〔分散体〕
本発明の分散体は、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させることにより得られ、粘度が300~30000mPa・sである。
上述のように、従来、ゴム組成物に各種有機短繊維を配合することが検討されていたが、破壊強度、低燃費性、耐摩耗性をバランス良く改善する方法としては不十分であった。そうしたところ、本発明者らは、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させて得られる分散体は高粘度を示し、当該分散体をゴム組成物に配合すると、ゴム組成物の破壊強度、低燃費性、耐摩耗性をバランス良く改善できることを見出した。このように上記分散体は、ゴム組成物に配合することで、ゴム組成物の、破壊強度、低燃費性、及び耐摩耗性をバランス良く改善できる。
このような作用効果が得られる理由として、以下のようなメカニズムが推測される。
オイルをゴム組成物に配合した場合には、オイルは低粘度であるため、通常ゴム組成物に配合されている充填剤の周辺にオイルを配置することは困難であるが、オイルとミクロフィブリル化植物繊維とを混合、分散させて得られる高粘度の分散体をゴム組成物に配合すると、分散体が充填剤の周辺にバルク状で存在することが可能となり、これによって、エネルギーロスが向上する。また、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させることにより、分散体、ゴム組成物中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性を良好なものとすることができ、ミクロフィブリル化植物繊維を配合する効果を十分に発揮することができる。これらにより、破壊強度、低燃費性、耐摩耗性が改善される。
本発明の分散体は、粘度が300~30000mPa・sであり、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させること、すなわち、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させて、粘度が300~30000mPa・sの分散体を調製する工程を含む製造方法などにより、作製される。
上記オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物などが挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
上記オイルとしては、中でも、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステル(植物油脂)であることが好ましい。植物油脂を用いることで、植物油脂はミクロフィブリル化植物繊維、ゴム両材料の界面活性剤としても機能することから、分散体、ゴム組成物中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性をより向上させることができ、本発明の効果をより好適なものとすることができる。ここで、グリセロール脂肪酸トリエステルとは、脂肪酸とグリセリンとのエステル体のことであり、トリグリセリド、トリ-O-アシルグリセリンとも称される。
上記植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルを構成する脂肪酸としては、通常、パルミチン酸(炭素数16、不飽和結合数0)、ステアリン酸(炭素数18、不飽和結合数0)、オレイン酸(炭素数18、不飽和結合数1)、リノール酸(炭素数18、不飽和結合数2)が主成分をなすことが知られており、構成脂肪酸100質量%中のパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸の合計含有量は、通常、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、飽和脂肪酸の含有量が10~25質量%であることが好ましく、下限はより好ましくは12質量%以上であり、上限はより好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。飽和脂肪酸の含有量が10質量%以上であると、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数が多すぎることを十分に防止でき、反応点が多くなりすぎずにより良好な軟化効果が得られ、より良好なグリップ性能が得られる。また、ゴム組成物に配合した場合にゴム成分の架橋効率が低下することも防止でき、より良好な耐摩耗性が得られる。他方、飽和脂肪酸の含有量が25質量%以下であると、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数が少なすぎることを十分に防止でき、ゴム組成物に配合した場合に、グリセロール脂肪酸トリエステルを適度にゴムに拘束でき、グリセロール脂肪酸トリエステルの表面析出を充分に抑制でき、より良好なグリップ性能、低燃費性、耐摩耗性(特に、良好なグリップ性能)が得られる。また、融点の比較的高い飽和脂肪酸量が少ないため、グリセロール脂肪酸トリエステルの融点が低くなり、エネルギーロスが小さくなり、より良好な低燃費性が得られる。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量が50質量%未満であることが好ましく、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、ゴム組成物に配合した場合に、適度な軟化効果と、適度なゴムへの拘束を両立でき、本発明の効果がより好適に得られる。下限は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは14質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸の含有量が好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、ゴム組成物に配合した場合に、適度な軟化効果と、適度なゴムへの拘束をより両立でき、本発明の効果がより好適に得られる。上限は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を2個有する2価不飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは35~80質量%、より好ましくは40~70質量%、更に好ましくは45~65質量%である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、ゴム組成物に配合した場合に、適度な軟化効果と、適度なゴムへの拘束をより両立でき、本発明の効果がより好適に得られる。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和結合を3個有する3価不飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは3~25質量%、より好ましくは5~15質量%である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、ゴム組成物に配合した場合に、適度な軟化効果と、適度なゴムへの拘束をより両立でき、本発明の効果がより好適に得られる。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸100質量%中の、不飽和脂肪酸の合計含有量が、好ましくは75~90質量%、より好ましくは80~88質量%、更に好ましくは82~88質量%、特に好ましくは85~88質量%である。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、ゴム組成物に配合した場合に、適度な軟化効果と、適度なゴムへの拘束をより両立でき、本発明の効果がより好適に得られる。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、下記式(A)を満たすことが好ましい。これにより、グリセロール脂肪酸トリエステル中の不飽和結合数をより適正化でき、ゴム組成物に配合した場合に、適度な軟化効果と、適度なゴムへの拘束をより両立でき、本発明の効果がより好適に得られる。
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、下記式(A)の下限は、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは140以上、特に好ましくは150以上であり、下記式(A)の上限は、好ましくは190以下、より好ましくは180以下、更に好ましくは170以下である。
80≦構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を1個有する1価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×1(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を2個有する2価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×2(不飽和結合数)+構成脂肪酸100質量%中の不飽和結合を3個有する3価不飽和脂肪酸の含有量(質量%)×3(不飽和結合数)≦200 式(A)
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルの場合、構成脂肪酸が有する不飽和結合は、通常、二重結合である。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、構成脂肪酸の平均炭素数が、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは15~21、より好ましくは16~20、更に好ましくは17~19である。
本明細書において、構成脂肪酸の平均炭素数は、以下の式(D)により算出される。
構成脂肪酸の平均炭素数=Σ 構成脂肪酸100質量%中の炭素数nの脂肪酸の含有量(質量%)×n(炭素数)/100 式(D)
上記グリセロール脂肪酸トリエステルは、常温(25℃)で液体であることが好ましい。グリセロール脂肪酸トリエステルの融点は、好ましくは20℃以下、より好ましくは17℃以下、更に好ましくは0℃以下、特に好ましくは-5℃以下である。これにより、より良好な低燃費性、グリップ性能が得られる。
下限は特に限定されないが、良好なグリップ性能が得られるという理由から、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-90℃以上である。
なお、グリセロール脂肪酸トリエステルの融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定できる。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルのヨウ素価は、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上、特に好ましくは100以上、最も好ましくは120以上である。また、上記ヨウ素価は、好ましくは160以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは135以下である。ヨウ素価が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、ヨウ素価とは、グリセロール脂肪酸トリエステル100gにハロゲンを反応させたとき、結合するハロゲンの量をヨウ素のグラム数に換算したものであり、電位差滴定法(JIS K0070)により測定した値である。
上記植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステルとしては、例えば、大豆油、ごま油、米油、紅花油、コーン油、オリーブ油、菜種油等が挙げられる。なかでも、安価かつ大量に入手可能であり、性能の向上効果も高いという理由から、大豆油、ごま油、米油、菜種油が好ましく、大豆油、ごま油、米油がより好ましく、大豆油が更に好ましい。
なお、上記脂肪酸組成は、GLC(気-液クロマトグラフィー)により測定できる。
上記グリセロール脂肪酸トリエステルとしては、例えば、日清オイリオ(株)、J-オイルミルズ(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、ミヨシ油脂(株)、ボーソー油脂(株)等の製品を使用できる。
上記オイルとしてはまた、植物由来のグリセロール脂肪酸トリエステル(植物油脂)をケン化処理して得られたもの(植物油脂のケン化処理物)も好適に用いることができる。
該ケン化処理としては、上記植物油脂に、アルカリを添加して所定温度で一定時間、静置することにより行うことができる。なお、必要に応じて撹拌等を行ってもよい。
上記ケン化処理に用いることができるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン化合物等が挙げられ、ケン化処理の効果の観点から、特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることが好ましい。
上記アルカリの添加量は、特に限定されないが、例えば、上記植物油脂100質量部に対して、下限は0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、上限は20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。アルカリの添加量がこのような範囲であると、ケン化処理を効率的に行うことができる。
上記ケン化処理の温度は、アルカリによるケン化反応が十分な反応速度で進行しうる範囲、及び、植物油脂が変質を起こさない範囲で適宜、設定できるが、通常は20~70℃であるのが好ましく、30~70℃であるのがより好ましい。また処理の時間は、植物油脂を静置して処理を行う場合、処理の温度にもよるが、十分な処理を行うことと、生産性を向上することとを併せ考慮すると30分~48時間であるのが好ましく、1~24時間であるのがより好ましい。
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、破壊強度、耐摩耗性の観点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。なお、典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されていることができる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上記セルロースミクロフィブリルの原料を必要に応じて水酸化ナトリウム等のアルカリで化学処理した後、リファイナー、二軸混練機(二軸押出機)、二軸混練押出機、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等により機械的に磨砕ないし叩解する方法が挙げられる。これらの方法では、化学処理によって原料からリグニンが分離されるため、リグニンを実質的に含有しないミクロフィブリル化植物繊維が得られる。また、その他の方法として、上記セルロースミクロフィブリルの原料を超高圧処理する方法なども挙げられる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、例えば、(株)スギノマシン等の製品を使用できる。
なお、上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、上記製造方法により得られたものに更に、酸化処理や種々の化学変性処理などを施したものや、上記セルロースミクロフィブリルの由来となり得る天然物(例えば、木材、パルプ、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、紙、ホヤセルロース等)をセルロース原料として、酸化処理や種々の化学変性処理などを行い、その後に必要に応じて解繊処理を行ったものも用いることができる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の化学変性の態様としては、例えば、エステル化処理、エーテル化処理、アセタール化処理等が例示される。より具体的には、アセチル化等のアシル化、シアノエチル化、アミノ化、スルホンエステル化、リン酸エステル化、アルキルエステル化、アルキルエーテル化、複合エステル化、β-ケトエステル化、ブチル化等のアルキル化、塩素化、等が好ましく例示される。更には、アルキルカルバメート化、アリールカルバメート化も例示することができる。中でも特に、アミノ化は、分散体中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性をより向上させることができ、本発明の効果をより好適なものとすることができる点で好ましい。
すなわち、上記ミクロフィブリル化植物繊維は、化学変性ミクロフィブリル化植物繊維であり、該化学変性ミクロフィブリル化植物繊維における化学変性が、アセチル化、アミノ化、スルホンエステル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β-ケトエステル化、アルキルカルバメート化、及び、アリールカルバメート化からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。当該化学変性処理はいずれも、ミクロフィブリル化植物繊維を疎水化する処理であり、ミクロフィブリル化植物繊維としてこのような化学変性処理を施したものを用いることによって、分散体中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性をより向上させることができ、本発明の効果をより好適なものとすることができる。
上記化学変性ミクロフィブリル化植物繊維は、置換度が0.2~2.5の範囲内となるように化学変性されていることが好ましい。ここで置換度とは、セルロースの水酸基のうち化学変性によって他の官能基に置換された水酸基のグルコース環単位当りの平均個数を意味し、理論上最大値は3である。該置換度が0.2以上である場合、オイル中での化学変性ミクロフィブリル化植物繊維の分散性が特に良好となり、また、2.5以下である場合に、化学変性ミクロフィブリル化植物繊維がオイル中での分散性に特に優れかつ柔軟性に特に優れ、本発明の効果がより好適に得られる。該置換度は、0.3~2.5の範囲内であることがより好ましく、0.5~2.3の範囲内であることが更に好ましく、0.5~2.0の範囲内であることが特に好ましい。
なお、上記化学変性ミクロフィブリル化植物繊維が2種以上の組み合わせからなる場合、上記置換度は、化学変性ミクロフィブリル化植物繊維全体での平均として算出される。
上記化学変性ミクロフィブリル化植物繊維における該置換度は、例えば、0.5N-NaOHと0.2N-HClとを用いる滴定法やNMR、赤外吸収スペクトル等の測定によって確認できる。
本発明において特に好ましく用いられる化学変性ミクロフィブリル化植物繊維としては、置換度が0.3~2.5(更には0.3~2.0が好ましい)の範囲内のアミノ化ミクロフィブリル化植物繊維を例示できる。アミノ化ミクロフィブリル化植物繊維の置換度は、0.5~2.3の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.7~2.0の範囲内、更に好ましくは、0.9~1.8の範囲内である。
また、上記化学変性ミクロフィブリル化植物繊維がアセチル化ミクロフィブリル化植物繊維である場合には置換度が0.3~2.5、スルホンエステル化ミクロフィブリル化植物繊維である場合には置換度が0.3~1.8、アルキルエステル化ミクロフィブリルセルロースである場合には置換度が0.3~1.8、複合エステル化ミクロフィブリルセルロースである場合には置換度が0.4~1.8、β-ケトエステル化ミクロフィブリルセルロースである場合には置換度が0.3~1.8、アルキルカルバメート化ミクロフィブリルセルロースである場合には置換度が0.3~1.8、アリールカルバメート化ミクロフィブリルセルロースである場合には置換度が0.3~1.8の範囲内であることが好ましい。
上記アセチル化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維に、酢酸、濃硫酸、無水酢酸を加えて反応させる方法等で行なうことができる。より具体的には、例えば、酢酸とトルエンとの混合溶媒中、硫酸触媒存在下で、ミクロフィブリル化植物繊維と無水酢酸とを反応させてアセチル化反応を進行させ、その後、溶媒を水に置き換える方法等、従来公知の方法で行なうことができる。
上記アミノ化は、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)等のN-オキシル化合物を用いた酸化処理を行った後に、例えば、アルコール(例えば、エタノール等の炭素数1~10のアルコール(好ましくは炭素数1~5のアルコール、より好ましくは炭素数1~4の第1級アルコール))中で、アミン化合物(例えば、オレイルアミン等の炭素数1~30の第1級アミン化合物(好ましくは飽和結合又は不飽和結合を有する炭素数3~25の第1級アミン化合物、より好ましくは不飽和結合を有する炭素数6~23の第1級アミン化合物、更に好ましくは不飽和二重結合を有する炭素数10~20の第1級アミン化合物))や4級アルキルアンモニウム塩(好ましくは、炭素数1~30の4級アルキルアンモニウム塩、より好ましくは、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド等の炭素数1~20の4級アルキルアンモニウムハライド)と反応させ、親核置換反応させる方法や、トシルエステル化など公知の方法により行なうことができる。
上記スルホンエステル化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維を硫酸に溶解して、水中に投入するのみの簡単な操作で行なうことができる。他にも、無水硫酸ガス処理、クロルスルホン酸とピリジンによって処理する方法等で行なうことができる。
上記リン酸エステル化は、例えば、ジメチルアミン処理等を施したミクロフィブリル化植物繊維をリン酸と尿素とで処理する方法により行なうことができる。
上記アルキルエステル化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維を塩基性条件下でカルボン酸クロライドを用いて反応させるSchotten-Baumann法(ショッテン・バウマン法)で行うことができ、また、上記アルキルエーテル化は、ミクロフィブリル化植物繊維を塩基性条件下でハロゲン化アルキルを用いて反応させるWilliamson法等で行なうことができる。
上記塩素化は、例えば、DMF(ジメチルホルムアミド)中で塩化チオニルを加えて加熱する方法で行なうことができる。
上記複合エステル化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維に2種類以上のカルボン酸無水物またはカルボン酸クロライドを塩基性条件下で反応させる方法で行なうことができる。
上記β-ケトエステル化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維にジケテンやアルキルケテンダイマーを反応させる方法、もしくはミクロフィブリル化植物繊維とアルキルアセトアセテートのようなβ-ケトエステル化合物のエステル交換反応により行なうことができる。
上記アルキルカルバメート化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維にアルキルイソシアナートを塩基性触媒またはスズ触媒存在下で反応させる方法で行なうことができる。
上記アリールカルバメート化は、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維にアリールイソシアナートを塩基性触媒またはスズ触媒存在下で反応させる方法で行なうことができる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は、10μm以下であることが好ましい。上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径がこのような範囲であることにより、分散体中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性をより向上させることができ、本発明の効果をより好適なものとすることができる。また、加工中のミクロフィブリル化植物繊維の破損が抑えられる傾向にある。当該平均繊維径としては、本発明の効果がより好適に得られるという点から、500nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、50nm以下がより更に好ましい。また、上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径の下限は特に制限されないが、ミクロフィブリル化植物繊維の絡まりがほどけにくく、分散し難いという理由から、4nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上が更に好ましい。
上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維長は、100nm以上であることが好ましい。より好ましくは300nm以上、更に好ましくは500nm以上である。また、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、50μm以下がより更に好ましく、3μm以下が特に好ましく、1μm以下が最も好ましい。平均繊維長が下限未満の場合や上限を超える場合は、前述の平均繊維径と同様の傾向がある。また、このような平均繊維長を有するミクロフィブリル化植物繊維を用いることで、ゴム組成物に配合した場合に、繊維エッジ近傍のゴムマトリクスに歪みが集中するのを抑制でき、破壊強度、耐摩耗性がより良好となる傾向がある。
なお、上記ミクロフィブリル化植物繊維が2種以上の組み合わせからなる場合、上記平均繊維径、上記平均繊維長は、ミクロフィブリル化植物繊維全体での平均として算出される。
本明細書において、上記ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真による画像解析、透過型電子顕微鏡写真による画像解析、原子間力顕微鏡写真による画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維は、水中に分散させた水溶液(ミクロフィブリル化植物繊維水溶液)の状態でオイルと混合、分散させてもよいし、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液をエタノール等で溶媒置換した後、オイルと混合、分散させてもよいし、あるいは、ミクロフィブリル化植物繊維をそのままオイルと混合、分散させてもよい。なお、ミクロフィブリル化植物繊維水溶液の状態でオイルと混合した場合、その後、必要に応じて、例えば、塩酸や硫酸等の強酸を添加して、加熱(例えば、120~200℃、好ましくは140~180℃)し、共沸させるなどして水分を除去すればよい。なお、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させる際に後述する分散助剤を用いる場合には、当該水分を除去する過程で併せて分散助剤も除去される。
上記ミクロフィブリル化植物繊維水溶液は、公知の方法で製造でき、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダ―ミルなどを用いてミクロフィブリル化植物繊維を水中に分散させることで調製できる。調製の際の温度や時間も、ミクロフィブリル化植物繊維が水中に十分分散するよう、通常行われる範囲で適宜設定することができる。
上記ミクロフィブリル化植物繊維水溶液中の、ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、好ましくは0.2~20質量%、より好ましくは0.5~10質量%、更に好ましくは0.5~3質量%である。
ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させて、分散体を調製する工程は、これらを順次滴下、注入等行ったり、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合したりした後、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダ―ミル等を用いる公知の方法で分散させることにより調製できる。調製の際の温度や時間は、ミクロフィブリル化植物繊維がオイルに十分分散するよう、通常行われる範囲で適宜設定したり、分散体が所望の粘度となるよう分散体の粘度を測定しながら適宜調整したりすることができる。
また、上記分散体を調製する際には、オイル、ミクロフィブリル化植物繊維に加えて、分散助剤等の他の成分を配合してもよい。
上記分散助剤としては、例えば、トルエン、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。
上記分散助剤を配合する場合、分散助剤の配合量は、オイル100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましく、80質量部以上が特に好ましい。また、200質量部以下が好ましく、180質量部以下がより好ましく、150質量部以下が更に好ましい。分散助剤の配合量をこのような範囲とすると、分散体中でのミクロフィブリル化植物繊維の分散性をより向上させることができる。
上記調製工程により、粘度が300~30000mPa・sの分散体が調製される。調製される分散体の粘度としては、ゴム組成物に配合した場合の、破壊強度、低燃費性、耐摩耗性の改善の観点から、1000mPa・s以上であることが好ましく、5000mPa・s以上であることがより好ましく、10000mPa・s以上であることが更に好ましく、15000mPa・s以上であることがより更に好ましく、20000mPa・s以上であることが特に好ましく、25000mPa・s以上であることが最も好ましい。
上記分散体の粘度は、40℃で、音叉型振動式粘度計により測定される値である。
また、上記分散体の粘度は、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させて分散体を調製する際、あるいは、調製した後に、当該分散体に更に樹脂を分散、溶解させることで調整できる。
上記樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、エポキシ樹脂、ロジン樹脂などが挙げられる。これら樹脂としては、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記テルペン系樹脂とは、αピネン、βピネン、カンフェル、ジペテンなどのテルペン化合物を重合して得られる樹脂や、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料として得られる樹脂であるテルペンフェノールに代表されるテルペン系樹脂である。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールとエピハロヒドリン類とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、およびこれを更にノボラック樹脂で変性した変性エポキシ樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック樹脂のエポキシ化物;水素化ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体等の二価アルコールとエピハロヒドリン類とから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ハイドロキノン、カテコール等の多価フェノールとエピハロヒドリン類とから誘導されるエポキシ樹脂などが挙げられる。
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、又は、これらの水素添加物に代表されるロジン樹脂などが挙げられる。
上記分散体において、上記オイル100質量部に対する上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、1~10質量部であることが好ましい。このような割合でオイルにミクロフィブリル化植物繊維を分散させることにより、オイルにミクロフィブリル化植物繊維を分散させる効果を十分に得ることができ、かつミクロフィブリル化植物繊維を用いたことによる効果も十分に得られ、本発明の効果がより好適に得られる。該含有量としては、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、5質量部以上がより更に好ましく、7質量部以上が特に好ましい。
上記分散体中の上記オイルの含有量は、上記分散体100質量%中、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。また、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。分散体中のオイルの含有量がこのような範囲であると、本発明の効果がより好適に得られる。
上記分散体中の上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、上記分散体100質量%中、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下がより更に好ましい。分散体中のミクロフィブリル化植物繊維の含有量がこのような範囲であると、本発明の効果がより好適に得られる。
〔ゴム組成物〕
上記ゴム組成物は、上記分散体及びゴム成分を含む。上記分散体を用いることで、ミクロフィブリル化植物繊維を含む高粘度の分散体を配合することとなり、これにより、破壊強度、低燃費性、及び耐摩耗性をバランス良く改善できる。
上記ゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。
上記ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ゴム成分としては、SBR、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、SBRがより好ましい。
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が20万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
ゴム成分は、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、前記効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H1-NMR測定により算出される。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対する上記分散体の含有量は、1~30質量部である。上記分散体をこのような含有量で配合することにより前記効果が得られる。該含有量としては、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、27質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。
上記ゴム組成物において、上記ミクロフィブリル化植物繊維の含有量(固形分)は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。ゴム組成物中のミクロフィブリル化植物繊維の含有量がこのような範囲であると、前記効果がより好適に得られる。
上記ゴム組成物において、上記オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.9質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、9質量部以上が更に好ましく、12質量部以上がより更に好ましく、13質量部以上が特に好ましい。また、25質量部以下が好ましく、23質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。ゴム組成物中のオイルの含有量がこのような範囲であると、前記効果がより好適に得られる。
上記ゴム組成物は、前記性能バランスの観点から、充填剤としてシリカを含むことが好ましい。シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能、操縦安定性が得られる傾向がある。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは170質量部以下、特に好ましくは100質量部以下、最も好ましくは80質量部以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは70m2/g以上、より好ましくは140m2/g以上、更に好ましくは160m2/g以上である。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能、破壊強度が得られる傾向がある。また、シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。上限以下にすることで、良好な分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
(シランカップリング剤)
上記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、良好な破壊強度等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、前記性能バランスの観点から、充填剤としてカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、グリップ性能等が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物の良好な加工性が得られる傾向がある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、グリップ性能が得られる傾向がある。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
上記ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外の他の充填剤を配合してもよい。他の充填剤としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。
上記ゴム組成物は、上記オイル以外の他の可塑剤を配合してもよい。他の可塑剤としては、特に限定されないが、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、液状樹脂などが挙げられる。これら可塑剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記液状ポリマー(液状ジエン系重合体)とは、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×103~2.0×105であることが好ましく、3.0×103~1.5×104であることがより好ましい。
なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
上記液状樹脂としては、特に制限されないが、例えば、液状の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、またはこれらの水素添加物などが挙げられる。
液状芳香族ビニル重合体とは、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体、α-メチルスチレンの単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体などの液状樹脂が挙げられる。
液状クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれていてもよいモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどの液状樹脂が挙げられる。
液状インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む液状樹脂である。
液状テルペン樹脂とは、αピネン、βピネン、カンフェル、ジペテンなどのテルペン化合物を重合して得られる樹脂や、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料として得られる樹脂であるテルペンフェノールに代表される液状テルペン系樹脂である。
液状ロジン樹脂とは、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、または、これらの水素添加物に代表される液状ロジン系樹脂である。
上記ゴム組成物には、固体樹脂(常温(25℃)で固体状態のポリマー)を配合してもよい。
固体樹脂を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
固体樹脂としては、特に限定されないが、例えば、固体状のスチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いた固体状ポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
上記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
なかでも、固体状のα-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
固体状のクマロンインデン樹脂としては、前述の液状状態のクマロンインデン樹脂と同様の構成単位を有する固体樹脂が挙げられる。
固体状のテルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
固体状のポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂等の固体樹脂も挙げられる。
固体状のテルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた固体樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
固体状の芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
固体状のp-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p-t-ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる固体樹脂が挙げられる。
固体状のアクリル系樹脂としては特に限定されないが、不純物が少なく、分子量分布がシャープな樹脂が得られるという点から、無溶剤型アクリル系固体樹脂を好適に使用できる。
固体状の無溶剤型アクリル樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
固体状のアクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
上述のように、固体状のアクリル系樹脂としては、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないもの、すなわち、純度が高いものが好ましい。固体状のアクリル系樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
固体状のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
また、固体状のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
固体状のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。
また、固体状のアクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
他の可塑剤、固体樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
上記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。下限以上にすることで、充分な耐オゾン性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。上限以下にすることで、良好な外観が得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ステアリン酸の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛の含有量は、前記性能バランスの観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
上記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。なお、ワックスの含有量は、耐オゾン性、コストの点から、適宜設定すれば良い。
上記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な前記性能バランスを付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な前記性能バランスが得られる傾向がある。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3~10質量部、好ましくは0.5~7質量部である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記性能バランスの観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
上記ゴム組成物には、上記成分以外にも、離型剤や顔料等の応用分野に従って、それらの使用に使われる通常の添加物を適宜配合してもよい。
上記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
上記ゴム組成物は、タイヤ、靴底ゴム、床材ゴム、防振ゴム、免震ゴム、ブチル枠ゴム、ベルト、ホース、パッキン、薬栓、その他のゴム製工業製品等に用いることができる。特に、破壊強度、低燃費性、及び耐摩耗性をバランス良く改善できることから、タイヤ用ゴム組成物として用いることが好ましい。
上記ゴム組成物は空気入りタイヤに好適に使用できる。上記空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、必要に応じて各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ミクロフィブリル化植物繊維:(株)スギノマシン製のバイオマスナノファイバー(製品名「BiNFi-s セルロース」、固形分:2質量%、水分:98質量%、平均繊維径:20~50nm、平均繊維長:500~1000nm)
オイル:日清オイリオ(株)製の大豆油(各特性を表1に示す。なお、表1中の脂肪酸の含有量は、構成脂肪酸100質量%中の各脂肪酸の含有量(質量%)を意味する。)
TEMPO:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル
臭化ナトリウム:和光純薬工業(株)製
次亜塩素酸ナトリウム:東京化成工業(株)製
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
プロセスオイル:(株)ジャパンエナジー製のX140(アロマ系プロセスオイル)
SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220
シリカ:エボニックデグザ社製のウルトラシルVN3(N2SA172m2/g)
液状ポリマー:液状SBR、サートマー社製のRICON100(Mw:5000)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
シランカップリング剤:エボニックデグザ社製のSi266
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
<分散体の作製>
(実施例1)
ミクロフィブリル化植物繊維500gに純水1000gを添加し、ミクロフィブリル化植物繊維の0.5質量%(固形分濃度)懸濁液を作製し、高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)で約5分撹拌して均一な水分散液を調製した。
オイル100質量部に対して、上記調製した水分散液をミクロフィブリル化植物繊維の乾燥重量(固形分)が5質量部となるように添加し、更にトルエンをオイル100質量部に対して100質量部添加して、混合した。該混合物に塩酸を少量添加し、150℃に加熱して共沸させて水分を除去した。水分除去後の混合物を高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)を用いて50℃で5分撹拌、混合して、分散体(分散体1)を調製した。分散体1の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、5000mPa・sであった。
(実施例2)
ミクロフィブリル化植物繊維10g、TEMPO150mg、臭化ナトリウム1000mgを水1000mLに分散させた後、15質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのミクロフィブリル化植物繊維(絶乾)に対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は3MのNaOH水溶液を滴下してpHを10.0に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了とみなし、反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返し、固形分量15質量%の水を含浸させた反応物繊維を得た。そして、該反応物繊維に水を加え、固形分量1質量%スラリーとした。
酸化されたミクロフィブリル化植物繊維(固形分:1質量%)に、塩酸を滴下してpH2に調整した。その後、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドを0.5g添加してアミノ化ミクロフィブリル化植物繊維を作製した。得られたアミノ化ミクロフィブリル化植物繊維の平均繊維径は10nm、平均繊維長は2μm、置換度は0.5であった。
ここで、マイカ切片上に固定したアミノ化ミクロフィブリル化植物繊維を走査型プローブ顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製)で観察(3000nm×3000nm)し、繊維50本分の繊維幅を測定して、平均繊維径を算出した。平均繊維長は、得られた観察画像から画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)を用いて算出した。
また、アミノ化ミクロフィブリル化植物繊維のアミノ置換度は、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)により測定した。
オイル100質量部に対して、アミノ化ミクロフィブリル化植物繊維を乾燥重量(固形分)で5質量部添加して、混合した。該混合物を高速ホモジナイザー(IKAジャパン社製の「T50」、回転数:8000rpm)を用いて50℃で5分撹拌、混合して、分散体(分散体2)を調製した。分散体2の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、12000mPa・sであった。
(実施例3)
オイル100質量部に対して、アミノ化ミクロフィブリル化植物繊維を乾燥重量(固形分)で10質量部添加した以外は、実施例2と同様にして分散体(分散体3)を調製した。分散体3の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、30000mPa・sであった。
(実施例4)
NaOH2gを水50mLに溶解させて、オイル100gに添加して45℃で1時間反応させて、ケン化処理オイルを得た。
オイルに代えてケン化処理オイルを用いた以外は、実施例3と同様にして分散体(分散体4)を調製した。分散体4の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、8000mPa・sであった。
(実施例5)
NaOH4gを水50mLに溶解させて、オイル100gに添加して45℃で1時間反応させて、ケン化処理オイルを得た以外は、実施例4と同様にして分散体(分散体5)を調製した。分散体5の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、12000mPa・sであった。
(実施例6)
NaOH6gを水50mLに溶解させて、オイル100gに添加して45℃で1時間反応させて、ケン化処理オイルを得た以外は、実施例4と同様にして分散体(分散体6)を調製した。分散体6の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、25000mPa・sであった。
(実施例7)
オイルに代えてプロセスオイルを用いた以外は、実施例3と同様にして分散体(分散体7)を調製した。分散体7の40℃での粘度を、音叉型振動式粘度計により測定したところ、30000mPa・sであった。
<加硫ゴム組成物の作製>
表2に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃で4分間混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して80℃で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
<評価項目及び試験方法>
得られた加硫ゴム組成物について、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
(破壊強度)
上記加硫ゴム組成物について、JIS K 6251に準じて引張試験を行い、破断伸びを測定した。測定結果を、下記式により比較例11を100とした指数で示した。指数が大きいほど破壊強度が大きいことを示している。
(破壊強度指数)=(各配合の破壊強度)/(比較例11の破壊強度)×100
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で加硫ゴム組成物のtanδを測定した。測定結果を、下記式により比較例11を100とした指数で示した。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示している。
(低燃費性指数)=(比較例11のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(耐摩耗性)
LAT試験機(Laboratory Abration and Skid Tester)を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件にて、各加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。測定結果を、下記式により比較例11を100とした指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示している。
(耐摩耗性指数)=(各配合の容積損失量)/(比較例11の容積損失量)×100
表2より、ミクロフィブリル化植物繊維とオイルとを混合、分散させることにより得られ、粘度が300~30000mPa・sである分散体を配合した実施例では、破壊強度、低燃費性、及び耐摩耗性をバランス良く顕著に改善できることが明らかとなった。