以下、添付図面を参照して、実施形態に係る車両制御装置について説明する。
<車両制御装置の構成>
まず、図1を参照して、実施形態に係る車両制御装置100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る車両制御装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御装置100は、主に、ECU(Electronic Control Unit)などのコントローラ10と、複数のセンサ及びスイッチと、複数の制御装置と、を有する。この車両制御装置100は、車両に搭載され、当該車両の走行を支援するように種々の制御を実行する。
複数のセンサ及びスイッチには、カメラ21、レーダ22、車両の挙動を検出する複数の挙動センサ(車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25)及び複数の挙動スイッチ(操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28)、測位装置29、ナビゲーション装置30、通信装置31、操作装置32が含まれる。また、複数の制御装置には、エンジン制御装置51、ブレーキ制御装置52、ステアリング制御装置53、警報制御装置54が含まれる。
コントローラ10は、プロセッサ11、プロセッサ11が実行する各種プログラムを記憶するメモリ12、入出力装置等を備えたコンピュータ装置により構成される。コントローラ10は、上述した複数のセンサ及びスイッチから受け取った信号に基づき、エンジン制御装置51、ブレーキ制御装置52、ステアリング制御装置53、警報制御装置54に対して、それぞれエンジン装置、ブレーキ装置、ステアリング装置、警報装置を適宜に作動させるための制御信号を出力可能に構成されている。特に、本実施形態では、コントローラ10は、コントローラ10が搭載された自車両と、この自車両周辺の所定の対象物(例えば、対向車両や先行車両や歩行者や障害物など)との衝突を回避するように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御することで、自車両を自動で制動させる、つまり自動ブレーキを作動させるよう構成されている。
カメラ21は、車両の周囲を撮影し、画像データを出力する。コントローラ10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、種々の対象物を特定する。例えば、コントローラ10は、先行車両、対向車両、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(中央線、車線境界線、白線、黄線)、車線の通行帯や通行区分、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物などを特定する。
レーダ22は、車両の周囲に存在する種々の対象物の位置及び速度を測定する。例えば、レーダ22は、先行車両、対向車両、駐車車両、歩行者、走行路上の落下物などの位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。このレーダ22は、車両の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両と対象物との間の距離(例えば車間距離)や、車両に対する対象物の相対速度を測定する。
なお、レーダ22としてミリ波レーダの代わりにレーザレーダを用いてもよいし、また、レーダ22の代わりに超音波センサなどを用いてもよい。更に、複数のセンサ類を組み合わせて用いて、対象物の位置及び速度を測定してもよい。
車速センサ23は、車両の速度(車速)を検出し、加速度センサ24は、車両の加速度を検出し、ヨーレートセンサ25は、車両に発生するヨーレートを検出し、操舵角センサ26は、車両のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出し、アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。コントローラ10は、車速センサ23により検出された車両の速度とレーダ22により検出された対象物の相対速度とに基づいて、対象物の速度を算出することができる。
測位装置29は、GPS受信機及び/又はジャイロセンサを含み、車両の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーション装置30は、内部に地図情報を格納しており、コントローラ10に地図情報を提供することができる。コントローラ10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両の周囲(特に進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物などを特定する。地図情報は、コントローラ10内に格納されていてもよい。また、地図情報は、車線の通行帯や通行区分に関する情報を含んでいてもよい。
通信装置31は、自車両周辺の他車両と車車間通信を行うと共に、自車両周辺に設置された路側通信装置と路車間通信を行う。通信装置31は、このような車車間通信及び路車間通信により、他車両からの通信データ、及び交通インフラからの交通データ(交通渋滞情報、制限速度情報、交通信号情報など)を取得し、これらのデータをコントローラ10に出力する。
操作装置32は、車室内に設けられており、車両に関する種々の設定を行うためにドライバにより操作される入力装置である。操作装置32は、例えば、インストルメントパネル、ダッシュパネル、センターコンソールに設けられたスイッチ、ボタンや、表示装置に設けられたタッチパネルなどであり、ドライバの操作に対応する操作信号をコントローラ10に出力する。本実施形態では、操作装置32は、車両の走行を支援する制御のオン/オフの切り替えや、車両の走行を支援する制御内容の調整を行えるように構成されている。例えば、ドライバが操作装置32を操作することで、自車両と対象物との衝突を回避するための自動ブレーキのオン/オフの切り替えや、自動ブレーキ時に適用する仮想壁に関する種々の設定や、自車両と対象物との衝突を回避するための警報タイミングの設定や、自車両と対象物との衝突を回避するためにステアリングホイールを振動させる制御のオン/オフの切り替えなどを行えるようになっている。
なお、カメラ21、レーダ22及び通信装置31の少なくとも1つは、本発明に係る「対向車両検出センサ」の一例である。また、カメラ21及びナビゲーション装置30の少なくとも1つは、本発明に係る「通行区分検出センサ」の一例である。
エンジン制御装置51は、車両のエンジンを制御する。エンジン制御装置51は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。コントローラ10は、車両を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御装置51に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
ブレーキ制御装置52は、車両のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御装置52は、ブレーキ装置による制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどのブレーキアクチュエータを含む。コントローラ10は、車両を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御装置52に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
ステアリング制御装置53は、車両のステアリング装置を制御する。ステアリング制御装置53は、車両の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。コントローラ10は、車両の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御装置53に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
警報制御装置54は、ドライバに対して所定の警報を発することが可能な警報装置を制御する。この警報装置は、車両に設けられた表示装置やスピーカなどである。例えば、コントローラ10は、自車両が対象物と衝突する可能性が高くなると、警報装置から警報が発せられるように、警報制御装置54に対して制御信号を送信する。この例では、コントローラ10は、対象物との衝突可能性が高いことを報知するための画像を表示装置に表示させたり、対象物との衝突可能性が高いことを報知するための音声をスピーカから出力させたりする。
<自動ブレーキ制御>
次に、実施形態に係る自動ブレーキ制御について説明する。本実施形態では、コントローラ10は、自車両が対向車線(自車線と対向する車線を意味する)を横断するときに、自車両と、対向車線を走行する対向車両との衝突を回避するように、自動ブレーキを作動させる制御を実行する。
[1.対向車線に単一の通行帯が設けられているケース]
まず、図2を参照して、対向車線に単一の通行帯が設けられているケースにおける自動ブレーキ制御について説明する。図2は、実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。
本ケースでは、自車両1が自車線91を走行し、対向車両81が対向車線92を走行している。対向車線92には、単一の通行帯92aが設けられている。自車線91及び対向車線92は、交差点93において他車線94と交差している。自車両1は、対向車線92を横断し、他車線94に進入しようとしている。
このような状況において、コントローラ10は、自車両1と対向車両81との衝突を回避するように自動ブレーキの作動を制御する。特に、コントローラ10は、仮想壁W1を自車両1と対向車両81との間に設定して、自車両1がこの仮想壁W1に衝突しないように自動ブレーキを制御する。すなわち、コントローラ10は、自車両1が仮想壁W1に衝突しないように自動ブレーキを制御することで、結果的に、自車両1と対向車両81との衝突を防止する。これにより、自車両1と対向車両81との衝突回避を効果的に実現できる。
仮想壁W1は、自車両1と対向車両81との衝突を回避するために設定された、自動ブレーキ制御の適用対象となる仮想的な対象物である。仮想壁W1は、対向車両81の進行に伴って移動し(換言すると対向車両81と共に自車両1に向かって進行し)、且つ対向車両81の進行方向に延びている。また、仮想壁W1は、自車両1側の前端W1aと対向車両側の後端W1bとによって規定される長さ(つまり前端W1aから後端W1bまでの長さ)を少なくとも有する。また、仮想壁W1は、このような長さと共に、ある程度の幅(一定の幅でもよいし、状況に応じて変えることができる幅でもよい)を規定してもよい。ただし、基本的には、仮想壁W1には高さが規定されない。
また、コントローラ10は、自車両1及び対向車両81が走行する道路の中央線に沿う仮想壁W1を設定する。具体的には、コントローラ10は、中央線に平行に延び且つ中央線上に位置するように、仮想壁W1を設定する。これにより、自車両1が中央線を跨いで対向車線92にはみ出すこと、つまり自車両1の一部が対向車線92を塞ぐことを抑制するようにする。
ここで、一般的に交差点の中には中央線が設けられていないことが多いので、コントローラ10は、そのように中央線が設けられていない交差点93において自車両1が対向車線92を横断する場合には、延長線L3を設定して仮想壁W1を設定する。具体的には、コントローラ10は、自車両1及び対向車両81が走行する道路において交差点93を挟んで自車両1側にある道路上の中央線L1と、自車両1及び対向車両81が走行する道路において交差点93を挟んで対向車両81側にある道路上の中央線L2とを結ぶことで、延長線L3を設定する。より詳しくは、コントローラ10は、中央線L1の端点と中央線L2の端点とを直線により接続することで、延長線L3を設定する。これにより、中央線が設けられていない交差点93において自車両1が対向車線92を横断する場合に、上述した仮想壁W1を設定するために用いる中央線を適切に規定できる。
なお、中央線が設けられていない交差点93において自車両1が対向車線92を横断する場合であっても、対向車両81が自車両1から大きく離れている場合、つまり対向車両81が交差点93から大きく離れている場合には、対向車両81側の中央線L2を用いて仮想壁W1を設定すればよい。また、対向車両81が自車両1にかなり近付いた場合(例えば対向車両81が交差点93を通過している場合)には、自車両1側の中央線L1を用いて仮想壁W1を設定すればよい。
また、コントローラ10は、自車両1側にある仮想壁W1の前端W1aを、対向車両81の前端81aから、自車両1と対向車両81との相対速度に応じた距離X1だけ離れた位置に設定する。具体的には、まず、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断し終えるのに要する時間(以下では「t2」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断するときの走行軌跡と、中央線と反対側にある対向車線92の側端(破線L4で示す)とが交わる点P2を特定し、自車両1の後端が点P2に到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が対向車線92を横断し終えるのに要する時間t2として算出する。
そして、コントローラ10は、仮想壁W1の前端W1aを、対向車両81の前端81aから、到達時間t2を自車両1と対向車両81との相対速度に対して乗算した距離X1だけ離れた位置に設定する。自車両1の速度(絶対値)を「V1」と表記し、対向車両81の速度(絶対値)を「V2」と表記すると、距離X1は「X1=(V1+V2)×t2」により表される。このように仮想壁W1の前端W1aを規定することで、自車両1が対向車線92を横断し終えるまでの間に、自車両1が対向車両81と衝突することを適切に抑制できる。特に、自車両1の後端と対向車両81の前端81aとの衝突を適切に抑制できる。
また、コントローラ10は、対向車両81側にある仮想壁W1の後端W1bを、対向車両81の後端81bから、対向車両81の速度V2に応じた距離X2だけ離れた位置に設定する。具体的には、まず、コントローラ10は、自車両1が延長線L3に達するまでの時間(以下では「t1」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断するときの走行軌跡と延長線L3とが交わる点P1を特定し、自車両1の前端が点P1に到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が延長線L3に達するまでの時間t1として算出する。
なお、時間t1は、本発明に係る「進入所要時間」の一例である。また、時間t2は、本発明に係る「横断所要時間」の一例である。
そして、コントローラ10は、仮想壁W1の後端W1bを、対向車両81の後端81bから、算出された到達時間t1を対向車両81の速度V2(絶対値)に対して乗算した距離X2だけ離れた位置に設定する。この距離X2は、「X2=V2×t1」により表される。このように仮想壁W1の後端W1bを規定することで、自車両1が対向車線92を横断し始めるとき(つまり、自車両1が対向車線92に進入したとき)に、自車両1が対向車両81と衝突することを抑制できる。特に、自車両1の前端と対向車両81の後端81bとの衝突を抑制できる。なお、対向車両81の速度V2が0の場合、つまり対向車両81が停止している場合には、距離X2は0になる。この場合には、コントローラ10は、仮想壁W1の後端W1bを対向車両81の後端81bの位置に設定する。
[2.対向車線に複数の通行帯が設けられているケース]
まず、図3を参照して、対向車線に複数の通行帯が設けられているケースにおける自動ブレーキ制御について説明する。図3は、実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。本ケースのうち、上述した、対向車線に単一の通行帯が設けられているケースと同一の構成については、同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
対向車線96には、複数の通行帯96a~96dが設けられている。通行帯96a~96dは、それぞれ通行区分が指定されており、当該通行区分に対応する路面標示97a~97dが設けられている。具体的には、通行帯96a,96bには、右折専用であることを示す路面標示97a,97bが設けられており、通行帯96cには、直進専用であることを示す路面標示97cが設けられており、通行帯96dは、左折専用であることを示す路面標示97dが設けられている。自車線95及び対向車線96は、交差点97において他車線98と交差している。
なお、通行帯96cは、本発明に係る「第1通行帯」の一例である。また、通行帯96a,96bは、本発明に係る「第2通行帯」の一例である。
自車線95を走行している自車両1は、対向車線96を横断し、他車線98に進入しようとしている。このような状況においては、右折して対向車線96を横断しようとしている自車両1と、対向車線96を直進しようとしている対向車両83との衝突が懸念される。
そこで、コントローラ10は、仮想壁W2を、自車両1と対向車両83との間、且つ、通行帯96bと通行帯96cとの間に設定し、自車両1がこの仮想壁W2に衝突しないように自動ブレーキを制御する。すなわち、コントローラ10は、自車両1が仮想壁W2に衝突しないように自動ブレーキを制御することで、結果的に、自車両1と対向車両83との衝突を防止する。これにより、自車両1と対向車両83との衝突回避を効果的に実現できる。仮想壁W2は、上述した仮想壁W1と同様に、自車両1側の前端W2aと対向車両83側の後端W2bとによって規定される長さ(つまり前端W2aから後端W2bまでの長さ)を少なくとも有する。
コントローラ10は、延長線L7に沿うように仮想壁W2を設定する。具体的には、コントローラ10は、まず、交差点97を挟んで自車両1側にある道路上の区画線L5と、通行帯96cを区画する区画線L6とを結ぶことで、延長線L7を設定する。より詳しくは、コントローラ10は、区画線L5の端点と区画線L6の端点とを直線により接続することで、延長線L7を設定する。そして、コントローラ10は、この延長線L7に沿って延びる仮想壁W2を設定する。
一方、自車両1が、右折して自車線95を横断しようとしている対向車両82や、左折して他車線98に進入しようとしている対向車両84と衝突する可能性は、比較的低い。したがって、コントローラ10は、対向車両82,84との衝突の防止を目的とする仮想壁は設定しない。
次に、図4を参照して、コントローラ10が実行する処理について説明する。図4は、実施形態に係るコントローラ10が実行する処理を示すフローチャートである。コントローラ10は、所定の周期(例えば100ms毎)で、当該フローチャートに係る処理を繰り返し実行する。
まず、ステップS101において、コントローラ10は、上述した複数のセンサ及びスイッチから各種情報を取得する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21、レーダ22、車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28、測位装置29、ナビゲーション装置30、通信装置31、操作装置32から入力された信号を取得する。
次いで、ステップS102において、コントローラ10は、自車両1が対向車線を横断しようとしているか否かを判定する。特に、コントローラ10は、自車両1が交差点において右折して対向車線を横断しようとしているか否かを判定する。例えば、コントローラ10は、自車両1のドライバにより右折のために方向指示器の操作が行われた場合や、自車両1の速度が所定速度未満に低下した状況においてステアリングホイールが時計回りの方向に操作された場合や、ナビゲーション装置30により設定された案内ルートが次の交差点で右折するルートを含む場合に、自車両1が交差点において右折して対向車線を横断しようとしていると判定する。この場合(ステップS102:Yes)、コントローラ10は、ステップS103に進む。これに対して、自車両1が交差点において右折して対向車線を横断しようとしていると判定されなかった場合(ステップS102:No)、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS103において、コントローラ10は、自車両1に接近する対向車両が存在するか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、レーダ22から入力された信号や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、自車両1に接近する対向車両を検出するための処理を実行する。その結果、自車両1に接近する対向車両が検出された場合、コントローラ10は、対向車両が存在すると判定し(ステップS103:Yes)、ステップS104に進む。これに対して、自車両1に接近する対向車両が検出されなかった場合、コントローラ10は、対向車両が存在しないと判定し(ステップS103:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS104において、コントローラ10は、対向車両が直進するか否か、つまり対向車両が交差点を右左折せずに直進するか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、まず、カメラ21やレーダ22から入力された信号に基づき、対向車両の進行方向と区画線(対向車両側の道路の中央線又は仮想線)とが成す角度を算出する。そして、コントローラ10は、求められた角度が所定角度(0度に近い比較的小さな角度)未満であるか否かを判定する。コントローラ10は、対向車両の進行方向と中央線とが成す角度が所定角度未満である場合には、対向車両が直進すると判定し(ステップS104:Yes)、ステップS105に進む。
これに対して、ステップS104において、対向車両の進行方向と区画線とが成す角度が所定角度以上である場合には、コントローラ10は、対向車両が直進しないと判定し(ステップS104:No)、つまり対向車両が交差点を右折又は左折すると判定し、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。このように、対向車両が交差点を右折又は左折する状況は、仮想壁に基づく自動ブレーキ制御を実行すべき状況に該当しない。そのため、コントローラ10は、自動ブレーキの無駄な作動を抑制すべく、自動ブレーキ制御を実施しない。
次いで、ステップS105において、コントローラ10は、交差点内において延長線を設定する。具体的には、コントローラ10は、まず、カメラ21から入力された信号に基づき、つまりカメラ21により撮影された自車両1の前方の画像に基づき、自車両1及び対向車両が走行する道路において交差点を挟んで自車両1側にある道路上の区画線、及び、当該交差点を挟んで対向車両側にある道路上の区画線を特定する。特に、コントローラ10は、両区画線の端点を特定する。そして、コントローラ10は、これら端点を接続した線分を、延長線として用いる。
次いで、ステップS106において、コントローラ10は、自車両1が延長線上の点P1に到達するまでの時間t1を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、自車両1の速度V1やステアリングホイールの操舵角や交差点の地図データ(特に道路形状)などに基づき、自車両1が対向車線を横断するときの走行軌跡を求め、この走行軌跡と延長線とが交わる点P1を特定する。そして、コントローラ10は、自車両1の速度V1などに基づき、現在の自車両1の前端が点P1に到達するまでの時間(到達時間)t1を算出する。
次いで、ステップS107において、コントローラ10は、自車両1が点P2に到達するまでの時間t2、つまり自車両1が対向車線を横断し終えるのに要する時間t2を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、上述したように求められた自車両1が対向車線を横断するときの走行軌跡と、中央線と反対側にある対向車線の側端(図2に破線L8で表し、図3に破線L8で表す)とが交わる点P2を特定する。そして、コントローラ10は、自車両1の速度V1などに基づき、現在の自車両1の後端が点P2に到達するまでの時間(到達時間)t2を算出する。
次いで、ステップS108において、コントローラ10は、自車両1及び対向車両の速度V1、V2、上述したように算出された到達時間t1、t2、及び、延長線に基づき、仮想壁を設定する。具体的には、コントローラ10は、まず、仮想壁の前端を、対向車両の前端から、自車両1と対向車両との相対速度に対して到達時間t2を乗算した距離X1(X1=(V1+V2)×t2)だけ離れた位置に設定する。また、コントローラ10は、仮想壁の後端を、対向車両の後端から、対向車両の速度V2に対して到達時間t1を乗算した距離X2(X2=V2×t1)だけ離れた位置に設定する。そして、コントローラ10は、このような前端及び後端を有する仮想壁を、延長線に平行に延びるように配置する。
次いで、ステップS109において、コントローラ10は、点P1が仮想壁上に存在するか否かを判定する。換言すると、コントローラ10は、対向車両の進行により仮想壁(特に仮想壁の前端)が点P1まで達したか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、上述したように求めた点P1の位置と仮想壁の前端の位置に基づき、ステップS109の判定を行う。その結果、点P1が仮想壁上に存在すると判定された場合(ステップS109:Yes)、コントローラ10は、ステップS110に進む。
これに対して、ステップS109において、点P1が仮想壁上に存在すると判定されなかった場合(ステップS109:No)、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。このように点P1が仮想壁上に存在しない場合には、対向車両が自車両1から十分に離れているので、つまり自車両1が対向車線を横断しても対向車両と衝突することはないので、コントローラ10は、仮想壁に基づく自動ブレーキ制御を実行しない。
次いで、ステップS110において、コントローラ10は、自車両1が仮想壁と衝突する衝突余裕時間/衝突予測時間(TTC:Time to Collision)を算出する。具体的には、自車両1が延長線上の点P1に到達したときに自車両1が仮想壁と衝突することになるから、コントローラ10は、時間t1をTTCとする。
次いで、ステップS111において、コントローラ10は、上述したように算出されたTTCが所定時間未満であるか否かを判定する。この所定時間は、自車両1が仮想壁の手前で停車するように自動ブレーキの作動を開始すべきタイミングを規定するTTCの閾値であり、所定の演算式やシミュレーションや実験などにより設定される(固定値でもよいし可変値でもよい)。
ステップS111の結果、TTCが所定時間未満であると判定された場合(ステップS111:Yes)、コントローラ10は、ステップS112に進む。ステップS112において、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させるように、つまり自車両1を自動で制動させるように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御する。これにより、自車両1に制動力を付与して減速させることで、自車両1を仮想壁の手間で停車させる。
なお、コントローラ10は、このように自動ブレーキを作動させるときに、警報装置から警報が発せられるように警報制御装置54を制御してもよい。つまり、コントローラ10は、自動ブレーキの作動と共に、対向車両との衝突可能性が高いことを報知するための画像及び/又は音声を表示装置及び/又はスピーカにより出力させてもよい。例えば、自動ブレーキを作動させる前に、警報装置から警報を発するのがよい。
一方で、ステップS111の結果、TTCが所定時間未満であると判定されなかった場合(ステップS111:No)、つまりTTCが所定時間以上である場合、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させない。
次に、図3を参照して、実施形態に係る作用及び効果について説明する。
コントローラ10は、自車両1が対向車線96を横断するときに仮想壁W2を設定する。当該仮想壁W2は、自車両1と対向車両83との衝突を回避するために規定され、自車両1を自動で制動させる制御の適用対象となるものである。
具体的には、コントローラ10は、対向車両83の進行に伴って移動し且つ対向車両83の進行方向に延びる仮想壁W2を、自車両1と対向車両83との間に設定し、自車両1が仮想壁W2に衝突しないように自車両1を自動で制動させる制御を実行する。これにより、自車両1と対向車両83との衝突を回避するために、自車両1を対向車両83から比較的離れた位置に停止させることができる。
上述したように、自車両1との衝突は、対向車両82~84の全てについて懸念されるわけではない。右折して対向車線96を横断しようとしている自車両1と、対向車線96を直進しようとしている対向車両83との衝突が懸念される。一方、自車両1が、右折して自車線95を横断しようとしている対向車両82や、左折しようとしている対向車両84と衝突する可能性は、比較的低い。
そこで、コントローラ10は、対向車線96に複数の通行帯96a~96dが設けられている場合には、進行方向に関する通行区分が互いに異なる通行帯96b,96cの間に仮想壁W2を設定する。これにより、コントローラ10は、直進しようとしている対向車両83に応じた位置に、仮想壁W2を設定することができる。この結果、自車両1と対向車両83との衝突をより確実に回避することが可能となる。
また、対向車線96に、対向車両83が直進するよう指定されている通行帯96cと、対向車両82が自車線95を横断するよう指定されている通行帯96a,96bと、が設けられている場合には、コントローラ10は、互いに隣り合う通行帯96bと通行帯96cとの間のみに仮想壁W2を設定するよう構成されている。これにより、対向車線96を直進しようとしている対向車両83に対してのみ、仮想壁W2を設定することができる。また、直進しようとしている対向車両が複数存在する場合でも、最も自車両1側の通行帯96cを通行する対向車両83に対してのみ、仮想壁W2を設定することができる。この結果、無為な仮想壁を設定することを抑制し、自車両1と対向車両83との衝突を回避することが可能となる。
また、コントローラ10は、自車両1側にある仮想壁W2の前端W2aを、対向車両83の前端83aから、自車両1と対向車両83との相対速度に応じた距離X1だけ離れた位置に設定するよう構成されている。これにより、自車両1が対向車線96を横断し終えるまでの間に、自車両1が対向車両83と衝突することを抑制できる。特に、自車両1の後端と対向車両83の前端83aとの衝突を抑制できる。
また、コントローラ10は、仮想壁W2の前端W2aを、横断所要時間である時間t2と相対速度とを乗算して得られる距離X1だけ、対向車両83の前端83aから離れた位置に設定するよう構成されている。これにより、自車両1が対向車線96を横断し終えるまでの間に対向車両83と衝突することを確実に抑制できる。
また、コントローラ10は、対向車両83側にある仮想壁W2の後端W2bを、対向車両83の後端83bから、対向車両83の速度に応じた距離X2だけ離れた位置に設定するよう構成されている。これにより、対向車線96を横断するために自車両1が通行帯96cに進入するときに、自車両1が対向車両83と衝突することを抑制できる。特に、自車両1の前端と対向車両83の後端83bとの衝突を抑制できる。
また、自車両1が、通行帯96cを区画している区画線L5,L6又はその延長線L7に達するのに要する時間t1を進入所要時間とするとき、コントローラ10は、仮想壁W2の後端W2bを、時間t1と対向車両83の速度とを乗算して得られる距離X2だけ、対向車両83の後端83bから離れた位置に設定するよう構成されている。これにより、自車両1が、対向車線96を横断するために、通行帯96cに進入するときに、自車両1が対向車両83と衝突することを確実に抑制できる。