JP7231356B2 - 導体劣化検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、導体劣化検出装置に関する。
従来の導体劣化検出装置として、例えば、特許文献1には、渦電流探傷用コイルを有する渦電流探傷センサーを用いて検査対象物の劣化状況を検出する装置が開示されている。
特開2010-038724号公報
ところで、上述の特許文献1に記載の装置は、例えば、劣化状況の検出精度の点で更なる改善の余地がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、導体の劣化の検出精度を向上することができる導体劣化検出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る導体劣化検出装置は、界を発生させる励磁コイル、及び、磁界を検出する検出コイルを有する一対のコイルセンサであってそれぞれ電線を挟んで互いに対向して設けられる一対のコイルセンサと、前記一対のコイルセンサの各前記励磁コイルによって磁界を発生させ、前記一対のコイルセンサの各前記検出コイルによってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、前記電線の導体の劣化を検出する処理を実行する処理部と、前記電線の延在方向と前記一対のコイルセンサが対向する方向とに交差する幅方向に沿って前記電線と隣接して設けられ、前記一対のコイルセンサ間の磁束を遮蔽する遮蔽部材とを備え、前記処理部は、前記一対のコイルセンサの一対の前記励磁コイルによって、前記電線において検査対象部位に向けて同時に磁界を発生させ、前記一対のコイルセンサの各前記検出コイルによってそれぞれ検出された前記検出値を前記検査対象部位における前記検出値とし、当該各検出コイルによってそれぞれ検出された前記検出値に基づいて前記検査対象部位における前記導体の劣化を検出する処理を実行し、当該各検出コイルによってそれぞれ検出された前記検出値を合算した合算値が予め設定された劣化判定閾値より小さい場合に、前記導体の劣化ありと判定することを特徴とする。
また、上記導体劣化検出装置では、前記幅方向に沿って前記遮蔽部材を前記電線側に押圧する弾性部材を備えるものとすることができる。
また、上記導体劣化検出装置では、前記遮蔽部材の前記電線側の端部に設けられ、前記延在方向に沿った前記電線と前記遮蔽部材との相対移動に伴って当該電線の外面上を転動する転動体を備えるものとすることができる。
また、上記導体劣化検出装置では、前記一対のコイルセンサ、及び、前記遮蔽部材が設けられる筐体と、前記延在方向に沿って前記電線と前記筐体とを相対移動させる駆動機構とを備え、前記処理部は、前記電線と前記一対のコイルセンサとの相対移動に伴って前記導体の劣化を検出する処理を実行するものとすることができる。
本発明に係る導体劣化検出装置は、それぞれ、励磁コイル、及び、検出コイルを有する一対のコイルセンサが電線を挟んで互いに対向して設けられる。そして、導体劣化検出装置は、処理部が一対のコイルセンサの各励磁コイルによって磁界を発生させ、一対のコイルセンサの各検出コイルによってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、電線の導体の劣化を検出する処理を実行する。この場合に、導体劣化検出装置は、電線と隣接して設けられる遮蔽部材が一対のコイルセンサ間の磁束を遮蔽する。この構成により、導体劣化検出装置は、一方のコイルセンサの励磁コイルによって発生される磁界が他方のコイルセンサの検出コイルによる磁界の検出に与える影響を抑制することができる。この結果、導体劣化検出装置は、導体の劣化の検出精度を向上することができる、という効果を奏する。
図1は、実施形態に係る導体劣化検出装置の概略構成を表すブロック図である。 図2は、実施形態に係る導体劣化検出装置が備える筐体の模式的な断面図である。 図3は、実施形態に係る導体劣化検出装置が備える筐体の模式的な断面図である。 図4は、実施形態に係る導体劣化検出装置が備える筐体の模式的な斜視図である。 図5は、実施形態に係る導体劣化検出装置における処理の一例を説明するフローチャート図である。 図6は、実施形態に係る導体劣化検出装置の作用を説明する模式図である。 図7は、実施形態に係る導体劣化検出装置の作用を説明する線図である。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「対向方向Y」といい、第3方向を「幅方向Z」という。ここでは、延在方向Xと対向方向Yと幅方向Zとは、相互に直交(交差)する。延在方向Xは、典型的には、導体劣化検出装置による検査対象である電線が延在する方向に相当する。対向方向Yは、典型的には、導体劣化検出装置の一対のコイルセンサが対向する方向に相当する。幅方向Zは、典型的には、導体劣化検出装置の遮蔽部材が電線と隣接する方向に相当する。また、図2は、導体劣化検出装置の筐体の幅方向Zに沿った断面図であり、図4中に示すA-A断面図である。さらに、図3は、導体劣化検出装置の筐体の延在方向Xに沿った断面図であり、図4中に示すB-B断面図である。
[実施形態]
図1に示す本実施形態に係る導体劣化検出装置1は、いわゆる渦電流探傷法(ECT:EddyCurrent Testing)を用いて電線Wの導体W1の劣化を検出する検査装置である。電線Wは、導体劣化検出装置1によって導体W1の劣化が検査される検査対象(検体)である。電線Wは、導体W1と、絶縁被覆W2とを含んで構成される。導体W1は、導電性を有する複数の金属素線Waを束ねたり撚り合せたりして構成される芯線である。絶縁被覆W2は、絶縁性を有する樹脂材料からなり、導体W1の外周面(外面)を覆い絶縁するものである。電線Wは、延在方向Xと直交する断面形状が略円形状に形成され、導体W1、絶縁被覆W2が延在方向Xに沿ってほぼ同じ径で線状に延びるように形成される。導体劣化検出装置1は、励磁コイル11が発生させる磁界(磁束)によって当該電線Wの導体W1に渦電流を発生させ、検出コイル12が導体W1に発生する当該渦電流に応じた磁界(磁束)を検出することで、導体W1の劣化を検出する。以下、各図を参照して導体劣化検出装置1の各構成について詳細に説明する。
なお、導体劣化検出装置1によって検査する導体W1の劣化とは、典型的には、導体W1の腐食であり、例えば、経年変化等によって発生する。また、以下の説明では、導体劣化検出装置1によって検査する電線Wは、例えば、電柱等を介して空中に架けられた架空配電線であるものとして説明するがこれに限らない。
具体的には、導体劣化検出装置1は、図1、図2、図3、図4に示すように、一対のコイルセンサ10と、電子回路20と、筐体30と、駆動機構40と、表示部50と、処理部60と、を備える。
一対のコイルセンサ10は、それぞれ、励磁コイル11、及び、検出コイル12を有し、対向方向Yに対して電線Wを挟んで互いに対向して設けられるものである。励磁コイル11、検出コイル12は、それぞれ巻線が螺旋状や渦巻き状に巻回されることで構成されるコイルである。励磁コイル11は、交流電流が印加されることによって磁界(磁束)を発生させるコイルであり、発生させた磁界によって導体W1に渦電流を発生させる。検出コイル12は、磁界(磁束)を検出するコイルであり、導体W1で発生した渦電流に応じた磁界の磁束変化により誘導電流が流れる。各コイルセンサ10は、それぞれ少なくとも1つの励磁コイル11と1つの検出コイル12とを有する。そして、一方のコイルセンサ10は、対向方向Yに対して電線Wの一方側に配置され、他方のコイルセンサ10は、対向方向Yに対して電線Wの他方側に配置される。言い換えれば、検査対象ではある電線Wは、導体劣化検出装置1において、対向方向Yに対して一対のコイルセンサ10の間に配置される。一対のコイルセンサ10は、励磁コイル11、検出コイル12それぞれにおいて、一対のコイルセンサ10間で略同一の特性が得られるように構成される。
なお、各コイルセンサ10における励磁コイル11と検出コイル12との位置関係は、各図に示す位置関係に限られない。また、以下の説明では、一対のコイルセンサ10を区別して説明する場合には便宜的にそれぞれ「コイルセンサ10A」、「コイルセンサ10B」といい、一対のコイルセンサ10を特に区別して説明する必要がない場合には単に「コイルセンサ10」という場合がある。同様に、一対の励磁コイル11を区別して説明する場合にはコイルセンサ10Aの励磁コイル11を「励磁コイル11A」、コイルセンサ10Bの励磁コイル11を「励磁コイル11B」といい、一対の励磁コイル11を特に区別して説明する必要がない場合には単に「励磁コイル11」という場合がある。さらには、一対の検出コイル12を区別して説明する場合にはコイルセンサ10Aの検出コイル12を「検出コイル12A」、コイルセンサ10Bの検出コイル12を「検出コイル12B」といい、一対の検出コイル12を特に区別して説明する必要がない場合には単に「検出コイル12」という場合がある。コイルセンサ10A、励磁コイル11A、検出コイル12Aは、それぞれ第1のコイルセンサ10、第1の励磁コイル11、第1の検出コイル12を構成する。コイルセンサ10B、励磁コイル11B、検出コイル12Bは、それぞれ第2のコイルセンサ10、第2の励磁コイル11、第2の検出コイル12を構成する。
電子回路20は、コイルセンサ10による磁界発生、及び、磁界検出を実現するための回路である。電子回路20は、発振回路21A、21B、及び、検出回路22A、22Bを含んで構成される。
発振回路21A、21Bは、励磁コイル11A、11Bを励磁させ、磁界を発生させる励磁回路である。発振回路21A、21Bは、励磁コイル11A、11Bを励磁させる交流電流を生成し、当該交流電流を励磁コイル11A、11Bに印加する。発振回路21Aは、励磁コイル11Aに電気的に接続され、当該励磁コイル11Aに交流電流を印加する。発振回路21Bは、励磁コイル11Bに電気的に接続され、当該励磁コイル11Bに交流電流を印加する。
検出回路22A、22Bは、検出コイル12に流れる誘導電流を検出信号として検出する回路である。検出回路22A、22Bによって検出される検出信号(誘導電流)は、例えば、導体W1で発生した渦電流に応じた磁界の磁束変化等に応じて変化し、すなわち、導体W1で発生した渦電流等に応じた信号となる。検出回路22Aは、検出コイル12Aに電気的に接続され、検出コイル12Aに流れる誘導電流を検出信号として検出する。検出回路22Bは、検出コイル12Bに流れる誘導電流を検出信号として検出する。
筐体30は、一対のコイルセンサ10が設けられる箱状の部材である。筐体30は、絶縁性を有する樹脂材料によって構成される。筐体30は、延在方向Xが長辺方向となる略直方体箱状に形成される。筐体30は、内部が中空状に形成され、当該内部に一対のコイルセンサ10が収容される。
一対のコイルセンサ10は、上述したような位置関係で筐体30の内部に組み付けられる。すなわち、筐体30の内部において、コイルセンサ10Aは、対向方向Yの一方側の壁部30aの内壁面30bに配置され、コイルセンサ10Bは、対向方向Yの他方側の壁部30cの内壁面30dに配置される。コイルセンサ10Aとコイルセンサ10Bとは、それぞれ内壁面30b、30dに固定されることで対向方向Yに沿った間隔が一定で保持される。
そして、筐体30は、延在方向Xに沿って対向する一対の壁部30e、30fにそれぞれ電線挿通孔30gが形成される。電線挿通孔30gは、それぞれ壁部30e、30fを延在方向Xに沿って貫通して形成される貫通孔である。各電線挿通孔30gは、筐体30の内外に渡って電線Wを挿通させる。各電線挿通孔30gは、壁部30e、30fそれぞれにおいて、対向方向Y、及び、幅方向Zの略中央部に形成される。
以上の構成により、内壁面30b、30dに配置された一対のコイルセンサ10は、各電線挿通孔30gに電線Wが挿通された状態で、対向方向Yに対して電線Wを挟んで両側に互いに対向して位置する。言い換えれば、各電線挿通孔30gに挿通された電線Wは、対向方向Yに対して一対のコイルセンサ10の間に位置する。
なお、筐体30は、典型的には、内部に電子回路20、駆動機構40、処理部60等も収容するように構成されるがこれに限らない。また、筐体30は、内部に後述する遮蔽部材70も設けられる。
駆動機構40は、延在方向Xに沿って電線Wと筐体30とを相対移動させるものである。本実施形態の駆動機構40は、電柱等を介して空中に架けられた電線Wに対して筐体30を延在方向Xに沿って移動させる。駆動機構40は、例えば、モータ41(図1参照)、駆動ローラ42(図3参照)等を含んで構成される。モータ41は、回転動力を発生させる動力源である。駆動ローラ42は、筐体30の内部に電線Wと接触して一対で設けられ、モータ41が発生させる回転動力によって回転駆動するものである。駆動機構40は、モータ41が発生させる回転動力によって駆動ローラ42が電線Wと接触した状態で回転駆動する。そして、駆動機構40は、回転駆動する当該駆動ローラ42によって一方の電線挿通孔30gから電線Wを筐体30の内部に引き込むと共に、他方の電線挿通孔30gから当該電線Wを筐体30の外部に送り出すようにして、筐体30を、電線W上を走行させる。これにより、駆動機構40は、電線Wに対して筐体30を延在方向Xに沿って移動させる。なお、図3の例では、駆動ローラ42は、筐体30の内壁面30b側に2つ設けられるものとして図示しているがこれに限らない。例えば、駆動ローラ42は、延在方向Xに対して電線Wを挟み込むようにして設けられてもよい。
表示部50は、電線Wの導体W1の劣化についての検査結果を表示するものである。表示部50は、画像情報を出力するディスプレイ等によって構成される。表示部50は、典型的には、筐体30の外部に設けられ、処理部60等と有線、あるいは、無線によって通信可能に接続される。
処理部60は、導体劣化検出装置1の各部を統括的に制御するものである。処理部60は、導体劣化検出装置1による電線Wの導体W1の劣化検査を実現するための種々の処理を実行する。処理部60は、CPU等の中央演算処理装置を含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路、半導体メモリ等の各種記憶装置等を含んで構成される。処理部60は、電子回路20、駆動機構40、表示部50等の導体劣化検出装置1の各部と通信可能に接続され、各部との間で相互に各種信号を授受可能である。
具体的には、処理部60は、機能概念的に、記憶部61、動作制御部62、判定部63等を含んで構成される。
記憶部61は、ROM、RAM、半導体メモリ等の記憶装置である。記憶部61は、導体劣化検出装置1での各種処理に必要な条件や情報、動作制御部62、判定部63で実行する各種プログラム、制御データ等が格納されている。また、記憶部61は、検出コイル12によって検出された検出信号に関する検出結果情報等を記憶することができる。記憶部61は、動作制御部62、判定部63等によってこれらの情報が必要に応じて読み出される。動作制御部62、判定部63は、記憶部61に記憶されている各種プログラムを実行し、当該プログラムが動作することにより導体劣化検出装置1の各部を動作させ各種機能を実現するための種々の処理を実行する。
動作制御部62は、電子回路20、駆動機構40、表示部50等の導体劣化検出装置1の各部の動作を制御する処理を実行する部分である。動作制御部62は、電子回路20の発振回路21A、21Bの動作を制御し、一対のコイルセンサ10の各励磁コイル11によって導体W1に渦電流を発生させるための磁界を発生させる処理を実行可能である。また、動作制御部62は、電子回路20の検出回路22A、22Bの動作を制御し、一対のコイルセンサ10の各検出コイル12によって導体W1に発生した渦電流に応じた磁界を検出させる処理を実行可能である。さらには、動作制御部62は、駆動機構40の動作を制御し、電線Wと筐体30とを延在方向Xに沿って相対移動させる処理を実行可能である。また、動作制御部62は、表示部50の動作を制御し、電線Wの導体W1の劣化についての検査結果を表示させる処理を実行可能である。
判定部63は、一対のコイルセンサ10の各検出コイル12によってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、電線Wの導体W1の劣化を検出する処理を実行可能である。検出コイル12によって検出される磁界の検出値とは、検出回路22A、22Bによって検出コイル12に流れる誘導電流に応じて検出される検出信号の出力値(振幅)に相当する。
電線Wの導体W1は、腐食による劣化が存在すると、当該劣化部位において、励磁コイル11が発生させた磁界によって発生する渦電流の分布が変化し当該渦電流が相対的に少なくなる傾向にある。この結果、電線Wの導体W1は、腐食による劣化が存在すると、当該劣化部位において、検出コイル12によって検出される検出値が相対的に小さくなる傾向にある。検出コイル12によって検出される検出値は、導体W1の劣化の度合いが相対的に大きくなるほど相対的に小さくなる傾向にある。このことを利用して、判定部63は、各検出コイル12によってそれぞれ検出された磁界の検出値の大小に応じて導体W1の劣化を判定することができる。判定部63は、例えば、各検出コイル12によって検出された磁界の検出値が予め設定された劣化判定閾値より小さい場合に、導体W1の劣化ありと判定することができる。
ここでは、本実施形態の動作制御部62は、一対のコイルセンサ10の一対の励磁コイル11によって、電線Wにおいて対向方向Yに沿って対向する検査対象部位に向けて同時に磁界を発生させる処理を実行する。そして、本実施形態の判定部63は、一対のコイルセンサ10の各検出コイル12によってそれぞれ検出された検出値を上記検査対象部位における検出値として1セットし、当該1セットの検出値に基づいて当該検査対象部位における導体W1の劣化を検出する処理を実行する。一例として、判定部63は、当該1セットの検出値を合算した合算値に基づいて導体W1の劣化を検出する。例えば、判定部63は、当該1セットの検出値を合算した合算値が予め判定された劣化判定閾値より小さい場合に、導体W1の劣化ありと判定することができる。
このように、導体劣化検出装置1は、各検出コイル12によってそれぞれ検出された検出値を上記検査対象部位における1セットの検出値として当該検査対象部位における導体W1の劣化を検出することで、電線Wの対向方向Yに沿った位置ズレの影響を抑制することができる。すなわちこの場合、導体劣化検出装置1は、電線Wの導体W1が対向方向Yに沿って一方のコイルセンサ10の検出コイル12側に寄ると、当該一方側の検出コイル12の検出値が相対的に大きくなる一方、他方のコイルセンサ10の検出コイル12の検出値が相対的に小さくなる。これにより、導体劣化検出装置1は、電線Wの導体W1が一方の検出コイル12側に偏ることによる当該一方の検出コイル12の検出値の増加側への変動を、他方の検出コイル12の検出値の減少側への変動によって打ち消すことができる。つまり、一対の検出コイル12によって同一の検査対象部位において検出された1セットの検出値の合算値は、各検出コイル12に対する導体W1の位置に依存し難い値となる。この結果、導体劣化検出装置1は、上記のように1セットの検出値の合算値に基づいて導体W1の劣化を検出することで、電線Wの導体W1と一対の検出コイル12との位置関係が対向方向Yに沿って変動しても当該変動の影響を抑制し、検出精度の向上を図ることができる。
そして、動作制御部62は、駆動機構40の動作を制御し、電線Wと筐体30とを延在方向Xに沿って相対移動させることで電線Wにおける検査対象部位を延在方向Xに沿って順次ずらしていく処理を実行する。判定部63は、電線Wと一対のコイルセンサ10との相対移動に伴って延在方向Xに沿って順次移動していく検査対象部位において、導体W1の劣化を検出する処理を繰り返し実行する。
次に、図5のフローチャート図を参照して、導体劣化検出装置1による導体劣化検出方法に係る処理の一例を説明する。導体劣化検出装置1は、導体劣化検出にあたって、まず、筐体30の各電線挿通孔30gを介して電線Wを筐体30の内外に渡って挿通しておく。その後、導体劣化検出装置1は、不図示の操作部等を介して検出開始操作がなされることで図5に示す処理を実行する。
具体的には、まず、処理部60の動作制御部62は、発振回路21A、21Bの動作を制御し、各励磁コイル11を励磁させる交流電流を生成し、当該交流電流を励磁コイル11A、11Bに印加する(ステップS1)。これにより、一対のコイルセンサ10の各励磁コイル11は、磁界を発生させ、導体W1の表面に渦電流を発生させる。ここでは、動作制御部62は、一対のコイルセンサ10の一対の励磁コイル11によって、電線Wにおいて対向方向Yに沿って対向する同一の検査対象部位に向けて同時に磁界を発生させる。
次に、動作制御部62は、検出回路22A、22Bを介して、一対のコイルセンサ10の各検出コイル12によって導体W1に発生した渦電流に応じた磁界を検出し、当該各検出コイル12に流れる誘導電流に応じた各検出信号を取り込む(ステップS2)。
次に、処理部60の判定部63は、ステップS2で取り込んだ各検出信号に応じた各検出値を電線Wの検査対象部位における検出値として1セットし、当該1セットの検出値を合算して合算値を求める(ステップS3)。
次に、判定部63は、ステップS3で求めた1セットの検出値の合算値に基づいて導体W1の劣化を検出し、劣化の検出結果を記憶部61に記憶する(ステップS4)。判定部63は、例えば、1セットの検出値の合算値と予め設定される劣化判定閾値とに基づいて導体W1の劣化を検出する。
次に、動作制御部62は、不図示の操作部等を介して検出終了操作がなされたか否かを判定する(ステップS5)。
動作制御部62は、検出終了操作がなされていないと判定した場合(ステップS5:No)、駆動機構40の動作を制御し、電線Wに対して筐体30を延在方向Xに沿って所定距離移動させ、電線Wにおける検査対象部位を延在方向Xに沿ってずらす(ステップS6)。その後、動作制御部62は、ステップS2の処理に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
動作制御部62は、検出終了操作がなされたと判定した場合(ステップS5:Yes)、ステップS4で記憶部61に記憶された導体W1の劣化の検出結果を表示部50に表示させ(ステップS7)、この制御を終了する。
そして、本実施形態の導体劣化検出装置1は、上記のような構成にあって、図1、図2、図3に示すように、さらに、遮蔽部材70を備えることで、導体W1の劣化検出の精度向上を図っている。
遮蔽部材70は、幅方向Zに沿って筐体30内の電線Wと隣接して設けられ、一対のコイルセンサ10間の磁束を遮蔽するシャッタ部材である。遮蔽部材70は、磁束を好適に遮断するため、例えば、鉄等の磁性体材料によって構成されることが好ましい。遮蔽部材70は、筐体30の内部において、電線Wの幅方向Zの両側に一対で設けられる。各遮蔽部材70は、板厚方向が対向方向Yに沿う略矩形板状に形成される。一対の遮蔽部材70は、対向方向Yに対して略同位置で、かつ、幅方向Zに沿って電線Wを挟んで対向する位置に設けられる。一対の遮蔽部材70は、電線Wを挟んで対向した状態で、対向方向Yに沿って視て、一対の遮蔽部材70を合わせた全体の外形が各コイルセンサ10の外形よりも大きくなるように形成される。つまり、一対の遮蔽部材70は、対向方向Yに対向する一対のコイルセンサ10間において、電線W以外の領域の略全域に渡って磁束を遮断する大きさに形成される。一対の遮蔽部材70は、一方のコイルセンサ10の励磁コイル11が発生させた磁界の磁束のうち、電線Wの脇を通り他方のコイルセンサ10の検出コイル12に向かおうとする磁束を遮断する。
一対の遮蔽部材70は、筐体30の内部において、一方の遮蔽部材70が幅方向Zの一方側の壁部30hの内壁面30iに支持され、他方の遮蔽部材70が幅方向Zの他方側の壁部30jの内壁面30kに支持される。各遮蔽部材70は、例えば、対向方向Yに沿った電線Wの上下動に追従して当該各遮蔽部材70を対向方向Yに沿ってスライドさせるスライド支持機構を介して内壁面30i、30kに支持されてもよい。
本実施形態の導体劣化検出装置1は、さらに、各遮蔽部材70と各内壁面30i、30kとの間に介在する弾性部材71を備える。弾性部材71は、一方の遮蔽部材70と内壁面30iとの間に1つ、他方の遮蔽部材70と内壁面30kとの間に1つ、合計2つ設けられる。各弾性部材71は、例えば、圧縮コイルばね等によって構成されるがこれに限らない。本実施形態の各遮蔽部材70は、それぞれ内壁面30i、30kとの間に当該弾性部材71を介在させて内壁面30i、30kに支持される。そして、各弾性部材71は、それぞれ付勢力によって幅方向Zに沿って遮蔽部材70を電線W側に押圧する。これにより、各弾性部材71は、電線Wの外径にあわせて一対の遮蔽部材70の間の幅方向Zに沿った開度を調整することができ、各遮蔽部材70と電線Wとの隙間を最小にすることができる。
また、本実施形態の導体劣化検出装置1は、さらに、遮蔽部材70の電線W側の端部に設けられる転動体72を備える。転動体72は、各遮蔽部材70にそれぞれ設けられる。転動体72は、各遮蔽部材70の電線W側の端部に複数設けられてもよい。各転動体72は、延在方向Xに沿った電線Wと遮蔽部材70との相対移動に伴って当該電線Wの外面上を延在方向Xに沿って転動するローラである。各転動体72は、各遮蔽部材70と電線Wとの隙間を最小にしつつ各遮蔽部材70と電線Wとの間に生じる摩擦を低減することができる。ここでは、各転動体72は、電線Wと接触する転動面72aが電線Wの外面の曲面形状に対応するように転動軸側に向けて凹んだ湾曲形状をなしている。これにより、各転動体72は、対向方向Yに沿った電線Wの上下動に追従し易い形状となっている。
以上で説明した導体劣化検出装置1は、それぞれ、励磁コイル11、及び、検出コイル12を有する一対のコイルセンサ10が電線Wを挟んで互いに対向して設けられる。そして、導体劣化検出装置1は、処理部60が一対のコイルセンサ10の各励磁コイル11によって磁界を発生させ、一対のコイルセンサ10の各検出コイル12によってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、電線Wの導体W1の劣化を検出する処理を実行する。この場合に、導体劣化検出装置1は、図6中に囲み点線で示すように、電線Wと隣接して設けられる各遮蔽部材70が一対のコイルセンサ10間の磁束を遮蔽する。すなわち、各遮蔽部材70は、一方のコイルセンサ10の励磁コイル11が発生させた磁界の磁束のうち、電線Wの脇を通り他方のコイルセンサ10の検出コイル12に向かおうとする磁束を遮断することができる。
この構成により、導体劣化検出装置1は、一方のコイルセンサ10の励磁コイル11によって発生される磁界が他方のコイルセンサ10の検出コイル12による磁界の検出に与える影響を抑制することができる。図7は、縦軸を検出コイル12の出力(検出値)とし、実施例に係る導体劣化検出装置1における当該出力と、比較例に係る導体劣化検出装置における当該出力とを比較した図である。実施例に係る導体劣化検出装置1は、上述の実施形態と同様の構成である。比較例に係る導体劣化検出装置は、上述の遮蔽部材70等を備えない構成である。図7は、実施例、比較例それぞれの検出コイル12の出力において、電線Wからの誘導磁束による成分T11、T21と、検出コイル12とは反対側の励磁コイル11からの磁束による成分T12、T22とをシミュレーションや実測等によって特定した結果を表している。図7に示すように、実施例に係る導体劣化検出装置1は、比較例に係る導体劣化検出装置と比較して、一方のコイルセンサ10の励磁コイル11によって発生される磁界が他方のコイルセンサ10の検出コイル12による磁界の検出に与える影響を抑制することができることが明らかである。
つまり、導体劣化検出装置1は、検出コイル12の出力(検出値)のうち、検出コイル12とは反対側の励磁コイル11からの磁束による成分T12の割合を低減し、電線Wからの誘導磁束による成分T11の割合を増加させることができる。これにより、導体劣化検出装置1は、導体W1の劣化に応じた検出コイル12の出力の変化を、他の成分に埋もれさせずに精度よく検出することができる。この結果、導体劣化検出装置1は、導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。これにより、導体劣化検出装置1は、例えば、非破壊で導体W1の劣化度合いを精度よく把握することができ、例えば、計画的な電線Wの張り替え等の予防保全に活用することができる。
また、導体劣化検出装置1は、様々な外径の電線Wを検査対象とした場合に、外径が相対的に小さい電線Wが検査対象となり、一方の励磁コイル11から電線Wの脇を通り反対側の検出コイル12に向かおうとする磁束が相対的に多くなる場合であっても、上記のように各遮蔽部材70によって当該磁束を遮断することができる。この結果、導体劣化検出装置1は、外径が相対的に小さい電線Wが検査対象となる場合であっても、外径が相対的に大きい電線Wが検査対象となる場合と同様に、適正な検出精度を維持することができる。したがって、導体劣化検出装置1は、様々な外径の電線Wを検査対象とした場合に、各外径の電線Wにあわせて大きさの異なるコイルセンサ10を用意しなくても、いずれの外径の電線Wに対しても共通で適正に導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。この結果、導体劣化検出装置1は、電線Wの外径に応じたコイルセンサ10や筐体30の交換作業等を行わずに、低コストで容易に様々な外径の電線Wの導体W1の劣化を精度よく検出することができる。
また、以上で説明した導体劣化検出装置1は、各遮蔽部材70を電線W側に押圧する弾性部材71を備えるので、いずれの外径の電線Wに対しても各遮蔽部材70を電線Wに追従させ、各遮蔽部材70と電線Wとの隙間を最小にすることができる。この構成により、導体劣化検出装置1は、各遮蔽部材70によって一方の励磁コイル11から電線Wの脇を通り反対側の検出コイル12に向かおうとする磁束を確実に遮断することができる。この結果、導体劣化検出装置1は、導体W1の劣化の検出精度をより向上することができる。
また、以上で説明した導体劣化検出装置1は、各遮蔽部材70の電線W側に端部に転動体72を備えるので、各遮蔽部材70と電線Wとの隙間を最小にしつつ相対移動させた際に各遮蔽部材70と電線Wとの間に生じる摩擦を低減することができる。この結果、導体劣化検出装置1は、転動体72によって電線Wを傷つけることなく各遮蔽部材70と電線Wとの相対移動を滑らかに案内することができ、電線Wと筐体30とを安定して相対移動させつつ、適正に導体W1の劣化を検出することができる。また、導体劣化検出装置1は、当該転動体72の転動面72aが湾曲形状をなすことで、当該転動体72を対向方向Yに沿った電線Wの上下動に追従し易い構成とすることができる。この点でも、導体劣化検出装置1は、適正に導体W1の劣化を検出することができる。
より詳細には、以上で説明した導体劣化検出装置1は、一対の励磁コイル11によって、電線Wの検査対象部位に向けて同時に磁界を発生させ、一対の検出コイル12の検出値を1セットの検出値として当該検査対象部位における導体W1の劣化を検出する。この構成により、導体劣化検出装置1は、電線Wの導体W1と一対の検出コイル12との位置関係が対向方向Yに沿って変動しても当該変動の影響を抑制して導体W1の劣化を検出することができる。このような構成にあって、導体劣化検出装置1は、遮蔽部材70によって導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。この結果、導体劣化検出装置1は、電線Wの導体W1と各検出コイル12との対向方向Yに沿った位置関係の変動の影響を抑制しつつ導体W1の劣化の検出精度を向上することができる。
ここでは、以上で説明した導体劣化検出装置1は、筐体30と、駆動機構40とを備え、処理部60が電線Wと一対のコイルセンサ10との相対移動に伴って導体W1の劣化を検出する処理を実行する。この結果、導体劣化検出装置1は、電線Wの延在方向Xの全体に渡って容易に導体W1の劣化を検出することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る導体劣化検出装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、駆動機構40は、電柱等を介して空中に架けられた電線Wに対して筐体30を延在方向Xに沿って移動させるものとして説明したがこれに限らない。駆動機構40は、筐体30に対して電線Wを延在方向Xに沿って移動させるものであってもよい。また、駆動機構40は、モータ41、駆動ローラ42等を含んで構成されるものとして説明したがこれに限らない。
以上の説明では、導体劣化検出装置1は、駆動機構40、表示部50、弾性部材71、転動体72を備えるものとして説明したがこれに限らず、駆動機構40、表示部50、弾性部材71、転動体72を備えない構成であってもよい。
1 導体劣化検出装置
10、10A、10B コイルセンサ
11、11A、11B 励磁コイル
12、12A、12B 検出コイル
20 電子回路
21A、21B 発振回路
22A、22B 検出回路
30 筐体
30a、30c、30e、30f、30h、30j 壁部
30b、30d、30i、30k 内壁面
30g 電線挿通孔
40 駆動機構
41 モータ
42 駆動ローラ
50 表示部
60 処理部
61 記憶部
62 動作制御部
63 判定部
70 遮蔽部材
71 弾性部材
72 転動体
72a 転動面
W 電線
W1 導体
W2 絶縁被覆
Wa 金属素線
X 延在方向
Y 対向方向
Z 幅方向

Claims (4)

  1. 界を発生させる励磁コイル、及び、磁界を検出する検出コイルを有する一対のコイルセンサであってそれぞれ電線を挟んで互いに対向して設けられる一対のコイルセンサと、
    前記一対のコイルセンサの各前記励磁コイルによって磁界を発生させ、前記一対のコイルセンサの各前記検出コイルによってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、前記電線の導体の劣化を検出する処理を実行する処理部と、
    前記電線の延在方向と前記一対のコイルセンサが対向する方向とに交差する幅方向に沿って前記電線と隣接して設けられ、前記一対のコイルセンサ間の磁束を遮蔽する遮蔽部材とを備え
    前記処理部は、前記一対のコイルセンサの一対の前記励磁コイルによって、前記電線において検査対象部位に向けて同時に磁界を発生させ、前記一対のコイルセンサの各前記検出コイルによってそれぞれ検出された前記検出値を前記検査対象部位における前記検出値とし、当該各検出コイルによってそれぞれ検出された前記検出値に基づいて前記検査対象部位における前記導体の劣化を検出する処理を実行し、当該各検出コイルによってそれぞれ検出された前記検出値を合算した合算値が予め設定された劣化判定閾値より小さい場合に、前記導体の劣化ありと判定することを特徴とする、
    導体劣化検出装置。
  2. 磁界を発生させる励磁コイル、及び、磁界を検出する検出コイルを有する一対のコイルセンサであって、それぞれ電線を挟んで互いに対向して設けられる一対のコイルセンサと、
    前記一対のコイルセンサの各前記励磁コイルによって磁界を発生させ、前記一対のコイルセンサの各前記検出コイルによってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、前記電線の導体の劣化を検出する処理を実行する処理部と、
    前記電線の延在方向と前記一対のコイルセンサが対向する方向とに交差する幅方向に沿って前記電線と隣接して設けられ、前記一対のコイルセンサ間の磁束を遮蔽する遮蔽部材と、
    前記幅方向に沿って前記遮蔽部材を前記電線側に押圧する弾性部材を備える、
    体劣化検出装置。
  3. 磁界を発生させる励磁コイル、及び、磁界を検出する検出コイルを有する一対のコイルセンサであって、それぞれ電線を挟んで互いに対向して設けられる一対のコイルセンサと、
    前記一対のコイルセンサの各前記励磁コイルによって磁界を発生させ、前記一対のコイルセンサの各前記検出コイルによってそれぞれ検出された磁界の検出値に基づいて、前記電線の導体の劣化を検出する処理を実行する処理部と、
    前記電線の延在方向と前記一対のコイルセンサが対向する方向とに交差する幅方向に沿って前記電線と隣接して設けられ、前記一対のコイルセンサ間の磁束を遮蔽する遮蔽部材と、
    前記遮蔽部材の前記電線側の端部に設けられ、前記延在方向に沿った前記電線と前記遮蔽部材との相対移動に伴って当該電線の外面上を転動する転動体を備える、
    体劣化検出装置。
  4. 前記一対のコイルセンサ、及び、前記遮蔽部材が設けられる筐体と、
    前記延在方向に沿って前記電線と前記筐体とを相対移動させる駆動機構とを備え、
    前記処理部は、前記電線と前記一対のコイルセンサとの相対移動に伴って前記導体の劣化を検出する処理を実行する、
    請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の導体劣化検出装置。
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