JP7228892B2 - 被回収成分を回収する方法、ペロブスカイト型の複合酸化物、および処理体を連続的に製造する装置 - Google Patents

被回収成分を回収する方法、ペロブスカイト型の複合酸化物、および処理体を連続的に製造する装置 Download PDF

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Description

本発明は、貴金属等の回収方法に関する。また、本発明は、ペロブスカイト型の複合酸化物、および処理体を連続的に製造する装置に関する。
貴金属および希少金属は、安定性や触媒活性等に優れることから、工業的に幅広く用いられている。また、これらの金属は、希少で高価な資源であり、これらを有効活用することに対して高いニーズがある。
例えば、使用済みの貴金属および希少金属を含有する廃棄材料から、これらに含まれる貴金属および希少金属(以下、「貴金属等」という)を効率良く回収できる技術には、大きなニーズがある。
このような観点から、特許文献1には、ペロブスカイト型複合酸化物中に貴金属等を吸蔵させることにより、貴金属等を含有する部材から貴金属等を回収する技術が提案されている。
国際公開第2009/107647号
前述の特許文献1に記載のプロセスでは、ペロブスカイト型複合酸化物の存在下で、貴金属等を含有する部材を、例えば1050℃~1650℃の温度で、5時間~20時間程度加熱することにより、貴金属等を回収する。
しかしながら、このようなプロセスでは、高温の処理温度に耐え得る設備などが必要となる上、処理に時間がかかるという問題がある。このため、特許文献1に記載のプロセスでは、装置の簡素化およびプロセスの効率化が難しいという問題がある。また、このような理由から、特許文献1に記載のプロセスは、産業スケール規模で適用することは難しいという問題がある。
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、より低い温度およびより短い時間で実施することが可能な、貴金属等の回収方法を提供することを目的とする。また、本発明では、ペロブスカイト型の複合酸化物、および処理体を連続的に製造する装置を提供することを目的とする。
本発明では、被回収成分を回収する方法であって、
(a)CaMnOおよび被回収成分含有材を含む被処理体を、不活性ガス雰囲気において、850℃~1000℃から選定される加熱温度に加熱するステップと、
(b)前記不活性ガス雰囲気を10vol%~30vol%の酸素を含む雰囲気に切り換え、前記被処理体を前記加熱温度に最大2時間保持して処理体を形成するステップと、
を有する、方法が提供される。
また、本発明では、ペロブスカイト型の複合酸化物であって、
室温(25℃)でのX線回折測定(X線波長0.1541nm)において、
Ca(Mn1-x)Oで表される化合物のメインピークを有するとともに、
2θ=33.0°~33.8°の位置に、Ca(Mn1-y)Oで表される化合物のブロードなピークを少なくとも一つ有する、複合酸化物が提供される:
ここで、Aは、Ir、Ru、Re、Pt、Pd、およびRhからなる群から選定される少なくとも一つであり、0.01≦x≦0.07であり、0.2≦y≦0.8である。
さらに、本発明では、処理体を連続的に製造する装置であって、
CaMnOおよび被回収成分含有材を含む被処理体を搬送する搬送手段と、
不活性ガス雰囲気において、前記被処理体を850℃~1000℃から選定される加熱温度に加熱する第1のチャンバと、
10vol%~30vol%の酸素を含む雰囲気において、前記被処理体を前記加熱温度に維持する第2のチャンバと、
を有し、
前記被処理体は、前記搬送手段により、前記第1のチャンバに搬送された後、前記第2のチャンバに搬送される、装置が提供される。
本発明では、より低い温度およびより短い時間で実施することが可能な、貴金属等の回収方法を提供することができる。また、本発明では、ペロブスカイト型の複合酸化物、および処理体を連続的に製造する装置を提供することができる。
本発明の一実施形態による被回収成分を回収する方法のフローを模式的に示した図である。 室温(25℃)における処理体のX線回折結果の一例を示した図である。 室温(25℃)における別の処理体のX線回折結果の一例を示した図である。 被回収成分が吸蔵された処理体を製造する製造装置の一構成例を模式的に示した図である。 例1において、各時間において得られた900℃における被処理体のX線回折結果ピークの一部を拡大して示した図である。 例1において、各時間において得られた900℃における被処理体のX線回折結果ピークの一部を拡大して示した図である。 例1におけるIrの111ピーク強度の時間変化のプロットを示した図である。 例2~例4において得られたIrの111ピーク強度の時間変化のプロットを示した図である。 室温(25℃)における例2~例4に係る処理体のX線回折結果をまとめて示した図である。 例11~例13において得られたRuの101ピーク強度の時間変化のプロットを示した図である。 室温(25℃)における例21に係る処理体のX線回折結果を示した図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
(本願に使用される用語について)
まず、本願において使用される各用語の意味について説明する。
「貴金属等」とは、前述のように、廃棄材料などに含まれる、回収の対象となる貴金属および希少金属を意味する。貴金属としては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、およびロジウム(Rh)が、希少金属としてはレニウム(Re)が該当する。
「被回収成分」とは、廃棄材料などに含まれる、本願に記載のプロセスによる回収の対象となる貴金属等を意味する。
「被回収成分含有材」とは、「被回収成分」を含み、本願に記載のプロセスにおいて処理される部材等を表す。「被回収成分含有材」は、例えば廃棄材料などであっても良い。
「回収剤」とは、「被回収成分含有材」から「被回収成分」を回収するために使用される材料を意味する。
(本発明の一実施形態による被回収成分を回収する方法)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による被回収成分を回収する方法について説明する。
図1には、本発明の一実施形態による被回収成分を回収する方法(以下、「第1の回収方法」と称する)のフローを模式的に示す。
図1に示すように、第1の回収方法は、
(i)CaMnOおよび被回収成分含有材を含む被処理体を、不活性ガス雰囲気において、850℃~1000℃から選定される加熱温度に加熱する工程(工程S110)と、
(ii)前記不活性ガス雰囲気を10vol%~30vol%の酸素を含む雰囲気に切り換え、前記被処理体を前記加熱温度に最大2時間保持する工程(工程S120)と、
(iii)前記(ii)で得られた処理体から、前記被回収成分含有材に含まれる被回収成分を分離する工程(工程S130)と、
を有する。
ただし、(iii)の工程S130は、必要に応じて実施される工程であり、第1の回収方法において、必ずしも必須の工程ではない。また、例えば、(iii)の工程S130は、(ii)の工程S120の直後に、(連続的に)実施される必要はなく、(ii)の工程S120の後、任意の期間の後に実施されても良い。
以下、各工程について説明する。
(工程S110)
まず、被処理体が準備される。
被処理体は、回収剤としてのペロブスカイト型複合酸化物CaMnOと、被回収成分含有材とを含む。
CaMnOの調製方法は、特に限られず、CaMnOは既存の方法で調製されても良い。例えば、実験化学講座第4版、第16巻、無機化合物、日本化学会編、丸善、1993年には、固相反応法または共沈法等によって、ペロブスカイト型複合酸化物が製造できることが記載されている。
固相反応法では、出発原料として、カルシウム源およびマンガン源が使用される。カルシウム源およびマンガン源は、例えば、酸化物、炭酸塩、または有機化合物等の形態であっても良い。これらのカルシウム源およびマンガン源を所定の割合で混合して、混合物を焼成することにより、CaMnOを得ることができる。
例えば、カルシウム源およびマンガン源がともに酸化物を含む場合、1200℃~1500℃の範囲における焼成処理により、CaMnOを形成することができる。
なお、焼成処理の前に予備処理を実施しても良い。例えば、カルシウム源および/またはマンガン源が有機化合物など、非酸化物を含む場合には、予め混合物を予備処理して、カルシウム源および/またはマンガン源を分解させ、その後、焼成処理を実施しても良い。
この場合、予備処理の温度は、例えば、1000℃~1200℃の範囲であっても良い。
焼成処理の雰囲気は、通常、酸素または空気等を含む酸化性雰囲気である。
一方、被回収成分含有材は、被回収成分を含む。被回収成分含有材に含まれる被回収成分は、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、およびロジウム(Rh)からなる群から選定された少なくとも一つを含む。
被回収成分含有材は、廃棄材料であっても良く、例えば、電子基板、電子部品、排気ガス浄化装置、化学工業用触媒、および電解用電極の少なくとも一部を含んでも良い。
例えば、燃料電池用の電極は、カーボンに担持された触媒を含み、この触媒には、白金とルテニウムの合金等の貴金属が使用される。従って、被回収成分含有材として、そのような電極を使用した場合、白金とルテニウムを回収できる。
なお、被回収成分含有材として、燃料電池用の電極を使用した場合、電極に含まれるカーボンは、後述する工程S120において、酸素と反応して二酸化炭素となる。このため、
カーボンは、回収剤には吸蔵されない。
被処理体の形態は、回収剤、すなわちCaMnOと、被回収成分含有材とを含む限り、特に限られない。
被処理体は、例えば、粉末状、ディスク状、ペレット状、またはシート状など、各種形態であっても良い。
被処理体が粉末状の場合、被処理体は、粉末状のCaMnOと、粉末状の被回収成分含有材とが相互に混合された、混合粉末として提供されても良い。粉末状の被回収成分含有材の粒径は、特に限られないが、なるべく小さいことが好ましい。粉末状の被回収成分含有材の粒径は、例えば、0.5μm~50μmの範囲である。一方、粉末状のCaMnOの粒径は、特に限られず、例えば、0.5μm~50μmの範囲であっても良い。
なお、本願において、粒子の粒径は、平均粒径を意味する。
粒子の粒径は、レーザー回折法で測定した。
また、被処理体がディスク状、ペレット状、またはシート状の場合、被処理体は、前述の混合粉末を所定の形状に成形して、構成しても良い。この場合、被処理体は、成形状態を維持するため、例えば有機バインダのような結合剤を含んでも良い。
被処理体に含まれる被回収成分の含有量は、特に限られない。被回収成分は、被処理体全体に対して、例えば、1wt%~50wt%の割合で含まれても良い。
次に、調製された被処理体が、不活性ガス雰囲気下において加熱される。
不活性ガス雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、またはこれらの混合雰囲気等である。
加熱温度は、850℃~1000℃から選定される。加熱温度は、例えば、860℃~950℃の範囲であり、870℃~940℃の範囲であることが好ましく、880℃~920℃の範囲であることがより好ましい。
加熱温度が極端に低くなると、以降の工程S120において、回収剤と被回収成分との間の反応速度が低下し、短時間で反応を完了させることが難しくなるおそれがある。
なお、本工程における被処理体の加熱時間(室温から前記加熱温度までの昇温時間)は、被処理体全体が実質的に均一な温度になる上で十分な時間であれば、特に限られない。被処理体の加熱時間は、例えば、1時間未満であっても良い。
(工程S120)
次に、前記加熱温度を維持したまま、被処理体の雰囲気が、不活性ガス雰囲気から、10vol%~30vol%の酸素を含む雰囲気(以下、「酸素含有雰囲気」と称する)に切り換えられる。
また、被処理体は、この状態で最大2時間保持される。すなわち、「保持時間」は、2時間以下である。保持時間は、1時間以下であることが好ましく、50分以下であることがより好ましく、10分以下であることがさらに好ましい。
なお、明確化のため、ここでの被処理体の保持時間は、被処理体が晒される不活性ガス雰囲気の酸素濃度が上昇し始めた時刻を0(ゼロ)分として、規定する。従って、不活性ガス雰囲気から酸素含有雰囲気に変化するまでの遷移時間は、保持時間に含まれることに留意する必要がある。
酸素含有雰囲気は、例えば、大気雰囲気(酸素分圧:約0.021MPa、体積分率:約21vol%)であっても良い。
この工程により、被回収成分含有材に含まれる被回収成分を、回収剤に迅速に吸蔵させることができる。
前述のように、従来の方法では、ペロブスカイト型複合酸化物の存在下で、貴金属等を含有する部材を例えば1050℃~1650℃の温度で、5時間~20時間程度加熱することにより、貴金属等が回収される。
しかしながら、このようなプロセスでは、高温の処理温度に耐え得る設備などが必要となる上、処理に時間がかかるという問題がある。また、このような理由から、従来のプロセスは、産業スケール規模で適用することは難しいという問題がある。
これに対して、第1の回収方法では、被処理体を、酸素含有雰囲気下において850℃~1000℃の温度で、最大でも2時間熱処理するだけで、被回収成分が内部に吸蔵された処理体を形成することができる。すなわち、第1の回収方法では、従来に比べて、有意に低い温度、および有意に短い時間で、被回収成分の回収を実施することができる。
従って、第1の回収方法は、迅速な被回収成分の回収方法として、産業スケール規模で利用することが可能となる。
この工程S120後に得られる「処理体」は、ペロブスカイト型の複合酸化物の形態である。
本願において、「処理体」とは、被回収成分が吸蔵された回収剤を意味する。
なお、現在のところ、本工程S120により、被回収成分が回収剤に効率的に吸蔵される理由は、明確には把握されていない。
ただし、第1の回収方法には、被処理体の環境が、工程S110における不活性ガス雰囲気から、工程S120における酸素含有雰囲気に切り換えられるという特徴があることから、以下のことが考えられる。
工程S110における不活性ガス雰囲気下での被処理体の加熱により、CaMnOに含まれるマンガンイオンの一部は、+4価から+3価に還元されると考えられる。また、この場合、電気的中性を保つため、CaMnOを構成する一部の酸素原子が脱離すると考えられる。すなわち、工程S120の直前には、CaMnOは、一部の酸素が欠損した状態にあると考えられる。
次に、工程S120において、雰囲気を酸素含有雰囲気に切り換えると、被処理体に含まれる被回収成分が酸化され、被回収成分の酸化物(「被回収成分酸化物」という)および/または酸化物の蒸気(「被回収成分蒸気」という)が生成される。
この被回収成分酸化物および/または被回収成分蒸気がCaMnO回収剤と接触すると、被回収成分の吸蔵反応が生じ、被回収成分がCaMnO構造内に取り込まれる。特に、CaMnOは、酸素欠損状態という不安定な状態にあるため、CaMnOと接触した被回収成分酸化物および/または被回収成分蒸気は、速やかにCaMnO構造内に取り込まれ、迅速な吸蔵反応が生じる。
その結果、短い時間でも、被回収成分を効率的に回収剤に吸蔵させることが可能になるものと考えられる。
なお、上記メカニズムは、現時点での考察に基づくものであり、本発明は、このようなメカニズムに拘束されないことに留意する必要がある。
いずれにせよ、工程S120により、回収剤のCaMnO構造中に被回収成分が吸蔵され、処理体が形成される。
(工程S130)
前述の工程S120までの実施により、被回収成分含有材に含まれる被回収成分を、被回収成分含有材から分離することができる。
ただし、この段階では、回収された被回収成分は、回収剤のCaMnO内に吸蔵された状態にある。そこで、さらに、CaMnOから被回収成分を回収するため、以下の工程(以下、「溶出工程」という)が実施されても良い。
この溶出工程では、回収剤が酸に浸漬される。これにより、回収剤中に含まれる被回収成分を、CaMnOとともに溶出させることができる。
使用される酸は、特に限られないが、例えば、塩酸、フッ酸、硝酸、硫酸、憐酸、ギ酸、および酢酸からなる群から選択される1または2以上であっても良い。
なお、被回収成分を短時間で効率的に溶出させるためには、貴金属等を吸蔵したCaMnOとの反応性が高い塩酸または硝酸等の強酸を用いることが好ましい。ただし、硝酸性窒素の排水規制(中央環境審議会、平成25年)を考慮すると、硝酸以外の塩酸などが好ましい。
酸の温度は、特に限られないが、例えば30℃~100℃の範囲である。
酸による処理の時間は、酸処理の温度および被回収成分の量等によっても変化するが、例えば、5分~6時間の範囲である。
その後、必要に応じて、酸に溶出した被回収成分が所定の方法で回収される。
酸に含まれる被回収成分の回収方法には、例えば、還元剤により被回収成分を還元する方法、亜鉛等の金属を用いたセメンテーション方法、被回収成分をイオン交換樹脂または活性炭に吸着させる方法、被回収成分を溶媒抽出法により回収した後、分離精製を行う方法、ならびに酸の電解等の方法が含まれる。
以上の工程により、被回収成分含有材に含まれる被回収成分を、金属として回収することができる。また、酸に溶出した回収剤CaMnOについても、別途、回収して回収剤として再利用することができる。
(処理体)
前述のように、第1の回収方法では、工程S120の後に、処理体として、ペロブスカイト型の複合酸化物が生成される。
この複合酸化物は、一般式がCa(Mn1-x)Oで表される化合物を有する。ここでAは、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、およびロジウム(Rh)からなる群から選定される少なくとも一つを表す。また、xは、0.01~0.07の範囲である。
さらに、複合酸化物は、任意でCaMn化合物を含んでも良い。
また、複合酸化物は、室温(25℃)でのX線回折測定において、Ca(Mn1-x)Oで表される化合物のメインピークを有する。前述のように、xは、0.01~0.07の範囲である。
また、複合酸化物は、室温(25℃)でのX線回折測定(X線波長0.1541nm)において、2θ=33.0°~33.8°の位置に、Ca(Mn1-y)Oで表される化合物のブロードなピーク(以下、「副ピーク」という)を少なくとも一つ有するという特徴を有する。ここで、0.2≦y≦0.8である。
このような副ピークは、従来のCaMnOを使用した貴金属の回収方法において生成される処理体では認められない、本発明による処理体の特徴の1つである。
前述の第1の回収方法では、従来に比べて短い時間に多くの量の被回収成分を回収剤に吸蔵することができる。従って、CaMnO構造内に短時間に多量の被回収成分が吸蔵される結果、このような副ピークが生じるものと予想される。
図2には、工程S120の後に得られた処理体の、室温(25℃)でのX線回折分析結果(X線波長0.1541nm)の一例を示す。
製造条件等の詳細は後述するが、図2の処理体は、90wt%のCaMnO粉末と、10wt%の金属Ir粉末とを含む成形体を被処理体として使用した際に得られたものである。
図2から、この処理体は、角度2θ≒33.9°の位置に、Ca(Mn0.97Ir0.03)Oのメインピークを有する。また、この処理体は、角度2θ≒33.6°の位置に、Ca(Mn0.7Ir0.3)Oに対応する第1の副ピーク、および角度2θ≒33.4°の位置に、Ca(Mn0.5Ir0.5)Oに対応する第2の副ピークを有する。さらに、この処理体は、角度2θ≒33.0°の位置に、CaMnのブロードなピークを有する。
図3には、工程S120の後に得られた別の処理体の、室温(25℃)でのX線回折分析結果(X線波長0.1541nm)の一例を示す。
製造条件等の詳細は後述するが、図3の処理体は、94.5wt%のCaMnO粉末と、5.5wt%の金属Ru粉末とを含む成形体を被処理体として使用した際に得られたものである。
図3から、この処理体は、角度2θ≒33.9°の位置に、Ca(Mn0.94Ir0.06)Oのメインピークを有する。また、この処理体は、角度2θ≒33.7°の位置に、Ca(Mn0.8Ir0.2)Oに対応する第1の副ピーク、および角度2θ≒33.5°の位置に、Ca(Mn0.6Ir0.4)Oに対応する第2の副ピークを有する。さらに、この処理体は、角度2θ≒33.0°の位置に、CaMnのブロードなピークを有する。
このように、第1の回収方法では、処理体として、特徴的な化合物が生成される。
(製造装置)
次に、図4を参照して、本発明の一実施形態による製造装置について説明する。この製造装置を使用することにより、被回収成分を含む処理体を連続的に製造することができる。
図4に示すように、製造装置100は、搬送台110と、第1のチャンバ130と、第2のチャンバ150と、を有する。
搬送台110は、上部に載置される被処理体180を、矢印Fのように、水平方向に搬送する機能を有する。搬送台は、例えば、ベルトコンベアのような部材であっても良い。
第1のチャンバ130は、第1の内部空間132の雰囲気制御、および第1の内部空間132の温度制御が可能な構造を有する。
第1の内部空間132には、ガス供給源(図示されていない)から所定のガスが供給される。供給ガスは、例えば窒素のような不活性ガスである。また、第1の内部空間132には、ヒータ(図示されていない)が設置されており、これにより、第1の内部空間132を、例えば850℃~1000℃のような温度に加熱することができる。
第1のチャンバ130は、第1のシャッター135を有する。第1のシャッター135は、例えば、上下に移動することができ、これにより、第1の内部空間132を密閉したり、第1の内部空間132を開放したりすることができる。
第2のチャンバ150は、第1のチャンバ130に隣接して設けられる。
第2のチャンバ150は、第2の内部空間152の雰囲気制御、および第2の内部空間152の温度制御が可能な構造を有する。
第2の内部空間152には、ガス供給源(図示されていない)から所定のガスが供給される。供給ガスは、例えば、酸素を10vol%~30vol%含む酸素含有ガスである。供給ガスは、例えば空気であっても良い。また、第2の内部空間152には、ヒータ(図示されていない)が設置されており、これにより、第2の内部空間152を、例えば850℃~1000℃のような温度に加熱することができる。
第2のチャンバ150は、第2のシャッター155を有する。第2のシャッター155は、例えば、上下に移動することができ、これにより、第2の内部空間152を密閉したり、第2の内部空間152を開放したりすることができる。
また、第1のチャンバ130と第2のチャンバ150の間には、第3のシャッター165が設置される。第3のシャッター165は、上下に移動することが可能であり、これにより、第1のチャンバ130と第2のチャンバ150の間の連通/遮断を制御することができる。
このような製造装置100を用いて処理体を製造する場合、まず、搬送台110の上に、被処理体180が設置される。
被処理体180は、前述のように、回収剤としてのCaMnOと、被回収成分含有材とを含む。被処理体180の形態は、特に限られず、例えば、粉末状、ディスク状、ペレット状、またはシート状などであっても良い。
なお、被処理体180の詳細については、前述の第1の回収方法内の記載が参照できるため、ここではこれ以上説明しない。
次に、被処理体180は、搬送台110の移動により、第1のシャッター135が開にされた第1のチャンバ130内に搬送される。被処理体180が第1のチャンバ130の第1の内部空間132に収容されると、第1のシャッター135が閉止され、第1の内部空間132が密閉される。
第1の内部空間132は、所定の雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気)、および所定の温度(例えば850℃~1000℃)に制御されている。このため、被処理体180は、第1のチャンバ130内で、速やかに所定の温度に加熱される。
被処理体180の全体が所定の温度に達した後、あるいはその後しばらくしてから、第3のシャッター165が開放される。その後、被処理体180が第1のチャンバ130から排出され、第2のチャンバ150内に搬送される。なお、この時点では、第2のチャンバ150の第2のシャッター155は、閉止されている。
被処理体180が第2のチャンバ150の第2の内部空間152に収容されると、第3のシャッター165が閉止され、第2の内部空間152が密閉される。
第2の内部空間152は、予め第1の内部空間132と同等の温度に維持されている。このため、被処理体180は、第2のチャンバ150内でも第1のチャンバ130と実質的に同じ温度に維持される。
第2の内部空間152が密閉されてから、第2の内部空間152に酸素含有ガスが供給される。あるいは、第1の内部空間132と第2の内部空間152との間で、雰囲気ガスの混合が実質的に回避できる場合、第2の内部空間152は、予め所定の雰囲気に制御されていても良い。
第2のチャンバ150内では、被処理体180において、前述のような吸蔵反応が生じる。従って、被回収成分含有材に含まれる被回収成分を、回収剤に迅速に吸蔵させることができる。
ここで、被処理体180が第2のチャンバ150内に保持される時間は、最大でも2時間程度である。従って、第2のチャンバ150内では、迅速に処理体186を形成することができる。
その後、第2のシャッター155が開放され、処理体186が第2のチャンバ150から排出される。
製造装置100では、このようにして、連続的かつ迅速に、処理体186を製造することができる。
なお、上記製造装置100の構成は、単なる一例に過ぎない。被回収成分を含む処理体186を連続的に製造することができる限り、上記製造装置100において、各種変更、追加、および削除が可能であることは、当業者には明らかである。
(例1)
以下の方法で、CaMnOを用いた金属Irの回収実験を実施した。
CaMnOは、以下のように調製した。
まず、カルシウム源としてのCaCO粉末と、マンガン源としてのMnO粉末とを、Ca:Mnの元素比(モル比)が1:1となるように混合した。
この混合物を用いて、空気中、1200℃での焼成、およびその後の粉砕を数回繰り返した。最終的に空気中、1200℃で10時間焼成することにより、黒色粉末を作製した。
得られた黒色粉末のX線回折分析を実施した結果、黒色粉末は、組成式がCaMnOで表される、結晶性の良好な単一相のペロブスカイト型複合酸化物粉末であることが確認された。
次に、上記方法で得られた回収剤であるCaMnO粉末と被回収成分である金属Ir粉末とを、重量比が90:10(モル比=92.4:7.6)となるように秤量して、混合させた。
なお、CaMnO粉末の平均粒子径は、0.1μmのオーダであり、Ir粉末の平均粒子径は、10μmのオーダであった。これらの平均粒子径は、レーザー回折法によって測定した値である。
次に、この混合物に、エタノールを加えた後、遊星ボールミル(ジルコニア製ポットおよびボール)を用いて、回転数300rpmで、20分間湿式混合した。
次に、得られた混合粉末(「混合粉末a1」と称する)をディスク状に成形して成形体(以下、「成形体a1」と称する)を形成した。この成形体が、被処理体となる。
成形体a1は、直径13mmおよび厚さ0.5mmの寸法を有する。
成形体a1を、加熱装置(XRK900;アントンパール社製)を備えるX線回折装置(X'Pert Pro MPD;パナリティカル社製、Cu管球装備:X線波長0.1541nm)の加熱装置内試料室に設置した。試料室の容積は、約150cmである。
試料室内に、100cm/分の流速で純窒素ガスを供給した。また、この状態で、加熱装置を用いて、成形体a1を900℃まで加熱した。昇温速度は、10K/分である。
成形体a1を、900℃に15分間保持した後、雰囲気ガスを酸素含有ガスに切り換えた。酸素含有ガスは、79vol%N+21vol%Oとし、100cm/分の流速で供給した。
酸素センサーの記録から、酸素含有ガスを供給してから約3分後に、試料室内の雰囲気が、酸素含有ガスに切り換わりはじめた(この時刻を、時間0(ゼロ)分として規定する)。同記録から、時間0分から約6分後に試料室内の雰囲気が、ほぼ完全に酸素含有ガス(79vol%N+21vol%O)に切り替わった。
次に、時刻0分から初めて、1分おきに成形体a1のX線回折測定を実施した。
図5および図6には、各時間において得られた900℃におけるX線回折結果ピークの一部を拡大して示す。図5および図6において、グラフ内の数字は、保持時間(経過時間)(分)を示している。
図5には、2θ=32.0°~34.5°付近のX線回折ピークを示し、図6には、2θ=39.5°~41.0°付近のX線回折ピークを示す。図5に示す角度範囲は、CaMnO由来のメインピークが観測される領域であり、図6に示す角度範囲は、Ir由来のメインピーク(111ピーク)が観測される領域である。
図5から、保持時間の増加により、CaMnO由来のメインピークが徐々に小さくなるとともに、ピークの角度2θが僅かながら広角度側にシフトしていることがわかる(33.25°から33.45°にシフト)。また、保持時間の増加により、角度2θが約32.5°~33.0°の領域に、徐々にブロードなピークが認められるようになり、これが増大する傾向にあることがわかる。
また、図6から、保持時間の増加により、Irのメインピークが徐々に小さくなることがわかる。特に、7分後には、Irのメインピークは、実質的に認められなくなった。
これらの結果から、成形体a1に含まれる金属Irは、時間とともに、CaMnOの結晶構造内に取り込まれていることがわかった。
図7には、Irの111ピーク強度と保持時間との関係を示す。横軸は、保持時間であり、縦軸は、各保持時間におけるIrの111ピーク強度(カウント数)である。
図7から、成形体a1は、約7分後に、Irの111ピークを示さなくなることがわかる。この結果から、雰囲気ガスが酸素含有ガスに切り替わりはじめてから約6分後に、成形体a1中の被回収成分である金属Irのほぼ全てが、回収剤に吸蔵されたことがわかった。
このように、例1では、10分以内という短い時間で、Irを回収剤に回収できることが示された。
雰囲気ガスが酸素含有ガスに切り替わりはじめてから約8分後に、成形体a1の加熱を停止した。また、成形体a1が十分に冷却されてから、成形体a1(「処理体a1」とも称する)を装置から取り出した。なお、試料室内を観察したところ、処理体a1以外の生成物は、生成されていないことが確認された。すなわち、成形体a1からは、処理体a1のみが生成された。
処理体a1を用いて、X線回折測定を行った。前述の図2には、室温(25℃)における処理体a1のX線回折結果を示す。
リートベルト解析の結果、処理体a1の室温でのX線回折チャート(図2)には、角度2θ=33.92°の位置に、Ca(Mn0.97Ir0.03)Oに起因するメインピークが見出された。また、2θ=33.56°の位置に、Ca(Mn0.7Ir0.3)Oに対応する第1の副ピークが見出され、2θ=33.35°の位置に、Ca(Mn0.5Ir0.5)Oに対応する第2の副ピークが見出された。さらに、処理体a1には、角度2θ≒33.0°の位置に、CaMnに対応するブロードなピークが見出された。
なお、処理後に得られた処理体a1は、90℃の12N塩酸中に浸漬させることにより、完全に溶解した。この溶液のICP発光分光分析の結果、溶液中にはIrイオンが含まれていることがわかった。
このように、処理体a1を酸処理することにより、酸中にIrを溶出できることが確認された。
(例2~例4)
前述の例1と同様の方法により、CaMnOを用いたIrの回収実験を実施した。
ただし、例2~例4では、例1とは別のロットで作製したCaMnO粉末を用い、例1と同様な方法で成形体(以下、「成形体a2」と称する)を作製した。例1で使用したCaMnO粉末の平均粒子径は0.5μmであり、例2~例4で使用したCaMnO粉末の平均粒子径は0.4μmである。成形体a2の加熱温度を900℃から850℃の間で変化させた。具体的には、例2では成形体a2の加熱温度を900℃とし、例3では成形体a2の加熱温度を875℃とし、例4では成形体a2の加熱温度を850℃とした。
例2において処理後に得られた処理体を処理体a2と称し、例3において処理後に得られた処理体を処理体b2と称し、例4において処理後に得られた処理体を処理体c2と称する。
図8には、各例において、各測定時間で得られたIrの111ピーク強度を時間0分のIrの111ピーク強度で除したピーク強度比の時間変化のプロットをまとめて示す。これらの測定は、それぞれの例において、それぞれの加熱温度で実施した(例えば例3では、875℃)。
横軸は、保持時間(経過時間)であり、前述のように、試料室内の雰囲気が、ほぼ完全に酸素含有ガスに切り換わりはじめた時刻を0(ゼロ)分とした。また、縦軸は、各測定時間で得られたIrの111ピークの強度比を示す。この値は、各測定時間において測定されたピーク強度(I)を、同じ温度の時間0分の処理前の成形体a1において得られたIrの111ピーク強度(I)で除した、強度の比で表している。
図8から、例2~例4において、成形体a2は、約6~7分後に、Irの111ピークを示さなくなることがわかる。
このように、例2~例4においても、成形体a2中の被回収成分である金属Irのほぼ全てが、迅速に回収剤に吸蔵されたことがわかった。
例2、例3、および例4において得られた処理体a2、処理体b2、および処理体c2を用いて、X線回折測定を行った。図9には、室温(25℃)におけるそれぞれの処理体a2、処理体b2、処理体c2のX線回折結果(X線波長0.1541nm)をまとめて示す。
図9から、例2、例3、および例4においても、処理体a2、処理体b2、および処理体c2の室温でのX線回折チャートは、図2の例1の処理体a1と同様の回折パターンを示すことがわかった。
(例11)
例1と同様の方法により、回収剤であるCaMnOを用いた被回収成分の回収実験を実施した。使用したCaMnO粉末の平均粒子径は、0.4μmである。ただし、この例11では、被回収成分として、金属Irの代わりに、金属Ruを使用した。
すなわち、被処理体として、回収剤であるCaMnO粉末と被回収成分である金属Ru粉末(重量比=94.5:5.5、モル比=92.4:7.6)とで構成された成形体a3を使用した。
その他の条件は、例1の場合と同様である。処理後に処理体a3が得られた
(例12および例13)
前述の例11と同様の方法により、CaMnOを用いたRuの回収実験を実施した。
ただし、例12および例13では、成形体a3の加熱温度を例11の場合とは変化させた。具体的には、例12では成形体a3の加熱温度を875℃とし、例13では成形体a3の加熱温度を850℃とした。
例12において処理後に得られた処理体を処理体b3と称し、例13において処理後に得られた処理体を処理体c3と称する。
図10には、例11~例13の各例において得られたRuの101ピーク強度を時間0分のRuの101ピーク強度で除したピーク強度比と保持時間との関係をまとめて示す。これらの測定は、それぞれの例において、それぞれの加熱温度で実施した(例えば例11では、900℃)。
横軸は、保持時間であり、前述のように、試料室内の雰囲気が、酸素含有ガスに切り換わりはじめた時刻を0(ゼロ)分とした。また、縦軸は、各保持時間のRuの101ピークの強度を示す。この値は、測定されたピーク強度(I)を、同じ温度の時間0分におけるRuの101ピーク強度(I)で除した、強度比で表している。
図10から、例13においては、成形体a3は、約45分後に、Ruの101ピークを実質的に示さなくなることがわかる。また、例11および例12においては、例13よりも迅速に、Ruのピーク強度が低下していることがわかる。
このように、例11~例13のいずれにおいても、成形体a3中の被回収成分である金属Ruのほぼ全てが、迅速に回収剤に吸蔵されたことがわかった。
前述の図3には、室温(25℃)における処理体a3(例11)のX線回折結果を示す。
リートベルト解析の結果、処理体a3の室温でのX線回折チャート(図3)には、角度2θ=33.93°の位置に、Ca(Mn0.94Ru0.06)Oに起因するメインピークが見出された。また、2θ=33.68°の位置に、Ca(Mn0.8Ru0.2)Oに対応する第1の副ピークが見出され、2θ=33.45°の位置に、Ca(Mn0.6Ru0.4)Oに対応する第2の副ピークが見出された。さらに、処理体a3には、角度2θ≒33.0°の位置に、CaMnに対応するブロードなピークが見出された。
なお、処理後に得られた処理体a3は、90℃の12N塩酸中に浸漬させることにより、完全に溶解した。この溶液のICP発光分光分析の結果、溶液中にはRuイオンが含まれていることがわかった。
このように、処理体a3を酸処理することにより、酸中にRuを溶出できることが確認された。
(例21)
以下の方法で、CaMnOを用いて貴金属の回収実験を実施した。
まず、例1と同様の方法により、CaMnO粉末を調製した。ただし、ここでは、CaMnO粉末の平均粒子径は、0.4μmとした。
次に、回収剤であるCaMnO粉末に、被回収成分含有材を添加し、30分間混合した。
被回収成分含有材には、燃料電池用電極触媒(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54)を使用した。この電極触媒の組成は、C:Pt:Ru=46.7:30.0:23.3(重量比)である。回収剤と被回収成分含有材の混合比は、重量比で6:1とした。
次に、得られた混合粉末(「混合粉末a4」と称する)をディスク状に成形して成形体(以下、「成形体a4」と称する)を形成した。この成形体が、被処理体となる。
成形体a4は、直径13mmおよび厚さ0.5mmの寸法を有する。
次に、成形体a4をセラミックス容器(アルミナ製、直方体状、容積:約30cm)に入れ、このセラミックス容器を雰囲気調整が可能な電気炉(NS-3243、西山製作所製)内に設置した。
電気炉内に、200cm/分の流速で純窒素ガスを供給した。この状態で、成形体a4を1000℃まで加熱した。昇温速度は10K/分である。
電気炉の温度が1000℃に達した後、直ちに雰囲気ガスを酸素含有ガスに切り換え、30分間保持した。酸素含有ガスは、79vol%N+21vol%Oとし、200cm/分の流速で供給した。
その後、酸素含有ガスを200cm/分の流速で供給したまま、成形体a4を降温速度10K/分で室温まで冷却した。その後、処理体a4を電気炉から取り出した。
このようにして得られた処理体a4を用いて、X線回折測定を行った。
図11には、室温(25℃)における処理体a4のX線回折結果を示す。
リートベルト解析の結果、処理体a4の室温でのX線回折チャート(図11)には、角度2θ=33.94°の位置にCa(Mn0.94(Pt,Ru)0.06)Oに起因するメインピークが見出された。また、2θ=33.64°の位置に、Ca(Mn0.8(Pt,Ru)0.2)Oに対応する第1の副ピークが見出され、2θ=33.45°の位置にCa(Mn0.6(Pt,Ru)0.4)Oに対応する第2の副ピークが見出された。さらに、処理体a4には、角度2θ≒33.0°の位置にCaMnに対応するブロードなピークが見出された。
なお、処理後に得られた処理体a4は、90℃の12N塩酸中に浸漬させることにより、完全に溶解した。この溶液のICP発光分光分析の結果、溶液中にはPtイオンおよびRuイオンが含まれていることがわかった。
このように、処理体a4を酸処理することにより、酸中にPtおよびRuを溶出できることが確認された。
本発明の被回収成分を回収する方法は、貴金属等の回収技術、貴金属等の可溶化技術として利用することができる。
100 製造装置
110 搬送台
130 第1のチャンバ
132 第1の内部空間
135 第1のシャッター
150 第2のチャンバ
152 第2の内部空間
155 第2のシャッター
165 第3のシャッター
180 被処理体
186 処理体

Claims (9)

  1. 被回収成分を回収する方法であって、
    (a)CaMnOおよび被回収成分含有材を含む被処理体を、不活性ガス雰囲気において、850℃~1000℃から選定される加熱温度に加熱するステップと、
    (b)前記不活性ガス雰囲気を10vol%~30vol%の酸素を含む雰囲気に切り換え、前記被処理体を前記加熱温度に最大2時間保持して処理体を形成するステップと、
    を有し、
    前記被回収成分含有材に含まれる被回収成分は、イリジウム、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウム、およびロジウムからなる群から選定される少なくとも1種を含む、方法。
  2. 前記酸素を含む雰囲気は、大気雰囲気である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記(a)の工程では、前記被処理体は、1時間未満の時間、前記加熱温度に保持される、請求項1または2に記載の方法。
  4. さらに、
    (c)前記(b)で得られた処理体から、前記被回収成分含有材に含まれる被回収成分を分離する工程
    を有する、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
  5. 前記(c)の工程は、前記処理体を酸に溶出させる工程を有する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記被処理体は、粉末または成形体の形態である、請求項1乃至のいずれか一つに記載の方法。
  7. ペロブスカイト型の複合酸化物であって、
    室温(25℃)でのX線回折測定(X線波長0.1541nm)において、
    Ca(Mn1-x)Oで表される化合物のメインピークを有するとともに、
    2θ=33.0°~33.8°の位置に、Ca(Mn1-y)Oで表される化合物のピークを少なくとも一つ有する、複合酸化物:
    ここで、Aは、Ir、Ru、Re、Pt、Pd、およびRhからなる群から選定される少なくとも一つであり、0.01≦x≦0.07であり、0.2≦y≦0.8である。
  8. 処理体を連続的に製造する装置であって、
    CaMnOおよび被回収成分含有材を含む被処理体を搬送する搬送手段と、
    不活性ガス雰囲気において、前記被処理体を850℃~1000℃から選定される加熱温度に加熱する第1のチャンバと、
    10vol%~30vol%の酸素を含む雰囲気において、前記被処理体を前記加熱温度に維持する第2のチャンバと、
    を有し、
    前記被回収成分含有材に含まれる被回収成分は、イリジウム、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウム、およびロジウムからなる群から選定される少なくとも1種を含み
    前記被処理体は、前記搬送手段により、前記第1のチャンバに搬送された後、前記第2のチャンバに搬送される、装置。
  9. 被回収成分含有材は、カーボンを含む、請求項1乃至のいずれか一つに記載の方法。
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