び金庫1000の扉10002が開状態、かつ紙幣取扱装置1からトレイ1114がレール1102及びレール1112によって引き出された状態を示す。トレイ1114には、現金自動取引装置101の背面側から前方に向かって、複数の収納部70~74が一列に配置して着脱可能に搭載されている。
なお、紙幣取扱装置1は上述のように全体が強固な金庫1000で覆われており、金庫1000には金庫の扉10002が備えられ、紙幣取扱装置1の入出金部20に紙幣を出し入れするのに必要最低限の大きさの開口部と、後述の副搬送路10iが紙幣取扱装置1と接続するための、紙幣搬送に必要最低限の大きさの穴が設けられている。
(他の例の現金自動取引装置の全体構成)
図3は、他の例の現金自動取引装置の外観斜視図である。図4は、他の例の現金自動取引装置を背面側から見た外観斜視図である。現金自動取引装置の外観の他の例としては、図3に示すように現金自動取引装置101がある。図3及び図4に示すように、現金自動取引装置101の装置上部には画面操作部104、通帳処理機構106、スロット106a、カード及び明細票処理機構107、スロット107a、及び操作部119が備えられる。一方、現金自動取引装置101の装置筐体内の下部には紙幣取扱装置1が搭載され、紙幣取扱装置1の入金部120及び入出金部20に設けられたシャッタ120a及びシャッタ20aの開閉に応じて紙幣の入出金取引が行なわれる。
ここで、図3に示すように、操作部119を現金自動取引装置101の上部前面の背面側にやや奥まった位置に配置することで、セキュリティを確保している。図4は、現金自動取引装置101の背面の扉112及び金庫1000の扉10002が開状態、紙幣取扱装置1からトレイ1114がレール1102及びレール1112によって引き出された状態を示し、トレイ1114には、収納部70~74が一列に配置して着脱可能に搭載されている。
(実施例1の現金自動取引装置の機能構成)
図5は、実施例1の現金自動取引装置の機能構成を示すブロック図である。図5に示すように、現金自動取引装置101は、現金自動取引装置101の装置内に搭載されている通信処理部1202によって、専用線網又は閉域網等のネットワーク1204を介してサーバ1203と接続される構成となっている。他にも現金自動取引装置101の装置内には、現金自動取引装置101全体の動作制御を司るマイクロプロセッサ等の制御部1201が搭載され、制御部1201から、紙幣取扱装置1、画面操作部104、硬貨処理装置105、通帳処理機構106、及びカード及び明細票処理機構107に向けて制御信号が送られ、各種装置及び各種機構を制御する。
<B:現金自動取引装置の内部構成>
図6は、実施例1の紙幣取扱装置の内部構成を示す図である。紙幣取扱装置1の上部には、取引される紙幣の処理機構が配置され、下部には紙幣の収納機構が配置される。紙幣取扱装置1の金庫1000の筐体内部の上部において、その前側(利用者に面する側:図6の上部右側)には、利用者により略立位にセットされた紙幣の入金を受け付け、略立位にセットして紙幣を放出して利用者に取り出しを行わせるポケット型の入出金部20が配置される。また、中央部に紙幣の判別を行う識別部30が配置され、後側(図6の上部左側)には利用者が入金した紙幣を取引成立までの間、一旦収納する一時保留部40が配置される。これらの各機構部は双方向の搬送路10a、30a、10d、10e、10fにより接続される。
さらに、金庫1000の筐体外部の上部で、かつ、入出金部20の近傍に配置され、かつ、利用者が入出金部20へ紙幣を投入するのと同様に紙幣の投入を行ったり、入出金部20から取り出された紙幣をスムーズに積み増ししたりできる位置に、利用者が紙幣の投入を行う入金部120が配置される。入金部120は、オープンホッパ型の入金専用の入金部であり、金庫1000の筐体外部に配置された副搬送路10iを経由し、さらに金庫1000の筐体に開いた(紙幣を搬送するのに必要十分な大きさの)穴を経由して、金庫1000の筐体内部の識別部30と一時保留部40との間で、振分ゲート14を介して搬送路10eに接続される。
副搬送路10iが振分ゲート14を介して搬送路10eに接続されることで、入出金部20へ投入された紙幣を、搬送路50a、30a、10d~10gを含んだ、入出金部20を介して入出金される紙幣を搬送する従来同様の搬送ルートで搬送することができる。
ここで、識別部30は前方から後方へ搬送される紙幣及び後方から前方へ搬送される紙幣のどちらであっても金種判別及び真偽判別を行うことができる。つまり、識別部30は、双方向に搬送される紙幣を金種判別及び真偽判別でき、紙幣を受入可か否かを判別することができる。入出金部20は、上から投入された紙幣を下方へ繰出す紙幣繰出部20bと、下方から搬送されてきた出金用又は返却用の紙幣を集積する紙幣集積部20cが、前後に配置されている。
紙幣取扱装置1の下部において、前方から背面に向かって、紙幣を金種別に収納する収納部71~74、70が、トレイ1114に搭載されて配置されている。ここで、本実施例では、入金部120から入金取引をした際に識別部30で受入不可と判定されたリジェクト紙幣を一旦収納するための搬送先が収納部70であり、入金取引や出金取引に適さない紙幣を収納するための搬送先が収納部74である。すなわち、紙幣取扱装置1の背面側において上から、一時保留部40、収納部70が配置されることになる。なお、各機構部の駆動、例えば、搬送路のローラの駆動、搬送路の振分ゲートの切り替え等は、紙幣取扱装置1が有する制御部170(図9参照)により駆動制御される。
搬送路10a、10d~10g、30a、40a、50a、50b、70a~74a等は双方向の搬送路を形成し、搬送路10b、10c、10i、10hは片方向の搬送路を形成し、図6に示す矢印の方向は紙幣を搬送する方向を示す。特に、片方向の搬送路10iを副搬送路10iということにする。入出金部20は搬送路10bに接続され、一時保留部40は搬送路40aに接続され、収納部70~74はそれぞれ搬送路70a~74aに接続され、入金部120は副搬送路10iに接続される。収納部70は、振分ゲート54により切り替えられて搬送路50bに接続される。搬送路40aは、搬送路10fと搬送路10gの間に位置する振分ゲート15を介して搬送路10fと搬送路10gの間に接続される。副搬送路10iは、搬送路10eと搬送路10fの間に位置する振分ゲート14を介して搬送路10eと搬送路10fの間に接続される。
ループ状の双方向の搬送路を形成する搬送路10a、30a、10d~10g、50aは、反時計回りの矢印方向(図6の左回転方向)に紙幣を搬送する第1の搬送方向と、時計回りの矢印方向(図6の右回転方向)に紙幣を搬送する第2の搬送方向がある。
また、双方向の搬送路である搬送路50bは、振分ゲート16から収納部74、収納部70に向け紙幣を搬送する第1の搬送方向と、収納部74、収納部70から振分ゲート16に向け紙幣を搬送する第2の搬送方向がある。
また、片方向の搬送路について、搬送路10bの搬送方向は紙幣繰出部20bから振分ゲート11に向かう方向であり、搬送路10cの搬送方向は振分ゲート13から紙幣集積部20cに向かう方向であり、副搬送路10iの搬送方向は入金部120から振分ゲート14に向かう方向であり、搬送路10hの搬送方向は識別部30及び振分ゲート12から紙幣集積部20cに向かう方向である。
識別部30を経由してループ状の搬送経路を形成する搬送路10a、30a、10d~10g、50aにおいて、何れの方向に紙幣を搬送しても、搬送路10gと搬送路50aは、振分ゲート16により搬送路50bに接続される。
搬送路10a、30a、10d~10g、50aを含む各機構部には、搬送路を駆動する駆動モータ176(図9参照)、搬送路を切替えるための振分ゲート(上述の各振分ゲートを振分ゲート177(図9参照)と総称する)を切替える電磁ソレノイド(不図示)、及び紙幣の搬送を検知する検知センサ(不図示)等が配置されており、紙幣の取引に応じて必要な駆動モータや電磁ソレノイドが駆動され、また検知センサの検知信号を用いて紙幣の搬送状態が監視される。
なお、本実施例では、複数の検知センサのうち、搬送路10i、10e、10d中に実装されている検知センサを検知センサ175-aとする。各図において、検知センサ175-aのうち、搬送路10i中に実装されている検知センサの一部を図示する。複数の検知センサ175-aは、搬送方向に対する垂直方向に所定間隔で並んで配置されており、搬送紙幣の通過により各検知センサが遮光されるタイミング及び遮光継続時間を検知する。紙幣取扱装置1は、複数の検知センサ175-aの検知結果に基づいて紙幣の搬送状態を監視する。
入金部120と搬送路10iは、金庫1000の筐体外部に設置されているが、これらは1つのユニットとして金庫1000の筐体からの着脱が可能で、入金部120及び搬送路10iを外した状態でも、入出金部20を利用した入出金取引に対して支障を生じることはない。なお、入金部120と搬送路10iは、それぞれ個別のユニットとして別々に取り外し可能な構造としてもよい。
<C:入金部120の紙幣送出構成>
図7は、実施例1の紙幣取扱装置の入金部の構成を示す断面図である。図7は、入金部120から搬送路10hへの紙幣送出に関与する主要なローラ構成を概略的に断面視して示す。
図7に示すように、入金部120は、上端側が開放された開口凹部121を備える。開口凹部121は、受け付けた紙幣Bを傾斜底面壁に堆積して保持し、凹部周囲の側壁と紙幣端部側壁123とで紙幣Bを取り囲む。また、入金部120は、紙幣端部側壁123の下端と開口凹部121の傾斜底面壁とで送出経路部124を構成し、この送出経路部124で開口凹部121をその底部コーナーにおいて搬送路10hに接続する。
入金部120は、開口凹部121の傾斜底面壁に、紙幣送出第1ローラ125と、紙幣送出第2ローラ126と、紙幣送出第3ローラ127をそれぞれ複数備える。これら各送出ローラは、開口凹部121の傾斜底面からローラ周壁を突出させて、それぞれ回転する。入金部120は、各送出ローラを図7に示した図中矢印方向に回転駆動して、開口凹部121に堆積済みの紙幣Bを、堆積下方側の紙幣Bから送出経路部124及び送出経路部124に接続する搬送路10hに一枚ずつ送り出す。紙幣送出第1ローラ125は、一部外周円弧の半径を他の円弧箇所の半径より大きくしているので、開口凹部121に堆積済みの紙幣Bを、上下動させつつ堆積下方側の紙幣Bから送出経路部124に送り出す。なお、入金部120には、紙幣送出第1ローラ125に並んで、図示せぬ真円状の紙幣送出第1補助ローラを備える。
この他、入金部120は、紙幣端部側壁123の下端側に、羽根車128を備える。この羽根車128は、紙幣端部側壁123において複数配設され、紙幣端部側壁123の開口123hから、羽根129の先端を開口凹部121の内部に突出させている。こうして突出した羽根129は、開口凹部121に保持された紙幣Bに対して接触可能とされている。この羽根車128は、後述の制御部170の制御を受けて、入金部120からの紙幣Bの送り出しに際して回転駆動し、その有する複数の羽根129を、開口凹部121で堆積した下方側の紙幣Bの端部側に接触させる。
本実施例では、羽根車128を図7に示す図中矢印方向に回転させるので、羽根129は、開口凹部121で堆積した下方側の紙幣Bの端部に、羽根129を紙幣堆積の上方側から下方側に掛けて接触させる。このため、開口凹部121で堆積した紙幣Bは、紙幣送出第1ローラ125を始めとする送出ローラの回転と、羽根129の端部接触により、堆積下方側の紙幣Bから一枚ずつ、順次、送出経路部124に送出される。
ここで紙幣送出にあたり、開口凹部121で受け入れた紙幣Bが一枚であったり、堆積紙幣の最上部の紙幣Bが一枚残ったりすることがある。こうした一枚又は数枚程度の紙幣Bnは、図7の破線で示すように屈曲して紙幣送出第1ローラ125及び紙幣送出第2ローラ126と非接触となると、紙幣先端を紙幣端部側壁123の外表面に接触させたまま停止姿勢を取り、開口凹部121に留まることがある。本実施例の入金部120は、こうした停止姿勢にある紙幣Bnの紙幣端部に羽根129を上述のように接触させるので、紙幣Bnは停止姿勢からその姿勢を変化させて、紙幣端部が開口凹部121の底部コーナーの側に押し付けられる。これにより、それまで停止姿勢にあったために送出ローラと非接触であった紙幣Bnは、紙幣送出第1ローラ125と紙幣送出第2ローラ126の何れか或いは両者に接触することで、送出経路部124に送出される。
<D:入出金部の紙幣送出構成>
図8は、実施例1の紙幣取扱装置の入出金部の構成を示す断面図である。図8に示すように、入出金部20は、動作板90を境界として、利用者から受け入れた入金紙幣を一枚ずつ紙幣取扱装置1内へ送り出す紙幣繰出部20bと、出金動作やリジェクト動作時に紙幣を利用者へ渡すために、紙幣取扱装置1内より一枚ずつ送られた紙幣を集積する紙幣集積部20cに分割される。
紙幣繰出部20bは、図8中の右側の部分であり、紙幣繰出部20bに存在する紙幣を一枚ずつ繰り出すためのローラであるピックローラ31と、フィードローラ32と、ゲートローラ33と、動作板90とで構成される。
紙幣繰出部20bより紙幣を繰り出す場合、繰出対象となる紙幣は、動作板90によりピックローラ31に一定の押付力で押しつけられる。そのような押付状態下でピックローラ31が回転することにより、所定の送り力で紙幣を繰り出し、繰り出された紙幣は、さらに、繰り出し方向に回転するするフィードローラ32とそれと対向して紙幣の繰り出し方向には回転しないゲートローラ33によって2枚繰り出しを防止しながら搬送路10bの方向に搬送される。なお、繰出中に押付力が低下した場合は、図示せぬ押付力を検知するセンサが作動し、押付力が増加する方向へ動作板90を移動させる。
紙幣集積部20cは、図8中の左側の部分であり、紙幣取扱装置1から搬送路10cより送られてきた紙幣を紙幣集積部20cへ送り出すための常時回転する駆動ローラ34と、この駆動ローラ34と圧接して従動回転する従動ローラ95と押圧板91を備えている。通過センサ22は搬送路10c中に設けられ、紙幣が搬送路10cを通過することを検出するものである。また、紙幣集積部20cは、図示せぬ駆動手段により独立して駆動するループシートローラ94を、従動ローラ95と同軸に複数個備える。また、紙幣集積部20cは、ループシートローラ94と対向して互いにオーバラップして配置される集積ガイド92も備える。
搬送路10cを通過した紙幣は、集積ガイド92に導かれ紙幣集積部20c内に集積される。この紙幣集積部20cでは紙幣の集積枚数に応じて動作板90を図示せぬ駆動手段によって動かすことで、集積空間を拡大できるようになっている。紙幣集積部20cの床面93は紙幣の端部を支持するものである。また、紙幣集積部20cの上板23は入出金部20の上部を覆うものであり、その一部が紙面の図8の左右方向にスライドして開閉動作するシャッタとなっている。なお上板23は、その全体が開閉動作するシャッタであってもよい。
ループシートローラ94は弾性部材(例えば、ゴムやプラスチック材)で形成されていることが望ましい。また、ループシートローラ94は、進入する紙幣にブレーキ力を作用させ停止させる役割を持つループ部161と、紙幣を収納空間へ移動させるシート部162とを具備している。なお本実施例では、このループ部161とシート部162の組合せ(以下、ループシートという)を、後述のループシートローラ軸94pの回転軸周りに120゜の間隔で合計3つ備えている。
ここでループシートローラ94と集積ガイド92とがオーバラップする量(図8中の“δ”)はループシートローラ軸94pに備えられている位相板(不図示)により管理されている。そして、ループシートローラ94は紙幣が集積機構へ進入する際に必ず所定の位置で停止するようになっている。このループシートローラ94の停止位置を集積待機位置と呼ぶことにする。本実施例においては、紙幣が集積機構へ進入する度に回転し、3つのループシートのうち何れかが集積待機位置に位置する構成となっている。
<E:紙幣取扱装置の機能構成>
図9は、実施例1の紙幣取扱装置の機能構成を示すブロック図である。紙幣取扱装置1は、入金部120、入出金部20、識別部30、一時保留部40、収納部70~74、及び搬送路10a~10i、30a、40a、50a、50b、70a~74と、それらの各部を制御する制御部170を有して構成される。
制御部170は、主に制御用のマイクロプロセッサからなる主制御部171とメモリ172を有する。とりわけ、本実施例においては、搬送路10a~10i、50a、50bに配置された、紙幣の搬送を検知する複数(n個)の検知センサ175、搬送路10a~10i、30a、40a、50a、50b、70a~74を駆動する複数(m個)の駆動モータ176、及び搬送路10a~10i、30a、40a、50a、50b、70a~74の搬送切換えをする振分ゲート177を備える。
制御部170の主制御部171は、検知センサ175からの検知信号を監視し、紙幣の通過や搬送異常を検知すると共に、駆動モータ176を正逆方向へ回転駆動して、紙幣を正又は逆方向へ搬送制御する。また、主制御部171は、振分ゲート177を切換え制御して、紙幣を搬送する搬送路を切り替えたり、紙幣の収納先を変えたりする。すなわち主制御部171は、メモリ172と協働して、搬送路上の紙幣の搬送動作の起動や停止、搬送方向の切り替え、振分ゲートの切り替え等の動作の制御を行う。
以上のように構成された紙幣取扱装置1により、入金部120を利用した紙幣の入金動作、並びに、入出金部20を利用した紙幣の入金動作、出金動作、及び取り忘れ回収等の処理を実行することができる。以下、実施例1における各動作について説明する。
<F:入金部を利用した紙幣入金動作>
以下、図10~図26を参照して、入金部120を利用した紙幣入金動作を説明する。図10は、実施例1の紙幣取扱装置の入金部を利用した大量入金処理を示すフローチャートである。図11~図14は、実施例1の紙幣取扱装置の入金部を利用した各紙幣処理動作の説明図である。図15~図17は、実施例1の現金自動取引装置の入出金部のシャッタの各状態時のイメージ図である。図18~図22は、実施例1の現金自動取引装置の各状態時の外観斜視図である。図23~図26は、実施例1の現金自動取引装置の各操作画面のイメージ図である。
先ず紙幣取扱装置1における入金部120を利用した紙幣の入金処理動作の概略について説明する。この入金処理は、取引異常時等にサポート可能な係員が常時待機する運用時間帯(例えば日中の運用)において、利用者がオープンホッパ方式の入金部120より大量紙幣を投入する場合を想定している。オープンホッパ方式の入金部120は、後述のように紙幣を順次追加投入(積み増し)することが可能であるため、1回の入金操作においてその上限紙幣量が制限される入出金部20を用いた入金取引と比較して、大量の紙幣を入金する取引に適している。入金部120を利用した紙幣の入金処理は、入金部120に投入された紙幣の真偽判別、金種判別、計数、及び収納を連続的に行う直接入金収納処理を主体とする。
図10を参照して実際の運用における大量入金の流れを示しながら、各動作の詳細については図11~17を参照して説明する。現金自動取引装置101は、係員が付近に待機している時間帯では、予め、紙幣取扱装置1のシャッタ120aを開状態に、シャッタ20aを閉状態にしておく(図18参照)。
図10に示す通り、入金時には、現金自動取引装置101は、先ず、画面操作部104に表示される表示画面104aに、入金取引モードの選択画面を表示する(S001及び図23参照)。利用者は、大量入金ボタン104a-3(図23参照)か通常入金ボタン104a-2(図23参照)の何れかを選択する。利用者が大量入金ボタン104a-3を押下すると、大量入金モードが選択され(S002)、現金自動取引装置101は、入金部120に入金紙幣をセットするように利用者を促す(S003)。これは音声出力又は画面操作部104への表示(図24参照)で実施されてもよい。
このとき、図24に示すように、表示画面104aには、取引取消ボタン104a-1、入金開始ボタン104a-4、及び部分画像104a-5が表示される。取引取消ボタン104a-1が押下されると取引が中止され、入金開始ボタン104a-4が押下されると入金が開始される。また、現金自動取引装置101は、シャッタ120aをこのタイミング(利用者が大量入金モードを選択した後)にて閉状態から開状態へ切り替えてもよい。
利用者が入金紙幣を入金部120にセットし(S004、図19、及び図20参照)、表示画面104aに表示されている入金開始ボタン104a-4を押下すると(S005及び図24参照)、現金自動取引装置101は入金処理動作に移る。
入金処理動作では、紙幣取扱装置1は、先ず、入金部120に紙幣があるかどうかを検知センサ175で確認し(S006)、紙幣があれば、紙幣の分離及び搬送を開始する(S007)。なお、現金自動取引装置101は、紙幣取扱装置1による紙幣の分離及び搬送の開始後、表示画面104aの表示を図25に示すような部分画像104a-6を表示する画面に切り替え、入金紙幣の積み増しがある場合に適宜積み増しするように利用者に促してもよい。
図11を参照して動作を説明すると、紙幣取扱装置1は、入金部120からの入金処理動作では、先ず振分ゲート14を搬送路10iと搬送路10eを接続するように切り替える。入金部120に略水平にセットされた複数枚の紙幣は、一枚ずつ分離して下方の搬送路10iへ繰出される。搬送路10iへ繰出された紙幣は、搬送路10e及び搬送路10dを通って識別部30へ向かって搬送される。入金部120から繰り出された紙幣の搬送状態は、搬送路10i、10e、10d中にそれぞれ実装された検知センサ175-aで監視されている。
検知センサ175-aは、紙幣搬送方向に対して垂直方向に、例えば4つのセンサが所定間隔で配置されている。紙幣取扱装置1は、紙幣搬送時に、4つのセンサの内の第1のセンサが紙幣を検知するタイミングと、第2のセンサが紙幣を検知するタイミングとが大きく異なる場合は、紙幣が斜めになっている(スキュー状態)とみなし、搬送異常紙幣と判定する。
また、紙幣取扱装置1は、4つのセンサの内、少なくとも1つのセンサが、搬送状態が正常の紙幣が搬送されたときの紙幣検知時間と比べて十分に長い時間紙幣を検知し続けている場合は、複数の紙幣が連なって搬送されている(連れ出し状態)、もしくは、1枚の紙幣が縦方向になっている(大スキュー状態)とみなし、搬送異常紙幣と判定する。スキュー状態、連れ出し状態、及び大スキュー状態の搬送異常紙幣は、識別部30において搬送異常要因で確実にリジェクト判定される搬送異常紙幣であるので、搬送異常紙幣は識別部30の結果を待たずに紙幣集積部20cへ放出される(S008及び図21参照)。
図12を参照して動作を説明すると、紙幣取扱装置1は、搬送異常紙幣に対する処理は、識別部30の判別結果を待たずに、駆動モータ176の回転速度と回転時間から、搬送異常紙幣が振分ゲート12に到達するタイミングを割り出し、搬送異常紙幣が振分ゲート12に到達する前に、図示せぬ電磁ソレノイドを駆動し、振分ゲート12を切り替えて搬送路10hを形成し、搬送路30aと搬送路10cを接続する。なお、この動作は、搬送異常紙幣が振分ゲート12へ到達するまでに完了する。
ここで原理的には識別部30によって搬送異常紙幣を検出することによっても可能であるが、振分ゲート12が識別部30と隣接しているため、紙幣の搬送速度や識別部30の処理能力によっては、搬送異常紙幣と認識してから振分ゲート12を切り替える処理が間に合わない場合もある。そこで上述のように搬送路中に設けたセンサにて搬送異常を予め検出することによって、確実に紙幣集積部20cへ搬送異常紙幣を搬送することができる。
その後、搬送異常紙幣は、搬送路30a、10h、10cを通って、入出金部20の紙幣集積部20cに戻されて集積される。そして、搬送異常紙幣を利用者により早く返却し、紙幣を再投入してもらうため、現金自動取引装置101は、この段階でシャッタ20aを開ける(S009)。これにより、利用者は紙幣集積部20cから搬送異常紙幣を抜き取り、入金部120に積み増しして再投入することが可能となる(S010及び図22参照)。このとき、現金自動取引装置101は、画面操作部104の表示画面104aに図26に示すような部分画像104a-7及び取引取消ボタン104a-1を表示してもよい。
なお図10のS009のシャッタ20a開処理では、現金自動取引装置101は、全閉状態20a-1で図15に示す状態であるシャッタ20aを、全開状態20a-3(図17参照)からわずかに閉じた位置20a-2(図16参照)で停止させてもよい。シャッタ20aを全開状態20a-3(図17参照)にしてしまうと、後続の搬送異常紙幣が入出金部20の紙幣集積部20cに搬送される際に、紙幣集積部20cから飛び出す可能性があるため、シャッタ20a開処理の際に、シャッタ20aを駆動する時間を監視して、搬送異常紙幣を抜き取る際に邪魔にならない程度に、シャッタ20aを半開き状態20a-2(図16参照)で停止させることで、紙幣の飛び出しを抑止しつつ、紙幣の抜取りを可能にする。
一方、紙幣取扱装置1は、搬送路10i、10e、10d中にそれぞれ実装された検知センサ175-aで監視した結果、搬送異常紙幣でない場合は、識別部30で判別を実施する(S011)。識別部30は、その内部に実装されたセンサによって、通過する紙幣の画像や磁気情報を取得し、取得した情報に基づいて紙幣の真偽、金種、及び正損状態を判別(識別)する。紙幣取扱装置1は、この判別結果によって、紙幣の搬送先を振り分ける。
紙幣取扱装置1は、識別部30での判別の結果、受け入れ可能紙幣を収納部71~73へ搬送する(S012)。図11を参照して動作を説明すると、識別部30を通過した紙幣は、搬送路10aによって搬送され、振分ゲート11によって搬送路50aを通じて下部へ搬送される。さらにこの紙幣は、搬送路50aによって搬送され、識別部30で判別された金種に応じて振分ゲート51~53が切り替えられて、収納部71~73の何れかに収納される。
紙幣取扱装置1は、識別部30での判別の結果、受け入れ不可な紙幣であり、かつ、利用者に返却する紙幣であると判別した場合(以降、この紙幣をリジェクト返却紙幣と呼ぶ)、リジェクト返却紙幣を収納部70へ一時収納する(S012)。
図13を参照して動作を説明すると、識別部30を通過した紙幣は、搬送路10aによって搬送され、振分ゲート11によって搬送路50aを通じて下部へ搬送される。さらにこのリジェクト返却紙幣は、搬送路50aによって搬送され、振分ゲート54が搬送路50bと搬送路70aを接続するように切り替えられることにより、収納部70へ搬送され、一時収納される。
紙幣取扱装置1は、識別部30により、還流に適さない損券や収納部71~73に割り当てられていない非還流の紙幣であると判別された場合(以降、この紙幣をリジェクト回収紙幣と呼ぶ)、リジェクト回収紙幣を収納部74へ搬送する(S012)。
図13を参照して動作を説明すると、識別部30を通過した紙幣は、搬送路10aによって搬送され、振分ゲート11によって搬送路50aを通じて下部へ搬送される。さらにこのリジェクト回収紙幣は、搬送路50aによって搬送され、振分ゲート54が搬送路74aに接続するように切り替えられることにより、収納部74へ搬送される。
入金部120からの入金紙幣搬送完了後、収納部70へ一時収納されたリジェクト返却紙幣は、利用者に返却され再投入が促されることができる。リジェクト返却紙幣がある場合(S013:YES)、紙幣取扱装置1は、収納部70に一時収納された紙幣を、紙幣集積部20cへ搬送する(S014)。
図14を参照して動作を説明すると、収納部70から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路70a、50b、50a、10aを通って識別部30へ搬送され、そこで再判別される。この時、識別部30で再度リジェクト返却紙幣と判別されると、紙幣取扱装置1は、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10cを接続するように切り替えることにより、搬送路10d及び搬送路10cを通って、紙幣集積部20cに紙幣を集積し、利用者に返却する。
一方、識別部30での紙幣の再判別の結果、この紙幣が受入可能であると判別された場合、紙幣取扱装置1は、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替え、振分ゲート14を搬送路10eと搬送路10fを接続するように切り替え、振分ゲート15を搬送路10fと搬送路40aを接続するように切り替える。そして、紙幣取扱装置1は、受入可能な紙幣を、搬送路10d、10e、10f、40aを通って、一時保留部40に集積する。
現金自動取引装置101は、紙幣取扱装置1による収納部70の紙幣の搬送完了後、シャッタ20aを開け(S015)、リジェクト返却紙幣を利用者に返却する(S016)。S016では、利用者に、入出金部20の紙幣集積部20cから返却した紙幣を入金部120に再セットさせてもよい。この際、リジェクト返却紙幣は入金部120と異なる場所にある入出金部20から返却されるため、取引を行っている利用者がそれに気付かない可能性も考えられる。このため入金部120からの入金取引は、上述したように係員が付き添うかもしくは近くに待機しているような状況下で実施されることが望ましい。
上述のようにオープンホッパ方式の入金部120は、紙幣の追加投入(積み増し入金)が可能であるため、入金部120へ一度にセットできない程の大量の紙幣を入金する場合においても、利用者は手持ちの入金用紙幣がなくなるまで順次追加投入していくことができる。また、その途中でリジェクト返却された紙幣についても入出金部20から返却されるため、再度、入金部120から積み増し投入させることも可能である。
入金部120にはホッパ内の紙幣の残留の有無を検知する残留紙幣検知センサが設けられており、紙幣取扱装置1は、残留紙幣検知センサによる紙幣残留なしを検知後、所定の時間が経過すると更なる追加の入金紙幣なしとして紙幣搬送が完了したと判断する(S017)。
現金自動取引装置101は、紙幣取扱装置1による全ての紙幣の分離及び搬送が完了すると(S018)、画面操作部104に表示される表示画面104aに入金金額を表示する(S019)。現金自動取引装置101は、利用者により入金確定ボタンが押下されると(S020)、必要に応じて明細書を印刷する(S021)。利用者は、S021で印刷された明細書を受け取る(S022)。以上で紙幣取扱装置1の入金部120を利用した大量入金処理が終了する。
利用者の入金枚数確定後、一時保留部40に集積された紙幣は、以下の「G:入出金部を利用した紙幣入金動作」で説明する収納動作と同様のルートで各カセットに収納される。つまり、入金部120からの入金において、受入可能な紙幣は、一度リジェクト返却紙幣であると判別されても、返却途中で識別部30を再び通り、再度鑑別することができるため、入金時のリジェクト枚数を減らす効果が期待でき、結果として、入金部120からの入金取引における、紙幣の判別精度を向上させることにつながる。
<G:入出金部を利用した紙幣入金動作>
以下、図27~図32を参照して、入出金部20を利用した紙幣入金動作を説明する。図27は、実施例1の紙幣取扱装置の入出金部を利用した通常入金処理を示すフローチャートである。図28~図29は、実施例1の紙幣取扱装置の入出金部を利用した各紙幣処理動作の説明図である。図30は、実施例1の現金自動取引装置の入金部及び入出金部のシャッタが全閉状態時の外観斜視図である。図31は、実施例1の現金自動取引装置の通常入金時における入出金部への紙幣投入時の外観斜視図である。図32は、実施例1の現金自動取引装置の通常入金時における入金紙幣セットを促すための操作画面のイメージ図である。
先ず紙幣取扱装置1における入出金部20を利用した紙幣の入金処理動作の概略について説明する。この入金処理は、夜間等の係員が居ない運用時間帯や、係員とのやり取りを介さない現金自動取引装置としての運用において、利用者が紙幣を入金する取引を想定している。入出金部20を利用した紙幣の入金処理は、入出金部20の紙幣繰出部20bに投入された紙幣の真偽判別、金種判別、及び計数を行う入金計数処理を主体とする。
図27を用いて実際の運用における通常入金の流れを示しながら、各動作の詳細については図28及び図29を参照して説明する。現金自動取引装置101は、係員が付近に待機していない時間帯は、紙幣取扱装置1のシャッタ120a、シャッタ20aをともに閉状態にしておく(図30参照)。
図27に示す通り、入金時には、現金自動取引装置101は、先ず、画面操作部104に表示される表示画面104aに、入金取引モードの選択画面を表示する(S101及び図23参照)。利用者は、大量入金ボタン104a-3(図23参照)か通常入金ボタン104a-2(図23参照)の何れかを選択する。利用者が通常入金ボタン104a-2を押下すると、通常入金モードが選択され(S102)、現金自動取引装置101は、シャッタ20aを開け(S103)、入出金部20に入金紙幣をセットするように利用者を促す。これは音声又は画面操作部104への表示(図32参照)で実施してもよい。
このとき、図32に示すように、表示画面104aには、取引取消ボタン104a-1、入金開始ボタン104a-4、及び部分画像104a-8が表示される。取引取消ボタン104a-1が押下されると取引が中止し、入金開始ボタン104a-4が押下されると入金が開始される。
利用者が入金紙幣を入出金部20にセットし(S104及び図31参照)、画面操作部104の表示画面104aに表示されている入金開始ボタン104a-4が押下されると(S105)、現金自動取引装置101は、シャッタ20aを閉じ(S106)、入金処理動作に移る。
入金処理動作では、紙幣取扱装置1は、先ず、入出金部20に紙幣があるかどうかを検知センサ175で確認し(S107)、紙幣があれば、紙幣の分離及び搬送を開始する(S108)。
図28を参照して動作を説明すると、紙幣取扱装置1は、入出金部20の紙幣繰出部20bに略立位にセットされた複数枚の紙幣は一枚ずつ分離して下方の搬送路10bへ繰り出す。搬送路10bへ繰出された紙幣は、搬送路10aより識別部30内の搬送路30aを前方から後方へ(図28において右から左へ)通過する。
識別部30では、その内部に実装されたセンサによって、通過する紙幣の画像や磁気情報が取得され、その紙幣の真偽、金種、及び正損状態が判別される(S109)。識別部30を通過した紙幣は、識別部30の後部から搬送路10dを通って一旦上方へ搬送される。紙幣は、搬送路10dを搬送されている間に、識別部30による判別が完了して、その判別結果に応じて振分ゲート13の切り替えが行われる。
すなわち、紙幣取扱装置1は、識別部30によって受け入れ可能な紙幣であると判別された場合、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替え、その紙幣を搬送路10d、10e、10f、40aにより搬送して一時保留部40内に集積する(S110)。
一方、紙幣取扱装置1は、識別部30により受け入れ不可な紙幣であると判別された場合、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10cを接続するように切り替え、その紙幣を紙幣集積部20cに戻して集積し、利用者に返却する(S110)。
現金自動取引装置101は、紙幣取扱装置1が入出金部20に投入された全ての紙幣を処理した後で、リジェクト紙幣がある場合(S111:YES)は、シャッタ20aを開け(S112)、利用者に紙幣集積部20cから紙幣を抜き取らせる(S113)。現金自動取引装置101は、利用者が紙幣を抜き取るとその旨をセンサ(不図示)が検知してシャッタ20aを閉じ(S114)、表示画面104aに入金金額を表示する(S115)。
現金自動取引装置101は、利用者が追加で入金したい場合に画面操作部104の表示画面104a上の追加入金ボタン(不図示)が押下されると(S116)、S103に処理を移す。現金自動取引装置101は、追加入金がない場合は、入金された金額と紙幣取扱装置1が計数した金額とが一致し、利用者によって画面操作部104の表示画面104a上の入金取引確定ボタン(不図示)が押下されると(S117)、一時保留部40に一時収納されていた紙幣を収納部71~74に搬送して収納する(収納処理)(S118)。
図29を参照して、上述の収納処理について説明する。収納処理では、紙幣取扱装置1は、先ず振分ゲート13を一時保留部40と識別部30を接続するように切り替え、振分ゲート11を搬送路10aと搬送路50aへ接続するように切り替える。一時保留部40から一枚ずつ繰出された紙幣は、搬送路40a、10f、10e、10dを通って識別部30へ搬送される。識別部30で再識別され、識別部30通過した紙幣は、搬送路10aによって搬送され、振分ゲート11によって搬送路50aを通じて下部へ搬送される。さらに紙幣は、搬送路50aによって搬送され、識別部30で判別された金種に応じて振分ゲート51~53が切り替えられて、収納部71~73の何れかに収納される。
なお識別部30で再識別された際に搬送異常と判別された紙幣は、リジェクト回収紙幣を収納する収納部74へ搬送される。これにより不適切な紙幣を還流(リサイクル)のため収納庫から繰り出して搬送する際に搬送異常が再び発生すこと等を回避することでき、紙幣取扱装置1及び現金自動取引装置101の正常稼働の継続性を高めることができる。
一方、紙幣取扱装置1は、識別部30により、還流に適さない損券や収納部71~73に割り当てられていない非還流の紙幣であると判別された場合、振分ゲート54を搬送路50bと搬送路74aを接続するように切り替え、非還流の紙幣を収納部74に収納する。
現金自動取引装置1は、紙幣取扱装置1により一時保留部40にある紙幣を全て分離及び搬送完了すると(S119)、必要に応じて明細書を印刷する(S120)。利用者は、S120で印刷された明細書を受け取る(S121)。以上で紙幣取扱装置1の入出金部20を利用した通常入金処理が終了する。
なお、上述の大量入金モードにおいて、搬送異常等によりリジェクト返却された紙幣の枚数が少数であれば、再投入先として入出金部20からの入金取引を選択することも可能である。利用者が、大量入金後の再入金を入出金部20から行うと選択した場合、一時保留部40に紙幣がなければ、直ちに入金計数を行うことができる。一時保留部40に紙幣がある場合は一旦収納処理動作を行って一時保留部40を空にしてから、入金計数を実施する。
上述の大量入金モードと通常入金モードとの違いをまとめると、次のとおりである。
<大量入金モード>
(特徴1)収納部に空き容量がある限りは大量の紙幣を連続して入金可能。
(特徴2)積み増しできるため、利用者の手間が少ない。
(特徴3)入金部120から、一時保留部40を介さず直接収納部70~71に搬送するので搬送距離が短い。
<通常入金モード>
(特徴1)1度にセットできる紙幣枚数に上限がある。
(特徴2)大量入金しようとすると、数回に分けて入金する必要あるため、利用者にとって煩わしい。
(特徴3)一時保留部40に一時的に保管後、計数→収納の流れで紙幣を入金するので搬送距離が長い。
上記それぞれの(特徴1)~(特徴3)の比較より、大量入金モードの方が、入金取引時間を短縮でき、利用者の手間も減らすことができることが分かる。
<H:紙幣出金動作>
次に、図33及び図34を参照して出金取引処理動作について説明する。図33は、実施例1の紙幣取扱装置の入出金部を利用した出金処理動作の説明図である。図34は、実施例1の紙幣取扱装置の入出金部を利用した出金時のリジェクト処理動作の説明図である。
出金取引処理では、金種別に収納された収納部71~73のうち出金が指定された金種の紙幣を収納する収納部から紙幣が一枚ずつ繰り出されて、搬送路50a、10aを通って識別部30(搬送路30a)へ搬送され、識別部30で出金可能な紙幣か否かが判定される。識別部30で判別の結果、出金可能な紙幣であれば、紙幣取扱装置1は、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10cを接続するように切り替えて、紙幣集積部20cに紙幣を集積する(図33参照)。
一方、識別部30で判別の結果、出金不可能な紙幣であれば、紙幣取扱装置1は、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替えて、搬送路10f、10g、50bを通して、振分ゲート54により搬送路74aを接続して収納部74に紙幣を搬送する(図34参照)。この紙幣の識別部30での判別と判別結果に応じた振分ゲート13の切り替え制御は、紙幣が搬送路10dを搬送されている間に完了する。
紙幣の搬送動作が終了すると、入出金部20のシャッタ20aが開き(図1参照)、紙幣集積部20cに集積した紙幣は利用者に抜き取り可能な状態となる。現金自動取引装置1は、利用者が紙幣を抜き取った旨をセンサ(不図示)で検知してシャッタ20aを閉じ、一連の出金取引処理を終了する。このように、出金取引処理動作では、搬送路50a、10a、30a、10d~10gにおいて紙幣を第1の搬送方向(反時計回りの矢印方向(図33及び図34の左回転方向))へ搬送するように動作する。
<I:取忘れ紙幣回収動作>
次に、図35を参照して、取り忘れ紙幣の回収処理動作について説明する。図35は、実施例1の紙幣取扱装置の入出金部を利用した取忘れ紙幣回収処理動作の説明図である。取忘れ紙幣回収処理動作は、入出金部20の紙幣集積部20cに集積された紙幣を利用者が取り忘れた際、その紙幣を収納部74に回収する動作である。
取忘れ紙幣回収動作では、紙幣取扱装置1は、先ず、振分ゲート13を搬送路10dと搬送路10eを接続するように切り替えて、振分ゲート14を搬送路10eと搬送路10fを接続するように切り替えて、振分ゲート15を搬送路10fと搬送路10gを接続するように切り替えて、振分ゲート16を搬送路10gと搬送路50bを接続するように切り替えて、振分ゲート54を搬送路50bと搬送路74aを接続するように切り替える。紙幣集積部20cに出金されたが利用者が取忘れた紙幣は、紙幣集積部20c内で押圧板91に押されて入出金部20の前方へ移動しながら、一枚ずつ搬送路10bへ繰出される。紙幣は、搬送路10a、30a、10d、10e、10f、10g、50b、74aを通過して、収納部74へ収納される。
次に、図36を参照して、他の例による入金紙幣回収処理動作について説明する。図36は、他の例の紙幣取扱装置の入出金部を利用した入金紙幣回収処理動作の説明図である。図28の例では、入金計数処理時に、識別部30で偽札などのように再流通不適紙幣と判別された紙幣は、振分ゲート15を切り替えて一時保留部40に収納した。図36に示す代替例によれば、紙幣取扱装置1は、再流通不適紙幣を一時保留部40に収納せずに、振分ゲート15を搬送路10fと搬送路10gが接続するように切替えて、搬送路10d、10e、10f、10g、50b、74aを通過させて、収納部74に収納する。なお、振分ゲート15の切り替えは、搬送路10dで紙幣を搬送している間に完了する。
以上説明したように実施例1の紙幣取扱装置1及び紙幣取扱装置1を搭載した現金自動取引装置101によれば、通常の入出金部20以外にオープンホッパタイプの入金部120を備えているので、大量の紙幣を持ち込んで入金しようとする利用者にとって短時間での入金取引を行うことができる。
<J:実施例1の現金自動取引装置の運用方法>
オープンホッパタイプの入金部120を使った取引操作は、従来の現金自動取引装置とは異なる部分があるため、係員が必要に応じて利用者の取引操作をサポートできるようにしておくことが望ましい。以下、この点を考慮した実施例1の現金自動取引装置101の装置運用方法について説明する。
図37は、実施例1の現金自動取引装置の運用形態を説明するための図である。図37(a)に示すように、実施例1の現金自動取引システム1Sは、管理センタ内に設置されたサーバ1203と、ネットワーク1204を介して接続された1又は複数の現金自動取引装置101とを有する。
(1)時間帯による装置運用の切替え
係員が常駐するような営業時間帯においては、現金自動取引装置101は入金部120及び入出金部20の何れも使用可能として利用者が選択できるような動作モード(営業時間帯(昼間時間帯)モード)とするように、ネットワーク1204を経由してサーバ1203から「営業時間帯モード」への切替指示が送信される(図37(a)参照)。すなわち、現金自動取引装置101の制御部1201は、サーバ1203からの指示に応じて、利用者に対して、取引時に現金自動取引装置101の画面操作部104の表示画面104a(図23参照)に従って入金部120又は入出金部20の何れを用いて入金を行うかを選択させる。
このとき、利用者が、例えば入出金部20の最大入金可能枚数以上の入金をする場合には入金部120からの入金を促す表示画面104a(図24参照)を表示したり、その利用者の以前の取引履歴等を参照して過去に入金部120からの連続取引にて大量入金を行った履歴がある利用者には入金部120からの入金を促したりすることも可能である。
あるいは、入金部120又は入出金部20の何れかを用いた取引の選択は、取引を行おうとしている利用者を補助するための係員等が現金自動取引装置101に設けた係員専用ボタン等(不図示)を操作することにより行ってもよい。
一方、例えば係員が不在の夜間の運用では、従来の現金自動取引装置と同様又は類似する操作の入出金部20からの入出金取引のみが可能な動作モード(夜間休日(夜間時間帯)モード)とするように、ネットワーク1204を経由してサーバ1203から「夜間休日モード」への切替指示が送信され(図37(a)参照)、利用者が単独で操作する際、入金部120の使用を無効にして戸惑いや操作ミス、紙幣の取り忘れ等が起こらないようにする。すなわち、夜間の運用では、入金部120のシャッタ120aを常時閉じておき、利用者の誤投入を防ぐ。もちろん、上述の入金部選択モードのように利用者に対して入出金部20又は入金部120の何れから入金するかを選択させる画面表示は不要となる。
上述の「営業時間帯モード」と「夜間休日モード」の切替は、別途のタイムテーブル等に切替時間や曜日等を設定することによって自動的に切り替えるようにしてもよいし、係員が手動で切り替えるようにしてもよい。
また、「営業時間帯モード」と「夜間休日モード」の切替は、応対可能な係員の在不在に応じて切り替えてもよい。営業時間内であったとしても、現金自動取引装置101の操作に慣れている係員が外出等で不在の場合もあるからである。このような場合、係員の在店状況は、係員自身による現金自動取引装置101への入力を元に切り替える、あるいは勤務管理装置1205等からの情報を用いて自動的に切り替えることも可能である。
あるいは、営業時間帯は大量入金のみを行うよう入金部120のみを使用可能とし、夜間休日等は従来の現金自動取引装置のように入出金部20のみを使用可能とするように切り替えてもよい。
(2)利用者が係員と協調して現金自動取引装置を操作することを想定した運用方法
上述の構成は利用者が入金部120を利用して入金取引を行った際に異常等があった場合に係員がすぐに応対できるように係員が待機している場合に限定して入金部120の利用を許容するとの考え方に基づくものである。しかし、取引の最初から係員が利用者に付き添って現金自動取引装置を操作すれば、よりスムーズに操作もできるし異常時等にも無用なトラブルの発生を少なくすることが可能となる。具体的には以下のように構成して制御を行う。
現金自動取引装置101の画面操作部104の表示画面104a(図23参照)にて、利用者が入金部120からの取引を選択すると、現金自動取引装置101は応対可能な係員に対してその現金自動取引装置101へ出向いて顧客対応をさせるように指示通知を行う。現金自動取引装置101へ出向いた係員は、現金自動取引装置101に設けられた係員専用の設定部等を用いて、入金部120からの入金が可能となるように現金自動取引装置101を設定する。このタイミングでシャッタ120aを閉から開としてもよい。
ここで、その係員が別の顧客対応等ですぐには対応不可能な場合や所定時間経過しても係員が現金自動取引装置101に到着しない場合、現金自動取引装置101は画面操作部104に、入出金部20を用いた取引を案内したり、係員がいる窓口へ誘導するようなガイダンス画面を表示したりしてもよい。
また、上述の入金部120の選択や係員への通知は、必ずしも現金自動取引装置101にて実施する必要はなく、受付端末(顧客誘導端末)等で行ってもよい。図37(b)に示すように、受付端末1206は、利用者が入出金部20を使用する第1の取引と入金部120を使用する第2の取引との何れかを選択入力する受付画面を表示する。受付端末1206は、利用者が第2の取引を選択入力した場合、係員に対してその旨を通知するとともに、現金自動取引装置101に対して入金部120の使用を要求する第2取引要求コマンドを送信する。現金自動取引装置101は、第2取引要求コマンドを受信した場合、係員の指示に基づいて入金部120の使用を許容する。この場合、係員がすぐに対応できない場合、利用者は係員の到着を待つことを選択することも可能であり、その場合、受付端末1206は番号札を発券することも可能である。
(3)特定の利用者に限定して係員なしで入金部120の利用を許容する運用方法
上述の構成はいずれも係員が異常時対応をすることを前提としたものであったが、現金自動取引装置101の操作に習熟しているような利用者であれば、係員のサポートは不要な場合もある。あるいは、事前に現金自動取引装置101の操作の教育等を実施し、異常時の紙幣取り忘れ等があってもその補償を要求しない旨の念書を銀行側へ提出済みの利用者であれば、係員が不在でも入金部120を用いた取引を許容してもよい。
そこで、図37(c)に示すように、入金部120の単独利用を許容された利用者であることを識別するフラグを利用者のアカウント情報に含めて記憶装置1207に記憶しておき、現金自動取引装置101は、取引開始時の認証において記憶装置1207を参照し、利用者が入金部120の単独利用が許容された利用者であると確認できれば、入金部120及び入出金部20の何れかを選択する表示画面104a(図23参照)を画面操作部104に表示させるようにしてもよい。なお記憶装置1207は、現金自動取引装置101の内部に設けられてもよい。
あるいは、入金部120の単独利用が予め許容された利用者でなくても、取引開始時に画面操作部104にて異常時の操作方法や係員なしでの単独利用に起因するリスク等を説明した上で、係員なしでの操作によって何らかの問題が発生したとしても、店舗や銀行等の現金自動取引装置101の運営者又は管理者への補償要求はしないとの入力を行わせることによって、係員なしでの入金部120の利用を許容するようにしてもよい。