[第一実施形態]
(炭化ケイ素多結晶基板の製造装置)
本発明の第一実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置について、図1、図2を参照して説明する。本実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置は、例えば、熱化学蒸着法により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて、蒸着基板を得た後、蒸着基板を燃焼して、黒鉛支持基板を燃焼除去することにより、炭化ケイ素多結晶基板を製造することに用いることができる。
図1に示すように、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1は、蒸着炉2と、燃焼炉3と、搬送チャンバー4と、蒸着炉2と燃焼炉3とを直接つなぐ、搬送路5と、を備える。また、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1は、搬送路5を介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段47を有する。また、蒸着炉2、搬送チャンバー4、燃焼炉3は、この順に並んで設けられている。また、本実施形態では、搬送路5は、蒸着炉2と搬送チャンバー4とをつなぐ、例えばSUS316等のステンレスで形成された円筒状の蒸着炉側搬送路6と、搬送チャンバー4と、搬送チャンバー4と燃焼炉3とをつなぐ、例えばSUS316等のステンレスで形成された円筒状の燃焼炉側搬送路7と、から構成されている。なお、図1においては、蒸着炉2、搬送チャンバー4、燃焼炉3の並び方向を横方向、紙面平面内で前記横方向と直交する方向を上下方向とし、横方向を矢印X、上下方向を矢印Yで示している。
蒸着炉2では、化学蒸着により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて蒸着基板Sを得ることができる。蒸着炉2は、蒸着炉2の外装となる筐体21と、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させる成膜室22と、成膜室22より排出された原料ガスやキャリアガスを後述のガス排出口27へ導入する排出ガス導入室23と、排出ガス導入室23を覆うボックス24と、ボックス24の外部より成膜室22内を加温する、カーボン製のヒーター25と、成膜室22の上部に設けられ、成膜室22に原料ガスやキャリアガスを導入するガス導入口26と、ガス排出口27と、黒鉛支持基板を載置する載置部28と、成膜室22の内部と外部とのガス雰囲気を遮断する、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート29と、を有する。なお、本実施形態において、蒸着基板Sとは、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜が成膜された状態のものを指すものとする。
また、筐体21、成膜室22、排出ガス導入室23、ボックス24、ヒーター25は、横断面視円環状に形成されている。また、ゲート29は、ヒーター25と筐体21との間にあり、蒸着炉側搬送路6を閉塞可能、かつ、上下に開閉可能に設けられている。また、蒸着炉2は、成膜室22内の温度、圧力、ガス雰囲気等の制御や、化学蒸着による成膜等において各構成部材の動作や制御等を行う、不図示の動作機構及び制御機構を有する。
載置部28は、成膜室22の内部に設けられており、後述の蒸着台座282を支持する回転軸281と、回転軸281を中心として回転する、円形で平板状の蒸着台座282と、回転軸281と蒸着台座282を回転させる不図示の回転機構を有する。また、載置部28において、蒸着台座282の上面が黒鉛支持基板の載置面である。
炭化ケイ素多結晶膜の成膜時において、原料ガスやキャリアガスは、成膜室22上部に設けられたガス導入口26から導入され、成膜室22の下部から排出ガス導入室23に排出され、さらに、ガス排出口27から蒸着炉2の外部に排出される。また、成膜時には、回転軸281を回転させることにより、蒸着台座282上の黒鉛支持基板を回転させながら蒸着を行うことで、蒸着基板Sと蒸着台座282との固着を防止することができる。
燃焼炉3は、外装となる筐体31と、箱状の耐火層32と、二珪化モリブデン製のヒーター33と、後述する燃焼室321内部にガスを導入するガス導入口34と、燃焼室321からガスを排出するガス排出口35と、蒸着基板Sを載置する載置部36と、燃焼室321の内部と外部のガス雰囲気を遮断する、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート37と、を有する。耐火層32の内部には、耐火層32で規定される空間である燃焼室321が形成されており、燃焼室321には、蒸着基板Sを載置する載置部36が設けられている。また、載置部36は、燃焼室321の底面から立設する支柱361と、支柱361に支持された、円形で平板状の燃焼台座362と、を有している。また、載置部36において、燃焼台座362には蒸着基板Sが載置され、燃焼台座362の上面が蒸着基板Sの載置面である。
また、筐体31、耐火層32、ヒーター33は、横断面視円環状に形成されている。また、ゲート37は、ヒーター33と筐体31との間にあり、燃焼炉側搬送路7を閉塞可能、かつ、上下に開閉可能に設けられている。また、燃焼炉3は、内部の温度、圧力、ガス雰囲気等の制御等において各構成部材の動作や制御を行う、不図示の動作機構及び制御機構を有する。
搬送チャンバー4は、外装となる筐体41と、耐火レンガ等の耐火性の材料を用いて構成された箱状の耐火層42と、カンタル製のヒーター43と、後述する搬送室421内にガスを導入するガス導入口44と、搬送室421からガスを排出するガス排出口45と、搬送室421内部と外部とのガス雰囲気を遮断するゲート46と、搬送手段47と、を有している。耐火層42の内部には、耐火層42で規定される空間である搬送室421が形成されている。ゲート46は、例えばSUS316等のステンレスで形成された蒸着炉側ゲート461と、例えばSUS316等のステンレスで形成された燃焼炉側ゲート462と、を有している。搬送手段47は、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素でコートしたカーボン(以下、「炭化ケイ素コートカーボン」と記載する場合がある)やタンタルでコートしたカーボン(以下、「タンタルコートカーボン」と記載する場合がある)で形成されたアーム回転軸471と、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成された搬送アーム472と、を有している。
また、筐体41、耐火層42、ヒーター43は、横断面視円環状に形成されている。また、蒸着炉側ゲート461、燃焼炉側ゲート462は、ヒーター43と筐体41との間にあり、蒸着炉側搬送路6、燃焼炉側搬送路7をそれぞれ閉塞可能、かつ、上下に開閉可能に設けられている。また、搬送チャンバー4は、内部の温度、ガス雰囲気等の制御等において各構成部材の動作や制御を行う、不図示の動作機構及び制御機構を有する。
アーム回転軸471は、搬送室421の底面から立設しており、アーム回転軸471の長軸方向を中心軸として回転可能に構成されている。また、図2(A)は、搬送アーム472が縮んだ状態を示し、図2(B)は、搬送アーム472が伸びた状態を示し、図2(C)は、搬送アーム472が伸びた状態で、かつ、蒸着基板Sを把持した状態を示す図である。図2(A)、図2(B)に示すように、搬送アーム472は、円筒状の第一アーム部材472aと、円筒状の第二アーム部材472bと、円筒状の第三アーム部材472cと、蒸着基板Sを把持するための把持部472dと、を有している。また、搬送アーム472は、第一アーム部材472aがアーム回転軸471に固定されており、アーム回転軸471の回転に伴って、上下方向を軸として回転する。
搬送アーム472において、第一アーム部材472aと、第二アーム部材472bと、第三アーム部材472cと、は入れ子状に構成されている。すなわち、図2(A)に示すように、第二アーム部材472bは第一アーム部材472aの内部に収容可能に構成され、第三アーム部材472cは第二アーム部材472bの内部に収容可能に構成されている。すなわち、搬送アーム472は、蒸着炉2の内部方向及び燃焼炉3の内部方向に伸縮可能に構成されている。
また、把持部472dは、第三アーム部材472cの先端に備えられた一対の把持部材472d1と把持部材472d2とを有し、第三アーム部材472cの先端部分472c1を基端として、把持部材472d1と把持部材472d2が互いに近づく方向や遠ざかる方向に動作可能であり、この動作により、蒸着基板Sを把持することができる(図2(C))。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1は、化学蒸着により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて蒸着基板Sを得る蒸着炉2と、蒸着基板Sを燃焼して、黒鉛支持基板を除去する燃焼炉3と、蒸着炉2と燃焼炉3とを直接つなぐ搬送路5と、搬送路5を介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段47と、を備える。そのため、炭化ケイ素多結晶膜の成膜から黒鉛支持基板の燃焼までの間、黒鉛支持基板を所定温度以上に保持できることにより、炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
また、搬送手段47が、蒸着基板Sを搬送する搬送アーム472を有していていることから、反りが発生する温度まで蒸着基板Sが冷めることなく、蒸着炉2から燃焼炉3までより確実に蒸着基板Sを搬送することができる。
また、搬送アーム472が、蒸着炉2の内部方向及び燃焼炉3の内部方向に伸縮可能に構成されていることから、搬送チャンバー4の設置スペースに制限があってもそれほど広い場所を必要とせず、蒸着炉2から燃焼炉3までより確実に蒸着基板Sを搬送することができる蒸着基板Sの搬送手段を設けることができる。
また、搬送チャンバー4が、搬送チャンバー4内の雰囲気を調整する、ガス導入口44及びガス排出口45を有することから、蒸着基板Sを搬送するときに、蒸着炉2や燃焼炉3内の雰囲気と合わせることができる。これにより、蒸着炉2や燃焼炉3内の雰囲気を適切な状態に保つことができ、炭化ケイ素が搬送チャンバー4や燃焼炉3において析出することや、ヒーター25、ヒーター33、ヒーター43等が酸素によって劣化することを抑制することができる。
また、搬送チャンバー4がヒーター43を有することから、搬送チャンバー4内の温度をより適切に制御することができ、反りが発生する温度まで蒸着基板Sが冷めることなく、蒸着基板Sを搬送することができる。
(炭化ケイ素多結晶基板の製造方法)
次に、本発明の第一実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造方法について、その一例として、前述の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1を用いて炭化ケイ素多結晶基板を製造する方法を説明する。以下に説明する炭化ケイ素多結晶基板製造装置1の動作は一例であり、問題のない範囲で温度、圧力、ガス雰囲気等の各条件や、作動手順等を変更してもよい。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法は、化学蒸着により表面に炭化ケイ素多結晶膜が成膜した黒鉛支持基板を燃焼させて、黒鉛支持基板を除去する除去工程を含むものである。また、本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法においては、炭化ケイ素多結晶膜が成膜した黒鉛支持基板が、前記除去工程が開始されるまでの間、500℃以上に保持される。
初めに、蒸着炉2において、化学蒸着により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させる。黒鉛支持基板を蒸着台座282に載置し、減圧状態で、Ar等の不活性ガス雰囲気下で、成膜の反応温度まで、ヒーター25により黒鉛支持基板を加熱する。成膜の反応温度まで達したら、不活性ガスの供給を止めて、成膜室22内に炭化ケイ素多結晶膜の成分を含む原料ガスやキャリアガスを供給する。黒鉛支持基板の表面や気相での化学反応により、加熱した黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させることができる。このとき、蒸着台座282を回転させることにより、炭化ケイ素の析出によって生じる蒸着基板Sと蒸着台座282との固着を防止しつつ、黒鉛支持基板の上面側に炭化ケイ素多結晶膜をより均一に成膜させることができる。これにより、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜が成膜された、蒸着基板Sが得られる。
原料ガスとしては、炭化ケイ素多結晶膜を成膜させることができれば、特に限定されず、一般的に炭化ケイ素多結晶膜の成膜に使用されるSi系原料ガス、C系原料ガスを用いることができる。例えば、Si系原料ガスとしては、シラン(SiH4)を用いることができるほか、SiH3Cl、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4などのエッチング作用があるClを含む塩素系Si原料含有ガス(クロライド系原料)を用いることもできる。C系原料ガスとしては、例えば、メタン(CH4)等を用いることができる。
また、キャリアガスとしては、炭化ケイ素多結晶膜の成膜を阻害することなく、原料ガスを黒鉛支持基板へ展開することができれば、一般的に使用されるキャリアガスを用いることができる。例えば、熱伝導率に優れ、炭化ケイ素に対してエッチング作用があるH2ガスをキャリアガスとして用いることができる。また、これら原料ガス及びキャリアガスと同時に、第3のガスとして、不純物ドーピングガスを同時に供給することもできる。例えば、炭化ケイ素多結晶基板の導電型をn型とする場合には窒素(N2)、p型とする場合にはトリメチルアルミニウム(TMA)を用いることができる。
炭化ケイ素多結晶膜の成膜工程においては、上記のガスを適宜混合して供給する。また、所望の炭化ケイ素多結晶膜の性状に応じて、成膜工程の途中でガスの混合割合を変更してもよい。
次に、蒸着基板Sを搬送手段47により、燃焼炉3に搬送する。ゲート29及び蒸着炉側ゲート461を上方に移動させて、成膜室22から搬送チャンバー4に亘って、蒸着炉側搬送路6を連通させる。搬送アーム472を蒸着炉2に向けたうえで、搬送アーム472を成膜室22内に伸ばし、図2(C)のように把持部472dにより蒸着基板Sを把持する。次に、蒸着基板Sを把持したまま、搬送アーム472を縮ませる。ゲート29及び蒸着炉側ゲート461を下方に移動させて、蒸着炉側搬送路6を遮断し、さらに、燃焼炉側ゲート462及びゲート37を上方に移動させて、搬送チャンバー4から燃焼炉3に亘って、燃焼炉側搬送路7を連通させる。さらに、アーム回転軸471を回転させて搬送アーム472を燃焼炉3に向けたうえで、搬送アーム472を燃焼炉3内に伸ばし、燃焼台座362上で把持部472dを開放して、蒸着基板Sを燃焼台座362上に載置する。最後に、搬送アーム472を縮ませて搬送室421内に戻した後、燃焼炉側ゲート462及びゲート37を下方に移動させて、燃焼炉側搬送路7を遮断する。ガス導入口26、ガス導入口34、ガス導入口44、ガス排出口27、ガス排出口35、ガス排出口45を適宜用いてガス雰囲気を調整することにより、搬送チャンバー4や搬送路5に炭化ケイ素が析出することや、ヒーター25が酸素で劣化してしまうことを防止することができる。以上により、蒸着基板Sの搬送が完了する。蒸着炉2から燃焼炉3に蒸着基板Sを搬送するときには、ヒーター25、ヒーター33、ヒーター43を適宜作動させて、成膜室22、搬送チャンバー4、燃焼炉3、蒸着炉側搬送路6、及び、燃焼炉側搬送路7内の温度を500℃以上に保つ。また、蒸着炉2から燃焼炉3に蒸着基板Sを搬送するときには、搬送中に黒鉛支持基板が燃焼しないように、成膜室22、搬送チャンバー4、及び、燃焼炉3内のガス雰囲気をAr等の不活性ガス雰囲気にしておくことが好ましい。
次に、蒸着基板Sを燃焼して、黒鉛支持基板を除去する除去工程を行う。蒸着基板Sが燃焼台座362に載置された状態で、ガス導入口34から燃焼炉3内にO2や空気等の酸化性ガスを供給しながら、常圧または減圧状態で、ヒーター33により燃焼炉3内を数百度に加熱する。加熱により、黒鉛支持基板のみが燃焼して、炭化ケイ素多結晶基板が得られる。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法は、蒸着基板Sを燃焼させて、黒鉛支持基板を除去する除去工程を含み、蒸着基板Sが、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜が成膜した後から除去工程を開始するまでの間、500℃以上に保持されることから、冷却により生じる炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
炭化ケイ素多結晶膜を黒鉛支持基板に成膜後、除去工程が開始されるまで黒鉛支持基板を500℃以上に保持した場合、炭化ケイ素多結晶膜と黒鉛支持基板との間において、応力差の発生が抑制される。さらに、応力差の発生が抑制された状態で黒鉛支持基板を燃焼除去することにより、炭化ケイ素多結晶膜における内部応力の発生が抑制される。そして、炭化ケイ素多結晶基板に内部応力が少ないため、炭化ケイ素単結晶基板と張り合わせた後に加熱(例えば、350℃)しても、反りの発生が抑制される。
また、第一実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1においては、搬送アーム472に蒸着基板Sを把持する把持部472dが設けられていたが、蒸着基板Sを搬送する方法はこれに限定されない。例えば、搬送アーム472に替えて、図3に示す搬送アーム472Aを用いてもよい。
搬送アーム472Aは、第一アーム部材472aと、第二アーム部材472bと、第三アーム部材472cと、蒸着基板Sを載置する載置部472eを有している。第一アーム部材472a、第二アーム部材472b、第三アーム部材472cは、前述した搬送アーム472の構成と同じである。また、蒸着基板Sを載置しやすくするために、載置部472eの上面側の先端部分には、先端に向かって先細りとなる勾配部472fが形成されている。蒸着基板Sを搬送するときには、蒸着基板Sの下側に載置部472eを挿しこみ、蒸着基板Sを載置部472eの上面に載置したうえで、搬送アーム472Aを作動させて、燃焼炉3の燃焼台座362上に蒸着基板Sを搬送することができる。また、搬送アーム472Aにおいて、載置部472eが第三アーム部材472cに収容されるように構成されていてもよい。載置部472eが第三アーム部材472cに収容されるように構成されていることにより、載置部472eを第三アーム部材472cに収容しながら蒸着基板Sを載置することで、より確実に蒸着基板Sを燃焼台座362上に載置することができる。
また、第一実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1の搬送手段47においては、回転動作だけではなく、図4に示す搬送手段47Bのように上下方向に回動可能に構成されていてもよい。搬送手段47Bは、アーム回転軸471Bと、上下方向への回動が可能な第一アーム部材472gを有する搬送アーム472Bと、を有する。アーム回転軸471Bが、上下方向を軸として回転し、かつ、搬送アーム472Bを上下方向に回動させることにより、搬送アーム472Bを用いて、蒸着基板Sをより確実に把持することができる。
[第二実施形態]
(炭化ケイ素多結晶基板の製造装置)
本発明の第二実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置について、図5を参照して説明する。本実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置は、例えば、熱化学蒸着法により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて、蒸着基板を得た後、蒸着基板を燃焼して、黒鉛支持基板を燃焼除去することにより、炭化ケイ素多結晶基板を製造することに用いることができる。第二実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Aは、搬送チャンバー4がなく、蒸着炉2と燃焼炉3Aとが直接接しており、搬送手段38が燃焼炉3Aに設けられている点で第一実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1とは異なる。
図5に示すように、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Aは、蒸着炉2と、燃焼炉3Aと、蒸着炉2と燃焼炉3Aとを直接つなぐ、例えばSUS316等のステンレスで形成された円筒状の搬送路8と、搬送路8を介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段38と、を備える。なお、図5においては、蒸着炉2、燃焼炉3Aの並び方向を横方向、紙面平面内で前記横方向と直交する方向を上下方向とし、横方向を矢印X、上下方向を矢印Yで示している。なお、前述した炭化ケイ素多結晶基板製造装置1と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
燃焼炉3Aは、筐体31と、箱状の耐火層32と、二珪化モリブデン製のヒーター33と、ガス導入口34と、ガス排出口35と、載置部36と、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート37と、搬送手段38と、を有する。耐火層32の内部には、耐火層32で規定される空間である燃焼室321が形成されており、搬送手段38は、燃焼室321の天井面に設けられている。
搬送手段38は、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成されたアーム回転軸381と、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成された搬送アーム382と、を有している。アーム回転軸381及び搬送アーム382の部材や伸縮及び把持をする動作等の基本的な構成は、第一実施形態のアーム回転軸471、搬送アーム472と同じである。
図5に示すように、アーム回転軸381は、燃焼室321の天井面の蒸着炉2側において、下方に向かって設けられており、アーム回転軸381の長軸方向(上下方向)を中心軸として回転可能に構成されている。搬送アーム382は、第一アーム部材382aと、第二アーム部材382bと、第三アーム部材382cと、蒸着基板Sを把持するための把持部382dと、を有している。また、搬送アーム382は、第一アーム部材382aがアーム回転軸381に固定されており、アーム回転軸381の回転に伴って、上下方向を軸として回転可能である。また、搬送アーム382は、アーム回転軸381に沿って、上下方向に移動可能に構成されている。
搬送アーム382において、第一アーム部材382aと、第二アーム部材382bと、第三アーム部材382cと、は入れ子状に構成されており、第二アーム部材382bは第一アーム部材382aの内部に収容可能に構成され、第三アーム部材382cは第二アーム部材382bの内部に収容可能に構成されている。すなわち、搬送アーム382は、蒸着炉2の内部方向及び燃焼炉3Aの内部方向に伸縮可能に構成されている。
また、把持部382dは、第三アーム部材382cの先端に備えられた一対の把持部材382d1と把持部材382d2とを有し、第三アーム部材382cの先端部分を基端として、把持部材382d1と把持部材382d2が互いに近づく方向や遠ざかる方向に動作可能であり、この動作により、蒸着基板Sを把持することができる。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Aは、化学蒸着により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて蒸着基板Sを得る蒸着炉2と、蒸着基板Sを燃焼して、黒鉛支持基板を除去する燃焼炉3Aと、蒸着炉2と燃焼炉3Aとを直接つなぐ搬送路8と、搬送路8を介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段38と、を備える。そのため、炭化ケイ素多結晶膜の成膜から黒鉛支持基板の燃焼までの間、黒鉛支持基板を所定温度以上に保持できることにより、炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
また、搬送アーム382が、蒸着炉2の内部方向及び燃焼炉3Aの内部方向に伸縮可能に構成されていることから、燃焼炉3Aの設置スペースに制限があってもそれほど広い場所を必要とせず、蒸着炉2から燃焼炉3Aまでより確実に蒸着基板Sを搬送することができる蒸着基板Sの搬送手段を設けることができる。
(炭化ケイ素多結晶基板の製造方法)
次に、本発明の第二実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造方法について、前述の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Aを用いて炭化ケイ素多結晶基板を製造する方法を説明する。なお、炭化ケイ素多結晶膜の黒鉛支持基板への成膜方法、黒鉛支持基板の燃焼方法は、第一実施形態と同じであるため、説明を省略する。
炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Aにおける、蒸着基板Sの搬送方法について説明する。蒸着基板Sは、搬送手段38により、燃焼炉3Aに搬送される。ゲート29及びゲート37を上方に移動させて、成膜室22から燃焼炉3Aに亘って、搬送路8を連通させる。搬送アーム382を蒸着炉2に向けたうえで、搬送アーム382を成膜室22内に伸ばし、把持部382dにより蒸着基板Sを把持する。次に、蒸着基板Sを把持したまま、搬送アーム382を縮ませる。さらに、アーム回転軸381を回転させて搬送アーム382を燃焼台座362に向けて、燃焼台座362上で把持部382dを開放して、蒸着基板Sを燃焼台座362上に載置する。最後に、搬送アーム382を初期位置に戻し、ゲート29、及び、ゲート37を下方に移動させて、搬送路8を遮断する。ガス導入口26、ガス導入口34、ガス排出口27、ガス排出口35を適宜用いてガス雰囲気を調整することにより、燃焼炉3Aや搬送路8に炭化ケイ素が析出することや、ヒーター25が酸素で劣化してしまうことを防止することができる。以上により、蒸着基板Sの搬送が完了する。蒸着炉2から燃焼炉3Aに蒸着基板Sを搬送するときには、ヒーター25、ヒーター33を適宜作動させて、成膜室22、燃焼炉3A、及び、搬送路8内の温度を500℃以上に保つ。また、蒸着炉2から燃焼炉3Aに蒸着基板Sを搬送するときには、搬送中に鉛支持基板が燃焼しないように、成膜室22、及び、燃焼炉3A内のガス雰囲気をAr等の不活性ガス雰囲気にしておくことが好ましい。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法は、蒸着基板Sを燃焼させて、黒鉛支持基板を除去する除去工程を含み、蒸着基板Sが、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜が成膜した後から除去工程を開始するまでの間、500℃以上に保持されることから、冷却により生じる炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
[第三実施形態]
(炭化ケイ素多結晶基板の製造装置)
本発明の第三実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置について、図6、図7を参照して説明する。本実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置は、例えば、熱化学蒸着法により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて、蒸着基板を得た後、蒸着基板を燃焼して、黒鉛支持基板を燃焼除去することにより、炭化ケイ素多結晶基板を製造することに用いることができる。第三実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Bは、搬送手段47の搬送アーム472に替えて搬送スロープ474が設けられている点で第一実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1とは異なる。
図6に示すように、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Bは、蒸着炉2Bと、燃焼炉3Bと、蒸着炉2Bと燃焼炉3Bとを直接つなぐ搬送路5Bと、搬送チャンバー4Bを備える。また、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Bは、搬送路5Bを介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段47Bを有する。また、蒸着炉2B、搬送チャンバー4B、燃焼炉3Bは、この順に並んで設けられている。また、本実施形態では、搬送路5Bは、蒸着炉2Bと搬送チャンバー4Bとをつなぐ、例えばSUS316等のステンレスで形成された円筒状の蒸着炉側搬送路6と、搬送チャンバー4Bと、搬送チャンバー4Bと燃焼炉3とをつなぐ、例えばSUS316等のステンレスで形成された円筒状の燃焼炉側搬送路7と、から構成されている。なお、図6、図7においては、蒸着炉2B、搬送チャンバー4B、燃焼炉3Bの並び方向を横方向、紙面平面内で前記横方向と直交する方向を上下方向とし、横方向を矢印X、上下方向を矢印Yで示している。なお、前述した炭化ケイ素多結晶基板製造装置1と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
蒸着炉2Bは、筐体21と、成膜室22と、排出ガス導入室23と、ボックス24と、カーボン製のヒーター25と、ガス導入口26と、ガス排出口27と、黒鉛支持基板を載置する載置部28Bと、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート29と、を有する。
載置部28Bは、成膜室22の内部に設けられており、後述の蒸着台座282Bを支持する回転軸281Bと、回転軸281Bを中心として回転する、円形で平板状の蒸着台座282Bと、回転軸281Bと蒸着台座282Bを回転させる不図示の回転機構を有する。また、載置部28Bにおいて、蒸着台座282Bの上面が黒鉛支持基板の載置面である。また、図7に示すように、蒸着台座282Bの搬送チャンバー4B側が下になるように傾斜可能に構成されている。
燃焼炉3Bは、筐体31と、箱状の耐火層32と、二珪化モリブデン製のヒーター33と、ガス導入口34と、ガス排出口35と、載置部36と、後述する燃焼室321の内部と外部のガス雰囲気を遮断する、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート37と、を有する。耐火層32の内部には、耐火層32で規定される空間である燃焼室321が形成されており、燃焼室321には、蒸着基板Sを載置する載置部36Bが設けられている。また、載置部36Bは、燃焼室321の底面から立設する支柱361Bと、支柱361に支持される、円形で平板状の燃焼台座362Bと、を有している。また、載置部36Bにおいて、燃焼台座362Bには蒸着基板Sが載置され、燃焼台座362Bの上面が蒸着基板Sの載置面である。また、図7に示すように、載置部36Bは、燃焼台座362Bの搬送チャンバー4B側が上になるように傾斜可能に構成されている。
搬送チャンバー4Bは、筐体41と、箱状の耐火層42と、カンタル製のヒーター43と、ガス導入口44と、ガス排出口45と、ゲート46と、搬送手段47Bと、を有している。ゲート46は、例えばSUS316等のステンレスで形成された蒸着炉側ゲート461と、例えばSUS316等のステンレスで形成された燃焼炉側ゲート462と、を有している。
また、搬送手段47Bは、搬送室421の底面から立設する、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成された支柱473と、支柱473に支持される、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成された搬送スロープ474とを有する。搬送スロープ474は、第一スロープ部材474aと、一対の第二スロープ部材474b、一対の第三スロープ部材474cを有している。第一スロープ部材474aの上面と、一対の第二スロープ部材474bの上面と、一対の第三スロープ部材474cの上面は、同一平面状に形成されており、蒸着基板Sの通過面となる。また、第一スロープ部材474aと、第二スロープ部材474bと、第三スロープ部材474cと、は第一スロープ部材474aの両端において、入れ子状に構成されている。すなわち、図6、図7に示すように、一対の第二スロープ部材474bは第一スロープ部材474aの両端において内部にそれぞれ収容可能に構成され、一対の第三スロープ部材474cは一対の第二スロープ部材474bの内部にそれぞれ収容可能に構成されている。すなわち、搬送スロープ474は、蒸着炉2Bの内部方向及び燃焼炉3Bの内部方向に伸縮可能に構成されている。また、搬送スロープ474は、一対の第二スロープ部材474b、一対の第三スロープ部材474cが収容された状態において、左右方向に延びている。
また、図7に示すように、搬送スロープ474は、蒸着炉2B側が上になるように傾斜可能に構成されている。すなわち、図7に示すように、搬送チャンバー4B側が下になるように蒸着台座282Bを傾斜し、搬送スロープ474を伸ばしたうえで、蒸着炉2B側が上になるように搬送スロープ474を傾斜し、搬送チャンバー4B側が上になるように燃焼台座362Bを傾斜すると、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面、搬送スロープ474における蒸着基板Sの通過面、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面が、面一となる。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Bは、化学蒸着により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて蒸着基板Sを得る蒸着炉2Bと、蒸着基板Sを燃焼して、黒鉛支持基板を除去する燃焼炉3Bと、蒸着炉2Bと燃焼炉3Bとを直接つなぐ搬送路5Bと、搬送路5Bを介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段47Bと、を備える。そのため、炭化ケイ素多結晶膜の成膜から黒鉛支持基板の燃焼までの間、黒鉛支持基板を所定温度以上に保持できることにより、炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
また、搬送手段47Bが、蒸着基板Sの搬送時に蒸着基板Sが通過する搬送スロープ474を有することから、重力を利用して、円滑に蒸着基板Sを搬送することができる。
また、蒸着炉2Bが、黒鉛支持基板が載置される蒸着台座282Bを有し、燃焼炉3Bが、蒸着基板Sが載置される燃焼台座362Bを有し、蒸着台座282B、及び、燃焼台座362Bがそれぞれ傾斜して、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面と、搬送スロープ474における蒸着基板Sの通過面と、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面と、を面一にすることができることから、搬送アーム等の機構を用いることなく、重力を利用して、円滑に蒸着基板Sを搬送することができる。
なお、本実施形態において、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面、搬送スロープ474における蒸着基板Sの通過面、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面とが、面一となるように構成されていたが、蒸着基板Sを搬送することができればよく、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面、搬送スロープ474における蒸着基板Sの通過面、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面は面一とならず、それぞれが異なる傾斜角度を有してもよい。
(炭化ケイ素多結晶基板の製造方法)
次に、本発明の第三実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造方法について、前述の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Bを用いて炭化ケイ素多結晶基板を製造する方法を説明する。なお、炭化ケイ素多結晶膜の黒鉛支持基板への成膜方法、黒鉛支持基板の燃焼方法は、第一実施形態と同じであるため、説明を省略する。
炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Bにおける、蒸着基板Sの搬送方法について説明する。蒸着基板Sは、搬送手段47Bにより、燃焼炉3Bに搬送される。ゲート29、蒸着炉側ゲート461、燃焼炉側ゲート462、及び、ゲート37を上方に移動させて、成膜室22から搬送チャンバー4B、燃焼炉3Bに亘って、搬送路5Bを連通させる。さらに、搬送スロープ474を伸ばし、蒸着台座282Bを搬送チャンバー4B側が下になるように傾斜し、搬送スロープ474を蒸着炉2B側が上になるように傾斜し、燃焼台座362Bを搬送チャンバー4B側が上になるように傾斜する。このとき、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面、搬送スロープ474における蒸着基板Sの通過面、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面を、面一とする。そして、蒸着基板Sを蒸着台座282Bから燃焼台座362Bに移動させる。最後に、搬送スロープ474を縮ませ、蒸着台座282B、搬送スロープ474、燃焼台座362Bの傾斜を戻し、ゲート29、蒸着炉側ゲート461、燃焼炉側ゲート462、及び、ゲート37を下方に移動させて、蒸着炉側搬送路6と燃焼炉側搬送路7を遮断する。ガス導入口26、ガス導入口34、ガス導入口44、ガス排出口27、ガス排出口35、ガス排出口45を適宜用いてガス雰囲気を調整することにより、搬送チャンバー4Bや搬送路5Bに炭化ケイ素が析出することや、ヒーター25が酸素で劣化してしまうことを防止することができる。以上により、蒸着基板Sの搬送が完了する。蒸着炉2Bから燃焼炉3Bに蒸着基板Sを搬送するときには、ヒーター25、ヒーター33、ヒーター43を適宜作動させて、成膜室22、燃焼炉3B、搬送チャンバー4B、蒸着炉側搬送路6及び、燃焼炉側搬送路7内の温度を500℃以上に保つ。また、蒸着炉2Bから燃焼炉3Bに蒸着基板Sを搬送するときには、搬送中に黒鉛支持基板が燃焼しないように、成膜室22、燃焼炉3B、搬送チャンバー4B内のガス雰囲気をAr等の不活性ガス雰囲気にしておくことが好ましい。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法は、蒸着基板Sを燃焼させて、黒鉛支持基板を除去する除去工程を含み、蒸着基板Sが、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜が成膜した後から除去工程を開始するまでの間、500℃以上に保持されることから、冷却により生じる炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
[第四実施形態]
(炭化ケイ素多結晶基板の製造装置)
本発明の第四実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置について、図8、図9を参照して説明する。本実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造装置は、例えば、熱化学蒸着法により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて、蒸着基板を得た後、蒸着基板を燃焼して、黒鉛支持基板を燃焼除去することにより、炭化ケイ素多結晶基板を製造することに用いることができる。第四実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Cは、搬送チャンバー4がなく、蒸着炉2Cと燃焼炉3Cとが直接接しており、搬送手段47に替えて、蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371を有する搬送手段が設けられている点で、第一実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1とは異なる。
図8に示すように、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Cは、蒸着炉2Cと、燃焼炉3Cと、蒸着炉2Cと燃焼炉3Cとを直接つなぐ、例えばSUS316等のステンレスで形成された円筒状の搬送路8と、搬送路8を介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段を備える。本実施形態において、搬送手段は、後述する蒸着炉側回転スロープ291と、後述する燃焼炉側回転スロープ371から構成されており、蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371は、蒸着基板Sの搬送スロープとして機能する。なお、図8、図9においては、蒸着炉2C、燃焼炉3Cの並び方向を横方向、紙面平面内で前記横方向と直交する方向を上下方向とし、横方向を矢印X、上下方向を矢印Yで示している。なお、前述した炭化ケイ素多結晶基板製造装置1と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
蒸着炉2Cは、筐体21と、成膜室22と、排出ガス導入室23と、ボックス24と、カーボン製のヒーター25と、ガス導入口26と、ガス排出口27と、黒鉛支持基板を載置する載置部28Bと、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート29と、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成された蒸着炉側回転スロープ291と、を有する。蒸着炉側回転スロープ291は、搬送路8において、ゲート29と成膜室22との間に設けられている、平板状の部材である。また、蒸着炉側回転スロープ291は、図8の紙面を貫く方向に延びる回転軸291aを中心として、回転可能に構成されている。
燃焼炉3Cは、筐体31と、箱状の耐火層32と、二珪化モリブデン製のヒーター33と、ガス導入口34と、ガス排出口35と、載置部36Bと、例えばSUS316等のステンレスで形成されたゲート37と、例えば、SUS316等のステンレスでもよいが、高温条件下での搬送駆動を考慮して、炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンで形成された燃焼炉側回転スロープ371と、を有する。燃焼炉側回転スロープ371は、搬送路8において、ゲート37と燃焼室321との間に設けられている、平板状の部材である。また、燃焼炉側回転スロープ371は、図8の紙面を貫く方向に延びる回転軸371aを中心として、回転可能に構成されている。
また、図9に示すように、燃焼炉3C側が下になるように蒸着台座282Bを傾斜し、蒸着炉2C側が上になるように蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371を回転させ、蒸着炉2C側が上になるように燃焼台座362Bを傾斜すると、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面、蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371における蒸着基板Sの通過面、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面を、面一とすることができる。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Cは、化学蒸着により、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜させて蒸着基板Sを得る蒸着炉2Cと、蒸着基板Sを燃焼して、黒鉛支持基板を除去する燃焼炉3Cと、蒸着炉2Cと燃焼炉3Cとを直接つなぐ搬送路8と、搬送路8を介して、蒸着基板Sを搬送する搬送手段と、を備える。そのため、炭化ケイ素多結晶膜の成膜から黒鉛支持基板の燃焼までの間、黒鉛支持基板を所定温度以上に保持できることにより、炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
また、搬送手段が、蒸着基板Sの搬送時に蒸着基板Sが通過する搬送スロープ(蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371)を有することから、重力を利用して、円滑に蒸着基板Sを搬送することができる。
また、蒸着炉2Cが、黒鉛支持基板が載置される蒸着台座282Bを有し、燃焼炉3Cが、蒸着基板Sが載置される燃焼台座362Bを有し、蒸着台座282B、及び、燃焼台座362Bがそれぞれ傾斜して、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面と、搬送スロープにおける蒸着基板Sの通過面と、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面と、を面一にすることができることから、搬送アーム等の機構を用いることなく、重力を利用して、円滑に蒸着基板Sを搬送することができる。
なお、本実施形態において、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面と、搬送スロープにおける蒸着基板Sの通過面と、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面とが、面一となるように構成されていたが、蒸着基板Sを搬送することができればよく、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面と、搬送スロープにおける蒸着基板Sの通過面と、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面は面一とならなくてもよい。
(炭化ケイ素多結晶基板の製造方法)
次に、本発明の第四実施形態にかかる炭化ケイ素多結晶基板の製造方法について、前述の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Cを用いて炭化ケイ素多結晶基板を製造する方法を説明する。なお、炭化ケイ素多結晶膜の黒鉛支持基板への成膜方法、黒鉛支持基板の燃焼方法は、第一実施形態と同じであるため、説明を省略する。
炭化ケイ素多結晶基板製造装置1Cにおける、蒸着基板Sの搬送方法について説明する。ゲート29、ゲート37を上方に移動させ、蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371を回転させて、成膜室22から燃焼炉3Cに亘って、搬送路8を連通させる。さらに、燃焼炉3C側が下になるように蒸着台座282Bを傾斜し、蒸着炉2C側が上になるように燃焼台座362Bを傾斜する。このとき、蒸着台座282Bにおける黒鉛支持基板の載置面、搬送スロープにおける蒸着基板Sの通過面、燃焼台座362Bにおける蒸着基板Sの載置面が、面一となる。そして、蒸着基板Sを蒸着台座282Bから燃焼台座362Bに移動させる。最後に、蒸着台座282B、燃焼台座362Bの傾斜と、蒸着炉側回転スロープ291及び燃焼炉側回転スロープ371の回転を戻し、ゲート29、及び、ゲート37を下方に移動させて、搬送路8を遮断する。ガス導入口26、ガス導入口34、ガス排出口27、ガス排出口35、を適宜用いてガス雰囲気を調整することにより、燃焼炉3Cや搬送路8に炭化ケイ素が析出することや、ヒーター25が酸素で劣化してしまうことを防止することができる。以上により、蒸着基板Sの搬送が完了する。蒸着炉2Cから燃焼炉3Cに蒸着基板Sを搬送するときには、ヒーター25、ヒーター33を適宜作動させて、成膜室22、燃焼炉3C、及び、搬送路8内の温度を500℃以上に保つ。また、蒸着炉2Cから燃焼炉3Cに蒸着基板Sを搬送するときには、搬送中に黒鉛支持基板が燃焼しないように、成膜室22、燃焼炉3C内のガス雰囲気をAr等の不活性ガス雰囲気にしておくことが好ましい。
本実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法は、蒸着基板Sを燃焼させて、黒鉛支持基板を除去する除去工程を含み、蒸着基板Sが、黒鉛支持基板に炭化ケイ素多結晶膜が成膜した後から除去工程を開始するまでの間、500℃以上に保持されることから、炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができる。冷却により生じる炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生が抑制されることから、デバイスを作製する際の歩留まりが向上し、製造コストを大幅に低減することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前述した実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1、1A、1B、1Cにおいては、蒸着炉においてカーボン製のヒーター25が用いられ、燃焼炉において二珪化モリブデン製のヒーター33が用いられ、搬送チャンバーにおいてカンタル製のヒーター43が用いられていたが、ヒーターの発熱体の材質はこれらに限定されるものではない。すなわち、使用時のガス雰囲気、耐熱温度、コスト等を鑑みて、適切なものを選択することができる。
また、前述した実施形態においては、搬送路やゲートの材質として、例えばSUS316を用いることができること、搬送アームや搬送スロープの材質として、例えば炭化ケイ素コートカーボンやタンタルコートカーボンを用いることができることを説明したが、搬送路、ゲート、搬送アーム、搬送スロープの材質は、これらに限定されるものではない。すなわち、使用時のガス雰囲気、耐熱温度、コスト等を鑑みて、適切なものを選択することができる。
また、前述した実施形態の炭化ケイ素多結晶基板の製造方法においては、炭化ケイ素多結晶基板製造装置1、1A、1B、1Cを用いて、炭化ケイ素多結晶膜の成膜工程から、黒鉛支持基板の除去工程まで、一体の装置で行っていたが、黒鉛支持基板の除去工程が開始されるまでの間、炭化ケイ素多結晶膜が成膜した黒鉛支持基板が500℃以上に保持されていればよく、蒸着炉と燃焼炉とが別体に構成されていてもよい。蒸着炉と燃焼炉とが別体に構成されている場合、例えば、移動式の搬送チャンバー等を用いて、炭化ケイ素多結晶膜が成膜した黒鉛支持基板を500℃以上に保持しながら燃焼炉に搬送してもよい。
また、前述した実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1、1A、1B、1Cにおいては、搬送手段として搬送アームと搬送スロープのどちらかが設けられていたが、搬送手段として搬送アームと搬送スロープの両方を併用してもよい。例えば、搬送スロープに炭化ケイ素多結晶が蒸着して蒸着基板Sが円滑に搬送されない等の場合は、搬送アームを併用することで蒸着基板Sを搬送してもよい。
また、前述した実施形態においては、搬送前後で蒸着基板Sの上下が同じになるように搬送されていたが、蒸着基板Sを搬送するときに、蒸着基板Sの上下を反対にして黒鉛支持基板が上になるようにして燃焼台座に載置してもよい。これにより、炭化ケイ素多結晶膜が黒鉛支持基板の加熱を阻害せずに黒鉛支持基板が加熱されやすくなるため、蒸着基板Sの黒鉛支持基板をより効率よく燃焼させることができる。
また、前述した実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置においては、第一実施形態及び第三実施形態では蒸着炉、搬送チャンバー、燃焼炉の順で、第二実施形態及び第四実施形態では蒸着炉、燃焼炉の順で並んでいたが、これらの並び順は上記順序に限定されない。また、蒸着炉、搬送チャンバー、燃焼炉は直線状に並んでいなくてもよい。
また、前述した実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置においては、蒸着炉、燃焼炉、搬送チャンバーが、横断面視円環状に形成されていたが、形状はこれに限定されない。例えば、蒸着炉、燃焼炉、搬送チャンバーが、横断視角型状に形成されていてもよい。
また、前述した実施形態においては、炭化ケイ素多結晶基板を1枚製造する例を説明したが、複数枚を同時に製造してもよい。例えば、蒸着炉の成膜室や燃焼炉の内部に複数枚の基板を設置できるように台座を設けることができる。また、複数枚の炭化ケイ素多結晶基板を、同時に製造する場合には、搬送手段としての搬送アームや搬送スロープを、複数設けてもよい。また、搬送アームを搬送手段として用いる場合には、左右方向だけではなく、上下方向や斜め方向にも動くような、稼働領域がより広い搬送アームを用いてもよい。
以下、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されることはない。
本実施例においては、前述した第一実施形態の炭化ケイ素多結晶基板製造装置1を用いて、炭化ケイ素多結晶基板を製造した。
(実施例1)
黒鉛支持基板として、直径150mm、厚さ500μmの黒鉛基板を使用した。黒鉛支持基板を蒸着炉2の蒸着台座282上に載置し、成膜室22内を不図示の排気ポンプにより真空引きをした後、1350℃まで加熱した。原料ガスとして、SiCl4、CH4を用い、キャリアガスとしてH2を用い、不純物ドーピングガスとしてN2を用いた。炭化ケイ素多結晶膜の成膜工程においては、途中でガスの混合割合を変更して、二段階の工程により成膜を行った。第一成膜工程では、SiCl4:CH4:H2:N2=1:1:10:10の条件で、30分間の成膜を実施した。続いて、第二成膜工程では、N2ガスの流量を低減し、SiCl4:CH4:H2:N2=1:1:10:5の条件で20時間の炭化ケイ素多結晶膜の成膜を実施した。以上の成膜工程により、黒鉛支持基板上に厚さ600μmの炭化ケイ素多結晶膜が成膜した蒸着基板Sを得た。このときの成膜室22内の圧力は30kPaであった。
次に、蒸着基板Sを1000℃以上の温度を保持したまま、搬送手段47により燃焼炉3内に搬送した。搬送中に黒鉛支持基板が燃焼しないように、成膜室22、搬送チャンバー4、及び、燃焼炉3内のガス雰囲気をAr等の不活性ガス雰囲気にした。ゲート29及び蒸着炉側ゲート461を上方に移動させて、成膜室22から搬送チャンバー4内に亘って、蒸着炉側搬送路6を連通させた。搬送アーム472を蒸着炉2に向けたうえで、搬送アーム472を成膜室22内に伸ばし、把持部472dにより蒸着基板Sを把持した。次に、蒸着基板Sを把持したまま、搬送アーム472を縮ませた。ゲート29及び蒸着炉側ゲート461を下方に移動させて、蒸着炉側搬送路6を遮断し、さらに、燃焼炉側ゲート462及びゲート37を上方に移動させて、搬送チャンバー4から燃焼炉3に亘って、燃焼炉側搬送路7を連通させた。さらに、アーム回転軸471を回転させて搬送アーム472を燃焼炉3に向けたうえで、搬送アーム472を燃焼炉3内に伸ばし、燃焼台座362上で把持部472dを開放して、蒸着基板Sを燃焼台座362上に載置した。最後に、搬送アーム472を縮ませて搬送チャンバー4内に戻した後、燃焼炉側ゲート462及びゲート37を下方に移動させて、燃焼炉側搬送路7を遮断した。以上により、蒸着基板Sの搬送が完了した。
さらに、燃焼炉3において、黒鉛支持基板の除去工程を行った。蒸着基板Sが燃焼台座362に載置された状態で、ガス導入口34から燃焼室321にO2を供給しながら、圧力は1気圧で、1000℃で、10時間保持して、蒸着基板Sを燃焼させることで、黒鉛支持基板を除去した。以上により、炭化ケイ素多結晶基板を得た。
燃焼炉3内から炭化ケイ素多結晶基板を取り出した後、表面研削、及び、研磨を行い、平滑な膜厚390μmの炭化ケイ素多結晶基板を得た。得られた炭化ケイ素多結晶基板を、1500℃で、30分加熱した後に、反りの有無を確認した。炭化ケイ素多結晶基板の反りについて、炭化ケイ素多結晶基板の表面の中心線上を斜入射型光学測定器により測定し、得られた測定値の最大値と最小値との差を反り量とした。測定は5点とし、中心、円周端部、および中心と円周端部との間にあり、中心からの距離と円周端部からの距離が同じ地点について、測定した。反り量が、40μm以上のとき、デバイス等の製造工程で問題の生じ得る反りが有ると判定した。反り量を測定した結果、反り量は30μmであり、実施例の炭化ケイ素多結晶基板において、問題の生じ得る反りは確認されなかった。
(比較例1)
比較例1として、実施例1と同様の蒸着炉2を用いて、同じ条件で、黒鉛支持基板上に炭化ケイ素多結晶膜を成膜した。成膜後の蒸着基板Sを蒸着炉2内から取り出し口を介して外部へ取り出し、室温まで冷却した。蒸着炉2とは異なる場所に設置された燃焼炉3の取り出し口を介して、蒸着基板Sを外部から内部へと入れて、燃焼台座362に冷却した蒸着基板Sを載置した。そして、蒸着基板Sを、酸素雰囲気下、圧力は1気圧の条件で、1000℃で、10時間保持し、蒸着基板Sを燃焼させることで、実施例1と同じ条件により黒鉛支持基板を除去した。以上により、炭化ケイ素多結晶基板を得た。
燃焼炉3内から炭化ケイ素多結晶基板を取り出した後、表面研削、及び、研磨を行い、平滑な膜厚390μmの炭化ケイ素多結晶基板を得た。得られた炭化ケイ素多結晶基板を、1500℃で、30分加熱した後に、実施例1と同様の方法で反り量を測定した。その結果、反り量は120μmであり、比較例の炭化ケイ素多結晶基板において、デバイス等の製造工程で問題の生じ得る反りが確認された。
(評価結果の考察)
以上の評価結果により、本発明の例示的態様である実施例1において、炭化ケイ素多結晶基板の製造において、再度の加熱による炭化ケイ素多結晶基板の反りの発生を抑制することができることが示された。