JP7230475B2 - 浸炭鋼部品の製造方法 - Google Patents

浸炭鋼部品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7230475B2
JP7230475B2 JP2018231569A JP2018231569A JP7230475B2 JP 7230475 B2 JP7230475 B2 JP 7230475B2 JP 2018231569 A JP2018231569 A JP 2018231569A JP 2018231569 A JP2018231569 A JP 2018231569A JP 7230475 B2 JP7230475 B2 JP 7230475B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cycle fatigue
fatigue strength
steel
value
formula
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018231569A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020094231A (ja
Inventor
直樹 福田
侑大 岩本
康弘 福田
浩行 水野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aichi Steel Corp
Original Assignee
Aichi Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aichi Steel Corp filed Critical Aichi Steel Corp
Priority to JP2018231569A priority Critical patent/JP7230475B2/ja
Publication of JP2020094231A publication Critical patent/JP2020094231A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7230475B2 publication Critical patent/JP7230475B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Description

本発明は、浸炭鋼部品の製造方法に関する。
例えば、自動車のエンジンからの出力をドライブシャフトへと伝えるデフリングギヤは、静的な強度と、低サイクルから高サイクルにおける疲労強度という幅広い強度特性を必要とする駆動系部品である。すなわち、デフリングギヤは、長期間の自動車の使用中において、突発的な急発進等で瞬間的に高応力が負荷されるため、高い低サイクル疲労強度が要求される。その一方で、突発的な急発進時ほど高い応力負荷はかからない状態で長期間安心して使用可能とするためには、優れた高サイクル疲労強度の確保が必要である。従って、両者の疲労強度を両立できる技術開発が強く求められていた。
ここで、本願明細書においては、低サイクル疲労強度とは、100~10000回程度の繰り返し数まで耐えられる応力値のことを言い、高サイクル疲労強度とは、従来から普通に疲労強度と言われている耐久限度であって、例えば繰り返し数107回程度まで耐えられる応力値のことをいう。
従来の浸炭鋼部品に関する文献においては、サイクル数について特に言及のない場合が多く、この場合は、107回といった高サイクルでの耐久限について検討されたものであることが一般的である。そして、後述の一部の特許文献において、低サイクルに注目した発明が提案されているにすぎない。さらに、低サイクルに加え、高サイクルの疲労特性まで両立できる発明は、ほとんど提案されていない。
例えば、特許文献1には、鋼材の化学成分および浸炭後の表面の硬さおよび心部の硬さを適切に制御することにより、繰り返し荷重の付加が102回~104回の低サイクル疲労強度を高めることが示されている。特に、心部硬さをHV400~500とすることを特徴としている。しかしながら、本特許文献では、個々の実施例に熱処理条件に関する記載が全くなく、得られた低サイクル疲労強度と具体的な熱処理条件との関係を把握することができない。また、高サイクル疲労強度については、全く記載されていない。従って、いかなる条件とした場合に、2つの疲労強度を両立できるのか判断できない。
また、特許文献2には、鋼材の化学成分および浸炭後の表面近傍の浸炭異常層、あるいは部品芯部の不完全焼入れ相の制御をC、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Niの添加量により規定することで繰り返し荷重の付加が100回~500回の低サイクル疲労強度を高めることが示されている。しかしながら、この例でも、高サイクル疲労強度については何ら言及されておらず、特許文献1と同様に2つの疲労強度を両立できる条件の明確化が成されていない。
なお、過去に特許文献3に示す通り、幅広いサイクル数において、優れた疲労強度の得られる鋼が開発されているが、この鋼は、Ti、Bの必須添加を前提とする発明である。しかし、Ti、B添加鋼の場合、浸炭焼入れ処理によって生じる浸炭歪が非常に大きい点で、未添加鋼に比べて問題があるため、実部品への適用は十分にできていないのが現状である。
特開2010-285689号公報 特開2011-208225号公報 特開2010-150592号公報
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、浸炭歪を悪化させることなく、高サイクルと低サイクルの両方において高い疲労強度特性を発揮する浸炭鋼部品の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、質量比において、C:0.10%~0.29%、Si:0.70%~1.20%、Mn:0.30%~1.00%(ただし、Mnが0.50%以下の場合を除く)、Cr:0.15%~1.25%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020%~0.050%、N:0.0030%~0.0200%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学成分を有し、
表面に浸炭層を備え、
1Hzあるいは5Hzの周波数で繰り返し所定応力を負荷して行う低サイクル疲労試験における繰り返し回数100回において、折損せずに耐えうる負荷応力の値が、1540MPa以上であり、
回転数1800rpmで繰り返し曲げ応力を付与して行う高サイクル疲労試験における繰り返し回数107回において、折損せずに耐えうる負荷応力の値が、525MPa以上である、浸炭鋼部品を製造する方法であって、
前記化学成分を有する鋼部材に浸炭焼入れ処理を施した後、焼戻し処理を行うに当たり、当該焼戻し処理は、処理温度T(℃)が以下の式(1)及び式(2)を満足する条件で行う、浸炭鋼部品の製造方法である。
式(1):T(℃)≧200-4[Si]-29[Mo]
式(2):100[Si]+45[Mo]+180≧T(℃)
(ここで、[Si]及び[Mo]は、それぞれSiの含有率(%)の値及びMoの含有率(%)の値を意味する)
上記浸炭鋼部品の製造方法においては、上記特定の化学成分を有することを前提として、焼入れ処理後の焼戻し処理の処理温度条件を、上記化学成分のうちのSiとMoの含有率との関係で整理した式(1)及び式(2)で規定される範囲に制限することによって、確実に、高サイクルと低サイクル(極低サイクルを含む)の両方において高い疲労強度特性を発揮する浸炭鋼部品を製造することが可能となる。
すなわち、低サイクル領域における破損モードは、負荷の上昇に伴い、浸炭表層において初期クラック(クラックインとよび、その応力をクラックイン応力という。)を生じ、繰返し応力付与の過程で、クラックが進展し、最終的に破断に至るというものである。本願の上記製造方法においては、鋼材の化学成分の制御および浸炭処理後の焼戻し処理温度を、式(1)を満足する範囲で、従来の浸炭処理後に行われる焼戻し温度である150℃前後に比較して高温化することにより、浸炭層および芯部の靭性を向上させることで、クラックイン応力や最終破断応力を高め、高強度化を達成することができ、これにより、低サイクル疲労強度の向上を図ることができる。後述の実施例にて示す通り、焼戻し温度の高温化で大きな低サイクル疲労強度の改善がみられており、この効果は非常に顕著なものであり、当業者には予測できない大きな効果が得られることが見出された。
また、焼戻し温度の高温化は、浸炭表層の硬さが低下し、高サイクル疲労強度の低下を招く背反が懸念される。しかし、上記特定の化学成分を採用すると共に式(2)により焼戻し温度の上限を定めることにより、高Si化による熱軟化抵抗性の効果を考慮した、優れた高サイクル疲労強度の得られる範囲を明確化することができる。その結果、従来の背反的な特性を打破し、高サイクルと低サイクル(極低サイクル)の両方において高い疲労強度特性を得ることが可能となる。
実施例における、式(1)の値と、焼戻し温度(℃)及び、低サイクル疲労強度及び高サイクル疲労強度との関係を示す説明図。 実施例における、式(2)の値と、焼戻し温度(℃)及び、低サイクル疲労強度及び高サイクル疲労強度との関係を示す説明図。
上記浸炭鋼部品の化学成分について、その限定理由を説明する。
C:0.10%~0.29%、
C(炭素)は、内部硬さを確保するために重要な元素であり、その効果を得るためにC含有率は0.10%以上とする。一方、C含有率が高すぎると、被削性劣化、靭性劣化、冷間鍛造性劣化等のおそれがあるため、上限値は0.29%とする。
Si:0.70%~1.20%、
Si(ケイ素)は、焼戻し温度を従来より高温化しても焼戻し軟化抵抗を高めることにより、高サイクル疲労強度の低下を抑制するとともに、浸炭層における粒界強化、および、浸炭異常層の形態悪化の抑制(ひげ状の粒界酸化層の抑制)効果を得るため、含有率の下限値を0.70%とする。ここで、浸炭異常層の形態悪化とは、特開平10-259470号公報に記載されているように、浸炭異常層の最大深さ位置から表面までの所定範囲の断面における浸炭異常層の占める面積が低下することを意味する。一方、Si含有率が高すぎると、ガス浸炭性の劣化、被削性の劣化、冷間鍛造性の劣化等のおそれがあるため、上限値は1.20%とする。
Mn:0.30%~1.00%(ただし、Mnが0.50%以下の場合を除く)
Mn(マンガン)は、内部硬さ(強度)確保のため、0.30%以上含有させる。一方、Mn含有率が高すぎると、浸炭異常層の深さが増大すると共に、残留オーステナイトが増加するおそれがあり、上限値は1.00%とする。
Cr:0.15%~1.25%、
Cr(クロム)は、内部硬さ(強度)確保のため、0.15%以上含有させる。一方、Cr含有率が高すぎると、浸炭異常層の深さが増大すると共に、ガス浸炭性が劣化するおそれがあるため、上限値は1.25%とする。
Mo:0.80%以下(0%を含む)、
Mo(モリブデン)は、必要に応じて添加できる任意添加元素であり、添加した場合には、内部硬さ(強度)確保及び浸炭異常層の抑制に有効な元素である。また、Moは、Siと同様に浸炭異常層の形態悪化の抑制に効果的な元素である。しかし、Moは、合金鉄の価格変動によって高価な元素になることがあるため、本発明では、任意添加元素としている。しかし、添加する場合でもコストと得られる効果のバランスを考慮して、上限値を0.80%とする。
Al:0.020%~0.050%、
Al(アルミニウム)は、AlN生成による結晶粒微細化に有効であるため、0.020%以上含有させる。一方、Al含有率が高すぎると、アルミナを起点とする強度低下が生じるおそれがあるため、上限値は0.050%とする。
N:0.0030%~0.0200%、
N(窒素)は、Alと共にAlNを生成することによる結晶粒微細化に有効であるため、0.0030%以上含有させる。一方、N含有率が高すぎる場合には、Nのガス化によって、製造性が劣化するおそれがあり、上限値は0.0200%とする。
次に、上記浸炭鋼部品の製造方法における焼戻し処理は、処理温度T(℃)が以下の式(1)及び式(2)を満足する条件で行う。
式(1):T(℃)≧200-4[Si]-29[Mo]
式(2):100[Si]+45[Mo]+180≧T(℃)
(ここで、[Si]及び[Mo]は、それぞれSiの含有率(%)の値及びMoの含有率(%)の値を意味する)
式(1)及び式(2)は、本発明の特徴である低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度を両立するための焼戻し処理温度の条件を式で表現したものである。SiとMoの含有率で式を定めているのは、前記した成分からなる鋼について、多数の実験を繰返した結果、従来の150℃程度で焼戻し処理した場合に得られる性能に比較して、優れた特性の得られる焼戻し処理温度の範囲が特にSi、Mo含有率によって変化することが見出されたためである。
すなわち、Si、Moは前記したように、共に浸炭異常層の形態を改善し、これが低サイクル疲労強度及び高サイクル疲労強度改善に寄与する。また、Moは浸炭異常層抑制に効果的であるとともに、Siは焼戻し軟化抵抗向上により、優れた高サイクル疲労強度の得られる焼戻し処理温度の上限値拡大に寄与する。以上、説明した効果を多数のデータに基づき表現した式が、式(1)及び式(2)である。
そして、式(1)と式(2)の両方を満足する条件で焼戻し処理を実施することにより、低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度の両方に優れた特性を得ることが可能となる。一方、式(1)を満足しない場合には、低サイクル疲労強度を確保することが困難となり、式(2)を満足しない場合には、高サイクル疲労強度を確保することが困難となる。
なお、前記した通り、従来でも焼戻しを行なう点では違いがないが、従来の焼戻しは150~160℃程度であり、式(1)で定まる下限温度より明確に低い。本発明は、成分の最適化と焼戻し処理温度の高温化を特定の条件範囲内で行うことにより、低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度の両立が可能となることを見出したものである。
上記浸炭鋼部品の製造方法の実施例について説明する。
本例では、表1に示すごとく、10種類の鉄鋼材料(鋼種A~J)を用意し、鍛造加工及び切削加工を施して、3種類の鋼部材、つまり、低サイクル疲労試験用の第1試験片、高サイクル疲労試験用の第2試験片、及び浸炭焼入れ歪評価用の歯車を作製した。このうち、A~E鋼が本発明の条件を満足する鋼であり、F鋼は従来のJISのCr-Mo鋼、G~I鋼は、一部の成分が本発明の条件を満足しない比較鋼、J鋼は特許文献3で開示されている過去の開発鋼である。そして、これらの3種類の鋼部材に所定の条件で浸炭焼入れ処理及び焼戻し処理を行って浸炭鋼部材とした。なお、A鋼はMoを不純物として含有する鋼であり、P、S、Cu、Niについては請求項に記載はないが、不純物として含有していた分析値を示したものである。
Figure 0007230475000001
浸炭処理は、ガス浸炭法を用いた。浸炭処理条件は、浸炭ガス雰囲気において950℃に2.5時間保持することを基本条件とし、鋼種ごとに温度、時間、CP(カーボンポテンシャル)等の条件を調整した。浸炭処理直後の焼入れ処理は、130℃の油によって油冷する条件で行った。
浸炭焼入れ処理後の焼戻し処理は、表2に示す焼戻し温度に1時間保持することを基本条件とした。そして、得られた種類の浸炭鋼部材に対して、次のようにして各評価を行った。
<低サイクル疲労試験>
低サイクル疲労試験は、形状及びサイズが縦横17.8mmの正方形断面の角柱状の試験片であって、ノッチ角度60°、ノッチ深さ1.8mm、ノッチ底部の曲率半径1.5mmというノッチを設けた第1試験片を用いて行った。試験は、株式会社島津製作所製の3点曲げ試験装置を用い、2箇所の支点に支えられた第1試験片に対して、ノッチを設けた面と反対側の面から圧子を当接させて、1Hzあるいは5Hzの周波数で繰り返し所定応力を負荷して行った。評価は、繰り返し回数100回において、折損せずに耐えうる負荷応力の値が、前記の通り過去に幅広いサイクル数で優れた性能が得られるとされたJ鋼の値である1540MPa以上の場合を合格(○)とし、それ未満の場合を不合格(×)とした。
<高サイクル疲労試験>
高サイクル疲労試験は、形状及びサイズが直径φ10mmの円形断面の円柱状の試験片であって、ノッチ深さ1.0mm、ノッチ曲率半径1.0mmというノッチを設けた第2試験片を用いて行った。試験は、株式会社島津製作所製の小野式回転曲げ試験装置(型番:H6型)を用い、回転数1800rpmで繰り返し曲げ応力を付与して行った。評価は、繰り返し回数107回において、折損せずに耐えうる負荷応力の値が、従来のCr-Mo鋼に通常温度である150℃で焼戻し処理を行って得られたF鋼の値である525MPa以上の場合を合格(○)とし、それ未満の場合を不合格(×)とした。
<焼入れ歪み評価>
焼入れ歪み評価は、歯車を用いて行った。試験に用いた歯車は、外径:160mmφ、軸方向厚み:20mmであり、歯数:51、モジュール:2.54、圧力角:15°、ねじれ角:右34°という諸元の歯を設けたはすば歯車を用いた。歪みの評価は、浸炭焼入れ処理前後における歯溝のふれ変化量、具体的には、歯車の歯溝に測定子を挿入し、半径方向の位置の最大値と最小値の差を求め、その値が従来のCr-Mo鋼であるF鋼の値と同等あるいはそれよりも優れる場合を合格(○)、それよりも劣る場合を不合格(×)とした。
<表面硬さ及び内部硬さ>
表面硬さ及び内部硬さは、低サイクル疲労試験と同様の第1試験片を用い、その表面と、任意断面の厚み方向中央部とにおいて、ビッカース硬さを測定した。
Figure 0007230475000002
表2に示されているように、A~Eの全ての鋼種において、式1の値以上の温度条件で焼戻し処理を行った場合に、低サイクル疲労強度が合格し、式2の値以下の温度条件で焼戻し処理を行った場合に、高サイクル疲労強度が合格した。そして、式1の値以上、かつ、式2の値以下の温度条件で焼戻し処理を行った場合に、低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度の両方において合格することがわかった。また、A~Eの全ての鋼種は、焼入れ歪みが従来鋼と比較して同等以下であって小さく、問題のない形状維持性を有していることがわかった。
より具体的には、焼入歪み評価試験の結果、本発明であるA~E鋼の歯溝のふれ変化量は、焼戻し温度に関係なく、27~33μmとなっており、本発明の条件を満足する焼戻し温度で行った場合についても、従来から肌焼鋼として普通に用いられているCr-Mo鋼であるF鋼について150℃で焼戻し(従来の温度)を行った場合の結果である31μmとほぼ同等で問題のない値となっていた。
これに対し、F鋼は、従来のCr-Mo鋼であり、Si含有率が低いことが影響して、焼戻し温度を高温化した場合に高サイクル疲労強度の低下が大きくなり、2つの疲労強度を両立できる焼戻し温度の範囲が存在しないものである。G、H鋼は、C含有率が範囲外である影響で、低サイクル疲労強度が低下した。
なお、鋼種Jは、前記の通り幅広いサイクル数で優れた疲労強度の得られる開発鋼であるため、低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度の両方において合格するものであるが、Ti、Bを含有している影響で焼入れによる歪みが発生しやすく、例えば歪の条件に厳しい歯車等の製品に使用することは困難である。より、具体的には、歪の評価値が51μmと明らかに本発明であるA~E鋼を用いた歯車に比較して劣る結果となっていた。
次に、上述した鋼種A~Eまでの結果を用い、式(1)、焼戻し温度(℃)及び、低サイクル疲労強度及び高サイクル疲労強度との関係をよりわかりやすくするために、図1において、横軸に式(1)の計算値を取り、縦軸に焼戻し温度(℃)を取り、式(1)の値に対して実際に採用した焼戻し温度(℃)をプロットし、サイクル疲労強度の結果を○×△によって表した。低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度の両方に優れる合格の場合を「○」、高サイクル疲労強度が合格であるものの低サイクル疲労強度が不合格の場合を「×」、低サイクル疲労強度が合格であるものの高サイクル疲労強度が不合格の場合を「△」として示した。また、式(1)の値=焼戻し温度(℃)の関係を示す破線aを示した。
また、上述した鋼種A~Eまでの結果を用い、式(2)、焼戻し温度(℃)及び、低サイクル疲労強度及び高サイクル疲労強度との関係をよりわかりやすくするために、図2において、横軸に式(2)を取り、縦軸に焼戻し温度(℃)を取り、式(2)の値に対して実際に採用した焼戻し温度(℃)をプロットし、サイクル疲労強度の結果を○×△によって表した。○×△の表記の意味は、図1の場合と同じとした。また、式(2)の値=焼戻し温度(℃)の関係を示す破線bを示した。
図1から理解できるように、式(1)の値よりも高い温度に焼戻し温度を設定した場合には、確実に、低サイクル疲労強度を向上させることができる。また、図2から理解できるように、式(2)の値よりも低い温度に焼戻し温度を設定した場合には、確実に、高サイクル疲労強度を向上させることができることがわかる。そして、式(1)及び式(2)を満足することによって、低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度の両方を同時に向上させることができることがわかる。
ここで、注目すべきことは、従来普通に行われていた焼戻し処理温度は、式(1)、式(2)の満足する温度範囲より低く、本発明は、前記の通り、従来よりも焼戻し処理温度を高温化した際に、前記両方の強度を向上できる最適条件範囲が存在することを見出したものである。
また、前記した実施例から明らかなように、図1、図2のように、合格(○)となる範囲を大きく確保できるのは、本発明で指定した成分範囲の場合に限定されるのであり、成分が適切でない場合には合格(○)となる領域を確保することが難しくなるということである。
以上説明したように、本発明により、特定の成分範囲内の鋼に対し、特定の範囲内の条件で焼戻し処理した場合に、低サイクル疲労強度と高サイクル疲労強度が両立できることが新規に見出されたものであり、産業への貢献は極めて大きいものである。
a 式(1)の値=焼戻し温度を示す破線
b 式(2)の値=焼戻し温度を示す破線

Claims (2)

  1. 質量比において、C:0.10%~0.29%、Si:0.70%~1.20%、Mn:0.30%~1.00%(ただし、Mnが0.50%以下の場合を除く)、Cr:0.15%~1.25%、Mo:0.80%以下(0%を含む)、Al:0.020%~0.050%、N:0.0030%~0.0200%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学成分を有し、
    表面に浸炭層を備え、
    1Hzあるいは5Hzの周波数で繰り返し所定応力を負荷して行う低サイクル疲労試験における繰り返し回数100回において、折損せずに耐えうる負荷応力の値が、1540MPa以上であり、
    回転数1800rpmで繰り返し曲げ応力を付与して行う高サイクル疲労試験における繰り返し回数107回において、折損せずに耐えうる負荷応力の値が、525MPa以上である、浸炭鋼部品を製造する方法であって、
    前記化学成分を有する鋼部材に浸炭焼入れ処理を施した後、焼戻し処理を行うに当たり、当該焼戻し処理は、処理温度T(℃)が以下の式(1)及び式(2)を満足する条件で行う、浸炭鋼部品の製造方法。
    式(1):T(℃)≧200-4[Si]-29[Mo]
    式(2):100[Si]+45[Mo]+180≧T(℃)
    (ここで、[Si]及び[Mo]は、それぞれSiの含有率(%)の値及びMoの含有率(%)の値を意味する)
  2. 前記浸炭鋼部品は歯車である、請求項1に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
JP2018231569A 2018-12-11 2018-12-11 浸炭鋼部品の製造方法 Active JP7230475B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018231569A JP7230475B2 (ja) 2018-12-11 2018-12-11 浸炭鋼部品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018231569A JP7230475B2 (ja) 2018-12-11 2018-12-11 浸炭鋼部品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020094231A JP2020094231A (ja) 2020-06-18
JP7230475B2 true JP7230475B2 (ja) 2023-03-01

Family

ID=71084588

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018231569A Active JP7230475B2 (ja) 2018-12-11 2018-12-11 浸炭鋼部品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7230475B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003231943A (ja) 2002-02-12 2003-08-19 Nippon Steel Corp 焼戻し軟化抵抗性に優れた肌焼鋼
JP2009249700A (ja) 2008-04-08 2009-10-29 Kobe Steel Ltd 曲げ疲労強度に優れた鋼部品、及びその製造方法
JP2012017499A (ja) 2010-07-08 2012-01-26 Jfe Bars & Shapes Corp 疲労強度に優れた歯車およびその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003231943A (ja) 2002-02-12 2003-08-19 Nippon Steel Corp 焼戻し軟化抵抗性に優れた肌焼鋼
JP2009249700A (ja) 2008-04-08 2009-10-29 Kobe Steel Ltd 曲げ疲労強度に優れた鋼部品、及びその製造方法
JP2012017499A (ja) 2010-07-08 2012-01-26 Jfe Bars & Shapes Corp 疲労強度に優れた歯車およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020094231A (ja) 2020-06-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3995904B2 (ja) 加工性および強度に優れた等速ジョイント用内輪の製造方法
JP5541418B2 (ja) ばね鋼およびばね
EP3085795B1 (en) Carburizing alloy steel having improved durability and method of manufacturing the same
JP5897975B2 (ja) ベルト式cvtのプーリー用鋼及びベルト式cvtプーリー
JP5185852B2 (ja) 耐剥離損傷性に優れた歯車
JP5060083B2 (ja) ピストンリングの製造方法
US20070221298A1 (en) Ni-based super alloy
JP2001073053A (ja) Ni基耐熱合金
JP7230475B2 (ja) 浸炭鋼部品の製造方法
JP6319212B2 (ja) 歯車部品および歯車部品の製造方法
JP5683348B2 (ja) 浸炭部材、浸炭部材用鋼および浸炭部材の製造方法
JP2011195861A (ja) 無段変速機ベルト及び無段変速機ベルト用鋼
JP5708901B1 (ja) 機械構造部品およびその製造方法
JP3269374B2 (ja) 浸炭歯車
JP7205112B2 (ja) 浸炭窒化用鋼
JP2017214642A (ja) 肌焼鋼およびその製造方法ならびに歯車部品の製造方法
JP2650225B2 (ja) ばね用鋼
WO2018180342A1 (ja) シャフト部材
JP2011195922A (ja) Cvtリング用薄板鋼
JP2003342635A (ja) 結晶粒の異常粒成長を防止する肌焼ボロン鋼の製造方法
KR20150074645A (ko) 고탄소침탄강 소재 및 이를 이용한 기어 제조방법
JP2018172749A (ja) Cvtリング用鋼、窒化用cvtリング素材及びその製造方法、並びにcvtリング部材及びその製造方法
JP4057208B2 (ja) 良好な冷間加工性及び高温強度を具備したエンジンバルブ用Fe基耐熱合金
JP2017179434A (ja) 面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品、並びにその製造方法
JP2005120466A (ja) 変速機歯車用高強度Cr−Mo合金鋼

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210826

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220615

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220628

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220725

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221115

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221216

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230117

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230130

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7230475

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150