JP7234897B2 - 車両用故障原因特定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両にて発生した故障の原因を特定する車両用故障原因特定装置に関するものである。
車両にて故障が発生した際に、前記車両に搭載されて前記車両の動作状態を検出する車載センサの検出値を用いて前記故障の原因を特定する車両用故障原因特定装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された故障解析システムがそれである。この特許文献1には、車両に搭載されたセンサ等から取得可能な車両状態情報と車両外の外部機関から取得可能な車両の周辺環境情報との相関関係をデータベース化し、車両の故障解析に利用することが開示されている。
特開2006-27391号公報
ところで、故障によっては車両に搭載された車載センサの検出値では、故障の原因を特定し難い場合がある。つまり、故障の原因を特定し易い故障時の動作状態等を検出するセンサが車両に搭載されていない場合、故障の原因を特定し難い故障時の動作状態等を検出する車載センサの検出値では、故障の原因を特定する精度が低下するおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両にて発生した故障の原因を特定する精度を向上することができる車両用故障原因特定装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)車両にて故障が発生した際に、前記車両に搭載されて前記車両の動作状態を検出する車載センサの検出値を用いて前記故障の原因を特定する車両用故障原因特定装置であって、(b)前記車載センサと同一の第1センサ及び前記車両には搭載されていない第2センサを搭載した第2車両を用いて予め定められた、前記第1センサの検出値に比べて前記第2車両にて発生した故障の原因を特定し易い前記第2センサの検出値に基づいて特定された前記第2車両にて発生した故障の原因と前記第2車両の故障発生時の前記第1センサの検出値との関係を示す故障原因特定モデルに、前記車両の故障発生時の前記車載センサの検出値を適用することで、前記車両にて発生した故障の原因を特定するものであり、(c)前記故障は、油圧式の摩擦係合装置を有する車両用変速機の変速不良であり、(d)前記第2センサの検出値は、前記摩擦係合装置の作動状態を切り替える為の作動油の油圧の値である。
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載の車両用故障原因特定装置において、前記車載センサの検出値に基づいて前記車両の故障発生の有無を判断することにある。
また、第3の発明は、前記第1の発明又は第2の発明に記載の車両用故障原因特定装置において、前記故障原因特定モデルは、前記第2センサの検出値に基づいて特定された前記第2車両にて発生した故障の原因と前記車両の生産ロットの情報との関係を更に示すものであり、前記車両の生産ロットの情報も加味して前記車両にて発生した故障の原因を特定することにある。
また、第の発明は、前記第1の発明から第の発明の何れか1つに記載の車両用故障原因特定装置において、前記車載センサの検出値は、経時的な変化が前記車両にて発生した故障の原因の特定に用いられることにある。
また、第の発明は、前記第1の発明から第の発明の何れか1つに記載の車両用故障原因特定装置において、前記故障原因特定モデルは、データを蓄積するデータベース部と前記データから結論を推定する推論部とを有する人工知能による教師あり学習にて実現されていることにある。
また、第の発明は、前記第の発明に記載の車両用故障原因特定装置において、前記人工知能による教師あり学習にて用いられる教師データは、前記車両の生産ロットによって異なる前記車載センサの検出値の統計的な差異に基づいて変更されることにある。
前記第1の発明によれば、第2車両に搭載された第1センサの検出値に比べて故障の原因を特定し易い第2車両に搭載された第2センサの検出値に基づいて特定された故障の原因と第1センサの検出値との関係を示す予め定められた故障原因特定モデルと、車両の故障発生時の車載センサの検出値とを用いて車両にて発生した故障の原因が特定されるので、第2センサが車両に搭載されていない場合に、車両にて発生した故障の原因を特定する精度を向上することができる。
また、第2センサの検出値は、車両用変速機が有する摩擦係合装置の作動状態を切り替える為の作動油の油圧の値であるので、車両用変速機の変速不良の原因を精度良く特定することができる。
また、前記第2の発明によれば、車載センサの検出値に基づいて車両の故障発生の有無が判断されるので、車載センサの検出値に基づいて判断された車両の故障の原因が、車両に搭載されていない第2センサの検出値に基づいて予め定められた故障原因特定モデルを用いて、精度良く特定され得る。
また、前記第3の発明によれば、車両の生産ロットの情報も加味して故障の原因が特定されるので、車載センサの検出値が生産ロットの違いによってばらつく場合でも、車両にて発生した故障の原因を精度良く特定することができる。
また、前記第の発明によれば、車載センサの検出値は経時的な変化が故障の原因の特定に用いられるので、故障原因特定モデルを用いて故障の原因を精度良く特定することができる。
また、前記第の発明によれば、前記故障原因特定モデルは、人工知能による教師あり学習にて実現されているので、故障の原因を精度良く特定することができる故障原因特定モデルを構築することができる。
また、前記第の発明によれば、前記人工知能による教師あり学習にて用いられる教師データは、車両の生産ロットによって異なる車載センサの検出値の統計的な差異に基づいて変更されるので、車載センサの検出値が生産ロットの違いによってばらつく場合でも、故障の原因を精度良く特定することができる故障原因特定モデルを構築することができる。
本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。 図1で例示した機械式有段変速部の変速作動とそれに用いられる係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。 電気式無段変速部と機械式有段変速部とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。 油圧制御回路を説明する図であり、又、油圧制御回路へ作動油を供給する油圧源を説明する図である。 図4の油圧制御回路に設けられた、係合装置に供給する油圧を調圧するリニアソレノイドバルブの構成を説明する断面図である。 図5のリニアソレノイドバルブの弁特性の一例を示す図である。 有段変速部の変速制御時において摩擦係合装置の係合過渡中におけるソレノイドバルブに対する駆動電流の一例を説明する図である。 有段変速部の変速制御に用いる変速マップと、ハイブリッド走行とモータ走行との切替制御に用いる動力源切替マップとの一例を示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。 有段変速部の変速不良の一例を説明する為のタイムチャートである。 ソレノイドバルブによって直接的に係合圧を制御する場合に発生する故障の一例を説明する図であって、正常時の場合を示している。 ソレノイドバルブによって直接的に係合圧を制御する場合に発生する故障の一例を説明する図であって、エア吸い時の場合を示している。 ソレノイドバルブによって直接的に係合圧を制御する場合に発生する故障の一例を説明する図であって、一時スティック時の場合を示している。 ソレノイドバルブによって直接的に係合圧を制御する場合に発生する故障の一例を説明する図であって、完全スティック時の場合を示している。 故障原因特定モデルの一例を示す図である。 車両用故障原因特定装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、車両にて発生した故障の原因を特定する精度を向上する為の制御作動を説明するフローチャートである。
本発明の実施形態において、前記車両は動力源と動力伝達装置とを備えている。前記動力伝達装置は、前記車両用変速機を備えている。この車両用変速機における変速比は、「入力側の回転部材の回転速度/出力側の回転部材の回転速度」である。この変速比におけるハイ側は、変速比が小さくなる側である高車速側である。変速比におけるロー側は、変速比が大きくなる側である低車速側である。例えば、最ロー側変速比は、最も低車速側となる最低車速側の変速比であり、変速比が最も大きな値となる最大変速比である。
また、前記動力源は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の機関である。又、前記車両は、前記動力源として、このエンジンに加えて、又は、このエンジンに替えて、電動機等を備えていても良い。広義には、前記電動機は機関である。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10に備えられた動力伝達装置12の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン14と第1回転機MG1と第2回転機MG2とを備えている。動力伝達装置12は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース16内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部18及び機械式有段変速部20等を備えている。電気式無段変速部18は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン14に連結されている。機械式有段変速部20は、電気式無段変速部18の出力側に連結されている。又、動力伝達装置12は、機械式有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備えている。動力伝達装置12において、エンジン14や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部20へ伝達され、その機械式有段変速部20から差動歯車装置24等を介して車両10が備える駆動輪28へ伝達される。尚、以下、トランスミッションケース16をケース16、電気式無段変速部18を無段変速部18、機械式有段変速部20を有段変速部20という。又、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。又、無段変速部18や有段変速部20等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図1ではその軸心の下半分が省略されている。上記共通の軸心は、エンジン14のクランク軸、後述する連結軸34などの軸心である。
エンジン14は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する機関であって、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。このエンジン14は、後述する電子制御装置90によって車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン14の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。本実施例では、エンジン14は、トルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく無段変速部18に連結されている。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられた蓄電装置としてのバッテリ54に接続されている。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1の出力トルクであるMG1トルクTg及び第2回転機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、例えば正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。
無段変速部18は、第1回転機MG1と、エンジン14の動力を第1回転機MG1及び無段変速部18の出力回転部材である中間伝達部材30に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構32とを備えている。中間伝達部材30には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。無段変速部18は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式無段変速機である。第1回転機MG1は、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Neを制御可能な回転機であって、差動用回転機に相当する。第2回転機MG2は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する回転機であって、走行駆動用回転機に相当する。車両10は、走行用の動力源として、エンジン14及び第2回転機MG2を備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置12は、動力源の動力を駆動輪28へ伝達する。尚、第1回転機MG1の運転状態を制御することは、第1回転機MG1の運転制御を行うことである。
差動機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備えている。キャリアCA0には連結軸34を介してエンジン14が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構32において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。
有段変速部20は、中間伝達部材30と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する有段変速機としての機械式変速機構、つまり無段変速部18と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。中間伝達部材30は、有段変速部20の入力回転部材としても機能する。中間伝達部材30には第2回転機MG2が一体回転するように連結されているので、又は、無段変速部18の入力側にはエンジン14が連結されているので、有段変速部20は、動力源(第2回転機MG2又はエンジン14)と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機である。中間伝達部材30は、駆動輪28に動力源の動力を伝達する為の伝達部材である。有段変速部20は、例えば第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、車両10に備えられた油圧制御回路56から出力される調圧された係合装置CBの各係合圧としての各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2(後述する図4参照)によりそれぞれのトルク容量が変化させられることで、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
有段変速部20は、第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、中間伝達部材30、ケース16、或いは出力軸22に連結されている。第1遊星歯車装置36の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置38の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
有段変速部20は、複数の係合装置のうちの何れかの係合装置である例えば所定の係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。つまり、有段変速部20は、複数の係合装置の何れかが係合されることで、ギヤ段が切り替えられるすなわち変速が実行される。有段変速部20は、複数のギヤ段の各々が形成される、有段式の自動変速機である。本実施例では、有段変速部20にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、有段変速部20の入力回転部材の回転速度である有段変速部20の入力回転速度であって、中間伝達部材30の回転速度と同値であり、又、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmと同値である。AT入力回転速度Niは、MG2回転速度Nmで表すことができる。出力回転速度Noは、有段変速部20の出力回転速度である出力軸22の回転速度であって、無段変速部18と有段変速部20とを合わせた全体の変速機である複合変速機40の出力回転速度でもある。複合変速機40は、エンジン14と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機である。
有段変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)-AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、ハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。又、後進用のATギヤ段(図中の「Rev」)は、例えばクラッチC1の係合且つブレーキB2の係合によって形成される。つまり、後述するように、後進走行を行う際には、例えばAT1速ギヤ段が形成される。図2の係合作動表は、各ATギヤ段と複数の係合装置の各作動状態との関係をまとめたものである。すなわち、図2の係合作動表は、各ATギヤ段と、各ATギヤ段において各々係合される係合装置である所定の係合装置との関係をまとめたものである。図2において、「○」は係合、「△」はエンジンブレーキ時や有段変速部20のコーストダウンシフト時に係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
有段変速部20は、後述する電子制御装置90によって、ドライバー(すなわち運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるATギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のATギヤ段が選択的に形成される。例えば、有段変速部20の変速制御においては、係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち係合装置CBの係合と解放との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。本実施例では、例えばAT2速ギヤ段からAT1速ギヤ段へのダウンシフトを2→1ダウンシフトと表す。他のアップシフトやダウンシフトについても同様である。
車両10は、更に、機械式のオイルポンプであるMOP57、電動式のオイルポンプであるEOP58等を備えている。MOP57は、連結軸34に連結されており、エンジン14の回転と共に回転させられて動力伝達装置12にて用いられる作動油oilを吐出する。MOP57は、例えばエンジン14により回転させられて作動油oilを吐出する。EOP58は、車両10に備えられたオイルポンプ専用のモータ59により回転させられて作動油oilを吐出する。MOP57やEOP58が吐出した作動油oilは、係合装置CBの作動状態の切替えなどに用いられる有段変速部20の作動油である。
図3は、無段変速部18と有段変速部20とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図3において、無段変速部18を構成する差動機構32の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度を表すg軸であり、第1回転要素RE1に対応するキャリアCA0の回転速度を表すe軸であり、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわち有段変速部20の入力回転速度)を表すm軸である。又、有段変速部20の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応するサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応する相互に連結されたリングギヤR1及びキャリアCA2の回転速度(すなわち出力軸22の回転速度)、第6回転要素RE6に対応する相互に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2の回転速度、第7回転要素RE7に対応するサンギヤS1の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、差動機構32のギヤ比(歯車比ともいう)ρ0に応じて定められている。又、縦線Y4、Y5、Y6、Y7の相互の間隔は、第1、第2遊星歯車装置36、38の各歯車比ρ1、ρ2に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリアとリングギヤとの間が遊星歯車装置の歯車比ρ(=サンギヤの歯数Zs/リングギヤの歯数Zr)に対応する間隔とされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、無段変速部18の差動機構32において、第1回転要素RE1にエンジン14(図中の「ENG」参照)が連結され、第2回転要素RE2に第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結され、中間伝達部材30と一体回転する第3回転要素RE3に第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結されて、エンジン14の回転を中間伝達部材30を介して有段変速部20へ伝達するように構成されている。無段変速部18では、縦線Y2を横切る各直線L0、L0Rにより、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
又、有段変速部20において、第4回転要素RE4はクラッチC1を介して中間伝達部材30に選択的に連結され、第5回転要素RE5は出力軸22に連結され、第6回転要素RE6はクラッチC2を介して中間伝達部材30に選択的に連結されると共にブレーキB2を介してケース16に選択的に連結され、第7回転要素RE7はブレーキB1を介してケース16に選択的に連結されている。有段変速部20では、係合装置CBの係合解放制御によって縦線Y5を横切る各直線L1、L2、L3、L4、LRにより、出力軸22における「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」、「Rev」の各回転速度が示される。
図3中の実線で示す、直線L0及び直線L1、L2、L3、L4は、少なくともエンジン14を動力源として走行するハイブリッド走行が可能なハイブリッド走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。このハイブリッド走行モードでは、差動機構32において、キャリアCA0に入力されるエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクである反力トルクが正回転にてサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=-(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段-AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。このとき、第1回転機MG1は正回転にて負トルクを発生する発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ54に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ54からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。
図3に図示はしていないが、エンジン14を停止させると共に第2回転機MG2を動力源として走行するモータ走行が可能なモータ走行モードでの共線図では、差動機構32において、キャリアCA0はゼロ回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。つまり、モータ走行モードでは、エンジン14は駆動されず、エンジン回転速度Neはゼロとされ、MG2トルクTmが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段-AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。ここでのMG2トルクTmは、正回転の力行トルクである。
図3中の破線で示す、直線L0R及び直線LRは、モータ走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度を示している。このモータ走行モードでの後進走行では、リングギヤR0には負回転にて負トルクとなるMG2トルクTmが入力され、そのMG2トルクTmが車両10の後進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段が形成された有段変速部20を介して駆動輪28へ伝達される。車両10では、後述する電子制御装置90によって、複数のATギヤ段のうちの前進用のロー側のATギヤ段である例えばAT1速ギヤ段が形成された状態で、前進走行時における前進用のMG2トルクTmとは正負が反対となる後進用のMG2トルクTmが第2回転機MG2から出力させられることで、後進走行を行うことができる。ここでは、前進用のMG2トルクTmは正回転の正トルクとなる力行トルクであり、後進用のMG2トルクTmは負回転の負トルクとなる力行トルクである。このように、車両10では、前進用のATギヤ段を用いて、MG2トルクTmの正負を反転させることで後進走行を行う。前進用のATギヤ段を用いることは、前進走行を行うときと同じATギヤ段を用いることである。尚、ハイブリッド走行モードにおいても、直線L0Rのように第2回転機MG2を負回転とすることが可能であるので、モータ走行モードと同様に後進走行を行うことが可能である。
動力伝達装置12では、エンジン14が動力伝達可能に連結された第1回転要素RE1としてのキャリアCA0と第1回転機MG1が動力伝達可能に連結された第2回転要素RE2としてのサンギヤS0と中間伝達部材30が連結された第3回転要素RE3としてのリングギヤR0との3つの回転要素を有する差動機構32を備えて、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式変速機構としての無段変速部18が構成される。中間伝達部材30が連結された第3回転要素RE3は、見方を換えれば第2回転機MG2が動力伝達可能に連結された第3回転要素RE3である。つまり、動力伝達装置12では、エンジン14が動力伝達可能に連結された差動機構32と差動機構32に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とを有して、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される無段変速部18が構成される。無段変速部18は、入力回転部材となる連結軸34の回転速度と同値であるエンジン回転速度Neと、出力回転部材となる中間伝達部材30の回転速度であるMG2回転速度Nmとの比の値である変速比γ0(=Ne/Nm)が変化させられる電気的な無段変速機として作動させられる。
例えば、ハイブリッド走行モードにおいては、有段変速部20にてATギヤ段が形成されたことで駆動輪28の回転に拘束されるリングギヤR0の回転速度に対して、第1回転機MG1の回転速度を制御することによってサンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられると、キャリアCA0の回転速度つまりエンジン回転速度Neが上昇或いは下降させられる。従って、ハイブリッド走行では、エンジン14を効率の良い運転点にて作動させることが可能である。つまり、ATギヤ段が形成された有段変速部20と無段変速機として作動させられる無段変速部18とで、無段変速部18と有段変速部20とが直列に配置された複合変速機40全体として無段変速機を構成することができる。
又は、無段変速部18を有段変速機のように変速させることも可能であるので、ATギヤ段が形成される有段変速部20と有段変速機のように変速させる無段変速部18とで、複合変速機40全体として有段変速機のように変速させることができる。つまり、複合変速機40において、エンジン回転速度Neの出力回転速度Noに対する比の値を表す変速比γt(=Ne/No)が異なる複数のギヤ段を選択的に成立させるように、有段変速部20と無段変速部18とを制御することが可能である。本実施例では、複合変速機40にて成立させられるギヤ段を模擬ギヤ段と称する。変速比γtは、直列に配置された、無段変速部18と有段変速部20とで形成されるトータル変速比であって、無段変速部18の変速比γ0と有段変速部20の変速比γatとを乗算した値(γt=γ0×γat)となる。
模擬ギヤ段は、例えば有段変速部20の各ATギヤ段と1又は複数種類の無段変速部18の変速比γ0との組合せによって、有段変速部20の各ATギヤ段に対してそれぞれ1又は複数種類を成立させるように割り当てられる。例えば、AT1速ギヤ段に対して模擬1速ギヤ段-模擬3速ギヤ段が成立させられ、AT2速ギヤ段に対して模擬4速ギヤ段-模擬6速ギヤ段が成立させられ、AT3速ギヤ段に対して模擬7速ギヤ段-模擬9速ギヤ段が成立させられ、AT4速ギヤ段に対して模擬10速ギヤ段が成立させられるように予め定められている。複合変速機40では、出力回転速度Noに対して所定の変速比γtを実現するエンジン回転速度Neとなるように無段変速部18が制御されることによって、あるATギヤ段において異なる模擬ギヤ段が成立させられる。又、複合変速機40では、ATギヤ段の切替えに合わせて無段変速部18が制御されることによって、模擬ギヤ段が切り替えられる。
図1に戻り、車両10は、エンジン14、無段変速部18、及び有段変速部20などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。よって、図1は、電子制御装置90の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置90による制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、ブレーキペダルセンサ71、ステアリングセンサ72、ドライバ状態センサ73、Gセンサ74、ヨーレートセンサ76、バッテリセンサ78、油温センサ79、車両周辺情報センサ80、車両位置センサ81、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ナビゲーションシステム83、運転支援設定スイッチ群84、シフトポジションセンサ85など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力回転速度NiであるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量としてのアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、ブレーキペダルの踏力に対応する、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra、車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ステアリングホイールが運転者によって握られている状態を示す信号であるステアリングオン信号SWon、運転者の状態を示す信号であるドライバ状態信号Drv、車両10の前後加速度Gx、車両10の左右加速度Gy、車両10の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、作動油oilの温度である作動油温THoil、車両周辺情報Iard、位置情報Ivp、通信信号Scom、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Sset、車両10に備えられたシフトレバーの操作ポジションPOSshなど)が、それぞれ供給される。
運転者の加速操作の大きさを表す運転者の加速操作量は、例えばアクセルペダルなどのアクセル操作部材の操作量であるアクセル操作量であって、車両10に対する運転者の出力要求量である。運転者の出力要求量としては、アクセル開度θaccの他に、スロットル弁開度θthなどを用いることもできる。
ドライバ状態センサ73は、例えば運転者の表情や瞳孔などを撮影するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体情報センサなどのうちの少なくとも一つを含んでおり、運転者の視線や顔の向き、眼球や顔の動き、心拍の状態等の運転者の状態を取得する。
車両周辺情報センサ80は、例えばライダー、レーダー、及び車載カメラなどのうちの少なくとも一つを含んでおり、走行中の道路に関する情報や車両周辺に存在する物体に関する情報を直接的に取得する。前記ライダーは、例えば車両10の前方の物体、側方の物体、後方の物体などを各々検出する複数のライダー、又は、車両10の全周囲の物体を検出する一つのライダーであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記レーダーは、例えば車両10の前方の物体、前方近傍の物体、後方近傍の物体などを各々検出する複数のレーダーなどであり、検出した物体に関する物体情報を車両周辺情報Iardとして出力する。前記ライダーやレーダーによる物体情報には、検出した物体の車両10からの距離と方向とが含まれる。前記車載カメラは、例えば車両10の前方や後方を撮像する単眼カメラ又はステレオカメラであり、撮像情報を車両周辺情報Iardとして出力する。この撮像情報には、走行路の車線、走行路における標識、駐車スペース、及び走行路における他車両や歩行者や障害物などの情報が含まれる。
車両位置センサ81は、GPSアンテナなどを含んでいる。位置情報Ivpは、GPS(Global Positioning System)衛星が発信するGPS信号(軌道信号)などに基づく地表又は地図上における車両10の位置を示す自車位置情報を含んでいる。
ナビゲーションシステム83は、ディスプレイやスピーカ等を有する公知のナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム83は、位置情報Ivpに基づいて、予め記憶された地図データ上に自車位置を特定する。ナビゲーションシステム83は、ディスプレイに表示した地図上に自車位置を表示する。ナビゲーションシステム83は、目的地が入力されると、出発地から目的地までの走行経路を演算し、ディスプレイやスピーカ等で運転者に走行経路などの指示を行う。ナビ情報Inaviは、例えばナビゲーションシステム83に予め記憶された地図データに基づく道路情報や施設情報などの地図情報などを含んでいる。前記道路情報には、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速自動車道路すなわち高速道路などの道路の種類、道路の分岐や合流、道路の勾配、制限車速などの情報が含まれる。前記施設情報には、スーパー、商店、レストラン、駐車場、公園、車両10を修理する拠点、自宅、高速道路におけるサービスエリアなどの拠点の種類、所在位置、名称などの情報が含まれる。上記サービスエリアは、例えば高速道路で、駐車、食事、給油などの設備のある拠点である。
運転支援設定スイッチ群84は、自動運転制御を実行させる為の自動運転選択スイッチ、クルーズ制御を実行させる為のクルーズスイッチ、クルーズ制御における車速を設定するスイッチ、クルーズ制御における先行車との車間距離を設定するスイッチ、設定された車線を維持して走行するレーンキープ制御を実行させる為のスイッチなどを含んでいる。
通信信号Scomは、例えば道路交通情報通信システムなどの車外装置であるセンターとの間で送受信された道路交通情報など、及び/又は、前記センターを介さずに車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に送受信された車車間通信情報などを含んでいる。前記道路交通情報には、例えば道路の渋滞、事故、工事、所要時間、駐車場などの情報が含まれる。前記車車間通信情報は、例えば車両情報、走行情報、交通環境情報などを含んでいる。前記車両情報には、例えば乗用車、トラック、二輪車などの車種を示す情報が含まれる。前記走行情報には、例えば車速V、位置情報、ブレーキペダルの操作情報、ターンシグナルランプの点滅情報、ハザードランプの点滅情報などの情報が含まれる。前記交通環境情報には、例えば道路の渋滞、工事などの情報が含まれる。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、モータ59、外部ネットワーク通信用アンテナ82、ホイールブレーキ装置86、操舵装置88、情報周知装置89など)に各種指令信号(例えばエンジン14を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、EOP58の作動を制御する為のEOP制御指令信号Seop、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御する為のブレーキ制御指令信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Sste、運転者に警告や報知を行う為の情報周知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。この油圧制御指令信号Satは、有段変速部20の変速を制御する為の油圧制御指令信号でもあり、例えば係合装置CBの各々の油圧アクチュエータへ供給される各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2を調圧する各ソレノイドバルブSL1-SL4等(後述する図4参照)を駆動する為の指令信号である。電子制御装置90は、各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の値に対応する油圧指令値を設定し、その油圧指令値に応じた駆動電流又は駆動電圧を油圧制御回路56へ出力する。
ホイールブレーキ装置86は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置86は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込操作などに応じて、ホイールブレーキに設けられたホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。ホイールブレーキ装置86では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ブレーキ操作量Braに対応した大きさのマスタシリンダ油圧がブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置86では、例えばABS制御時、横滑り抑制制御時、車速制御時、自動運転制御時などには、ホイールブレーキによる制動トルクの発生の為に、各制御で必要なブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪28及び不図示の従動輪である。
操舵装置88は、例えば車速V、操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ヨーレートRyawなどに応じたアシストトルクを車両10の操舵系に付与する。操舵装置88では、例えば自動運転制御時などには、前輪の操舵を制御するトルクを車両10の操舵系に付与する。
情報周知装置89は、例えば車両10の走行に関わる何らかの部品が故障したり、その部品の機能が低下した場合に、運転者に対して警告や報知を行う装置である。情報周知装置89は、例えばモニタやディスプレイやアラームランプ等の表示装置、及び/又はスピーカやブザー等の音出力装置などである。前記表示装置は、運転者に対して視覚的な警告や報知を行う装置である。音出力装置は、運転者に対して聴覚的な警告や報知を行う装置である。
図4は、油圧制御回路56を説明する図であり、又、油圧制御回路56へ作動油oilを供給する油圧源を説明する図である。図4において、MOP57とEOP58とは、作動油oilが流通する油路の構成上、並列に設けられている。MOP57及びEOP58は、各々、係合装置CBの各々の作動状態を切り替えたり、動力伝達装置12の各部に潤滑油を供給したりする為の油圧の元となる作動油oilを吐出する。MOP57及びEOP58は、各々、ケース16の下部に設けられたオイルパン100に還流した作動油oilを、共通の吸い込み口であるストレーナ102を介して吸い上げて、各々の吐出油路104、106へ吐出する。吐出油路104、106は、各々、油圧制御回路56が備える油路、例えばライン圧PLが流通する油路であるライン圧油路108に連結されている。MOP57から作動油oilが吐出される吐出油路104は、油圧制御回路56に備えられたMOP用チェックバルブ110を介してライン圧油路108に連結されている。EOP58から作動油oilが吐出される吐出油路106は、油圧制御回路56に備えられたEOP用チェックバルブ112を介してライン圧油路108に連結されている。MOP57は、エンジン14と共に回転して作動油圧を発生する。EOP58は、モータ59により回転させられて作動油圧を発生する。EOP58は、エンジン14の回転状態に拘わらず作動油圧を発生することができる。EOP58は、例えばモータ走行モードでの走行時に作動させられる。
油圧制御回路56は、前述したライン圧油路108、MOP用チェックバルブ110、及びEOP用チェックバルブ112の他に、レギュレータバルブ114、切替えバルブ116、供給油路118、排出油路120、各ソレノイドバルブSLT、S1、S2、SL1-SL4などを備えている。
レギュレータバルブ114は、MOP57及びEOP58の少なくとも一方が吐出する作動油oilを元にしてライン圧PLを調圧する。ソレノイドバルブSLTは、例えばリニアソレノイドバルブであり、有段変速部20への入力トルク等に応じたパイロット圧Psltをレギュレータバルブ114へ出力するように電子制御装置90により制御される。これにより、ライン圧PLは、有段変速部20の入力トルク等に応じた油圧とされる。ソレノイドバルブSLTに入力される元圧は、例えばライン圧PLを元圧として不図示のモジュレータバルブによって一定値に調圧されたモジュレータ圧PMである。
切替えバルブ116は、ソレノイドバルブS1、S2から出力される油圧に基づいて油路が切り替えられる。ソレノイドバルブS1、S2は、何れも例えばオンオフソレノイドバルブであり、各々、油圧を切替えバルブ116へ出力するように電子制御装置90により制御される。切替えバルブ116は、ソレノイドバルブS2から油圧が出力され且つソレノイドバルブS1から油圧が出力されない状態とされると、ライン圧油路108と供給油路118とを接続するように油路が切り替えられる。切替えバルブ116は、ソレノイドバルブS1、S2から共に油圧が出力されるか或いはソレノイドバルブS1、S2から共に油圧が出力されないか或いはソレノイドバルブS1から油圧が出力され且つソレノイドバルブS2から油圧が出力されない状態とされると、ライン圧油路108と供給油路118との間の油路を遮断し、供給油路118を排出油路120に接続するように油路が切り替えられる。供給油路118は、ソレノイドバルブSL2、SL3に入力される元圧が流通する油路である。排出油路120は、油圧制御回路56内の作動油oilを油圧制御回路56の外へ排出する、すなわち作動油oilをオイルパン100へ還流する大気開放油路である。電子制御装置90は、例えば操作ポジションPOSshが車両10の前進走行を可能とする複合変速機40の前進走行ポジションを選択するD操作ポジションとされている場合には、ソレノイドバルブS2が油圧を出力し且つソレノイドバルブS1が油圧を出力しない為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路56へ出力する。電子制御装置90は、例えば操作ポジションPOSshが車両10の後進走行を可能とする複合変速機40の後進走行ポジションを選択するR操作ポジションとされている場合には、ソレノイドバルブS1、S2が各々油圧を出力する為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路56へ出力する。
ソレノイドバルブSL1-SL4は、何れも例えばリニアソレノイドバルブであり、各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2を係合装置CBの各々の油圧アクチュエータへ出力するように電子制御装置90により制御される。ソレノイドバルブSL1は、ライン圧PLを元圧として、クラッチC1の油圧アクチュエータへ供給するC1油圧Pc1を調圧する。ソレノイドバルブSL2は、切替えバルブ116を介したライン圧PLを元圧として、クラッチC2の油圧アクチュエータへ供給するC2油圧Pc2を調圧する。ソレノイドバルブSL3は、切替えバルブ116を介したライン圧PLを元圧として、ブレーキB1の油圧アクチュエータへ供給するB1油圧Pb1を調圧する。ソレノイドバルブSL4は、ライン圧PLを元圧として、ブレーキB2の油圧アクチュエータへ供給するB2油圧Pb2を調圧する。
図5は、ソレノイドバルブSL1-SL4の構成を説明する断面図である。ソレノイドバルブSL1-SL4は、基本的には何れも同じ構成であるので、ソレノイドバルブSL1を例示している。ソレノイドバルブSL1は、通電されることにより電気エネルギを駆動力に変換するソレノイド122と、ソレノイド122の駆動によりライン圧PLを調圧してC1油圧Pc1を発生させる調圧部124とを備えている。ソレノイド122は、円筒状の巻芯126と、巻芯126の外周に導線が巻回されたコイル128と、巻芯126の内部を軸心方向に移動可能に設けられたコア130と、コア130における調圧部124とは反対側の端部に固設されたプランジャ132と、巻芯126、コイル128、コア130、及びプランジャ132を格納するケース134と、ケース134の開口に嵌め着けられたカバー136とを備えている。調圧部124は、ケース134に嵌め着けられたスリーブ138と、スリーブ138の内部を軸心方向に移動可能に設けられたスプール弁子140と、スプール弁子140をソレノイド122側に付勢するスプリング142とを備えている。スプール弁子140におけるソレノイド122側の端部は、コア130における調圧部124側の端部に当接させられている。このように構成されたソレノイドバルブSL1では、コイル128に駆動電流が流されると、その駆動電流の大きさに応じてプランジャ132がコア130及びスプール弁子140に共通の軸心方向に移動させられ、それに伴ってコア130及びスプール弁子140が同方向に移動させられる。これにより、入力ポート144から入力される作動油oilの流量及びドレンポート146から排出される作動油oilの流量が調節され、例えば図6に示すような駆動電流と出力圧との予め定められた関係であるリニアソレノイドバルブの弁特性に従って入力ポート144に入力されるライン圧PLが調圧され、調圧後のC1油圧Pc1が出力ポート148から出力される。
図7は、有段変速部20の変速制御時に係合させられる係合側の摩擦係合装置の油圧を調圧するソレノイドバルブSLに対する係合過渡中における油圧指令値に応じた駆動電流の一例を説明する図である。図7において、t1a時点は、有段変速部20を変速制御において係合側の摩擦係合装置に対する油圧制御指令信号Satの出力が開始された時点を示している。油圧制御指令信号Satの出力開始後、t2a時点までのクイックアプライ区間では駆動電流が急激に大きくされる。次いで、t3a時点までの定圧待機区間では、係合側の摩擦係合装置の係合圧を係合直前状態の定圧待機圧とする為の大きさに駆動電流値が維持される。次いで、MG2回転速度Nm又はエンジン回転速度Neが変速後の回転速度と同期したとの同期判断が為されるまでのスイープ期間では、係合側の摩擦係合装置の係合圧を緩やかに上昇させる為の駆動電流値が出力される(t3a時点-t4a時点参照)。同期判断が為されると、駆動電流値が最大値まで上昇させられる(t4a時点参照)。
図1に戻り、車両10は、更に、送受信機150、第1ゲートウェイECU152、第2ゲートウェイECU154、コネクタ156等を備えている。
送受信機150は、車両10とは別に存在する、車両10とは別の車外装置であるサーバー200と通信する機器である。サーバー200は、車両10外部のネットワーク上におけるシステムである。サーバー200は、車両状態情報や車両現象情報等の各種情報を、受け付けたり、処理したり、解析したり、蓄積したり、提供したりする。サーバー200は、車両10との間でと同様に、他車両との間で、各種情報を送受信する。送受信機150は、サーバー200を介さずに車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に通信する機能を有していても良い。前記車両状態情報は、例えば各種センサ等により検出された車両10の走行に関わる走行状態、つまり車両10の動作状態を示す情報である。この走行状態は、例えばアクセル開度θacc、車速Vなどである。前記車両現象情報は、例えば車両10で生じる現象を示す情報である。この現象は、例えば不図示のマイクロフォンにより検出された車内の音つまり音圧、Gセンサ74により検出された搭乗者が感じる振動などである。尚、外部ネットワーク通信用アンテナ82を介してサーバー200との間で無線通信が行われても良い。
第1ゲートウェイECU152及び第2ゲートウェイECU154は、各々、電子制御装置90と同様のハード構成を備えており、例えば電子制御装置90内の書き換え可能なROMに記憶されたプログラム及び/又はデータの書き換え用に設けられた中継装置である。第1ゲートウェイECU152は、送受信機150と接続されており、例えば送受信機150とサーバー200との間での無線通信を用いて、電子制御装置90内の上記ROMに記憶されたプログラムを書き換える為のものである。サーバー200は、書き換え用のプログラムを配信するソフト配信センターとして機能する。第2ゲートウェイECU154は、コネクタ156を介して車両10とは別の車外装置である外部書き換え装置210と機械的に連結可能とされており、例えば外部書き換え装置210を用いて、電子制御装置90内の上記ROMに記憶されたプログラムを書き換える為のものである。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部92、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部94、及び運転制御手段すなわち運転制御部96を備えている。
AT変速制御部92は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば図8に示すようなATギヤ段変速マップを用いて有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部20の変速制御を実行する為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路56へ出力する。上記ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標上に、有段変速部20の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。ここでは、車速Vに替えて出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動力Frdemに替えて要求駆動トルクTrdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。上記ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断される為のアップシフト線、及び破線に示すようなダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。
ハイブリッド制御部94は、エンジン14の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。ハイブリッド制御部94は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪28における要求駆動力Frdemを算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdem[N]の他に、駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]、駆動輪28における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸22における要求AT出力トルク等を用いることもできる。
ハイブリッド制御部94は、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動トルクTrdemと車速Vとに基づく要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン14を制御する指令信号であるエンジン制御指令信号Seと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を制御する指令信号である回転機制御指令信号Smgとを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン14のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御指令信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値であり、又、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能電力であり、バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能電力である。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置90により算出される。
ハイブリッド制御部94は、例えば無段変速部18を無段変速機として作動させて複合変速機40全体として無段変速機として作動させる場合、エンジン最適燃費点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン14を制御すると共に第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部18の無段変速制御を実行して無段変速部18の変速比γ0を変化させる。この制御の結果として、無段変速機として作動させる場合の複合変速機40の変速比γtが制御される。
ハイブリッド制御部94は、例えば無段変速部18を有段変速機のように変速させて複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる場合、予め定められた関係である例えば模擬ギヤ段変速マップを用いて複合変速機40の変速判断を行い、AT変速制御部92による有段変速部20のATギヤ段の変速制御と協調して、複数の模擬ギヤ段を選択的に成立させるように無段変速部18の変速制御を実行する。複数の模擬ギヤ段は、それぞれの変速比γtを維持できるように車速Vに応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。各模擬ギヤ段の変速比γtは、車速Vの全域に亘って必ずしも一定値である必要はなく、所定領域で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。このように、ハイブリッド制御部94は、エンジン回転速度Neを有段変速のように変化させる変速制御が可能である。複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる模擬有段変速制御は、例えば運転者によってスポーツ走行モード等の走行性能重視の走行モードが選択された場合や要求駆動トルクTrdemが比較的大きい場合に、複合変速機40全体として無段変速機として作動させる無段変速制御に優先して実行するだけでも良いが、所定の実行制限時を除いて基本的に模擬有段変速制御が実行されても良い。
ハイブリッド制御部94は、走行モードとして、モータ走行モード或いはハイブリッド走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部94は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、モータ走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。図8の一点鎖線Aは、車両10の走行用の動力源を、少なくともエンジン14とするか、第2回転機MG2のみとするかを切り替える為の境界線である。すなわち、図8の一点鎖線Aは、ハイブリッド走行とモータ走行とを切り替える為のハイブリッド走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図8の一点鎖線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速V及び要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標で構成された動力源切替マップの一例である。尚、図8では、便宜上、この動力源切替マップをATギヤ段変速マップと共に示している。
ハイブリッド制御部94は、要求駆動パワーPrdemがモータ走行領域にあるときであっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。モータ走行モードは、エンジン14を停止した状態で第2回転機MG2により駆動トルクを発生させて走行する走行状態である。ハイブリッド走行モードは、エンジン14を運転した状態で走行する走行状態である。前記エンジン始動閾値は、エンジン14を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
ハイブリッド制御部94は、エンジン14の運転停止時にハイブリッド走行モードを成立させた場合には、エンジン14を始動する始動制御を行う。ハイブリッド制御部94は、エンジン14を始動するときには、第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させつつ、エンジン回転速度Neが点火可能な所定回転速度以上となったときに点火することでエンジン14を始動する。すなわち、ハイブリッド制御部94は、第1回転機MG1によりエンジン14をクランキングすることでエンジン14を始動する。
運転制御部96は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者の運転操作に因らず車両10を運転する運転支援制御とを行うことが可能である。前記手動運転制御は、運転者の運転操作による手動運転にて走行する運転制御である。その手動運転は、アクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作などの運転者の運転操作によって車両10の通常走行を行う運転方法である。前記運転支援制御は、例えば運転操作を自動的に支援する運転支援にて走行する運転制御である。その運転支援は、運転者の運転操作(意思)に因らず、各種センサからの信号や情報等に基づく電子制御装置90による制御により加減速、制動などを自動的に行うことによって車両10の走行を行う運転方法である。前記運転支援制御は、例えば運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速、制動、操舵などを自動的に行う自動運転制御などである。尚、広義には、操舵操作などの一部の運転操作を運転者が行い、加減速、制動などを自動的に行うようなクルーズ制御を運転支援制御に含めても良い。
運転制御部96は、運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチやクルーズスイッチなどがオフとされて運転支援による運転が選択されていない場合には、手動運転モードを成立させて手動運転制御を実行する。運転制御部96は、有段変速部20やエンジン14や回転機MG1、MG2を各々制御する指令をAT変速制御部92及びハイブリッド制御部94に出力することで手動運転制御を実行する。
運転制御部96は、運転者によって運転支援設定スイッチ群84における自動運転選択スイッチが操作されて自動運転が選択されている場合には、自動運転モードを成立させて自動運転制御を実行する。具体的には、運転制御部96は、運転者により入力された目的地、位置情報Ivpに基づく自車位置情報、ナビ情報Inaviなどに基づく地図情報、及び車両周辺情報Iardに基づく走行路における各種情報等に基づいて、自動的に目標走行状態を設定する。運転制御部96は、設定した目標走行状態に基づいて加減速と制動と操舵とを自動的に行うように、有段変速部20やエンジン14や回転機MG1、MG2を各々制御する指令をAT変速制御部92及びハイブリッド制御部94に出力することに加え、必要な制動トルクを得る為のブレーキ制御指令信号Sbraをホイールブレーキ装置86に出力し、前輪の操舵を制御する為の操舵制御指令信号Ssteを操舵装置88に出力することで自動運転制御を行う。
ところで、車両10においては、何らかの故障が発生する可能性がある。車両10にて発生する故障は、例えば車両用変速機としての有段変速部20の変速不良である。有段変速部20の変速不良は、例えば油圧制御回路56内のソレノイドバルブSL1-SL4等の作動不良による変速不良、係合装置CBの摩擦材の耐久性が低下したことによる変速不良、係合装置CBの摩擦材の高温等による一時的な係合装置CBの作動不良による変速不良などである。
図9は、有段変速部20の変速不良の一例を説明する為のタイムチャートである。図9において、t1b時点-t3b時点は、有段変速部20の2→3アップシフトが実行されている過渡中を示している。有段変速部20の変速制御の過渡中において、エンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹きを収束させる学習制御が実施される。つまり、有段変速部20のクラッチツゥクラッチ変速の過渡中におけるエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹き量が微少吹き量の範囲内に収まるように学習制御が実施されて油圧指令値が補正される。前記吹きは、例えばエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmが、有段変速部20のギヤ比γatと出力回転速度Noとに基づく回転速度に対して回転上昇する現象であり、前記吹き量は、前記吹きの発生時に回転上昇した分の回転速度である。具体的には、変速制御の過渡中にエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹きが発生した場合に(t2b時点付近参照)、吹き量が大きいときは、次回の2→3アップシフトにおける係合側の油圧となるC2油圧の初期油圧が高くされ、吹き量が無いか又は極めて小さいときは、次回のC2油圧の初期油圧が低くされる。油圧指令値の補正によってエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹き量が微少吹き量の範囲内に収まり、学習制御が完了した後に、吹き量が所定吹き量以上となるような吹き量異常が発生した場合には、有段変速部20の変速不良が発生したと判定される。前記所定吹き量は、例えば有段変速部20の変速不良となるような吹きが発生したと判断する為の予め定められた吹き故障判定値である。又は、学習制御が完了した後に、吹き量が無いか又は極めて小さくされるようなタイアップが発生した場合には、有段変速部20の変速不良が発生したと判定される。尚、前記学習制御では、吹き量に替えて吹き時間が所定吹き時間内に収まるように油圧指令値が補正されても良い。
或いは、吹き量異常又はタイアップが発生したときは、変速ショックとして現れる場合がある。有段変速部20の変速制御における学習制御が完了した後に、前後加速度Gxが所定加速度以上となるような変速ショックが生じた場合には、有段変速部20の変速不良が発生したと判定される。前記所定加速度は、有段変速部20の変速不良となるような前後加速度Gxが発生したと判断する為の予め定められた閾値である。
有段変速部20の変速不良がソレノイドバルブSL1-SL4等の作動不良に起因するような場合、エンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmを見るよりもソレノイドバルブSL1-SL4等の出力圧例えば各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2を見た方が故障の原因が特定され易い。各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2は、係合装置CBの作動状態を切り替える為の作動油oilの油圧であるが、車両10には各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の値を検出する油圧センサが搭載されていない。その為、故障の原因を特定する精度が低下するおそれがある。
ここで、車両10とは別の車外装置である車両用故障原因特定装置300(図1参照)は、車両10にて故障が発生した際に、車両10に搭載されて車両10の動作状態を検出する車載センサの検出値を用いてその故障の原因を特定する。車両用故障原因特定装置300は、車両10にて発生した故障の原因を特定する精度を向上する為に、車両10に搭載されている車載センサと同一の第1センサ及び車両10には搭載されていない第2センサを搭載した第2車両を用いて予め定められた、前記第2センサの検出値に基づく故障原因特定モデル310を有しており、故障原因特定モデル310と車両10に搭載されている車載センサの検出値とを用いて車両10にて発生した故障の原因を特定する。車両用故障原因特定装置300は無線通信を介してサーバー200と接続されており、サーバー200から車両10に搭載されている車載センサの検出値を取得する。車両10は、必要に応じて、車両10に搭載されている車載センサの検出値をサーバー200へ送信する。
車両10に搭載されている車載センサは、エンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、Gセンサ74などの車両10の動作状態を検出する車載センサ群160である。前記第2車両は、例えば試作車両400(図1参照)である。前記第1センサは、車載センサ群160と同一の車載センサ群402である。前記第2センサは、例えば各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の値を検出する油圧センサ等の試作車用センサ404である。試作車両400は、基本的には、量産車両である車両10と同様の構成を備えている。
図10、図11、図12、図13は、ソレノイドバルブSL1-SL4によって直接的に油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2を制御する場合に発生する故障の一例を説明する図である。試作車両400では、例えば有段変速部20の変速制御の過渡中におけるエンジン回転速度Neの吹き量に加えて、油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の実際値を検出することが可能である。図10、図11、図12、図13では、各々、C2油圧Pc2の実際値(図中の「実油圧」参照)と、有段変速部20のクラッチツゥクラッチ変速時のエンジン回転速度Neの吹き量とが示されている。図10は、正常時におけるC2油圧Pc2の特性とエンジン回転速度Neの吹き量とを示している。図11は、ソレノイドバルブSL2のエア吸いによるブースト時におけるC2油圧Pc2の特性とエンジン回転速度Neの吹き量とを示している。図12は、異物混入によるソレノイドバルブSL2の一時的なスティック時におけるC2油圧Pc2の特性とエンジン回転速度Neの吹き量とを示している。図13は、異物混入によるソレノイドバルブSL2の完全スティック時におけるC2油圧Pc2の特性とエンジン回転速度Neの吹き量とを示している。図10、図11、図12、図13に示すように、ソレノイドバルブSL2の完全スティック等の変速不良の原因は、エンジン回転速度Neの吹き量よりもC2油圧Pc2の実際値を用いる方が特定することが容易である。試作車両400では、油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の実際値を検出しているので、その実際値を用いることによって故障の特定が比較的容易である。このように、試作車両400では、車載センサ群402の検出値データに対する原因の特定を行うことができる。つまり、試作車両400では、車載センサ群402の検出値に比べて試作車両400にて発生した故障の原因を特定し易い試作車用センサ404の検出値に基づいてその故障の原因を特定することができる。
車両10の車載センサ群160は限られてはいるが、ある程度の種類はある。車両10の車載センサ群160をベースにして、入力側を故障発生時の車載センサ群402の検出値のデータとし、出力側を故障の原因として、教師ありの機械学習を行う。
具体的には、車両用故障原因特定装置300は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより各種制御を実行する。車両用故障原因特定装置300は、演算部302、表示部304などを備えている。演算部302は、データを蓄積するデータベース部306と前記データから結論を推定する推論部308とを有する人工知能である。故障原因特定モデル310は、演算部302による教師あり学習にて実現されている。表示部304は、演算部302による処理結果などを表示する出力装置例えばディスプレイやプリンターなどである。
図14は、故障原因特定モデル310の一例を示す図である。図14において、故障原因特定モデル310は、車両10の車載センサ群160による検出値の種類をベースとしたニューラルネットワークである。故障原因特定モデル310は、コンピュータプログラムによるソフトウエアにより、或いは電子的素子の結合から成るハードウエアにより生体の神経細胞群をモデル化して構成され得るものである。故障原因特定モデル310は、i個の神経細胞要素(=ニューロン)Pi1(P11-Pi1)から構成された入力層と、j個の神経細胞要素Pj2(P12-Pj2)から構成された中間層と、k個の神経細胞要素Pk3(P13-Pk3)から構成された出力層とから構成された多層構造である。前記中間層は、多層構造であっても良い。又、故障原因特定モデル310では、前記入力層から前記出力層へ向かって神経細胞要素の状態を伝達する為に、結合係数すなわち重み付け値Wijを有して前記i個の神経細胞要素Pi1と前記j個の神経細胞要素Pj2とをそれぞれ結合する伝達要素Dijと、重み付け値Wjkを有して前記j個の神経細胞要素Pj2と前記k個の神経細胞要素Pk3とをそれぞれ結合する伝達要素Djkとが設けられている。
故障原因特定モデル310は、重み付け値Wij、Wjkが所定のアルゴリズムによって機械学習された故障解析システムである。故障原因特定モデル310における教師あり学習では、試作車両400において特定された教師データすなわち教師信号が用いられる。前記入力層に対する教師信号は、試作車両400における故障発生時の車載センサ群402の検出値のデータ(図14の「X11-Xi1」参照)が与えられ、前記出力に対する教師信号は、試作車両400における試作車用センサ404の検出値に基づいて特定された故障の原因(図14の「Y13-Yk3」参照)が与えられる。図10-図13に示した例では、例えば有段変速部20の変速過渡中におけるエンジン回転速度Neの吹き量と、故障の原因との相関が強いので、このような相関に対して重み付け値が大きな値とされる。人工知能を使った解析では、相関が解れば良い。図10-図13に例示したように、車載センサ群402の検出値のデータは、ある時点のデータを用いるよりも経時的に変化するデータを用いた方が故障の原因の特定が容易になる。前記入力層に対する教師信号は、経時的に変化する車載センサ群402の検出値のデータが与えられる。上述したように、故障原因特定モデル310は、試作車両400を用いて予め定められた、試作車用センサ404の検出値に基づいて特定された試作車両400にて発生した故障の原因とその故障発生時の車載センサ群402の検出値との関係を示す故障原因特定モデルである。
車両10は量産車両である為、車両10の生産ロットの違いによって、同じ故障が発生した場合でも車載センサ群160の検出値が異なる可能性がある。その為、故障原因特定モデル310による教師あり学習にて用いられる教師信号は、車両10の生産ロットによって異なる車載センサ群160の検出値の統計的な差異に基づいて変更される。例えば、生産ロットの違いによる車載センサ群160の検出値のばらつきが統計的な手法によって算出され、車載センサ群402の検出値のデータにそのばらつき分を加味したデータが前記入力層に対する教師信号として与えられる。
従って、故障原因特定モデル310は、図14に示すように、試作車用センサ404の検出値に基づいて特定された試作車両400にて発生した故障の原因と車両10の生産ロットの情報(図中の「生産情報(ロット)参照」)との関係を更に示す故障原因特定モデルである。車両10の生産ロットの情報は、車両10の生産ロットの違いを示す情報であり、例えば車載センサ群160の各々の生産ロットの通番である。
車両用故障原因特定装置300は、車両10にて発生した故障の原因を特定する精度を向上するという制御機能を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部312、及び故障原因特定手段すなわち故障原因特定部314を備えている。
状態判定部312は、市場で車両10にて故障が発生したか否かを判定する。例えば、状態判定部312は、車両10の電子制御装置90が車両10にて故障が発生したと判断したか否かに基づいて、市場で車両10にて故障が発生したか否かを判定する。電子制御装置90は、車両10の動作状態を示す、車載センサ群160の検出値に基づいて車両10にて故障が発生したか否かを判定する。或いは、状態判定部312は、サーバー200から取得した車載センサ群160の検出値に基づいて、市場で車両10にて故障が発生したか否かを判定しても良い。より具体的には、車両10にて発生する故障が有段変速部20の変速不良である場合、有段変速部20の変速制御における学習制御の完了後において、変速制御の過渡中にエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹き量が前記所定吹き量以上となったか否かに基づいて、有段変速部20の変速不良が発生したか否かが判定される。又は、有段変速部20の変速制御における学習制御の完了後において、変速制御の過渡中にタイアップが発生したか否かに基づいて、有段変速部20の変速不良が発生したか否かが判定される。又は、有段変速部20の変速制御における学習制御の完了後において、変速制御の過渡中に前後加速度Gxが前記所定加速度以上となるような変速ショックが生じたか否かに基づいて、有段変速部20の変速不良が発生したか否かが判定される。このように、車両用故障原因特定装置300は、車載センサ群160の検出値に基づいて車両10の故障発生の有無を判断する。
故障原因特定部314は、状態判定部312により車両10にて故障が発生したと判定された場合には、サーバー200から車両10の故障発生時の車両10のビッグデータを取得する。この車両10のビッグデータは、車両10がサーバー200に送信した車両10の故障発生時の車載センサ群160の検出値である。故障原因特定モデル310の入力層に対する教師信号は、経時的に変化する車載センサ群402の検出値のデータが与えられているので、故障原因特定部314は、経時的に変化する車載センサ群160の検出値を取得する。従って、車載センサ群160の検出値は、経時的な変化が故障の原因の特定に用いられる。又、故障原因特定モデル310の入力層に対する教師信号には、車両10の生産ロットの情報も与えられているので、故障原因特定部314は、車載センサ群160の検出値に加えて、車両10がサーバー200に送信した車両10の生産ロットの情報も取得する。車両10のビッグデータには、車両10の生産ロットの情報も含まれている。従って、故障原因特定部314は、車両10の生産ロットの情報も加味して車両10にて発生した故障の原因を特定する。
故障原因特定部314は、取得した車両10のビッグデータと、故障原因特定モデル310とを用いて、車両10にて発生した故障の原因を解析する。つまり、故障原因特定部314は、取得した車両10のビッグデータを故障原因特定モデル310に入力し、車両10にて発生した故障の原因を解析する。故障原因特定部314は、故障の原因を特定できたか否かを判定する。故障原因特定部314は、故障の原因を特定できたと判定した場合には、その特定できた故障の原因を表示部304などに表示する。故障の原因の特定は一つに絞られた内容がベストであるが、故障の原因の候補が複数ある場合は、故障解析の正答確率の高いものから順に並べられる。故障原因特定部314は、故障の原因を特定できないと判定した場合には、故障の原因が不明である旨を表示部304などに表示する。
上述したように、故障原因特定部314は、故障原因特定モデル310に、車両10の故障発生時の車載センサ群160の検出値を適用することで、車両10にて発生した故障の原因を特定する。車両10には搭載されていない試作車用センサ404を搭載した試作車両400を用いて予め定められた故障原因特定モデル310が用いられるので、試作車両400よりもセンサ数が限られた車両10のビッグデータを使った解析でも、車両10にて発生した故障の原因の特定が精度良く実行され得る。又、故障原因特定モデル310は車両10の生産ロットの情報も加味されているので、故障解析の正答確率を向上させることができる。
図15は、車両用故障原因特定装置300の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、車両10にて発生した故障の原因を特定する精度を向上する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図15において、先ず、状態判定部312の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、市場で車両10にて故障が発生したか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は、本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は故障原因特定部314の機能に対応するS20において、サーバー200から故障発生時の車両10のビッグデータが取得される。次いで、故障原因特定部314の機能に対応するS30において、取得された車両10のビッグデータが故障解析システムである故障原因特定モデル310に入力され、故障原因特定モデル310で故障の原因が解析される。次いで、故障原因特定部314の機能に対応するS40において、故障の原因が特定されたか否かが判定される。このS40の判断が肯定される場合は故障原因特定部314の機能に対応するS50において、特定された故障の原因が表示される。一方で、前記S40の判断が否定される場合は故障原因特定部314の機能に対応するS60において、故障の原因が不明である旨が表示される。
上述のように、本実施例によれば、車両10に搭載された車載センサ群160と同一の車載センサ群402の検出値に比べて故障の原因を特定し易い油圧センサ等の試作車用センサ404の検出値に基づいて特定された故障の原因と車載センサ群402の検出値との関係を示す予め定められた故障原因特定モデル310と、車両10の故障発生時の車載センサ群160の検出値とを用いて車両10にて発生した故障の原因が特定されるので、試作車用センサ404が車両10に搭載されていない場合に、車両10にて発生した故障の原因を特定する精度を向上することができる。
また、本実施例によれば、車載センサ群160の検出値に基づいて車両10の故障発生の有無が判断されるので、車載センサ群160の検出値に基づいて判断された車両10の故障の原因が、車両10に搭載されていない試作車用センサ404の検出値に基づいて予め定められた故障原因特定モデル310を用いて、精度良く特定され得る。
また、本実施例によれば、車両10の生産ロットの情報も加味して故障の原因が特定されるので、車載センサ群160の検出値が生産ロットの違いによってばらつく場合でも、車両10にて発生した故障の原因を精度良く特定することができる。
また、本実施例によれば、試作車用センサ404の検出値は、油圧センサにより検出される各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の値であるので、有段変速部20の変速不良の原因を精度良く特定することができる。
また、本実施例によれば、車載センサ群160の検出値は経時的な変化が故障の原因の特定に用いられるので、故障原因特定モデル310を用いて故障の原因を精度良く特定することができる。
また、本実施例によれば、故障原因特定モデル310は、人工知能である演算部302による教師あり学習にて実現されているので、故障の原因を精度良く特定することができる故障原因特定モデルを構築することができる。
また、本実施例によれば、演算部302による教師あり学習にて用いられる教師データは、車両10の生産ロットによって異なる車載センサ群160の検出値の統計的な差異に基づいて変更されるので、車載センサ群160の検出値が生産ロットの違いによってばらつく場合でも、故障の原因を精度良く特定することができる故障原因特定モデルを構築することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、車両用故障原因特定装置300は車両10とは別の車外装置であったが、この態様に限らない。例えば、車両用故障原因特定装置300が有する、故障の原因を特定するという機能の一部又は全部は、サーバー200に備えられていても良いし、又は、車両10特には電子制御装置90に備えられていても良い。又、故障の原因の内容については、車両用故障原因特定装置300とは別に設けられたモニタ等に表示されても良いし、所定のネットワークを介してサーバー200に接続されたパーソナルコンピューター等のモニタに表示されても良い。尚、車両用故障原因特定装置300は、例えば車両10が整備工場に持ち込まれた際に使用されたり、或いは、車両10のメーカーにて使用される。
また、前述の実施例では、故障原因特定モデル310は、人工知能としての演算部302にて実現されているが、この態様に限らない。例えば、故障原因特定モデル310は、ニューラルネットワークをベースとしないコンピューター等によっても実現され得る。
また、前述の実施例では、車両10にて発生した故障として、有段変速部20の変速不良を例示したが、この態様に限らない。例えば、前記故障は、運転者が違和感を感じるような異常などであっても良い。
また、前述の実施例では、故障が発生する車両として、複合変速機40を備える車両10を例示したが、車両10に限らず、何らかの故障が発生する車両であれば、本発明を適用することができる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
20:機械式有段変速部(車両用変速機)
160:車載センサ群(車載センサ)
300:車両用故障原因特定装置
302:演算部(人工知能)
306:データベース部
308:推論部
310:故障原因特定モデル
400:試作車両(第2車両)
402:車載センサ群(第1センサ)
404:試作車用センサ(第2センサ)
CB:係合装置(摩擦係合装置)

Claims (6)

  1. 車両にて故障が発生した際に、前記車両に搭載されて前記車両の動作状態を検出する車載センサの検出値を用いて前記故障の原因を特定する車両用故障原因特定装置であって、
    前記車載センサと同一の第1センサ及び前記車両には搭載されていない第2センサを搭載した第2車両を用いて予め定められた、前記第1センサの検出値に比べて前記第2車両にて発生した故障の原因を特定し易い前記第2センサの検出値に基づいて特定された前記第2車両にて発生した故障の原因と前記第2車両の故障発生時の前記第1センサの検出値との関係を示す故障原因特定モデルに、前記車両の故障発生時の前記車載センサの検出値を適用することで、前記車両にて発生した故障の原因を特定するものであり、
    前記故障は、油圧式の摩擦係合装置を有する車両用変速機の変速不良であり、
    前記第2センサの検出値は、前記摩擦係合装置の作動状態を切り替える為の作動油の油圧の値であることを特徴とする車両用故障原因特定装置。
  2. 前記車載センサの検出値に基づいて前記車両の故障発生の有無を判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用故障原因特定装置。
  3. 前記故障原因特定モデルは、前記第2センサの検出値に基づいて特定された前記第2車両にて発生した故障の原因と前記車両の生産ロットの情報との関係を更に示すものであり、
    前記車両の生産ロットの情報も加味して前記車両にて発生した故障の原因を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用故障原因特定装置。
  4. 前記車載センサの検出値は、経時的な変化が前記車両にて発生した故障の原因の特定に用いられることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の車両用故障原因特定装置。
  5. 前記故障原因特定モデルは、データを蓄積するデータベース部と前記データから結論を推定する推論部とを有する人工知能による教師あり学習にて実現されていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の車両用故障原因特定装置。
  6. 前記人工知能による教師あり学習にて用いられる教師データは、前記車両の生産ロットによって異なる前記車載センサの検出値の統計的な差異に基づいて変更されることを特徴とする請求項に記載の車両用故障原因特定装置。
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