JP2017179434A - 面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品、並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】面疲労強度および曲げ疲労強度の両方に優れた浸炭窒化部品を提供する。【解決手段】本発明の浸炭窒化部品は、鋼材の表面に浸炭窒化層を有する浸炭窒化部品であって、前記鋼材は所定成分を含有し、前記浸炭窒化層は、表面から25μm深さ位置での硬さが850HV以上、表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値が200MPa以上、且つ、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値が850MPa以上であり、JIS B0601で規定される十点平均粗さRz(1994)が2.5μm以下を満足する。【選択図】なし
Description
本発明は、面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品、並びにその製造方法に関する。
車両などに搭載される変速機は、プラネタリーギヤ(遊星歯車)機構で変速を行なうオートマチックトランスミッション(AT)が主流である。エンジンの高出力化、部品の小型軽量化などのニーズに対応するため、ATの多段化が進められているが、ユニットサイズをそのままにして負荷トルクが同等の場合、歯幅が減少して歯車への負荷が増大する。そのため、疲労強度(面疲労強度および曲げ疲労強度の両方)に優れた歯車の提供が強く望まれている。
例えば特許文献1には、「低〜中サイクル域」における疲労強度(曲げ疲労強度)を大幅に向上させた浸炭部品とその製造方法が開示されている。また、特許文献2には、面疲労強度に優れた浸炭部品または浸炭窒化部品が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1では面疲労強度について考慮しておらず、実施例における浸炭部品の表面粗さRz[JIS B 0601(2001)に規定される最大高さ粗さRz]は約6〜11μmと、非常に大きい。
また、上記特許文献2では、内部圧縮残留応力の値が不足しており、面疲労強度の強化が十分でない。
よって、上記特許文献1、2では、近年の小型化、高応力負荷などの要請に十分対応可能な、面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた部品を実現できていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、面疲労強度および曲げ疲労強度の両方に優れた浸炭窒化部品、並びにその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明に係る面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品は、鋼材の表面に浸炭窒化層を有する浸炭窒化部品であって、前記鋼材は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.4〜1%、Mn:0.30〜0.6%、P:0%超、0.02%以下、S:0%超、0.02%以下、Cr:1.2〜2%、Mo:0.3〜0.5%、N:0%超、0.015%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、前記浸炭窒化層は、表面から25μm深さ位置での硬さが850HV以上、表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値が200MPa以上、且つ、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値が850MPa以上であり、JIS B0601で規定される十点平均粗さRz(1994)が2.5μm以下である点に要旨を有する。
本発明の好ましい実施形態において、前記鋼材は更に、質量%で、V:0%超、0.5%以下、Ti:0%超、0.5%以下、Nb:0%超、0.5%以下、およびAl:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。
本発明の好ましい実施形態において、前記鋼材は更に、質量%で、Cu:0%超、0.3%以下、Ni:0%超、0.3%以下、およびB:0%超、0.01%以下よりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。
また、上記課題を解決し得た本発明に係る浸炭窒化部品の製造方法は、上記のいずれかに記載の浸炭窒化部品を製造する方法であって、前記鋼材を浸炭窒化処理した後、粒径300μm超のショット粒を用いたショットピーニング、研磨、粒径300μm以下のショット粒を用いたショットピーニングの順に加工する点に要旨を有する。
本発明によれば、面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品を提供することができる。
本発明者らは上記課題(面疲労強度および曲げ疲労強度の向上)を解決するため、鋭意検討を行なった。
その結果、面疲労強度の向上には、下記(i)〜(v)の要件を全て満足することが必要であり、これらの一つでも満足しないと、所望とする面疲労強度が得られないことが判明した。
(i)Si、Cr、Moの成分を最適化して焼戻し軟化抵抗を増加させる。
(ii)表面硬さ(具体的には、表面から25μm深さ位置での硬さ)を850HVa以上に高めて表面起点での破壊を抑制する。
(iii)内部圧縮残留応力(具体的には、表面から200μm深さ位置の圧縮残留応力)の絶対値を200MPa以上に高めて内部起点での破壊を抑制する。
(iv)表面圧縮残留応力(具体的には、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値)の絶対値を850MPa以上に高めて表面起点での破壊を抑制する。
(v)表面粗さ(本発明では十点平均粗さRz)を2.5μm以下に低減して表面起点での破壊を抑制する。
(i)Si、Cr、Moの成分を最適化して焼戻し軟化抵抗を増加させる。
(ii)表面硬さ(具体的には、表面から25μm深さ位置での硬さ)を850HVa以上に高めて表面起点での破壊を抑制する。
(iii)内部圧縮残留応力(具体的には、表面から200μm深さ位置の圧縮残留応力)の絶対値を200MPa以上に高めて内部起点での破壊を抑制する。
(iv)表面圧縮残留応力(具体的には、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値)の絶対値を850MPa以上に高めて表面起点での破壊を抑制する。
(v)表面粗さ(本発明では十点平均粗さRz)を2.5μm以下に低減して表面起点での破壊を抑制する。
更に曲げ疲労強度の向上には、上記(iv)のように表面圧縮残留応力の絶対値を850MPa以上に高めて表面起点での破壊を抑制することが重要であることが判明した。
そして本発明では、上記(i)〜(v)の要件を全て満足する部品を得るため、以下のようにして部品を製造した。まず、上記(i)のように成分が適切に制御された鋼材に浸炭窒化処理を行なって、上記(ii)の表面硬さを確保すると共に、温度上昇時の軟化抵抗を高めることにした。
更に上記(iii)〜(v)の要件を備えた部品を得るため、粒径(投射材の直径)の異なるショット粒を用いた二段ショットピーニングの間に研磨処理を行なう方法が有効であることが判明した。具体的には、まず、大粒径のショット粒(投射材)でショットピーニングを行なって上記(iii)の内部圧縮残留応力を確保した後、研磨を行なって上記(v)の表面粗さ(Rz)を低減する。その後、小粒径のショット粒でショットピーニングを行なって上記(v)の表面圧縮残留応力を確保すれば、所望とする部品が得られることを見出し、本発明を完成した。
なお、前述した特許文献1にも二段ショットピーニングを行なうことが良い旨記載されているが、本発明のように1段目と2段目の間に研磨処理を行なうことは開示されていない。これまで、特許文献1のようにショットピーニングを2回行なう技術は存在するが、一般には、生産性などの観点からショットピーニング連続的に行なっており、本発明のように、その間に研磨処理を介在させることはしていない。後記する実施例の欄で実証したように、研磨処理を行なわない場合、本発明で規定するRzが得られず高くなって、面疲労強度が低下することを確認している。
また、二段ショットピーニングを行なわずに、前述した特許文献2のように粒径の小さいショット粒を用いた一段ショットピーニングを行なうと、内部圧縮残留応力の絶対値が小さくなり、やはり、面疲労強度が低下することを確認している。
以下、本発明の浸炭窒化部品について説明する。
前述したとおり、本発明の浸炭窒化部品は、鋼材の表面に浸炭窒化層を有しており、前記鋼材は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.4〜1%、Mn:0.30〜0.6%、P:0%超、0.02%以下、0%超、S:0.02%以下、Cr:1.2〜2%、Mo:0.3〜0.5%、N:0%超、0.015%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、前記浸炭窒化層は、表面から25μm深さ位置での硬さが850HV以上、表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値が200MPa以上、且つ、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値が850MPa以上であり、JIS B0601で規定される十点平均粗さRz(1994)が2.5μm以下である点に特徴がある。
本明細書では、表面から25μm深さ位置での硬さを単に表面硬さ、表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値を単に内部圧縮残留応力値、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値を単に表面圧縮残留応力値と、それぞれ、略記する場合がある。
まず、本発明を最も特徴付ける浸炭窒化層について説明する。
本発明の部品は、表面に浸炭窒化層を有することが前提である。これにより、表面硬さを850HV以上に高めることができる。これに対し、通常の浸炭処理では、所望とする表面硬さが得られないことを、後記する実施例の欄で実証している。
(表面から25μm深さ位置での表面硬さが850HV以上)
ピッチングなどの面疲労強度を高めるためには、表面の硬さ上昇が有効である。そのため、本発明では表面硬さをビッカース硬さで850HV以上とする。好ましくは875HV以上であり、より好ましくは900HV以上である。なお、その上限は、上記の観点からは特に限定されないが、ショットピーニングでの残留応力付与などを考慮すると、1100HV以下であることが好ましい。
ピッチングなどの面疲労強度を高めるためには、表面の硬さ上昇が有効である。そのため、本発明では表面硬さをビッカース硬さで850HV以上とする。好ましくは875HV以上であり、より好ましくは900HV以上である。なお、その上限は、上記の観点からは特に限定されないが、ショットピーニングでの残留応力付与などを考慮すると、1100HV以下であることが好ましい。
(表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値が200MPa以上)
内部圧縮残留応力の付与は、内部起点での破壊抑制に有用である。すなわち、面疲労において負荷が高まった場合、内部起点で破壊するスポーリング破壊が発生する虞があるが、内部圧縮残留応力値を高めることにより、スポーリング破壊を抑制できる。このような作用を有効に発揮させるため、本発明では、表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値(内部圧縮残留応力値)を200MPa以上とする。好ましくは210MPa以上であり、より好ましくは220MPa以上である。内部に高い圧縮残留応力を付与するためには、後述するように、粒径300μm超と粒径の大きなショット粒を用いてショットピーニングを行うことが有効である。
内部圧縮残留応力の付与は、内部起点での破壊抑制に有用である。すなわち、面疲労において負荷が高まった場合、内部起点で破壊するスポーリング破壊が発生する虞があるが、内部圧縮残留応力値を高めることにより、スポーリング破壊を抑制できる。このような作用を有効に発揮させるため、本発明では、表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値(内部圧縮残留応力値)を200MPa以上とする。好ましくは210MPa以上であり、より好ましくは220MPa以上である。内部に高い圧縮残留応力を付与するためには、後述するように、粒径300μm超と粒径の大きなショット粒を用いてショットピーニングを行うことが有効である。
(表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値が850MPa以上)
表面圧縮残留応力の付与は、曲げ疲労強度および面疲労強度(ピッチング)の向上に有効である。これらの疲労強度を両方高めるため、本発明では、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値(表面圧縮残留応力値)を850MPa以上とする。好ましくは875MPa以上であり、より好ましくは900MPa以上である。ここで「表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値」とは、当該深さ位置までの圧縮残留応力値の最大値であり、最大値が得られるのは表面から、おおむね50μm未満の位置である。表面に高い圧縮残留応力を付与するためには、後述するように、粒径300μm以下と粒径の小さいショット粒を用いてショットピーニングを行うことが有効である。
表面圧縮残留応力の付与は、曲げ疲労強度および面疲労強度(ピッチング)の向上に有効である。これらの疲労強度を両方高めるため、本発明では、表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値(表面圧縮残留応力値)を850MPa以上とする。好ましくは875MPa以上であり、より好ましくは900MPa以上である。ここで「表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値」とは、当該深さ位置までの圧縮残留応力値の最大値であり、最大値が得られるのは表面から、おおむね50μm未満の位置である。表面に高い圧縮残留応力を付与するためには、後述するように、粒径300μm以下と粒径の小さいショット粒を用いてショットピーニングを行うことが有効である。
(JIS B0601で規定される十点平均粗さRz(1994)が2.5μm以下)
面疲労(ピッチング)強度を高めるためには、表面粗さを低減して応力集中源を減らすことが有効である。このような作用を有効に発揮させるため、Rzを2.5μm以下とする。好ましくは2.3μm以下であり、より好ましくは2.0μm以下である。なお、その下限は、上記の観点からは特に限定されないが、加工コストなどを考慮すると、0.5μm以上であることが好ましい。Rzを低減するためには、後述するように、ショットピーニングの間に研磨処理を行うことが有効である。
面疲労(ピッチング)強度を高めるためには、表面粗さを低減して応力集中源を減らすことが有効である。このような作用を有効に発揮させるため、Rzを2.5μm以下とする。好ましくは2.3μm以下であり、より好ましくは2.0μm以下である。なお、その下限は、上記の観点からは特に限定されないが、加工コストなどを考慮すると、0.5μm以上であることが好ましい。Rzを低減するためには、後述するように、ショットピーニングの間に研磨処理を行うことが有効である。
次に、本発明の浸炭窒化部品に用いられる鋼材について説明する。
C:0.15〜0.25%
Cは強度を確保するうえで有用な元素であり、そのためにC量を0.15%以上とする。C量は0.16%以上であることが好ましく、0.17%以上であることがより好ましい。但し、C量が過剰になると被削性、靱性が低下するため、C量を0.25%以下とする。C量は0.24%以下であることが好ましく、0.23%以下であることがより好ましい。
Cは強度を確保するうえで有用な元素であり、そのためにC量を0.15%以上とする。C量は0.16%以上であることが好ましく、0.17%以上であることがより好ましい。但し、C量が過剰になると被削性、靱性が低下するため、C量を0.25%以下とする。C量は0.24%以下であることが好ましく、0.23%以下であることがより好ましい。
Si:0.4〜1%
Siは、焼戻し軟化抵抗向上元素として有用である。詳細には歯車などでは、駆動中に接触部位の温度が上昇して硬さが低下するが、Siを添加することによって温度上昇時の軟化が抑制されて表面硬さを維持できる。その結果、ピッチングなどの面疲労強度、更には耐摩耗性が向上する。このような作用を有効に発揮させるため、Si量を0.4%以上とする。Si量は0.45%以上であることが好ましく、0.50%以上であることがより好ましい。但し、Si量が過剰になると被削性が低下するため、Si量を1%以下とする。Si量は0.8%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましい。
Siは、焼戻し軟化抵抗向上元素として有用である。詳細には歯車などでは、駆動中に接触部位の温度が上昇して硬さが低下するが、Siを添加することによって温度上昇時の軟化が抑制されて表面硬さを維持できる。その結果、ピッチングなどの面疲労強度、更には耐摩耗性が向上する。このような作用を有効に発揮させるため、Si量を0.4%以上とする。Si量は0.45%以上であることが好ましく、0.50%以上であることがより好ましい。但し、Si量が過剰になると被削性が低下するため、Si量を1%以下とする。Si量は0.8%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましい。
Mn:0.30〜0.6%
Mnは、焼入れ性向上元素であり、Mn量が0.30%を下回るとFeSができて製造性が低下する。そのため、Mn量を0.30%以上とする。Mn量は0.33%以上であることが好ましく、0.35%以上であることがより好ましい。但し、Mn量が過剰になると被削性が低下するため、Mn量を0.6%以下とする。Mn量は0.5%以下であることが好ましく、0.45%以下であることがより好ましい。
Mnは、焼入れ性向上元素であり、Mn量が0.30%を下回るとFeSができて製造性が低下する。そのため、Mn量を0.30%以上とする。Mn量は0.33%以上であることが好ましく、0.35%以上であることがより好ましい。但し、Mn量が過剰になると被削性が低下するため、Mn量を0.6%以下とする。Mn量は0.5%以下であることが好ましく、0.45%以下であることがより好ましい。
P:0%超、0.02%以下
Pは、製造過程などで不可避的に不純物として含有する元素であり、粒界に偏析して加工性、疲労特性(面疲労強度および曲げ疲労強度)などを低下させる。そのため、P量を0.02%以下とする。P量は、少ない程良く、0.015%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。但し、P量を極端に低減することは製鋼コストの増大を招く。
Pは、製造過程などで不可避的に不純物として含有する元素であり、粒界に偏析して加工性、疲労特性(面疲労強度および曲げ疲労強度)などを低下させる。そのため、P量を0.02%以下とする。P量は、少ない程良く、0.015%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。但し、P量を極端に低減することは製鋼コストの増大を招く。
S:0%超、0.02%以下
Sも上記Pと同様、製造過程などで不可避的に不純物として含有する元素であり、MnSとして析出して疲労特性(面疲労強度および曲げ疲労強度)、衝撃特性などを低下させる。そのため、S量を0.02%以下とする。S量は、少ない程良く、0.015%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。但し、S量を極端に低減することは製鋼コストの増大を招く。
Sも上記Pと同様、製造過程などで不可避的に不純物として含有する元素であり、MnSとして析出して疲労特性(面疲労強度および曲げ疲労強度)、衝撃特性などを低下させる。そのため、S量を0.02%以下とする。S量は、少ない程良く、0.015%以下であることが好ましく、0.010%以下であることがより好ましい。但し、S量を極端に低減することは製鋼コストの増大を招く。
Cr:1.2〜2%
Crは、Mnと同様に焼入れ性向上元素として作用する他、Siと同様に焼戻し軟化抵抗元素向上元素としても有用である。これらの作用を有効に発揮させるため、Cr量を1.2%以上とする。Cr量は1.25%以上であることが好ましく、1.30%以上であることがより好ましい。但し、Cr量が過剰になるとコストが上昇する他、被削性が低下するため、Cr量を2%以下とする。Cr量は1.8%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
Crは、Mnと同様に焼入れ性向上元素として作用する他、Siと同様に焼戻し軟化抵抗元素向上元素としても有用である。これらの作用を有効に発揮させるため、Cr量を1.2%以上とする。Cr量は1.25%以上であることが好ましく、1.30%以上であることがより好ましい。但し、Cr量が過剰になるとコストが上昇する他、被削性が低下するため、Cr量を2%以下とする。Cr量は1.8%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
Mo:0.3〜0.5%
Moは、Crと同様に焼入れ性向上元素および焼戻し軟化抵抗元素として有用である。これらの作用を有効に発揮させるため、Mo量を0.3%以上とする。Mo量は0.32%以上であることが好ましく、0.35%以上であることがより好ましい。但し、Mo量が過剰になるとコストが上昇する他、被削性が低下するため、Mo量を0.5%以下とする。Mo量は0.48%以下であることが好ましく、0.45%以下であることがより好ましい。
Moは、Crと同様に焼入れ性向上元素および焼戻し軟化抵抗元素として有用である。これらの作用を有効に発揮させるため、Mo量を0.3%以上とする。Mo量は0.32%以上であることが好ましく、0.35%以上であることがより好ましい。但し、Mo量が過剰になるとコストが上昇する他、被削性が低下するため、Mo量を0.5%以下とする。Mo量は0.48%以下であることが好ましく、0.45%以下であることがより好ましい。
N:0%超、0.015%以下
Nは、製造過程などで不可避的に不純物として含有する元素であり、ひずみ時効により加工性を低下させる。そのため、N量を0.015%以下とする。N量は、少ない程良く、0.013%以下であることが好ましく、0.012%以下であることがより好ましい。但し、N量を極端に低減することは製鋼コストの増大を招く。
Nは、製造過程などで不可避的に不純物として含有する元素であり、ひずみ時効により加工性を低下させる。そのため、N量を0.015%以下とする。N量は、少ない程良く、0.013%以下であることが好ましく、0.012%以下であることがより好ましい。但し、N量を極端に低減することは製鋼コストの増大を招く。
本発明の浸炭窒化部品を構成する鋼材は上記成分を満足し、残部:鉄および不可避的不純物である。
更に上記鋼材は、必要に応じて、更に以下の選択成分を含有することができる。
V:0%超、0.5%以下、Ti:0%超、0.5%以下、Nb:0%超、0.5%以下、およびAl:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも一種の元素
これらの元素は、浸炭窒化後の結晶粒微細化により靭性を向上させると共に、疲労強度(面疲労強度および曲げ疲労強度)を向上させる元素である。このような作用を有効に発揮させるため、V量:0.05%以上、Ti量:0.05%以上、Nb量:0.05%以上、Al量:0.01%以上であることが好ましい。但し、多量に添加すると上記作用が飽和するだけでなく、粗大な析出物を形成して強度が低下する。そのため、V量:0.5%以下、Ti量:0.5%以下、Nb量:0.5%以下、Al量:0.5%以下であることが好ましい。より好ましくは、V量:0.45%以下、Ti量:0.45%以下、Nb量:0.45%以下、Al量:0.45%以下であり、更に好ましくはV量:0.4%以下、Ti量:0.4%以下、Nb量:0.4%以下、Al量:0.4%以下である。これの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
これらの元素は、浸炭窒化後の結晶粒微細化により靭性を向上させると共に、疲労強度(面疲労強度および曲げ疲労強度)を向上させる元素である。このような作用を有効に発揮させるため、V量:0.05%以上、Ti量:0.05%以上、Nb量:0.05%以上、Al量:0.01%以上であることが好ましい。但し、多量に添加すると上記作用が飽和するだけでなく、粗大な析出物を形成して強度が低下する。そのため、V量:0.5%以下、Ti量:0.5%以下、Nb量:0.5%以下、Al量:0.5%以下であることが好ましい。より好ましくは、V量:0.45%以下、Ti量:0.45%以下、Nb量:0.45%以下、Al量:0.45%以下であり、更に好ましくはV量:0.4%以下、Ti量:0.4%以下、Nb量:0.4%以下、Al量:0.4%以下である。これの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
Cu:0%超、0.3%以下、Ni:0%超、0.3%以下、およびB:0%超、0.01%以下よりなる群から選択される少なくとも一種の元素
これらの元素は、焼入性向上元素として有用である。このような作用を有効に発揮させるため、Cu量:0.05%以上、Ni量:0.05%以上、B量:0.0003%以上であることが好ましい。但し、多量に添加すると熱間加工性、冷間加工性が低下する。そのため、Cu量:0.3%以下、Ni量:0.3%以下、B量:0.01%以下であることが好ましい。より好ましくは、Cu量:0.25%以下、Ni量:0.25%以下、B量:0.008%以下であり、更に好ましくはCu量:0.2%以下、Ni量:0.2%以下、B量:0.005%以下である。これの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
これらの元素は、焼入性向上元素として有用である。このような作用を有効に発揮させるため、Cu量:0.05%以上、Ni量:0.05%以上、B量:0.0003%以上であることが好ましい。但し、多量に添加すると熱間加工性、冷間加工性が低下する。そのため、Cu量:0.3%以下、Ni量:0.3%以下、B量:0.01%以下であることが好ましい。より好ましくは、Cu量:0.25%以下、Ni量:0.25%以下、B量:0.008%以下であり、更に好ましくはCu量:0.2%以下、Ni量:0.2%以下、B量:0.005%以下である。これの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
次に、本発明の浸炭窒化部品を製造する方法について説明する。前述したように本発明の製造方法は、上記鋼材を浸炭窒化処理した後、粒径300μm超のショット粒を用いたショットピーニング(一次ショットピーニング)、研磨、粒径300μm以下のショット粒を用いたショットピーニング(二次ショットピーニング)の順に加工する点に要旨を有する。
まず、上記組成の鋼材を浸炭窒化処理する。所望とする表面硬さを確保するためには、例えば、900〜980℃、カーボンポテンシャル0.7〜0.9質量%、100〜500分の条件で浸炭を実施した後、800〜900℃、カーボンポテンシャル0.7〜0.9質量%、アンモニア3〜8体積%、100〜500分の条件で窒化を実施し、その後、60〜100℃で油冷し、100〜200℃、60〜180分の焼戻し処理の条件で浸炭窒化することが好ましい。
次に、ショットピーニングによる加工を行なう。具体的には、まず、粒径300μm超の大粒径ショット粒(一次ショット粒)を用いたショットピーニング(一次ショットピーニング)を行なう。粒径の大きいショット粒でショットピーニングすることにより、内部(表面から200μm深さ位置)に高い残留応力が付与される。但し、この時点では、表面粗さRzは大きくなっている。使用する一次ショット粒の粒径は、上記範囲であれば特に限定されず、例えば、400μm以上、1200μm以下であることが好ましい。
次いで、研磨する。本発明では、次の二次ショットピーニングの前に研磨処理を行なうことが重要であり、これにより表面は20〜50μm程度除去され、研磨後の表面粗さRzが本発明の範囲(2.5μm以下)に低減されて面疲労強度が向上する。
その後、粒径300μm以下の小粒径ショット粒(二次ショット粒)を用いたショットピーニング(二次ショットピーニング)を行なう。小粒径のショットピーニングでは、表面粗さRzはあまり変化せず所望レベルに低減されたままで、且つ、表面に高い最大圧縮残留応力が付与される。使用する二次ショット粒の粒径は、上記範囲であれば特に限定されず、例えば、20μm以上、200μm以下であることが好ましい。
本発明では、上記のように粒径が異なるショット粒(一次ショット粒および二次ショット粒)を用いて二段階ショットピーニングを行なうことが重要であり、その他の要件は特に限定されない。例えばショット粒の硬さは、後記する実施例のように同一であっても良いが、残留応力付与効率などを考慮すると、一次ショット粒に比べて二次ショット粒の方が硬い方が好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に記載の種々の鋼A〜R(単位は質量%、残部:鉄および不可避的不純物)を溶製し、1200℃に加熱して熱間鍛造し、直径32mmの熱間圧延材(棒鋼)を得た。鍛造後、1250℃で1時間加熱後、放冷する溶体化処理を行い、その後、900℃で1時間加熱後、放冷する焼ならし処理を行った。なお、表1の鋼種Aは、従来鋼のSCr420H相当鋼であり、本発明に比べてSi量、Cr量、Mo量が少なく、Mn量が多い鋼種である。
次いで、上記棒鋼を用い、以下のようにして図1(a)、図1(b)に示す各形状のローラーピッチング試験片、および図2に示す形状の4点曲げ試験片を作製した。
(ローラーピッチング試験片の作製)
上記の棒鋼から、機械加工により図1(a)に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラー(研磨を行うときの直径26.1mm、研磨を行わないときの直径26.0mm)を作製した。
上記の棒鋼から、機械加工により図1(a)に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラー(研磨を行うときの直径26.1mm、研磨を行わないときの直径26.0mm)を作製した。
更に、SCM435を素材とし、一般的な製造工程(焼きならし、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻し及び研磨)により、図1(b)に示すように直径130mm、接触部のR形状が150mmRの形状のローラーピッチング試験用大ローラーを作製した。
(4点曲げ試験片の作製)
上記棒鋼のd/4(dは直径)位置から、図2に示す形状の4点曲げ試験片を作製した。
上記棒鋼のd/4(dは直径)位置から、図2に示す形状の4点曲げ試験片を作製した。
このようにして得られた各試験片に対し、表2に示すように熱処理(浸炭処理または浸炭窒化処理)、および加工処理(一次ショットピーニング、研磨、二次ショットピーニング)を行なった。本実施例に用いた熱処理および加工処理の詳細は以下のとおりである。
(熱処理)
浸炭:950℃、カーボンポテンシャル0.8質量%、140分の条件で浸炭を実施した後、845℃、カーボンポテンシャル0.8質量%、30分保持し、その後、80℃で油冷し、160℃、120分の焼戻し処理を施した。
浸炭:950℃、カーボンポテンシャル0.8質量%、140分の条件で浸炭を実施した後、845℃、カーボンポテンシャル0.8質量%、30分保持し、その後、80℃で油冷し、160℃、120分の焼戻し処理を施した。
浸炭窒化:940℃、カーボンポテンシャル0.85質量%、300分の条件で浸炭を実施した後、840℃、カーボンポテンシャル0.85質量%、アンモニア5体積%、240分の条件で窒化を実施し、その後、80℃で油冷し、160℃、120分の焼戻し処理を施した。
(加工処理)
一次ショットピーニング
粒径1000μm、平均硬さ800HVの投射材を用い、アークハイト0.2mmC、カバレージ300%以上となるように一次(大粒径)ショットピーニングを実施した。
一次ショットピーニング
粒径1000μm、平均硬さ800HVの投射材を用い、アークハイト0.2mmC、カバレージ300%以上となるように一次(大粒径)ショットピーニングを実施した。
研磨
ローラーピッチング試験用小ローラーについては、砥石を用いた研磨により、試験片の表面を50μm研磨し、直径26.0mmに仕上げた。
ローラーピッチング試験用小ローラーについては、砥石を用いた研磨により、試験片の表面を50μm研磨し、直径26.0mmに仕上げた。
二次ショットピーニング
粒径300μm、平均硬さ800HVの投射材を用い、アークハイト0.2mmA、カバレージ300%以上となるよう二次(微粒子)ショットピーニングを実施した。
粒径300μm、平均硬さ800HVの投射材を用い、アークハイト0.2mmA、カバレージ300%以上となるよう二次(微粒子)ショットピーニングを実施した。
上記の処理を行なった各試験片について、以下の方法で表面硬さ、圧縮残留応力、面疲労強度、および曲げ疲労強度を測定した。
(表面硬さの測定)
上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーを用いて、表面のビッカース硬さを、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に基づいて測定した。詳細には、上記小ローラーの試験部を小ローラーの軸方向に垂直な面で切断し、その切断面を鏡面研磨して試験部の表面からの深さが0.03mmの位置で、試験力を1.961Nとして10点測定し、その算術平均値を表面のビッカース硬さとした。
上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーを用いて、表面のビッカース硬さを、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に基づいて測定した。詳細には、上記小ローラーの試験部を小ローラーの軸方向に垂直な面で切断し、その切断面を鏡面研磨して試験部の表面からの深さが0.03mmの位置で、試験力を1.961Nとして10点測定し、その算術平均値を表面のビッカース硬さとした。
(圧縮残留応力の測定)
上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーを用いて、各深さ位置における圧縮残留応力を、X線により測定した。詳細には、PSPC(Position−Sensitive Proportional Counter)微小部X線応力測定装置を用いて、上記小ローラーの試験部表面からそれぞれ0μm(表面)、10μm、25μm、50μm、100μm、200μmの位置まで電解研磨して残留応力を測定した。PSPC微小部X線応力測定装置の測定条件は、コリメーター径:φ1mm、測定部位:軸方向中央位置、測定方向:円周方向である。
上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーを用いて、各深さ位置における圧縮残留応力を、X線により測定した。詳細には、PSPC(Position−Sensitive Proportional Counter)微小部X線応力測定装置を用いて、上記小ローラーの試験部表面からそれぞれ0μm(表面)、10μm、25μm、50μm、100μm、200μmの位置まで電解研磨して残留応力を測定した。PSPC微小部X線応力測定装置の測定条件は、コリメーター径:φ1mm、測定部位:軸方向中央位置、測定方向:円周方向である。
(面疲労強度の測定)
「RP−201型」ローラーピッチング試験機(コマツエンジニアリング株式会社製)にてローラーピッチング試験を行なって面疲労強度を測定した。詳細には、上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーおよび小ローラーを用い、潤滑油としてオートマチック用油、油温120℃、すべり率−40%の条件でローラーピッチング試験を行って、応力S−繰返し数N線図を作成し、1000万回強度(1000万回試験した際に破損しない最大の応力を意味する)によりピッチング強度(面疲労強度)を評価した。但し、本実施例では試験機の負荷を考慮して、4.0GPa超の強度は測定していない。本実施例では、このようにして得られた面疲労強度が3.6GPa以上のもの[表1の鋼種A(従来鋼のSCr420H相当鋼)に比べて約1.7倍程度高いもの]を面疲労強度に優れると評価した。
「RP−201型」ローラーピッチング試験機(コマツエンジニアリング株式会社製)にてローラーピッチング試験を行なって面疲労強度を測定した。詳細には、上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーおよび小ローラーを用い、潤滑油としてオートマチック用油、油温120℃、すべり率−40%の条件でローラーピッチング試験を行って、応力S−繰返し数N線図を作成し、1000万回強度(1000万回試験した際に破損しない最大の応力を意味する)によりピッチング強度(面疲労強度)を評価した。但し、本実施例では試験機の負荷を考慮して、4.0GPa超の強度は測定していない。本実施例では、このようにして得られた面疲労強度が3.6GPa以上のもの[表1の鋼種A(従来鋼のSCr420H相当鋼)に比べて約1.7倍程度高いもの]を面疲労強度に優れると評価した。
(曲げ疲労特性の評価)
油圧サーボ試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、上記の処理を行なった4点曲げ試験片に周波数20Hz、応力比(最大応力/最小応力)0.1で曲げ疲労試験を行い、応力S−繰返し数N線図を作成し、200万回強度(200万回試験した際に破損しない最大の応力を意味する)により曲げ疲労強度を評価した。本実施例では、このようにして得られた曲げ疲労強度が1280MPa以上のもの[表1の鋼種A(従来鋼のSCr420H相当鋼)に比べて約1.7倍程度高いもの]を曲げ疲労強度に優れると評価した。
油圧サーボ試験機(株式会社島津製作所製)を用いて、上記の処理を行なった4点曲げ試験片に周波数20Hz、応力比(最大応力/最小応力)0.1で曲げ疲労試験を行い、応力S−繰返し数N線図を作成し、200万回強度(200万回試験した際に破損しない最大の応力を意味する)により曲げ疲労強度を評価した。本実施例では、このようにして得られた曲げ疲労強度が1280MPa以上のもの[表1の鋼種A(従来鋼のSCr420H相当鋼)に比べて約1.7倍程度高いもの]を曲げ疲労強度に優れると評価した。
(表面粗さ)
上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーを用い、JIS B0601:1994に基づいてRzを測定した。詳細には、小ローラーの試験面を軸方向にして、測定速度0.2mm/s、カットオフ値0.8mm、測定長さ4mmにて測定した。
上記の処理を行なったローラーピッチング試験用小ローラーを用い、JIS B0601:1994に基づいてRzを測定した。詳細には、小ローラーの試験面を軸方向にして、測定速度0.2mm/s、カットオフ値0.8mm、測定長さ4mmにて測定した。
これらの結果を表3に記載する。
表3の結果より、以下のように考察することができる。
まず、表3のNo.2〜11、18は本発明の要件を満足する表1の鋼種を用い、本発明の条件で製造した例であり、面疲労強度および曲げ疲労強度の両方に優れている。
これに対し、表3の下記例は本発明のいずれかの要件を満足しないため、以下の不具合を抱えている。
No.12は、C量およびSi量が少なく、Moを含まない表1の鋼種Lを用いた例であり、面疲労強度が低下した。
No.13は、Mn量が少なく、S量が多く、Moを含まない表1の鋼種Mを用いた例であり、試験中に割れが生じたため、いずれの測定も行なわなかった(表3中の各項目は「−」)。
No.14は、P量が多い表1の鋼種Nを用いた例であり、面疲労強度および曲げ疲労強度が低下した。
No.15は、Cr量が少ない表1の鋼種Oを用いた例であり、面疲労強度が低下した。
No.16は、Mo量が少ない表1の鋼種Pを用いた例であり、面疲労強度が低下した。
No.17は、N量が多い表1の鋼種Qを用いた例であり、試験中に割れが生じたため、いずれの測定も行なわなかった(表3中の各項目は「−」)。
No.19〜23は、本発明の要件を満足する表1の鋼種Rを用いたが、本発明の要件を満足しない条件で製造した例である。
まず、No.19は浸炭窒化の代わりに浸炭を行なった例であり、表面硬さが低下した。
No.20は、1回目のショットピーニングを行なわなかった例であり、内部圧縮残留応力が低下したため、面疲労強度が低下した。
No.21は、2回目のショットピーニングを行なわなかった例であり、表面圧縮残留応力が低下したため、面疲労強度および曲げ疲労強度の両方が低下した。
No.22は、ショットピーニングを全く行なわなかった例であり、内部圧縮残留応力および表面圧縮残留応力の両方が低下したため、面疲労強度および曲げ疲労強度の両方が低下した。
No.23は、1回目のショットピーニング後、研磨を行なわずに2回目のショットピーニングを行なった例であり、表面粗さRzが増加して面疲労強度が低下した。
Claims (4)
- 鋼材の表面に浸炭窒化層を有する浸炭窒化部品であって、
前記鋼材は、質量%で、
C :0.15〜0.25%、
Si:0.4〜1%、
Mn:0.30〜0.6%、
P :0%超、0.020%以下、
S :0%超、0.02%以下、
Cr:1.2〜2%、
Mo:0.3〜0.5%、
N :0%超、0.015%以下
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
前記浸炭窒化層は、
表面から25μm深さ位置での硬さが850HV以上、
表面から200μm深さ位置での圧縮残留応力値の絶対値が200MPa以上、
表面から200μm深さ位置までの最大圧縮残留応力値の絶対値が850MPa以上であり、
JIS B0601で規定される十点平均粗さRz(1994)が2.5μm以下であることを特徴とする面疲労強度および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品。 - 前記鋼材は更に、質量%で、
V :0%超、0.5%以下、
Ti:0%超、0.5%以下、
Nb:0%超、0.5%以下、および
Al:0%超、0.5%以下
よりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む請求項1に記載の浸炭窒化部品。 - 前記鋼材は更に、質量%で、
Cu:0%超、0.3%以下、
Ni:0%超、0.3%以下、および
B :0%超、0.01%以下
よりなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む請求項1または2に記載の浸炭窒化部品。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の浸炭窒化部品を製造する方法であって、
前記鋼材を浸炭窒化処理した後、粒径300μm超のショット粒を用いたショットピーニング、研磨、粒径300μm以下のショット粒を用いたショットピーニングの順に加工することを特徴とする浸炭窒化部品の製造方法。
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