添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法が用いられる切削装置2の構成例を示す斜視図である。なお、図1では、切削装置2の一部の構成要素を機能ブロックで示している。また、以下の説明に用いられるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに垂直である。
図1に示すように、切削装置2は、各構成要素を支持する基台4を備えている。基台4の上面の角部には、開口4aが形成されており、この開口4a内には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。カセット支持台6の上面には、複数の被加工物11を収容するためのカセット8が載せられる。図1では、説明の便宜上、カセット8の輪郭のみを示している。
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハである。被加工物11の表面(図1では上面)側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)によって複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されている。
この被加工物11の裏面(図1では下面)側には、被加工物11よりも径の大きいテープ(ダイシングテープ)13が貼付されている。テープ13の外周部分は、環状のフレーム15に固定されている。すなわち、被加工物11は、テープ13を介してフレーム15に支持された状態でカセット8に収容される。
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等を被加工物11として用いることもできる。同様に、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物11には、デバイスが形成されていなくても良い。
カセット支持台6の側方には、X軸方向(加工送り方向)に長い開口4bが形成されている。開口4b内には、ボールねじ式のX軸移動機構(加工送りユニット)10と、X軸移動機構10の上部を覆う蛇腹状カバー12とが配置されている。X軸移動機構10は、X軸移動テーブル(不図示)を備えており、このX軸移動テーブルをX軸方向に移動させる。X軸移動テーブルの上部は、テーブルカバー10aによって覆われている。
X軸移動テーブルの上部には、被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)14が、テーブルカバー10aから露出する態様で配置されている。チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14は、上述したX軸移動機構10によってX軸移動テーブルとともにX軸方向に移動する(加工送り)。
チャックテーブル14の上面は、被加工物11を保持するための保持面14aになっている。保持面14aは、X軸方向及びY軸方向(割り出し送り方向)に対して概ね平行に形成され、チャックテーブル14の内部に設けられた吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。また、チャックテーブル14の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム15を固定するための4個のクランプ16が設けられている。
開口4bの上方には、上述した被加工物11(フレーム15)をチャックテーブル14等へと搬送するための搬送ユニット(不図示)が配置されている。搬送ユニットで搬送された被加工物11は、例えば、表面側が上方に露出するようにチャックテーブル14の保持面14aに載せられる。
開口4bに隣接する位置には、被加工物11を切削する切削ユニット18を支持するための片持ち梁状の支持構造20が配置されている。支持構造20の上部には、切削ユニット18をY軸方向及びZ軸方向に移動させる切削ユニット移動機構(割り出し送りユニット、切り込み送りユニット)22が設けられている。
切削ユニット移動機構22は、支持構造20の一側面に配置されY軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール24を備えている。Y軸ガイドレール24には、切削ユニット移動機構22を構成するY軸移動プレート26がスライド可能に取り付けられている。Y軸移動プレート26の裏面側(Y軸ガイドレール24側)には、ナット部(不図示)が設けられている。
Y軸移動プレート26のナット部には、Y軸ガイドレール24に概ね平行なY軸ボールネジ28が螺合されている。Y軸ボールネジ28の一端部には、Y軸パルスモータ(不図示)が連結されている。Y軸パルスモータでY軸ボールネジ28を回転させれば、Y軸移動プレート26は、Y軸ガイドレール24に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動プレート26の表面には、Z軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール30が設けられている。Z軸ガイドレール30には、Z軸移動プレート32がスライド可能に取り付けられている。Z軸移動プレート32の裏面側(Z軸ガイドレール30側)には、ナット部(不図示)が設けられている。
Z軸移動プレート32のナット部には、Z軸ガイドレール30に概ね平行なZ軸ボールネジ34が螺合されている。Z軸ボールネジ34の一端部には、Z軸パルスモータ36が連結されている。Z軸パルスモータ36でZ軸ボールネジ34を回転させれば、Z軸移動プレート32は、Z軸ガイドレール30に沿ってZ軸方向に移動する。このZ軸移動プレート32の下部には、切削ユニット18が設けられている。
また、Z軸移動プレート32の下部(切削ユニット18の側方)には、チャックテーブル14によって保持された被加工物11等を撮像する撮像ユニット(カメラ)38が設けられている。そのため、切削ユニット移動機構22でY軸移動プレート26をY軸方向に移動させれば、切削ユニット18及び撮像ユニット38は、Y軸方向に移動する。また、切削ユニット移動機構22でZ軸移動プレート32をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット18及び撮像ユニット38は、Z軸方向に移動する。
開口4bに対して開口4aと反対側の位置には、開口4cが形成されている。開口4c内には、切削後の被加工物11等を洗浄するための洗浄ユニット40が配置されている。X軸移動機構10、切削ユニット18、切削ユニット移動機構22、撮像ユニット38等の構成要素には、制御ユニット42が接続されている。制御ユニット42は、切削の条件等に合わせて各構成要素を制御する。
図2は、本実施形態にかかる切削ユニット18の構成例を示す分解斜視図であり、図3は、切削ユニット18の構成例を示す断面図である。図2に示すように、切削ユニット18は、筒状に構成されたスピンドルハウジング44を備えている。スピンドルハウジング44の内側の空間には、Y軸方向に概ね平行な軸心を持つスピンドル46が収容されている。
スピンドルハウジング44の前端面44aには、開口44bが設けられており、スピンドル46の前端部(先端部)46aは、開口44bを通じてスピンドルハウジング44の外部に露出している。スピンドル46の後端側(基端側)には、スピンドル46を回転させる力を発生するモータ(不図示)が連結されている。
スピンドルハウジング44の前端面44aには、ロータリージョイント48が取り付けられている。このロータリージョイント48は、板状の基部50と、基部50の前面50a(スピンドルハウジング44とは反対側の面)から突出する円筒状の収容部52と、を含む。
基部50の中央部には、スピンドル46の前端部46aを通す開口50bが設けられている。また、スピンドルハウジング44の前端面44aには、複数のねじ孔44cが設けられており、基部50には、このねじ孔44cに対応する複数の開口50cが設けられている。そのため、開口50cを通じてねじ孔44cにねじ(不図示)を締め込むことで、ロータリージョイント48をスピンドルハウジング44の前端面44aに固定できる。
収容部52の外周側には、管状の接続部54が設けられている。この接続部54の内側の空間は、エアーの流路54aとなる。図3に示すように、接続部54(流路54a)の収容部52とは反対側の端には、例えば、開閉弁56を介してエジェクタ等の吸引源58が接続されている。接続部54(流路54a)の収容部52側の端は、収容部52に設けられた開口52aを介して、収容部52の内側の空間に接続されている。これにより、開閉弁56を開けば、吸引源58の負圧が収容部52の内側の空間に作用する。
スピンドルハウジング44にロータリージョイント48が固定された状態で、スピンドル46の前端部46aには、マウントフランジ60が装着される。マウントフランジ60は、円柱状のボス部62と、円柱の一方の底面に相当するボス部62の後端(基端)部から径方向外向きに突出する円盤状のフランジ部64とを含む。
フランジ部64の中央部には、開口64aが設けられている。この開口64aには、スピンドル46の前端部46aが後面側(スピンドルハウジング44側)から挿入される。スピンドル46の前端部46aは、前方に向かって細くなる円錐台状の構造を含み、開口64aは、この前端部46aに対応する形状に形成される。
なお、この開口64aは、フランジ部64の後端からボス部62の前端まで貫通しており、開口64aにスピンドル46の前端部46aが挿入されると、前端部46aの一部がボス部62の前方で露出する。この前端部46aの一部の外周面には、ねじ山46bが形成されている。
そのため、スピンドル46の前端部46aを後方から開口64aに挿入し、マウントフランジ60の前方で露出する前端部46aに固定用のナット(リング)66を締め込むことで、マウントフランジ60をスピンドル46に固定できる。ナット66の中央部には開口66aが設けられており、この開口66aの内周面には、ねじ山46bに対応するねじ山66bが形成されている。
マウントフランジ60をスピンドル46に固定することで、このマウントフランジ60をスピンドル46とともに回転させることができるようになる。なお、収容部52の内側の空間の径は、フランジ部64の後部64bの径より僅かに大きくなっており、マウントフランジ60がスピンドル46に固定されると、フランジ部64の後部64bは、収容部52の内側の空間に収容される。
マウントフランジ60には、前方から切削ブレード68が装着される。切削ブレード68は、いわゆるハブブレードであり、ステンレスやアルミニウム等の金属でなる円環状のハブ基台70の外周部に、被加工物11を切削するための円環状の切り刃72が設けられている。切り刃72は、例えば、ダイヤモンド等の砥粒を、金属や樹脂等の結合材で固定することにより得られる。
ハブ基台70の中央部には、ボス部62が嵌合する嵌合穴70aが設けられている。マウントフランジ60に切削ブレード68を装着する際には、この嵌合穴70aにボス部62が挿入される。なお、フランジ部64の外周部の前方側(スピンドルハウジング44とは反対側)には、切削ブレード68のハブ基台70に接触する平坦な接触面64cが形成されている。マウントフランジ60に切削ブレード68を装着すると、この接触面64cにハブ基台70の後面側が接触する。
フランジ部64の内部には、エアーの流路64dが設けられている。流路64dの後側の端は、フランジ部64の後部64bの外周面に設けられた開口64eと接続している。開口64eは、後部64bの外周面の周方向に沿う環状に構成されている。また、開口64eは、フランジ部64の後部64bが収容部52の内側の空間に収容された状態で、収容部52の開口52aに対面する位置に設けられている。
そのため、吸引源58の負圧は、開口52a及び開口64eを通じて流路64dに作用する。上述のように、開口64eは環状に形成されているので、スピンドル46とともにマウントフランジ60が回転しても、流路64dへの負圧の作用が低下することはない。また、収容部52の内周面とフランジ部64の後部64bの外周面との隙間は十分に狭いので、この隙間を通じたエアーの侵入も殆ど問題にならない。
流路64dの前側の端は、フランジ部64の前面側に設けられた複数(本実施形態では、4個)の開口64fと接続している。この開口64fは、接触面64cより径方向で内側の位置に設けられている。すなわち、流路64dの一端は、接触面64cより径方向で内側の位置に開口している。
よって、マウントフランジ60に切削ブレード68を装着した状態で開閉弁56を開けば、吸引源58の負圧を開口64fに作用させて、この負圧によって切削ブレード68を接触面64cに密着させることができる。なお、フランジ部64に設けられる開口64fは、一つでも良い。
マウントフランジ60に切削ブレード68を装着すると、ボス部62の前端の一部はハブ基台70の前方で露出する。このボス部62の前端の一部の外周面には、ねじ山62aが形成されている。そのため、マウントフランジ60に切削ブレード68を装着した状態で、切削ブレード68の前方で露出するボス部62の前端の一部に固定用のナット(リング)74を締め込むことで、切削ブレード68をマウントフランジ60に固定できる。
ナット74の中央部には開口74aが設けられており、この開口74aの内周面には、ねじ山62aに対応するねじ山74bが形成されている。また、ナット74の後面側(切削ブレード68側)には、例えば、硬質アルマイト加工処理、フッ素樹脂コーティング、DLC(Diamond-Like Carbon)コーティング、クロムコーティング等に代表される低摩擦コーティングが施されている。
この低摩擦コーティングにより、ナット74を締め込む際に切削ブレード68とナット74との間に生じる摩擦の力を小さくして、マウントフランジ60に対する切削ブレード68の回転を抑制できる。なお、このナット74には、必ずしも低摩擦コーティングが施されていなくて良い。また、低摩擦コーティングは、切削ブレード68を適切に固定できる限りにおいて、ナット74の他の部分に施されていても良い。
本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法では、まず、上述したマウントフランジ60をスピンドル46に固定する(マウントフランジ固定ステップ)。図4は、スピンドル46にマウントフランジ60が固定された状態を示す断面図である。スピンドル46にマウントフランジ60を固定する際には、まず、マウントフランジ60の開口64aに、後方(スピンドルハウジング44側)からスピンドル46の前端部46aを挿入する。
そして、マウントフランジ60の前方で露出したスピンドル46の前端部46aに、固定用のナット66を締め込む。これにより、マウントフランジ60は、スピンドル46に固定される。なお、スピンドル46にマウントフランジ60を固定する際には、開閉弁56を閉じて、吸引源58の負圧が開口52aに作用しないようにしておく。
マウントフランジ60をスピンドル46に固定した後には、このマウントフランジ60に切削ブレード68を装着する(ブレード装着ステップ)。図5は、マウントフランジ60に切削ブレード68が装着された状態を示す断面図である。マウントフランジ60に切削ブレード68を装着する際には、マウントフランジ60のボス部62が切削ブレード68のハブ基台70の嵌合穴70aに挿入されるように、マウントフランジ60のフランジ部64の接触面64cにハブ基台70の後面側を接触させる。
これにより、ボス部62は嵌合穴70aに嵌合する。また、開口64fの近傍の空間がハブ基台70の後面側によって密閉され、この開口64fを通じて吸引源58の負圧をハブ基台70に作用させることができるようになる。なお、ボス部62の外周面とハブ基台70の嵌合穴70aとの隙間は十分に狭いので、この隙間を通じたエアーのリークは殆ど問題にならない。
マウントフランジ60に切削ブレード68を装着した後には、マウントフランジ60のボス部62に固定用のナット74を締結して、マウントフランジ60に切削ブレード68を固定する(ナット締結ステップ)。すなわち、ハブ基台70の前方で露出したボス部62の前端の一部にナット74を締め込む。
なお、ボス部62にナット74を締め込む前には、図3に示すように、開閉弁56を開いて、吸引源58の負圧をハブ基台70に作用させておく。これにより、ハブ基台70はマウントフランジ60のフランジ部64側に吸引されて、フランジ部64の接触面64cにハブ基台70の後面側が密着する。
この状態でナット74を回転させてボス部62に締め込むと、フランジ部64の接触面64cにハブ基台70の後面側が密着しているので、マウントフランジ60に対して切削ブレード68が回転してしまうことはない。よって、接触面64cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を低く抑えられる。このような手順により、切削ブレード68は、マウントフランジ60を介してスピンドル46に固定される。
以上のように、本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法では、円柱状のボス部62と、円盤状のフランジ部64と、を備え、フランジ部64の切削ブレード68と接触する接触面64cより径方向で内側の位置に一端が開口し、他端が開閉弁56を介して吸引源58に接続された流路64dを有するマウントフランジ60を使用する。
そして、開閉弁56が開かれ切削ブレード68がフランジ部64の接触面64cに密着した状態で、ボス部62にナット74を締結して切削ブレード68を固定する。そのため、マウントフランジ60に対して切削ブレード68が回転することはなくなり、マウントフランジ60の切削ブレード68と接触する接触面64cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を低く抑えられる。
また、本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法では、切削ブレード68のハブ基台70と接触するナット74の後面側に低摩擦コーティングが施されており、切削ブレード68とナット74との間に生じる摩擦の力は小さい。つまり、ナット74を回転させてボス部62に締め込む際に、切削ブレード68は、ナット74とともに回転し難くなっている。よって、マウントフランジ60の切削ブレード68と接触する接触面64cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を更に低く抑えられる。
なお、本実施形態では、吸引源58の負圧が作用しない状態でマウントフランジ60に切削ブレード68を装着しているが、吸引源58の負圧が作用している状態でマウントフランジ60に切削ブレード68を装着しても良い。すなわち、マウントフランジ60に切削ブレード68を装着する際には(ブレード装着ステップでは)、開閉弁56を開いて、吸引源58の負圧を開口64fに作用させておいても良い。
この負圧により、切削ブレード68をマウントフランジ60に引き付ける力が作用するので、マウントフランジ60のボス部62を切削ブレード68の嵌合穴70aに挿入し易くなる。すなわち、マウントフランジ60に切削ブレード68を装着し易くなる。
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1とは異なる態様の切削ユニットに対応した切削ブレードの固定方法を説明する。図6は、本実施形態にかかる切削ユニット118の構成例を示す分解斜視図であり、図7は、切削ユニット118の構成例を示す断面図である。
なお、本実施形態にかかる切削ユニット118の構成要素の多くは、実施形態1にかかる切削ユニット18の構成要素と共通である。よって、共通の構成要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。同様に、本実施形態にかかる切削装置(不図示)の構成要素も、切削ユニット118を除いて、実施形態1にかかる切削装置2の構成要素と共通である。よって、本実施形態にかかる切削装置の説明を省略する。
図6及び図7に示すように、本実施形態の切削ユニット118に含まれるマウントフランジ160は、円柱状のボス部162と、円柱の一方の底面に相当するボス部162の後端(基端)部から径方向外向きに突出する円盤状のフランジ部164とを含む。フランジ部164の中央部には、開口164aが設けられている。この開口164aには、スピンドル46の前端部46aが後面側(スピンドルハウジング44側)から挿入される。つまり、開口164aは、スピンドル46の前端部46aに対応する形状に形成されている。
なお、この開口164aは、フランジ部164の後端からボス部162の前端まで貫通しており、開口164aにスピンドル46の前端部46aが挿入されると、前端部46aの一部がボス部162の前方で露出する。そのため、スピンドル46の前端部46aを後方から開口164aに挿入し、マウントフランジ160の前方で露出する前端部46aに固定用のナット66を締め込むことで、マウントフランジ160をスピンドル46に固定できる。
マウントフランジ160をスピンドル46に固定することで、このマウントフランジ160をスピンドル46とともに回転させることができるようになる。なお、収容部52の内側の空間の径は、フランジ部164の後部164bの径より僅かに大きくなっており、マウントフランジ160がスピンドル46に固定されると、フランジ部164の後部164bは、収容部52の内側の空間に収容される。
マウントフランジ160には、前方から切削ブレード168が装着される。切削ブレード168は、いわゆるワッシャーブレード(ハブレスブレード)であり、通常は、被加工物11を切削するための円環状の切り刃のみで構成される。この切削ブレード168(切り刃)は、例えば、ダイヤモンド等の砥粒を、金属や樹脂等の結合材で固定することにより得られる。
切削ブレード168(切り刃)の中央部には、ボス部162が嵌合する嵌合穴168aが設けられている。マウントフランジ160に切削ブレード168を装着する際には、この嵌合穴168aにボス部162が挿入される。なお、本実施形態にかかるボス部162の後端部(フランジ部164側)の径は、切削ブレード168の嵌合穴168aと適切に嵌合できるように、ボス部162の前端部の径より大きくなっている。
フランジ部164の外周部の前方側(スピンドルハウジング44とは反対側)には、切削ブレード168に接触する平坦な接触面164cが形成されている。マウントフランジ160に切削ブレード168を装着すると、この接触面164cに切削ブレード168の後面側が接触する。
フランジ部164の内部には、エアーの流路164dが設けられている。流路164dの後側の端は、フランジ部164の後部164bの外周面に設けられた開口164eと接続している。開口164eは、後部164bの外周面の周方向に沿う環状に構成されている。また、開口164eは、フランジ部164の後部164bが収容部52の内側の空間に収容された状態で、収容部52の開口52aに対面する位置に設けられている。
そのため、吸引源58の負圧は、開口52a及び開口164eを通じて流路164dに作用する。上述のように、開口164eは環状に形成されているので、スピンドル46とともにマウントフランジ160が回転しても、流路164dへの負圧の作用が低下することはない。また、収容部52の内周面とフランジ部164の後部164bの外周面との隙間は十分に狭いので、この隙間を通じたエアーの侵入も殆ど問題にならない。
流路164dの前側の端は、フランジ部164の前面側に設けられた複数(本実施形態では、4個)の開口164fと接続している。この開口164fは、接触面164cより径方向で内側の位置に設けられている。すなわち、流路164dの一端は、接触面164cより径方向で内側の位置に開口している。
よって、マウントフランジ160に切削ブレード168を装着した状態で開閉弁56を開けば、吸引源58の負圧を開口164fに作用させて、この負圧によって切削ブレード168を接触面164cに密着させることができる。なお、フランジ部164に設けられる開口164fは、一つでも良い。
マウントフランジ160に切削ブレード168を装着した状態で、ボス部162には、前フランジ170が装着される。前フランジ170は、ステンレスやアルミニウム等の金属で円環状に形成され、その中央部には、ボス部162が嵌合する嵌合穴170aが設けられている。
前フランジ170の外周部の後方側(切削ブレード168側)には、切削ブレード168に接触する平坦な接触面170bが形成されている。切削ブレード168が装着されたマウントフランジ160に前フランジ170を装着すると、切削ブレード168の前面側にこの接触面170bが接触する。
マウントフランジ160に切削ブレード168及び前フランジ170を装着すると、ボス部162の前端の一部は前フランジ170の前方で露出する。このボス部162の前端の一部の外周面には、ねじ山162aが形成されている。そのため、マウントフランジ160に切削ブレード168及び前フランジ170を装着した状態で、前フランジ170の前方で露出するボス部162の前端の一部に固定用のナット(リング)172を締め込むことで、切削ブレード168及び前フランジ170をマウントフランジ160に固定できる。
ナット172の中央部には開口172aが設けられており、この開口172aの内周面には、ねじ山162aに対応するねじ山172bが形成されている。また、ナット172の後面側(切削ブレード168側)には、例えば、硬質アルマイト加工処理、フッ素樹脂コーティング、DLC(Diamond-Like Carbon)コーティング、クロムコーティング等に代表される低摩擦コーティングが施されている。
この低摩擦コーティングにより、ナット172を締め込む際に前フランジ170とナット172との間に生じる摩擦の力を小さくして、マウントフランジ160に装着された切削ブレード168に対する前フランジ170の回転や、マウントフランジ160に対する切削ブレード168の回転等を抑制できる。なお、このナット172には、必ずしも低摩擦コーティングが施されていなくて良い。また、低摩擦コーティングは、切削ブレード168を適切に固定できる限りにおいて、ナット172の他の部分に施されていても良い。
本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法では、まず、上述したマウントフランジ160をスピンドル46に固定する(マウントフランジ固定ステップ)。図8は、スピンドル46にマウントフランジ160が固定された状態を示す断面図である。スピンドル46にマウントフランジ160を固定する際には、まず、マウントフランジ160の開口164aに、後方(スピンドルハウジング44側)からスピンドル46の前端部46aを挿入する。
そして、マウントフランジ160の前方で露出したスピンドル46の前端部46aに、固定用のナット66を締め込む。これにより、マウントフランジ160は、スピンドル46に固定される。なお、スピンドル46にマウントフランジ160を固定する際には、バルブ56を閉じて、吸引源58の負圧が開口52aに作用しないようにしておく。
マウントフランジ160をスピンドル46に固定した後には、このマウントフランジ160に切削ブレード168を装着する(ブレード装着ステップ)。図9は、マウントフランジ160に切削ブレード168が装着された状態を示す断面図である。マウントフランジ160に切削ブレード168を装着する際には、マウントフランジ160のボス部162が切削ブレード168の嵌合穴168aに挿入されるように、マウントフランジ160のフランジ部164の接触面164cに切削ブレード168の後面側を接触させる。
これにより、ボス部162は嵌合穴168aに嵌合する。また、開口164fの近傍の空間が切削ブレード168の後面側によって密閉され、この開口164fを通じて吸引源58の負圧を切削ブレード168に作用させることができるようになる。なお、ボス部162の後端部の外周面と切削ブレード168の嵌合穴168aとの隙間は十分に狭いので、この隙間を通じたエアーのリークは殆ど問題にならない。
マウントフランジ160に切削ブレード168を装着した後には、このマウントフランジ160に前フランジ170を装着する(前フランジ装着ステップ)。図10は、マウントフランジ160に前フランジ170が装着された状態を示す断面図である。マウントフランジ160に前フランジ170を装着する際には、ボス部162が前フランジ170の嵌合穴170aに挿入されるように、前フランジ170の接触面170bに切削ブレード168の前面側を接触させる。これにより、ボス部162は嵌合穴170aに嵌合する。
なお、ボス部162に前フランジ170を装着する前には、図10に示すように、開閉弁56を開いて、吸引源58の負圧を切削ブレード168に作用させておく。これにより、切削ブレード168はマウントフランジ160のフランジ部164側に吸引されて、フランジ部164の接触面164cに切削ブレード168の後面側が密着する。
そのため、スピンドル46とスピンドルハウジング44との隙間から排出されるエアーベアリング用のエアー等によって、薄い切削ブレード168がフランジ部164の接触面164cから離れることもない。これにより、切削ブレード168をフランジ部164と前フランジ170とで挟み込む際に、切削ブレード168が破損する可能性を低く抑えられる。また、マウントフランジ160に対して切削ブレード168が回転しないので、接触面164cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を低く抑えられる。
マウントフランジ160に前フランジ170を装着した後には、ボス部162に固定用のナット172を締結して、マウントフランジ160に切削ブレード168及び前フランジ170を固定する(ナット締結ステップ)。すなわち、前フランジ170の前方で露出したボス部162の前端の一部にナット172を締め込む。なお、ボス部162にナット172を締め込む際にも、図7に示すように、開閉弁56を開いて、吸引源58の負圧を切削ブレード168に作用させておく。
この状態でナット172を回転させてボス部162に締め込むと、フランジ部164の接触面164cに切削ブレード168の後面側が密着しているので、マウントフランジ160に対して切削ブレード168が回転してしまうことはない。よって、接触面64cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を低く抑えられる。このような手順により、切削ブレード168は、マウントフランジ160を介してスピンドル46に固定される。
本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法でも、開閉弁56が開かれ切削ブレード168がフランジ部164の接触面164cに密着した状態で、ボス部162にナット172を締結して切削ブレード168を固定する。そのため、マウントフランジ160に対して切削ブレード168が回転することはなくなり、マウントフランジ160の切削ブレード168と接触する接触面164cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を低く抑えられる。
また、本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法では、前フランジ170と接触するナット172の後面側に低摩擦コーティングが施されており、前フランジ170とナット172との間に生じる摩擦の力は小さい。つまり、ナット172を回転させてボス部162に締め込む際に、前フランジ170や切削ブレード168は、ナット172とともに回転し難くなっている。
よって、マウントフランジ160の切削ブレード168と接触する接触面164cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性を更に低く抑えられる。同様に、前フランジ170の切削ブレード168と接触する接触面170bに異物が付着したり傷が付いたりする可能性も低く抑えられる。
また、本実施形態にかかる切削ブレードの固定方法では、ボス部162に前フランジ170を装着する際に、開閉弁56を開いて、吸引源58の負圧を切削ブレード168に作用させている。そのため、ボス部162に前フランジ170を装着する際に、マウントフランジ160に対して切削ブレード168が回転してしまうことはない。よって、接触面164cに異物が付着したり傷が付いたりする可能性をより低く抑えられる。また、切削ブレード168をフランジ部164と前フランジ170とで挟み込む際に、切削ブレード168が破損する可能性を低く抑えられる。
なお、本実施形態では、吸引源58の負圧が作用しない状態でマウントフランジ160に切削ブレード168を装着しているが、吸引源58の負圧が作用している状態でマウントフランジ160に切削ブレード168を装着しても良い。すなわち、マウントフランジ160に切削ブレード168を装着する際には(ブレード装着ステップでは)、開閉弁56を開いて、吸引源58の負圧を開口164fに作用させておいても良い。
この負圧により、切削ブレード168をマウントフランジ160に引き付ける力が作用するので、マウントフランジ160のボス部162を切削ブレード168の嵌合穴168aに挿入し易くなる。つまり、マウントフランジ160への装着が難しいワッシャータイプの薄い切削ブレード168でも、容易にマウントフランジ160に装着できるようになる。
また、上述したタイミングとは別のタイミングで開閉弁56を開くこともできる。例えば、ボス部162に前フランジ170を装着した後、ボス部162に固定用のナット172を締結する際に、開閉弁56を開いて吸引源58の負圧を開口164fに作用させても良い。
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。