以下、添付図面を参照して、実施形態に係る車両制御装置について説明する。
<車両制御装置の構成>
まず、図1を参照して、実施形態に係る車両制御装置100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る車両制御装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両制御装置100は、主に、ECU(Electronic Control Unit)などのコントローラ10と、複数のセンサ及びスイッチと、複数の制御装置と、を有する。この車両制御装置100は、車両に搭載され、当該車両の走行を支援するように種々の制御を実行する。
複数のセンサ及びスイッチには、カメラ21、レーダ22、車両の挙動を検出する複数の挙動センサ(車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25)及び複数の挙動スイッチ(操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28)、測位装置29、ナビゲーション装置30、通信装置31、操作装置32が含まれる。また、複数の制御装置には、エンジン制御装置51、ブレーキ制御装置52、ステアリング制御装置53、警報制御装置54が含まれる。
コントローラ10は、プロセッサ11、プロセッサ11が実行する各種プログラムを記憶するメモリ12、入出力装置等を備えたコンピュータ装置により構成される。コントローラ10は、上述した複数のセンサ及びスイッチから受け取った信号に基づき、エンジン制御装置51、ブレーキ制御装置52、ステアリング制御装置53、警報制御装置54に対して、それぞれエンジン装置、ブレーキ装置、ステアリング装置、警報装置を適宜に作動させるための制御信号を出力可能に構成されている。特に、本実施形態では、コントローラ10は、コントローラ10が搭載された自車両と、この自車両周辺の所定の対象物(例えば、対向車両や先行車両や後続車両や歩行者や障害物など)との衝突を回避するように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御することで、自車両を自動で制動させる、つまり自動ブレーキを作動させるよう構成されている。
カメラ21は、車両の周囲を撮影し、画像データを出力する。コントローラ10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、種々の対象物を特定する。例えば、コントローラ10は、先行車両、対向車両、後続車両、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(中央線、車線境界線、白線、黄線)、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物などを特定する。
レーダ22は、車両の周囲に存在する種々の対象物の位置及び速度を測定する。例えば、レーダ22は、先行車両、対向車両、後続車両、駐車車両、歩行者、走行路上の落下物などの位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。このレーダ22は、車両の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両と対象物との間の距離(例えば車間距離)や、車両に対する対象物の相対速度を測定する。
なお、レーダ22としてミリ波レーダの代わりにレーザレーダを用いてもよいし、また、レーダ22の代わりに超音波センサなどを用いてもよい。更に、複数のセンサ類を組み合わせて用いて、対象物の位置及び速度を測定してもよい。
車速センサ23は、車両の速度(車速)を検出し、加速度センサ24は、車両の加速度を検出し、ヨーレートセンサ25は、車両に発生するヨーレートを検出し、操舵角センサ26は、車両のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出し、アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。コントローラ10は、車速センサ23により検出された車両の速度とレーダ22により検出された対象物の相対速度とに基づいて、対象物の速度を算出することができる。
測位装置29は、GPS受信機及び/又はジャイロセンサを含み、車両の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーション装置30は、内部に地図情報を格納しており、コントローラ10に地図情報を提供することができる。コントローラ10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両の周囲(特に進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物などを特定する。地図情報は、コントローラ10内に格納されていてもよい。また、地図情報は、車線の通行帯や通行区分に関する情報を含んでいてもよい。
通信装置31は、自車両周辺の他車両と車車間通信を行うと共に、自車両周辺に設置された路側通信装置と路車間通信を行う。通信装置31は、このような車車間通信及び路車間通信により、他車両からの通信データ、及び交通インフラからの交通データ(交通渋滞情報、制限速度情報、交通信号情報など)を取得し、これらのデータをコントローラ10に出力する。
操作装置32は、車室内に設けられており、車両に関する種々の設定を行うためにドライバにより操作される入力装置である。操作装置32は、例えば、インストルメントパネル、ダッシュパネル、センターコンソールに設けられたスイッチ、ボタンや、表示装置に設けられたタッチパネルなどであり、ドライバの操作に対応する操作信号をコントローラ10に出力する。本実施形態では、操作装置32は、車両の走行を支援する制御のオン/オフの切り替えや、車両の走行を支援する制御内容の調整を行えるように構成されている。例えば、ドライバが操作装置32を操作することで、自車両と対象物との衝突を回避するための自動ブレーキのオン/オフの切り替えや、自動ブレーキ時に適用する仮想壁に関する種々の設定や、自車両と対象物との衝突を回避するための警報タイミングの設定や、自車両と対象物との衝突を回避するためにステアリングホイールを振動させる制御のオン/オフの切り替えなどを行えるようになっている。
なお、カメラ21、レーダ22及び通信装置31の少なくとも1つは、本発明に係る「後続車両検出センサ」の一例である。
エンジン制御装置51は、車両のエンジンを制御する。エンジン制御装置51は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。コントローラ10は、車両を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御装置51に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
ブレーキ制御装置52は、車両のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御装置52は、ブレーキ装置による制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどのブレーキアクチュエータを含む。コントローラ10は、車両を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御装置52に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
ステアリング制御装置53は、車両のステアリング装置を制御する。ステアリング制御装置53は、車両の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。コントローラ10は、車両の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御装置53に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
警報制御装置54は、ドライバに対して所定の警報を発することが可能な警報装置を制御する。この警報装置は、車両に設けられた表示装置やスピーカなどである。例えば、コントローラ10は、自車両が対象物と衝突する可能性が高くなると、警報装置から警報が発せられるように、警報制御装置54に対して制御信号を送信する。この例では、コントローラ10は、対象物との衝突可能性が高いことを報知するための画像を表示装置に表示させたり、対象物との衝突可能性が高いことを報知するための音声をスピーカから出力させたりする。
<自動ブレーキ制御>
次に、実施形態に係る自動ブレーキ制御について説明する。本実施形態では、コントローラ10は、自車両が幅方向(自車両の進行方向を向くドライバから見た左右方向を意味する)に移動するときに、自車両と、後方から接近する後続車両との衝突を回避するように、自動ブレーキを作動させる制御を実行する。
[1.自車両が自車線から隣車線に移動するケース]
図2を参照して、自車両1が自車線91から隣車線92に移動するケースにおける自動ブレーキ制御について説明する。図2は、実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。
図2に示される例では、自車両1が自車線91を走行し、後続車両8が隣車線92を走行している。自車線91と隣車線92とは、区画線L1により区画されている。自車両1は、区画線L1を横切って、隣車線92に進入しようとしている。
このような状況において、コントローラ10は、自車両1と後続車両8との衝突を回避するように自動ブレーキを制御する。特に、コントローラ10は、仮想壁Wを自車両1と後続車両8との間に設定して、自車両1がこの仮想壁Wに衝突しないように自動ブレーキを制御する。すなわち、コントローラ10は、自車両1が仮想壁Wに衝突しないように自動ブレーキを制御することで、結果的に、自車両1と後続車両8との衝突を防止する。これにより、自車両1と後続車両8との衝突回避を効果的に実現できる。
仮想壁Wは、自車両1と後続車両8との衝突を回避するために設定された、自動ブレーキ制御の適用対象となる仮想的な対象物である。仮想壁Wは、後続車両8の進行に伴って移動し(換言すると後続車両8と共に自車両1に向かって進行し)、且つ後続車両8の進行方向に延びている。また、仮想壁W1は、後続車両8から遠い端部である前端Waと後続車両8から近い端部である後端Wbとによって規定される長さX(つまり前端Waから後端Wbまでの長さ)を少なくとも有する。また、仮想壁Wは、このような長さと共に、ある程度の幅(一定の幅でもよいし、状況に応じて変えることができる幅でもよい)を規定してもよい。
また、コントローラ10は、区画線L1に沿って延びる仮想壁Wを設定する。具体的には、コントローラ10は、区画線L1に平行に延び且つ区画線L1上に位置するように、仮想壁Wを設定する。
また、コントローラ10は、仮想壁Wの前端Waを、後続車両8の前端8aから、自車両1と後続車両8との相対速度に応じた距離Xだけ離れた位置に設定する。具体的には、まず、コントローラ10は、自車両1が隣車線92に移動し終えるのに要する時間(以下では「t2」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が幅方向に移動する際の目標地点である点P2aと、当該点P2aまでの自車両1の走行軌跡(矢印A1で示す)を特定し、自車両1の前端が点P2aに到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が幅方向に移動し終えるのに要する時間t2として算出する。
また、コントローラ10は、仮想壁Wの後端Wbを、後続車両8の前端8aの位置に設定する。
そして、コントローラ10は、仮想壁Wの長さXを、自車両1に対する後続車両8の相対速度に基づいて設定する。長さXは「X=X1+X2」により表される。ここで、自車両1の速度(絶対値)を「V1」と表記し、後続車両8の速度(絶対値)を「V2」と表記すると、長さX1は「X1=(V2-V1)×t2」により表され、長さX2は「X2=V2×(V2-V1)/0.1」により表される。長さX2は、後続車両8が0.1Gの減速をすれば、自車両1と後続車両8との衝突を回避できる距離に相当するものと考えることができる。
ここで、長さX1(=(V2-V1)×t2)は、本発明に係る「第1長さ」の一例である。また、長さX2(=V2×(V2-V1)/0.1)は、本発明に係る「第2長さ」の一例である。さらに、長さX2を長さX1に加算することに得られる長さX(=X1+X2)は、本発明に係る「第3長さ」の一例である。
また、コントローラ10は、自車両1が区画線L1に達するまでの時間(以下では「t1」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が隣車線92に移動するときの走行軌跡と区画線L1とが交わる点P1aを特定し、自車両1の前端が点P1aに到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が区画線L1に達するまでの時間t1として算出する。
後述するように、コントローラ10は、時間t1と仮想壁Wとに基づいて自動ブレーキ制御を実行する。仮想壁Wの長さXを上述したように規定することで、自車両1が点P2aに移動し終えるまでの間に、自車両1が後続車両8と衝突することを適切に抑制できる。特に、自車両1の後端と後続車両8の前端8aとの衝突を適切に抑制できる。
[2.自車両が自車線内で幅方向に移動するケース]
次に、図3を参照して、自車両1が自車線93内で幅方向に移動するケースにおける自動ブレーキ制御について説明する。図3は、実施形態に係る自動ブレーキ制御の説明図である。
図3に示される例では、自車両1及び後続車両8は、いずれも自車線93を走行している。自車両1は、矢印A2で示されるように、対向車線94を横断して他車線95に進入しようとしている。このため、自車両1は、自車線93のうち区画線L2の近傍を走行している。後続車両8は、この自車両1の左方を通過しようとしている。
しかし、その後に自車両1が対向車線94の横断を取りやめ、自車線93を走行し続けることを選択した場合について考える。自車両1は、区画線L2から離れるよう、左方向に移動する。
このような状況において、コントローラ10は、自車両1と後続車両8との衝突を回避するように自動ブレーキを制御する。特に、コントローラ10は、仮想壁Wを自車両1と後続車両8との間に設定して、自車両1がこの仮想壁Wに衝突しないように自動ブレーキを制御する。
自車両1及び後続車両8は、いずれも自車線93を走行しているため、幅方向において、後続車両8と自車両1との間に区画線は存在しない。そこで、コントローラ10は、幅方向において後続車両8と自車両1との中間位置に仮想線L5を設定する。具体的には、まず、コントローラ10は、自車両1の左端に対応する仮想線L3と、後続車両8の右端に対応する仮想線L4と、を設定するとともに、仮想線L3,L4の中間位置で後続車両の進行方向に沿って延びる仮想線L5を設定する。すなわち、仮想線L3と仮想線L5との間隔と、仮想線L4と仮想線L5との間隔と、は互いに等しい。コントローラ10は、この仮想線L5に沿って延びる仮想壁Wを設定する。仮想壁Wの前端Wa、後端Wb、及び長さXの設定方法は、前述したものと同様である。
また、コントローラ10は、自車両1の目標地点である点P2bと、当該点P2bまでの自車両1の走行軌跡(矢印A3で示す)を特定し、自車両1の前端が点P2bに到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が幅方向に移動し終えるのに要する時間t2として算出する。
また、コントローラ10は、自車両1が仮想線L5に達するまでの時間(以下では「t1」と表記する)を算出する。より詳しくは、コントローラ10は、自車両1が左方向に移動するときの走行軌跡と仮想線L5とが交わる点P1bを特定し、自車両1の前端が点P1bに到達するまでの時間(到達時間)を、自車両1が仮想線L5に達するまでの時間t1として算出する。
後述するように、コントローラ10は、時間t1と仮想壁Wとに基づいて自動ブレーキ制御を実行する。これにより、幅方向において後続車両8と自車両1との間に区画線が存在しない場合でも、自車両1が幅方向に移動し終えるまでの間に、自車両1が後続車両8と衝突することを適切に抑制できる。特に、自車両1の後端と後続車両8の前端8aとの衝突を適切に抑制できる。
次に、図4を参照して、コントローラ10が実行する処理について説明する。図4は、実施形態に係るコントローラ10が実行する処理を示すフローチャートである。コントローラ10は、所定の周期(例えば100ms毎)で、当該フローチャートに係る処理を繰り返し実行する。
まず、ステップS101において、コントローラ10は、上述した複数のセンサ及びスイッチから各種情報を取得する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21、レーダ22、車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28、測位装置29、ナビゲーション装置30、通信装置31、操作装置32から入力された信号を取得する。
次いで、ステップS102において、コントローラ10は、自車両1が幅方向に移動しようとしているか否かを判定する。例えば、コントローラ10は、自車両1のドライバにより方向指示器の操作が行われた場合や、自車両1のステアリングホイールが操作された場合や、ナビゲーション装置30により設定された案内ルートが幅方向への移動を含む場合に、自車両1が幅方向に移動しようとしていると判定する。自車両1が幅方向に移動しようとしていると判定された場合(ステップS102:Yes)、コントローラ10は、ステップS103に進む。これに対して、自車両1が幅方向に移動しようとしていると判定されなかった場合(ステップS102:No)、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS103において、コントローラ10は、自車両1に接近する後続車両が存在するか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、レーダ22から入力された信号や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、自車両1に接近する後続車両を検出するための処理を実行する。その結果、自車両1に接近する後続車両が検出された場合、コントローラ10は、後続車両が存在すると判定し(ステップS103:Yes)、ステップS104に進む。これに対して、自車両1に接近する後続車両が検出されなかった場合、コントローラ10は、後続車両が存在しないと判定し(ステップS103:No)、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。
次いで、ステップS104において、後続車両8と自車両1との間に区画線が存在するか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、カメラ21から入力された信号(画像データに対応する)や、通信装置31から入力された信号(車車間通信に対応する信号)などに基づき、幅方向において後続車両8と自車両1との間に存在する区画線を検出するための処理を実行する。その結果、区画線L1が検出された場合、コントローラ10は、区画線L1が存在すると判定し(ステップS104:Yes)、ステップS105に進む。
次いで、ステップS105において、コントローラ10は、自車両1が区画線L1上の点P1aに到達するまでの時間t1を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、自車両1の速度V1やステアリングホイールの操舵角や交差点の地図データ(特に道路形状)などに基づき、自車両1が幅方向に移動するときの走行軌跡を求め、この走行軌跡と区画線L1とが交わる点P1aを特定する。そして、コントローラ10は、自車両1の速度V1などに基づき、現在の自車両1の前端が点P1aに到達するまでの時間(到達時間)t1を算出する。
次いで、ステップS106において、コントローラ10は、自車両1が点P2aに到達するまでの時間t2、つまり自車両1が幅方向に移動し終えるのに要する時間t2を算出する。具体的には、コントローラ10は、現在の自車両1の前端が、目的地である点P2aに到達するまでの時間(到達時間)t2を算出する。
これに対して、ステップS104で、幅方向において後続車両8と自車両1との間に区画線が存在しないと判定した場合、コントローラ10は、ステップS107に進む。
次いで、ステップS107において、コントローラ10は、仮想線L5を設定する。具体的には、コントローラ10は、幅方向において後続車両8と自車両1との中間位置で後続車両8の進行方向に沿って延びる仮想線L5を設定する。
次いで、ステップS108において、コントローラ10は、自車両1が仮想線L5上の点P1bに到達するまでの時間t1を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、自車両1の速度V1やステアリングホイールの操舵角や交差点の地図データ(特に道路形状)などに基づき、自車両1が幅方向に移動するときの走行軌跡を求め、この走行軌跡と仮想線L5とが交わる点P1bを特定する。そして、コントローラ10は、自車両1の速度V1などに基づき、現在の自車両1の前端が点P1bに到達するまでの時間(到達時間)t1を算出する。
次いで、ステップS109において、コントローラ10は、自車両1が点P2bに到達するまでの時間t2、つまり自車両1が幅方向に移動し終えるのに要する時間t2を算出する。具体的には、コントローラ10は、現在の自車両1の前端が、目的地である点P2bに到達するまでの時間(到達時間)t2を算出する。
ステップS106又はステップS109の処理を終えたコントローラ10は、次いで、ステップS110において、仮想壁Wを設定する。具体的には、コントローラ10は、区画線L1又は仮想線L5に沿って長さXだけ延びる仮想壁Wを設定する。
次いで、ステップS111において、コントローラ10は、点P1a又は点P1bが仮想壁W上に存在するか否かを判定する。換言すると、コントローラ10は、後続車両8の進行により仮想壁W(特に仮想壁Wの前端Wa)が点P1a又は点P1bまで達したか否かを判定する。具体的には、コントローラ10は、上述したように求めた点P1a又は点P1bの位置と仮想壁Wの前端Waの位置に基づき、ステップS111の判定を行う。その結果、点P1a又は点P1bが仮想壁W上に存在すると判定された場合(ステップS111:Yes)、コントローラ10は、ステップS112に進む。
これに対して、ステップS111において、点P1a又は点P1bが仮想壁W上に存在すると判定されなかった場合(ステップS111:No)、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。このように点P1a又は点P1bが仮想壁W上に存在しない場合には、後続車両8が自車両1から十分に離れているので、つまり自車両1が幅方向に移動しても後続車両8と衝突することはないので、コントローラ10は、仮想壁Wに基づく自動ブレーキ制御を実行しない。
次いで、ステップS112において、コントローラ10は、自車両1が仮想壁Wと衝突する衝突余裕時間/衝突予測時間(TTC:Time to Collision)を算出する。具体的には、コントローラ10は、まず、車速センサ23やカメラ21やレーダ22などから入力された信号に基づき、自車両1の速度V1、仮想壁Wの速度(後続車両8の速度V2に一致する)、及び自車両1と仮想壁Wとの距離を算出する。そして、コントローラ10は、自車両1と仮想壁Wとの距離を、自車両1と仮想壁Wとの相対速度(つまり自車両1と後続車両8との相対速度V2-V1)によって除算することにより、TTCを算出する。
次いで、ステップS113において、コントローラ10は、上述したように算出されたTTCが所定時間未満であるか否かを判定する。この所定時間は、自車両1が仮想壁Wの手前で停車するように自動ブレーキの作動を開始すべきタイミングを規定するTTCの閾値であり、所定の演算式やシミュレーションや実験などにより設定される(固定値でもよいし可変値でもよい)。
ステップS113の結果、TTCが所定時間未満であると判定された場合(ステップS113:Yes)、コントローラ10は、ステップS114に進む。ステップS114において、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させるように、つまり自車両1を自動で制動させるように、ブレーキ制御装置52を介してブレーキ装置を制御する。これにより、自車両1に制動力を付与して減速させることで、自車両1を仮想壁Wの手間で停車させるようにする。
なお、コントローラ10は、このように自動ブレーキを作動させるときに、警報装置から警報が発せられるように警報制御装置54を制御してもよい。つまり、コントローラ10は、自動ブレーキの作動と共に、後続車両8との衝突可能性が高いことを報知するための画像及び/又は音声を表示装置及び/又はスピーカにより出力させてもよい。例えば、自動ブレーキを作動させる前に、警報装置から警報を発するのがよい。
一方で、ステップS113の結果、TTCが所定時間未満であると判定されなかった場合(ステップS113:No)、つまりTTCが所定時間以上である場合、コントローラ10は、本フローチャートに示す一連のルーチンを抜ける。この場合には、コントローラ10は、自動ブレーキを作動させない。
次に、本実施形態に係る作用及び効果について説明する。
この構成によれば、コントローラ10は、自車両1が幅方向に移動するときに仮想壁Wを設定する。仮想壁Wは、自車両1と後続車両8との衝突を回避するために設定され、自車両1を自動で制動させる制御の適用対象となるものである。
具体的には、コントローラ10は、後続車両8の進行に伴って移動し且つ後続車両8の進行方向に延びる仮想壁Wを、自車両1と後続車両8との間に設定し、自車両1が仮想壁Wに衝突しないように自車両を自動で制動させる制御を実行する。これにより、自車両と後続車両との衝突を回避するために、自車両を後続車両から比較的離れた位置に停止させることができる。
また、コントローラ10は、後続車両8が走行している隣車線92と、自車両1が走行している自車線91と、を区画している区画線L1に沿って延びる仮想壁Wを設定するよう構成されている。この構成によれば、自車両1が区画線L1を横切って隣車線92にはみ出すこと、つまり自車両1の一部が隣車線92を塞ぐことを抑制できる。これにより、自車両1と後続車両8との衝突を確実に回避することが可能となる。
また、コントローラ10は、幅方向において後続車両8と自車両1との間に区画線L1が存在しない場合は、幅方向において後続車両8と自車両1との中間位置に仮想壁Wを設定するよう構成されている。この構成によれば、道路に区画線が設けられていない場合や、自車両1と後続車両8とが単一車線を走行している場合でも、自車両1を自動で制動させる制御の適用対象となる仮想壁Wを設定することができる。これにより、自車両1と後続車両8との衝突をさらに確実に回避することが可能となる。
また、コントローラ10は、後続車両8の前端8aから延び、且つ自車両1と後続車両8との相対速度に応じた長さXを有する仮想壁Wを設定するよう構成されている。この構成によれば、自車両1が幅方向に移動し終えるまでの間に、自車両1が後続車両8と衝突することを抑制できる。特に、自車両1の後端と後続車両8の前端8aとの衝突を適切に抑制できる。
また、コントローラ10は、自車両1が幅方向に移動し終えるのに要する時間t2を相対速度に対して乗算することにより第1長さを算出し、該第1長さに基づいて、仮想壁の長さを設定するよう構成されている。この構成によれば、自車両1が幅方向に移動し終えるまでの間に後続車両8と衝突することを確実に抑制できる。
また、コントローラ10は、後続車両8の速度V2を相対速度V2-V1に対して乗算することにより長さX2を算出し、長さX2を長さX1に対して加算することにより長さLを算出し、長さLに基づいて、仮想壁Wの長さを設定するよう構成されている。この構成によれば、自車両1は、自車両1の後端と後続車両8の前端8aとの間に間隔を確保しながら、幅方向に移動し終えることができる。また、当該間隔を、後続車両8の加減速に応じたものとすることが可能になる。