JP7233389B2 - 多孔質シリコン粒子の製造方法、蓄電デバイス用電極の製造方法、全固体リチウムイオン二次電池の製造方法、多孔質シリコン粒子、蓄電デバイス用電極及び全固体リチウムイオン二次電池 - Google Patents
多孔質シリコン粒子の製造方法、蓄電デバイス用電極の製造方法、全固体リチウムイオン二次電池の製造方法、多孔質シリコン粒子、蓄電デバイス用電極及び全固体リチウムイオン二次電池 Download PDFInfo
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Description
50質量%以上の第1元素であるAlと50質量%以下のSiとを含むシリコン合金を溶解して粒子化する粒子化工程と、
前記シリコン合金中の前記第1元素を除去して多孔質シリコン粒子を得る多孔化工程と、
を含むものである。
上述した多孔質シリコン粒子の製造方法で得られた前記多孔質シリコン粒子を電極活物質として用い、該多孔質シリコン粒子の平均空隙率が5体積%以上50体積%以下の範囲となるように圧縮するプレス工程、
を含むものである。
上述した蓄電デバイス用電極の製造方法で得られた前記蓄電デバイス用電極を負極として用い、正極とリチウムイオンを伝導する固体電解質と前記負極とを積層した積層体を作製し、前記作製した積層体を積層方向に拘束部材で拘束する積層拘束工程、
を含むものである。
平均粒径が0.1μm以上100μm以下の範囲であり、空隙を有する三次元網目構造の骨格状シリコンを含み、平均空隙率が50体積%以上95体積%以下の範囲であり、酸素を除く元素の比率でSiを85質量%以上含み、Alを15質量%以下の範囲で含むものである。
正極活物質を含む正極と、
上述した蓄電デバイス用電極である負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する固体電解質と、
を備えたものである。
本開示の多孔質シリコン粒子の製造方法は、粒子化工程と、多孔化工程とを含む。粒子化工程では、第1元素であるAlとSiとを含むシリコン合金を溶解して粒子化する処理を行う。多孔化工程では、シリコン合金中の第1元素を除去して多孔質シリコン粒子を得る処理を行う。
粒子化工程では、第1元素を50質量%以上、Siを50質量%以下の範囲で含むシリコン合金を用いる。この工程では、第1元素を60質量%以上の範囲で含むシリコン合金を用いることが好ましく、70質量%以上の範囲で含むシリコン合金を用いることがより好ましく、80質量%以上含むシリコン合金を用いるものとしてもよい。また、この工程では、第1元素を92質量%以下の範囲で含むシリコン合金を用いることが好ましく、90質量%以下の範囲で含むシリコン合金を用いることがより好ましく、85質量%以下の範囲で含むシリコン合金を用いるものとしてもよい。第1元素をこのような範囲で含むシリコン合金では、空隙率をより高めると共に、より好適な形状、サイズの空隙を得ることができ好ましい。また、第1元素が92質量%以下では、シリコン骨格を保つことができ、50質量%以上では、空隙率をより高めることができる。Alの含有量が多いと、溶融して合金としたあと、急速冷却するとAlの単相が大きく析出するので、多くの空隙を形成させることができる。この工程では、共晶組成となる範囲で第1元素を含むシリコン合金を用いることが好ましい。共晶組成は、Alが87.6質量%であり、Siが12.6質量%であるが、共晶組成近傍としてもよく、亜共晶組成や過共晶組成の一部など、所定の幅を有するものとしてもよい。例えば、共晶組成に対して±3質量%の範囲を含むものとしてもよい。図1は、Al-Si二元系平衡状態図である。
多孔化工程では、上記作製したシリコン合金の粒子からSi以外の物質を除去する処理を行う。Si以外の物質としては、例えば、第1元素のAlやその化合物、第2元素やその化合物などが挙げられる。この工程では、酸又はアルカリによって第1元素のAlやその化合物、第2元素やその化合物を選択的に除去することが好ましい。用いる酸またはアルカリは、シリコン合金中のシリコン以外の元素及び/又は化合物を溶出し、シリコンが溶出されないものが好ましく、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。この酸又はアルカリは、水溶液とすることが好ましい。酸又はアルカリの濃度は、第1元素のAlやその化合物、第2元素やその化合物を除去できる範囲であれば特に限定されず、例えば、1mol/L以上5mol/L以下の範囲などにすることができる。この除去処理は、例えば、20℃~60℃で加温するものとしてもよい。また、除去処理は、シリコン合金の粒子を酸又はアルカリ溶液に浸漬し、1~5時間程度で撹拌を行うことが好ましい。得られた多孔質シリコン粒子は、その後、洗浄および乾燥を行う。
本開示の多孔質シリコン粒子は、上述した製造方法で作製されたものであり、平均粒径が0.1μm以上100μm以下の範囲であり、空隙を有する三次元網目構造の骨格状シリコンを含み、平均空隙率が50体積%以上95体積%以下の範囲であり、酸素を除く元素の比率でSiを85質量%以上含み、Alを15質量%以下の範囲で含むものである。この多孔質シリコン粒子において、平均空隙率は、より高いことが好ましく、60体積%以上が好ましく、70体積%以上がより好ましく、80体積%以上が更に好ましい。また、シリコン骨格の存在の必要性から、この平均空隙率は、95体積%以下が好ましく、90体積%以下がより好ましく、86体積%以下が更に好ましい。多孔質シリコン粒子において、空隙の細孔径は、1nm以上1μm以下の範囲が好ましく、10nm以上としてもよいし、50nm以上としてもよいし、100nm以上としてもよい。また、空隙の細孔径は、500nm以下としてもよいし、300nm以下としてもよいし、250nm以下としてもよい。
本開示の蓄電デバイス用電極は、上述した多孔質シリコン粒子を電極活物質として備えたものである。この電極は、活物質の電位に対して対極の電位に基づいて正極又は負極のいずれかとなるが、リチウムをキャリアとする場合、負極とすることが好ましい。この電極は、例えば、リチウムイオン二次電池、ハイブリッドキャパシタ、空気電池などに利用することができる。蓄電デバイス用電極は、多孔質シリコン粒子の平均空隙率が5体積%以上50体積%以下の範囲に圧縮されているものとしてもよい。この電極では、作製時に圧縮することにより、多孔質シリコン粒子の空隙率が減少したものとしてもよい。多孔質シリコン粒子の空隙率が5体積%以上50体積%以下の範囲で作製したものに比して、50体積%以上95体積%で作製したのち圧縮してこの範囲としたものの方が、空隙の形状などによって、より良好な充放電特性を示す。例えば、多孔質シリコンの粒子をリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いる場合、細孔が小さいほどリチウムイオンが合金化する際に、均一に合金化するため、応力集中が減少し、電極そのものの劣化を防ぐことが可能となる。この圧縮後の多孔質シリコン粒子の平均空隙率は、蓄電デバイス用電極に求められる特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、10体積%以上や、20体積%以上としてもよい。また、この圧縮後の多孔質シリコン粒子の平均空隙率は、例えば、40体積%以下や、30体積%以下としてもよい。
本開示の蓄電デバイスは、上述した多孔質シリコン粒子を有する電極を備えたものである。この蓄電デバイスは、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在しキャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものとしてもよい。多孔質シリコン粒子は、負極活物質として用いることができる。この蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池、ハイブリッドキャパシタ、空気電池などのうちいずれかであるものとしてもよい。正極において、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn2O4などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMncO2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV2O3などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV2O5などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、Li(1-x)Ni1/3Co1/3Mn1/3O2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、AlやMgなど他の元素を含んでもよい趣旨である。あるいは、正極活物質は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている炭素質材料としてもよい。炭素質材料としては、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素質材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。正極に用いられる導電材や結着材、溶媒、集電体などは、上述した電極で例示したものを適宜利用することができる。
この蓄電デバイスは、全固体リチウムイオン二次電池とすることが好ましい。全固体電池では、電解液による性能の変化をより抑制することができ、更に安全性を高めることができ好ましい。この全固体リチウムイオン二次電池は、正極活物質を含む正極と、上述した蓄電デバイス用電極である負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する固体電解質と、を備えたものとしてもよい。正極は、上述した蓄電デバイスに示したいずれかを用いることができる。また、負極は、上述した蓄電デバイス用電極を用いることができる。
本開示の蓄電デバイス用電極の製造方法は、上述した多孔質シリコン粒子の製造方法で得られた多孔質シリコン粒子を電極活物質として用い、多孔質シリコン粒子の平均空隙率が5体積%以上50体積%以下の範囲となるように圧縮するプレス工程、を含む。このプレス工程によれば、好適な細孔形状を維持したまま、空隙率を低下させ、エネルギー密度をより高めることができる。この工程では、多孔質シリコン粒子の平均空隙率が10体積%以上や20体積%以上の範囲、及び40体積%以下や30体積%以下の範囲になるよう圧縮してもよい。圧縮後の多孔質シリコン粒子の平均空隙率は、蓄電デバイス用電極に求められる特性に応じて適宜調整すればよい。このプレス工程では、例えば、2MPa以上20MPa以下の範囲で電極をプレスするものとしてもよい。また、プレス工程では、多孔質シリコン粒子を必要に応じて導電材や結着材と溶媒に混合しペースト状にして集電体上に塗布する処理か、多孔質シリコン粒子を必要に応じて導電材や結着材と混合して集電体に圧着する処理を行うものとしてもよい。多孔質シリコン粒子の配合量などは、蓄電デバイス用電極で説明した内容を適宜用いることができる。
本開示の蓄電デバイスの製造方法は、上述した蓄電デバイス用電極の製造方法で得られた蓄電デバイス用電極を負極として用い、正極と負極とを対向させ、正極と負極との間にリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体を介在させるものとしてもよい。正極と負極との間にセパレータを介してもよい。正極、負極、イオン伝導媒体及びセパレータは、上述した蓄電デバイスで挙げたもののいずれかを適宜用いることができる。
本開示の全固体リチウムイオン二次電池の製造方法は、上述した蓄電デバイス用電極の製造方法で得られた蓄電デバイス用電極を負極として用い、正極とリチウムイオンを伝導する固体電解質と負極とを積層した積層体を作製する積層体作製工程を含む。この製造方法で用いる正極、負極、固体電解質は、上述した全固体リチウムイオン二次電池で挙げたもののいずれかを適宜用いることができる。また、この製造方法で用いる正極、負極、固体電解質の厚さやサイズは、所望の電池特性に合わせて適宜選択することができる。また、この製造方法では、蓄電デバイス用電極の製造方法におけるプレス工程を積層体作製工程で行うものとしてもよい。即ち、正極と固体電解質と負極とを積層した積層体をプレスする際に、同時に負極がプレスされるものとしてもよい。
(実験例1)
10mm角の塊状のAlを87質量%と、塊状のSiを13質量%秤量して混合し、Ar不活性雰囲気中において高周波加熱法により溶解して合金溶湯とした。この合金溶湯をAr不活性ガスを用いたガスアトマイズ法によって平均粒径8μmのAlSi合金粉末を得た(粒子化工程)。なお、この合金粉末は、Al-Si共晶組成であり(図1参照)、共晶Si相およびAl相からなるAlSi合金粉末であった。得られた粉末に対してX線回折を行ったところ、結晶質相としてのAl相及びSi相の存在が確認された。次に、得られた合金粉末を純水中に希釈した3mol/Lの塩酸に入れ、室温25℃で1時間攪拌したのち十分に洗浄しながら濾過し、30℃の真空乾燥炉で2時間乾燥した(多孔化工程)。このようにして、実施例1の負極活物質を作製した。
Alを82質量%、Siを18質量%用いたこと以外は上記実験例1と同様にして実験例2の負極活物質を製造した。なお、このときの合金粉末は、Al-Si過共晶組成であり、初晶Si、共晶Si相およびAl相からなるAlSi合金粉末であった。実験例1と同様の条件で酸処理を行い、実験例2の負極活物質とした。
Alを73質量%、Siを27質量%用いたこと以外は上記実験例1と同様にして実験例3の負極活物質を製造した。なお、このときの合金粉末は、Al-Si過共晶組成であり、初晶Si、共晶Si相およびAl相からなるAlSi合金粉末であった。実験例1と同様の条件で酸処理を行い、実験例3の負極活物質とした。
Alを90質量%、Siを10質量%を用いたこと以外は上記実験例1と同様にして実験例4の負極活物質を製造した。なお、このときの合金粉末は、Al-Si亜共晶組成であり、初晶Al、共晶Si相およびAl相からなるAlSi合金粉末であった。実験例1と同様の条件で酸処理を行い、実験例4の負極活物質とした。
Alを87質量%、Siを10質量%、Cuを3質量%用いた以外は上記実験例1と同様にして実験例5の負極活物質を製造した。なお、このときの合金粉末は、初晶Al、共晶Si相およびAl2Cu相からなるAlSiCu合金粉末であった。実験例1と同様の条件で酸処理を行い、実験例5の負極活物質とした。
Alを43質量%、Siを57質量%を用いたこと以外は上記実験例1と同様にして実験例6の負極活物質を製造した。なお、このときの合金粉末は、Al-Si過共晶組成であり、初晶Si、共晶Si相およびAl相からなるAlSi合金粉末であった。実験例1と同様の条件で酸処理を行い、実験例6の負極活物質とした。
平均粒径が5μmのSi粉末を実験例7の負極活物質とした。
酸処理後の多孔質シリコン粉末をHFとHNO3とで溶解し、ICP発光分光分析(ICP-OES,日立ハイテクサイエンス製PS3520UVDDII II)でポーラスシリコン中のAl量を測定した。また、走査電子顕微鏡(SEM,HITACHI製S-4300)およびエネルギー分散型X線分析(EDAX,HITACHI製S-4300)で観察、元素分析を行った。また、水銀ポロシメータ(カンタクローム製POWERMASTER60GT)で細孔分布を測定した。
図3は、実験例1のガスアトマイズ後のAl-Si合金を観察したSEM像である。図3に示すように、大きな初晶Alの間に共晶Siが存在する構造が確認された。図4は、実験例1の多孔質シリコン粒子のSEM像及びEDAXマッピング像であり、図4Aが全体像、図4B、Cが拡大像、図4DがEDAX像である。実験例1では、原料の組成としてはSiが13質量%であるが、図4Bに示すように、粒子の形状を保っており、粒子内部まで空隙を有する三次元網目構造の骨格状シリコンを含む構造であることが確認された。また、EDAX像から、ごく少量のAl及びOが検出されたが、Siにより構造が構成されていることがわかった。また、室温の酸処理である多孔化工程によって、ほとんどの初晶Alが除去されることが確認された。ICP-OESで求めた多孔化処理後のAl濃度は4.2質量%であり、この結果からも、原料粉末の組成からみて大部分のアルミニウムが溶出して多孔質シリコンが形成されたと考えられた。図5は、実験例1の多孔質シリコン粒子の細孔分布曲線である。水ポロシメータでは、粒子間の空孔が測定結果に含まれることがあることから、多孔化処理前の合金粒子の測定と多孔化処理後の多孔質シリコン粒子の測定とを行い、その差分値を細孔容積とした。図5では、その差分を網掛けで示した。図5に示すように、細孔径は、1μm以下であり、これは、SEM像で確認した空隙の大きさと一致した。水銀ポロシメータで測定した結果、実験例1の多孔質シリコン粒子の細孔分布は、50~500nmであり、細孔径は、200nm付近で最も多く、空隙率は76体積%であった。
実験例1~7の各々の負極活物質を82質量%、導電材として平均粒径2μmのアセチレンブラックを6質量%、結着材としてのポリイミドを12質量%秤量して混合し、N-メチルピロリドンを加えてから攪拌して負極合材スラリーを作製した。次に、このスラリーを厚さ12μmの銅箔上に塗布して乾燥し、これを圧延して厚さ50μmの負極電極を作製した。この圧延によって、多孔質シリコン粒子は、三次元網目構造を維持したまま、その空隙率が50体積%程度に減少したものと見積もられた。作製した負極電極を直径16mmの円形に打ち抜き、この負極電極に多孔質ポロエチレン製セパレータを挟んで対極として金属リチウムを重ねて積層体とした。続いて、炭酸エチレン(EC)/炭酸ジメチル(DMC)/炭酸エチルメチル(EMC)を体積比で3:4:3で混合した混合溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で添加した電解液を上記積層体へ注液することにより、トムセル型小型電池セルであるリチウム二次電池を製造した。得られたリチウム二次電池に対して、電池電圧0V~1.5Vの範囲で0.2Cの電流密度による充放電を10サイクル繰り返し行った。
実験例1~7の初回放電容量(mAh/g)、10サイクル後の放電容量(mAh/g)及び容量維持率(%)をまとめて表2に示した。容量維持率は、1サイクル目の放電容量Q1と、10サイクル目の放電容量Q10とを用い、Q10/Q1×100の式から求めた。表2に示すように、実験例7で26%と低く、空隙を有さないシリコン粒子では、体積変化を吸収することができず、電極に不具合が発生したものと推察された。また、空隙率が33体積%と低い実験例6においても容量維持率は70%未満を示し、十分ではないことがわかった。一方、実験例1~5のリチウム二次電池では、容量維持率が84~93%と良好な値を示し、電極が安定的であることがわかった。このように、実験例1~5に示すように、空隙率60体積%以上を示す多孔質シリコン粒子が圧縮されて空隙率5体積%以上50体積%以下の範囲になると特に容量維持率を高めることができることがわかった。
(正極の作製)
ポリプロピレン製容器に、酪酸ブチルと、PVdF系バインダーである5質量%酪酸ブチル溶液と、正極活物質として平均粒径6μmのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子と、固体電解質としてLi2S-P2S5を含むガラスセラミックと、導電材として気相成長炭素繊維(VGCF)とを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製 UH-50)で30秒間攪拌した。正極活物質と固体電解質と導電材と結着材(固体成分)の質量比は、70:10:10:10とした。次に、容器を振とう器(柴田科学社製TTM-1)で3分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間攪拌した。その後さらに振とう器で3分間振とうしてスラリーを得た。アプリケーターを使用してブレード法にて当該スラリーを、厚さ10μmのアルミニウム箔(昭和電工社製)上に塗工した。その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることにより、アルミニウム箔上に正極合材層(厚さ50μm)を備えた正極を得た。
負極活物質としてのSi粒子(多孔質シリコン粒子を含む)に対し、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定装置(Malvern社製Scirocco2000)により粒度測定を行った。負極に含まれるシリコン材料の平均粒子径(D50)は、5~15μmであり、D10は1~2μm及びD90は10~20μmであった。なお、測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側からの累積10体積%に相当する粒径をD10、累積50体積%に相当する粒径をD50、累積90体積%に相当する粒径をD90とした。ポリプロピレン製容器に、酪酸ブチルと、PVdF系バインダーの5質量%酪酸ブチル溶液と、負極活物質として実験例1~7のSi粒子と、固体電解質としてLi2S-P2S5を含むガラスセラミックとを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)で30秒間攪拌した。次に、容器を振とう器(柴田科学社製TTM-1)で30秒間振とうさせて、スラリーを得た。アプリケーターを使用してブレード法にて当該スラリーを厚さ10μmの銅箔上に塗工した。その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることにより、銅箔上に負極合材層(厚さ30μm)を備えた負極を得た。
ポリプロピレン製容器に、ヘプタンと、BR系バインダーの5質量%ヘプタン溶液と、固体電解質としてLiI-LiBr-Li2S-P2S5を含むガラスセラミックとを加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)で30秒間攪拌した。次に、容器を振とう器(柴田科学社製TTM-1)で30秒間振とうさせて、スラリーを得た。アプリケーターを使用してブレード法にて当該スラリーを基材(アルミニウム箔)上に塗工した。その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることにより、基材上に固体電解質層(厚さ15μm)を形成した。
固体電解質層が正極合材層と接触するように、固体電解質層と正極とを積層して、1ton/cm2でプレスした。その後、基材を剥がして、固体電解質層と正極との二層体とした。次に、二層体の固体電解質層と負極合材層とが接触するように、二層体と負極とを積層して、6ton/cm2でプレスすることで、正極と負極との間に固体電解質を有する積層体を得た。得られた積層体(セル)について図6に示すようなネジ締め式の拘束部材35を用いて所定の拘束圧力にて拘束し、全固体リチウムイオン電池である評価セルとした。図6は、評価セル30の説明図である。評価セル30は、全固体リチウム二次電池であり、拘束部材31、正極32、負極35、固体電解質38、電池ケース39を備える。正極32、負極35及び固体電解質38は、積層体37を構成する。電池ケース39は、積層体37を収容している。拘束部材37は、積層体37が剥離しない方向に四方から電池ケース39を拘束する。
得られた全固体リチウムイオン二次電池の評価セルに対して、電池電圧3.0V~4.5Vの範囲で0.2Cの電流密度による充放電を5サイクル繰り返し行った。容量維持率は、1サイクル目の放電容量Q1と、5サイクル目の放電容量Q5とを用い、Q5/Q1×100の式から求めた。また、拘束状態で電池ケース内に圧力センサ(共和電業製ロードセル)を挿入し、充放電時の拘束圧の変動を測定した。
図7は、実験例1、7の評価セルの充放電曲線である。また、実験例1~7の電極におけるシリコン粒子の空隙率(体積%)、初回拘束圧変動値、2サイクル目の拘束圧変動値、初回放電容量(mAh/g)、5サイクル目の放電容量(mAh/g)及び容量維持率(%)を表3にまとめた。拘束圧変動値は、実験例7を100として規格化した相対値を表3に示した。図7、表3に示すように、実験例1、7の初回放電容量は、それぞれ147mAh/g、141mAh/gと大差ないのに対し、実験例1の初回および2サイクル目の拘束圧変動は、実験例7に対する相対値としてそれぞれ65.0%、72.7%と大幅に減少した。また、容量維持率についても、実験例7の97.2%に比して実験例1が98.6%であり、実験例1が好適であった。なお、サイクル数をより増加すると、実験例7の低下がより顕著になり、容量維持率の差が更に開くことが予想された。また、同様に、実験例2~5の初回及び2サイクル目の拘束圧変動は、実験例7に対する相対値として61.3~68.8%、65.9~75.0%であり、実験例6,7に比して拘束圧がより低減されることがわかった。実験例2~5の容量維持率についても98.6~98.7%であり、容量維持率も向上することがわかった。
Claims (14)
- 50質量%以上の第1元素であるAlと50質量%以下のSiとを含むシリコン合金を溶解して粒子化する粒子化工程と、
前記シリコン合金中の前記第1元素を除去して多孔質シリコン粒子を得る多孔化工程と、
を含み、
前記粒子化工程では、前記第1元素と前記Siとに加え第2元素であるCuを含む前記シリコン合金を用いる、多孔質シリコン粒子の製造方法。 - 前記多孔化工程では、酸又はアルカリによって前記第1元素を選択的に除去する、請求項1に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
- 前記多孔化工程では、Si以外の物質を85質量%以上100質量%以下の範囲で除去する、請求項1又は2に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
- 前記多孔化工程では、平均空隙率が50体積%以上95体積%以下の範囲の前記多孔質シリコン粒子を得る、請求項1~3のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
- 前記粒子化工程では、前記シリコン合金の溶湯をガスアトマイズ法、水アトマイズ法及びロール急冷法のうちいずれかの方法で粒子化する、請求項1~4のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
- 前記粒子化工程では、平均粒径が0.1μm以上100μm以下の範囲で前記シリコン合金を粒子化する、請求項1~5のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載の多孔質シリコン粒子の製造方法で得られた前記多孔質シリコン粒子を電極活物質として用い、該多孔質シリコン粒子の平均空隙率が5体積%以上50体積%以下の範囲となるように圧縮するプレス工程、
を含む蓄電デバイス用電極の製造方法。 - 電極活物質全体を100質量%として、前記多孔質シリコン粒子が90質量%以上を占める蓄電デバイス用電極を製造する、請求項7に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
- 請求項7又は8に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法で得られた前記蓄電デバイス用電極を負極として用い、正極とリチウムイオンを伝導する固体電解質と前記負極とを積層した積層体を作製し、前記作製した積層体を積層方向に拘束部材で拘束する積層拘束工程、
を含む全固体リチウムイオン二次電池の製造方法。 - 平均粒径が0.1μm以上100μm以下の範囲であり、空隙を有する三次元網目構造の骨格状シリコンを含み、平均空隙率が50体積%以上95体積%以下の範囲であり、酸素を除く元素の比率でSiを85質量%以上含み、Alを15質量%以下の範囲で含み、15質量%以下の範囲でCuを含む、
多孔質シリコン粒子。 - 平均空隙率が60体積%以上である、請求項10に記載の多孔質シリコン粒子。
- 請求項10又は11に記載の多孔質シリコン粒子を電極活物質として含み、該多孔質シリコン粒子の平均空隙率が5体積%以上50体積%以下の範囲に圧縮されている、蓄電デバイス用電極。
- 電極活物質全体を100質量%として、前記多孔質シリコン粒子が90質量%以上を占める、請求項11に記載の蓄電デバイス用電極。
- 正極活物質を含む正極と、
請求項12又は13に記載の蓄電デバイス用電極である負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導する固体電解質と、
を備えた全固体リチウムイオン二次電池。
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