JP7241849B2 - 熱伝導性組成物 - Google Patents

熱伝導性組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7241849B2
JP7241849B2 JP2021187826A JP2021187826A JP7241849B2 JP 7241849 B2 JP7241849 B2 JP 7241849B2 JP 2021187826 A JP2021187826 A JP 2021187826A JP 2021187826 A JP2021187826 A JP 2021187826A JP 7241849 B2 JP7241849 B2 JP 7241849B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermally conductive
propylene
molded article
mass
metal oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021187826A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022010396A (ja
Inventor
奨 齋藤
将寿 佐々木
健夫 高島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Publication of JP2022010396A publication Critical patent/JP2022010396A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7241849B2 publication Critical patent/JP7241849B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Containers Having Bodies Formed In One Piece (AREA)

Description

本発明は、例えば容器、食器、放熱部材及びその他の各種用途に有用な、熱可塑性樹脂及び熱伝導性金属酸化物を含有する熱伝導性組成物に関する。
一般的な陶磁器からなる食器や容器と比較して、熱可塑性樹脂製の食器や容器は射出成形等により容易に成形可能であり、しかも割れにくいという利点がある。また、以下の通り臭気防止、成形性、物性等を向上することを目的として、熱可塑性樹脂に対し各種の充填剤を添加することが提案されている。
特許文献1には、樹脂製容器の臭気の問題を解決することを目的として、合成樹脂(A)と、チタン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム及び珪素からなる群より選ばれる一種類以上の元素と亜鉛とを主成分とする酸化物凝集体粒子(B)を含有する合成樹脂容器が記載されている。
特許文献2には、ポリオレフィン樹脂の真空成型時のシートの垂れ下がりを防止することを目的として、ポリオレフィン樹脂80~20質量部と無機充填剤20~80質量部を含有するポリオレフィン樹脂組成物が記載され、無機充填剤の具体例として金属酸化物等も挙げられている。
特許文献3には、ポリエステル樹脂の機械的性質の向上、廃棄の際の燃焼発熱量の低下及び廃棄容易性を目的として、特定の組成及び物性を有するポリエステル樹脂が記載され、このポリエステル樹脂に対して金属酸化物等の充填剤を10~70質量%ブレンドしても良いことも記載されている。
特許文献4には、樹脂製食器類の高剛性化、高耐熱化、耐アルカリ性及び表面外観の向上を目的として、無機充填剤を1~60質量%含む熱可塑性樹脂組成物が記載され、無機充填剤の具体例として金属酸化物等も挙げられている。
特開平3-200875号公報 特開昭52-15542号公報 特開平6-172620号公報 特開2006-137867号公報
本発明者らは、熱可塑性樹脂製の食器や容器の製品化を進める際に、陶磁器からなる食器や容器と比較して熱可塑性樹脂製の食器や容器は料理等の内容物の温冷感が感じにくく、熱い料理や冷たい飲み物等の食事を楽しむ際に違和感があるという点、及び、手で持った際の重量感や安定感が不足している点に着目した。このような点は特許文献1~4では全く検討されていない。
例えば、特許文献1の合成樹脂容器では、チタン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム及び珪素からなる群より選ばれる一種類以上の元素と亜鉛とを主成分とする酸化物凝集体粒子(B)の配合量は0.1~20質量%であり、この程度の少ない配合量では内容物の温冷感は感じにくく且つ重量感や安定感も不十分である。また、特許文献1における酸化物凝集体粒子(B)は単に臭気の問題を解決する為に配合されるものなので、20質量%を超えるような配合量は必要とされない。
特許文献2のポリオレフィン樹脂組成物では、一応、無機充填剤の配合量が20~80質量部とされているが、実施例で配合されている無機充填剤はタルクとカオリンだけであり、熱伝導性の高い金属酸化物は実際には配合されてない。また特許文献2に記載される無機充填剤の具体例では、樹脂との混練性が比較的良好なタルクやカオリン等と樹脂との混練性が劣る金属酸化物等が併記列挙されていることから、無機充填剤の配合量のうち例えば50~80質量部程度の多い配合量の範囲は、樹脂との混練性が比較的良好なタルクやカオリン等を使用した場合の範囲を意味することは明らかである。そして、特許文献2の実施例のようにタルクやカオリンを配合したとしても、内容物の温冷感は感じにくく且つ重量感や安定感も不十分である。また、特許文献2における無機充填剤は、真空成型時のシートの垂れ下がりを防止する、すなわち真空成型による成形性を改善する為に配合されるものなので、混練性が劣る金属酸化物を多量に配合して逆にその成形性を低下させてしまうような態様を採用する筈がない。
特許文献3のポリエステル樹脂組成物では、一応、充填剤の配合量が10~70質量%とされているが、実施例で配合されている充填剤はタルクと炭酸カルシウムだけであり、熱伝導性の高い金属酸化物は実際には配合されてない。また特許文献3に記載される充填剤の具体例では、特許文献2と同様に樹脂との混練性が比較的良好なものと混練性が劣るものが併記列挙されていることから、充填剤の配合量のうち例えば50~70質量%程度の多い配合量の範囲は、樹脂との混練性が比較的良好なタルクや炭酸カルシウム等を使用した場合の範囲を意味することは明らかである。そして、特許文献3の実施例のようにタルクや炭酸カルシウムを配合したとしても、内容物の温冷感は感じにくく且つ重量感や安定感も不十分である。また、特許文献3の目的の1つは廃棄容易性なので、廃棄の観点からは必ずしも好ましいとは言えない金属酸化物を多量に配合するような態様を採用する筈がない。
特許文献4の熱可塑性樹脂組成物では、一応、無機充填剤の配合量が1~60質量%とされているが、実施例で配合されているタルクとマイカだけであり、熱伝導性の高い金属酸化物は実際には配合されてない。また特許文献4に記載される無機充填剤の具体例では、特許文献2と同様に樹脂との混練性が比較的良好なものと混練性が劣るものが併記列挙されていることから、無機充填剤の配合量のうち例えば50~60質量%程度の多い配合量の範囲は、樹脂との混練性が比較的良好なタルクやマイカ等を使用した場合の範囲を意味することは明らかである。そして、特許文献4の実施例のようにタルクやマイカを配合したとしても、内容物の温冷感は感じにくく且つ重量感や安定感も不十分である。また、特許文献4の目的の1つは表面外観の向上なので、混練性が劣る金属酸化物を多量に配合して逆にその外観に悪影響を及しかねない態様を採用する筈がない。
以上の通り、特許文献1~4では、熱伝導性の高い金属酸化物を多量配合することは全く示唆されておらず、また特許文献1~4の充填剤を配合した樹脂成形体を食器や容器に使用したとしても、内容物の温冷感は感じにくく且つ重量感や安定感も不十分である。
本発明は、以上説明した従来技術の課題を解決する為になされたものである。すなわち本発明の目的は、特定の用途に使用した場合、内容物の温冷感を感じ易く且つ重量感や安定感が十分な熱伝導性組成物、及びその組成物の好適な用途を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂(A)に特定量の熱伝導性金属酸化物(B)を配合することが非常に効果的であることを見出し、さらに、得られる組成物は種々の特定用途に好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、以下の事項により特定される。
[1]熱可塑性樹脂(A)10~50質量部及び熱伝導性金属酸化物(B)50~90質量部(熱可塑性樹脂(A)と熱伝導性金属酸化物(B)の合計100質量部)を含有する熱伝導性組成物。
[2]熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィン系樹脂を含む前記[1]に記載の熱伝導性組成物。
[3]熱可塑性樹脂(A)のASTM D1238Eに準じて230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が11~100g/10分である前記[1]又は[2]に記載の熱伝導性組成物。
[4]熱伝導性金属酸化物(B)が酸化マグネシウムを含む前記[1]~[3]の何れかに記載の熱伝導性組成物。
[5]熱伝導性金属酸化物(B)の熱伝導率が1~500W/mKである前記[1]~[4]の何れかに記載の熱伝導性組成物。
[6]熱伝導性金属酸化物(B)の平均粒子径が0.1~100μmである前記[1]~[5]の何れかに記載の熱伝導性組成物。
[7]熱伝導性組成物の熱伝導率が0.5~5W/mKである前記[1]~[6]の何れかに記載の熱伝導性組成物。
[8]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む容器。
[9]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む食器。
[10]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む放熱部材。
「11」前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む水廻り構造材。
[12]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む電子機器筐体。
[13]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む時計外装材。
[14]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含むタンブラー。
[15]前記[1]~[7]の何れかに記載の熱伝導性組成物を含む日用雑貨。
本発明においては、熱可塑性樹脂(A)に熱伝導性金属酸化物(B)を比較的多量の特定量で配合するので、組成物の熱伝導性が飛躍的に向上し、また質量も増大する。このような熱伝導性組成物を例えば食器や容器の用途に使用すると、料理等の内容物の温冷感が十分伝わり、熱い料理や冷たい飲み物等の食事を楽しむことができ、さらには手で持った際の重量感や安定感も十分である。なお、このような熱伝導性組成物は、優れた熱伝導性を有するので、放熱部材(例えば放熱シート)の用途にも好適である。また、水廻り構造材、電子機器筐体、時計外装材、タンブラー及び日用雑貨の用途にも好適である。
実施例2及び比較例2に関する難燃試験後の試験片の状態を示す写真である。
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)の種類は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、等の各種の熱可塑性樹脂を使用できる。2種以上の熱可塑性樹脂を併用しても良い。中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂が挙げられる。特に、プロピレン系樹脂が好ましい。プロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体であっても良いし、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体であっても良い。特にプロピレンと他のα-オレフィンの共重合体が好ましい。この共重合体はブロック共重合体でも良いし、ランダム共重合体でも良い。
プロピレンと共重合させる他のα-オレフィンの具体例としては、エチレン、1-ブテン、1ーペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テ卜ラドデセン、1-ヘキサドデセン、1-オクタドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、ジエチル-1-ブテン、トリメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジメチル-1-ペンテン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、メチルエチル-1-へプテン、トリメチル-1-へプテン、エチル-1-オクテン、メチル-1-ノネン等のエチレン及び炭素原子数4~20のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及び炭素原子数4~8のα-オレフィンが好ましく、特にエチレン、1-ヘキセン及び1-オクテンがより好ましい。
プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体の好適な具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン・エチレン共重合体が特に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂(A)は、ASTM D1238Eに準じて230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは11~100g/10分、より好ましくは20~90g/10分である。
熱可塑性樹脂(A)がプロピレン・エチレンブロック共重合体である場合、プロピレン・エチレンブロック共重合体の室温デカン可溶部量は、好ましくは8重量%以上35重量%以下、より好ましくは8重量%以上28重量%以下である。また、室温デカン可溶部の極限粘度[η]は、好ましくは1.0dl/g以上10.0dl/g以下である。また室温デカン可溶部のエチレン量は、好ましくは33モル%以上48モル%以下、より好ましくは37モル%以上43モル%以下である。
ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂(A)のJIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、好ましくは130~170℃、より好ましくは130~165℃、特に好ましくは135~160℃である。
熱可塑性樹脂(A)がプロピレン単独重合体である場合、好ましいMFRは前記の通りであり、好ましい融点は155~170℃、より好ましくは158~165℃である。
熱可塑性樹脂(A)がプロピレン・エチレンランダム共重合体である場合、プロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン量は、好ましくは1.9~5.4質量%、より好ましくは2.0~4.8質量%である。また、プロピレン・エチレンランダム共重合体のJIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)で測定される結晶融点は、好ましくは通常130~150℃、より好ましくは130~145℃、特に好ましくは135~145℃である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体及びプロピレン・エチレンランダム共重合体は、1種単独で使用してもよく、2種以上の共重合体を混合して使用してもよい。例えばMFR調整の為に2種以上の共重合体を混合することもできる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、例えば、固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分とを含むオレフィン重合用触媒にてプロピレンを重合し、さらにプロピレンとエチレンを共重合させることにより製造できる。固体状チタン触媒成分としては、例えばチタン、マグネシウム、ハロゲン及び必要に応じて電子供与体を含む公知の固体状チタン触媒成分を使用できる。有機金属化合物触媒成分としては、例えば有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物等を使用でき、特に有機アルミニウム化合物が好ましい。
プロピレン・エチレンブロック共重合体を構成する室温n-デカンに不溶な部分は、主としてプロピレン重合体成分から構成される。一方、室温n-デカンに可溶な部分は、主としてプロピレン・エチレン共重合体ゴム成分から構成される。したがって、以下の二つの重合工程(重合工程1及び重合工程2)を連続的に実施することによって、プロピレン・エチレンブロック共重合体を得ることができる。
[重合工程1]
固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレンを重合し、プロピレン重合体成分を製造する工程(プロピレン重合体製造工程)。
[重合工程2]
固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレン及びエチレンを共重合してプロピレン-エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程(共重合体ゴム製造工程)。
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、このような製造方法で製造されることが好ましく、重合工程1を前段で行い、重合工程2を後段で行うことがより好ましい。また、各重合工程(重合工程1、重合工程2)を2槽以上の重合槽を用いて行うこともできる。ブロック共重合体中のデカン可溶部の含有量は、例えば工程1と工程2の重合時間(滞留時間)により調整すればよい。
プロピレン・エチレンランダム共重合体は、重合触媒として、例えばチタン系チーグラー触媒を用いてもよく、メタロセン触媒を用いてもよい。また、ブロック又はランダム共重合体の製造の際には、水素ガスに代表される連鎖移動剤を導入することもできる。原料モノマ-量に対する連鎖移動剤の導入量を多くすることによってMFRを高くでき、少なくすることによってMFRを低くできる。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)は、複数種の樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であっても良い。この場合の好ましい態様としては、結晶性オレフィン重合体(A-1)とエチレン・α-オレフィン共重合体(A-2)を含むポリオレフィンコンパウンドを挙げることが出来る。より好ましくは、結晶性オレフィン重合体(A-1)がプロピレン系重合体であるポリプロピレンコンパウンドである。
(A-1)成分は結晶性を有するオレフィン重合体であれば特に制限はないが、プロピレン系重合体であることが好ましい。このようなプロピレン系重合体や後述する(A-2)成分としては、例えば、特開2010-190407号公報や国際公開第2014/046086号に開示される成分を挙げることが出来る。(A-1)成分としては、より具体的には、例えば、前記のプロピレン単独重合体やブロック共重合体を挙げることが出来る。(A-1)成分がプロピレン系重合体の場合、好ましいMFRや融点は前記と同様である。
(A-2)成分は、少なくともエチレンと他のα-オレフィンを用いた共重合体であれば良く、さらに非共役ポリエンも用いた共重合体であっても良い。具体的には、例えば、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を挙げることが出来る。
エチレン・α-オレフィンランダム共重合体は、好ましくはエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であり、エラストマーとしての性質を示すことが好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独でまたは組み合せて用いることができる。これらの中では、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。エチレンとα-オレフィンとのモル比(エチレン/α-オレフィン)は、好ましくは95/5~70/30、より好ましくは90/10~75/25である。エチレン/α-オレフィン共重合体は、230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが好ましくは0.1g/10min以上、より好ましくは0.5~5g/10minである。
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、好ましくはエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であるエラストマー成分である。炭素数3~20のα-オレフィンの具体例としては、前記と同じものが挙げられる。非共役ポリエチレンの具体例としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロピリデン-5-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン等の非環状ジエン;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,7-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状の非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン等のトリエンが挙げられる。これらの中では、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。エチレンとα-オレフィンと非共役ポリエンとのモル比(エチレン/α-オレフィン/非共役ポリエン)は、好ましくは90/5/5~30/45/25、より好ましくは80/10/10~40/40/20である。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体は、230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが好ましくは0.05g/10min以上、より好ましくは0.1~10g/10minである。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)が挙げられる。
ポリオレフィンコンパウンドの(A-1)成分、(A-2)成分及び(B)成分の合計を100質量部として、(A-1)成分と(A-2)成分の合計は、通常15~50質量部、好ましくは15~40質量部、より好ましくは15~30質量部である。(A-1)成分と(A-2)成分との質量比は、通常100/0~0/100、好ましくは90/10~10/90、より好ましくは80/20~20/80である。金属酸化物(B)の含有量は、通常50~85質量部、好ましくは60~85質量部、より好ましくは70~85質量部である。
尚、(A-2)成分である上記のエチレン・α-オレフィン共重合体以外にも、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー等の水素添加ブロック共重合体やその他の弾性重合体を用いても良い。
前述の通り、本発明の熱可塑性樹脂(A)としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にポリプロピレン系樹脂がより好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で前述のポリエステル系樹脂等の他の樹脂が含まれていても良い。熱可能性樹脂(A)全体100重量%中の他の樹脂の含有率は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0重量%である。
熱可塑性樹脂(A)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)の合計100質量部を基準として10~50質量部であり、好ましくは15~40質量部である。
<熱伝導性金属酸化物(B)>
本発明に用いる熱伝導性金属酸化物(B)の種類は特に限定されず、熱可塑性樹脂(A)よりも高い熱伝導性を有する金属酸化物であれば良い。例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、フェライト等の各種の金属酸化物を使用できる。2種以上の金属酸化物を併用しても良い。中でも、熱伝導性に優れる点から、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタンが好ましく、さらに色が白く着色が容易で且つ安価な点から、酸化マグネシウムがより好ましい。また熱伝導性金属酸化物(B)は耐水処理されたものであることが好ましい。熱伝導性金属酸化物(B)には、金属水酸化物及びその水和物や金属酸化物の水和物は実質的に含まれないことが好ましい。具体的には、熱伝導性金属酸化物(B)全体100重量%中の金属水酸化物及びその水和物や金属酸化物の水和物の含有率は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。
熱伝導性金属酸化物(B)の熱伝導率は、好ましくは1~500W/mK、より好ましくは3~100W/mK、特に好ましくは5~80W/mKである。
熱伝導性金属酸化物(B)の平均粒子径は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~10μmである。
また、熱伝導性金属酸化物(B)は、熱伝導の均一性等の観点から、そのアスペクト比は小さいことが好ましい。具体的には、アスペクト比は好ましくは1.2未満、より好ましくは1.1未満である。
熱伝導性金属酸化物(B)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)の合計100質量部を基準として50~90質量部であり、好ましくは60~85質量部である。この配合量が50質量部未満であると十分な熱伝導性が得られない場合があり、もしくは所望のレベルの熱伝導性が得られない。一方、この配合量が90質量部を超えると、成形性が悪化する問題がある。熱伝導性金属酸化物(B)の含有割合が上記の範囲内であると熱伝導性が急激に高まる傾向にあることが、後述する実施例1~4の結果から分かる。これは、金属酸化物が好ましくは良く分散した状態である場合、金属酸化物同士の接触割合が高まるので連続層に準ずる構造になり、熱伝導性が効率よく上昇するからと考えられる。
熱可塑性樹脂(A)と熱伝導性金属酸化物(B)の質量比(B/A)は、好ましくは1~9、より好ましくは1.2~4、特に好ましくは1.4~4、最も好ましくは1.5~4である。
<その他の成分>
本発明の熱伝導性組成物は、他に変性ポリオレフィン系ワックス(C)を含むことが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂(A)中での熱伝導性金属酸化物(B)の凝集が抑制され、熱可塑性樹脂(A)に高い含有率の金属酸化物(B)を混練するのが容易になると考えられる。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)の種類は特に限定されないが、変性ポリエチレン系ワックス、変性ポリプロピレン系ワックスが好ましく、変性ポリエチレン系ワックスがより好ましい。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)は、公知の方法で製造することが出来る。例えば、無溶剤あるいは溶剤中で低分子量エチレン系重合体に不飽和カルボン酸化合物をラジカル反応を用いて付加する方法や、ルイス酸の存在下で付加する方法や、高温下で付加する方法が挙げられる。反応温度は20℃~300℃であり、特に120℃~250℃が好ましい。低分子量エチレン系重合体の融点は120℃程度なので、反応温度を120℃以上とすることが、反応系を均一にする意味で好ましい。
不飽和カルボン酸化合物としては反応性二重結合を有し、かつカルボン酸基または当該基から誘導され得る基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、公知の不飽和カルボン酸およびその誘導体、例えば、無水物、エステル、酸ハライド、アミドおよびイミド等が使用可能である。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、およびマレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ナジック酸TM(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸を用いることによって、カルボン酸基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。不飽和カルボン酸の無水物としては、上記不飽和ジカルボン酸の無水物が使用可能である。その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸TM(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物)等が挙げられる。不飽和カルボン酸の無水物を用いることによって、無水カルボン酸基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。特に無水マレイン酸が好ましい。
不飽和カルボン酸のエステルとしては、上記不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、グリシジルエステルが使用可能である。具体例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート、ヒドロキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルを用いることによって、カルボン酸エステル基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
不飽和カルボン酸のハライドの具体例としては、塩化マレニル、ジクロロマレイン酸無水物(C4Cl2O3)等が挙げられる。不飽和カルボン酸のハライドを用いることによって、ハロゲン原子含有カルボン酸基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。不飽和カルボン酸のアミドの具体例としては、スルアミド、フタアミド、マレアミド等が挙げられる。不飽和カルボン酸のアミドを用いることによって、アミド基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。不飽和カルボン酸のイミドの具体例としては、マレイミド、フタイミド、スルイミド等が挙げられる。不飽和カルボン酸のイミドを用いることによって、イミド基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)の酸価は、好ましくは1~100mg-KOH/g、より好ましくは10~90mg-KOH/gである。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは400~20000である。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.3~15質量部、特に好ましくは0.3~10質量部である。
好ましい態様として、本願の熱伝導性組成物に強化繊維(F)が含まれる態様を挙げることが出来る。強化繊維(F)を含むポリオレフィンコンパウンドにおいて、強化繊維(F)は主に強度等の機械的特性を向上させる効果を発現する。強化繊維(F)は、(A-1)成分及び(A-2)成分と組み合わせる態様に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で様々な熱可塑性樹脂(A)と組み合わせることも可能である。強化繊維(F)の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、硫酸マグネシウム繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、ジュード繊維が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維、炭素繊維が好適である。強化繊維(F)は、アスペクト比が1より大きい。具体的には1.1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.2~10、特に好ましくは1.3~8、最も好ましくは1.4~5である。
本発明の熱伝導性組成物は、強化繊維(F)以外のフィラーを含んでいても良い。そのようなフィラーとしては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック等の無機フィラー;木粉、セルロース、米粉、澱粉、コーンスターチ等の有機フィラー;が挙げられる。これらの中でも価格、性能、取扱い性、供給安定性等のバランスの点から、タルクが最も好ましい。
さらに本発明の熱伝導性組成物には、用途に応じて様々な添加剤、例えば、可塑剤、滑材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、難燃剤、カップリング剤、及び分散剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で配合できる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、公知のオイルを含むような油展物の態様であっても良い。ただし、特に後述する電子機器や家電の筐体、家具、建材など人の手が触れることが多い用途においては、オイルを実質的に含まないことが好ましい。具体的には熱可塑性樹脂組成物全体100重量%中のオイルが含有率は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0重量%である。
<熱伝導性組成物>
本発明の熱伝導性組成物は、上述した各成分(A)及び(B)、及び必要に応じて任意成分を配合することにより製造できる。各成分は、任意の順番で逐次配合してもよいし、同時に混合してもよい。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。
各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機等の混合装置を用いて、各成分を同時にあるいは逐次に混合又は溶融混練する方法が挙げられる。
このようにして得られる本発明の熱伝導性組成物は熱伝導性に優れる。具体的には、熱伝導率が、通常は0.5~5W/mK、好ましくは0.6~5W/mK、より好ましくは0.6~3W/mK、特に好ましくは0.6~2.5W/mK、最も好ましくは0.6~2W/mKである。
本発明の熱伝導性組成物は難燃性にも優れており、難燃剤を併用しなくても優れた難燃性を示すことがある。本発明の熱伝導性組成物が難燃性に優れる要因は定かでないが、本発明者らは以下の様に推測している。
本発明の熱伝導性組成物は熱伝導性に優れており、例えば炎にさらされても熱エネルギーが分散し易いので急激な温度上昇が起こり難く、そのため熱可塑性樹脂(A)の酸化反応が起こり難いと考えられる。また、熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)との分散が良いので熱可塑性樹脂(A)が偏在し難いであろうことも、熱可塑性樹脂(A)の酸化反応が起こり難い要因と考えられる。
本発明の熱伝導性組成物の難燃性は、例えばISO3795規格に記載の方法、もしくはそれに準ずる方法で評価することが出来る。
<成形体>
本発明の熱伝導性組成物を成形する方法は特に限定されず、公知の様々な方法を用いることができる。中でも、形状の自由度が高い射出成型法に適用するのが好ましい。
本発明の熱伝導性組成物から得られる成形体は、例えば家庭用品等の種々の分野で、高い熱伝導性が要求される様々な用途に用いることができる。具体的には、食品等を入れる容器、フォークやナイフ、スプーン、皿等の食器等が挙げられる。これらは射出成型により簡便に成形でき、熱伝導性が高いので内容物の温冷感を感じやすく、重量感を得られる点で、陶磁器に代わる食器や容器として非常に有用である。また、陶磁器を用いる他の用途、例えばランプシェードや花瓶等の日用雑貨、特定の音響スピーカー(高級スピーカー等)の構造材、洗面台や便器等の水廻り製品等への展開も可能である。陶磁器を用いる用途以外でも、重量感や安定感を付与できる特徴を活かして、例えばプラモデル等の模型・玩具用途、机や椅子等の家具用途、ピアノの鍵盤等の楽器用途、タイル、人工大理石代替品、建材等の建築用途等にも展開が可能である。また、温熱感や成形性を利用して3Dプリンターのフィラメントとしても好適である可能性がある。
その他にも、意匠性、安定感、触感などの特徴を生かした各種のボトルやジャーなどの容器を挙げることも出来る。特にこれらの性能の商品価値への影響が高い傾向がある化粧品(化粧液、化粧クリームなど)やシャンプー(ボディーシャンプーなども含む)、リンスなどの美容関連製品の容器を好適な例とすることが出来る。より具体的には、蓋付き容器(エアレス容器などを含む)、(化粧用)コンパクト、(化粧用)パレットやボトルなどの形状の容器を挙げることが出来る。このような用途には、近年、軽量で耐衝撃性に優れたポリオレフィンなどのプラスチック製の容器が用いられることが殆どであるが、視覚、触覚(熱伝導性、重量感等を含む)などでの高級感の演出には不向きな材料である。高級感の演出には陶磁器などの容器が適しているが、これには意匠性や大量生産と言う観点での自由度の制限や、耐衝撃性が低いと言う大きな問題が有る。本発明の組成物を用いたこれらの容器は、従来のプラスチック製品と同様の成形方法を適用することが出来るので、生産性、意匠性に優れているだけでなく、陶磁器に比して耐衝撃性に優れ、陶磁器と同様の重量感や熱伝導性を持つので、前記の用途に好適であると考えることが出来る。
さらに本発明の熱伝導性組成物から得られる成形体は、高い熱伝導性が要求される用途における放熱部材としても有用である。例えば、高い熱伝導性が要求される電子部品、ノートパソコンやモバイル機器等の各種電子機器における放熱シート等の放熱部材として非常に有用である。また、本発明の熱伝導性組成物をノートパソコンやモバイル機器等の各種電子機器の筐体の一部あるいは全部に適用して、放熱シートと組み合わせて用いれば、電子機器の放熱性能を更に高めることが期待できる。さらに、ノートパソコンやモバイル機器等の各種電子機器の筐体の一部に本発明の熱伝導性組成物を使用して、それ以外の部分、例えば操作中に手が接触することが多い箇所には、金属酸化物含有率を低減した材料もしくは金属酸化物を含まない材料を使用して、長時間の操作時の低温やけど等の発症の可能性を低減できる筐体を製造することも出来る。このような筐体は、例えば、筐体を成形するための金型に複数の樹脂注入ゲートを設置し、ゲートごとに異なる組成の樹脂を注入する方法等により製造することが可能である。
その他の用途としては、優れた熱伝導性、成型時の形状の自由度、衝撃強度の高さ等を活かして、金属製の筐体の代替材料としても有用である。例えば、時計、腕時計の筐体やベルト、家具の部品(例えば金属取手部)、洗濯機や冷蔵庫等の家電製品の外装材への展開も期待できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例で使用した各材料は以下の通りである。
<熱可塑性樹脂(A)>
「b-PP」:プロピレン・エチレンブロック共重合体(室温デカン可溶部量(ゴム含有量)=23質量%、室温デカン可溶部のエチレン量=40モル%、室温デカン可溶部の極限粘度[η]=2.5dl/g、MFR(230℃、2.16kg)=63g/10分)
「r-PP」:プロピレン・エチレンランダム共重合体(エチレン量=2.7質量%、MFR(230℃、2.16kg)=60g/10分)
上記のプロピレン・エチレンブロック共重合体(b-PP)の室温デカン可溶部量、室温デカン可溶部のエチレン量、室温デカン可溶部の極限粘度[η]及びMFR、並びにプロピレン・エチレンランダム共重合体(r-PP)のエチレン量及びMFRは、以下の方法で測定した。
(1)室温デカン可溶部量
まず、試料を5g精秤し、1,000ミリリットルのナス型フラスコに入れ、さらにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン、フェノール系酸化防止剤)1gを添加し、回転子及びn-デカン700ミリリットルを投入した。次いで、ナス型フラスコに冷却器を取り付け、回転子を作動させながら、135℃のオイルバスでフラスコを120分間加熱して、試料をn-デカンに溶解させた。次に、1,000ミリリットルのビーカーにフラスコの内容物を注ぎ、ビーカー内の溶液をスターラーで攪拌しながら、室温(25℃)になるまで8時間以上放冷し、析出物を金網でろ取した。ろ液をろ紙でろ過し、3,000ミリリットルのビーカーに収容されたメタノール2,000ミリリットル中に注ぎ、この液を、室温(25℃)下、スターラーで攪拌しながら2時間以上放置した。次に、得られた析出物を金網でろ取し、5時間以上風乾し、真空乾燥機にて100℃で240~270分間乾燥し、25℃におけるn-デカン可溶部を回収した。25℃におけるn-デカン可溶部の含有量(x)は、試料重量をAg、回収したn-デカン可溶部の重量をCgとすれば、x(質量%)=100×C/Aで表される。
(2)室温デカン可溶部のエチレン量
13C-NMRで常法により測定した。
(3)室温デカン可溶部の極限粘度[η]
135℃のデカリンで測定した。
(4)r-PPのエチレン量
13C-NMRで常法により測定した。
(5)メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238Eに準じて、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
<熱伝導性金属酸化物(B)>
酸化マグネシウム(神島化学工業社製、商品名スターマグPSF-WR、平均粒子径=1.1μm、熱伝導率=45~60W/mK)
<その他の成分>
変性ポリオレフィン系ワックス(三井化学社製、商品名ハイワックス1105A、酸価=60mg-KOH/g、数平均分子量(Mn)=1500、密度=940、結晶化度60%、融点104℃、溶融粘度(140℃)=150)
上記の変性ポリオレフィン系ワックスの酸価及び数平均分子量(Mn)は、以下の方法で測定した。
(1)酸価
JIS K5902に準じで測定した。
(2)数平均分子量(Mn)
ポリマーの数平均分子量(Mn)を測定する為に次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Alliance GPC 2000型(商品名、Waters社製)
カラム:TSKgel GMH6-HT×2 TSKgel GMH6-HTL×2(商品名、いずれも東ソー社製、内径7.5mm×長さ30cm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)
検出器:示差屈折計
流量:1.0mL/分
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.5mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
[実施例1~4]
表1に示す配合比(質量部)で各成分を配合して熱伝導性組成物を得た。具体的には、まず熱可塑性樹脂(A)としてのプロピレン・エチレンブロック共重合体(b-PP)又はプロピレン・エチレンランダム共重合体(r-PP)に対し、変性ポリオレフィン系ワックス(ハイワックス)および熱伝導性金属酸化物(B)としての酸化マグネシウムを混練装置(ラボプラストミル(東洋精機製))を用いて200℃、60~80rpmの条件で混練した後、ストランドカットしてペレット状の熱伝導性組成物を得た。
[比較例1及び2]
プロピレン・エチレンブロック共重合体(b-PP)又はプロピレン・エチレンランダム共重合体(r-PP)を用意した。比較例1及び2では熱伝導性金属酸化物(B)や変性ポリオレフィン系ワックスは混合せず、そのまま後述する射出成型に使用した。
[比較例3及び4]
表1に示す配合比(質量部)で各成分を配合したこと以外は、実施例1~4と同様にして熱伝導性組成物を調製した。
[比較例5]
表1に示す配合比(質量部)にて、入江商会製、卓上型ニーダーPBV-0.1型装置を用い、200℃混練を含む種々の条件で混練を検討したが、酸化マグネシウムの量が多過ぎることに起因すると考えられる不良が発生し、混練出来なかった。
以上のようにして得た実施例1~4及び比較例1~4の組成物を射出成型して成形体(直径約20cm、厚さ約4cmの皿状食器)を得た。この射出成型は、成形温度220~240℃、金型温度80℃、射出時間-保圧時間:1~2秒(一次充填時間14秒)、冷却時間16秒の条件で行った。
また、同様の条件で得られる本発明の熱伝導性組成物の射出角板は、例えば、建材や家具の構成材料、水廻り部材、家電製品の筐体、電子機器(パソコンやスマートフォン等)の筐体や放熱シート、音響機器(スピーカー等)や時計等の精密機械の筐体、プラモデルや玩具等の部材、ガーデニング容器や花瓶等のデザイン容器、化粧品容器等の各種用途(サンプル材等)としての活用が可能である。
実施例1~4及び比較例1~4の熱伝導性組成物及びその成形体を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
(熱伝導率)
熱伝導性組成物の熱伝導率は、定情報熱流量計法にて実施した。具体的にはアルバック理工社製測定器GH-1を用い、ASTM E1530に準じて、温度30℃で測定した。
(温冷感)
実施例1~4及び比較例1~4の成形体(皿状食器)に熱い料理又は冷たい料理をのせて実際に使用し、以下の基準で温冷感を評価した。
「〇」:通常の陶磁器製の皿と同程度の温冷感があった。
「△」:通常の陶磁器製の皿と比べてやや温冷感が劣っていた。
「×」:通常の陶磁器製の皿と比べて温冷感が劣っていた。
(重量感、安定感)
実施例1~4及び比較例1~4の成形体(皿状食器)を卓上に置き、さらに実際に手で持ち、以下の基準で重量感、安定感を評価した。
「〇」:通常の陶磁器製の皿と同程度の重量感、安定感があった。
「△」:通常の陶磁器製の皿と比べてやや重量感、安定感が劣っていた。
「×」:通常の陶磁器製の皿と比べて重量感、安定感が劣っていた。
Figure 0007241849000001
[実施例5]
まず成型用材料として、金属酸化物(B)を含む実施例1の熱伝導性組成物と、金属酸化物(B)を含まないこと以外は実施例1の同じ組成の樹脂組成物(CPD)を用意した。そして、スマートフォン用筐体の金型の中央部に近い注入ゲートから金属酸化物(B)を含まない樹脂組成物(CPD)の溶融物を注入し、他のゲートからは金属酸化物(B)を含む実施例1の熱伝導性組成物の溶融物を注入し、型締め、冷却を経て、筐体部品を成形した。得られた筐体部品は、スマートフォンとして使用する際に手が接触し易い中央部は熱伝導性が低く、上下部は熱伝導性の高い性質を有するものであった。
(難燃性)
ISO3795規格の条件を準用して、実施例2と比較例2で得た各熱伝導性組成物から得た試験片を用いて難燃試験を行った。試験片としては、溶融プレス成形装置と所定の金型を用い、常法にて、200mm×100mm×2mmのサイズに成形したものを用いた。具体的には、190℃で6分間熱伝導性組成物を溶融させた後、加圧して4分間型締めし、水冷装置(10℃)を用いて5分間冷却を行った。図1はその試験後の試験片の状態を示す写真である。この図1に示す通り、実施例2の試験片は殆ど変化しなかったが、比較例2の試験片は燃焼により大きく変形した。
本発明の熱伝導性組成物は、先に詳述した家庭用品、電子部品等の種々の分野の成形体材料として用いることができ、特に容器、食器、放熱部材、水廻り構造材、電子機器筐体、時計外装材、タンブラー及び日用雑貨の材料として好適に用いることができる。

Claims (13)

  1. プロピレン系樹脂である熱可塑性樹脂(A)10~40質量部及び熱伝導性金属酸化物(B)60~90質量部(熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)の合計100質量部)を含有し、
    前記プロピレン系樹脂が、室温(25℃)デカン可溶部量が8重量%以上35重量%以下のプロピレン・エチレンブロック共重合体、及び/又は、エチレン量が1.9~5.4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体であり、
    熱可塑性樹脂(A)のASTM D1238Eに準じて230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が20~100g/10分であり、
    熱伝導性金属酸化物(B)の熱伝導率が1~500W/mKであり、
    熱伝導率が0.5~5W/mKである熱伝導性組成物。
  2. 熱伝導性金属酸化物(B)が酸化マグネシウムを含む請求項1に記載の熱伝導性組成物。
  3. 熱伝導性金属酸化物(B)の平均粒子径が0.1~100μmである請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
  4. 請求項1~の何れか一項に記載の熱伝導性組成物を含む成形体。
  5. 射出成型体である請求項に記載の成形体。
  6. 容器である請求項又はに記載の成形体。
  7. 食器である請求項又はに記載の成形体。
  8. 放熱部材である請求項又はに記載の成形体。
  9. 水廻り構造材である請求項又はに記載の成形体。
  10. 電子機器筐体である請求項又はに記載の成形体。
  11. 時計外装材である請求項又はに記載の成形体。
  12. 前記容器がタンブラーである請求項に記載の成形体。
  13. 日用雑貨である請求項又はに記載の成形体。
JP2021187826A 2016-05-31 2021-11-18 熱伝導性組成物 Active JP7241849B2 (ja)

Applications Claiming Priority (9)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016108848 2016-05-31
JP2016108848 2016-05-31
JP2016128262 2016-06-29
JP2016128262 2016-06-29
JP2017029780 2017-02-21
JP2017029780 2017-02-21
JP2017044638 2017-03-09
JP2017044638 2017-03-09
JP2017108580A JP7100429B2 (ja) 2016-05-31 2017-05-31 熱伝導性組成物を含む成形体

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017108580A Division JP7100429B2 (ja) 2016-05-31 2017-05-31 熱伝導性組成物を含む成形体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022010396A JP2022010396A (ja) 2022-01-14
JP7241849B2 true JP7241849B2 (ja) 2023-03-17

Family

ID=63590703

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017108580A Active JP7100429B2 (ja) 2016-05-31 2017-05-31 熱伝導性組成物を含む成形体
JP2021187826A Active JP7241849B2 (ja) 2016-05-31 2021-11-18 熱伝導性組成物

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017108580A Active JP7100429B2 (ja) 2016-05-31 2017-05-31 熱伝導性組成物を含む成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (2) JP7100429B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023145573A1 (ja) 2022-01-26 2023-08-03 旭化成株式会社 鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007070608A (ja) 2005-08-11 2007-03-22 Techno Polymer Co Ltd 樹脂配合用酸化マグネシウムフィラー及びそれを含む熱伝導性樹脂組成物

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01174564A (ja) * 1987-12-28 1989-07-11 Dainichiseika Color & Chem Mfg Co Ltd 熱伝導性樹脂組成物
JPH02255743A (ja) * 1989-03-30 1990-10-16 Showa Denko Kk ポリプロピレン系樹脂組成物
JP2003187757A (ja) 2001-10-11 2003-07-04 Sumitomo Chem Co Ltd 蓄電池電槽用樹脂組成物
JP6311321B2 (ja) 2013-01-22 2018-04-18 東洋インキScホールディングス株式会社 熱伝導性樹脂組成物および成形体
JP6062339B2 (ja) 2013-10-10 2017-01-18 古河電気工業株式会社 電気、電子機器用高熱伝導性混和物、電気、電子機器用高熱伝導性成形体並びに電気、電子機器用高熱伝導性積層シート及びその製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007070608A (ja) 2005-08-11 2007-03-22 Techno Polymer Co Ltd 樹脂配合用酸化マグネシウムフィラー及びそれを含む熱伝導性樹脂組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP7100429B2 (ja) 2022-07-13
JP2018145386A (ja) 2018-09-20
JP2022010396A (ja) 2022-01-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5590517B2 (ja) 透明ポリオレフィン組成物
CN104086900B (zh) 丙烯系树脂组合物及其用途
TW593500B (en) Polyethylene resin composition for rotational molding and rotational molded product using the composition
CN109196057B (zh) 导热性组合物
JP2007169615A (ja) 澱粉配合樹脂組成物
JP7241849B2 (ja) 熱伝導性組成物
JP7044484B2 (ja) 熱伝導性組成物
JP2024500681A (ja) リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物
JP2008169257A (ja) プロピレン系樹脂組成物、並びに該組成物からなる成形体および電線
JP2006265281A (ja) 粘着フィルムまたは粘着シート、およびその製造方法
JP2008239845A (ja) 粘着フィルム
JP2006225537A (ja) ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれからなるシート
TWI796612B (zh) 樹脂組成物、成形體、片、玩具、日用雜貨以及電子設備的框體
KR20220123062A (ko) 폴리아마이드 조성물
WO2023282327A1 (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその用途
JP2019099725A (ja) 耐酸性組成物
JP2017075209A (ja) ポリプロピレン系樹脂組成物、それを原料とする原着材料及びそれを原料とする成形体
CN117321146A (zh) 热塑性树脂组合物及其用途
JP6886310B2 (ja) プロピレン系共重合体、熱可塑性樹脂組成物及び成形体
JP2005264033A (ja) ポリプロピレン系樹脂組成物
WO2022249843A1 (ja) プロピレン系重合体組成物からなる射出成形体
JP2023033140A (ja) 熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
JP2022152305A (ja) プロピレン系樹脂組成物およびその用途
JP2001234004A (ja) スラッシュ成形用エチレン系樹脂組成物
WO2023176810A1 (ja) 熱可塑性エラストマー組成物および熱可塑性エラストマー組成物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211118

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20220104

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20220119

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220927

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221018

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221206

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230207

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230307

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7241849

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150