JP7262702B2 - 車両制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の走行を支援する車両制御装置に関する。
従来から、自車両と、自車両周辺の所定の対象物(対向車両や先行車両や歩行者や障害物など)との衝突を回避するように、自車両を自動で制動させるための自動ブレーキに関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、自車両の走行軌跡と対向車両の走行軌跡との交差位置を求め、自車両がこの交差位置に到達するまでの時間に応じて自動ブレーキを制御する技術が開示されている。また、例えば特許文献2には、複数の車両の一時停止位置に基づき地図データ上に仮想停止線を設定し、この仮想停止線において車両を一時停止させるように自動ブレーキを制御する技術が開示されている。
特開2018-95097号公報 特開2018-197964号公報
従来の技術では、自車両が対向車線を横断するときに、自車両と対向車両との衝突を回避すべく、基本的には、自車両が対向車両に直接的に衝突する可能性(典型的には自車両が対向車両と衝突する衝突余裕時間(TTC:Time to Collision))に基づき、自動ブレーキを制御していた。しかしながら、従来の技術においては、対向車線の横断時に、対向車両に応じた仮想的な対象物を設定して、対向車両ではなく、この仮想的な対象物に基づき自動ブレーキを制御するものは存在しなかった。すなわち、自車両が仮想的な対象物に接触しないように自動ブレーキを制御することで、結果的に、自車両と対向車両との衝突を回避する技術は存在しなかった。このように対向車両に応じた仮想的な対象物に基づき自動ブレーキを制御すると、自車両が対向車線を横断するときに、自車両と対向車両との衝突を効果的に回避できると考えられる。
なお、特許文献2に記載された技術は仮想的な停止線(仮想停止線)を設定しているが、この技術は、自車両を一時停止させるべき具体的な停止位置を地図データ上に規定することを目的としており、自車両が対向車線を横断するときに対向車両との衝突を回避させるためのものではない。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、自車両が対向車線を横断するときに、対向車両に応じた仮想壁に基づき自車両を自動で制動させることで、自車両と対向車両との衝突を効果的に回避することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明は、車両の走行を支援する車両制御装置であって、対向車線の対向車両を検出するよう構成された対向車両検出センサと、自車両が対向車線を横断するときに、自車両と対向車両検出センサにより検出された対向車両との衝突を回避するように、自車両を自動で制動させる制御を実行するよう構成されたコントローラと、を有し、コントローラは、対向車両の進行に伴って移動し、且つ対向車両の進行方向に延びる仮想壁を自車両と対向車両との間に設定し、仮想壁と自車両とが衝突するか否かを判定し、仮想壁と自車両とが衝突すると判定した場合には、自車両を自動で制動させる制御を実行し、所定条件が成立した場合には、所定条件が成立していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成され、さらに、仮想壁の自車両側の端部を、対向車両の前端から対向車両の進行方向に第1距離だけ離れた位置に設定するように構成され、第1距離は、自車両が対向車線を横断し終えるのに要する時間を、自車両と対向車両との相対速度に対して乗算して得られる距離である、ことを特徴とする。
この構成によれば、コントローラは、自車両が対向車線を横断するときに仮想壁を設定する。当該仮想壁は、自車両と対向車両との衝突を回避するために設定され、自車両を自動で制動させる制御の適用対象となるものである。
具体的には、コントローラは、対向車両の進行に伴って移動し且つ対向車両の進行方向に延びる仮想壁を、自車両と対向車両との間に設定する。すなわち、仮想壁は、自車両の前方を遮るように設定されるものではなく、自車両の側方に設定される。また、仮想壁は、自車両の走行車線及び対向車線に沿って延びている。そして、コントローラは、仮想壁と自車両とが衝突すると判定した場合には、自車両を自動で制動させる制御を実行する。これにより、自車両と対向車両との衝突を回避するために、自車両を対向車両から比較的離れた位置に停止させることができる。
ところで、自車両と対向車両との衝突は、常に懸念されるわけではない。衝突が懸念されない場合まで自車両を自動で制動させることは、自車両のスムーズな走行を妨げたり、ドライバに煩わしさを感じさせたりするおそれがある。
そこで、コントローラは、自車両の対向車線の横断が促される所定条件が成立した場合には、所定条件が成立していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成され、さらに、仮想壁の自車両側の端部を、対向車両の前端から対向車両の進行方向に第1距離だけ離れた位置に設定するように構成され、第1距離は、自車両が対向車線を横断し終えるのに要する時間を、自車両と対向車両との相対速度に対して乗算して得られる距離である。これにより、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、仮想壁の対向車両側の端部を、対向車両の後端から対向車両の進行方向に第2距離だけ離れた位置に設定するように構成され、第2距離は、自車両及び対向車両が走行する道路の中央線を延長した線に自車両が達するまでの時間を、対向車両の速度に対して乗算して得られる距離である。
本発明において、好ましくは、車両制御装置は、対向車両の将来の走行に関する走行情報を検出する走行情報検出センサを有し、コントローラは、走行情報検出センサが走行情報を検出した場合には、走行情報検出センサが走行情報を検出していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。
この構成によれば、走行情報に基づいて対向車両の将来の走行を把握するとともに、当該走行より、自車両が対向車両と衝突する可能性が低いと判断できる場合に、自車両を自動で制動させる制御を実行し難くすることができる。これにより、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、走行情報検出センサは、対向車両の進行方向に存在する信号機が発する停止信号を検出し、コントローラは、走行情報検出センサが停止信号を検出した場合には、走行情報検出センサが停止信号を検出していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。
対向車両の進行方向に存在する信号機が停止信号を発している場合、その後、対向車両は当該停止信号に基づいて停止すると予想される。この場合、自車両が対向車両と衝突する可能性は比較的低い。
上述した構成によれば、コントローラは、このように実際に自車両が対向車両と衝突する可能性が低い場合には、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、走行情報検出センサは、対向車両の方向指示器の点滅を検出し、コントローラは、走行情報検出センサが方向指示器の点滅を検出した場合には、走行情報検出センサが方向指示器の点滅を検出していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。
対向車両が方向指示器を点滅させている場合、その後、対向車両は左折又は右折すると予想される。この場合、自車両が対向車両と衝突する可能性は比較的低い。
上述した構成によれば、コントローラは、このように実際に自車両が対向車両と衝突する可能性が低い場合には、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、走行情報検出センサは、対向車両の前照灯の点滅を検出し、コントローラは、走行情報検出センサが前照灯の点滅を検出した場合には、走行情報検出センサが前照灯の点滅を検出していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。
例えば、対向車両が前照灯を点滅させて合図を送り(所謂パッシング)、自車両に対して対向車線の横断を促している場合、その後、対向車両は、自車両が対向車線を横断し終えるまで、自車両近傍まで進行しないと考えられる。この場合、自車両が対向車両と衝突する可能性は比較的低い。
上述した構成によれば、コントローラは、このように実際に自車両が対向車両と衝突する可能性が低い場合には、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、自車両のドライバから自車両に対する加速要求を検出する加速要求検出センサを有し、コントローラは、加速要求検出センサが加速要求を検出した場合には、加速要求検出センサが加速要求を検出していない場合と比較して、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。
自車両のドライバが自車両に対して加速を要求している場合、ドライバは、対向車両が自車両近傍に到達する前に、対向車線を横断し終えることを所望していると考えられる。この場合、自車両が対向車両と衝突する可能性は比較的低い。
上述した構成によれば、コントローラは、このように実際に自車両が対向車両と衝突する可能性が低い場合には、自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、所定条件が成立した場合には、仮想壁を設定しない、又は、所定条件が成立していない場合と比較して対向車両の進行方向における仮想壁の長さを短くするよう構成されている。
この構成によれば、コントローラは、仮想壁の長さを短くすることにより、自車両を自動で制動させる制御を実行し難くすることが可能になる。この結果、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、仮想壁に対する自車両の衝突余裕時間を算出し、衝突余裕時間が閾値よりも小さい場合に自車両を自動で制動させる制御を実行し、所定条件が成立した場合には、所定条件が成立していない場合と比較して閾値を小さくするよう構成されている。
この構成によれば、コントローラは、閾値を小さくすることにより、自車両を自動で制動させる制御を実行し難くすることが可能になる。この結果、自車両を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
本発明の車両制御装置によれば、自車両が対向車線を横断するときに、対向車両に応じた仮想壁に基づき自車両を自動で制動させることで、自車両と対向車両との衝突を効果的に回避することができる。
実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。 第1実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。 第1実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。 第1実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。 第1実施形態に係るコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。 第2実施形態に係るコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。 第3実施形態に係るコントローラが実行する処理を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る車両制御装置について説明する。
<車両制御装置の構成>
まず、図1を参照して、実施形態に係る車両制御装置100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る車両制御装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御装置100は、主に、ECU(Electronic Control Unit)などのコントローラ10と、複数のセンサ及びスイッチと、複数の制御装置と、を有する。この車両制御装置100は、車両に搭載され、当該車両の走行を支援するように種々の制御を実行する。
複数のセンサ及びスイッチには、カメラ21、レーダ22、車両の挙動を検出する複数の挙動センサ(車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25)及び複数の挙動スイッチ(操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28)、測位装置29、ナビゲーション装置30、通信装置31、操作装置32が含まれる。また、複数の制御装置には、エンジン制御装置51、ブレーキ制御装置52、ステアリング制御装置53、警報制御装置54が含まれる。
コントローラ10は、プロセッサ11、プロセッサ11が実行する各種プログラムを記憶するメモリ12、入出力装置等を備えたコンピュータ装置により構成される。コントローラ10は、上述した複数のセンサ及びスイッチから受け取った信号に基づき、エンジン制御装置51、ブレーキ制御装置52、ステアリング制御装置53、警報制御装置54に対して、それぞれエンジン装置、ブレーキ装置、ステアリング装置、警報装置を適宜に作動させるための制御信号を出力可能に構成されている。特に、本実施形態では、コントローラ10は、コントローラ10が搭載された自車両と、この自車両周辺の所定の対象物(例えば、対向車両や先行車両や歩行者や障害物など)との衝突を回避するように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御することで、自車両を自動で制動させる、つまり自動ブレーキを作動させるよう構成されている。
カメラ21は、車両の周囲を撮影し、画像データを出力する。コントローラ10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、種々の対象物を特定する。例えば、コントローラ10は、先行車両、対向車両、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(中央線、車線境界線、白線、黄線)、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物などを特定する。さらに、コントローラ10は、対向車両の方向指示器や前照灯が点滅していることを特定する。
レーダ22は、車両の周囲に存在する種々の対象物の位置及び速度を測定する。例えば、レーダ22は、先行車両、対向車両、駐車車両、歩行者、走行路上の落下物などの位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。このレーダ22は、車両の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両と対象物との間の距離(例えば車間距離)や、車両に対する対象物の相対速度を測定する。
なお、レーダ22としてミリ波レーダの代わりにレーザレーダを用いてもよいし、また、レーダ22の代わりに超音波センサなどを用いてもよい。更に、複数のセンサ類を組み合わせて用いて、対象物の位置及び速度を測定してもよい。
車速センサ23は、車両の速度(車速)を検出し、加速度センサ24は、車両の加速度を検出し、ヨーレートセンサ25は、車両に発生するヨーレートを検出し、操舵角センサ26は、車両のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出し、アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み(すなわち、車両に対する加速要求)を検出し、ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。コントローラ10は、車速センサ23により検出された車両の速度とレーダ22により検出された対象物の相対速度とに基づいて、対象物の速度を算出することができる。
測位装置29は、GPS受信機及び/又はジャイロセンサを含み、車両の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーション装置30は、内部に地図情報を格納しており、コントローラ10に地図情報を提供することができる。コントローラ10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両の周囲(特に進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物などを特定する。地図情報は、コントローラ10内に格納されていてもよい。また、地図情報は、車線の通行帯や通行区分に関する情報を含んでいてもよい。
通信装置31は、自車両周辺の他車両と車車間通信を行うと共に、自車両周辺に設置された路側通信装置と路車間通信を行う。通信装置31は、このような車車間通信及び路車間通信により、他車両からの通信データ、及び交通インフラからの交通データ(交通渋滞情報、制限速度情報、交通信号情報など)を取得し、これらのデータをコントローラ10に出力する。
操作装置32は、車室内に設けられており、車両に関する種々の設定を行うためにドライバにより操作される入力装置である。操作装置32は、例えば、インストルメントパネル、ダッシュパネル、センターコンソールに設けられたスイッチ、ボタンや、表示装置に設けられたタッチパネルなどであり、ドライバの操作に対応する操作信号をコントローラ10に出力する。本実施形態では、操作装置32は、車両の走行を支援する制御のオン/オフの切り替えや、車両の走行を支援する制御内容の調整を行えるように構成されている。例えば、ドライバが操作装置32を操作することで、自車両と対象物との衝突を回避するための自動ブレーキのオン/オフの切り替えや、自動ブレーキ時に適用する仮想壁に関する種々の設定や、自車両と対象物との衝突を回避するための警報タイミングの設定や、自車両と対象物との衝突を回避するためにステアリングホイールを振動させる制御のオン/オフの切り替えなどを行えるようになっている。
なお、カメラ21、レーダ22及び通信装置31の少なくとも1つは、本発明に係る「対向車両検出センサ」の一例である。また、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つは、本発明に係る「走行情報検出センサ」の一例である。また、アクセルセンサ27は、本発明に係る「加速要求検出センサ」の一例である。
エンジン制御装置51は、車両のエンジンを制御する。エンジン制御装置51は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。コントローラ10は、車両を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御装置51に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
ブレーキ制御装置52は、車両のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御装置52は、ブレーキ装置による制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどのブレーキアクチュエータを含む。コントローラ10は、車両を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御装置52に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
ステアリング制御装置53は、車両のステアリング装置を制御する。ステアリング制御装置53は、車両の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。コントローラ10は、車両の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御装置53に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
警報制御装置54は、ドライバに対して所定の警報を発することが可能な警報装置を制御する。この警報装置は、車両に設けられた表示装置やスピーカなどである。例えば、コントローラ10は、自車両が対象物と衝突する可能性が高くなると、警報装置から警報が発せられるように、警報制御装置54に対して制御信号を送信する。この例では、コントローラ10は、対象物との衝突可能性が高いことを報知するための画像を表示装置に表示させたり、対象物との衝突可能性が高いことを報知するための音声をスピーカから出力させたりする。
<自動ブレーキ制御>
次に、実施形態に係る自動ブレーキ制御について説明する。本実施形態では、コントローラ10は、自車両が対向車線(自車線と対向する車線を意味する)を横断するときに、自車両と、対向車線を進行する対向車両との衝突を回避するように、自動ブレーキを作動させる制御を実行する。以下では、自動ブレーキ制御に関する種々の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る自動ブレーキ制御について説明する。図2は、第1実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。
図2に示される例では、自車両1が自車線91を走行し、対向車両81が対向車線92を走行している。自車線91及び対向車線92は、交差点93において他車線94と交差している。自車両1は、対向車線92を横断して他車線94に進入しようとしている。
このような状況において、コントローラ10は、自車両1と対向車両81との衝突を回避するように自動ブレーキを制御する。特に、コントローラ10は、仮想壁Wを自車両1と対向車両81との間に設定して、自車両1がこの仮想壁Wに衝突しないように自動ブレーキを制御する。すなわち、コントローラ10は、自車両1が仮想壁Wに衝突しないように自動ブレーキを制御することで、結果的に、自車両1と対向車両81との衝突を防止する。これにより、自車両1と対向車両81との衝突回避を効果的に実現できる。
仮想壁Wは、自車両1と対向車両81との衝突を回避するために設定された、自動ブレーキ制御の適用対象となる仮想的な対象物である。仮想壁Wは、対向車両81の進行に伴って移動し(換言すると対向車両81と共に自車両1に向かって進行し)、且つ対向車両81の進行方向に延びている。また、仮想壁Wは、自車両1側の前端Waと対向車両81側の後端Wbとによって規定される長さ(つまり前端Waから後端Wbまでの長さ)を少なくとも有する。また、仮想壁Wは、このような長さと共に、ある程度の幅(一定の幅でもよいし、状況に応じて変えることができる幅でもよい)を規定してもよい。
また、コントローラ10は、自車両1及び対向車両81が走行する道路の中央線に沿う仮想壁Wを設定する。具体的には、コントローラ10は、中央線に平行に延び且つ中央線上に位置するように、仮想壁Wを設定する。これにより、自車両1が中央線を跨いで対向車線92にはみ出すこと、つまり自車両1の一部が対向車線92を塞ぐことを抑制するようにする。
ここで、一般的に交差点の中には中央線が設けられていないことが多いので、コントローラ10は、そのように中央線が設けられていない交差点93において自車両1が対向車線92を横断する場合には、延長線L3を設定して仮想壁Wを設定する。具体的には、コントローラ10は、自車両1及び対向車両81が走行する道路において交差点93を挟んで自車両1側にある道路上の中央線L1と、自車両1及び対向車両81が走行する道路において交差点93を挟んで対向車両81側にある道路上の中央線L2とを結ぶことで、延長線L3を設定する。より詳しくは、コントローラ10は、中央線L1の端点と中央線L2の端点とを直線により接続することで、延長線L3を設定する。これにより、中央線が設けられていない交差点93において自車両1が対向車線92を横断する場合に、上述した仮想壁Wを設定するために用いる中央線を適切に規定できる。
なお、中央線が設けられていない交差点93において自車両1が対向車線92を横断する場合であっても、対向車両81が自車両1から大きく離れている場合、つまり対向車両81が交差点93から大きく離れている場合には、対向車両81側の中央線L2を用いて仮想壁Wを設定すればよい。また、対向車両81が自車両1にかなり近付いた場合(例えば対向車両81が交差点93を通過している場合)には、自車両1側の中央線L1を用いて仮想壁Wを設定すればよい。
また、コントローラ10は、自車両1側にある仮想壁Wの前端Waを、対向車両81の前端81aから、自車両1と対向車両81との相対速度に応じた距離X1だけ離れた位置に設定する。具体的には、まず、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断し終えるのに要する時間(以下では「t2」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断するときの走行軌跡と、中央線と反対側にある対向車線92の側端(破線L4で示す)とが交わる点P2を特定し、自車両1の後端が点P2に到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が対向車線92を横断し終えるのに要する時間t2として算出する。
そして、コントローラ10は、仮想壁Wの前端Waを、対向車両81の前端81aから、到達時間t2を自車両1と対向車両81との相対速度に対して乗算した距離X1だけ離れた位置に設定する。自車両1の速度(絶対値)を「V1」と表記し、対向車両81の速度(絶対値)を「V2」と表記すると、距離X1は「X1=(V1+V2)×t2」により表される。このように仮想壁Wの前端Waを規定することで、自車両1が対向車線92を横断し終えるまでの間に、自車両1が対向車両81と衝突することを適切に抑制できる。特に、自車両1の後端と対向車両81の前端81aとの衝突を適切に抑制できる。
また、コントローラ10は、対向車両81側にある仮想壁Wの後端Wbを、対向車両81の後端81bから、対向車両81の速度V2に応じた距離X2だけ離れた位置に設定する。具体的には、まず、コントローラ10は、自車両1が延長線L3に達するまでの時間(以下では「t1」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断するときの走行軌跡と延長線L3とが交わる点P1を特定し、自車両1の前端が点P1に到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が延長線L3に達するまでの時間t1として算出する。
そして、コントローラ10は、仮想壁Wの後端Wbを、対向車両81の後端81bから、算出された到達時間t1を対向車両81の速度V2(絶対値)に対して乗算した距離X2だけ離れた位置に設定する。この距離X2は、「X2=V2×t1」により表される。このように仮想壁Wの後端Wbを規定することで、自車両1が対向車線92を横断し始めるとき(つまり、自車両1が対向車線92に進入したとき)に、自車両1が対向車両81と衝突することを抑制できる。特に、自車両1の前端と対向車両81の後端81bとの衝突を抑制できる。なお、対向車両81の速度V2が0の場合、つまり対向車両81が停止している場合には、距離X2は0になる。この場合には、コントローラ10は、仮想壁Wの後端Wbを対向車両81の後端81bの位置に設定する。
なお、以下の説明では、「X1=(V1+V2)×t2」及び「X2=V2×t1」を「第1式」という。
ところで、自車両1と対向車両との衝突は、常に懸念されるわけではない。自動ブレーキ制御を無為に実行することは、スムーズな運転を妨げたり、ドライバに煩わしさを感じさせたりするおそれがある。以下、図3乃至図5を参照して、自動ブレーキ制御が無為になるおそれがある3つのケースについて説明する。図3乃至図5は、第1実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。
[1.信号機が停止信号を発しているケース]
図3に示されるケースでは、自車線91を走行する自車両1の進行方向に、信号機95が設けられている。また、対向車線92を走行する対向車両82の進行方向に、信号機96が設けられている。信号機95は、ランプ95aを点灯させ、自車両1に対して右折を許可する信号を発している。自車両1は、当該信号に基づき、対向車線92を横断して他車線94に進入しようとしている。一方、信号機96は、ランプ96aを点灯させ、自車両1に対して停止信号(所謂「赤信号」)を発している。
このような状況においては、その後、対向車両82は、停止信号に基づいて停止すると予想される。具体的には、対向車両82は、交差点93の手前に設けられた停止線93aで停止すると予想される。すなわち、信号機96が発する停止信号は、対向車両82の将来の停止に関する走行情報である。本ケースでは、自車両1が対向車両82と衝突する可能性は比較的低い。
[2.対向車両が方向指示器を点滅させているケース]
図4に示されるケースでは、対向車線92を走行して交差点93に接近している対向車両83は、左側の方向指示器83aを点滅させている。
このような状況においても、その後、対向車両83は、交差点93を直進しないと予想される。換言すれば、対向車両83は、その進行方向を変更する意思を方向指示器83aの点滅により表示しているとおり、交差点93を左折して他車線94に進入すると予想される。すなわち、方向指示器83aの点滅は、対向車両83の将来の進行方向に関する走行情報である。本ケースでも、自車両1が対向車両83と衝突する可能性は比較的低い。
[3.対向車両が前照灯を点滅させているケース]
図5に示されるケースでは、対向車線92を走行して交差点93に接近している対向車両84は、前照灯84aを点滅させている(所謂パッシング)。
このような状況においては、対向車両84のドライバは、自車両1のドライバに対して合図を送っていると考えられる。このため、その後、対向車両84は、自車両1が対向車線92を横断し終えるまで、自車両1近傍まで進行しないと考えられる。すなわち、前照灯84aの点滅は、対向車両84の将来の走行に関する走行情報である。本ケースでも、自車両1が対向車両84と衝突する可能性は比較的低い。
[4.自車両のドライバから自車両に対して加速要求があるケース]
このような状況においては、自車両1のドライバは、対向車両が自車両1近傍に到達する前に、対向車線92を横断し終えることを所望していると考えられる。この場合、自車両1が対向車両と衝突する可能性は比較的低い。
以上説明した4つのケースにおいて、自車両1を自動で制動させる制御を実行すると、自車両1のスムーズな走行を妨げたり、ドライバに煩わしさを感じさせたりするおそれがある。そこで、コントローラ10は、所定条件が成立した場合には、該所定条件が成立していない場合と比較して、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。
具体的には、コントローラ10は、上述した4つのケースでは、仮想壁を設定しない。すなわち、自動ブレーキ制御の適用対象が存在しないため、仮想壁と自車両とが衝突すると判定されることはない。この結果、上述した3つのケースでは、コントローラ10は、自動ブレーキ制御を行わない。
次に、図6を参照して、コントローラ10が実行する処理について説明する。図6は、第1実施形態に係るコントローラ10が実行する処理を示すフローチャートである。コントローラ10は、所定の周期(例えば100ms毎)で、当該フローチャートに係る処理を繰り返し実行する。
まず、ステップS101において、コントローラ10は、上述した複数のセンサ及びスイッチから各種情報を取得する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21、レーダ22、車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28、測位装置29、ナビゲーション装置30、通信装置31、操作装置32から入力された信号を取得する。
次いで、ステップS102において、コントローラ10は、自車両1が対向車線92を横断しようとしているか否かを判定する。特に、コントローラ10は、自車両1が交差点において右折して対向車線92を横断しようとしているか否かを判定する。例えば、コントローラ10は、自車両1のドライバにより右折のために方向指示器の操作が行われた場合や、自車両1の速度が所定速度未満に低下した状況においてステアリングホイールが時計回りの方向に操作された場合や、ナビゲーション装置30により設定された案内ルートが次の交差点で右折するルートを含む場合に、自車両1が交差点において右折して対向車線92を横断しようとしていると判定する。この場合(ステップS102:Yes)、コントローラ10は、ステップS103に進む。これに対して、自車両1が交差点において右折して対向車線92を横断しようとしていると判定されなかった場合(ステップS102:No)、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS103において、コントローラ10は、自車両1に接近する対向車両が存在するか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、レーダ22から入力された信号や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、自車両1に接近する対向車両を検出するための処理を実行する。その結果、自車両1に接近する対向車両が検出された場合、コントローラ10は、対向車両が存在すると判定し(ステップS103:Yes)、ステップS104に進む。これに対して、自車両1に接近する対向車両が検出されなかった場合、コントローラ10は、対向車両が存在しないと判定し(ステップS103:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS104において、コントローラ10は、対向車両の進行方向に存在する信号機が停止信号を発しているか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、対向車両の進行方向に存在する信号機が発している停止信号を検出するための処理を実行する。その結果、停止信号が検出された場合、コントローラ10は、当該信号機が停止信号を発していると判定し(ステップS104:Yes)、ステップS105に進む。これに対して、停止信号が検出されなかった場合、コントローラ10は、当該信号機が停止信号を発していないと判定し(ステップS104:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS105において、コントローラ10は、対向車両の方向指示器が点滅しているか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、方向指示器の点滅を検出するための処理を実行する。その結果、方向指示器の点滅が検出された場合、コントローラ10は、対向車両の方向指示器が点滅していると判定し(ステップS105:Yes)、ステップS106に進む。これに対して、方向指示器の点滅が検出されなかった場合、コントローラ10は、対向車両の方向指示器が点滅していないと判定し(ステップS105:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS106において、コントローラ10は、対向車両の前照灯が点滅しているか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、前照灯の点滅を検出するための処理を実行する。その結果、前照灯の点滅が検出された場合、コントローラ10は、対向車両の前照灯が点滅していると判定し(ステップS106:Yes)、ステップS107に進む。これに対して、前照灯の点滅が検出されなかった場合、コントローラ10は、対向車両の前照灯が点滅していないと判定し(ステップS106:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS107において、コントローラ10は、自車両1のドライバから自車両1に対する加速要求があるか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、アクセルセンサ27から入力された信号(アクセルペダルの踏み込み量に対応する)などに基づき、加速要求を検出するための処理を実行する。その結果、加速要求が検出された場合、コントローラ10は、自車両1のドライバから自車両1に対する加速要求があると判定し(ステップS107:Yes)、ステップS108に進む。これに対して、加速要求を検出されなかった場合、コントローラ10は、自車両1のドライバから自車両1に対する加速要求がないと判定し(ステップS107:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS108において、コントローラ10は、交差点内において延長線L3を設定する。具体的には、コントローラ10は、まず、カメラ21から入力された信号に基づき、つまりカメラ21により撮影された自車両1の前方の画像に基づき、自車両1及び対向車両が走行する道路において交差点を挟んで自車両1側にある道路上の区画線、及び、当該交差点を挟んで対向車両側にある道路上の区画線を特定する。特に、コントローラ10は、両区画線の端点を特定する。そして、コントローラ10は、これら端点を接続した線分を、延長線L3として用いる。
次いで、ステップS109において、コントローラ10は、自車両1が延長線L3上の点P1に到達するまでの時間t1を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、自車両1の速度V1やステアリングホイールの操舵角や交差点の地図データ(特に道路形状)などに基づき、自車両1が対向車線92を横断するときの走行軌跡を求め、この走行軌跡と延長線L3とが交わる点P1を特定する。そして、コントローラ10は、自車両1の速度V1などに基づき、現在の自車両1の前端が点P1に到達するまでの時間(到達時間)t1を算出する。
次いで、ステップS110において、コントローラ10は、自車両1が点P2に到達するまでの時間t2、つまり自車両1が対向車線92を横断し終えるのに要する時間t2を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、上述したように求められた自車両1が対向車線92を横断するときの走行軌跡と、中央線と反対側にある対向車線92の側端L4とが交わる点P2を特定する。そして、コントローラ10は、自車両1の速度V1などに基づき、現在の自車両1の後端が点P2に到達するまでの時間(到達時間)t2を算出する。
次いで、ステップS111において、コントローラ10は、上述した第1式に基づき、仮想壁Wを設定する。具体的には、コントローラ10は、まず、仮想壁Wの前端Waを、対向車両の前端から、自車両1と対向車両との相対速度に対して到達時間t2を乗算した距離X1(X1=(V1+V2)×t2)だけ離れた位置に設定する。また、コントローラ10は、仮想壁Wの後端Wbを、対向車両の後端から、対向車両の速度V2に対して到達時間t1を乗算した距離X2(X2=V2×t1)だけ離れた位置に設定する。そして、コントローラ10は、このような前端Wa及び後端Wbを有する仮想壁Wを、延長線L3に平行に延び且つ延長線L3上に位置するように配置する。
次いで、ステップS112において、コントローラ10は、点P1が仮想壁W上に存在するか否かを判定する。換言すると、コントローラ10は、対向車両の進行により仮想壁W(特に仮想壁Wの前端Wa)が点P1まで達したか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、上述したように求めた点P1の位置と仮想壁Wの前端Waの位置に基づき、ステップS112の判定を行う。その結果、点P1が仮想壁W上に存在すると判定された場合(ステップS112:Yes)、コントローラ10は、ステップS113に進む。
これに対して、ステップS112において、点P1が仮想壁上に存在すると判定されなかった場合(ステップS112:No)、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。このように点P1が仮想壁W上に存在しない場合には、対向車両が自車両1から十分に離れているので、つまり自車両1が対向車線92を横断しても対向車両と衝突することはないので、コントローラ10は、仮想壁Wに基づく自動ブレーキ制御を実行しない。
次いで、ステップS113において、コントローラ10は、自車両1が仮想壁Wと衝突する衝突余裕時間/衝突予測時間(TTC:Time to Collision)を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、車速センサ23やカメラ21やレーダ22などから入力された信号に基づき、自車両1の速度V1、仮想壁Wの速度(対向車両の速度V2に一致する)、及び自車両1と仮想壁Wとの距離を算出する。そして、コントローラ10は、自車両1と仮想壁Wとの距離を、自車両1と仮想壁Wとの相対速度(つまり自車両1と対向車両との相対速度(V1+V2))によって除算することにより、TTCを算出する。
次いで、ステップS114において、コントローラ10は、上述したように算出されたTTCが時間TTC1未満であるか否かを判定する。この時間TTC1は、自車両1が仮想壁Wの手前で停車するように自動ブレーキの作動を開始すべきタイミングを規定する閾値であり、例えば2秒である。
ステップS114の結果、TTCが時間TTC1未満であると判定された場合(ステップS114:Yes)、コントローラ10は、ステップS115に進む。ステップS115において、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させるように、つまり自車両1を自動で制動させるように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御する。これにより、自車両1に制動力を付与して減速させることで、自車両1を仮想壁Wの手間で停車させるようにする。
なお、コントローラ10は、このように自動ブレーキを作動させるときに、警報装置から警報が発せられるように警報制御装置54を制御してもよい。つまり、コントローラ10は、自動ブレーキの作動と共に、対向車両との衝突可能性が高いことを報知するための画像及び/又は音声を表示装置及び/又はスピーカにより出力させてもよい。例えば、自動ブレーキを作動させる前に、警報装置から警報を発するのがよい。
一方で、ステップS114の結果、TTCが時間TTC1未満であると判定されなかった場合(ステップS114:No)、つまりTTCが時間TTC1以上である場合、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させない。
次に、第1実施形態に係る作用及び効果について説明する。
コントローラ10は、対向車両81の進行に伴って移動し且つ対向車両81の進行方向に延びる仮想壁Wを、自車両1と対向車両81との間に設定する。そして、コントローラ10は、仮想壁Wと自車両1とが衝突すると判定した場合には、自車両1を自動で制動させる。これにより、自車両と対向車両との衝突を回避するために、自車両を対向車両から比較的離れた位置に停止させることができる。
また、コントローラ10は、自車両1の対向車線92の横断が促される所定条件が成立した場合には、所定条件が成立していない場合と比較して、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
また、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つは、対向車両82の進行方向に存在する信号機96が発する停止信号(図3参照)を検出する。コントローラ10は、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つが停止信号を検出した場合には、停止信号を検出していない場合と比較して、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。つまり、コントローラ10は、実際に自車両1が対向車両82と衝突する可能性が低い場合には、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両81(図2参照)との衝突を回避することが可能となる。
また、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つは、対向車両83の方向指示器83aの点滅(図4参照)を検出する。コントローラ10は、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つが方向指示器83aの点滅を検出した場合には、方向指示器83aの点滅を検出していない場合と比較して、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。つまり、コントローラは、実際に自車両1が対向車両83と衝突する可能性が低い場合には、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両81(図2参照)との衝突を回避することが可能となる。
また、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つは、対向車両84の前照灯84aの点滅(図5参照)を検出する。コントローラ10は、カメラ21及び通信装置31の少なくとも1つが前照灯84aの点滅を検出した場合には、前照灯84aの点滅を検出していない場合と比較して、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。つまり、コントローラ10は、実際に自車両1が対向車両84と衝突する可能性が低い場合には、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両81(図2参照)との衝突を回避することが可能となる。
また、コントローラ10は、アクセルセンサ27が加速要求を検出した場合には、アクセルセンサ27が加速要求を検出していない場合と比較して、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。つまり、コントローラ10は、実際に自車両1が対向車両と衝突する可能性が低い場合には、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている。これにより、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両81(図2参照)との衝突を回避することが可能となる。
また、コントローラ10は、自車両1の対向車線92の横断が促される所定条件が成立した場合には、仮想壁Wを設定しない。これにより、コントローラ10は、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難くすることが可能になる。この結果、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両81(図2参照)との衝突を回避することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る自動ブレーキ制御について説明する。なお、以下では、第1実施形態と異なる制御、作用及び効果について主に説明し、第1実施形態と同一の制御、作用及び効果についてはその説明を適宜省略する。
第2実施形態は、上述した4つのケースでも仮想壁を設定する点で、第1実施形態と異なる。ただし、その際に設定される仮想壁の長さは、第1実施形態の仮想壁の長さと比較して短い。
具体的には、第2実施形態に係るコントローラ10は、上述した4つのケースにおいて、対向車両の前端から仮想壁の前端までの距離X1(図2参照)を「X1=0.5×((V1+V2)×t2)」と設定し、対向車両の後端から仮想壁の後端までの距離X2(図2参照)を、「X2=V2×t1」と設定する。つまり、第2実施形態に係るコントローラ10が上述した4つのケースにおいて設定する仮想壁の長さは、その他のケースにおいて第1式に基づいて設定する仮想壁の長さの半分である。
なお、以下の説明では、「X1=0.5×((V1+V2)×t2)」及び「X2=V2×t1」を「第2式」という。
図7は、第2実施形態に係るコントローラ10が実行する処理を示すフローチャートである。当該フローチャートに係る処理も、コントローラ10によって所定の周期(例えば100ms毎)で繰り返し実行される。
第2実施形態に係るステップS201~S203の処理は、それぞれ、第1実施形態に係るステップS101~S103(図6参照)の処理と同一である。
第2実施形態に係るコントローラ10は、ステップS203で対向車両が存在すると判定した場合(ステップS203:Yes)は、仮想壁を設定する。そのために、コントローラ10は、まず、ステップS204~S206の処理を実行する。当該ステップS204~S206の処理は、それぞれ、第1実施形態に係るステップS108~S110(図6参照)の処理と同一である。
第2実施形態においても、コントローラ10は、対向車両の進行方向に存在する信号機が停止信号を発しているか否か(ステップS207)、対向車両の方向指示器が点滅しているか否か(ステップS208)、対向車両の前照灯が点滅しているか否か(ステップS209)、及び自車両1のドライバから自車両1に対する加速要求があるか否か(S210)を判定する。当該ステップS207~S210の処理は、それぞれ、第1実施形態に係るステップS104~S107(図6参照)の処理と同一である。
ステップS207~S210の全てにおいて「No」との判定結果に至った場合、コントローラ10は、ステップS211に進む。この場合、コントローラ10は、ステップS211において、上述した第1式に基づいて仮想壁を設定する。
これに対し、ステップS207~S210の少なくとも1つにおいて「No」との判定結果に至った場合、コントローラ10は、ステップS216に進む。この場合、コントローラ10は、ステップS216において、上述した第2式に基づいて仮想壁を設定する。ステップS216において設定される仮想壁の長さは、ステップS211において設定される仮想壁の長さの半分である。
ステップS211又はステップS216の処理を終えたコントローラ10は、ステップS212に進む。ステップS212において、コントローラ10は、点P1(図2参照)が仮想壁上に存在するか否かを判定する。仮想壁が第2式に基づいて設定されている場合(ステップS216)は、仮想壁が第1式に基づいて設定されている場合(ステップS211)と比較して、仮想壁の長さが短い。このため、仮想壁が第2式に基づいて設定されている場合(ステップS216)は、仮想壁が第1式に基づいて設定されている場合(ステップS211)と比較して、点P1が仮想壁上に存在すると判定され難い。
第2実施形態に係るステップS213~S215の処理は、それぞれ、第1実施形態に係るステップS113~S115(図6参照)の処理と同一である。
以上説明した第2実施形態によれば、コントローラ10は、仮想壁の長さを短くすることにより、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難くすることが可能になる。この結果、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る自動ブレーキ制御について説明する。なお、以下では、第1実施形態第2実施形態と異なる制御、作用及び効果について主に説明し、第1実施形態第2実施形態と同一の制御、作用及び効果についてはその説明を適宜省略する。
第3実施形態は、上述した4つのケースでも仮想壁を設定する点で、第1実施形態と異なる。ただし、その際にTTCとの比較に用いられる閾値は、第1実施形態の閾値と比較して小さい。
具体的には、第3実施形態に係るコントローラ10は、上述した4つのケースにおいて、TTCとの比較に用いられる閾値を時間TTC2と設定する。時間TTC2は、前述した時間TTC1の半分程度であり、例えば1秒である。
図8は、第3実施形態に係るコントローラ10が実行する処理を示すフローチャートである。当該フローチャートに係る処理も、コントローラ10によって所定の周期(例えば100ms毎)で繰り返し実行される。
第3実施形態に係るステップS301~S309の処理は、それぞれ、第2実施形態に係るステップS201~S206,S211~S213(図6参照)の処理と同一である。
第3実施形態においても、コントローラ10は、対向車両の進行方向に存在する信号機が停止信号を発しているか否か(ステップS310)、対向車両の方向指示器が点滅しているか否か(ステップS311)、対向車両の前照灯が点滅しているか否か(ステップS312)、及び自車両1のドライバから自車両1に対する加速要求があるか否か(S313)を判定する。当該ステップS310~S313の処理は、それぞれ、第2実施形態に係るステップS207~S210(図6参照)の処理と同一である。
ステップS310~S313の全てにおいて「No」との判定結果に至った場合、コントローラ10は、ステップS314に進む。この場合、コントローラ10は、ステップS314において、上述したように算出されたTTCが時間TTC1未満であるか否かを判定する。
これに対し、ステップS310~S313の少なくとも1つにおいて「No」との判定結果に至った場合、コントローラ10は、ステップS316に進む。この場合、コントローラ10は、ステップS316において、TTCが時間TTC2未満であるか否かを判定する。
ステップS316において、TTCが時間TTC2未満であると判定された場合(ステップS316:Yes)、コントローラ10は、ステップS315に進む。ステップS315において、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させるように、つまり自車両1を自動で制動させるように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御する。
一方、ステップS316において、TTCが時間TTC2未満であると判定されなかった場合(ステップS316:No)、つまりTTCが時間TTC2以上である場合、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させない。
以上説明した第3実施形態によれば、コントローラ10は、閾値を小さくすることにより、自車両1を自動で制動させる制御を実行し難くすることが可能になる。この結果、自車両1を無為に自動で制動させることを抑制しつつ、自車両1と対向車両との衝突を回避することが可能となる。
1 自車両
10 コントローラ
21 カメラ
22 レーダ
52 ブレーキ制御装置
81~84 対向車両
83a 方向指示器
84a 前照灯
92 対向車線
96 信号機
100 車両制御装置
W 仮想壁

Claims (9)

  1. 車両の走行を支援する車両制御装置であって、
    対向車線の対向車両を検出するよう構成された対向車両検出センサと、
    自車両が前記対向車線を横断するときに、前記自車両と前記対向車両検出センサにより検出された前記対向車両との衝突を回避するように、前記自車両を自動で制動させる制御を実行するよう構成されたコントローラと、を有し、
    前記コントローラは、
    前記対向車両の進行に伴って移動し、且つ前記対向車両の進行方向に延びる仮想壁を前記自車両と前記対向車両との間に設定し、該仮想壁と前記自車両とが衝突するか否かを判定し、前記仮想壁と前記自車両とが衝突すると判定した場合には、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し、
    前記自車両の前記対向車線の横断が促される所定条件が成立した場合には、該所定条件が成立していない場合と比較して、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成され、
    さらに、前記仮想壁の前記自車両側の端部を、前記対向車両の前端から前記対向車両の進行方向に第1距離だけ離れた位置に設定するように構成され、前記第1距離は、前記自車両が前記対向車線を横断し終えるのに要する時間を、前記自車両と前記対向車両との相対速度に対して乗算して得られる距離である、ことを特徴とする車両制御装置。
  2. 前記コントローラは、前記仮想壁の前記対向車両側の端部を、前記対向車両の後端から前記対向車両の進行方向に第2距離だけ離れた位置に設定するように構成され、前記第2距離は、前記自車両及び前記対向車両が走行する道路の中央線を延長した線に前記自車両が達するまでの時間を、前記対向車両の速度に対して乗算して得られる距離である、請求項1に記載の車両制御装置。
  3. 前記対向車両の将来の走行に関する走行情報を検出する走行情報検出センサを有し、
    前記コントローラは、前記走行情報検出センサが前記走行情報を検出した場合には、前記走行情報検出センサが前記走行情報を検出していない場合と比較して、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている、請求項1に記載の車両制御装置。
  4. 前記走行情報検出センサは、前記対向車両の進行方向に存在する信号機が発する停止信号を検出し、
    前記コントローラは、前記走行情報検出センサが前記停止信号を検出した場合には、前記走行情報検出センサが前記停止信号を検出していない場合と比較して、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている、請求項に記載の車両制御装置。
  5. 前記走行情報検出センサは、前記対向車両の方向指示器の点滅を検出し、
    前記コントローラは、前記走行情報検出センサが前記方向指示器の点滅を検出した場合には、前記走行情報検出センサが前記方向指示器の点滅を検出していない場合と比較して、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている、請求項に記載の車両制御装置。
  6. 前記走行情報検出センサは、前記対向車両の前照灯の点滅を検出し、
    前記コントローラは、前記走行情報検出センサが前記前照灯の点滅を検出した場合には、前記走行情報検出センサが前記前照灯の点滅を検出していない場合と比較して、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている、請求項に記載の車両制御装置。
  7. 前記自車両のドライバから前記自車両に対する加速要求を検出する加速要求検出センサを有し、
    前記コントローラは、前記加速要求検出センサが前記加速要求を検出した場合には、前記加速要求検出センサが前記加速要求を検出していない場合と比較して、前記自車両を自動で制動させる制御を実行し難いよう構成されている、請求項1に記載の車両制御装置。
  8. 前記コントローラは、前記所定条件が成立した場合には、前記仮想壁を設定しない、又は、前記所定条件が成立していない場合と比較して前記対向車両の進行方向における前記仮想壁の長さを短くするよう構成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両制御装置。
  9. 前記コントローラは、
    前記仮想壁に対する前記自車両の衝突余裕時間を算出し、該衝突余裕時間が閾値よりも小さい場合に前記自車両を自動で制動させる制御を実行し、
    前記所定条件が成立した場合には、前記所定条件が成立していない場合と比較して前記閾値を小さくするよう構成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両制御装置。
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