JP2022043942A - 油圧制御弁の異常原因特定装置 - Google Patents

油圧制御弁の異常原因特定装置 Download PDF

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弘一 奥田
Koichi Okuda
有記 牧野
Yuki Makino
真史 山本
Masashi Yamamoto
淳 田端
Atsushi Tabata
克己 河野
Katsumi Kono
慎一 伊藤
Shinichi Ito
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Abstract

【課題】ソレノイドの短絡以外の異常原因を特定できる電磁弁の異常原因特定装置を提供する。【解決手段】油圧制御回路56に設けられ、PWM制御信号のデューティー比に応じて駆動電流ic2が制御されるソレノイド166を備える電磁弁SL2の異常原因特定装置300であって、電磁弁SL2に異常が発生した場合に、ソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形、例えば前記PWM制御信号の波形変化に応じて発生する電流波形の振幅Aの振幅値A1~A4に基づいて異常の原因(ブースト異常、エア吸い異常、一時スティック異常、完全スティック異常)を特定する。このように、逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形が異なることに基づいて、電磁弁SL2におけるソレノイド166の短絡以外の異常原因が特定することができる。【選択図】図15

Description

本発明は、車両用油圧制御回路に設けられた油圧制御弁の異常原因特定装置に関する。
デューティー比に応じた制御信号によりソレノイドの駆動電流が制御される油圧制御弁において、駆動電流をオフした場合にソレノイドで発生する逆起電力に起因する駆動電流が消滅するまでの時間が経過した後に流した試験電流の出力中に検出した電流値に基づいて、ソレノイドの短絡を正確に判断する油圧制御弁の異常原因特定装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された油圧制御弁の異常原因特定装置がそれである。
特開2004-149113号公報
特許文献1に記載された油圧制御弁の異常原因特定装置では、ソレノイドの短絡しか判断できなかった。そのため、ソレノイドの短絡以外の油圧制御弁の異常原因を特定するうえで改善の余地があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ソレノイドの短絡以外の異常原因を特定できる油圧制御弁の異常原因特定装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、車両用油圧制御回路に設けられ、制御信号のデューティー比に応じて駆動電流が制御されるソレノイドを備える油圧制御弁の、異常原因特定装置であって、前記油圧制御弁に異常が発生した場合に、前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形に基づいて前記異常の原因を特定することにある。
第1発明の油圧制御弁の異常原因特定装置によれば、前記油圧制御弁に異常が発生した場合に、前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形に基づいて前記異常の原因が特定される。このように、ソレノイドで発生する逆起電力に起因する駆動電流の波形が異なることに基づいて、油圧制御弁におけるソレノイドの短絡以外の異常原因を特定することができる。
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記逆起電力に起因する前記駆動電流の波形は、前記制御信号の波形変化に応じて発生する電流波形の振幅であることにある。このように、ソレノイドの駆動電流の波形における振幅に基づいて油圧制御弁の異常原因を特定することができる。
第3発明の要旨とするところは、第1発明において、前記逆起電力に起因する前記駆動電流の波形は、前記制御信号の波形変化に応じて発生する電流波形の最大値であることにある。このように、ソレノイドの駆動電流の波形における最大値に基づいて油圧制御弁の異常原因を特定することができる。
第4発明の要旨とするところは、第1発明において、前記逆起電力に起因する前記駆動電流の波形は、前記制御信号の波形変化に応じて発生する電流波形の最小値であることにある。このように、ソレノイドの駆動電流の波形における最小値に基づいて油圧制御弁の異常原因を特定することができる。
第5発明の要旨とするところは、第2発明乃至第4発明のいずれか1の発明において、前記逆起電力に起因する前記駆動電流の波形は、定電流域におけるものであることにある。このように、定電流域における逆起電力に起因するソレノイドの駆動電流の波形に基づいて油圧制御弁の異常原因を特定することができる。定電流域での駆動電流の波形は、そうでない場合に比較して同じ波形が繰り返し安定して取得できるため、油圧制御弁の異常原因の特定精度を向上させることができる。
第6発明の要旨とするところは、第1発明において、前記逆起電力に起因する前記駆動電流の波形は、予め定められた所定の期間における前記駆動電流の電流値分布であることにある。このように、ソレノイドの駆動電流の電流値分布に基づいて、油圧制御弁の異常原因を特定することができる。
第7発明の要旨とするところは、第1発明において、前記逆起電力に起因する前記駆動電流の波形は、前記油圧制御弁のプランジャが停止する場合に発生する前記逆起電力に起因する波形変化であることにある。このように、プランジャが停止する場合に発生する逆起電力に起因する駆動電流の波形変化に基づいて油圧制御弁の異常原因を特定することができる。
第8発明の要旨とするところは、第7発明において、前記逆起電力に起因する波形変化が想定よりも早い場合は、前記異常の原因がブースト異常であると特定される。このように、逆起電力に起因する波形変化が想定よりも早い場合には、異常原因としてソレノイドの短絡以外のブースト異常が特定される。
第9発明の要旨とするところは、第7発明において、前記逆起電力に起因する波形変化が想定よりも遅い場合は、前記異常の原因がエア吸い異常であると特定される。このように、逆起電力に起因する波形変化が想定よりも遅い場合には、異常原因としてソレノイドの短絡以外のエア吸い異常が特定される。
第10発明の要旨とするところは、第1発明乃至第9発明のいずれか1の発明において、前記ソレノイドの前記駆動電流の電流値毎に、前記異常の原因が特定されることにある。ソレノイドの駆動電流の電流値の大きさに応じて駆動電流の波形が異なるため、駆動電流の電流値毎に油圧制御弁の異常原因が特定されることで、異常原因の特定精度を向上させることができる。
第11発明の要旨とするところは、第1発明乃至第10発明のいずれか1の発明において、(a)前記油圧制御弁は、車両用変速機の変速を制御する制御油圧を出力し、(b)前記変速の種類毎に、前記異常の原因が特定されることにある。変速の種類毎に使用される油圧制御弁におけるソレノイドの駆動電流の波形が異なるため、変速の種類毎に油圧制御弁の異常原因が特定されることで、異常原因の特定精度を向上させることができる。
第12発明の要旨とするところは、第1発明乃至第11発明のいずれか1の発明において、前記異常の原因の特定は、人工知能を利用した教師あり学習で実現された異常原因特定モデルが使用されることにある。このように、人工知能を利用した異常原因特定モデルが使用されて油圧制御弁の異常原因が特定されることから、異常原因の特定精度を向上させることができる。
本発明の実施例1が適用される車両の概略構成を説明する図であるとともに、車両における各種制御のための制御機能の要部を説明する図である。 有段変速部の変速制御に用いる変速線図と、エンジン走行とモータ走行との切替制御に用いる動力源切替マップと、を示す図であって、それぞれの関係を示す図である。 有段変速部の変速制御を行う油圧制御回路の構成の一部を例示する油圧回路図である。 有段変速部における各変速段の形成に用いられる係合装置の作動状態の組み合わせと、各変速段におけるソレノイドパターンの組み合わせと、を併せて示す作動図表である。 動力伝達装置において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。 油圧制御回路に設けられた電磁弁の構成を説明する断面図である。 電磁弁における駆動電流と出力圧との関係を示す弁特性の例を示す図である。 有段変速部の変速時における電磁弁の作動例を説明するタイムチャートであって、クラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置の係合過渡期での電磁弁における油圧指令値である駆動電流の変化を例示するものである。 有段変速部の変速異常の一例を説明するタイムチャートである。 図6に示す電磁弁の駆動回路の概略構成を説明する図であるとともに、その駆動回路に対する制御方法を説明する図である。 図10に示す駆動回路がPWM制御信号によりオンオフ制御された場合の駆動電流の瞬時電流及びその瞬時電流の駆動周期毎の平均電流の時間変化を説明する図である。 電磁弁が備えるソレノイドのインダクタンス特性を説明する図である。 有段変速部において第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されるクラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置であるクラッチの断接状態を制御する電磁弁が出力する油圧の実際値の変化及びエンジン回転速度の吹き量の変化の例示であって、(a)は電磁弁が正常である場合を示し、(b)は電磁弁がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。 図13に示す各場合における逆起電力について説明する図である。 図13に示す各場合における電磁弁を駆動する駆動電流の実電流の波形について説明する図であって、(a)は電磁弁が正常である場合を示し、(b)は電磁弁がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。 油圧制御回路に設けられた電磁弁で異常が発生した場合に、その異常原因を特定する異常原因特定モデルの一例を示す図である。 図16に示す異常原因特定モデルで異常原因を特定する機械学習が実施される学習領域区分の例である。 電磁弁に異常が発生した場合における異常原因特定装置での制御作動の要部を説明するフローチャートである。 異常原因特定装置により特定された電磁弁の異常に対する対応方法の例について説明する図である。 図13に示す各場合における電磁弁を駆動する駆動電流の実電流の電流値分布を説明する図であって、(a)は電磁弁が正常である場合を示し、(b)は電磁弁がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。 図13に示す各場合における電磁弁を駆動する駆動電流の実電流の波形変化について説明する図であって、(a)は電磁弁が正常である場合を示し、(b)は電磁弁がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の実施例1が適用される車両10の概略構成を説明する図であるとともに、車両10における各種制御のための制御機能の要部を説明する図である。
車両10は、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2を備える。動力伝達装置14は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース16内において共通の回転中心線上に直列に配設された、電気式無段変速部18及び機械式有段変速部20等を備える。以下、「電気式無段変速部18」及び「機械式有段変速部20」を、それぞれ単に「無段変速部18」及び「有段変速部20」と記す。また、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。無段変速部18は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン12に連結されている。有段変速部20は、無段変速部18の出力側に連結されている。動力伝達装置14は、有段変速部20の出力回転部材である出力軸22に連結された差動歯車装置24、差動歯車装置24に連結された一対の車軸26等を備える。動力伝達装置14において、エンジン12や第2回転機MG2から出力される動力は、有段変速部20や差動歯車装置24等を介して車両10が備える駆動輪28へ伝達される。無段変速部18や有段変速部20等は上記共通の回転中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその回転中心線の下半分が省略されている。上記共通の回転中心線は、エンジン12のクランク軸、後述する連結軸34などの回転中心線である。
エンジン12は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する機関であって、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置120によって車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等のエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。本実施例では、エンジン12は、トルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく無段変速部18に連結されている。
第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられた蓄電装置としてのバッテリ54に接続されている。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、後述する電子制御装置120によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1の出力トルクであるMG1トルクTg及び第2回転機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、例えば正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。
無段変速部18は、第1回転機MG1と、エンジン12の動力を第1回転機MG1及び無段変速部18の出力回転部材である中間伝達部材30に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構32と、を備える。中間伝達部材30には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。無段変速部18は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構32の差動状態が制御される電気式無段変速機である。第1回転機MG1は、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Neを制御可能な回転機である。第2回転機MG2は、駆動トルクを発生することが可能な動力源として機能する回転機である。車両10は、走行用の動力源として、エンジン12及び第2回転機MG2を備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置14は、動力源の動力を駆動輪28へ伝達する。
差動機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備える。キャリアCA0には連結軸34を介してエンジン12が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構32において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。
有段変速部20は、中間伝達部材30と駆動輪28との間の動力伝達経路PTの一部を構成する有段変速機としての機械式変速機構、つまり無段変速部18と駆動輪28との間の動力伝達経路PTの一部を構成する機械式変速機構である。中間伝達部材30は、有段変速部20の入力回転部材としても機能する。中間伝達部材30には第2回転機MG2が一体回転するように連結されているので、又は、無段変速部18の入力側にはエンジン12が連結されているので、有段変速部20は、動力源(第2回転機MG2又はエンジン12)と駆動輪28との間の動力伝達経路PTの一部を構成する変速機である。中間伝達部材30は、駆動輪28に動力源の動力を伝達するための伝達部材である。有段変速部20は、例えば第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の複数組の遊星歯車装置と、一方向クラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置と、を備える、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、或いは、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式摩擦係合装置である。係合装置CBは、車両10に備えられた油圧制御回路56から出力される調圧された各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2(後述する図3参照)によりそれぞれのトルク容量が変化させられる。これにより、係合装置CBは、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。なお、油圧制御回路56は、本発明における「車両用油圧制御回路」に相当する。
有段変速部20は、第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBや一方向クラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、中間伝達部材30、トランスアクスルケース16、或いは出力軸22に連結されている。第1遊星歯車装置36の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置38の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
有段変速部20は、複数の係合装置CBの作動状態の組み合わせ(後述する図4参照)によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちいずれかのギヤ段が形成される有段変速機である。つまり、有段変速部20は、複数の係合装置CBのいずれかが係合されることで、ギヤ段が切り替えられるすなわち変速が実行される。有段変速部20は、複数のギヤ段の各々が形成される、有段式の車両用の自動変速機である。本実施例では、有段変速部20にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、有段変速部20の入力回転部材の回転速度である有段変速部20の入力回転速度であって、中間伝達部材30の回転速度と同値であり、また、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmと同値である。AT入力回転速度Niは、MG2回転速度Nmで表すことができる。出力回転速度Noは、有段変速部20の出力回転速度である出力軸22の回転速度であって、無段変速部18と有段変速部20とを合わせた全体の変速機である複合変速機40の出力回転速度でもある。複合変速機40は、エンジン12と駆動輪28との間の動力伝達経路PTの一部を構成する車両用変速機である。
図2は、有段変速部20の変速制御に用いる変速線図と、エンジン走行とモータ走行との切替制御に用いる動力源切替マップと、を示す図であって、それぞれの関係を示す図である。エンジン走行は、少なくともエンジン12を走行用動力源とする走行モードである。モータ走行は、エンジン12を走行用動力源とせず第1回転機MG1又は第2回転機MG2を走行用動力源とする走行モードである。図2に示すように、車速V[km/h]と要求駆動力Frdem[N]とを変数としてアップシフト線(実線)及びダウンシフト線(破線)を有する関係(変速線図、変速マップ)が予め記憶されている。変数である実際の車速V及び要求駆動力Frdemで表される点がアップシフト線(実線)又はダウンシフト線(破線)を横切ると、変速制御の開始が判断される。一般的にエンジン効率が低下する一点鎖線で示される、車速Vが比較的低い低車速領域において或いは要求駆動力Frdemが比較的低い低負荷領域において、モータ走行が実行される。図2の一点鎖線に示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速V及び要求駆動力Frdemを変数とする二次元座標で構成された動力源切替マップの一例である。また、モータ走行は、第2回転機MG2にインバータ52を介して接続されたバッテリ54の充電状態値(充電容量)SOC[%]が所定値以上の場合に適用される。この変速線図に基づいて有段変速部20の変速段が形成されることで、車両10の燃費が有利となる。
図3は、有段変速部20の変速制御を行う油圧制御回路56の構成の一部を例示する油圧回路図である。MOP42及びEOP44は、作動油oilが流通する油路の構成上、並列に設けられている。MOP42及びEOP44は、各々、係合装置CBの各々の作動状態を切り替えたり、動力伝達装置14の各部に潤滑油を供給したりするための油圧の元となる作動油oilを吐出する。MOP42及びEOP44は、各々、トランスアクスルケース16の下部に設けられたオイルパン130に還流した作動油oilを、共通の吸い込み口であるストレーナ132を介して吸い上げて、各々の吐出油路134,136へ吐出する。吐出油路134,136は、各々、油圧制御回路56が備える油路、例えばライン圧PLが流通する油路であるライン圧油路138に連結されている。MOP42から作動油oilが吐出される吐出油路134は、MOP用逆止め弁140を介してライン圧油路138に連結されている。EOP44から作動油oilが吐出される吐出油路136は、EOP用逆止め弁142を介してライン圧油路138に連結されている。MOP42は、エンジン12と共に回転して油圧制御回路56に作動油oilを圧送する元圧を発生させる。EOP44は、モータ46により回転させられて作動油oilを圧送する元圧を発生させる。EOP44は、エンジン12の回転状態に拘わらず元圧を発生させることができる。EOP44は、例えばモータ走行モードでの走行時に作動させられる。
油圧制御回路56は、前述したライン圧油路138、MOP用逆止め弁140、及びEOP用逆止め弁142の他に、レギュレータバルブ144、切替弁146、供給油路148、排出油路150、各電磁弁SLT,SC1,SC2,SL1-SL4を備える。
レギュレータバルブ144は、MOP42及びEOP44の少なくとも一方が吐出する作動油oilを元圧にしてライン圧PLを調圧する。電磁弁SLTは、例えばリニアソレノイド弁であり、有段変速部20への入力トルク等に応じたパイロット圧Psltをレギュレータバルブ144へ出力するように電子制御装置120により制御される。これにより、ライン圧PLは、有段変速部20の入力トルク等に応じた油圧とされる。電磁弁SLTに入力される元圧は、例えばライン圧PLを元圧として不図示のモジュレータバルブによって一定値に調圧されたモジュレータ圧PMである。
切替弁146は、電磁弁SC1,SC2から出力される油圧に基づいて油路を切り替える。電磁弁SC1,SC2は、いずれも例えばオンオフソレノイド弁であり、各々、油圧を切替弁146へ出力するように電子制御装置120により制御される。電磁弁SC2から油圧が出力され且つ電磁弁SC1から油圧が出力されない状態とされると、切替弁146は、ライン圧油路138と供給油路148とを接続するように油路を切り替える。電磁弁SC1,SC2から共に油圧が出力されるか或いは電磁弁SC1,SC2から共に油圧が出力されないか或いは電磁弁SC1から油圧が出力され且つ電磁弁SC2から油圧が出力されない状態とされると、切替弁146は、ライン圧油路138と供給油路148との間の油路を遮断し、供給油路148と排出油路150とを接続するように油路を切り替える。供給油路148は、電磁弁SL2,SL3に入力される元圧が流通する油路である。排出油路150は、油圧制御回路56内の作動油oilを油圧制御回路56の外へ排出する、すなわち作動油oilをオイルパン130へ還流する大気開放油路である。
電子制御装置120は、例えば操作ポジションPOSshが車両10を前進走行させる前進走行操作ポジションであるドライブ操作ポジションが選択されている場合には、電磁弁SC2が油圧を出力し且つ電磁弁SC1が油圧を出力しないための油圧制御信号Satを油圧制御回路56へ出力する。電子制御装置120は、例えば操作ポジションPOSshが車両10を後進走行させる後進走行操作ポジションであるリバース操作ポジションが選択されている場合には、電磁弁SC1,SC2が各々油圧を出力するための油圧制御信号Satを油圧制御回路56へ出力する。
電磁弁SL1-SL4は、いずれも例えばリニアソレノイド弁であり、各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2を係合装置CBの各々の油圧アクチュエータへ出力するように電子制御装置120により制御される。電磁弁SL1は、ライン圧PLを元圧として、クラッチC1の油圧アクチュエータへ供給する油圧Pc1を調圧する。電磁弁SL2は、切替弁146を介したライン圧PLを元圧として、クラッチC2の油圧アクチュエータへ供給する油圧Pc2を調圧する。電磁弁SL3は、切替弁146を介したライン圧PLを元圧として、ブレーキB1の油圧アクチュエータへ供給する油圧Pb1を調圧する。電磁弁SL4は、ライン圧PLを元圧として、ブレーキB2の油圧アクチュエータへ供給する油圧Pb2を調圧する。以下、電磁弁SL1-SL4については、特に区別しない場合は単に電磁弁SLという。
図4は、有段変速部20における各変速段の形成に用いられる係合装置CBの作動状態(すなわち断接状態)の組み合わせと、各変速段におけるソレノイドパターンの組み合わせと、を併せて示す作動図表である。図4に示す係合装置CBにおいて、「○」は係合状態を表し、「空欄」は解放状態を表している。図4に示すソレノイドパターンにおいて、「○」は油圧が出力される状態を表し、「空欄」は油圧が出力されない状態を表す。
図4において、「P」、「Rev」、「N」、「D」は、それぞれ不図示のシフトレバーの手動操作により、パーキング操作ポジションが選択された場合、リバース操作ポジションが選択された場合、ニュートラル操作ポジションが選択された場合、ドライブ操作ポジションが選択された場合をそれぞれ示している。パーキング操作ポジション及びニュートラル操作ポジションは車両10を走行させない場合に選択される操作ポジションであり、リバース操作ポジションは車両10を後進走行させる場合に選択される操作ポジションであり、ドライブ操作ポジションは車両10を前進走行させる場合に選択される操作ポジションである。図4に示すソレノイドパターンとなるように電磁弁SL1-SL4及び電磁弁SC1,SC2が制御されることで、電磁弁SL1-SL4から出力される各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2がそれぞれ調圧されて係合装置CBの断接状態の組み合わせが制御される。係合装置CBの断接状態の組み合わせに応じて、動力伝達装置14の有段変速部20で形成される変速段が切り替えられる、すなわち変速される。各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2は、電磁弁SL1-SL4からそれぞれ出力され、車両用変速機である有段変速部20の変速を制御する制御油圧である。
図5は、動力伝達装置14において、変速段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図である。図5に示す共線図は、差動機構32、第1遊星歯車装置36、及び第2遊星歯車装置38のギヤ比の関係を示す横軸と、相対回転速度を示す縦軸と、から成る二次元座標で表され、横線X1が回転速度零を示し、横線XGが中間伝達部材30の回転速度を示している。
3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順にサンギヤS0、キャリアCA0、リングギヤR0の相対回転速度をそれぞれ示すものであり、それら3本の縦線Y1~Y3の間隔は差動機構32のギヤ比(歯車比ともいう)ρ0に応じて定められる。4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、右から順に、サンギヤS1、キャリアCA1及びリングギヤR2、リングギヤR1及びキャリアCA2、サンギヤS2の相対回転速度をそれぞれ示すものであり、それら4本の縦線Y4~Y7の間隔は第1遊星歯車装置36及び第2遊星歯車装置38の各歯車比ρ1,ρ2に応じて定められる。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされると、キャリアとリングギヤとの間が遊星歯車装置の歯車比ρ(=サンギヤの歯数Zs/リングギヤの歯数Zr)に対応する間隔とされる。なお、縦線Y6は、リングギヤR1及びキャリアCA2の回転速度、すなわちそれらに連結された出力軸22の回転速度を示す。
有段変速部20では、図5に示すように、クラッチC1とブレーキB2(一方向クラッチF1)とが係合させられることにより決まる斜めの直線L1と縦線Y6との交点で、第1速変速段(1st)における出力軸22の回転速度が示される。クラッチC1とブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と縦線Y6との交点で、第2速変速段(2nd)における出力軸22の回転速度が示される。クラッチC1とクラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と縦線Y6との交点で、第3速変速段(3rd)における出力軸22の回転速度が示される。クラッチC2とブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L4と縦線Y6との交点で、第4速変速段(4th)における出力軸22の回転速度が示される。
前述したように、複数の係合装置CBの係合の組み合わせが変更されることで、有段変速部20で形成される変速段が切り替えられる。
図6は、油圧制御回路56に設けられた電磁弁SL1-SL4の構成を説明する断面図である。電磁弁SL1-SL4は、基本的にはいずれも同じ構成であるため、図6では、電磁弁SLとして例示している。電磁弁SLは、通電することにより電気エネルギーを駆動力に変換する装置である電磁部160と、その電磁部160の駆動により入力圧であるライン圧PLを調圧して所定の出力圧PSL[Pa]を発生させる調圧部162と、を備える。
電磁部160は、巻芯164、ソレノイド166、コア168、プランジャ170、ケース172、及びカバー174を備える。巻芯164は、軸線方向に延びる円筒状である。ソレノイド166は、巻芯164の外周に巻回された導線である。コア168は、巻芯164の内部を前記軸線方向に移動可能である。プランジャ170は、コア168における調圧部162とは反対側の端部に固設されている。ケース172は、巻芯164、ソレノイド166、コア168、及びプランジャ170を格納している。カバー174は、ケース172の開口に嵌め着けられている。
調圧部162は、スリーブ176、スプール弁子178、及びスプリング180を有する。スリーブ176は、ケース172に嵌め着けられている。スプール弁子178は、スリーブ176の内部を前記軸線方向に移動可能であって、入力ポート182と出力ポート186との間を開閉可能に設けられている。スプリング180は、スプール弁子178を電磁部160に向けて閉弁側に付勢している。スプール弁子178における電磁部160側の端部は、コア168における調圧部162側の端部に当接させられている。
以上のように構成された電磁弁SLでは、ソレノイド166に駆動電流i[A]が流されると、その電流値に応じてプランジャ170がコア168及びスプール弁子178に共通の前記軸線方向に移動させられる。プランジャ170の移動に従ってコア168ひいてはスプール弁子178が同方向に一体的に移動させられる。それにより、スプール弁子178は、コア168を介して電磁部160から受ける開弁方向の推力と、スプリング180から受ける閉弁方向の推力と、出力圧PSLに基づいて油室188で発生するフィードバック圧による閉弁方向の推力と、が平衡するように位置させられ、電磁弁SLは、電磁部160へ供給される駆動電流i(油圧指令値)に対応する大きさの出力圧PSLを調圧して出力する。例えば、図7に例示する電磁弁SLにおける駆動電流iと出力圧PSLとの関係を示す弁特性に基づいて、入力ポート182から入力されるライン圧PL(元圧)から駆動電流iに対応する所定の出力圧PSLが調圧され、その調圧された出力圧PSLが出力ポート186から出力される。
図1に戻り、車両10は電子制御装置120を備える。電子制御装置120は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両10のエンジン12、第1回転機MG1、第2回転機MG2、及び動力伝達装置14を含む駆動装置を制御する。
電子制御装置120には、車両10に備えられた各種センサ等(例えば、エンジン回転速度センサ60、出力回転速度センサ62、MG1回転速度センサ64、MG2回転速度センサ66、アクセル開度センサ68、スロットル弁開度センサ70、ブレーキペダルセンサ72、ステアリングセンサ74、ドライバ状態センサ76、加速度センサ78、ヨーレートセンサ80、バッテリセンサ82、油温センサ84、車両周辺情報センサ86、車両位置センサ88、外部ネットワーク通信用アンテナ90、ナビゲーションシステム92、運転支援設定スイッチ群94、シフトポジションセンサ96、など)による検出値に基づく各種信号等(例えば、エンジン回転速度Ne[rpm]、車速Vに対応する出力軸22の回転速度である出力回転速度No[rpm]、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng[rpm]、AT入力回転速度Niと同値であるMG2回転速度Nm[rpm]、運転者による加速操作の大きさを表す加速操作量としてのアクセル開度θacc[%]、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth[%]、ホイールブレーキを作動させるためのブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、運転者によるブレーキペダルの踏込操作の大きさを表すブレーキ操作量Bra[%]、車両10に備えられたステアリングホイールの操舵角θsw[rad]及び操舵方向Dsw、ステアリングホイールが運転者によって握られている状態を示す信号であるステアリングオン信号SWon、運転者の状態を示す信号であるドライバ状態信号Drv、車両10の前後加速度Gx[m/sec]、車両10の左右加速度Gy[m/sec]、車両10の鉛直軸まわりの角速度であるヨーレートRyaw[rad/sec]、バッテリ54のバッテリ温度THbat[℃]やバッテリ充放電電流Ibat[A]やバッテリ電圧Vbat[V]、油圧制御回路56内の作動油温THoil[℃]、車両周辺情報Iard、位置情報Ivp、通信信号Scom、ナビ情報Inavi、自動運転制御やクルーズ制御等の運転支援制御における運転者による設定を示す信号である運転支援設定信号Sset、車両10に備えられたシフトレバーの操作ポジションPOSsh、など)が、それぞれ入力される。なお、車両10に搭載されている前述の各種センサ等を、車載センサ群198とする。車載センサ群198には、車両10の動作状態を検出するセンサが含まれている。
アクセル開度θaccは、例えばアクセルペダルなどのアクセル操作部材の操作量であるアクセル操作量であって、車両10に対する運転者の出力要求量である。運転者の出力要求量としては、アクセル開度θaccの他に、スロットル弁開度θthなどを用いることもできる。
ドライバ状態センサ76は、例えば運転者の表情や瞳孔などを撮影するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体情報センサなどのうちの少なくとも1つを含んでおり、運転者の視線や顔の向き、眼球や顔の動き、心拍の状態等の運転者の状態を取得する。
車両周辺情報センサ86は、例えばライダー、レーダー、及び車載カメラなどのうちの少なくとも1つを含んでおり、走行中の道路に関する情報や車両周辺に存在する物体に関する情報を直接的に取得する。
車両位置センサ88は、GPSアンテナなどを含んでいる。位置情報Ivpは、GPS(Global Positioning System)衛星が発信するGPS信号(軌道信号)などに基づく地表又は地図上における車両10の位置を示す自車位置情報を含んでいる。
ナビゲーションシステム92は、ディスプレイやスピーカ等を有する周知のナビゲーションシステムである。ナビゲーションシステム92は、位置情報Ivpに基づいて、予め記憶された地図データ上に自車位置を特定し、ディスプレイに表示した地図上に自車位置を表示する。ナビゲーションシステム92は、目的地が入力されると、出発地から目的地までの走行経路を演算し、ディスプレイやスピーカ等で運転者に走行経路などの指示を行う。ナビ情報Inaviは、例えばナビゲーションシステム92に予め記憶された地図データに基づく道路情報などの地図情報などを含んでいる。前記道路情報には、市街地道路、郊外道路、山岳道路、高速自動車道路すなわち高速道路などの道路の種類、道路の分岐や合流、道路の勾配、制限車速などの情報が含まれる。
運転支援設定スイッチ群94は、自動運転制御を実行させるための自動運転選択スイッチ、クルーズ制御を実行させるためのクルーズスイッチ、クルーズ制御における車速Vを設定するスイッチ、クルーズ制御における先行車との車間距離を設定するスイッチ、設定された車線を維持して走行するレーンキープ制御を実行させるためのスイッチなどを含んでいる。
通信信号Scomは、例えば道路交通情報通信システムなどの車外装置であるセンターとの間で送受信された道路交通情報など、及び/又は、前記センターを介さずに車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に送受信された車車間通信情報などを含んでいる。前記道路交通情報には、例えば道路の渋滞、事故、工事、所要時間、駐車場などの情報が含まれる。前記車車間通信情報は、例えば車両情報、走行情報、交通環境情報などを含んでいる。前記車両情報には、例えば乗用車、トラック、二輪車などの車種を示す情報が含まれる。前記走行情報には、例えば車速V、位置情報Ivp、ブレーキペダルの操作情報、ターンシグナルランプの点滅情報、ハザードランプの点滅情報などの情報が含まれる。前記交通環境情報には、例えば道路の渋滞、工事などの情報が含まれる。
電子制御装置120からは、車両10に備えられた各装置(例えば、エンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、モータ46、外部ネットワーク通信用アンテナ90、ホイールブレーキ装置98、操舵装置100、情報周知装置102、など)に各種指令信号(例えば、エンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御するための回転機制御信号Smg、係合装置CBの各々の断接状態を制御するための油圧制御信号Sat、EOP44の作動を制御するためのEOP制御信号Seop、通信信号Scom、ホイールブレーキによる制動トルクを制御するためのブレーキ制御信号Sbra、車輪(特には前輪)の操舵を制御するための操舵制御信号Sste、運転者に警告や報知を行うための情報周知制御信号Sinf、など)が、それぞれ出力される。
油圧制御信号Satは、有段変速部20の変速を制御するための油圧制御信号でもあり、例えば係合装置CBの各々の油圧アクチュエータへ供給される各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2を調圧する各電磁弁SL1-SL4等を駆動するための指令信号を含む。電子制御装置120は、各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の値に対応する油圧指令値をそれぞれ設定し、それら油圧指令値に応じた駆動電流iが電磁弁SL1-SL4で流れるように制御する。
ホイールブレーキ装置98は、車輪にホイールブレーキによる制動トルクを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置98は、運転者による例えばブレーキペダルの踏込操作などに応じて、ホイールブレーキに設けられたホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。ホイールブレーキ装置98では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ブレーキ操作量Braに対応した大きさのマスタシリンダ油圧がブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置98では、例えばABS制御時、横滑り抑制制御時、車速制御時、自動運転制御時などには、ホイールブレーキによる制動トルクの発生のために、各制御で必要なブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪28及び不図示の従動輪である。
操舵装置100は、例えば車速V、操舵角θsw及び操舵方向Dsw、ヨーレートRyawなどに応じたアシストトルクを車両10の操舵系に付与する。操舵装置100では、例えば自動運転制御時などには、前輪の操舵を制御するトルクを車両10の操舵系に付与する。
情報周知装置102は、例えば車両10の走行に関わる何らかの部品が故障したり、その部品の機能が低下した場合に、運転者に対して警告や報知を行う装置である。情報周知装置102は、例えばモニタやディスプレイやアラームランプ等の表示装置、及び/又はスピーカやブザー等の音出力装置などである。
車両10は、更に、送受信機190、第1ゲートウェイECU192、第2ゲートウェイECU194、コネクタ196等を備える。
送受信機190は、車両10とは別の車外装置であるサーバー200と通信する機器である。サーバー200は、車両10外部のネットワーク上におけるシステムである。サーバー200は、車両状態情報や車両現象情報等の各種情報を、受け付けたり、処理したり、解析したり、蓄積したり、提供したりする。サーバー200は、車両10との間と同様に、他車両との間で、各種情報を送受信する。送受信機190は、サーバー200を介さずに車両10の近傍にいる他車両との間で直接的に通信する機能を有していても良い。前記車両状態情報は、例えば各種センサ等により検出された車両10の走行に関わる走行状態、つまり車両10の動作状態を示す情報である。この走行状態は、例えばアクセル開度θacc、車速Vなどである。前記車両現象情報は、例えば車両10で生じる現象を示す情報である。この現象は、例えば不図示のマイクロフォンにより検出された車内の音つまり音圧、加速度センサ78により検出された搭乗者が感じる振動などである。なお、外部ネットワーク通信用アンテナ90を介してサーバー200との間で無線通信が行われても良い。
第1ゲートウェイECU192及び第2ゲートウェイECU194は、各々、電子制御装置120と同様のハード構成を備えており、例えば電子制御装置120内の書き換え可能なROMに記憶されたプログラム及び/又はデータの書き換え用に設けられた中継装置である。第1ゲートウェイECU192は、送受信機190と接続されており、例えば送受信機190とサーバー200との間での無線通信を用いて、電子制御装置120内の上記ROMに記憶されたプログラムを書き換えるためのものである。サーバー200は、書き換え用のプログラムを配信するソフト配信センターとして機能する。第2ゲートウェイECU194は、コネクタ196を介して車両10とは別の車外装置である外部書き換え装置210と機械的に連結可能とされており、例えば外部書き換え装置210を用いて、電子制御装置120内の上記ROMに記憶されたプログラムを書き換えるためのものである。
電子制御装置120は、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部122、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部124、及び運転制御手段すなわち運転制御部126、を機能的に備える。
AT変速制御部122は、図2に示す変速線図を用いて有段変速部20の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部20の変速制御を実行するための油圧制御信号Satを油圧制御回路56へ出力する。
ハイブリッド制御部124は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能と、を含む。ハイブリッド制御部124は、それら制御機能によりエンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。ハイブリッド制御部124は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで駆動要求量としての駆動輪28における要求駆動力Frdemを算出する。前記駆動要求量としては、要求駆動力Frdem[N]の他に、駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]、駆動輪28における要求駆動パワーPrdem[W]、出力軸22における要求AT出力トルク等を用いることもできる。
ハイブリッド制御部124は、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動トルクTrdemと車速Vとに基づく要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン制御信号Seと回転機制御信号Smgとを出力する。エンジン制御信号Seは、例えばその出力時のエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値であり、また、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能電力であり、バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能電力である。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置120により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置120により算出される。
ハイブリッド制御部124は、例えば無段変速部18を無段変速機として作動させて複合変速機40全体として無段変速機として作動させる場合、エンジン最適燃費点等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するエンジンパワーPeが得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、エンジン12を制御するとともに第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部18の無段変速制御を実行して無段変速部18の変速比γ0を変化させる。この制御の結果として、無段変速機として作動させる場合の複合変速機40の変速比γtが制御される。
ハイブリッド制御部124は、例えば無段変速部18を有段変速機のように変速させて複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる場合、予め定められた関係である例えば模擬ギヤ段変速マップを用いて複合変速機40の変速判断を行い、AT変速制御部122による有段変速部20のATギヤ段の変速制御と協調して、複数の模擬ギヤ段を選択的に成立させるように無段変速部18の変速制御を実行する。複数の模擬ギヤ段は、それぞれの変速比γtを維持できるように車速Vに応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。各模擬ギヤ段の変速比γtは、車速Vの全域に亘って必ずしも一定値である必要はなく、所定領域で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。このように、ハイブリッド制御部124は、エンジン回転速度Neを有段変速のように変化させる変速制御が可能である。複合変速機40全体として有段変速機のように変速させる模擬有段変速制御は、例えば運転者によってスポーツ走行モード等の走行性能重視の走行モードが選択された場合や要求駆動トルクTrdemが比較的大きい場合に、複合変速機40全体として無段変速機として作動させる無段変速制御に優先して実行するだけでも良いが、所定の実行制限時を除いて基本的に模擬有段変速制御が実行されても良い。
ハイブリッド制御部124は、走行モードとして、モータ走行モード或いはエンジン走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させる。例えば、ハイブリッド制御部124は、前述の図2に示す動力源切替マップを用いて、車両10をエンジン走行とするか、モータ走行とするか、を切り替える。
ハイブリッド制御部124は、要求駆動パワーPrdemがモータ走行領域にある場合であっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合には、エンジン走行モードを成立させる。エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断するための予め定められた閾値である。
ハイブリッド制御部124は、エンジン12の運転停止時にエンジン走行モードを成立させる場合には、エンジン12を始動する始動制御を行う。ハイブリッド制御部124は、エンジン12を始動する場合には、第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させつつ、エンジン回転速度Neが点火可能な所定回転速度以上となった場合に点火することでエンジン12を始動する。すなわち、ハイブリッド制御部124は、第1回転機MG1によりエンジン12をクランキングすることでエンジン12を始動する。
運転制御部126は、車両10の運転制御として、運転者の運転操作に基づいて走行する手動運転制御と、運転者の運転操作によらずに車両10を運転する運転支援制御と、を行うことが可能である。手動運転制御は、運転者の運転操作による手動運転にて走行する運転制御である。手動運転は、アクセル操作、ブレーキ操作、操舵操作などの運転者の運転操作によって車両10の通常走行を行う運転方法である。運転支援制御は、例えば運転操作を自動的に支援する運転支援にて走行する運転制御である。運転支援は、運転者の運転操作(意思)によらず、各種センサからの信号や情報等に基づく電子制御装置120による制御により加減速、制動などを自動的に行うことによって車両10の走行を行う運転方法である。運転支援制御は、例えば運転者により入力された目的地や地図情報などに基づいて自動的に目標走行状態を設定し、その目標走行状態に基づいて加減速、制動、操舵などを自動的に行う自動運転制御などである。なお、広義には、操舵操作などの一部の運転操作を運転者が行い、加減速、制動などを自動的に行うようなクルーズ制御を運転支援制御に含めても良い。
運転制御部126は、運転支援設定スイッチ群94における自動運転選択スイッチやクルーズスイッチなどがオフとされて運転支援による運転が選択されていない場合には、手動運転モードを成立させて手動運転制御を実行する。運転制御部126は、有段変速部20やエンジン12や第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する指令をAT変速制御部122及びハイブリッド制御部124に出力することで手動運転制御を実行する。
運転制御部126は、運転者によって運転支援設定スイッチ群94における自動運転選択スイッチが操作されて自動運転が選択されている場合には、自動運転モードを成立させて自動運転制御を実行する。具体的には、運転制御部126は、運転者により入力された目的地、位置情報Ivpに基づく自車位置情報、ナビ情報Inaviなどに基づく地図情報、及び車両周辺情報Iardに基づく走行路における各種情報等に基づいて、自動的に目標走行状態を設定する。運転制御部126は、設定した目標走行状態に基づいて加減速と制動と操舵とを自動的に行うように、有段変速部20やエンジン12や第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する指令をAT変速制御部122及びハイブリッド制御部124に出力することに加え、必要な制動トルクを得るためのブレーキ制御信号Sbraをホイールブレーキ装置98に出力し、前輪の操舵を制御するための操舵制御信号Ssteを操舵装置100に出力することで自動運転制御を行う。
図8は、有段変速部20の変速時における電磁弁SLの作動例を説明するタイムチャートであって、クラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置の係合過渡期での電磁弁SLにおける油圧指令値である駆動電流iの変化を例示するものである。図7に示したように駆動電流iが指定されると電磁弁SLの出力圧PSLが決定されるため、駆動電流iは出力圧PSLに対する油圧指令値となり得る。
時刻t1において、パッククリアランスを詰めるパック詰めのために、駆動電流iは、一旦初期油圧に対応する大きさの電流値まで増加させられ、パック詰めが開始される。時刻t2において、駆動電流iは、初期油圧よりも低い係合直前状態の定圧待機圧に対応する大きさの電流値に減少させられる。時刻t1~t2の期間(急速充填期間)及び時刻t2~t3の期間(定圧待機圧期間)において、係合側係合装置のパック詰めが速やかに行われる。時刻t3~t4の期間(スイープ期間)では、係合トルクを緩やかに増加させるために駆動電流iが緩やかに増加させられる。同期が取れたと判定された時刻t4において、駆動電流iは係合側係合装置が係合する程度の油圧指令値以上の値に増加させられる。なお、係合過渡期において図8のタイムチャートに示されるような駆動電流iと時間t[sec]との関係は、変速制御を行う制御プログラムに用いられるパラメータである。
ここから、図8において一点鎖線で囲まれた部分に示された異物排出制御について説明する。非係合時異物排出制御は、係合装置CBを係合させていない電磁弁SLに対して、その係合装置CBが係合しない程度の油圧指令値をパルス状に与えて電磁弁SLを作動させる、すなわちプランジャ170(及び一体的に移動するスプール弁子178)を動かす制御である。係合時異物排出制御は、係合装置CBを係合させている電磁弁SLに対して、その係合装置CBが解放しない程度の油圧指令値をパルス状に与えて電磁弁SLを作動させる、すなわちスプール弁子178を往復移動させる制御である。これら非係合時異物排出制御及び係合時異物排出制御により、電磁弁SLにおいて、例えばスリーブ176とスプール弁子178との間に入り込んだ異物が排出され得る。
ところで、電磁弁SLにおいては、何らかの異常が発生する可能性がある。電磁弁SLにて発生する異常(作動異常)は、例えば車両用変速機としての有段変速部20の変速異常として表れる。
図9は、有段変速部20の変速異常の一例を説明するタイムチャートである。図9において、時刻t1b~t3bの期間は、有段変速部20において第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されている過渡中を示している。この第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトにおいては、ブレーキB1を解放させつつクラッチC2を係合させるクラッチツゥクラッチ変速が実行される。時刻t1b~t3bの期間において、ブレーキB1の解放のため、電磁弁SL3に対する油圧指令値である駆動電流ib1が次第に減少させられるとともに、クラッチC2の係合のため、電磁弁SL2に対する油圧指令値である駆動電流ic2が次第に増加させられる。有段変速部20の変速制御の過渡中において、エンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹きを収束させる学習制御が実施される。つまり、有段変速部20のクラッチツゥクラッチ変速の過渡中におけるエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹き量が微少吹き量の範囲内に収まるように学習制御が実施されて油圧指令値が補正される。微少吹き量の範囲は、予め定められた吹き量下限判定値と吹き量上限判定値との間の範囲である(図13(a)参照)。なお、吹き量上限判定値及び吹き量下限判定値は、例えば有段変速部20の変速異常となるような吹きが発生したと判断するための予め定められた判定値である。
前記吹きは、例えばエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmが、有段変速部20のギヤ比γatと出力回転速度Noとに基づく回転速度に対して回転上昇する現象であり、前記吹き量は、前記吹きの発生時に回転上昇した分の回転速度である。具体的には、変速制御の過渡中にエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹きが発生した場合(時刻t2b付近参照)において、次回の第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトにおける電磁弁SL2から出力される油圧Pc2の初期油圧は、例えば以下のように補正される。吹き量が吹き量上限判定値よりも大きい場合は、次回の油圧Pc2の初期油圧が高くされ、吹き量が無いか又は吹き量下限判定値よりも小さい場合は、次回の油圧Pc2の初期油圧が低くされる。油圧指令値の補正によってエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹き量が微少吹き量の範囲内に収められる。なお、前記学習制御では、吹き量に替えて吹き時間が所定の微少吹き時間の範囲内に収まるように油圧指令値が補正されても良い。電磁弁SL2は、本発明における「油圧制御弁」に相当する。
学習制御の完了後において、吹き量が吹き量上限判定値よりも大きい場合には、有段変速部20で変速異常が発生したと判定される。また、学習制御の完了後において、吹き量が無いか又は吹き量下限判定値よりも小さくタイアップが発生した場合にも、有段変速部20で変速異常が発生したと判定される。
吹き量異常又はタイアップが発生すると、変速ショックとして現れる場合がある。有段変速部20の変速制御における学習制御が完了した後に、前後加速度Gxが所定加速度以上となるような変速ショックが生じた場合には、有段変速部20で変速異常が発生したと判定される。前記所定加速度は、有段変速部20の変速異常となるような前後加速度Gxが発生したと判断するための予め定められた閾値である。
図10は、図6に示す電磁弁SLの駆動回路Dcirの概略構成を説明する図であるとともに、その駆動回路Dcirに対する制御方法を説明する図である。電磁弁SL1-SL4の各駆動回路は、基本的にはいずれも同じ構成であるため、図10では、電磁弁SLの駆動回路Dcirとして例示している。電磁弁SLに設けられたソレノイド166の電気的特性は、インダクタンス(等価インダクタンス)L[H]及び抵抗(等価抵抗)Rs[Ω]のRL直列等価回路で表現される。ソレノイド166の駆動回路Dcirは、バッテリ電圧Vbat[V]が電源電圧として供給される端子Bt、駆動トランジスタTr、検出抵抗Rd[Ω]、オペアンプAMP、及びA/D変換器ADCを備える。駆動トランジスタTrがオンすることでバッテリ電圧Vbatによりソレノイド166に駆動電流iが流れる。検出抵抗Rd[Ω]は、ソレノイド166と直列に配置され、ソレノイド166の駆動電流iが検出抵抗Rdの両端の電圧差として取り出される。オペアンプAMPがその取り出された電圧差を増幅した後、A/D変換器ADCによってデジタル信号化された実際の駆動電流i(以下、「実際の駆動電流i」を、単に「実電流iact」と記す。)が電子制御装置120のAT変速制御部122に入力されるように構成されている。
AT変速制御部122は、指令値設定部122a、フィードバックコントローラ122b、及びPWM生成部122cを備える。
指令値設定部122aは、スロットル弁開度θthを表す信号、エンジン回転速度Neを表す信号、AT入力回転速度Niを表す信号、出力回転速度Noすなわち車速Vを表す信号、及び操作ポジションPOSshを表す信号から予め設定された走行マップに基づいて、ソレノイド166の駆動電流iの平均電流iave(図11参照)を制御目標値として表す電流指令値icmdを設定する。指令値設定部122aは、電流指令値icmdを出力する。
電流指令値icmdと実際の駆動電流iである実電流iactとの偏差が、フィードバックコントローラ122bに入力される。フィードバックコントローラ122bは、入力された偏差に基づいて平均電流iaveに応じたデューティー比を表す信号をPWM生成部122cに出力する。
PWM生成部122cは、フィードバックコントローラ122bから入力されたデューティー比を表す信号に基づいて、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号を生成する。PWM生成部122cは、生成したPWM制御信号を駆動トランジスタTrのゲート電極に出力し、駆動トランジスタTrのオンオフ制御を実行する。ソレノイド166の駆動トランジスタTr側の印加電圧e[V]が、駆動トランジスタTrのオンオフ制御のデューティー比によって制御され、これによりソレノイド166の駆動電流iが制御される。すなわち、PWM制御信号は、そのデューティー比によりソレノイド166の駆動電流iを制御する制御信号である。
図10に示す電磁弁SLのRL直列等価回路及び駆動回路Dcirの構成から、電磁弁SLのソレノイド166の印加電圧eと駆動電流iとの関係は、以下の式(1)で表される。
Figure 2022043942000002
ここで、e[V]:印加電圧、L[H]:ソレノイド166のインダクタンス、R[Ω]:ソレノイド166の抵抗Rsと検出抵抗Rdとの合計値、i[A]:駆動電流、x[m]:プランジャ170の軸線方向の移動量を表すストローク、t[sec]:時間、である。式(1)の右辺第2項が逆起電力Vbackを表すものである。逆起電力Vbackを表す項のうち(dL/dx)は、ストロークx[m](図6参照)の微小変化量に対するインダクタンスLの微小変化量(後述の図12における傾き)であり、負の値となっている。駆動電流iが決まると、「(dL/dx)×i」は負の所定値となる。そのため、(dx/dt)すなわち時間当たりのストロークxの変化量で表されるプランジャ170の速度に応じて逆起電力Vbackの大きさが決まることとなる。
図11は、図10に示す駆動回路DcirがPWM制御信号によりオンオフ制御された場合の駆動電流iの瞬時電流及びその瞬時電流の駆動周期毎の平均電流iaveの時間変化を説明する図である。図11は、時刻0[sec]にデューティー比50%のPWM制御信号の駆動トランジスタTrへの入力が開始された場合を示している。駆動周期の前半50%の期間で駆動トランジスタTrがオン制御され、駆動周期の後半50%の期間で駆動トランジスタTrがオフ制御される。図11(a)は、印加電圧eの時間変化であり、図11(b)は、駆動電流iの時間変化である。なお、図11(b)に示す駆動電流iは、前述の逆起電力Vbackが考慮されていない。図11(a)に示されるように、駆動周期の半周期毎に、高電圧入力と低電圧入力(0[V])とが印加電圧eとして交互に繰り返される。図11(b)に示されるように、駆動電流iの瞬時電流の波形は、駆動周期毎に最小電流iminと最大電流imaxとの間を行き来する三角波形状の電流波形である。最大電流imax及び最小電流iminは、それぞれ電流波形の最大値及び電流波形の最小値であり、最大電流imaxと最小電流iminとの差分である振幅Aは、電流波形の振幅である。図11(b)の2つの破線は、それぞれ駆動周期毎に表れる最小電流imin同士を結んだ線及び駆動周期毎に表れる最大電流imax同士を結んだ線である。最小電流imin及び最大電流imaxは、それぞれ時間tの経過と共に次第に増加し、一定値に収束する。これにより、駆動電流iの平均電流iaveも、最小電流imin及び最大電流imaxの増加に応じて次第に増加し、時間tの経過と共に一定値に収束する。平均電流iaveが収束している領域が定電流域である。なお、収束とは、駆動電流iの最小電流imin、最大電流imax、平均電流iave、が変化しなくなって一定値となることをいい、ほとんど変化せず実質的に一定値となることも含まれる。
図12は、電磁弁SLが備えるソレノイド166のインダクタンス特性を説明する図である。図12において、横軸はストロークxであり、縦軸はソレノイド166のインダクタンスLである。図12に示すように、駆動電流iが同じである場合、ストロークxが大きくなるに従ってインダクタンスLは小さくなる。また、ストロークxが同じである場合、駆動電流iが大きくなるに従ってインダクタンスLは小さくなる。駆動電流iの大きさに応じてストロークxやインダクタンスLが変化し、係合装置CBのトルク容量に対応した所定の駆動電流i(例えば、図中の黒丸)が選択される。
図13は、有段変速部20において第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されるクラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置であるクラッチC2の断接状態を制御する電磁弁SL2が出力する油圧Pc2の実際値(図中の「実油圧」参照)の変化及びエンジン回転速度Neの吹き量の変化の例示であって、(a)は電磁弁SL2が正常である場合を示し、(b)は電磁弁SL2がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁SL2がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁SL2が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。なお、図13(b)及び図13(c)では、それぞれ時刻t3においてブースト異常及びエア吸い異常が発生し、図13(d)では、時刻t3と時刻t4との間の時刻においてスティック異常が発生した場合の例である。また、図13(b)、図13(c)、図13(d)では、それぞれの場合の実油圧の変化が太線で示され、比較のため、図13(a)に示す電磁弁SL2が正常である場合の実油圧の変化が細線の破線で示されている。
図13における実油圧の変化及びエンジン回転速度Neの吹き量の変化は、試作車両400(図1参照)で検出されたものである。試作車両400は、基本的には、量産車両である車両10と同様の構成を備える。試作車両400は、車載センサ群402及び試作車用センサ404を備える。車載センサ群402は、車両10に搭載されている車載センサ群198と同一の車載センサ群である。試作車用センサ404は、車両10には搭載されておらず、例えば各油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の実際値を検出する油圧センサ等を含む。このように、試作車両400は、例えば有段変速部20の変速制御の過渡中におけるエンジン回転速度Neの吹き量に加えて、油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の実際値を検出することが可能である。
電磁弁SL2が正常である場合には、図13(a)に示すように、急速充填期間(時刻t1~t2)において油圧Pc2の実際値が上昇し、定圧待機圧期間(時刻t2~t3)において油圧Pc2の実際値が定圧待機圧に維持され、スイープ期間(時刻t3~t4)において油圧Pc2の実際値が緩やかに上昇し、スイープ期間経過後(時刻t4以降)において油圧Pc2の実際値がクラッチC2が係合する程度の油圧値まで上昇する。また、この場合におけるエンジン回転速度Neの吹き量は、微少吹き量の範囲内に収まっている。
電磁弁SL2がブースト異常である場合には、図13(b)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較してスイープ期間(時刻t3~t4)における油圧Pc2の実際値の上昇が速くなっている。また、この場合におけるエンジン回転速度Neの吹き量は、吹き量下限判定値よりも小さい状態となる期間がある。
電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、図13(c)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較してスイープ期間(時刻t3~t4)における油圧Pc2の実際値の上昇が時刻t3直後から遅くなっている。また、この場合におけるエンジン回転速度Neの吹き量は、吹き量上限判定値よりも大きい状態となる期間がある。
電磁弁SL2が完全スティック異常及び一時スティック異常のいずれの場合にも、図13(d)に示すように、スイープ期間(時刻t3~t4)における油圧Pc2の実際値の上昇は、電磁弁SL2が正常である場合に比較してスイープ期間の途中から遅くなっている。また、電磁弁SL2が完全スティック異常である場合には、スイープ期間経過後(時刻t4以降)における油圧Pc2の実際値は、電磁弁SL2が正常である場合よりも低い値までしか上昇しない。一方、電磁弁SL2が一時スティック異常である場合には、スイープ期間経過後(時刻t4以降)における油圧Pc2の実際値は、電磁弁SL2が正常である場合と同じ値まで遅れて上昇する。また、電磁弁SL2が完全スティック異常である場合におけるエンジン回転速度Neの吹き量は、前述のエア吸い異常である場合と同様に吹き量上限判定値よりも大きい状態となる期間がある。また、電磁弁SL2が一時スティック異常である場合におけるエンジン回転速度Neの吹き量は、一時的に吹き量上限判定値よりも大きい状態となった後に、微少吹き量の範囲内に収まる。
図13の各図に示すように、エンジン回転速度Neの吹き量よりも油圧Pc2の実際値を用いる方が、電磁弁SL2の異常原因を特定することが容易である。例えば、エア吸い異常と完全スティック異常又は一時スティック異常とは、エンジン回転速度Neの吹き量では判別されにくいが、油圧Pc2の実際値の変化では判別されやすい。
試作車両400では、油圧Pc1、Pc2、Pb1、Pb2の実際値を検出しているので、その実際値を用いることによって異常の特定が比較的容易である。このように、試作車両400では、車載センサ群402の検出値データに対する原因の特定を行うことができる。つまり、試作車両400では、車載センサ群402の検出値に比べて、試作車両400にて発生した異常の原因を特定しやすい試作車用センサ404の検出値に基づいてその異常の原因を特定することができる。
図14は、図13に示す各場合における逆起電力Vbackについて説明する図である。
例えば、図14中の時刻tx以前にプランジャ170(及び一体的に移動するスプール弁子178)が巻芯164の内部を軸線方向に一定速度で移動していると、逆起電力Vbackは一定の値を示す。しかし、ブースト異常により時刻txにおいてプランジャ170の速度が一時的に上昇すると、逆起電力Vbackも一時的に上昇する。完全スティック異常により時刻txにおいてプランジャ170が停止(速度が零値)すると、逆起電力Vbackも零値となる。一時スティック異常により時刻txにおいてプランジャ170が一時的に停止(すなわち移動速度が零値)した後に移動が再開される場合、逆起電力Vbackは、一時的に零値となった後に元の一定の値に戻る。
図15は、図13に示す各場合における電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の実電流iact(以下、「駆動電流ic2の実電流iact」を、単に「実電流iact2」と記す。)の波形について説明する図であって、(a)は電磁弁SL2が正常である場合を示し、(b)は電磁弁SL2がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁SL2がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁SL2が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。図15に示す各波形は、前述の図11で説明したPWM制御信号によりオンオフ制御された場合の実電流iact2の波形の例である。
電磁弁SL2が正常である場合には、図15(a)に示すように、完全な三角波形状にはならず、プランジャ170の移動に伴う逆起電力Vbackに応じて完全な三角波形状に対して遅れを含むように実電流iact2が増加及び減少する波形となる。電磁弁SL2が正常である場合には、変速中を含めてこの波形が連続する。
電磁弁SL2がブースト異常である場合には、図15(b)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較してスイープ期間にプランジャ170の移動が速くなって逆起電力Vbackが大きくなるので、実電流iact2は電流波形の最大電流imax側が尖った波形となる。この場合、電磁弁SL2が正常である場合に比較して、電流波形の振幅Aの振幅値A2(<A1)は小さくなり、最大電流imaxの電流値Mx2(<Mx1)は小さくなり、最小電流iminの電流値Mn2(>Mn1)は大きくなる。
電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、図15(c)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較して完全な三角波形状に近づくが、後述のスティック異常ほどには完全な三角波形状の波形にはならない。すなわち、電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、電磁弁SL2が正常である場合と電磁弁SL2がスティック異常である場合との中間の波形となる。この場合、電磁弁SL2が正常である場合に比較して、電流波形の振幅Aの振幅値A3(>A1)は大きくなり、最大電流imaxの電流値Mx3(>Mx1)は大きくなり、最小電流iminの電流値Mn3(<Mn1)は小さくなる。また、電磁弁SL2がスティック異常である場合に比較して、電流波形の振幅Aの振幅値A3(<A4)は小さくなり、最大電流imaxの電流値Mx3(<Mx4)は小さくなり、最小電流iminの電流値Mn3(>Mn4)は大きくなる。
電磁弁SL2がスティック異常である場合には、図15(d)に示すように、プランジャ170の移動が停止して逆起電力Vbackが小さくなるので、実電流iact2の波形は、電磁弁SL2が正常である場合に比較して完全な三角波形状に近づく。この場合、電磁弁SL2が正常である場合に比較して、電流波形の振幅Aの振幅値A4(>A1)は大きくなり、最大電流imaxの電流値Mx4(>Mx1)は大きくなり、最小電流iminの電流値Mn4(<Mn1)は小さくなる。
ここで、車両10とは別の車外装置である異常原因特定装置300(図1参照)は、車両10に搭載された電磁弁SL、例えば電磁弁SL2にて異常が発生した際に、車両10に搭載されて車両10の動作状態を検出する車載センサ群198の検出値を用いてその異常の原因を特定する。
具体的には、異常原因特定装置300は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより各種制御を実行する。異常原因特定装置300は、演算部302、表示部304などを機能的に備える。演算部302は、データを蓄積するデータベース部306と、前記データから結論を推定する推論部308と、異常原因特定モデル310と、を有する人工知能である。異常原因特定モデル310は、演算部302による教師あり学習にて実現されている。表示部304は、演算部302による処理結果などを表示する出力装置例えばディスプレイやプリンタなどである。
異常原因特定モデル310は、車両10にて発生した異常の原因を特定する精度を向上するために、試作車両400を用いて予め定められた、異常の原因とその異常発生時の車載センサ群402(すなわち車載センサ群198と同一のセンサ群)の検出値との関係を示す異常原因特定モデルである。
図16は、油圧制御回路56に設けられた電磁弁SL2で異常が発生した場合に、その異常原因を特定する異常原因特定モデル310の一例を示す図である。異常原因特定モデル310は、車両10の車載センサ群198による検出値の種類をベースとしたニューラルネットワークである。異常原因特定モデル310は、コンピュータプログラムによるソフトウエアにより、或いは電子的素子の結合から成るハードウエアにより生体の神経細胞群をモデル化して構成され得るものである。異常原因特定モデル310は、i個の神経細胞要素(=ニューロン)P11-Pi1から構成された入力層と、j個の神経細胞要素P12-Pj2から構成された中間層と、k個の神経細胞要素P13-Pk3から構成された出力層と、から構成された多層構造である。前記中間層は、多層構造であっても良い。また、異常原因特定モデル310では、前記入力層から前記出力層へ向かって神経細胞要素の状態を伝達するために、結合係数すなわち重み付け値W11-Wijを有する伝達要素Dijと、重み付け値W12-Wjkを有する伝達要素Djkと、が設けられている。伝達要素Dijは、前記i個の神経細胞要素P11-Pi1と前記j個の神経細胞要素P12-Pj2とをそれぞれ結合する。伝達要素Djkは、前記j個の神経細胞要素P12-Pj2と前記k個の神経細胞要素P13-Pk3とをそれぞれ結合する。
異常原因特定モデル310は、重み付け値W11-Wij、W12-Wjkが所定のアルゴリズムによって機械学習された異常解析システムである。異常原因特定モデル310における教師あり学習では、試作車両400において特定された教師データすなわち教師信号が用いられる。前記入力層に対する教師信号は、試作車両400における異常発生時の車載センサ群402の検出値のデータ(図16の「特徴量X11-Xi1」参照)が与えられ、前記出力に対する教師信号は、試作車両400における試作車用センサ404の検出値に基づいて特定された異常の原因(図16の「出力Y13-Yk3」参照)が与えられる。例えば、特徴量X11としてデューティー比に応じたPWM制御信号によりソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形の振幅A、特徴量X21として車速V、特徴量X31としてアクセル開度θacc、特徴量X41として吹き量、及び特徴量Xi1として加速度、がそれぞれ与えられる。例えば、図15に示した各例では、例えば実電流iact2の波形変化と電磁弁SL2の異常の原因との相関が強いので、このような相関に対して重み付け値が大きな値とされる。人工知能を使用した解析では、このように相関の強さの程度が解れば良い。なお、駆動電流ic2の波形の振幅Aは、本発明における「前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形」に相当する。
異常原因特定装置300は、車両10にて発生した異常の原因を特定する精度を向上するという制御機能を実現するために、更に、状態判定手段すなわち状態判定部312、及び、異常原因特定手段すなわち異常原因特定部314を機能的に備える。
状態判定部312は、市場で車両10にて異常が発生したか否かを判定する。例えば、状態判定部312は、車両10の電子制御装置120が車両10にて異常が発生したと判断したか否かに基づいて、市場で車両10にて異常が発生したか否かを判定する。電子制御装置120は、車両10の動作状態を示す、車載センサ群198の検出値に基づいて車両10にて異常が発生したか否かを判定する。或いは、状態判定部312は、サーバー200から取得した車載センサ群198の検出値に基づいて、市場で車両10にて異常が発生したか否かを判定しても良い。より具体的には、車両10にて発生する異常が有段変速部20の変速異常である場合、有段変速部20の変速制御における学習制御の完了後において、変速制御の過渡中にエンジン回転速度Ne又はMG2回転速度Nmの吹き量が吹き量上限判定値を超過したか否かに基づいて、有段変速部20の変速異常が発生したか否かが判定される。または、有段変速部20の変速制御における学習制御の完了後において、変速制御の過渡中にタイアップが発生したか否かに基づいて、有段変速部20の変速異常が発生したか否かが判定される。または、有段変速部20の変速制御における学習制御の完了後において、変速制御の過渡中に前後加速度Gxが前記所定加速度以上となるような変速ショックが生じたか否かに基づいて、有段変速部20の変速異常が発生したか否かが判定される。このように、異常原因特定装置300は、車載センサ群198の検出値に基づいて車両10の異常発生の有無を判断する。
異常原因特定部314は、状態判定部312により車両10にて異常が発生したと判定された場合には、サーバー200から車両10の異常発生時の車両10のビッグデータを取得する。この車両10のビッグデータは、車両10がサーバー200に送信した車両10の異常発生時の車載センサ群198の検出値である。異常原因特定モデル310の入力層に対する教師信号は、車載センサ群402(すなわち車載センサ群198と同一のセンサ群)の検出値のデータが与えられているので、異常原因特定部314は、サーバー200を介して車両10における車載センサ群198の検出値を取得する。
異常原因特定部314は、取得した車両10のビッグデータと、異常原因特定モデル310と、を用いて、車両10にて発生した異常の原因を解析する。つまり、異常原因特定部314は、取得した車両10のビッグデータを異常原因特定モデル310に入力し、車両10にて発生した異常の原因を解析する。異常原因特定部314は、異常の原因を特定できたか否かを判定する。異常原因特定部314は、異常の原因を特定できたと判定した場合には、その特定できた異常の原因を表示部304などに表示する。異常の原因は1つに絞られて特定されるのがベストであるが、異常の原因の候補が複数ある場合は、異常解析の正答確率の高いものから順に並べられて表示される。異常原因特定部314は、異常の原因を特定できないと判定した場合には、異常の原因が不明である旨を表示部304などに表示する。
上述したように、異常原因特定部314は、異常原因特定モデル310に、車両10の異常発生時の車載センサ群198の検出値を適用することで、車両10にて発生した異常の原因を特定する。車両10には搭載されていない試作車用センサ404を搭載した試作車両400を用いて予め定められた異常原因特定モデル310が用いられるので、試作車両400よりもセンサ数が限られた車両10のビッグデータを使用した解析でも、車両10にて発生した異常の原因の特定が精度良く実行され得る。
例えば、異常原因特定装置300は、異常原因特定モデル310と車両10に搭載されている車載センサ群198の検出値とを用いて、電磁弁SL2にて発生した異常の原因を特定する。異常原因特定装置300は無線通信を介してサーバー200と接続されており、サーバー200から車両10に搭載されている車載センサ群198の検出値を取得する。車両10は、必要に応じて、車両10に搭載されている車載センサ群198の検出値をサーバー200へ送信する。
図17は、図16に示す異常原因特定モデル310で異常原因を特定する機械学習が実施される学習領域区分の例である。図17に示すように、例えば電磁弁SLを駆動する駆動電流iの電流値(例えば平均電流iave)毎に学習領域が7つに区分されており、更にそれら学習領域がそれぞれ変速の種類毎に6つに区分されている。したがって、学習領域は、駆動電流iの電流値毎及び変速の種類毎に42個(学習領域C11~C67)に区分されている。異常原因特定モデル310は、この42個に区分された学習領域毎に機械学習が実施される。駆動電流iの電流値の大きさや変速の種類に応じて使用される電磁弁SLにおける駆動電流iの波形が異なるため、駆動電流iの電流値及び変速の種類による区分毎に異常原因特定モデル310の機械学習が実施されることで、異常原因の特定精度が向上させられるからである。例えば、有段変速部20における第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトでの電磁弁SL2の異常原因の特定精度を向上するため、電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の電流値により区分された学習領域C21~C27毎に、異常原因特定モデル310の機械学習が実施される。
図18は、電磁弁SLに異常が発生した場合における異常原因特定装置300での制御作動の要部を説明するフローチャートである。図18のフローチャートは、例えば繰り返し実行される。
まず、状態判定部312の機能に対応するステップS10において、市場で電磁弁SLに異常が発生したか否かが判定される。ステップS10の判定が否定された場合には、リターンとなる。ステップS10の判定が肯定された場合は、異常原因特定部314の機能に対応するステップS20において、サーバー200から異常発生時の車両10のビッグデータが取得される。次いで、異常原因特定部314の機能に対応するステップS30において、取得された車両10のビッグデータが異常解析システムである異常原因特定モデル310に入力され、異常原因特定モデル310で異常の原因が解析される。次いで、異常原因特定部314の機能に対応するステップS40において、異常の原因が特定されたか否かが判定される。ステップS40の判定が肯定された場合には、異常原因特定部314の機能に対応するステップS50において、特定された異常の原因が表示される。一方で、ステップS40の判定が否定された場合には、異常原因特定部314の機能に対応するステップS60において、異常の原因が不明である旨が表示される。
図19は、異常原因特定装置300により特定された電磁弁SL2の異常に対する対応方法の例について説明する図である。
電磁弁SL2がブースト異常である場合には、第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されるクラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置であるクラッチC2が想定(すなわち電磁弁SL2が正常である場合)よりも早く係合する。これにより、タイアップが発生して係合ショックが発生するとともに車速Vが想定よりも早く上昇する可能性がある。そのため、前方走行車両に影響を与える可能性がある場合には、電子制御装置120は、通信を介して(例えば、サーバー200と車両10との間での通信を可能とするコネクティッド技術によって)前方走行車両へ自車両での異常の発生を知らせる。また、次回以降の同様の変速において正常に変速制御が実行されるように、電子制御装置120は変速制御方法を変更する。例えば、係合側係合装置の係合制御を行う電磁弁SLを駆動する駆動電流iの制御方法を変更することにより、(a)定圧待機圧を低下させる、(b)急速充填期間を短縮させる、(c)初期油圧を低減させる、などの変更が行われる。
電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されるクラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置であるクラッチC2が想定(すなわち電磁弁SL2が正常である場合)よりも遅く係合する。これにより、変速が遅れて車両加速がもたつく(すなわち、車速Vが想定よりも遅く加速する)可能性がある。そのため、後方走行車両に影響を与える可能性がある場合には、電子制御装置120は、通信を介して後方走行車両へ自車両での異常の発生を知らせる。また、電子制御装置120は、エア吸い異常発生時の走行条件を記憶・学習しておき、次回以降の同様の変速において正常に変速制御が実行されるように変速制御方法を変更する。例えば、エア吸い異常発生時の走行路の傾斜、高速走行時間、作動油温THoil、エンジン回転速度Neに基づき、エア吸い発生条件として予め設定してある判断条件値を書き換える。そして、次回以降にこの書き換えられた判断条件値が成立し且つ同様の変速が実行される場合には、電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の制御方法を変更することにより、(a)急速充填期間を延長させる、(b)初期油圧を上昇させる、などして変速制御方法が変更される。
電磁弁SL2がスティック異常である場合には、第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されるクラッチツゥクラッチ変速における係合側係合装置が想定(すなわち電磁弁SL2が正常である場合)よりも遅く係合する。これにより、変速が遅れて車両加速がもたつく可能性がある。そのため、後方走行車両に影響を与える可能性がある場合には、電子制御装置120は、通信を介して後方走行車両へ自車両での異常の発生を知らせる。また、次回以降の同様の変速において正常に変速制御が実行されるように、電子制御装置120は、異物排出制御方法を変更したり、変速制御方法を変更したりする。例えば、異物排出制御方法の変更としては、(a)異物排出制御中における油圧指令値の駆動パルスの振幅を増加させる、(b)異物排出制御中における油圧指令値の駆動パルスの回数を増加させる、などがある。例えば、変速制御方法の変更としては、係合側係合装置の係合制御を行う電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の制御方法を変更することにより、(a)急速充填期間を延長させる、(b)初期油圧を上昇させる、(c)電磁弁SL2を不使用とする(すなわち、第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトの実行を禁止し、第2速変速段から第4速変速段へのアップシフトの実行とする)、などがある。
本実施例によれば、電磁弁SL2に異常が発生した場合に、デューティー比に応じたPWM制御信号によりソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形の振幅Aに基づいて異常の原因が特定される。これにより、電磁弁SL2におけるソレノイド166の短絡以外の異常原因を特定することができる。
本実施例によれば、電磁弁SL2が備えるソレノイド166の駆動電流ic2の電流値による区分毎に機械学習された異常原因特定モデル310により、電磁弁SL2の異常原因が特定される。ソレノイド166の駆動電流ic2の電流値の大きさに応じて駆動電流ic2の波形が異なるため、駆動電流ic2の電流値による区分毎に電磁弁SL2の異常原因が特定されることで、異常原因の特定精度を向上させることができる。
本実施例によれば、電磁弁SL2における異常の原因の特定は、人工知能を利用した教師あり学習で実現された異常原因特定モデル310が使用される。このように、人工知能を利用した異常原因特定モデル310が使用されて電磁弁SL2の異常原因が特定されることから、異常原因の特定精度を向上させることができる。
本発明の実施例2が適用される車両10、サーバー200、外部書き換え装置210、異常原因特定装置300、及び試作車両400の各構成は、前述の実施例1におけるものと略同じである。本実施例において前述の実施例1と異なるのは、電磁弁SLの異常の原因を特定する方法である。そのため、異なる部分を中心に説明することとし、前述の実施例1と実質的に共通する部分は説明を適宜省略する。
図20は、前述の実施例1の図13に示す各場合における電磁弁SL2を駆動する実電流iact2の電流値分布を説明する図であって、(a)は電磁弁SL2が正常である場合を示し、(b)は電磁弁SL2がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁SL2がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁SL2が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。図20は、予め定められた所定期間Tsftにおける実電流iact2の電流値分布である。所定期間Tsftは、第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行されるクラッチツゥクラッチ変速において係合側係合装置であるクラッチC2が解放状態から係合状態へ変化させられる期間、すなわち電磁弁SL2のプランジャ170が動かされる期間を含む。例えば、図8(図13)における時刻t3~t4の期間である。
電磁弁SL2が正常である場合には、図20(a)に示すように、実電流iact2が所定の範囲内の電流値分布となる。電磁弁SL2がブースト異常である場合には、図20(b)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較して実電流iact2は大きい値の方の度数が増加する。電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、図20(c)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較して実電流iact2は小さい値の方の度数が増加するが、後述のスティック異常のような零値の度数は存在しない。電磁弁SL2がスティック異常である場合には、図20(d)に示すように、プランジャ170の移動が停止することにより実電流iact2が零値である度数が存在する。電磁弁SL2が一時スティック異常である場合には、この零値の度数は所定量となり、完全スティック異常である場合には、一時スティック異常における所定量よりも零値の度数は増加する。
このように、電磁弁SL2が正常或いはそれぞれ異なる異常原因に応じて、変速中における実電流iact2の電流値分布が異なる。なお、実電流iact2の電流値分布は、ソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形に応じたものであり、本発明における「前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形」に相当する。
本実施例では、異常原因特定モデル310は、特徴量X11として前述の実施例1における駆動電流ic2の波形の振幅Aの替わりに、変速中における実電流iact2の電流値分布が与えられる。
本実施例によれば、電磁弁SL2に異常が発生した場合に、予め定められた所定期間Tsftにおける駆動電流ic2の実電流iact2の電流値分布に基づいて異常の原因が特定される。本実施例によれば、前述の実施例1と同様の効果を奏する。
本発明の実施例3が適用される車両10、サーバー200、外部書き換え装置210、異常原因特定装置300、及び試作車両400の各構成は、前述の実施例1におけるものと略同じである。本実施例において前述の実施例1と異なるのは、電磁弁SLの異常の原因を特定する方法である。そのため、異なる部分を中心に説明することとし、前述の実施例1と実質的に共通する部分は説明を適宜省略する。
図21は、前述の実施例1の図13に示す各場合における電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の実電流iact2の波形変化について説明する図であって、(a)は電磁弁SL2が正常である場合を示し、(b)は電磁弁SL2がブースト異常である場合を示し、(c)は電磁弁SL2がエア吸い異常である場合を示し、(d)は電磁弁SL2が一時スティック異常及び完全スティック異常である場合を示している。図21は、例えば図13に示すクラッチツゥクラッチ変速の時刻t1~t3の期間における電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の実電流iact2の波形変化を示すものである。
電磁弁SL2が正常である場合には、図21(a)に示すように、実電流iact2の波形が変化する。時刻t1において、パック詰めのために、実電流iact2は一旦初期油圧に対応する大きさの電流値まで増加させられる。時刻t2において、実電流iact2は時刻t1~t2の急速充填期間よりも低い定圧待機圧に対応する大きさの電流値に減少させられる。時刻t2~t3の定圧待機圧期間において、実電流iact2は時刻t2で減少させられた電流値が維持される。時刻t2において、電磁弁SL2が係合直前状態の定圧待機圧を出力するように、そのプランジャ170が移動させられている。時刻t2~t3の定圧待機圧期間において、例えば一定速度で移動していたプランジャ170は、定圧待機圧を出力する位置で停止するようにその移動が停止させられる。プランジャ170の移動が一定速度から減速して停止する或いは一定速度から一時的に増速してから減速して停止することにより発生する逆起電力Vbackによって、実電流iact2の波形が一時的に変化する。図21(a)では、この波形変化が発生するタイミングは、駆動電流ic2の通電開始から経過時間Ta後の付近である。この経過時間Taは、電磁弁SL2が正常である場合に想定される所定の想定期間内である。
電磁弁SL2がブースト異常である場合には、図21(b)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較して前述の実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングは、駆動電流ic2の通電開始から経過時間Tb後の付近である。電磁弁SL2がブースト異常である場合には、電磁弁SL2が正常である場合よりもプランジャ170の移動が早いため、経過時間Taよりも経過時間Tb(<Ta)は短い。すなわち、前述の実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングは、想定よりも早い(すなわち、前記した所定の想定期間よりも前である)。
電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、図21(c)に示すように、電磁弁SL2が正常である場合に比較して前述の実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングは、駆動電流ic2の通電開始から経過時間Tc後の付近である。電磁弁SL2がエア吸い異常である場合には、電磁弁SL2が正常である場合よりもプランジャ170の移動が遅いため、経過時間Taよりも経過時間Tc(>Ta)は長い。すなわち、前述の実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングは、想定よりも遅い(すなわち、前記した所定の想定期間よりも後である)。
電磁弁SL2が完全スティック異常である場合には、図21(d)に示すように、前述の実電流iact2の波形が一時的に変化することはない。電磁弁SL2が完全スティック異常である場合には、プランジャ170が移動せず、逆起電力Vbackが発生しないからである。
このように、電磁弁SL2が正常或いはそれぞれ異なる異常原因に応じて、電磁弁SL2のプランジャ170の移動により発生する逆起電力Vbackによって実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングが異なる。なお、逆起電力Vbackによって実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングは、ソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形に応じたものであり、本発明における「前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形」に相当する。
本実施例では、異常原因特定モデル310は、特徴量X11として前述の実施例1における駆動電流ic2の波形の振幅Aの替わりに、実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングが与えられる。
本実施例によれば、電磁弁SL2に異常が発生した場合に、電磁弁SL2のプランジャ170が停止することにより発生する逆起電力Vbackによって駆動電流ic2の実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングに基づいて異常の原因が特定される。本実施例によれば、前述の実施例1と同様の効果を奏する。
本実施例によれば、逆起電力Vbackに起因する実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングが所定の想定期間よりも早い場合は、電磁弁SL2の異常の原因がブースト異常であると特定される。また、逆起電力Vbackに起因する実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングが所定の想定期間よりも遅い場合は、電磁弁SL2の異常の原因がエア吸い異常であると特定される。このように、逆起電力Vbackに起因する実電流iact2の波形が一時的に変化するタイミングが想定よりも早い場合及び遅い場合には、それぞれ異常原因としてソレノイド166の短絡以外のブースト異常やエア吸い異常が特定される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例1では、図13で例示した時刻t3において各種異常が発生した態様であったが、例えば時刻t3よりも前に各種異常が発生する場合もあり得る。このような場合、例えば図13に示す時刻t3直前の定電流域における実電流iact2の波形の振幅Aに基づいて異常の原因が特定されても良い。定電流域での実電流iact2の波形は、定電流域でない場合に比較して同じ波形が繰り返し安定して取得できるため、電磁弁SL2の異常原因の特定精度を向上させることができる。なお、実施例1のように、駆動電流ic2が変化する過渡電流域における実電流iact2の波形の振幅Aに基づいて異常の原因が特定されても良い。このように、電磁弁SL2に異常が発生した場合、駆動電流ic2が過渡電流域であるか定電流域であるかにかかわらず、ソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する実電流iact2の波形の振幅Aに基づいて異常の原因が特定されても良い。
前述の実施例1では、異常原因特定モデル310の特徴量X11として駆動電流ic2の波形の振幅Aが与えられる態様であったが、本発明はこれに限らない。例えば、特徴量X11として駆動電流ic2の波形の振幅Aの替わりに、駆動電流ic2の波形の最大電流imaxや最小電流iminが与えられる態様であっっても良い。なお、これらの態様の場合、駆動電流ic2の波形の最大電流imaxや最小電流iminはいずれも、本発明における「前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形」に相当する。
前述の実施例2では、図13で例示した時刻t3~t4の期間で各種異常が発生した態様であったため、所定期間Tsftが図13における時刻t3~t4の期間とされていたが、本発明はこれに限らない。例えば、図13における時刻t1~t2の期間や時刻t2~t3の期間で各種異常が発生する場合もあるため、所定期間Tsftが図13における時刻t1~t4の期間とされても良い。前述の実施例2では、クラッチツゥクラッチ変速において係合側係合装置であるクラッチC2が解放状態から係合状態へ変化させられる期間、すなわち電磁弁SL2のプランジャ170の速度に応じた逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の実電流iact2の電流値分布に基づいて異常の原因が特定される。したがって、電磁弁SL2を駆動する実電流iact2の電流値分布を取得する所定期間Tsftは、変速中においてプランジャ170が動かされる期間、すなわちクラッチツゥクラッチ変速において係合側係合装置であるクラッチC2が解放状態から係合状態へ変化させられる期間を含むものであれば良い。このようにプランジャ170が動かされる期間が含まれていれば、電磁弁SL2に異常が発生した場合にその異常の原因が特定できるからである。
前述の実施例1,2,3では、電磁弁SL2における異常の原因の特定は、人工知能を利用した教師あり学習で実現された異常原因特定モデル310が使用されたが、本発明はこれに限らない。実電流iact2の波形と電磁弁SL2の異常の原因との相関が強いため、例えば、試作車両400で得られた電磁弁SL2のソレノイド166で発生する逆起電力Vbackに起因する駆動電流ic2の波形と、その駆動電流ic2の波形に応じた電磁弁SL2の異常原因と、の予め実験的に得られたデータから、予め定められた所定の判定値により電磁弁SL2の異常原因が特定されても良い。
例えば、実施例1において正常である電磁弁SL2における駆動電流ic2の波形の振幅Aが所定値Aj1と所定値Aj2(>Aj1)との間となる場合には、所定値Aj1及び所定値Aj2が予め定められた所定の判定値とされる。駆動電流ic2の波形の振幅Aが所定値Aj1未満である場合には、電磁弁SL2はブースト異常であると特定され、駆動電流ic2の波形の振幅Aが所定値Aj2を超過する場合には、電磁弁SL2はエア吸い異常又はスティック異常であると特定される。例えば、正常である電磁弁SL2における駆動電流ic2の波形の最大電流imaxが所定値Mxj1と所定値Mxj2(>Mxj1)との間となる場合には、所定値Mxj1及び所定値Mxj2が予め定められた所定の判定値とされる。駆動電流ic2の波形の最大電流imaxが所定値Mxj1未満である場合には、電磁弁SL2はブースト異常であると特定され、駆動電流ic2の波形の最大電流imaxが所定値Mxj2を超過する場合には、電磁弁SL2はエア吸い異常又はスティック異常であると特定される。例えば、正常である電磁弁SL2における駆動電流ic2の波形の最小電流iminが所定値Mnj1と所定値Mnj2(>Mnj1)との間となる場合には、所定値Mnj1及び所定値Mnj2が予め定められた所定の判定値とされる。駆動電流ic2の波形の最小電流iminが所定値Mnj1未満である場合には、電磁弁SL2はエア吸い異常又はスティック異常であると特定され、駆動電流ic2の波形の最小電流iminが所定値Mnj2を超過する場合には、電磁弁SL2はブースト異常であると特定される。
例えば、実施例2において、正常である電磁弁SL2の実電流iact2の電流値分布において各電流値毎の度数がそれぞれ所定の度数範囲となる場合には、この各電流値毎のそれぞれ所定の度数範囲が予め定められた所定の判定値とされる。実電流iact2の電流値分布において、電流値が大きい値の方の度数が所定の度数範囲を超過する場合には、電磁弁SL2はブースト異常であると特定され、電流値が小さい値の方の度数が所定の度数範囲を超過する場合には、電磁弁SL2はエア吸い異常であると特定され、電流値が零値の度数が存在する場合には、電磁弁SL2は、スティック異常であると特定される。
例えば、実施例3において正常である電磁弁SL2の実電流iact2の波形変化が発生するタイミング(図21に示す経過時間Ta)が通電開始から所定値Tj1と所定値Tj2(>Tj1)との間となる場合には、所定値Tj1及び所定値Tj2が予め定められた所定の判定値とされる。実電流iact2の波形変化が発生するタイミングが所定値Tj1未満である場合には、電磁弁SL2はブースト異常であると特定され、実電流iact2の波形変化が発生するタイミングが所定値Tj2を超過する場合には、電磁弁SL2はエア吸い異常であると特定され、実電流iact2の波形変化が発生しない場合には、電磁弁SL2は完全スティック異常であると特定される。
前述の実施例1,2,3では、電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の電流値による区分毎、すなわち駆動電流ic2の電流値毎に、電磁弁SL2の異常原因が特定された。本発明は、電磁弁SL2を駆動する駆動電流ic2の電流値毎及び変速の種類毎の少なくとも一方により電磁弁SL2の異常原因が特定されても良い。
前述の実施例1,2,3では、有段変速部20において第2速変速段から第3速変速段へのアップシフトが実行される過渡中における電磁弁SL2の異常原因を特定する態様であったが、本発明はこれに限らない。例えば、図17に示す他のアップシフト及びダウンシフトが実行される過渡中における係合側係合装置の断接状態を制御する電磁弁SLの異常原因を特定する場合にも、本発明は適用可能である。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
56:油圧制御回路(車両用油圧制御回路)
166:ソレノイド
300:異常原因特定装置
ic2:駆動電流
SL2:電磁弁(油圧制御弁)
Vback:逆起電力

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  1. 車両用油圧制御回路に設けられ、制御信号のデューティー比に応じて駆動電流が制御されるソレノイドを備える油圧制御弁の、異常原因特定装置であって、
    前記油圧制御弁に異常が発生した場合に、前記ソレノイドで発生する逆起電力に起因する前記駆動電流の波形に基づいて前記異常の原因を特定する
    ことを特徴とする油圧制御弁の異常原因特定装置。
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