以下に、本発明に係る車両の制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。この制御装置の適用対象となる車両は、少なくとも1つの回転機を動力源として備えている。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
[実施例]
本発明に係る車両の制御装置の実施例を図1から図11に基づいて説明する。
本実施例で例に挙げる車両は、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2とを動力源として備えるハイブリッド車両である。図1の符号1は、このハイブリッド車両の制御装置を示す。また、図1及び図2の符号2−1は、このハイブリッド車両に搭載されるハイブリッドシステムを示す。
本実施例の制御装置1は、エンジンENGの動作を制御する機関制御部としての電子制御装置(以下、「ENGECU」という。)1aと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の動作を制御する回転機制御部としての電子制御装置(以下、「MGECU」という。)1bと、ENGECU1aとMGECU1bとを統括制御すると共にハイブリッドシステム2−1の統合制御を行う統合制御部としての電子制御装置(以下、「HVECU」という。)1cと、を備える。
エンジンENGは、エンジン回転軸(クランクシャフト)11から機械的な動力(出力トルク)を出力する内燃機関や外燃機関等の機関である。ENGECU1aは、例えば、電子スロットル弁の開度制御、点火信号の出力による点火制御、燃料の噴射制御等を行って、エンジンENGの出力トルク(以下、「エンジントルク」という。)Teを制御する。このエンジンENGのエンジン回転数Neは、エンジン回転数センサ15で検出する。そのエンジン回転数センサ15は、ENGECU1aに接続されている。
第1回転機MG1と第2回転機MG2は、力行駆動時の電動機(モータ)としての機能と、回生駆動時の発電機(ジェネレータ)としての機能と、を有する電動発電機(モータ/ジェネレータ)である。第1及び第2の回転機MG1,MG2は、夫々の回転軸(MG1回転軸21、MG2回転軸22)に入力された機械エネルギ(回転トルク)を電気エネルギに変換し、インバータ(図示略)を介して二次電池25に蓄電させることができる。また、第1及び第2の回転機MG1,MG2は、二次電池25から供給された電気エネルギ又は他方の回転機(第2及び第1の回転機MG2,MG1)が生成した電気エネルギを機械エネルギ(回転トルク)に変換し、夫々の回転軸(MG1回転軸21、MG2回転軸22)から機械的な動力(出力トルク)として出力することもできる。MGECU1bは、例えば、第1回転機MG1及び第2回転機MG2に対して供給する電流値やインバータキャリア周波数を各々調整し、第1回転機MG1の回転数(以下、「MG1回転数」という。)Nmg1及び出力トルク(以下、「MG1トルク」という。)Tmg1並びに第2回転機MG2の回転数(以下、「MG2回転数」という。)Nmg2及び出力トルク(以下、「MG2トルク」という。)Tmg2を制御する。例えば、このMGECU1bは、図1に示すように、第2回転機MG2に対して供給する電流値img2やインバータキャリア周波数fmg2を調整する。
MG1回転数Nmg1は、MG1回転数センサ23で検出する。また、MG2回転数Nmg2は、MG2回転数センサ24で検出する。そのMG2回転数センサ24は、MG2回転軸22と後述するドグクラッチ60の第1係合要素61と一方向クラッチ70の第1係合要素71の内の少なくとも1つの回転数を検出する。そのMG1回転数センサ23とMG2回転数センサ24は、例えばレゾルバ等であり、MGECU1bに接続されている。本実施例では、そのMG2回転数センサ24で検出されたMG2回転数Nmg2のことをMG2回転数の検出値Nmg2sと称する。更に、本実施例では、第2回転機MG2に対するMG2回転数Nmg2とMG2トルクTmg2の制御指令値のことを各々MG2回転数の指令値Nmg2cとMG2トルクの指令値Tmg2cと称する。また更に、本実施例では、MG2回転数Nmg2の実際の値(MG2回転軸22の実際の回転数)のことを実MG2回転数Nmg2rという。
このハイブリッドシステム2−1は、図2に示すように、エンジン回転軸11とMG1回転軸21とを同心に配置し、かつ、これらに対して間隔を空けて平行にMG2回転軸22を配置した複軸式のものである。このハイブリッドシステム2−1は、各動力源の相互間における動力伝達を可能にし、かつ、夫々の動力源と駆動輪Wとの間での動力伝達も可能になるように構成する。このため、このハイブリッドシステム2−1には、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2とが夫々に接続された動力分割機構30を設けている。
動力分割機構30とは、差動回転が可能な複数の回転要素を備え、その回転要素にエンジン回転軸11とMG1回転軸21とMG2回転軸22及び駆動輪Wとを個別に接続した差動装置である。例えば、この動力分割機構30としては、差動回転が可能な複数の回転要素からなる遊星歯車機構を利用する。その遊星歯車機構としては、図2に示すサンギヤSとリングギヤRと複数のピニオンギヤPとキャリアCとを有するシングルピニオン型のものの他に、ダブルピニオン型のものやラビニヨ型のもの等を適用することができる。この例示では、エンジン回転軸11とキャリアCとを一体になって回転できるように連結し、かつ、MG1回転軸21とサンギヤSとを一体になって回転できるように連結する。また、MG2回転軸22については、下記の歯車群等を介してリングギヤRに連結する。
尚、エンジン回転軸11とキャリアCには、オイルポンプOPが接続されている。そのオイルポンプOPは、エンジンENGの回転を利用して駆動し、第1回転機MG1や第2回転機MG2、動力分割機構30等の潤滑と冷却を担う作動油を吐出する。
内歯歯車のリングギヤRは、エンジントルクTeやMG1トルクTmg1の駆動輪W側への出力部として動作する。このため、このリングギヤRには、カウンタドライブギヤ41としての外歯歯車が形成されている。そのカウンタドライブギヤ41は、平行にずらして配置された回転軸(カウンタシャフト51)を有するカウンタドリブンギヤ42と噛み合い状態にある。よって、エンジントルクTeやMG1トルクTmg1は、カウンタドリブンギヤ42に伝達される。
そのカウンタドリブンギヤ42は、カウンタシャフト51の軸上に固定されている。このカウンタシャフト51の軸上には、ドライブピニオンギヤ43が固定されている。カウンタドリブンギヤ42とドライブピニオンギヤ43は、カウンタシャフト51を介して一体になって回転することができる。そのドライブピニオンギヤ43は、差動装置44のデフリングギヤ45と噛み合い状態にある。差動装置44は、左右の車軸(駆動軸)52を介して駆動輪Wに連結されている。
また、カウンタドリブンギヤ42は、平行にずらして配置された回転軸を有するリダクションギヤ46と噛み合い状態にある。そのリダクションギヤ46は、リダクション軸53の軸上に固定されている。このリダクションギヤ46は、カウンタドリブンギヤ42よりも小径であり、リダクション軸53の回転を減速してカウンタドリブンギヤ42に伝達する。つまり、このハイブリッドシステム2−1においては、そのカウンタドリブンギヤ42とリダクションギヤ46によって減速部が構成されている。リダクション軸53には、下記の制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを介してMG2回転軸22が連結される。このため、MG2トルクTmg2は、リダクションギヤ46を介してカウンタドリブンギヤ42に伝達される。
このように、カウンタドリブンギヤ42が固定されているカウンタシャフト51には、エンジントルクTeとMG1トルクTmg1とMG2トルクTmg2とが伝達される。このため、そのエンジントルクTe等は、カウンタシャフト51を介して駆動輪W側に伝達される。つまり、このカウンタシャフト51は、このハイブリッドシステム2−1の出力軸として動作する。
第2回転機MG2とリダクションギヤ46は、同心に配置される。そして、この第2回転機MG2とリダクションギヤ46との間には、制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とが並列に配置される。つまり、このハイブリッドシステム2−1においては、第2回転機MG2と当該第2回転機MG2側から見た駆動輪W側の動力伝達軸(リダクション軸53)との間に制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを並列に配置している。その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、このハイブリッドシステム2−1において、後述するMG2休止モードで第2回転機MG2をリダクション軸53から切り離す切離部となる。
制御可能な動力断接装置とは、油圧駆動又は電動のアクチュエータ(ACT)を備え、このアクチュエータをMGECU1bが制御することで、動力伝達の断接が任意に実施されるものである。例えば、この動力断接装置としては、MGECU1bによって2つの係合要素間の係合動作や解放動作が制御されるものであり、その係合要素間の動力伝達の断接を任意に実施可能な係合装置を利用することができる。具体的には、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)や摩擦係合装置(摩擦クラッチ)等の制御クラッチを動力断接装置として利用する。この例示では、ドグクラッチ60を利用する。この例示のドグクラッチ60は、第1係合要素61と第2係合要素62と第3係合要素63とを備える。第1係合要素61は、MG2回転軸22と一体になって回転できるように連結する。第2係合要素62は、リダクション軸53と一体になって回転できるように連結する。第3係合要素63は、係合動作時に第1係合要素61と第2係合要素62の双方に係合するよう移動して、これらを一体になって回転させる一方で、解放動作時に第1係合要素61と第2係合要素62の双方に係合しないよう移動して、これらの間のトルクの伝達を遮断させる。MGECU1bは、図1に示すアクチュエータ65を制御し、第3係合要素63を移動させることによって、ドグクラッチ60を係合又は解放させる。尚、ドグクラッチ60は、第1係合要素61と第2係合要素62とアクチュエータ65とを備え、そのアクチュエータ65が第1係合要素61又は第2係合要素62を他方に向けて移動させることで係合し、そのアクチュエータ65が第1係合要素61又は第2係合要素62を他方から離すことで解放するものであってもよい。
制御不要な動力断接装置とは、MGECU1bによる制御が実施されずとも、動力伝達の断接が可能なものである。例えば、この動力断接装置としては、少なくとも1つの係合要素に繋がれた部材の動作に応じて2つの係合要素間の係合動作や解放動作が行われる係合装置(例えば制御レスクラッチ)を利用することができる。具体的には、一方向のみに動力を伝達する一方向クラッチ(OWC)70を用いる。その一方向クラッチ70は、MG2回転軸22と一体になって回転できるように連結した第1係合要素71と、リダクション軸53と一体になって回転できるように連結した第2係合要素72と、を備える。
この一方向クラッチ70は、前進走行時にMG2回転軸22とリダクション軸53が同一方向に回転しており、実MG2回転数Nmg2r(MG2回転軸22の実際の回転数)がリダクション軸53の回転数Nrよりも低くなっている場合、又は、前進走行時に実MG2回転数Nmg2rが0の状態でリダクション軸53が回転している場合に、第1係合要素71と第2係合要素72とが空転して解放状態になる。この一方向クラッチ70は、この解放状態のときにリダクション軸53と同一回転方向へと実MG2回転数Nmg2rを上昇させ、実MG2回転数Nmg2rとリダクション軸53の回転数Nrとを同期させることによって、第1係合要素71が第2係合要素72に係合する。また、この一方向クラッチ70は、停車中(実MG2回転数Nmg2rとリダクション軸53の回転数Nrとが0の場合)に、前進走行時のリダクション軸53と同一回転方向へと実MG2回転数Nmg2rを上昇させることによって、第1係合要素71が第2係合要素72に係合する。
ドグクラッチ60を係合させているときには、一方向クラッチ70が係合しようがしまいが、MG2回転軸22とリダクション軸53との間でのトルク伝達が可能になる。このため、MG2回転軸22を前進走行時のリダクション軸53と同一回転方向に回転させた場合には、MG2トルクTmg2によってハイブリッド車両を前進させることができる。また、その状態に対してMG2回転軸22を逆転させた場合には、MG2トルクTmg2によってハイブリッド車両を後退させることができる。
ここで、ドグクラッチ60や一方向クラッチ70は、それぞれにトルク容量を小さくすることで、その体格を小型化できる。そして、このドグクラッチ60や一方向クラッチ70の小型化は、ハイブリッドシステム2−1の体格の小型化にも繋がる。このため、この例示では、ドグクラッチ60と一方向クラッチ70とを共に係合状態にして前進走行させる。例えば、ドグクラッチ60を解放させているときには、実MG2回転数Nmg2rとリダクション軸53の回転数Nrとを同期させることによって、一方向クラッチ70を係合させることができる。このため、MGECU1bには、MG2トルクTmg2を用いて前進走行させる際に、実MG2回転数Nmg2rとリダクション軸53の回転数Nrとが同期したときに解放状態のドグクラッチ60を係合させる。
このハイブリッドシステム2−1においては、走行モードとして電気自動車(EV)走行モードとハイブリッド(HV)走行モードとが設定されており、その何れかの走行モードでハイブリッド車両を走行させることができる。
EV走行モードとは、MG2トルクTmg2のみを用いて走行させるモードである。EV走行モードにおいては、燃費向上のためにエンジンENGを停止させることができる。
HVECU1cの走行制御部は、エンジンENGを停止させるのかを考慮した上で、駆動輪Wに発生させる要求駆動トルクや車速等に基づいて、エンジントルクTeの指令値とMG1トルクTmg1の指令値とMG2トルクTmg2の指令値を算出すると共に、エンジン回転数Neの指令値とMG1回転数Nmg1の指令値とMG2回転数Nmg2の指令値を算出する。そして、この走行制御部は、エンジントルクTeとエンジン回転数Neのそれぞれの指令値をENGECU1aに送信して、エンジンENGを制御させる。更に、この走行制御部は、MG1トルクTmg1とMG1回転数Nmg1のそれぞれの指令値及びMG2トルクTmg2とMG2回転数Nmg2のそれぞれの指令値をMGECU1bに送信して、第1回転機MG1と第2回転機MG2を制御させる。その際、MGECU1bは、ドグクラッチ60を係合させる。
HV走行モードとは、エンジントルクTeを用いて走行させるモードであり、エンジントルクTeに加えてMG2トルクTmg2も用いて走行させる複合モードと、エンジントルクTeのみを用いて走行させるエンジン直達モードと、を備える。
この例示の複合モードにおいて、第1回転機MG1は、エンジントルクTeの反力を受け持っている。この複合モードでは、第1回転機MG1を回生駆動させる場合もある。走行制御部は、複合モードを選択した場合、第1回転機MG1を回生駆動させるのかを考慮した上で、駆動輪Wに発生させる要求駆動トルクや車速等に基づいて、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2に対するそれぞれの指令値を算出する。そして、この走行制御部は、各々の指令値をENGECU1aとMGECU1bに送信して、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2を制御させる。その際、MGECU1bは、EV走行モードと同じようにドグクラッチ60を係合させる。
また、エンジン直達モードでは、エンジントルクTeが電気パスを介することなく機械的にカウンタシャフト51(つまり駆動輪W)へと伝達される。このエンジン直達モードにおいては、ドグクラッチ60を解放させ、一方向クラッチ70を解放状態にすることで、第2回転機MG2をリダクション軸53から切り離して休止させる。このような第2回転機MG2の休止モード(以下、「MG2休止モード」という。)は、エンジン直達モードで走行しているときの第2回転機MG2の引き摺り損失を無くすことができる。このため、このMG2休止モードは、燃費の向上に寄与する。走行制御部は、エンジン直達モードを選択した場合、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2に対するそれぞれの指令値を算出し、これらをENGECU1aとMGECU1bに送信して、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2を制御させる。その際、このMGECU1bは、ドグクラッチ60を解放させ、かつ、第2回転機MG2を休止させる。
ところで、このハイブリッドシステム2−1には、システムの異常を判定する異常判定モード(診断モード)が設けられている。その異常判定モードは、HVECU1cの異常判定部に実施させる。この例示では、第2回転機MG2の回転の異常の原因を探る。
第2回転機MG2の回転の異常とは、MG2回転数の指令値Nmg2cとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)との間に乖離が生じている場合のことをいう。その実MG2回転数Nmg2rは、MG2回転数センサ24が正常に動作している場合、このMG2回転数センサ24で検出することができる。このため、MG2回転数の指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間に乖離が無い場合は、第2回転機MG2が指令値Nmg2cの通りに動作しており、かつ、MG2回転数センサ24も正常に動作していることが判る。一方、その間に乖離が有る場合には、第2回転機MG2が指令値Nmg2cの通りに動作していない可能性があり、また、MG2回転数センサ24が正常に動作していない可能性もあるので、第2回転機MG2の回転に異常が生じていると判断することができる。
以下においては、第2回転機MG2が指令値Nmg2cの通りに動作していない状態のことをMG2回転数の指令値Nmg2cの異常という。その第2回転機MG2が指令値Nmg2cの通りに動作していない状態とは、具体的に、指令値Nmg2cが要求MG2回転数に対してずれている状態(例えばHVECU1cの指令値Nmg2cとMGECU1bの指令値Nmg2cとがずれている状態)のことである。また、MG2回転数センサ24が正常に動作していない状態とは、MG2回転数センサ24が故障等でMG2回転数Nmg2を正確に検出できなくなっている状態だけでなく、信号線等の異常によってMG2回転数センサ24からの信号が正確にHVECU1cやMGECU1bに送信されなかった状態も含む。以下においては、そのような検出値Nmg2sに異常が生じる何れの場合についてもMG2回転数センサ24の異常と称する。
指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間の乖離の有無は、その指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値(|Nmg2c−Nmg2s|)に所定回転数(第1所定回転数)Nx以上のずれが生じているのか否かを見ることで判定できる。
ここで、その指令値Nmg2cには、これを算出する際に用いたセンサの検出信号の誤差(公差の範囲内の誤差)が含まれている。また、検出値Nmg2sには、MG2回転数センサ24の検出信号の誤差(公差の範囲内の誤差)が含まれている。更に、その指令値Nmg2cと検出値Nmg2sには、制御で使用する上での公差の範囲内の量子化誤差、測定時間ずれによる公差の範囲内の誤差、電磁波等によって生じた信号線のノイズによる公差の範囲内の誤差等が乗っている。所定回転数Nxは、それらの誤差を累積し、かつ、所定の安全余裕代を考慮した上で予め設定しておく。その設定に際しては、所定回転数Nxが大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりさせないことが望ましい。所定回転数Nxが大きすぎた場合には、異常との判定が遅れる可能性があるからである。また、所定回転数Nxが小さすぎた場合には、異常が発生していないにも拘わらず、異常が生じたと誤判定する可能性があるからである。
所定回転数Nxをこのように設定しておくことで、絶対値(|Nmg2c−Nmg2s|)が所定回転数Nxよりも低回転の場合には、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間に乖離が発生していないと判定することができる。また、絶対値(|Nmg2c−Nmg2s|)が所定回転数Nx以上の場合には、その間に乖離が発生していると判定することができる。
ところで、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差を見るだけでは、指令値Nmg2cに異常が発生しているのか、それともMG2回転数センサ24に異常が発生しているのかを判別することができない。このため、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっている場合には、MG2回転数センサ24による検出値Nmg2sとMG2回転数の推定値Nmg2eとを比較することで、異常の発生箇所に当りを付けることができる。その推定値Nmg2eとは、MG2回転数センサ24以外のセンサによる検出値に基づいて取得したものである。この推定値Nmg2eは、MG2回転数センサ24の異常の有無を認識するために、MG2回転数センサ24とは別の場所で検出した回転数に基づいて算出する。
前述したように、MG2回転数センサ24は、MG2回転軸22とドグクラッチ60の第1係合要素61と一方向クラッチ70の第1係合要素71の内の少なくとも1つの回転数を検出することで、MG2回転数の検出値Nmg2sを得ている。このため、MG2回転数センサ24が正常なときには、係合状態のドグクラッチ60における第2係合要素62の回転数とMG2回転数センサ24による検出値Nmg2sとが同一の回転数又はほぼ同一の回転数(検出誤差や推定誤差を考慮に入れた回転数)になる。よって、ここでは、その第2係合要素62の回転数をMG2回転数の推定値Nmg2eとして利用する。
その推定値Nmg2eには、リダクション軸53とドグクラッチ60の第2係合要素62と一方向クラッチ70の第2係合要素72の内の少なくとも1つの回転数を利用することができる。このため、ここでは、その回転数を検出する回転数センサ(図示略)を設け、検出された回転数をMG2回転数の推定値Nmg2eとして利用することができる。また、その回転数は、カウンタシャフト51の回転数Ncsと、カウンタドリブンギヤ42とリダクションギヤ46との間のギヤ比(減速比)γと、に基づいて推定することができる。よって、ここでは、その推定した回転数をMG2回転数の推定値Nmg2eとして利用することができる(式1)。
Nmg2e=Ncs*γ … (1)
カウンタシャフト51の回転数Ncsは、図1に示す出力軸回転数センサ81で検出すればよい。また、この回転数Ncsは、エンジン回転数NeとMG1回転数Nmg1と動力分割機構30のギヤ比ρとに基づいて推定することもできる(式2)。
Ncs=(1+ρ)*Ne−ρ*Nmg1/(1+ρ) … (2)
MG2回転数の検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとの差の絶対値(|Nmg2s−Nmg2e|)が所定回転数よりも低回転の場合(検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとの間に乖離が無い場合)には、既に指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっていることが判っているので、その指令値Nmg2cに異常が発生していると当りを付けることができる。一方、その絶対値(|Nmg2s−Nmg2e|)が所定回転数以上になっている場合(検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとの間に乖離が有る場合)には、MG2回転数センサ24に異常が発生していると当りを付けることができる。
しかしながら、その絶対値(|Nmg2s−Nmg2e|)が所定回転数以上となるのは、MG2回転数センサ24に異常が生じている場合だけではない。例えば、ドグクラッチ60が誤解放されている(制御可能な動力断接装置における動力伝達が誤切断されている)場合には、MG2回転数センサ24が正常であっても、絶対値(|Nmg2s−Nmg2e|)が所定回転数以上になる。このため、MG2回転数の検出値Nmg2sと推定値Nmg2eの比較のみでは、異常の発生している箇所を正確に特定することができない。
そこで、本実施例においては、次のようにして異常の発生している箇所を特定する。本実施例の異常判定(診断モード)に関わる演算処理動作を図3のフローチャートに基づき説明する。
ここで、後述するMG2回転異常フラグF0は、第2回転機MG2の回転に異常が有ると判定された場合に立てるフラグであり、異常が有ると判定された場合に1とし(F0=1)、異常が有ると判定されなかった場合又はドグクラッチ60の解放に伴う第2回転機MG2の休止中の場合に0とする(F0=0)。MG2回転数センサ異常フラグF1は、MG2回転数センサ24に異常が有る場合に立てるフラグであり、MG2回転数センサ24に異常が有ると判定された場合に1とし(F1=1)、MG2回転数センサ24に異常が有ると判定されなかった場合に0とする(F1=0)。MG2指令値異常フラグF2は、MG2回転数の指令値Nmg2cに異常が有る場合に立てるフラグであり、指令値Nmg2cに異常が有ると判定された場合に1とし(F2=1)、指令値Nmg2cに異常が有ると判定されなかった場合に0とする(F2=0)。ドグクラッチ誤解放フラグF3は、ドグクラッチ60が誤解放されている場合に立てるフラグであり、誤解放されていると判定された場合に1とし(F3=1)、誤解放されていると判定されなかった場合に0とする(F3=0)。ドグクラッチ係合指令フラグFdは、ドグクラッチ60に対して係合指令が行われている場合に立てるフラグであり、係合指令が行われている場合に1とし(Fd=1)、ドグクラッチ60に対して解放指令が行われている場合に0とする(Fd=0)。
異常判定部は、MG2回転数の指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値を求め、この絶対値が所定回転数Nx以上になっているのか否かを判定する(ステップST1)。
その絶対値が所定回転数Nxよりも低回転の場合には、ドグクラッチ60が係合されていれば、第2回転機MG2の回転に異常が生じておらず、ドグクラッチ60が解放されていれば、第2回転機MG2が休止中であり、この第2回転機MG2の回転に異常が発生しているのか否かを判別できない。このため、異常判定部は、この場合、MG2回転異常フラグF0とMG2回転数センサ異常フラグF1とMG2指令値異常フラグF2とドグクラッチ誤解放フラグF3とをそれぞれ0にする(ステップST2)。異常判定部は、この後、ステップST1に戻る。
一方、異常判定部は、MG2回転数の指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっている場合、その指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間に乖離が発生しており、第2回転機MG2の回転に異常が生じているので、その原因となる異常の発生箇所を探る。
先ず、この場合の異常判定部は、ドグクラッチ係合指令フラグFdが立っている(Fd=1)のか否かを判定する(ステップST3)。つまり、ここでは、ドグクラッチ60に対して係合指令が行われているのか否かを判定する。ドグクラッチ60が係合していなければ、異常の発生箇所を正しく特定できないからである。
異常判定部は、その係合指令フラグFdが降りており(Fd=0)、ドグクラッチ60が解放中であると判定した場合、第2回転機MG2が休止中であり、異常の発生箇所を実行中の異常判定で詳細に特定することができないので、MG2回転異常フラグF0を0にして(ステップST4)、MG2休止モードの異常判定処理を実行する(ステップST5)。例えば、HVECU1cの通知部は、MG2休止中の異常判定処理フラグを立てて、駆動力が制限されることを運転者等に通知する。その通知は、例えば、車室内に文字情報等の視覚情報や音声情報等の聴覚情報として出力したり、通信機器を介して販売店のサービス部門や修理部門のサーバ等に出力したりして行う。その後、異常判定部は、MGECU1bとENGECU1aとに指令を送り、第2回転機MG2に対する供給電流の指令値を0に向けて減少させ、エンジン直達モードで走行させる。
これに対して、異常判定部は、係合指令フラグFdが立っており(Fd=1)、ドグクラッチ60が係合中(HV走行モードで走行中)であると判定した場合、第2回転機MG2の回転に異常が生じていると判定し、MG2回転異常フラグF0を立てる(F0=1、ステップST6)。つまり、異常判定部は、ドグクラッチ60の係合指令中に指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっている場合、異常判定を実施する。
次に、異常判定部は、MGECU1bに指令を送り、MG2回転数の指令値Nmg2cを減少させる(ステップST7)。その指令値Nmg2cの減少指令は、第2回転機MG2の回転に異常が有ると判定された原因を特定する為に実施する。この指令値Nmg2cの減少量は、例えば推定値Nmg2eの算出に用いたセンサの検出誤差等に基づいて予め設定しておけばよい。指令値Nmg2cの減少指令値は、減少前の指令値Nmg2cから減少量を減算したものである。また、その減少指令は、予め定めておいた所定時間の間だけ実施させるように構成してもよい。
この異常判定部は、MG2回転数の推定値Nmg2eを算出し、その減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)を求めて、この絶対値が所定回転数(第2所定回転数)Ny以上になっているのか否かを判定する(ステップST8)。
前述したように、指令値Nmg2cには、様々な公差の範囲内の誤差が乗っている。そして、推定値Nmg2eについても、指令値Nmg2cと同じように、エンジン回転数センサ15等における公差の範囲内の誤差が乗っている。このため、所定回転数Nyは、それらの誤差を累積し、かつ、所定の安全余裕代を考慮した上で予め設定しておく。その設定に際しては、所定回転数Nyが大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりさせないことが望ましい。所定回転数Nyが大きすぎた場合には、フェールセーフ時に、パワースプリット走行(エンジンENGの動力で走行と発電を行いながら、その発電した電力で第2回転機MG2を駆動する走行)ができないにも拘わらず、パワースプリット走行に移行してしまう可能性があるからである。また、所定回転数Nyが小さすぎた場合には、フェールセーフ時に、パワースプリット走行の継続が可能であるにも拘わらず、エンジン直達走行に移行して、走行距離が短くなってしまう可能性があるからである。
ここで、その指令値Nmg2cの減少指令は、車両の速度低下を招く。このため、この減少指令は、診断モードの介入による乗員の違和感を抑えるために、車両の減速時に実施することが望ましい。
異常判定部は、その絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nyよりも低回転の場合、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が無いので、MG2回転数センサ24の異常と判定し、MG2回転数センサ異常フラグF1を立てる(F1=1)と共に、MG2指令値異常フラグF2とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ0にする(ステップST9)。異常判定部は、この後、ステップST1に戻る。
ここで、指令値Nmg2cの減少時に算出される絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nyよりも低回転になっている場合、推定値Nmg2eは、その指令値Nmg2cの変化と同じように変化する(図4及び図5)。具体的に、その推定値Nmg2eとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)は、指令値Nmg2cと同一の回転数又はほぼ同一の回転数(検出誤差や推定誤差を考慮に入れた回転数)で減少する。図5では、図示の便宜上、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eと実MG2回転数Nmg2rとが同一の回転数で変化しているものとして説明している。
この場合には、既に指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっていることが判っているので、指令値Nmg2cに異常が無く、MG2回転数センサ24の異常であると判断できる。図5の例示では、指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sが小さくなっている状態を示している。また、この場合には、ドグクラッチ60が係合状態になっていることが判る。ドグクラッチ60が解放されているときは、指令値Nmg2cの減少と共に係合状態の一方向クラッチ70も解放されるので、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとが乖離していくからである(図4及び図6)。尚、ここでは、指令値Nmg2cを減少させなければ、一方向クラッチ70が係合状態を保ったままなので、ドグクラッチ60が係合状態なのか誤解放されているのかを判別できない。
具体的に、この場合には、図4に示す1重と2重の異常が起こり得る。この場合の1重の異常とは、MG2回転数センサ24だけに異常が生じている状態である。2重の異常とは、MG2回転数センサ24の異常状態とドグクラッチ60が係合状態のままで固着している状態とが併存している場合である。但し、現時点では、ドグクラッチ60の係合状態が係合指令に応じた正常な動作に基づくものなのか固着を原因とするものなのかを識別できない。しかしながら、ここでは、MG2回転数センサ24に異常が発生していることに変わりない。このため、異常判定部には、MG2回転数センサ24に単独の異常が発生していると判定させ、例えば指令値Nmg2cの減少指令を終えてからMG2回転数センサ異常フラグF1を立てさせる。尚、ドグクラッチ60が係合状態のまま固着しているのか否かを判定する場合、その判定は、ドグクラッチ60に解放指令を与えるとき(MG2休止モードへの移行時等)に実施すればよい。
このように、異常判定部は、減少させた指令値Nmg2c(減少指令値)と推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nyよりも低回転になっている場合、MG2回転数センサ24の単独の異常が発生していると判定することができる。この場合には、後述するように指令値Nmg2cを増加させたとしても、この指令値Nmg2cと同じように推定値Nmg2eが変化する(図4及び図5)。具体的に、その推定値Nmg2eとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)は、指令値Nmg2cと同一の回転数又はほぼ同一の回転数(検出誤差や推定誤差を考慮に入れた回転数)で増加する。図5では、図示の便宜上、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eと実MG2回転数Nmg2rとが同一の回転数で変化しているものとして説明している。
一方、ドグクラッチ60の係合指令中に指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっており、かつ、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっている場合には、MG2回転数センサ24の異常と他の異常とが併存している状態、指令値Nmg2cの単独の異常状態、及び、指令値Nmg2cの異常と他の異常とが併存している状態になっていることが考えられる。
ここで、そのMG2回転数センサ24の異常と同時に発生している他の異常としては、指令値Nmg2cの異常状態やドグクラッチ60の誤解放状態が考えられる。ドグクラッチ60が解放されているときは、指令値Nmg2cを増加させ、MG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)を増加させることによって、指令値Nmg2cの減少によって解放させられた一方向クラッチ70が再び係合し、推定値Nmg2eが指令値Nmg2cと同一の回転数又はほぼ同一の回転数(検出誤差や推定誤差を考慮に入れた回転数)で増加していく(図4及び図6)。このため、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっているとステップST8で判定された場合には、その指令値Nmg2cを増加させることによって、係合指令中のドグクラッチ60が誤解放されていることを特定できる。そして、その増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数(第3所定回転数)Nzよりも低回転になっているときは、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの差の絶対値が所定回転数Nx以上になっていることが既に判っているので、指令値Nmg2cの異常ではなく、MG2回転数センサ24に異常が発生していることを特定できる。図6の例示では、指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sが小さくなっている状態を示している。
そこで、異常判定部には、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっているとステップST8で判定され、その指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が有ることが判った場合、MGECU1bに指令を送り、MG2回転数の指令値Nmg2cを増加させる(ステップST10)。その指令値Nmg2cの増加量は、例えば推定値Nmg2eの算出に用いたセンサの検出誤差等に基づいて予め設定しておけばよい。指令値Nmg2cの増加指令値は、増加前の指令値Nmg2cに増加量を加算したものである。また、その指令値Nmg2cの増加指令は、予め定めておいた所定時間の間だけ実施させるように構成してもよい。
この異常判定部には、その増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値を算出させ、この絶対値が所定回転数Nz以上になっているのか否かを判定させる(ステップST11)。
前述したように、指令値Nmg2cや推定値Nmg2eには、様々な公差の範囲内の誤差が乗っている。このため、所定回転数Nzは、それらの誤差を累積し、かつ、所定の安全余裕代を考慮した上で予め設定しておく。その設定に際しては、所定回転数Nzが大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりさせないことが望ましい。所定回転数Nzが大きすぎたり小さすぎたりした場合には、異常箇所が特定できず、誤判定を引き起こす可能性があるからである。図6−11の例示では、所定回転数Nzを所定回転数Nyと同一の回転数に設定している。
ここで、その指令値Nmg2cの増加指令は、車両の速度上昇を招く。このため、この増加指令は、診断モードの介入による乗員の違和感を抑えるために、車両の増速時に実施することが望ましい。
異常判定部は、その絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nzよりも低回転の場合、その指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が無いので、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生していると判定し、MG2回転数センサ異常フラグF1とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ立てる(F1=1、F3=1)と共に、MG2指令値異常フラグF2を0にする(ステップST12)。異常判定部は、この後、ステップST1に戻る。
このように、異常判定部は、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっており、かつ、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nzよりも低回転になっている場合、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生していると判定することができる。
一方、絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nz以上になっている場合には、その指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が有り、かつ、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間にも乖離があることが既に判っているので、その指令値Nmg2cに異常が発生していると判断することができる。このため、この場合の異常判定部は、指令値Nmg2cに異常が発生していると判定し、MG2指令値異常フラグF2を立てる(F2=1)と共に、MG2回転数センサ異常フラグF1とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ0にする(ステップST13)。異常判定部は、この後、ステップST1に戻る。
指令値Nmg2cに異常が発生している場合としては、前述したように、指令値Nmg2cの単独の異常状態、及び、指令値Nmg2cの異常と他の異常とが併存している状態が考えられる。その具体例を図7−11に示す。尚、この例示では、指令値Nmg2cに異常が発生していることを特定するまでとし、同時に発生している他の異常が何であるのかについてまでは特定しない。但し、特定の必要があるときは、他の異常について特定してもよい。
図7は、図4に示す1重の異常が発生している場合と2重の異常が発生している場合の一例を示したものである。1重の異常とは、指令値Nmg2cだけが異常である状態を指している。また、ここでの2重の異常とは、指令値Nmg2cの異常状態とドグクラッチ60が係合状態のままで固着している状態とが併存している場合を指している。これらの場合には、指令値Nmg2cの変化に拘わらず、この指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)とが乖離しており、かつ、その検出値Nmg2sと推定値Nmg2eと実MG2回転数Nmg2rとが同一の回転数又はほぼ同一の回転数になっている。
図8及び図9は、図4に示す別の2重の異常が発生している場合について示したものである。図8は、指令値Nmg2cの異常だけでなく、MG2回転数センサ24の異常も同時に発生している場合の一例である。この場合には、指令値Nmg2cの変化に拘わらず、この指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)とが乖離しており、かつ、その推定値Nmg2eと実MG2回転数Nmg2rに対して検出値Nmg2sが乖離している。図9は、指令値Nmg2cの異常だけでなく、ドグクラッチ60の誤解放も同時に発生している場合の一例である。この場合には、指令値Nmg2cの変化に拘わらず、この指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)とが乖離しており、かつ、その検出値Nmg2sと実MG2回転数Nmg2rとが同一の回転数又はほぼ同一の回転数になっている。更に、この場合には、ドグクラッチ60の誤解放によって、車軸の回転数に応じて推定値Nmg2eが変化している。その推定値Nmg2eは、指令値Nmg2cの増加に伴い一方向クラッチ70が係合するので、検出値Nmg2sや実MG2回転数Nmg2rと同一の回転数又はほぼ同一の回転数で増加する。
図10及び図11は、図4に示す3重の異常が発生している場合について示したものである。図10は、指令値Nmg2cの異常だけでなく、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60が係合状態のままで固着している状態とが同時に発生している場合の一例である。この場合には、指令値Nmg2cの変化に拘わらず、この指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)とが乖離しており、かつ、その推定値Nmg2eと実MG2回転数Nmg2rに対して検出値Nmg2sが乖離している。図11は、指令値Nmg2cの異常だけでなく、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生している場合の一例である。この場合には、指令値Nmg2cの変化に拘わらず、この指令値Nmg2cに対して検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとMG2回転軸22の実際の回転数(実MG2回転数Nmg2r)とが乖離しており、かつ、その検出値Nmg2sと推定値Nmg2eと実MG2回転数Nmg2rとがそれぞれ別々に変化する。
このように、異常判定部は、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっており、かつ、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nz以上になっている場合、MG2回転数の指令値Nmg2cに異常が発生しており、その指令値Nmg2cの通りに第2回転機MG2が動作できていないと判定することができる。
以上示したように、第2回転機MG2の回転に異常が生じていると判定された場合には、その原因として1つ又は複数の異常箇所の存在が考えられる。本実施例の車両の制御装置は、そのような判定が為された場合、ドグクラッチ60の係合中にMG2回転数の指令値Nmg2cを増減させることによって、異常の発生している箇所を細かく切り分けて特定することができる。このため、この車両の制御装置は、その異常箇所の診断を行うに際して、ドグクラッチ60の係合指令中にMG2回転数の指令値Nmg2cを増減させることによって、ドグクラッチ60が誤解放されており、係合状態の一方向クラッチ70でMG2トルクTmg2の伝達が行われている状況下でも、異常箇所を特定することができる。また、この車両の制御装置は、その異常箇所の診断をドグクラッチ60の係合中に行うので、診断時のドライバビリティの悪化を抑えつつ、そのような多様な異常の判定に対して高精度に対応することができる。
HVECU1cの通知部には、異常の発生している箇所が特定された際に、その異常箇所の情報と共に、注意喚起情報を車室内や販売店のサービス部門等に出力させてもよい。その注意喚起情報とは、点検や修理を受けるよう促す情報等である。
また、この通知部には、ステップST6で第2回転機MG2の回転に異常が生じていると判定された際に又は指令値Nmg2cの減少指令と同時に、第2回転機MG2の回転に関して異常が発生している旨の情報(異常発生情報)と共に、上記の注意喚起情報を車室内や販売店のサービス部門等に出力させてもよい。この場合、異常判定部は、車両の減速タイミングを待たずに指令値Nmg2cの減少指令を行ってもよく、また、車両の増速タイミングを待たずに指令値Nmg2cの増加指令を行ってもよい。この場合、運転者は、異常の発生を認識しているので、自らの操作に反した減速感や増速感を僅かに感じたとしても、それに違和感を覚える可能性が少ないからである。更に、通知部には、これらの情報と共に、異常判定(診断モード)を実施する旨の情報を出力させてもよい。これによれば、運転者は、異常判定(診断モード)の実施を認識しているので、自らの操作に反した減速感や増速感に対する違和感がより少なくなるからである。
また、通知部には、指令値Nmg2cの減少指令を行ってから、異常発生情報と注意喚起情報又はこれらの情報と異常判定(診断モード)を実施する旨の情報を出力させてもよい。この例示では、指令値Nmg2cの減少指令を先に行い、その後で必要に応じて増加指令を行う。このため、運転者にとっては、操作意思に反した減速感を先に覚えたとしても、操作意思に反した増速感を先に覚えた場合と比較して、不安感が少ないからである。
ここで、本実施例では、そのような異常判定(診断モード)をドグクラッチ60の係合指令中(HV走行モードで走行中)に実施している。しかしながら、異常判定部は、ドグクラッチ60に対して解放指令が為されていたとしても、このドグクラッチ60に対して係合指令を行うことによって、診断モードに移行させてもよい。
また、指令値Nmg2cの異常状態とドグクラッチ60が係合状態のままで固着している状態とが同時に発生している場合には、車両を速やかに停車させることが望ましい。このため、異常判定部には、ステップST13の判定の後で、ドグクラッチ60に対する解放指令を実施させ、検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとを比較させることによって、ドグクラッチ60が係合状態のままで固着しているのか否かを判定させてもよい。そして、通知部には、指令値Nmg2cの異常状態とドグクラッチ60が係合状態のままで固着している状態とが同時に発生していると判定された場合、車両を速やかに停車させるよう運転者に通知させることが望ましい。尚、MG2回転数センサ24の異常も同時に発生している場合には、検出値Nmg2sと推定値Nmg2eとの比較によって、ドグクラッチ60が係合状態のままで固着しているのか否かを判別し難い。そこで、通知部には、ステップST13の判定が実施された場合、車両を速やかに停車させるよう運転者に通知させてもよい。
[変形例1]
前述した実施例の車両の制御装置においては、MG2回転数の指令値Nmg2cの減少指令を先に行い、その後で必要に応じて増加指令を行っている。本変形例は、MG2回転数の指令値Nmg2cの増加指令を先に行い、その後で必要に応じて減少指令を行うものである。但し、本変形例においては、運転者の違和感を抑えるべく、第2回転機MG2の回転に異常が生じていると判定された際に、実施例で説明した異常発生情報と注意喚起情報又はこれらの情報と異常判定(診断モード)を実施する旨の情報を出力させることが望ましい。
以下に、本変形例の異常判定(診断モード)に関わる演算処理動作を図12のフローチャートに基づき説明する。尚、図12のステップST21−ST26までの演算処理は、実施例における図3のステップST1−ST6までの演算処理と同じものなので、ここでの説明を省略する。また、それ以外の演算処理についても、実施例と同じものは、省略又は簡略化して説明する。
異常判定部は、ステップST26でMG2回転異常フラグF0を立てた後(F0=1)、実施例のステップST10,ST11と同じようにして、MG2回転数の指令値Nmg2cを増加させ(ステップST27)、その増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nz以上になっているのか否かを判定する(ステップST28)。その所定回転数Nzは、実施例と同じものを用いればよい。
異常判定部は、その絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nz以上になっている場合、その指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が有り、かつ、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間にも乖離が有ることがステップST21で既に判っているので、その指令値Nmg2cに異常が発生していると判定し、MG2指令値異常フラグF2を立てる(F2=1)と共に、MG2回転数センサ異常フラグF1とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ0にする(ステップST29)。異常判定部は、この後、ステップST21に戻る。この場合、通知部は、実施例でも説明したように、ドグクラッチ60が係合状態のままで固着しているのか否かが判らなければ、車両を速やかに停車させるよう運転者に通知してもよい。
一方、異常判定部は、絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nzよりも低回転の場合、その指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が無いが、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間に乖離が有ることが既に判っているので、MG2回転数センサ24に異常が発生していると当たりを付ける。このため、異常判定部は、実施例のステップST7,ST8と同じようにして、MG2回転数の指令値Nmg2cを減少させ(ステップST30)、その減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっているのか否かを判定する(ステップST31)。その所定回転数Nyは、実施例と同じものを用いればよい。
ここで、ドグクラッチ60が誤解放されているときには、指令値Nmg2cの減少に伴い、係合状態の一方向クラッチ70が解放されるので、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間に乖離が生じる。一方、ドグクラッチ60が係合状態になっているときには、指令値Nmg2cを減少させたとしても、指令値Nmg2cと検出値Nmg2sとの間に乖離が生じない。このため、異常判定部は、絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Ny以上になっている場合、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生していると判定し、MG2回転数センサ異常フラグF1とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ立てる(F1=1、F3=1)と共に、MG2指令値異常フラグF2を0にする(ステップST32)。異常判定部は、この後、ステップST21に戻る。これに対して、異常判定部は、絶対値(|Nmg2c−Nmg2e|)が所定回転数Nyよりも低回転の場合、MG2回転数センサ24の単独の異常と判定し、MG2回転数センサ異常フラグF1を立てる(F1=1)と共に、MG2指令値異常フラグF2とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ0にする(ステップST33)。異常判定部は、この後、ステップST21に戻る。
このように、異常判定部は、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nz以上になっている場合、その指令値Nmg2cに異常が発生していると判定することができる。
また、この異常判定部は、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nzよりも低回転になっており、かつ、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Ny以上になっている場合、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生していると判定することができる。
また、この異常判定部は、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nzよりも低回転になっており、かつ、減少させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nyよりも低回転になっている場合、MG2回転数センサ24の単独の異常が発生していると判定することができる。
以上示したように、本変形例の車両の制御装置は、異常の発生している箇所を細かく切り分けて特定することができるので、実施例のものと同様の効果を得ることができる。
[変形例2]
本変形例は、実施例の車両の制御装置において、図3のステップST11の判定を図13のフローチャートに示す判定へと置き換えたものである。
異常判定部は、MG2回転数の指令値Nmg2cの増加指令を行った後、その増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値を算出し、この絶対値が所定回転数Nz以上になっているのか否かを判定する(ステップST11A)。その所定回転数Nzは、実施例で用いたものと同じでよい。
本変形例の異常判定部は、その絶対値が所定回転数Nzよりも低回転の場合、このステップST11Aの判定を繰り返す。そして、異常判定部は、その絶対値が所定回転数Nz以上になったと判定された場合に、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとが真に乖離しているのか否かの判定処理(乖離判定処理)に移る(ステップST11B)。
異常判定部は、時間tのカウントを開始し(t=0、ステップST11C)、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が所定回転数Nz以上になっているのか否かを判定する(ステップST11D)。
異常判定部は、その絶対値が所定回転数Nz以上になっている場合、閾値超過カウンタCを1つ上げると共に(C=++、ステップST11E)、時間tを計数する(t=++、ステップST11F)。一方、この異常判定部は、その絶対値が閾値としての所定回転数Nzよりも低回転になっている場合、閾値超過カウンタCを上げずに、ステップST11Fで時間tを計数する。尚、閾値超過カウンタCとは、その絶対値が閾値としての所定回転数Nz以上になっている場合に計数されるものであり、その場合の累積回数を表す。
異常判定部は、時間tを計数した後、この時間tが所定時間ts以上になったのか否かを判定する(ステップST11G)。その所定時間tsは、一時的に絶対値が所定回転数Nz以上になった場合等の誤判定を排除できるだけの時間に予め設定しておく。
異常判定部は、時間tが所定時間tsを超えていない場合、ステップST11Dに戻って、同様の演算処理を繰り返す。つまり、ステップST11D−ステップST11Gまでの演算処理は、乖離判定処理に移行してから所定時間tsの間に、絶対値が所定回転数Nz以上になっているとの判定が何回行われたのかを知るためのものである。
異常判定部は、時間tが所定時間ts以上になった場合、閾値超過カウンタCが所定回数C0以下であるのか否かを判定する(ステップST11H)。
異常判定部は、閾値超過カウンタCが所定回数C0以下の場合、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が無いと判定する(ステップST11I)。つまり、この異常判定部は、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が真に所定回転数Nzよりも低回転になっているとの最終判定を行う。このため、この異常判定部は、実施例のステップST12に進んで、MG2回転数センサ異常フラグF1とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ立てる(F1=1、F3=1)と共に、MG2指令値異常フラグF2を0にする。
これに対して、異常判定部は、閾値超過カウンタCが所定回数C0を超えている場合、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間に乖離が有ると判定する(ステップST11J)。つまり、この異常判定部は、増加させた指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差の絶対値が真に所定回転数Nz以上になっているとの最終判定を行う。このため、この異常判定部は、実施例のステップST13に進んで、MG2指令値異常フラグF2を立てる(F2=1)と共に、MG2回転数センサ異常フラグF1とドグクラッチ誤解放フラグF3をそれぞれ0にする。図14は、乖離有りと判定された場合のタイムチャートを表している。
本変形例の車両の制御装置は、実施例と比較して、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間の乖離を精度良く判定することができるので、異常箇所の特定がより高精度なものとなる。例えば、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生している場合には、指令値Nmg2cを減少から増加へと切り替える際に、解放状態の一方向クラッチ70が係合するまでの間、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの差が一時的に大きくなることがある。本変形例の車両の制御装置は、そのような状況下であっても、指令値Nmg2cと推定値Nmg2eとの間の乖離の有無を高精度に判定することができる。このため、この車両の制御装置は、そのような一時的な事象であるにも拘わらず、指令値Nmg2cの異常であると誤判定してしまう事態を回避することができる。
ここで、この例示では、所定時間tsの間に絶対値が所定回転数Nz以上になった回数で乖離の有無を判定している。異常判定部は、これに替えて、絶対値が所定回転数Nz以上になったときの差分(|Nmg2c−Nmg2e|−Nz)を所定時間tsの間累積し、その累積値が所定値を超えた場合に乖離有りと判定する一方、その累積値が所定以下の場合に乖離無しと判定してもよい。
[変形例3]
前述した実施例や変形例1及び2の車両の制御装置においては、異常が発生している箇所の特定を行っている。本変形例では、その特定後の演算処理について説明する。
その特定後の演算処理は、図3のステップST9の判定が行われた場合(MG2回転数センサ24の単独の異常が発生している場合)と、ステップST12の判定が行われた場合(MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生している場合)及びステップST13の判定が行われた場合(MG2回転数の指令値Nmg2cに異常が発生している場合)と、に大別することができる。
先ず、ステップST9の判定が行われた場合について図15のフローチャートに基づき説明する。ここでは、HVECU1cの走行制御部がENGECU1aとMGECU1bに指令を送り、エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2に対する制御を実施させる。
HVECU1cの走行制御部は、MG2回転数センサ24の単独の異常が発生していると判定された場合、ドグクラッチ60の解放(つまり制御可能な動力断接装置の切断)を禁止させる(ステップST41)。これにより、この走行制御部から指令を受けたMGECU1bは、そのドグクラッチ60を係合させたままにする。しかる後、走行制御部は、MG2回転数の推定値Nmg2eに基づいて第2回転機MG2を制御しながら、パワースプリット走行を実施する(ステップST42)。
図16には、その際の共線図の一例を表している。走行制御部は、要求駆動トルクに応じたエンジントルクTeの要求値とMG2トルクTmg2の要求値を算出し、ENGECU1aとMGECU1bに指令を送る。ENGECU1aは、その要求値に応じたエンジントルクTeをエンジンENGに出力させ、動力分割機構30のリングギヤRにエンジン直達トルクを作用させる。その際、MGECU1bは、第1回転機MG1を回生駆動させる。更に、このMGECU1bは、MG2回転数の推定値Nmg2eを算出し、この推定値Nmg2eとMG2トルクTmg2の要求値に基づいて、第2回転機MG2を力行駆動させる。この第2回転機MG2の力行駆動は、第1回転機MG1における発電電力を用いて行い、MG2トルクTmg2の要求値に応じたトルクをリングギヤRに作用させる。尚、本図の「RDS」とは、リダクション軸53のことを表している。また、本図では、図示の便宜上、カウンタギヤ41を省略している(以下の共線図においても同様)。
本変形例の車両の制御装置は、このようにして、パワースプリット走行によるフェールセーフ走行が継続されるように制御する。よって、このハイブリッド車両においては、そのフェールセーフ走行の航続距離を延ばすことができる。
次に、ステップST12の判定又はステップST13の判定が行われた場合について図17のフローチャートに基づき説明する。
走行制御部は、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生している場合又はMG2回転数の指令値Nmg2cに異常が発生している場合、第2回転機MG2に対する供給電流の指令値を0に向けて減少させ、MG2トルクTmg2が発生しないように第2回転機MG2を休止させる(ステップST51)。そして、この走行制御部は、エンジン直達モードで走行(エンジン直達走行)させる(ステップST52)。
ここで、複合モードによるハイブリッド走行中は、ドグクラッチ60の誤解放が特定されていなければ、第2回転機MG2が誤ってリダクション軸53から切り離されているにも拘わらず、この第2回転機MG2によるトルク補助やトルク抑制が働くものとして当該第2回転機MG2が制御される。このため、その際には、実際の駆動トルクが要求駆動トルクに対してずれるので、運転者が意図しない減速感や加速感を覚えてしまう可能性がある。しかしながら、本変形例の車両の制御装置は、MG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ60の誤解放とが同時に発生していると特定した場合、第2回転機MG2に対する供給電流の指令値を0まで減少させ、エンジン直達モードに移行させる。実際には、第2回転機MG2がリダクション軸53から切り離された状態のまま、エンジン直達モードでフェールセーフ走行することになる。よって、この車両の制御装置は、要求駆動トルクに対する実際の駆動トルクのずれを抑えることができるので、意図しない減速感や加速感を運転者に与えずに済む。
図18には、その際の共線図の一例を表している。走行制御部は、要求駆動トルクに応じたエンジントルクTeの要求値を算出し、ENGECU1aとMGECU1bに指令を送る。ENGECU1aは、その要求値に応じたエンジントルクTeをエンジンENGに出力させ、リングギヤRにエンジン直達トルクを作用させることで、車両を走行させる。また、MGECU1bは、第1回転機MG1を正回転及び負トルクで回生駆動させることによって、二次電池25を充電している。尚、このハイブリッドシステム2−1では第1回転機MG1を正回転にしているが、このフェールセーフ走行においては、第1回転機MG1を負回転及び負トルクで力行駆動させることによって、二次電池25を放電させてもよい。
一方、MG2回転数の指令値Nmg2cに異常が発生している場合、走行制御部は、第2回転機MG2を休止させるに際して、ドグクラッチ60に対して解放指令を実施させ、かつ、第2回転機MG2に対する供給電流の指令値を減少させる。そして、この走行制御部は、その供給電流の指令値を最終的に0まで減少させ、第2回転機MG2をリダクション軸53から切り離してエンジン直達走行させる。ここで、指令値Nmg2cに異常が発生している場合には、第2回転機MG2を休止させる際のMG2回転数の指令値Nmg2cが0であったとしても、実MG2回転数Nmg2rが0にならない可能性がある。このため、その実MG2回転数Nmg2rの大きさ次第では、一方向クラッチ70が係合し、第2回転機MG2の引き摺りトルクに応じた抵抗がリングギヤRに働く可能性がある。また、指令値Nmg2cに異常が発生している場合には、実施例で説明したように、ドグクラッチ60が係合状態のまま固着している可能性もある。このため、このときには、第2回転機MG2の引き摺りトルクに応じた抵抗がリングギヤRに働く可能性がある。図19には、そのような抵抗が発生しているときの共線図の一例を表している。本図においては、第1回転機MG1を正回転及び負トルクで回生駆動させることによって、二次電池25を充電しているが、負回転及び負トルクで力行駆動させることによって、二次電池25を放電させてもよい。尚、指令値Nmg2cに異常が発生している場合には切離部が係合状態のときもあれば解放状態のときもあるので、本図では、切離部にクエスチョンマークを記している。
尚、この例示では、第2回転機MG2に対する供給電流の指令値を0に向けて減少させ、MG2トルクTmg2が発生しないように第2回転機MG2を休止させる。但し、走行制御部には、その供給電流の指令値を異常箇所が特定される前よりも減少させるだけでもよい。
走行制御部は、二次電池25のSOC(State of Charge)を監視し、このSOCが所定の閾値ξよりも大きくなっているのか否かを判定する(ステップST53)。
その閾値ξは、二次電池25への充電の可否を判定させるためのものである。SOCが所定の閾値ξよりも大きい場合には、二次電池25が満充電又は満充電に近い状態になっているので、二次電池25への充電を禁止させる。または、この場合には、二次電池25が満充電に近い状態になっているので、二次電池25への充電量を制限させる。このため、SOCが所定の閾値ξよりも大きい場合には、二次電池25の電力の受け入れによる第1回転機MG1の回生駆動が行えなくなるので、エンジン直達走行を継続させることができなくなり、フェールセーフ走行の航続距離が短くなってしまう。
そこで、走行制御部は、SOCが所定の閾値ξよりも大きい場合、第1回転機MG1の回転方向を判定する(ステップST54)。
第1回転機MG1の回転方向が正回転の場合、この第1回転機MG1は、回生駆動中であり、発電している。このため、SOCが所定の閾値ξよりも大きい二次電池25は、その第1回転機MG1で発電した電力を充電できなくなる。そこで、この場合の走行制御部は、第1回転機MG1を正回転から負回転に切り替えさせる(ステップST55)。つまり、この場合には、第1回転機MG1を回生駆動から力行駆動に切り替えることで、二次電池25への充電を止めて、この二次電池25を放電させる。
エンジン直達モードにおいては、負のMG1トルクTmg1をエンジントルクTeの反力トルクとして作用させるので、正のMG1トルクTmg1に切り替えることが難しい。このため、ここでは、第1回転機MG1の回転方向を切り替えて、二次電池25を放電させる。これにより、このハイブリッド車両においては、二次電池25の充電禁止状態又は充電量の制限状態を回避できるので、エンジン直達走行の持続が可能になる。よって、このハイブリッド車両においては、そのエンジン直達走行によるフェールセーフ走行の航続距離を延ばすことができる。
走行制御部は、そのMG1回転数Nmg1の変更に伴うイナーシャトルクを考慮して、エンジントルクTeを調整させる(ステップST56)。これにより、このハイブリッド車両においては、カウンタシャフト51における過度な駆動力の変化(つまりショック)の発生を抑えることができる。
図20には、第1回転機MG1を正回転から負回転に切り替えた場合の共線図の一例を表している。本図では、実MG2回転数Nmg2rが0になっているときを示している。但し、先に図19を用いて説明したように、第2回転機MG2が回転して引き摺り損失を発生させている場合もある。この場合には、その引き摺りトルクに応じた抵抗がリングギヤRに作用している。
これに対して、ステップST54で第1回転機MG1の回転方向が負回転であると判定された場合、この第1回転機MG1は、既に力行駆動中であり、二次電池25を放電させている。このため、走行制御部は、SOCが所定の閾値η(<ξ)よりも小さくなっているのか否かを判定する(ステップST57)。また、走行制御部は、ステップST53でSOCが所定の閾値ξ以下と判定された場合、ステップST56のエンジントルクTeの調整後にも、このステップST57に進む。
その閾値ηは、二次電池25の放電の可否を判定させるためのものである。SOCが所定の閾値ηよりも小さい場合には、二次電池25の放電を禁止させる又は放電量を制限させる。このため、SOCが所定の閾値ηよりも小さい場合には、二次電池25の電力の持ち出しによる第1回転機MG1の力行駆動が行えなくなるので、エンジン直達走行を継続させることができなくなり、フェールセーフ走行の航続距離が短くなってしまう。
そこで、走行制御部は、SOCが所定の閾値ηよりも小さい場合、第1回転機MG1の回転方向を判定する(ステップST58)。
第1回転機MG1の回転方向が負回転の場合には、この第1回転機MG1が力行駆動中であるが、SOCが所定の閾値ηよりも小さいので、二次電池25から第1回転機MG1に電力を供給できなくなる。そこで、この場合の走行制御部は、第1回転機MG1を負回転から正回転に切り替えさせる(ステップST59)。つまり、この場合には、第1回転機MG1を力行駆動から回生駆動に切り替えることで、二次電池25の放電を止めて、この二次電池25を充電させる。これにより、このハイブリッド車両においては、二次電池25の放電禁止状態又は放電量の制限状態を回避できるので、エンジン直達走行の持続が可能になる。よって、このハイブリッド車両においては、そのエンジン直達走行によるフェールセーフ走行の航続距離を延ばすことができる。
走行制御部は、そのMG1回転数Nmg1の変更に伴うイナーシャトルクを考慮して、エンジントルクTeを調整させる(ステップST60)。これにより、このハイブリッド車両においては、カウンタシャフト51における過度な駆動力の変化(つまりショック)の発生を抑えることができる。
図21には、第1回転機MG1を負回転から正回転に切り替えた場合の共線図の一例を表している。本図では、実MG2回転数Nmg2rが0になっているときを示している。但し、図20のときと同じように、第2回転機MG2が回転して引き摺り損失を発生させている場合もある。この場合には、その引き摺りトルクに応じた抵抗がリングギヤRに作用している。
走行制御部は、ステップST60でエンジントルクTeを調整した後、イグニッションがオフになったのか否かを判定する(ステップST61)。ここで、ステップST57でSOCが所定の閾値η以上と判定された場合は、二次電池25が充電も放電も可能な状態になっている。また、ステップST58で第1回転機MG1の回転方向が正回転であると判定された場合には、SOCが所定の閾値ηよりも小さいので、二次電池25の充電が必要とされるが、第1回転機MG1が既に回生駆動中であり、二次電池25への充電を行っている。このため、走行制御部は、これらの場合にも、このステップST61に進む。
イグニッションがオフになった場合には、この一連の演算処理を終了させる。これに対して、イグニッションがオンのままの場合、走行制御部は、ステップST53に戻り、これまでの演算処理を繰り返す。
このように、本変形例の車両の制御装置は、異常の発生している箇所が特定された場合、その異常箇所に応じたフェールセーフ走行を行うことができる。更に、この車両の制御装置は、二次電池25のSOCに応じて第1回転機MG1の回転方向を適宜切り替えることによって、そのフェールセーフ走行の航続距離を延ばすことができる。
[変形例4]
前述した実施例や変形例1及び2の車両の制御装置における異常箇所の特定については、他の構成のハイブリッドシステムにも適用可能である。そして、本変形例のハイブリッドシステムにおいても、その実施例等と同様の効果を得ることができる。以下に、他の構成のハイブリッドシステム2−2,2−3,2−4,2−5,2−6,2−7について簡単に説明する。
図22に示すハイブリッドシステム2−2は、実施例等のハイブリッドシステム2−1において、動力分割機構30とカウンタドライブギヤ41をそれぞれ動力分割機構130とカウンタドライブギヤ141に置き換えたものである。
ここで例示する動力分割機構130は、動力分割機構30と同じように、差動回転が可能な複数の回転要素を備え、その回転要素にエンジン回転軸11とMG1回転軸21とMG2回転軸22及び駆動輪Wとを個別に接続した差動装置である。ここではサンギヤSとリングギヤRと複数のピニオンギヤPとキャリアCとを有するシングルピニオン型の遊星歯車機構を動力分割機構130として例示するが、その動力分割機構130は、ダブルピニオン型やラビニヨ型の遊星歯車機構であってもよい。
この例示では、エンジン回転軸11とリングギヤRとを一体になって回転できるように連結し、かつ、MG1回転軸21とサンギヤSとを一体になって回転できるように連結する。
更に、この動力分割機構130においては、キャリアCに同心のカウンタドライブギヤ141を一体になって回転できるように連結する。そのカウンタドライブギヤ141には、ハイブリッドシステム2−1と同じように、カウンタドリブンギヤ42が噛み合わされている。よって、この動力分割機構130においては、キャリアCにMG2回転軸22や駆動輪Wが連結される。
このハイブリッドシステム2−2は、ハイブリッドシステム2−1と同じように、ドグクラッチ60と一方向クラッチ70とが並列に配置されており、第2回転機MG2をリダクション軸53から切り離したMG2休止モードを有する。図23には、MG2休止中の共線図の一例を表している。
ここで、このハイブリッドシステム2−2は、変形例3で説明したような異常箇所の特定後の演算処理を実施することができる。但し、このハイブリッドシステム2−2は、ハイブリッドシステム2−1とは異なり、第1回転機MG1が正回転のときに二次電池25を放電させ、第1回転機MG1が負回転のときに二次電池25を充電させる。このため、その演算処理は、変形例3で図17のフローチャートを用いて説明したものと多少異なる。そこで、このハイブリッドシステム2−2に適用される演算処理について、図24のフローチャートに基づき説明する。尚、図24のステップST71−ST72までの演算処理は、図17のステップST51−ST52までの演算処理と同じものなので、ここでの説明を省略する。また、それ以外の演算処理についても、変形例3と同じものは、省略又は簡略化して説明する。
走行制御部は、ステップST72でエンジン直達走行へと移行させた後、二次電池25のSOCが所定の閾値ηよりも小さくなっているのか否かを判定する(ステップST73)。その閾値ηは、変形例3で用いた閾値ηと同じものである。
走行制御部は、SOCが所定の閾値ηよりも小さい場合、第1回転機MG1の回転方向を判定する(ステップST74)。
第1回転機MG1の回転方向が正回転の場合、この第1回転機MG1は、力行駆動中であり、二次電池25の電力を利用している。このため、SOCが所定の閾値ηよりも小さい二次電池25は、第1回転機MG1に電力を供給できなくなる。そこで、この場合の走行制御部は、第1回転機MG1を正回転から負回転に切り替えさせる(ステップST75)。つまり、この場合には、第1回転機MG1を力行駆動から回生駆動に切り替えることで、二次電池25の放電を止めて、この二次電池25を充電させる。これにより、このハイブリッド車両においては、変形例3と同じように、エンジン直達走行によるフェールセーフ走行の航続距離を延ばすことができる。
走行制御部は、そのMG1回転数Nmg1の変更に伴うイナーシャトルクを考慮して、エンジントルクTeを調整させる(ステップST76)。これにより、このハイブリッド車両においては、変形例3と同じように、ショックの発生が抑えられる。
これに対して、ステップST74で第1回転機MG1の回転方向が負回転であると判定された場合、この第1回転機MG1は、既に回生駆動中であり、二次電池25を充電している。このため、走行制御部は、SOCが所定の閾値ξ(>η)よりも大きくなっているのか否かを判定する(ステップST77)。その閾値ξは、変形例3で用いた閾値ξと同じものである。また、走行制御部は、ステップST73でSOCが所定の閾値η以上と判定された場合、ステップST76のエンジントルクTeの調整後にも、このステップST77に進む。
走行制御部は、SOCが所定の閾値ξよりも大きい場合、第1回転機MG1の回転方向を判定する(ステップST78)。
第1回転機MG1の回転方向が負回転の場合、SOCが所定の閾値ξよりも大きい二次電池25は、その第1回転機MG1で発電した電力を充電できなくなる。そこで、この場合の走行制御部は、第1回転機MG1を負回転から正回転に切り替えさせる(ステップST79)。つまり、この場合には、第1回転機MG1を回生駆動から力行駆動に切り替えることで、二次電池25への充電を止めて、この二次電池25を放電させる。
走行制御部は、そのMG1回転数Nmg1の変更に伴うイナーシャトルクを考慮して、エンジントルクTeを調整させる(ステップST80)。これにより、このハイブリッド車両においては、変形例3と同じように、ショックの発生が抑えられる。
走行制御部は、ステップST80でエンジントルクTeを調整した後、イグニッションがオフになったのか否かを判定する(ステップST81)。ここで、ステップST77でSOCが所定の閾値ξ以下と判定された場合は、二次電池25が充電も放電も可能な状態になっている。また、ステップST78で第1回転機MG1の回転方向が正回転であると判定された場合には、SOCが所定の閾値ξよりも大きいので、二次電池25の放電が必要とされるが、第1回転機MG1が既に力行駆動中であり、二次電池25の放電を行っている。このため、走行制御部は、これらの場合にも、このステップST81に進む。
イグニッションがオフになった場合には、この一連の演算処理を終了させる。これに対して、イグニッションがオンのままの場合、走行制御部は、ステップST73に戻り、これまでの演算処理を繰り返す。
図25に示すハイブリッドシステム2−3は、エンジン回転軸211とMG1回転軸221とMG2回転軸222とを同心に配置した単軸式のものである。このハイブリッドシステム2−3においては、エンジンENG、第1回転機MG1、第2回転機MG2の順に配置している。
このハイブリッドシステム2−3は、各動力源(エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2)の相互間における動力伝達を可能にし、かつ、夫々の動力源と駆動輪Wとの間での動力伝達も可能になるように、各動力源が個別に接続された動力分割機構230を設けている。
その動力分割機構230は、第1回転機MG1と第2回転機MG2との間に配置する。この動力分割機構230は、差動回転が可能な複数の回転要素を備え、その回転要素にエンジン回転軸211とMG1回転軸221とMG2回転軸222と駆動輪Wとを個別に接続した差動装置である。この動力分割機構230は、2つの遊星歯車機構の組み合わせにより構成される。その遊星歯車機構としては、シングルピニオン型、ダブルピニオン型、ラビニヨ型等が考えられる。この例示の動力分割機構230は、シングルピニオン型の第1遊星歯車機構231と、同じくシングルピニオン型の第2遊星歯車機構232と、が同心に配置されたものである。
第1遊星歯車機構231においては、複数のピニオンギヤP1を保持するキャリアC1がエンジン回転軸211と一体になって回転できるように連結されている。キャリア軸235には、エンジン回転軸211の他にオイルポンプOPが接続されている。また、この第1遊星歯車機構231のサンギヤS1は、MG1回転軸221と一体になって回転できるように連結されている。
一方、第2遊星歯車機構232においては、複数のピニオンギヤP2を保持するキャリアC2が回転不能な状態で筐体(図示略)等に固定されている。また、この第2遊星歯車機構232のサンギヤS2には、MG2回転軸222が連結されている。そのサンギヤS2と第2回転機MG2との間には、制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とが並列に配置される。つまり、このハイブリッドシステム2−3においては、第2回転機MG2と当該第2回転機MG2側から見た駆動輪W側の動力伝達軸(サンギヤ軸236)との間に制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを並列に配置している。その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、このハイブリッドシステム2−3において、MG2休止モードで第2回転機MG2をサンギヤ軸236から切り離す切離部となる。
その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、先に例示した実施例のハイブリッドシステム2−1等と同じものであり、この例示においても各々噛み合い式係合装置(ドグクラッチ260)と一方向クラッチ270とを利用する。この例示のドグクラッチ260は、MG2回転軸222と一体になって回転する第1係合要素261と、サンギヤ軸236と一体になって回転する第2係合要素262と、アクチュエータ(図示略)によって動作させられる第3係合要素263と、を備える。第3係合要素263は、実施例等で先に例示した第3係合要素63と同じものであり、このドグクラッチ260の係合動作と解放動作を担っている。また、一方向クラッチ270は、MG2回転軸222と一体になって回転する第1係合要素271と、サンギヤ軸236と一体になって回転する第2係合要素272と、を備える。
この第1遊星歯車機構231と第2遊星歯車機構232は、それぞれのリングギヤR1,R2同士で連結する。そのリングギヤR1,R2は、一体になって回転する。また、このリングギヤR1,R2には、同心に配置されたカウンタドライブギヤ241が一体になって回転できるように連結されている。
そのカウンタドライブギヤ241は、平行にずらして配置された回転軸(カウンタシャフト251)を有するカウンタドリブンギヤ242と噛み合い状態にある。そのカウンタシャフト251の軸上には、ドライブピニオンギヤ243が固定されている。そのドライブピニオンギヤ243は、差動装置244のデフリングギヤ245と噛み合い状態にある。差動装置244は、左右の車軸(駆動軸)252を介して駆動輪Wに連結されている。
このハイブリッドシステム2−3は、並列に配置されているドグクラッチ260と一方向クラッチ270とによって、第2回転機MG2をサンギヤ軸236から切り離したMG2休止モードでの走行が可能になる。
ここで、このハイブリッドシステム2−3は、変形例3で説明したものと同じ異常箇所の特定後の演算処理を実施することができ、その変形例3と同様の効果を得ることができる。
図26に示すハイブリッドシステム2−4は、図25のハイブリッドシステム2−3と同じ単軸式のものである。このハイブリッドシステム2−4は、ハイブリッドシステム2−3において、第1回転機MG1と第2回転機MG2の配置を変更し、かつ、動力分割機構230とカウンタドライブギヤ241と制御可能な動力断接装置(ドグクラッチ260)と制御不要な動力断接装置(一方向クラッチ270)をそれぞれ動力分割機構330とカウンタドライブギヤ341とドグクラッチ360と一方向クラッチ370に置き換えたものである。この例示では、エンジンENG、第2回転機MG2、動力分割機構330、第1回転機MG1の順に配置している。
動力分割機構330は、差動回転が可能な複数の回転要素を備え、その回転要素にエンジン回転軸211とMG1回転軸221とMG2回転軸222と駆動輪Wを接続した差動装置である。ここではサンギヤSとリングギヤRと複数のピニオンギヤPとキャリアCとを有するシングルピニオン型の遊星歯車機構を動力分割機構330として例示するが、その動力分割機構330は、ダブルピニオン型やラビニヨ型の遊星歯車機構であってもよい。
サンギヤSには、MG1回転軸221が一体になって回転できるように連結されている。また、キャリアCには、同心のカウンタドライブギヤ341が一体になって回転できるように連結されている。そのカウンタドライブギヤ341には、カウンタドリブンギヤ242が噛み合わされている。よって、この動力分割機構330においては、キャリアCに駆動輪Wが連結される。
また、リングギヤRには、エンジン回転軸211とMG2回転軸222とが連結される。エンジン回転軸211は、リングギヤ軸337を介してリングギヤRが一体になって回転できるように連結される。そのリングギヤ軸337には、オイルポンプOPも接続されている。一方、MG2回転軸222は、並列に配置された制御可能な動力断接装置(ドグクラッチ360)と制御不要な動力断接装置(一方向クラッチ370)とを介してリングギヤ軸337に連結される。つまり、このハイブリッドシステム2−4においては、第2回転機MG2と当該第2回転機MG2側から見た駆動輪W側の動力伝達軸(リングギヤ軸337)との間に制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを並列に配置している。その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、このハイブリッドシステム2−4において、MG2休止モードで第2回転機MG2をリングギヤ軸337から切り離す切離部となる。
この例示のドグクラッチ360は、MG2回転軸222と一体になって回転する第1係合要素361と、リングギヤ軸337と一体になって回転する第2係合要素362と、アクチュエータ(図示略)によって動作させられる第3係合要素363と、を備える。第3係合要素363は、実施例等で先に例示した第3係合要素63等と同じものであり、このドグクラッチ360の係合動作と解放動作を担っている。また、一方向クラッチ370は、MG2回転軸222と一体になって回転する第1係合要素371と、リングギヤ軸337と一体になって回転する第2係合要素372と、を備える。
図27は、エンジントルクTeとMG2トルクTmg2とを用いた複合モードでハイブリッド走行しているときの共線図の一例を表している。その際には、キャリアCにエンジントルクTeとMG2トルクTmg2とに応じた直達トルクが作用している。また、このハイブリッドシステム2−4は、図25のハイブリッドシステム2−3と同じように、並列に配置されているドグクラッチ360と一方向クラッチ370とによって、第2回転機MG2をリングギヤ軸337から切り離したMG2休止モードでの走行が可能になる。図28には、MG2休止中の共線図の一例を表している。
ここで、このハイブリッドシステム2−4は、図22のハイブリッドシステム2−2と同じように、第1回転機MG1が正回転のときに二次電池25を放電させ、第1回転機MG1が負回転のときに二次電池25を充電させる。このため、このハイブリッドシステム2−4においては、図24のフローチャートで説明したものと同じ異常箇所の特定後の演算処理を実施することができ、これと同様の効果を得ることができる。
図29に示すハイブリッドシステム2−5は、図25のハイブリッドシステム2−3と同じ単軸式のものであり、エンジン回転軸411とMG1回転軸421とMG2回転軸422とを同心に配置している。このハイブリッドシステム2−5は、そのハイブリッドシステム2−3と同じように、エンジンENG、第1回転機MG1、第2回転機MG2の順に配置している。更に、このハイブリッドシステム2−5は、そのハイブリッドシステム2−3と同じように、第1回転機MG1と第2回転機MG2との間に動力分割機構430を配置している。
その動力分割機構430は、第1回転機MG1と第2回転機MG2との間に配置する。この動力分割機構430は、差動回転が可能な複数の回転要素を備え、その回転要素にエンジン回転軸411とMG1回転軸421とMG2回転軸422と駆動輪Wとを個別に接続した差動装置である。この動力分割機構430は、2つの遊星歯車機構の組み合わせにより構成される。その遊星歯車機構としては、シングルピニオン型、ダブルピニオン型、ラビニヨ型等が考えられる。この例示の動力分割機構430は、シングルピニオン型の第1遊星歯車機構431と、同じくシングルピニオン型の第2遊星歯車機構432と、が同心に配置されたものである。
第1遊星歯車機構431においては、複数のピニオンギヤP1を保持するキャリアC1がエンジン回転軸411と一体になって回転できるように連結されている。また、この第1遊星歯車機構431のサンギヤS1は、MG1回転軸421と一体になって回転できるように連結されている。また、この第1遊星歯車機構431のリングギヤR1は、筐体(図示略)等に固定され、回転不能な状態になっている。
一方、第2遊星歯車機構432においては、複数のピニオンギヤP2を保持するキャリアC2が回転不能な状態で筐体等に固定されている。また、この第2遊星歯車機構432のサンギヤS2には、MG2回転軸422が連結されている。そのサンギヤS2と第2回転機MG2との間には、制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とが並列に配置される。つまり、このハイブリッドシステム2−5においては、第2回転機MG2と当該第2回転機MG2側から見た駆動輪W側の動力伝達軸(サンギヤ軸436)との間に制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを並列に配置している。その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、このハイブリッドシステム2−5において、MG2休止モードで第2回転機MG2をサンギヤ軸436から切り離す切離部となる。
その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、先に例示した実施例のハイブリッドシステム2−1等と同じものであり、この例示においても各々噛み合い式係合装置(ドグクラッチ460)と一方向クラッチ470とを利用する。この例示のドグクラッチ460は、MG2回転軸422と一体になって回転する第1係合要素461と、サンギヤ軸436と一体になって回転する第2係合要素462と、アクチュエータ(図示略)によって動作させられる第3係合要素463と、を備える。第3係合要素463は、実施例等で先に例示した第3係合要素63と同じものであり、このドグクラッチ460の係合動作と解放動作を担っている。また、一方向クラッチ470は、MG2回転軸422と一体になって回転する第1係合要素471と、サンギヤ軸436と一体になって回転する第2係合要素472と、を備える。
この第1遊星歯車機構431と第2遊星歯車機構432は、それぞれのキャリアC1とリングギヤR2とによって互いに連結する。そのキャリアC1とリングギヤR2には、同心に配置されたカウンタドライブギヤ441が一体になって回転できるように連結されている。
但し、そのキャリアC1とリングギヤR2及びカウンタドライブギヤ441との間には、例えばHVECU1cによって係合動作と解放動作が制御される動力断接装置が配置されている。その動力断接装置には、サンギヤS2と第2回転機MG2との間における制御可能な動力断接装置と同じように、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)や摩擦係合装置(摩擦クラッチ)等を利用する。この例示では、摩擦クラッチ433を用いている。よって、このハイブリッドシステム2−5においては、その摩擦クラッチ433を解放させることによって、第2回転機MG2の動力のみで車両を走行させることができる。また、このハイブリッドシステム2−5においては、その摩擦クラッチ433を係合させることによって、全ての動力源(エンジンENGと第1回転機MG1と第2回転機MG2)を用いて車両を走行させることができる。
カウンタドライブギヤ441は、平行にずらして配置された回転軸(カウンタシャフト451)を有するカウンタドリブンギヤ442と噛み合い状態にある。そのカウンタシャフト451の軸上には、ドライブピニオンギヤ443が固定されている。そのドライブピニオンギヤ443は、差動装置444のデフリングギヤ445と噛み合い状態にある。差動装置444は、左右の車軸(駆動軸)452を介して駆動輪Wに連結されている。
このハイブリッドシステム2−5は、並列に配置されているドグクラッチ460と一方向クラッチ470とによって、第2回転機MG2をサンギヤ軸436から切り離したMG2休止モードでの走行が可能になる。
ここで、このハイブリッドシステム2−5は、MG2回転数センサ24のみに異常が生じていると判定された場合又はMG2回転数センサ24の異常とドグクラッチ460の誤解放とが同時に発生していると判定された場合に、その異常箇所の特定後の演算処理を変形例3で説明したものと同じように実施することで、その変形例3と同様の効果を得ることができる。
図30に示すハイブリッドシステム2−6は、エンジンENGと1つの回転機MGとを動力源とするものであり、そのエンジン回転軸511とMG回転軸521とを同心に配置している。
エンジン回転軸511は、ENGECU1aによって係合動作と解放動作が制御される動力断接装置を介して動力伝達軸536に連結される。その動力断接装置には、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)や摩擦係合装置(摩擦クラッチ)等を利用する。この例示では、摩擦クラッチ591を用いている。また、動力伝達軸536は、変速機592の入力軸592aに連結され、この変速機592等を介して左右の車軸(駆動軸)552に接続される。その変速機592は、自動変速機でもよく手動変速機でもよい。
回転機MGは、摩擦クラッチ591と変速機592の間に配置し、そのMG回転軸521を当該回転機MG側から見た駆動輪W側の動力伝達軸536に連結する。そのMG回転軸521と動力伝達軸536との間には、制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とが並列に配置される。その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、このハイブリッドシステム2−6において、MG休止モードで回転機MGを動力伝達軸536から切り離す切離部となる。
その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、先に例示した実施例のハイブリッドシステム2−1等と同じものであり、この例示においても各々噛み合い式係合装置(ドグクラッチ560)と一方向クラッチ570とを利用する。この例示のドグクラッチ560は、MG回転軸521と一体になって回転する第1係合要素561と、動力伝達軸536と一体になって回転する第2係合要素562と、アクチュエータ(図示略)によって動作させられる第3係合要素563と、を備える。第3係合要素563は、実施例等で先に例示した第3係合要素63と同じものであり、このドグクラッチ560の係合動作と解放動作を担っている。また、一方向クラッチ570は、MG回転軸521と一体になって回転する第1係合要素571と、動力伝達軸536と一体になって回転する第2係合要素572と、を備える。
このハイブリッドシステム2−6は、その並列に配置されているドグクラッチ560と一方向クラッチ570とによって、回転機MGを動力伝達軸536から切り離したMG休止モードでの走行が可能になる。
ここで、このハイブリッドシステム2−6は、実施例等と同じように異常箇所を特定することができる。このハイブリッドシステム2−6では、その異常箇所の特定を行うに際して、回転機MGに対する指令値Nmgc(実施例等における指令値Nmg2cに相当)と、MG回転数センサ524による回転機MGの回転数(MG回転数)の検出値Nmgs(実施例等における検出値Nmg2sに相当)と、車軸552の回転数等に基づいたMG回転数の推定値Nmge(実施例等における推定値Nmg2eに相当)と、を用いる。尚、そのMG回転数センサ524は、MG回転軸521とドグクラッチ560の第1係合要素561と一方向クラッチ570の第1係合要素571の内の少なくとも1つの回転数を検出することで、MG回転数の検出を行うものである。
更に、このハイブリッドシステム2−6は、MG回転数センサ524のみに異常が生じていると判定された場合又はMG回転数センサ524の異常とドグクラッチ560の誤解放とが同時に発生していると判定された場合に、その異常箇所の特定後の演算処理を変形例3で説明したものと同じように実施することで、その変形例3と同様の効果を得ることができる。
図31に示すハイブリッドシステム2−7は、図30のハイブリッドシステム2−6と同じエンジンENGと1つの回転機MGとを動力源とするものであるが、その回転機MGを変速機692と駆動輪Wとの間に配置した点でハイブリッドシステム2−6とは異なる。
エンジン回転軸611は、動力断接装置691を介して変速機692の入力軸692aに連結される。その動力断接装置691とは、トルクコンバータ又は例えばHVECU1cによって係合動作と解放動作が制御される制御クラッチ(摩擦クラッチ等)などのことである。
ここで例示する変速機692は、自動変速機である。この変速機692の出力軸(図示略)には、ドライブピニオンギヤ643が固定されている。そのドライブピニオンギヤ643は、差動装置644のデフリングギヤ645と噛み合い状態にある。差動装置644は、左右の車軸(駆動軸)652a,652bを介して駆動輪Wに連結されている。
このハイブリッドシステム2−7は、回転機MGと当該回転機MG側から見た駆動輪W側の動力伝達軸636との間に制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを並列に配置している。その動力伝達軸636は、差動装置644の筐体又はデフリングギヤ645と一体になって回転する。つまり、このハイブリッドシステム2−7においては、差動装置644の筐体又はデフリングギヤ645と回転機MGとの間に制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを並列に配置している。その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、このハイブリッドシステム2−7において、MG休止モードで回転機MGを動力伝達軸636から切り離す切離部となる。
その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、先に例示した実施例のハイブリッドシステム2−1等と同じものであり、この例示においても各々噛み合い式係合装置(ドグクラッチ660)と一方向クラッチ670とを利用する。この例示のドグクラッチ660は、MG回転軸621と一体になって回転する第1係合要素661と、動力伝達軸636と一体になって回転する第2係合要素662と、アクチュエータ(図示略)によって動作させられる第3係合要素663と、を備える。第3係合要素663は、実施例等で先に例示した第3係合要素63と同じものであり、このドグクラッチ660の係合動作と解放動作を担っている。また、一方向クラッチ670は、MG回転軸621と一体になって回転する第1係合要素671と、動力伝達軸636と一体になって回転する第2係合要素672と、を備える。その動力伝達軸636は、差動装置644の筐体又はデフリングギヤ645と一体になって回転する。
このハイブリッドシステム2−7は、その並列に配置されているドグクラッチ660と一方向クラッチ670とによって、回転機MGを動力伝達軸636から切り離したMG休止モードでの走行が可能になる。
ここで、このハイブリッドシステム2−7は、図30のハイブリッドシステム2−6と同じように異常箇所を特定することができる。そして、このハイブリッドシステム2−7は、MG回転数センサ624のみに異常が生じていると判定された場合又はMG回転数センサ624の異常とドグクラッチ660の誤解放とが同時に発生していると判定された場合に、その異常箇所の特定後の演算処理を変形例3で説明したものと同じように実施することで、その変形例3と同様の効果を得ることができる。
[変形例5]
前述した実施例や変形例1及び2の車両の制御装置における異常箇所の特定については、回転機MGのみを動力源とする車両(電気自動車3)にも適用可能である。そして、その電気自動車3においても、その実施例等と同様の効果を得ることができる。その電気自動車3の一例を図32に示す。
この電気自動車3において、MG回転軸721は、並列に配置された制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置とを介して、回転機MG側から見た駆動輪W側の動力伝達軸736に連結される。
その動力伝達軸736には、ドライブピニオンギヤ743が固定されている。そのドライブピニオンギヤ743は、差動装置744のデフリングギヤ745と噛み合い状態にある。差動装置744は、左右の車軸(駆動軸)752を介して駆動輪Wに連結されている。
また、その制御可能な動力断接装置と制御不要な動力断接装置は、先に例示した実施例のハイブリッドシステム2−1等と同じものであり、この例示においても各々噛み合い式係合装置(ドグクラッチ760)と一方向クラッチ770とを利用する。この例示のドグクラッチ760は、MG回転軸721と一体になって回転する第1係合要素761と、動力伝達軸736と一体になって回転する第2係合要素762と、アクチュエータ(図示略)によって動作させられる第3係合要素763と、を備える。第3係合要素763は、実施例等で先に例示した第3係合要素63と同じものであり、このドグクラッチ760の係合動作と解放動作を担っている。また、一方向クラッチ770は、MG回転軸721と一体になって回転する第1係合要素771と、動力伝達軸736と一体になって回転する第2係合要素772と、を備える。
この電気自動車3は、並列に配置されているドグクラッチ760と一方向クラッチ770とによって、回転機MGを動力伝達軸736から切り離したMG休止モードでの走行(惰性走行)が可能になる。
ここで、この電気自動車3は、実施例のハイブリッドシステム2−1等と同じように異常箇所を特定することができる。この電気自動車3では、その異常箇所の特定を行うに際して、回転機MGに対する指令値Nmgc(実施例等における指令値Nmg2cに相当)と、MG回転数センサ724による回転機MGの回転数(MG回転数)の検出値Nmgs(実施例等における検出値Nmg2sに相当)と、車軸752の回転数等に基づいたMG回転数の推定値Nmge(実施例等における推定値Nmg2eに相当)と、を用いる。尚、そのMG回転数センサ724は、MG回転軸721とドグクラッチ760の第1係合要素761と一方向クラッチ770の第1係合要素771の内の少なくとも1つの回転数を検出することで、MG回転数の検出を行うものである。また、例えば車軸752の回転数は、車軸回転数センサ781によって検出される。