本出願は、2019年5月31日に日本国に特許出願された特願2019-103238の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
<SAWセンサの機能>
図1は、一実施形態に係るセンサ装置1の構成を示す模式図である。一実施形態に係るセンサ装置1は、基板10と、第1IDT(Inter Digital Transducer)電極11と、第2IDT電極12と、導波路20とを備える。センサ装置1は、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)70の伝搬特性の変化に基づいて検出対象を検出できるSAWセンサとして機能する。
センサ装置1は、電気信号を第1IDT電極11に入力する。第1IDT電極11は、入力された電気信号に基づいて基板10を伝搬する表面弾性波70を送信することができる。第2IDT電極は、表面弾性波70を受信し、電気信号に変換することができる。
一実施形態に係るセンサ装置1において、第1IDT電極11、第2IDT電極12、及び導波路20は、基板10に位置している。また、導波路20は、第1IDT電極11及び第2IDT電極12の間に位置している。したがって、表面弾性波70の伝搬経路は、基板10の表面と、基板10の表面に位置する導波路20とを含む。つまり、SAW70は、導波路20を介して、第1IDT電極11から第2IDT電極12まで伝搬する。言い換えれば、導波路20は、SAW70の伝搬経路の一部に位置している。ここで、電気信号は、センサ装置1を機能させるための電気的な信号である。電気信号は、例えば、電圧信号又は電流信号などを含んでもよい。
なお、図示を省略しているが、センサ装置1は、電気信号の入出力、及び電気信号に基づく種々の演算等のセンサ装置1全体の制御を行うことができる制御部を有している。制御部は、従来周知の方法によって構成されればよい。
SAW70は、所定の伝搬特性で伝搬する。SAW70の伝搬特性は、伝搬経路の状態に基づいて決定される。センサ装置1は、SAW70の伝搬特性の変化を測定することによって、伝搬経路の状態の変化を検出できる。伝搬特性は、例えば、表面弾性波70の伝搬速度、位相、振幅、周期、及び波長などを含む。
一実施形態に係るセンサ装置1は、測定したSAW70の位相に基づいて、伝搬経路に存在する検出対象を検出できる。
送信したSAW70の位相は、例えば、伝搬経路上の状態に応じて変化する。具体的には、例えば伝搬経路上に物質が存在している場合、物質の質量、粘度、及び密度等の変化に応じて、SAW70の伝搬速度が変化する。この場合、第2IDT電極12が受信する表面弾性波70は、第1IDT電極11が送信したSAW70に対して、伝搬速度の差に応じて位相に差が生じる。したがって、センサ装置1は、SAW70の位相差の大きさに基づいて、伝搬経路上に存在する検出対象の物質の質量、粘度、及び密度等を測定することができる。
この場合、位相差と検出対象の物質の質量等との関係を特定する検量線が、予め準備されていてもよい。具体的には、既知の質量等を有した既知の物質を測定し、その場合の位相差を測定することによって、センサ装置1は、当該既知の質量等と測定した位相差の関係を検量線として取得する。センサ装置1は、検量線に基づいて、位相差を伝搬経路に存在する検出対象の物質の質量等に変換することができる。
導波路20は、SAW70の伝搬経路のうち、検体60が接触する領域である。導波路20には、検体60中の検出対象と反応可能な物質(反応物質)が位置している。ここで、検出対象は、例えば、抗体51、抗原61、及び基質である。この場合、反応物質は、それぞれ、例えば、抗原61、抗体51、及び酵素である。また、例えば、検出対象が抗原61である場合、反応物質を検出対象と同一の抗原61又は検出対象と類似のエピトープを有する類似物質としてもよい。この場合、検出対象と抗体51を予め反応させた後に、未反応の抗体51を反応物質の抗原61又は類似物質と反応させることで間接的に検出対象を検出することができる。なお、導波路20において、SAW70の伝搬速度を変化させ、位相差を生じさせることが可能なものであれば、検出対象及び反応物質の組合せは、これらの例に限定されるものではない。例えば、ある特定の分子を検出対象としたい場合、特定の分子と結合するように設計したアプタマーを反応物質として用いてもよい。一実施形態に係るセンサ装置1の検出対象は抗原61であり、反応物質は抗体51である。
反応物質は、導波路20に固定されていてもよい。この場合、導波路20は、例えば、Au、Pt、及びTi等で形成されていればよい。なお、導波路20は、基板10上において、反応物質を固定可能な金属であればこれらの例に限定されるものではない。また、検体60との接触に対して耐酸化性及び耐腐食性を有する任意の材料で構成されていてもよい。また、反応物質は、基板10の表面に直接固定されてもよい。一実施形態に係るセンサ装置1において、導波路20はAuで形成されている。
一実施形態に係るセンサ装置1は、第1IDT電極11-1と第2IDT電極12-1とが対になった電極と、導波路20-1とを有する第1チャネルを備える。センサ装置1は、第1IDT電極11-2と第2IDT電極12-2とが対になった電極と、導波路20-2とを有する第2チャネルとを備える。なお、センサ装置1が備えるチャネルの数は、2つに限られず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
センサ装置1は、第1チャネル及び第2チャネルそれぞれにおいて、SAW70の位相差を検出する。第1チャネル及び第2チャネルそれぞれで検出される位相差は、第1位相差及び第2位相差と称されるとする。
第2チャネルの導波路20-2は、その表面に抗体51を有する。抗体51は、検出対象となる特定の抗原61と反応する。抗体51は、抗原61と反応することで抗原61と結合し、複合体52を形成することができる。すなわち、検体60の供給後、第2チャネルの導波路20-2には、その表面に抗体51と複合体52とが混在しうる。第2チャネルの導波路20-2の複合体52は、導波路20の表面がもともと有していた抗体51と、導波路20に供給された検体60に含まれる抗原61との反応によって生じたものでありうる。一方で、第1チャネルの導波路20-1は、その表面に抗体51を有しないとする。
複合体52は、抗原61を有している。すなわち、抗体51が抗原61と結合することで、基板10には、抗原61の重量がさらに付加される。また、抗体51が抗原61と結合することによって、導波路20-2の表面近傍の密度が大きくなる。したがって、導波路20-2において複合体52の割合が大きくなるほど、第2チャネルの伝搬経路の状態の変化が大きくなる。つまり、複合体52の割合の変化に応じて、導波路20-2を伝搬するSAW70の伝搬速度が低下するため、検出される位相差も大きくなる。
抗体51は、アプタマーに置き換えられてもよい。アプタマーは、検出対象となる特定の分子と特異的に結合する核酸分子又はペプチド等を含む。導波路20がその表面にアプタマーを有する場合、アプタマーが特定の分子と結合することによって、基板10には、特定の分子の重量がさらに付加される。また、導波路20の表面近傍の密度が大きくなる。抗体51は、酵素に置き換えられてもよい。酵素が、例えば、検出対象の基質と反応することによって反応物を生成する場合、反応物が導波路20上に堆積することで、基板10には反応物の重量がさらに付加される。また、導波路20の表面近傍の密度が大きくなる。抗体51は、これらの例に限られず、検出対象の物質と反応したり、検出対象の物質を捕まえたりすることができる他の構成で置き換えられてもよい。
センサ装置1の第1チャネルは、導波路20にSAW70を伝搬させ、第1位相差を検出することができる。センサ装置1の第2チャネルは、抗体51又は複合体52を有する導波路20にSAW70を伝搬させ、第2位相差を検出することができる。第2位相差は、導波路20が有する複合体52の割合に応じた位相差となる。
センサ装置1は、第1位相差をリファレンス値として用いることができる。すなわち、センサ装置1は、第2位相差から第1位相差を引くことで、検出結果を補正してもよい。これにより、センサ装置1は、基板10の温度特性に基づく位相差のばらつき等のノイズの影響を低減することができる。センサ装置1は、補正した第2位相差の検出結果に基づいて、検体60中に含まれる抗原61の量、濃度又は密度等を算出してよい。この場合、第2位相差と抗原61の量、濃度又は密度等との関係を特定する検量線が予め準備されていてもよい。そして、センサ装置1は、検量線に基づいて、第2位相差から抗原61の量、濃度又は密度等に変換してもよい。検体60は、例えば、人間の血液、及び尿等の体液を含んでよい。検体60は、これに限られず、種々の化学物質を含んでもよい。検体60がセンサ装置1のチャネルに導入される前に、検体60の前処理が実行されてもよい。
抗体51が抗原61を捕まえて複合体52になる反応は、所定の反応速度で進行する。したがって、チャネルに検体60を導入した後の経過時間に応じて、導波路20が有する複合体52の割合は、増加していく。その結果、センサ装置1がチャネルで検出する位相差は、経過時間に応じて大きくなっていく。
検体60中の抗原61と抗体51とが全て反応し終えた段階で、位相差は一定となる。したがって、例えば、センサ装置1は、チャネルに検体60を導入してから、抗体51と抗原61が反応し終えるのに必要な十分に長い時間が経過した後に、位相差を算出することができる。そして、センサ装置1は、算出した位相差に基づいて、抗原61の量を算出してもよい。また、位相差は、一定の割合で大きくなるため、センサ装置1は、検出開始から一定時間経過後の位相差に基づいて、抗原61の量を算出してもよい。また、位相差の変化を時間の関数として捉えると、センサ装置1は、検査開始から一定時間経過後の関数曲線の傾きに基づいて、抗原61の量を算出してもよい。
センサ装置1は、第1IDT電極11に電気信号を入力してから第2IDT電極12で電気信号を検出するまでの時間を検出してもよい。センサ装置1は、電気信号の入力から検出までの時間と電極間の距離とに基づいて伝搬速度を算出することによって、伝搬速度の変化を検出し、導波路20の表面近傍の状態の変化を検出してもよい。なお、センサ装置1は、伝搬特性として、SAW70の振幅の変化を検出してもよいし、複数の特性を検出してもよい。
<SAWセンサの構成>
図2及び図3を参照しつつ、センサ装置1の各構成部を具体的に説明する。センサ装置1は、上述の通り、基板10と、第1IDT電極11と、第2IDT電極12と、導波路20とを備える。センサ装置1は、保護膜30をさらに備える。
基板10は、基板面10aを有する。基板10は、例えば、板状の部材である。基板10は、例えば、水晶、タンタル酸リチウム、及びニオブ酸リチウムなどで構成されればよい。なお、基板10は、圧電現象を生じる材料で構成されればよく、これらの例に限られない。一実施形態において、基板10は水晶で構成されている。
第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、基板面10aに位置している。第1IDT電極11および第2IDT電極12は、例えば、層状に形成されている。第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、例えば、金(Au)又はアルミニウム(Al)等の単一の金属で形成されていてよい。また、第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、アルミニウム(Al)と銅(Cu)との合金(AlCu)等の2種以上の材料で形成されていてもよい。なお、電極として機能する材料であれば、第1IDT電極11及び第2IDT電極12を形成する材料は、これらの例に限られない。一実施形態において、第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、Auで形成されている。
第IDT電極11の側面において、側面の上端は、側面の下端よりも第1IDT電極11の内側方向に位置していてもよい。また、第1IDT電極11の側面は、傾斜していてもよい。第2IDT電極12の側面において、側面の上端は、側面の下端よりも第2IDT電極12の内側方向に位置していてもよい。また、第2IDT電極12の側面は、傾斜していてもよい。第1IDT電極11の上面は、第1IDT電極11の下面よりも小さくてもよい。第2IDT電極12の上面は、第2IDT電極12の下面よりも小さくてもよい。また、第1IDT電極11の側面が傾斜している場合、第1IDT電極11を上面視した時に、側面領域は、上面領域よりも小さくてもよい。また、第2IDT電極12の側面が傾斜している場合、第2IDT電極12を上面視した時に、側面領域は、上面領域よりも小さくてもよい。
第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、基板面10aとの間に基板側密着層15を有してもよい。第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、基板面10aに対向する側の反対側の面と保護膜30との間に保護膜側密着層17を有してもよい。第1IDT電極11及び第2IDT電極12は、基板側密着層15及び保護膜側密着層17を介することで、それぞれ基板10及び保護膜30と安定して密着することができる。基板側密着層15及び保護膜側密着層17は、例えば、チタン(Ti)又はクロム(Cr)等で形成されいてもよい。また、基板側密着層15と保護膜側密着層17は、互いに異なる材料で形成されていてもよい。具体的には、基板側密着層15をTi、保護膜側密着層17をCrとしてもよい。なお、基板側密着層15及び保護膜側密着層17は、第1IDT電極11及び第2IDT電極12を基板10及び保護膜30に密着させることができるものであれば、これらの例に限られない。一実施形態において、基板側密着層15及び保護膜側密着層17は、いずれもTiで形成されている。
第1IDT電極11は、第1基準電極11Gと、電圧が印加される第1信号電極11Aとを含む。第1基準電極11Gと第1信号電極11Aは、基板10aにおいて、対向して位置している。センサ装置1は、第1基準電極11Gと第1信号電極11Aとの間に電圧信号を印加することによって、第1IDT電極11にSAW70を発生させる。第1基準電極11Gは、接地点に接続されてもよい。SAW70は、第1基準電極11Gと第1信号電極11Aとの間で発生する。第1基準電極11Gと第1信号電極11Aとの間隔は、W1として表されている。SAW70は、W1で表されている長さの範囲で、それ以外の範囲よりも大きいエネルギーを有する。
第2IDT電極12は、第2基準電極12Gと、電圧が印加される第2信号電極12Aとを含む。第2基準電極12Gと第2信号電極12Aは、基板面10aにおいて、対向して位置している。センサ装置1は、伝搬してきたSAW70によって発生した電気信号を第2基準電極12Gと第2信号電極12Aとで検出する。第2基準電極12Gは、接地点に接続されてもよい。SAW70は、第2基準電極12Gと第2信号電極12Aとの間に伝搬する。第2基準電極12Gと第2信号電極12Aとの間隔は、W2として表されている。W2で表されている長さの範囲に伝搬したSAW70は、それ以外の範囲に伝搬したSAW70よりも、第2IDT電極12に大きい電気信号を発生させる。つまり、第2IDT電極12は、W2で表されている範囲で、効率よくSAW70を検出できる。
導波路20は、例えば、膜状に形成されている。導波路20の平面形状は、例えば、正方形、長方形、平行四辺形、及びひし形等であればよい。なお、導波路20の平面形状は、十分な量の反応物質を固定することができるものであれば、これらの例に限られない。一実施形態において、導波路20の平面形状は正方形である。
導波路20の第1IDT電極11に対向する側面において、側面の上端は、側面の下端よりも導波路20の内側方向に位置していてもよい。また、導波路20の第1IDT電極11に対向する側面は、傾斜していてもよい。導波路20の第2IDT電極12に対向する側面において、側面の上端は、側面の下端よりも導波路20の内側方向に位置していてもよい。また、導波路20の第2IDT電極12に対向する側面は、傾斜していてもよい。導波路20の上面は、導波路20の下面よりも小さくてもよい。また、この場合、導波路20の全ての側面は、傾斜していてもよい。また、側面が傾斜している場合、導波路20を上面視した時に、側面領域は、上面領域よりも小さくてもよい。
導波路20は、基板面10aにおいて、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に位置している。一実施形態において、第1IDT電極11に対向する導波路20の辺と、導波路20に対向する第1IDT電極11の辺との距離は一定である。すなわち、両辺は平行である。また、一実施形態において、第2IDT電極12に対向する導波路20の辺と、導波路20に対向する第2IDT電極12の辺との距離は一定である。すなわち、両辺は平行である。
なお、第1IDT電極11に対向する導波路20の辺と導波路20に対向する第1IDT電極11の辺との距離、及び第2IDT電極12に対向する導波路20の辺と導波路20に対向する第2IDT電極12の辺との距離は同一でなくともよい。
導波路20は、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gの少なくとも一方と一体に構成されてもよい。つまり、導波路20は、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gの少なくとも一方と接続してよい。導波路20の電位は、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gの少なくとも一方の電位と同一であってよい。導波路20の電位は、フローティングであってもよい。
導波路20は、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gと一体に構成されている場合、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gと同じ材料で構成される。また、導波路20は、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gと別体として構成されている場合、第1基準電極11G及び第2基準電極12Gと同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。
導波路20は、基板面10aと対向する側の反対側に表面20aを有する。例えば、抗体51は、表面20aに固定されればよい。導波路20は、基板面10aとの間に基板側密着層15を有してもよい。導波路20の基板側密着層15は、第1IDT電極11及び第2IDT電極12の基板側密着層15と一体に構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。
保護膜30は、基板面10aと、第1IDT電極11と、第2IDT電極12とを覆っている。保護膜30は、TEOS酸化膜で構成されていてよい。TEOS酸化膜は、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane)を材料ガスとしてプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって成膜されたシリコン酸化膜である。なお、保護膜30は、絶縁性を有する材料であれば、上記の例に限られない。
一実施形態において、保護膜30の側壁30aは、基板面10aと交差し、保護膜30の開口を区画してもよい。すなわち、基板面10aは、保護膜30に覆われていない領域を有していてもよい。一実施形態において、導波路20は、保護膜30の開口に位置している。つまり、保護膜30は、導波路20の表面20aを覆っていない。
センサ装置1は、導波路20の表面20aの近傍の状態の変化を高精度で検出することが求められる。SAW70は、導波路20の表面20aの近傍を含む領域を伝搬する。導波路20を伝搬するSAW70のエネルギーが表面20aの近傍に多く分布するほど、SAW70が導波路20の表面20aの近傍の状態から受ける影響が大きくなる。したがって、SAW70の伝搬特性の変化と導波路20の表面20aの近傍の状態の変化との相関が強くなる。
SAW70のエネルギーは、導波路20の表面近傍に集中しうる。SAW70が伝搬する方向に交差する方向における導波路20の幅は、図2においてW3で表されている。W3は、W1及びW2以上の大きさであればよい。これによって、表面弾性波70は、第1IDT電極11から導波路20の表面近傍に効率よく伝搬しうる。
W3がW1及びW2より短い場合、第1IDT電極11から第2IDT電極12に伝搬するSAW70のエネルギーのうち、導波路20を伝搬するSAW70のエネルギーの割合が小さくなる。よって、センサ装置1の検出感度が低下する。一方、W3がW1及びW2よりも長いことによって、導波路20を伝搬するSAW70のエネルギーの割合が大きくなる。したがって、センサ装置1の検出感度が向上されうる。
第1IDT電極11の第1基準電極11Gと第1信号電極11Aとはそれぞれ、平面視において、一方向(本開示では、SAW70が伝搬する方向又は第1IDT電極と第2IDT電極が並ぶ方向)に延びる第1共通電極11Yと、第1共通電極11Yから一方向に交差する方向に延びる複数の第1電極指11Xを有している。第1共通電極11Yは、互いに対向した一対の電極である。また、第1電極指11Xは、第1基準電極11Gの第1共通電極11Y及び第1信号電極11Aの第1共通電極11Yから分岐して突出した電極部分をいう。第1基準電極11Gの第1電極指11Xは、第1信号電極11Aの第1共通電極11Yに向かって突出し、第1信号電極11Aの第1電極指11Xは、第1基準電極11Gの第1共通電極11Yに向かって突出している。また、それぞれの第1電極指11Xは、SAW70が伝搬する方向に直行する方向に突出している。そして、第1基準電極11Gの第1電極指11Xと、第1信号電極11Aの第1電極指11Xとは、一方向に並んでいる。
第1基準電極11Gの第1共通電極11Y及び第1電極指11X、並びに第1信号電極11Aの第1共通電極11Y及び第1電極指11Xの平面形状は、例えば、正方形、及び長方形等であればよい。なお、第1共通電極11Y及び第1電極指11Xの形状は、SAW70を発信可能であれば、これに限られない。一実施形態において、第1基準電極11Gの第1共通電極11Y及び第1電極指11X、並びに第1信号電極11Aの第1共通電極11Y及び第1電極指11Xの平面形状は、長方形である。
第1基準電極11Gの第1共通電極11Y及び第1電極指11X、並びに第1信号電極11Aの第1共通電極11Y及び第1電極指11Xの断面形状は、例えば、正方形、長方形、台形等であればよい。なお、第1共通電極11Y及び第1電極指11Xの形状は、SAW70を発信可能であれば、これに限られない。一実施形態において、第1基準電極11Gの第1共通電極11Y及び第1電極指11X、並びに第1信号電極11Aの第1共通電極11Y及び第1電極指11Xの断面形状は、長方形である。なお、一対の第1共通電極11Yは、互いに対向する側面が、一対の第1共通電極11Y間の距離が大きくなるように、内側方向に傾斜していてもよい。また、複数の第1電極指11Xは、互いに対向する側面が、複数の第1電極指11X間の距離が大きくなるように、内側方向に傾斜していてもよい。また、導波路20に対向する第1電極指11Xは、導波路20に対向する側面が、導波路20との距離が大きくなるように、内側方向に傾斜していてもよい。
一実施形態において、第1基準電極11Gの第1電極指11Xと第1信号電極11Aの第1電極指11Xは、導波路20から第1IDT電極11に向かう方向に向かって2本ずつ交互に位置している。これによれば、電極間多重反射が低減されるので、センサ装置1は、振幅リップル及び群遅延リップルを低減することができる。すなわち、センサ装置1は、検出精度を向上させることができる。なお、第1基準電極11Gの第1電極指11Xと第1信号電極11Aの第1電極指11Xは、1本ずつ交互に位置してもよい。この場合、各IDT電極を簡易に構成することができる。
第1基準電極11Gの2本の第1電極指11Xと第1信号電極11Aの2本の第1電極指11Xとのペア(第1ペア)は、第1ピッチP1で、一方向に沿って並んでいる。第1ピッチP1は、第1基準電極11Gの2本の第1電極指11X及び第1信号電極11Aの2本の第1電極指11Xそれぞれの繰り返し周期に対応する。第1ペアの数は、1つに限られず、2つ以上であってよい。
第1ピッチP1の半分のピッチを第1ハーフピッチHP1とする。第1ハーフピッチHP1は、第1ペアにおいて、第1基準電極11Gの1本目の第1電極指11Xの端部から第1信号電極11Aの1本目の第1電極指11Xの端部までの一方向に沿った間隔に対応する。第1ハーフピッチHP1は、所定間隔とも称される。
上述の通り、第1IDT電極11は、第1基準電極11Gと第1信号電極11Aとに入力された電気信号に基づいて基板10の表面にSAW70を発生させる。第1IDT電極11で発生するSAW70の波長は、第1ピッチP1に対応する。
第2IDT電極12の第2基準電極12Gと第2信号電極12Aとはそれぞれ、平面視において、一方向(本開示では、SAW70が伝搬する方向又は第1IDT電極と第2IDT電極が並ぶ方向)に延びる第2共通電極12Yと、第2共通電極12Yから一方向に交差する方向に延びる複数の第2電極指12Xを有している。第2共通電極12Yは、互いに対向した一対の電極である。第2電極指12Xは、第2基準電極12Gの第2共通電極12Y及び第2信号電極12Aの第2共通電極12Yから分岐して突出した電極部分をいう。第2基準電極12Gの第2電極指12Xは、第2信号電極12Aの第2共通電極12Yに向かって突出し、第2信号電極12Aの第2電極指12Xは、第2基準電極12Gの第2共通電極12Yに向かって突出している。また、それぞれの第2電極指12Xは、SAW70が伝搬する方向に直行する方向に突出している。そして、第2基準電極12Gの第2電極指12Xと、第2信号電極12Aの第2電極指12Xとは、一方向に並んでいる。
第2基準電極12Gの第2共通電極12Y及び第2電極指12X、並びに第2信号電極12Aの第2共通電極12Y及び第2電極指12Xの平面形状は、例えば、正方形、及び長方形等であればよい。なお、第2電極指12Xの形状は、SAW70を受信可能であれば、これに限られない。一実施形態において、第2基準電極12Gの第2電極指12X及び第2信号電極12Aの第2電極指12Xの平面形状は、長方形である。
第2基準電極12Gの第2共通電極12Y及び第2電極指12X、並びに第2信号電極12Aの第2共通電極12Y及び第2電極指12Xの断面形状は、例えば、正方形、長方形、台形等であればよい。なお、第2共通電極12Y及び第2電極指12Xの形状は、SAW70を発信可能であれば、これに限られない。一実施形態において、第2基準電極12Gの第2共通電極12Y及び第2電極指12X、並びに第2信号電極12Aの第1共通電極11Y及び第2電極指12Xの断面形状は、長方形である。なお、一対の第2共通電極12Yは、互いに対向する側面が、一対の第2共通電極12Y間の距離が大きくなるように、内側方向に傾斜していてもよい。また、複数の第2電極指12Xは、互いに対向する側面が、複数の第2電極指12X間の距離が大きくなるように、内側方向に傾斜していてもよい。また、導波路20に対向する第2電極指12Xは、導波路20に対向する側面が、導波路20との距離が大きくなるように、内側方向に傾斜していてもよい。
一実施形態において、第2基準電極12Gの第2電極指12Xと第2信号電極12Aの第2電極指12Xは、導波路20から第2IDT電極12に向かう方向に向かって2本ずつ交互に位置している。なお、第2基準電極12Gの第2電極指12Xと第2信号電極12Aの第2電極指12Xは、1本ずつ交互に位置してもよい。
第2基準電極12Gの2本の第2電極指12Xと第2信号電極12Aの2本の第2電極指12Xとのペア(第2ペア)は、第2ピッチP2で一方向に沿って並んでいる。第2ピッチP2は、第2基準電極12Gの2本の第2電極指12X及び第2信号電極12Aの2本の第2電極指12Xのそれぞれの繰り返し周期に対応する。第2ペアの数は、1つに限られず、2つ以上であってよい。
第2ピッチP2の半分のピッチを第2ハーフピッチHP2とする。第2ハーフピッチHP2は、第2ペアにおいて、第2基準電極12Gの1本目の第2電極指12Xの端部から第2信号電極12Aの1本目の第2電極指12Xの端部までの一方向に沿った間隔に対応する。
上述の通り、第2IDT電極12は、第1IDT電極11から導波路20を通って伝搬してきたSAW70に基づく電気信号を第2基準電極12Gと第2信号電極12Aとに出力する。SAW70の波長が第2ピッチP2に近いほど、SAW70が第2IDT電極12で電気信号に変換される効率が高くなる。言い換えれば、第1ピッチP1と第2ピッチP2との差が小さいほど、SAW70が第2IDT電極12で電気信号に変換される効率が高くなる。一実施形態において、センサ装置1は、第1ピッチP1と第2ピッチP2とが一致するように構成されている。
第1IDT電極11で発生したSAW70は、導波路20に伝搬する。第1IDT電極11の導波路20側の端部と、導波路20の第1IDT電極11側の端部との間の距離は、D1で表されるとする。一実施形態において、第1IDT電極11は、導波路20の側に第1基準電極11Gの第1電極指11Xが位置するように構成されている。すなわち、導波路20に対向し、又は隣り合う第1電極指11Xは、第1基準電極11Gの第1電極指11Xであってもよい。これによれば、ノイズとなる直達波の発生を低減することができる。すなわち、センサ装置1は検出精度を向上させることができる。この場合、第1IDT電極11の導波路20側の端部は、第1基準電極11Gの第1電極指11Xの導波路20側の端部に対応する。第1基準電極11Gと導波路20とが接続している場合、D1は0となる。
第1IDT電極11は、導波路20の側に第1信号電極11Aの第1電極指11Xが位置するように構成されていてもよい。すなわち、導波路20に対向し、又は隣り合う第1電極指11Xは、第1信号電極11Aの第1電極指11Xであってもよい。これによれば、導波路20の側に第1基準電極11Gの第1電極指11Xが位置する場合と比較して、より導波路20に近い位置からSAW70が発生するため、SAW70の伝搬距離を短くすることができる。すなわち、SAW70の減衰を低減することができるため、センサ装置1は検出精度を向上させることができる。この場合、第1IDT電極11の導波路20側の端部は、第1信号電極11Aの第1電極指11Xの導波路20側の端部に対応する。第1信号電極11Aと導波路20とが接続している場合、D1は0となる。
SAW70は、導波路20から第2IDT電極12に伝搬する。第2IDT電極12の導波路20側の端部と、導波路20の第2IDT電極12側の端部との間の距離は、D2で表されるとする。図2において、第2IDT電極12は、導波路20の側に第2基準電極12Gが位置するように構成されている。すなわち、導波路20に対向し、又は隣り合う第2電極指12Xは、第2基準電極12Gの第2電極指12Xであってもよい。この場合、第2IDT電極12の導波路20側の端部は、第2基準電極12Gの導波路20側の端部に対応する。第2基準電極12Gと導波路20とが接続している場合、D2は0となる。
第2IDT電極12は、導波路20の側に第2信号電極12Aが位置するように構成されていてもよい。すなわち、導波路20に対向し、又は隣り合う第2電極指12Xは、第2信号電極12Aの第2電極指12Xであってもよい。この場合、第2IDT電極12の導波路20側の端部は、第2信号電極12Aの導波路20側の端部に対応する。第2信号電極12Aと導波路20とが接続している場合、D2は0となる。
一実施形態に係るセンサ装置1は、基板面10aを有する基板10と、第1IDT電極と、第2IDT電極と、導波路20とを備える。第1IDT電極および第2IDT電極は、基板面10aに位置している。導波路20は、基板面10aにおいて、第1IDT電極及び第2IDT電極の間に位置している。第1IDT電極及び第2IDT電極の少なくとも一方は、それぞれ複数の電極指を有し、複数の電極指が一方向に並んで配された基準電極と信号電極とを有する。第1IDT電極及び第2IDT電極のうち少なくとも一方と、導波路20との距離は、基準電極と信号電極との一方向に沿った間隔より短い。
ここで、従来の弾性波センサでは、表面弾性波70の一部は、基板10の内部に拡散し、検出対象に基づいて伝搬速度が変化しない不要な弾性波となる。この不要な弾性波は、バルク波とも称される。
バルク波は、基板10の内部において種々の影響を受けながら伝搬する。バルク波は、例えば、結晶格子の熱振動、及び結晶内部の応力等のランダムな現象の影響を受けうる。つまり、バルク波の伝搬特性は、ランダムに変化しうる。一方で、表面弾性波70は、基板10の内部で生じるランダムな現象の影響を受けにくい。したがって、一実施形態に係るセンサ装置1において、SAW70が導波路20を通って第2IDT電極12まで伝搬したとき、SAW70の伝搬速度は、基板10の内部の状態の影響を受けずに、導波路20の表面20aの状態に応じて変化しうる。
SAW70及びバルク波はそれぞれ、図4に例示されるようにベクトルで表されうる。ベクトルVsは、SAW70の位相と振幅とを表す。ベクトルVnは、バルク波の位相と振幅とを表す。破線で表される円は、バルク波の位相が-π~+πまでの値をとりうることを表している。ベクトルVs+Vnは、VsとVnとの合成ベクトルであり、SAW70とバルク波との合成波の位相と振幅とを表す。ベクトルVnと、ベクトルVs+Vnとの間の角度は、SAW70と合成波との位相差に対応し、δで表されている。ベクトルVnが長いほど、δが大きく変動する。ベクトルVnの長さは、バルク波の振幅の大きさ、つまり、バルク波のエネルギーの大きさに対応する。したがって、バルク波のエネルギーが大きいほど、SAW70に対する合成波の位相差を表すδが大きく変動する。図4の例において、δがとりうる最大値がδmaxとして表されるとすると、sin(δmax)=|Vn|/|Vs|が成立する。
第2IDT電極12は、導波路20の表面20a及び基板面10aを通って伝搬したSAW70とともに、基板10の内部を伝搬したバルク波を検出しうる。つまり、第2IDT電極12は、SAW70とバルク波との合成波に対応する電気信号を出力しうる。バルク波は、基板10の内部を伝搬する間にランダムな影響を受けるとともに、導波路20の表面20aの状態の変化を反映していない。したがって、第2IDT電極12が出力する電気信号のうち、バルク波に基づく成分は、ノイズ成分となる。つまり、第2IDT電極12が出力する電気信号の位相に基づく、導波路20の表面20aの状態の変化の検出結果は、バルク波に基づくノイズ成分を含みうる。したがって、SAW70のエネルギーのうちバルク波に変換されるエネルギーが大きいほど、導波路20の表面20aの状態の変化の検出誤差が大きくなる。言い換えれば、SAW70のエネルギーのうちバルク波に変換されるエネルギーが小さくなるほど、導波路20の表面20aの状態の変化の検出誤差が小さくなる。
以上述べてきたように、センサ装置1は、バルク波に変換されるエネルギーの割合を減少させることによって、導波路20の表面20aの状態変化の検出精度を向上できる。SAW70が基板面10aを伝搬する距離が短くなるほど、SAW70のエネルギーのうち、バルク波のエネルギーに変換されるエネルギーの割合が減少する。SAW70が基板面10aを伝搬する距離は、D1及びD2に対応する。つまり、D1及びD2が短いほど、SAW70のエネルギーは、バルク波に変換されにくくなる。すなわち、本開示のセンサ装置1は、検出感度を向上させることができる。
一実施形態に係るセンサ装置1は、例えば、D1及びD2の少なくとも一方が0となるように構成されてもよい。これによれば、SAW70のエネルギーがバルク波に変換されにくくなる。その結果、導波路20の表面20aの状態変化の検出精度が向上しうる。
また、D1が0となるように構成される場合、第1IDT電極11と導波路20との間のアライメントが不要になる。D1が0となるように構成される場合、第2IDT電極12と導波路20との間のアライメントが不要になる。これらの場合、アライメントに起因する感度のばらつきが生じない。その結果、センサ装置1の検出精度が向上する。
センサ装置1は、例えば、D1がHP1よりも短く、0よりも大きくなるように構成されてもよい。つまり、センサ装置1は、第1IDT電極11と導波路20とが別体として構成されてもよい。この場合、第1IDT電極11と導波路20とが一体として構成される場合と比較して、センサ装置1は、直達波の発生を低減することができる。
また、センサ装置1は、例えば、D2がHP2よりも短く、0よりも大きくなるように構成されてもよい。つまり、第2IDT電極12と導波路20とが別体として構成されてもよい。この場合、第2IDT電極12と導波路20とが一体として構成される場合と比較して、第2IDT電極12が励振されやすくなるため、センサ装置1は、SAW70の受信感度を向上させることができる。
SAW70の波長は、上述の通り、第1IDT電極11及び第2IDT電極12のピッチに基づいて決定される。SAW70は、基板面10aの面内方向又は法線方向に振幅を有する横波として伝搬する。横波としてのSAW70は、交互に進行する山と谷とを有する。SAW70のエネルギーは、山と谷とが進行することによって、進行方向に伝搬する。SAW70の山及び谷は、SAW70のエネルギーを弾性エネルギーとして蓄えている。山として蓄えられているエネルギーは、次の谷を形成するエネルギーに変換される。谷として蓄えられているエネルギーは、次の山を形成するエネルギーに変換される。
基板10を伝搬するSAW70の伝搬状態は、シミュレーションによって計算可能である。シミュレーションによって、第1IDT電極11で発生したSAW70が導波路20に向けて進行する場合におけるSAW70の振幅が計算された。シミュレーションは、D1及びD2を変数として実行された。シミュレーションにおいて、基板10は水晶、第1IDT電極11、第2IDT電極12、及び導波路20はAuとして設定されている。シミュレーション結果は、基板10のD1側とD2側をそれぞれ拡大して、図5A、図5B及び図5C、並びに、図6A、図6B及び図6Cに示す。
図5A、図5B及び図5Cに、D1側におけるSAW70の伝搬に関するシミュレーションの結果を示す。図5Aは、D1>λ/2が成立する場合(case1)のシミュレーション結果である。図5Bは、D1=λ/2が成立する場合(case2)のシミュレーション結果である。図5Cは、D1<λ/2が成立する場合(case3)のシミュレーション結果である。
図5A、図5B及び図5Cでは、SAW70の伝搬方向における基板10の断面が示されている。また、SAW70及びバルク波の振幅がグレースケールで表されている。断面の各部において、色が黒に近い(色が濃い)部分ほど、SAW70又はバルク波の振幅が大きく、弾性エネルギーが大きい。色が白又は灰色に近い(色が薄い)部分ほど、SAW70又はバルク波の振幅が小さく、弾性エネルギーが小さい。第1IDT電極11と導波路20とは、D1で表される間隔をあけて位置している。SAW70の進行方向は、第1IDT電極11から導波路20に向かう方向である。シミュレーションにおいて、SAW70の波長(λ)は、11.52μmに設定され、D2はλ/2よりも大きい。
図5Aにおいて、D1>λ/2が成立している。D1は、具体的には18μmに設定されている。第1IDT電極11から導波路20を伝搬するSAW70の一部は、第1IDT電極11と導波路20との間に位置する基板面10aを伝搬する間に、基板10の深さ方向に伝搬するバルク波に変化している。図5Aにおいて、少なくとも破線囲み部の内側には、SAW70の一部がバルク波に変化している様子が顕著に確認される。SAW70が導波路20に到達した後も、基板10の内部においてバルク波が伝搬している。
図5Bにおいて、D1=λ/2が成立している。D1は、具体的には5.76μmに設定されている。第1IDT電極11から導波路20を伝搬するSAW70の一部は、第1IDT電極11と導波路20との間に位置する基板面10aを伝搬する間に、基板10の深さ方向に伝搬するバルク波に変化している。図5Bにおいて、少なくとも破線囲み部の内側には、SAW70の一部がバルク波に変化している様子が確認されるが、D1>λ/2が成立している場合と比較して、SAW70から変化するバルク波は減少している。バルク波は、第1IDT電極11と導波路20との間に位置する基板面10aから基板10の内部に向けて、放射状に伝搬している。
図5Cにおいて、D1<λ/2が成立している。D1は、具体的には2.2μmに設定されている。第1IDT電極11から導波路20を伝搬するSAW70は、基板10の深さ方向にほとんど拡散していない。図5Cにおいて、D1=λ/2が成立している場合と比較して、SAW70から変化するバルク波がさらに減少している様子が確認される。つまり、D1<λ/2が成立する場合に、バルク波の発生はより低減される。
図5A、図5B及び図5Cに示されるSAW70及びバルク波の分布に基づけば、第1IDT電極11から導波路20を伝搬するSAW70のエネルギーがバルク波に変換される割合は、case1において最も高く、case3において最も低い。つまり、シミュレーションの結果によって、D1が短いほど、第1IDT電極11から導波路20を伝搬するSAW70のエネルギーが、バルク波に変換される割合が低くなることが示された。したがって、一実施形態に係るセンサ装置1は、D1<λ/2が成立している場合に、感度のばらつきを低減させることができる。
図6A、図6B及び図6Cに、D2側のSAW70の伝搬に関するシミュレーションの結果を示す。図6Aは、D2>λ/2が成立する場合(case4)のシミュレーション結果である。図6Bは、D2=λ/2が成立する場合(case5)のシミュレーション結果である。図6Cは、D2<λ/2が成立する場合(case6)のシミュレーション結果である。
図6A、図6B及び図6Cでは、SAW70の伝搬方向における基板10の断面が示されている。また、SAW70及びバルク波の振幅がグレースケールで表されている。表示に関する説明は、図5A、図5B及び図5Cと同様である。導波路20と第2IDT電極12とは、D2で表される間隔をあけて位置している。SAW70の進行方向は、導波路20から第2IDT電極12に向かう方向である。シミュレーションにおいて、SAW70の波長(λ)は、11.52μmに設定され、D1はλ/2よりも大きい。
図6Aにおいて、D2>λ/2が成立している。D2は、具体的には18μmに設定されている。導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAW70の一部は、導波路20と第2IDT電極12との間に位置する基板面10aを伝搬する間に、基板10の深さ方向に伝搬するバルク波に変化している。図6Aにおいて、少なくとも破線囲み部の内側には、SAW70の一部がバルク波に変化している様子が顕著に確認される。SAW70が第2IDT電極12に到達した後も、基板10の内部においてバルク波が伝搬している。
図6Bにおいて、D2=λ/2が成立している。D2は、具体的には5.76μmに設定されている。導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAW70の一部は、導波路20と第2IDT電極12との間に位置する基板面10aを伝搬する間に、基板10の深さ方向に伝搬するバルク波に変化している。図5Bにおいて、少なくとも破線囲み部の内側には、SAW70の一部がバルク波に変化している様子が確認されるが、D2>λ/2が成立している場合と比較して、SAW70から変化するバルク波は減少している。バルク波は、第1IDT電極11と導波路20との間に位置する基板面10aから基板10の内部に向けて、放射状に伝搬している。
図6Cにおいて、D2<λ/2が成立している。D2は、具体的には2.2μmに設定されている。導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAW70は、基板10の深さ方向にほとんど拡散していない。図6Cにおいて、D1=λ/2が成立している場合と比較して、SAW70から変化するバルク波がさらに減少している様子が確認される。つまり、D2<λ/2が成立する場合に、バルク波の発生はより低減される。
図6A、図6B及び図6Cに示されるSAW70及びバルク波の分布に基づけば、導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAW70のエネルギーがバルク波に変換される割合は、case4において最も高く、case6において最も低い。つまり、シミュレーションの結果によって、D2が短いほど、導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAW70のエネルギーが、バルク波に変換される割合が低くなることが示された。したがって、一実施形態に係るセンサ装置1は、D2<λ/2が成立している場合に、感度のばらつきを低減させることができる。
以上の通り、第1IDT電極11と導波路20との間の距離(D1)、及び導波路20と第2IDT電極12との間の距離(D2)を短くする構成が説明されてきた。これによれば、D1が短いほど、第1IDT電極11から導波路20を伝搬するSAW70のエネルギーがバルク波に変換される割合が低くなることが示された。また、D2が短いほど、導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAW70のエネルギーがバルク波に変換される割合が低くなることが示された。したがって、シミュレーションの結果、D1及びD2が短くなるほど、伝搬経路において、SAW70のエネルギーがバルク波に変換される割合が低くなることが示された。具体的には、D1<λ/2、及びD2<λ/2が成立する場合、第1IDT電極11から導波路20、及び導波路20から第2IDT電極12を伝搬するSAWのエネルギーがバルク波に変換される割合が低くなることが示された。したがって、一実施形態に係るセンサ装置1は、D1<λ/2、及びD2<λ/2が成立している場合に、感度のばらつきを低減させることができる。
なお、図5A、図5B及び図5C、並びに、図6A、図6B及び図6Cで示したシミュレーション結果は、基板10の断面を示したものである。すなわち、一実施形態に係るセンサ装置1は、導波路20の少なくとも一部と、第1IDT電極11の少なくとも一部又は第2IDT電極12の少なくとも一部との間で、D1<λ/2、及びD2<λ/2が成立していれば、感度のばらつきを低減することができる。
<感度ばらつきの算出例>
センサ装置1の感度ばらつきの算出例が説明される。センサ装置1の感度は、SAW70の位相の変化に対する、電気信号の変化の敏感さを示したものである。複数のセンサ装置1においてそれぞれの感度が異なる場合、同一の検体60を測定した場合に、それぞれ異なる検出結果が得られる。したがって、センサ装置1の感度のばらつきが小さいとは、複数のセンサ装置1で同一の検体60を測定した場合に、各装置から得られた出力のばらつきが小さいことを意味し、検出の精度が高く検出結果が安定することを意味する。
一実測例において、水溶液の粘度の差を用いて、感度ばらつきの実測が行なわれる。
導波路20の表面20aに滴下される液体として、純水と、20wt%のグリセリン水溶液とが用いられる。グリセリン水溶液の粘度は、グリセリンの濃度に基づいて決定される。20wt%のグリセリン水溶液の粘度は、純水の粘度よりも高い。実験は、以下の手順に沿って行われた。以下説明する実験の条件は、適宜変更されてもよい。
ステップ1:測定者が、導波路20の表面20aの上の液体を純水で置換し、SAW70の位相を測定する。測定は、純水で置換してから2分経過した後に実行された。ステップ1で測定する位相は、θ1で表されるとする。
ステップ2:測定者が、導波路20の表面20aの上の液体を20wt%のグリセリン水溶液で置換し、SAW70の位相を測定する。測定は、純水からグリセリン水溶液に置換してから2分経過した後に実行された。ステップ2で測定する位相は、θ2で表されるとする。
ステップ3:θ2とθ1との差が感度として算出される。感度は、Δθで表されるとする。Δθ=θ2-θ1が成立する。
ステップ4:測定者が、複数のセンサ装置1について、ステップ1から3を実施し、Δθを複数測定する。
ステップ5:測定者が、Δθの複数の測定値について平均(Ave)と標準偏差(σ)とを算出し、標準偏差を平均で除算した結果を、感度のばらつきを表す変動係数として算出する。変動係数は、CV(Coefficient of Variation)とも称される。CV=σ/Aveが成立する。
上述のステップ1~5を含む手順を実行する対象となるセンサ装置1として、構成を特定するパラメータの一部を変動させたセンサ装置1が準備された。センサ装置1の構成を特定するパラメータのうち、SAW70の波長(λ)と、導波路20の厚み(h)とが固定された。センサ装置1の構成を特定するパラメータのうち、第1IDT電極11と導波路20との間の距離(D1)及び第2IDT電極12と導波路20との間の距離(D2)が変動させられた。本実測例の実験において、D1とD2とが一致するようにセンサ装置1が構成された。本実測例において、D1及びD2は、まとめてDで表されるとする。Dは、SAW70の波長(λ)に対して規格化された値として表されるとする。0からλまでの範囲内でそれぞれ異なる値をDとして有する複数のセンサ装置1が準備された。各センサ装置1において上述のステップ1~5の手順を実行することによって、各センサ装置1の感度が測定された。
図7にセンサ装置1の感度の変動係数の実測データの一例が示される。図7のグラフの横軸は、D/λの値を表している。縦軸は、変動係数(CV)を表している。図7に示される実測データは、以下のパラメータ設定の下で取得された。なお、hは、導波路20の膜厚である。また、以下において、D1及びD2を区別しない場合は、Dと示す。
λ=11.5μm(P1=11.5μm)、h=110nm、D/λ=0~1(D=0~λ)
Dがλ/2からλまで(D/λが0.5から1まで)の範囲におけるCVの値は、Dがλからλ/2まで減るほど、実線の近似線で示されるように、Dに対して一次関数の関係を有するように減少している。一方で、Dがλ/2未満(D/λが0.5未満)の範囲におけるCVの値は、破線で示されるようなDに対する一次関数の関係から外れて、一点鎖線の近似線で示される1%前後の値に急激に減少している。この結果は、DがSAW70の波長の1/2の長さ未満になることによって、感度のばらつきを増大させる要因が減ったことを示している。つまり、この結果は、DがSAW70の波長の1/2の長さ未満になることによって、SAW70のエネルギーのうちバルク波に変換される割合が低下することを裏付けている。
以上述べてきたように、本実施形態に係るセンサ装置1は、D1及びD2の少なくとも一方がλ/2未満となるように構成されることによって、感度のばらつきを低減できる。その結果、センサ装置1による導波路20の表面20aの状態変化の検出精度が向上する。
また、第1IDT電極11又は第2IDT電極12と導波路20とが、別体として形成される場合、1つの工程であわせて形成されてもよいし、2つ以上の工程で別々に形成されてもよい。第1IDT電極11又は第2IDT電極12と導波路20とが別体として形成されることによって、センサ装置1の各構成部のレイアウトの自由度が増す。例えば、導波路20と対向する位置に、基準電極及び信号電極のどちらの電極が配置されてもよい。
<SAWセンサの製造方法>
以下、センサ装置1の製造方法の一例が説明される。
第1工程として、基板10の基板面10aの上に、基板側密着層15と、金属層16(図示なし)と、保護膜側密着層17とが形成される。第2工程として、金属層16から、第1基準電極11G及び第1信号電極11Aと、第2基準電極12G及び第2信号電極12Aと、導波路20とが形成される。
第1基準電極11G、第1信号電極11A、第2基準電極12G、第2信号電極12A、及び導波路20は、種々の加工技術によって形成されてよい。例えば、所望のパターンのマスクに基づくエッチングが適用されてもよい。マスクは、例えばフォトリソグラフィによって形成されてもよい。マスクとして、レジスト用の樹脂等が適用されればよい。エッチングは、ウェットエッチング又はドライエッチングを含んでよい。ウェットエッチングは、酸又はアルカリ等の溶液によって材料を溶解させる工程を含んでよい。ドライエッチングは、RIE(Reactive Ion Etching)、又は、スパッタエッチング等の、プラズマを利用して材料を除去する工程を含んでよい。
第1工程及び第2工程は、基板面10aの上に、第1IDT電極11と第2IDT電極12と導波路20とをパターニングした状態で形成する工程で置き換えられてもよい。パターニングした状態で形成する工程は、例えば、金属等のハードマスク又はレジスト用の樹脂等のマスクをかけた状態で基板側密着層15と金属層16と保護膜側密着層17とを形成することによって実現されうる。
導波路20の形成工程は、導波路20の表面20aに保護膜側密着層17が形成されないように構成されてよい。導波路20の形成工程は、導波路20の表面20aに保護膜側密着層17が形成された後、保護膜側密着層17が除去されるように構成されてもよい。
第1工程及び第2工程において、第1IDT電極11及び第2IDT電極12と、導波路20とが一括で形成されている。第1IDT電極11及び第2IDT電極12を形成する工程と、導波路20を形成する工程とは、別の工程として分けられてもよい。工程が分けられる場合、どちらの工程が先に実行されてもよい。第1IDT電極11及び第2IDT電極12と、導波路20とが一括で形成される場合、第1IDT電極11及び第2IDT電極12に対する導波路20の位置が高精度で制御されうる。その結果、D1及びD2の精度を向上させることができ、測定精度を向上させることができる。
第3工程として、基板面10a上に形成された構成を被覆する保護膜30が形成される。第4工程として、保護膜30の一部が除去される。保護膜30の一部が除去されることによって、保護膜30の中に、側壁30aで囲まれる開口部が形成される。保護膜30は、例えば開口部のパターンのマスクに基づくエッチングによって除去されてよい。エッチングは、ドライエッチング又はウェットエッチング等の種々の方式を含んでよい。保護膜30は、第1IDT電極11及び第2IDT電極12が被覆されたままとなるように除去されてよい。保護膜30は、導波路20の表面20aの少なくとも一部が露出するように除去されてよい。導波路20の表面20aは、保護膜30の開口部において露出するといえる。
第5工程として、導波路20の表面20aに、抗体51、アプタマー、又は酵素等の、検出対象と反応する物質が固定される。一実施形態において、表面20aに、抗体51(図1参照)が固定されるとする。導波路20が金(Au)で形成されている場合、抗体51は、例えば、金(Au)と2価の硫黄(S)との結合である金チオール結合に基づいて表面20aに形成されてもよい。この場合、高分子膜(ポリマー)が表面20aに形成されるとともに、そのポリマーがそれに適切な縮合剤(例えば、EDC/NHS試薬など)を用いることによって、抗体51がアミンカップリングによってポリマーに結合されてよい。抗体51は、ポリマーに結合されることによって、表面20aに固定されてよい。表面20aの状態は、抗体51の固定化に影響を及ぼしうる。例えば、表面20aの組成又は表面粗さ等の表面状態は、表面20aに抗体51が固定されやすいか否かに影響を及ぼしうる。なお、ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルデキストラン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリカルボキシベタインメタクリル酸、ポリベタインスルホン酸、ポリメタクリル酸エチルホスホリルコリン、ポリヒドロキシプロピルアクリルアミドなどを使用すればよい。
導波路20の表面20aに保護膜側密着層17が形成され除去される場合、保護膜側密着層17は、第2工程で除去されてもよいし、第4工程で除去されてもよい。表面20aは、保護膜側密着層17に限られず、他の保護材料によって被覆されてもよい。表面20aは、第5工程の直前まで保護材料で被覆されていてもよい。表面20aが第5工程まで保護されることによって、表面20aの状態が制御されやすくなる。導波路20が2層以上で構成される場合、導波路20の表面20aを構成する層は、保護膜30の開口部が形成された後に形成されてよい。このようにすることで、表面20aの状態が制御されやすくなる。
本実施形態に係るセンサ装置1は、上述の各工程を実行することによって製造されてよい。上述の工程は一例である。種々の工程が追加されてもよい。一部の工程が省略されてもよい。
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
上記の実施例では、基板10に重量が付加されることで伝搬速度が変化したSAW70に基づいて検出を行なう場合について説明した。しかし、例えば、センサ装置1は、基板10に付加された重量が減少することで伝搬速度が変化したSAW70に基づいて検出を行なってもよい。
例えば、まず、基板10に対して抗原61に類似する類似物質を予め固定しておく。この場合、類似物質は、抗体51との結合親和性を有するが、検出対象の抗原61よりも抗体51に対する結合親和性が低いものであればよい。次に、既知量の抗体51を基板10に供給し、類似物質と抗体51で複合体52を形成させる。次に、検出対象の抗原61を含む検体60を基板10に供給する。この場合、抗原61の方が、類似物質よりも抗体51との結合親和性が高いため、抗体51が類似物質から解離し、抗原61と複合体52を形成する。したがって、解離した抗体51の分だけ基板10に付加された重量が減少する。解離する抗体51の量は、検出対象の量に対応するため、SAW70の伝搬速度は検出対象の量に応じて変化する。センサ装置1は、検体60の供給前後においてSAW70の位相を取得し、その位相差を算出する。そして、算出した位相差に基づいて、検出対象を検出することができる。
また、例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
上記の実施例では、導波路20が第1基準電極11G及び第2基準電極12Gの間に位置している構成について説明した。しかし、センサ装置1の構成はこの例に限られない。具体的には、導波路20は、(1)第1基準電極11Gと第2信号電極12A、(2)第1信号電極11Aと第2基準電極12G、及び(3)第1信号電極11Aと第2信号電極12Aの各組合せに係る電極の間に位置してもよい。なお、(1)~(3)の組合せにおいて、導波路20といずれか一方の電極が一体となる構成は取りうるが、導波路20が両方の電極と一体となる構成は取り得ない。
また、上記の実施例では、導波路20が一層のAu膜で構成される場合について説明した。しかし、導波路20は、複数の金属膜で構成されてもいてもよい。例えば、導波路20は、Au-Au、Au-Ti-Au等の複数の金属で構成された2層以上の金属膜で構成されてもよい。この場合、基板面10aと接触している金属膜の端部を、D1及びD2それぞれの導波路20側の端部とすればよい。
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1IDT電極は、第2IDT電極と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。