JP7226018B2 - 車両運転支援装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両運転支援装置に係り、特に走行経路を設定する車両運転支援装置に関する。
従来、車両の走行経路生成アルゴリズムとして、ポテンシャル法,スプライン補間関数,Aスター(A*),RRT,ステートラティス法等が知られている。そして、このようなアルゴリズムを用いた車両運転支援装置が提案されている。
ステートラティス法では、走行路に多数のグリッド点からなるグリッド領域が設定され、グリッド点を順次に連結することにより多数の経路候補が設定される。そして、これら経路候補から1つの走行経路が選択され、運転支援に用いられる。例えば、特許文献1には、グリッドマップ上の複数の走行経路を算出し、これらから経路コストに基づいて1つの走行経路を選択する車両運転支援装置が開示されている。
複数の走行経路のうち、経路コストが最も小さい走行経路が運転支援制御のために選択される。経路コストは、種々のファクタによって設定される複数のコストからなる。例えば、経路コストには、車両と障害物(他の車両、構造物等)との衝突をファクタとする衝突コストや、乗員の乗り心地に影響を与える車両の加速度をファクタとする加速度コストが含まれる。
国際公開第2013/051081号パンフレット
衝突と加速度は重要なファクタであるため、従来の装置では、複数のコストのうち衝突コストと加速度コストの重みが比較的大きく設定されていた。そして、従来の装置においては、衝突を確実に回避し、且つ、乗員の乗り心地を良好とするため、複数の走行経路から、衝突コストがゼロであり、加速度コストが小さい走行経路が選択されていた。このため、選択された走行経路では、総じて車両が緩慢な挙動になりがちであった。
しかしながら、緊急時(例えば、運転者の身体に異常が発生した場合)には、比較的大きな加速度を許容して速やかに停車するような走行経路が選択されることが好ましい。また、通常時においても、緩慢な車両挙動の走行経路の選択は回避されるべきである。
さらに、例えば、車両前方への他の車両の急な割り込みの際には、衝突を確実に回避するための走行経路が選択されると、乗員に過大な加速度が掛かる場合があった。したがって、従来、種々のコストに対する重み付けの設定は困難であった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、経路コストを適切に見積もることによって、適切な車両挙動の走行経路を選択可能とする車両運転支援装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、車両の走行経路を設定する車両運転支援装置であって、所定の目標到達位置に停止するための複数の経路候補から1つの経路候補を選択経路として選択するコントローラを備え、コントローラは、車両の位置及び速度を含む複数の経路候補を計算する経路候補計算処理と、複数の経路候補の各経路コストを計算する経路コスト計算処理と、経路コストに基づいて、複数の経路候補から1つの経路候補を選択経路として選択する経路選択処理と、を実行し、コントローラは、経路コスト計算処理において、車両の現在位置における運動エネルギーを基準エネルギーに設定し、目標到達位置を中心として、目標到達位置からの距離が大きくなるほど、エネルギー値が小さくなり、車両の現在位置においてゼロになるように距離エネルギーの分布を設定し、各経路候補に沿って車両の運動エネルギーと距離エネルギーの合計値を計算し、各経路候補に沿った合計値の基準エネルギーに対する変動成分の累積値を経路コストとして計算するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、コントローラは、複数の経路候補上における車両の運動エネルギーと距離エネルギーの和(合計エネルギー)を計算し、この合計エネルギーの基準エネルギーに対する変動成分の累積値を各候補経路コストとして算出する。このため、本発明では、経路コストをエネルギーという1つのファクタに統一することができる。また、本発明では、運動エネルギーの減少分が距離エネルギーに効率的に変換されると、経路コストの増大が抑制される。このため、本発明では、障害物を大きく迂回することにより目標到達位置への移動距離が長くなるような緩慢な候補経路の選択を回避し、適切な車両挙動の走行経路を選択することができる。
本発明において、好ましくは、走行路上に存在する障害物を検出する障害物検出センサを更に備え、コントローラは、経路コスト計算処理において、各経路候補について、車両が障害物と衝突することになる場合には、所定の衝突エネルギーを合計値から差し引く。このように構成された本発明によれば、衝突事象もエネルギーというファクタに組み込むことにより、統一的に経路コストを計算することができる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、選択経路上を走行するように、車両の速度制御及び/又は操舵制御を含む運転制御処理を更に実行する。
本発明において、好ましくは、コントローラは、経路選択処理において、最も小さい経路コストを有する経路候補を選択経路として選択する。
本発明において、好ましくは、コントローラは、障害物を考慮することなく、車両の現在位置から目標到達位置に停止するための車両の位置及び速度を含む目標経路を計算し、目標経路について、目標経路に沿って車両の運動エネルギーと距離エネルギーの合計値を計算し、目標経路に沿った合計値の基準エネルギーに対する変動成分の累積値を目標経路コストとして計算するように構成されており、コントローラは、経路選択処理において、複数の経路候補のうち、目標経路コストとの差が最も小さい経路コストを有する経路候補を選択経路として選択するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、障害物とは無関係に車両が走行すべき目標経路が計算され、この目標経路の経路コスト(目標経路コスト)に最も近い経路コストを有する経路候補が選択される。これにより、本発明では、経路コストは低いが緩慢な運動特性を有するような経路候補が選択されることを回避することができる。
本発明の車両運転支援装置によれば、適切な車両挙動の走行経路を選択することが可能となる。
本発明の実施形態における車両運転支援装置の構成図である。 本発明の実施形態におけるグリッド領域の説明図である。 本発明の実施形態における走行経路の説明図である。 本発明の実施形態における運転支援制御処理のフローチャートである。 本発明の実施形態における走行経路の説明図である。 本発明の実施形態における経路コストの説明図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両運転支援装置について説明する。まず、図1を参照して、車両運転支援装置の構成について説明する。図1は、車両運転支援装置の構成図である。
本実施形態の車両運転支援装置100は、車両1(図2等参照)のための走行経路を算出し、この走行経路を用いた運転支援制御を提供するように構成されている。車両運転支援装置100は、ステートラティス法を用いて複数の経路候補を計算し、これらの中からそれぞれの経路候補の経路コストに基づいて1つの経路候補を選択する。
図1に示すように、車両1に搭載された車両運転支援装置100は、車両制御装置又はコントローラ(ECU)10と、複数のセンサ及びスイッチと、複数の制御装置とを備えている。複数のセンサ及びスイッチには、車載カメラ21,レーダ22,車両の挙動を検出する複数の挙動センサ(車速センサ23,加速度センサ24,ヨーレートセンサ25)及び複数の挙動スイッチ(操舵角センサ26,アクセルセンサ27,ブレーキセンサ28),測位システム29,ナビゲーションシステム30が含まれる。また、複数の制御装置には、エンジン制御装置31,ブレーキ制御装置32,ステアリング制御装置33が含まれる。
また、他のセンサ及びスイッチとして、車両1に対する周辺構造物の距離及び位置を測定する周辺ソナー、車両1の4箇所の角部における周辺構造物の接近を測定するコーナーレーダ、車両1の車室内を撮像するインナーカメラを含んでいてもよい。この場合、ECU10は、これらセンサ及びスイッチから測定信号/データを受信する。
ECU10は、プロセッサ11,プロセッサ11が実行する各種プログラムを記憶するメモリ12,入出力装置等を備えたコントローラ(コンピュータ装置)により構成される。ECU10は、複数のセンサ及びスイッチから受け取った信号に基づき、エンジン制御装置31,ブレーキ制御装置32,ステアリング制御装置33に対して、それぞれエンジン装置,ブレーキ装置,ステアリング装置を適宜に作動させるための要求信号を出力可能に構成されている。
ECU10は、センサ及びスイッチから各種情報を取得し、これら情報に基づいて、車両1が走行する走行路に関する走行路情報を演算する。走行路情報には、走行路自体の形状に関する情報や、走行路上の対象物(又は障害物)に関する情報が含まれる。走行路形状に関する情報には、走行路の形状(直線、カーブ、カーブ曲率)、走行路幅、車線数、各車線幅等が含まれる。対象物に関する情報には、車両1に対する対象物の相対位置及び相対速度、対象物の属性(種類,移動方向)等が含まれる。
また、ECU10は、走行路情報に基づいて走行路上に仮想のグリッド領域(図2参照)を設定する。このグリッド領域は、複数のグリッド点を有する。各グリッド点により、走行路上の位置が特定される。
ECU10は、グリッド領域内の複数のグリッド点を用いた経路探索により複数の経路候補を演算する。本実施形態では、経路探索方法としてステートラティス法を採用している。ステートラティス法では、あるグリッド点から車両1の進行方向前方の任意のグリッド点へ経路が枝分かれしていく。よって、各経路候補は、複数のグリッド点を順次に通過するように設定される。各経路候補は、各グリッド点を通過する時間を表す時間情報,各グリッド点での速度・加速度等に関する速度情報,その他車両運動に関する情報等も含む。
ECU10は、複数の経路候補から経路コストに基づいて1つの走行経路を選択する。そして、ECU10は、選択した走行経路に沿って車両1を走行させるように、車両制御装置31,32,33に対して、要求信号を出力する。
車載カメラ21は、車両1の周囲を撮像し、撮像した画像データを出力する。ECU10は、画像データに基づいて対象物(例えば、車両、歩行者、道路、区画線等)を特定する。なお、ECU10は、交通インフラや車々間通信等によって、車載通信機器を介して外部から対象物の情報を取得してもよい。これにより、対象物の種類,相対位置,移動方向等が特定される。車載カメラ21は、障害物検知センサである。
レーダ(ミリ波レーダ)22は、対象物(特に、他の走行車両、駐車車両、歩行者等)の位置及び速度を測定する測定装置であり、車両1の周囲へ向けて電波(送信波)を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1と対象物との間の距離(例えば、車間距離)や車両1に対する対象物の相対速度を測定する。なお、本実施形態において、レーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定するように構成してもよい。また、複数のセンサを用いて、位置及び速度測定装置を構成してもよい。レーダ22は、障害物検知センサである。
車速センサ23は、車両1の絶対速度を検出する。
加速度センサ24は、車両1の加速度(前後方向の縦加減速度、横方向の横加速度)を検出する。
ヨーレートセンサ25は、車両1のヨーレートを検出する。
操舵角センサ26は、車両1のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。
アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。
ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
測位システム29は、GPSシステム及び/又はジャイロシステムであり、車両1の位置(現在車両位置情報)を検出する。
ナビゲーションシステム30は、内部に地図情報を格納しており、ECU10へ地図情報を提供することができる。ECU10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両1の周囲(特に、進行方向前方)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物等を特定する。地図情報は、ECU10内に格納されていてもよい。
エンジン制御装置31は、車両1のエンジンを制御するコントローラ(コンピュータ装置)である。ECU10は、車両1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御装置31に対して、エンジン出力の変更を要求するエンジン出力変更要求信号を出力する。本実施形態では、エンジンは動力駆動源であり、内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン等)、電気モータを含む。
ブレーキ制御装置32は、車両1のブレーキ装置を制御するためのコントローラ(コンピュータ装置)である。ECU10は、車両1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御装置32に対して、車両1への制動力の発生を要求するブレーキ要求信号を出力する。
ステアリング制御装置33は、車両1のステアリング装置を制御するコントローラ(コンピュータ装置)である。ECU10は、車両1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御装置33に対して、操舵方向の変更を要求する操舵方向変更要求信号を出力する。各制御装置のコンピュータ装置は、メモリ内のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種の処理を行うように構成されている。
次に、図2~図4を参照して、本実施形態による運転支援制御処理について説明する。図2はグリッド領域の説明図、図3は走行経路の説明図、図4は運転支援制御処理のフローチャートである。
図4の運転支援制御処理は、所定時間毎に繰り返し実行される(例えば、0.05~0.2秒毎)。車両1は、この運転支援制御処理により計算された走行経路に沿って走行することが可能である。図2及び図3では、車両1が走行する走行路5上には他の車両3が停止しており、車両1が進路変更しない場合には、車両1は車両3と衝突する可能性がある。
運転支援制御処理が開始されると、ECU10は、複数のセンサ及びスイッチから各種情報を取得し、走行路情報を演算する情報取得処理を実行する(ステップS11)。
次に、図2に示すように、ECU10は、走行路情報に基づいて、グリッド点設定処理を実行する(ステップS12)。グリッド点設定処理において、ECU10は、先ず走行路5の形状(即ち、走行路5の延びる方向,走行路幅等)を特定し、走行路5上にグリッド点Gn(n=1,2,・・・N)を含むグリッド領域40を設定する。
グリッド領域40は、走行路5に沿って車両1の周囲から車両1の所定距離前方まで延びる。この距離(縦方向長さ)Lは、車両1の現在の車速に基づいて計算される。本実施形態では、距離Lは、現在の車速(V)で所定の固定時間t(例えば、3秒)に走行すると予想される距離である(L=V×t)。しかしながら、距離Lは、所定の固定距離(例えば、100m)であってもよいし、車速(及び加速度)の関数であってもよい。また、グリッド領域40の幅Wは、走行路5の幅に設定される。
グリッド領域40は、走行路5の延伸方向Xと幅方向(横方向)Yとに沿ってそれぞれ延びる複数のグリッド線によって多数の矩形のグリッド区画に分割される。X方向とY方向のグリッド線の交点がグリッド点Gnである。グリッド点GnのX方向の間隔、及びY方向の間隔は、それぞれ固定値に設定される。本実施形態では、例えば、X方向のグリッド間隔は10m、Y方向のグリッド間隔は0.875mである。しかしながら、グリッド間隔を、車速等に応じて可変値としてもよい。
なお、図2では、走行路5が直線区間であるため、グリッド領域40及びグリッド区画が矩形状に設定されている。しかしながら、本実施形態では、走行路の延伸方向がX方法、幅方向がY方向に設定されるため、走行路が曲線区間を含む場合には、グリッド領域及びグリッド区画は矩形にはならない。なお、車両1の運動特性等を考慮して、車両1が通過不能なグリッド点Gnを除去してもよい。
次に、ECU10は、目標経路演算処理を実行する(ステップS13)。この目標経路演算処理において、ECU10は、まず目標経路を計算する目標経路計算処理を実行する(ステップS13a)。目標経路の計算において、ECU10は、図3に示すように、外部信号に応じて、グリッド領域40内の所定のグリッド点GTを目標到達位置PEに設定すると共に、目標到達位置PE(GT)での目標速度を設定する。外部信号は、例えば、ナビゲーションシステム30から送信される目的地(パーキングエリア、待避所等)への誘導指示信号である。なお、本実施形態において、障害物(車両3)を考慮することなく目標経路RTが計算される。
また、外部信号を受信していない場合は、目標到達位置PEは走行路5に沿って車両1の前方位置に設定され、目標速度は現在速度に設定される。よって、この場合、車両1が現在の挙動を維持した状態(一定速度)で走行路5を走行するように目標経路RTが設定される。
そして、ECU10は、車両1の現在位置PSと目標到達位置PEとの間を、メモリ12に記憶された所定の経路曲線パターン(Y=F(X))でフィッティングすることにより、目標経路RTの位置情報を計算する。F(X)は、例えば5次関数で表現される。また、ECU10は、現在位置PSでの現在速度が目標到達位置PEにおいて目標速度まで変化するように、メモリ12に記憶された所定の速度変化パターンに適合するように、目標経路RT上の速度変化プロファイルを計算する。例えば、速度変化パターンが等加速度で速度変化するパターンである場合には、車両1の速度は、現在速度から目標速度まで線形的に変化する。
また、ECU10は、目標経路RT上に所定の間隔で複数のサンプリング点SPを設定し、各サンプリング点SPでの速度情報を計算する。隣り合うサンプリング点SPの間隔は、X方向において等間隔(例えば、0.2m毎)になるように設定される。なお、サンプリング点SPを目標経路RTに沿って等間隔に設定してもよい。
また、目標経路演算処理において、ECU10は、目標経路RTの経路コストを計算する目標経路コスト計算処理を実行する(ステップS13b)。本実施形態では、目標経路RTの経路コストは、車両1の運動エネルギーEkと位置エネルギーEpに基づいて計算される。
位置エネルギーEpは、目標到達位置PEから車両1までの間の距離rに応じて設定される。位置エネルギーEpは、車両1が現在位置PS(始点)から目標到達位置PEに対して近づくにつれて増大していく。すなわち、位置エネルギーEpは、目標到達位置PEと車両1との間の距離rが小さくなるほど増大し、目標到達位置PEにおいて最大となる。このため、ECU10は、図3に示すように、目標到達位置PEを中心として、位置エネルギーEpを規定する位置エネルギー分布50を設定する。図3には、同心円状の複数の等エネルギー線が例示されている。
本実施形態では、位置エネルギー分布50において、位置エネルギーEpは、現在位置PSから目標到達位置PEに近づいた距離(=L0-r)の2乗に比例するように設定される(Ep=1/2×k×(L0-r)2)。よって、現在位置PSで(r=L0)、位置エネルギーEpはゼロであり(Ep=0)、目標到達位置PEで(r=0)、位置エネルギーEpは最大値となる(Ep=1/2×k×L0 2)。
なお、kは位置エネルギーの係数である。係数kは、任意の正の数値に設定することができる。例えば、係数kは、車両1が目標到達位置PEに位置するとき(r=0)、位置エネルギーEpが所定の基準エネルギーE0に等しくなるように設定することができる(k=2E0/L0 2)。
また、本実施形態では、位置エネルギーEpが「L0-r」の2乗に比例するように設定されているが、これに限らず、例えば、位置エネルギーEpが「L0-r」に比例するように設定されてもよいし、「r」に反比例するように設定されてもよい。
運動エネルギーEkは、車両1の質量(メモリ12内に記憶された規定値M)と車両1の速度Vの2乗に比例する値である(Ek=1/2×M×V2)。なお、本実施形態では、基準エネルギーE0は、現在位置Ps(V=V0とする)における運動エネルギーEkに設定される(E0=1/2×M×V0 2)。
ECU10は、各サンプリング点SP(現在位置PS、目標到達位置PEを含む)において、運動エネルギーEkと位置エネルギーEpの合計値である合計エネルギーEを計算する(E=Ek+Ep)。そして、ECU10は、目標経路RTに沿って、現在位置PSから目標到達位置PEまで、合計エネルギーEの変動成分(E-E0)の累積値を経路コスト(目標経路コスト)ETとして算出する。すなわち、本実施形態では、経路コストETは、目標経路RT上のすべてのサンプリング点SPにおける合計エネルギーEと基準エネルギーE0との差分(絶対値)の合計値である(ET=Σ(|E-E0|))。
なお、目標経路は、外部信号による要求に基づいて設定される理想的な経路である。すなわち、目標経路は、同じ目標到達位置に到達する多数の経路のうち、最適な運動特性を有する経路として設定される。したがって、目標経路は、必ずしも目標経路コストETがゼロ又は最小値となる経路ではない。
次に、ECU10は、経路候補演算処理を実行する(ステップS14)。この経路候補演算処理において、ECU10は、まず複数の経路候補RCm(m=1,2,3・・・)を計算する経路候補計算処理を実行する(ステップS14a)。この処理は、従前のステートラティス法を用いた経路候補の計算と同様である。
経路候補の計算の概略を説明する。ECU10は、車両1の現在位置PS(始点)からグリッド領域40内の各グリッド点Gn(終点)までの経路候補を作成する。また、ECU10は、終点における速度情報を設定する。グリッド領域40において、車両1から最も遠い端部に位置する複数のグリッド点Gnに対しては、例えば、現在速度又は指定速度で走行するように速度情報が設定され、最遠端部以外の複数のグリッド点Gnに対しては、速度ゼロの速度情報が設定される。
始点と終点は、1又は複数のグリッド点Gnを介して、又はグリッド点Gnを介さないで、連結される。ECU10は、各経路候補について、目標経路と同様に、グリッド点間を経路曲線パターンでフィッティングすることにより位置情報を計算し、速度変化パターンに適合するように速度変化プロファイルを計算する。さらに、ECU10は、各経路候補について、目標経路と同様に、サンプリング点SPを設定し、各サンプリング点SPでの速度情報を計算する。図3には、多数の経路候補のうち、2つの経路候補RC1,RC2のみが示されている。
図3において、経路候補RC1,RC2は、始点Ps(現在位置)から、目標経路RTと同じ目標到達位置PE(グリッド点GT)までの経路である。なお、経路候補RCmは、障害物を考慮して計算されてもよい。このため、経路候補RCmは、経路候補RC1,RC2のような障害物(車両3)を回避して目標到達位置PEに到達する経路に限らず、障害物との衝突を回避するために障害物付近で停止する経路や、障害物と衝突して停止するような経路も含まれ得る。
また、経路候補演算処理において、ECU10は、得られた経路候補RCmの経路コストを計算する候補経路コスト計算処理を実行する(ステップS14b)。本実施形態では、各経路候補RCmの経路コストを、目標経路RTの経路コストと同様に、運動エネルギーEk,位置エネルギーEpに基づいて計算する。
なお、各経路候補RCmの経路コストの計算において、車両1と障害物との衝突による衝突エネルギーEcを考慮してもよい。この場合、衝突エネルギーEcは、衝突時の運動エネルギーEkの所定の割合Z(0<Z<1)の値に設定することができる(Ec=Ek×Z)。例えば、Zを「0.95」としてよい(Z=0.95)。衝突エネルギーEcは、車両1が衝突により失うエネルギーである。
したがって、ECU10は、各サンプリング点SPについて、車両1の運動エネルギーEk,位置エネルギーEpを計算し、さらにこれらの合計値である合計エネルギーEを計算する(E=Ek+Ep)。また、衝突を考慮する場合は、衝突エネルギーEcが差し引かれる(E=Ek+Ep-Ec)。そして、ECU10は、各経路候補RCmに沿って、現在位置PSから目標到達位置PEまで、合計エネルギーEの変動成分(E-E0)の累積値を経路コスト(候補経路コスト)EPmとして算出する(EPm=Σ(|E-E0|))。
次に、ECU10は、経路選択処理を実行する(ステップS15)。この経路選択処理において、ECU10は、すべての経路候補RCmのうち、候補経路コストEPmと目標経路コストETとの差が最も小さい経路候補RCmを選択経路として選択する。
なお、最小の候補経路コストを有する経路候補が、必ずしも最良の運動特性を有する経路ではない。したがって、本実施形態では、経路選択処理において、最小の候補経路コストを有する経路候補が選択されるのではなく、目標経路コストに最も近い候補経路コストを有する経路候補が選択される。しかしながら、本実施形態の改変例として、経路選択処理において、最小の候補経路コストを有する経路候補を選択するように構成してもよい。
次に、ECU10は、車両1が選択経路上を走行するように運転制御処理を実行し(ステップS16)、処理を終了する。ECU10は、運転制御処理において、装置31,32,33に対してそれぞれ要求信号を出力する。
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の運転支援制御処理の動作の概略について説明する。図5は走行経路の説明図、図6は経路コストの説明図である。
図5Aは、走行路5上を走行中の車両1に対して、待避所6内へ緊急停止の要求(外部信号)をECU10が受けた場合の経路を示している。この例では、目標到達位置PE0が待避所6内に設定され、目標到達位置PE0での目標速度がゼロに設定され、目標経路RTが計算される。現在位置PSと目標到達位置PE0の直線距離はL0である。そして、この例では、障害物(例えば、車両3)が存在しないので、目標経路RTと同一の経路候補RCAが選択経路として選択される。
また、図6Aは、図5Aの例における合計エネルギーEの変化を示す。この例では、車両1が候補経路RCA(=RT)を走行したとき、合計エネルギーEは、ほぼ一定に維持される。このため、候補経路RCAの候補経路コストEPA(=目標経路コストET)は、ほぼゼロである(EPA=ET≒0)。すなわち、図5Aの例では、車両1の速度低下による運動エネルギーEkの減少分が、位置エネルギーEpに変換されている。
これに対して、図5B~図5Dは、車両1の前方に障害物(停車中の車両3)が存在する状況で、待避所6内への緊急停止の要求があった場合の候補経路RCB~RCEを示している。図5Bでは、候補経路RCBは、車両1が比較的速度を低下させることなく車両3の側方を通過して、待避所6内の目標到達位置PE0に到達するように設定されている。図6Bは、図5Bの例における合計エネルギーEの変化を示す。この例では、障害物を回避するために、目標経路RTに比べて余分な加減速動作が行われることにより、速度変動が大きくなるため、候補経路RCB上の各位置において、運動エネルギーEkの減少分が位置エネルギーEpに等しく置換されない。このため、候補経路RCBの候補経路コストEPB(図6Bの斜線部を参照)は、ある大きさを有する(EPB>ET)。なお、図6では、理解の容易のため、横軸を目標到達位置PE0からの距離としている。このため、図6の斜線部の面積は、経路コストの指標となるが、正確に経路コストを示すものではない。
また、図5Cでは、候補経路RCCは、車両1が車両3を大きく迂回して、待避所6内の目標到達位置PE0に到達するように設定されている。図6Cは、図5Cの例における合計エネルギーEの変化を示す。この例では、図5Bの例よりも大きな加減速動作が行われることにより、速度変動がより大きくなる。また、車両1が実質的に等エネルギー線に沿って移動する距離が長くなるので、運動エネルギーが位置エネルギーにほとんど変換されない距離が増加する。このため、候補経路RCCの候補経路コストEPC(図6Cの斜線部を参照)は、EPBよりも大きな値を有する(EPC>EPB>ET)。
また、図5Dでは、候補経路RCDは、車両1が本来の目標到達位置PE0に到達することなく、車両3の後方位置(変更後の目標到達位置PE1)に急停止するように設定されている。図6Dは、図5Dの例における合計エネルギーEの変化を示す。この例では、急減速動作が行われることにより、急速に運動エネルギーEkが失われるが、車両1は本来の目標到達位置PE0に到達しないので、位置エネルギーEpはほとんど増加しない。このため、候補経路RCDの候補経路コストEPD(図6Dの斜線部を参照)は、EPCよりも更に大きな値を有する(EPD>EPC>EPB>ET)。
また、図5Eでは、候補経路RCEは、車両1が一定速度で車両3に衝突し、本来の目標到達位置PE0に到達する前に、車両3の前方位置(変更後の目標到達位置PE2)に停止するように設定されている。図6Eは、図5Eの例における合計エネルギーEの変化を示す。この例では、衝突までは速度が一定に維持されるため、合計エネルギーEは増加する。しかしながら、衝突により運動エネルギーEkが瞬間的に失われる(さらに、衝突エネルギーEcが失われる)。さらに、車両1は本来の目標到達位置PE0に到達しないので、位置エネルギーEpはほとんど増加しない。このため、候補経路RCEの候補経路コストEPE(図6Eの斜線部を参照)は、EPCよりも更に大きな値を有する(EPE>EPC>EPB>ET)。
なお、図5D及び図5Eのように、車両1が本来の目標到達位置PE0に到達しない候補経路においては、候補経路コストを所定値EPADDだけ加算した値としてもよい。例えば、車両1が変更後の目標到達位置(PE1,PE2)から本来の目標到達位置PE0まで移動したと仮定して、位置エネルギーEpと基準エネルギーE0との差分の累積値を所定値EPADDとしてもよい。
したがって、経路候補演算処理(S14)において、図5B~図5Eの候補経路RCB~RCEのみが計算された場合には、経路選択処理(S15)において、目標経路コストETと最も差が小さい経路コストEPBを有する候補経路RCB(図5B)が選択経路として選択されることになる。
次に、本実施形態の車両運転支援装置の作用について説明する。
本実施形態において、車両1の走行経路を設定する車両運転支援装置100は、所定の目標到達位置PEへの複数の経路候補RCmから1つの経路候補を選択経路として選択するコントローラ(ECU10)を備える。コントローラは、車両1の位置及び速度を含む複数の経路候補RCmを計算する経路候補計算処理(S14a)と、複数の経路候補Rcmの各候補経路コストEPmを計算する経路コスト計算処理(S14b)と、候補経路コストEPmに基づいて、複数の経路候補RCmから1つの経路候補を選択経路として選択する経路選択処理(S15)と、を実行する。コントローラは、経路コスト計算処理(S14b)において、目標到達位置PEを中心として、目標到達位置PEからの距離rが大きくなるほど、エネルギー値が小さくなる位置エネルギーEpの分布50を設定し、各経路候補RCmに沿って車両1の運動エネルギーEkと位置エネルギーEpの合計値Eを計算し、各経路候補RCmに沿った合計値Eの変動成分の累積値を候補経路コストEPmとして計算するように構成されている。
このように本実施形態では、コントローラ(ECU10)は、複数の経路候補RCm上における車両1の運動エネルギーEkと位置エネルギーEpの和(合計エネルギーE)を計算し、この合計エネルギーEの変動成分の累積値を各候補経路コストEPmとして算出する。このため、本実施形態では、経路コストをエネルギーという1つのファクタに統一することができる。また、本実施形態では、運動エネルギーの減少分が位置エネルギーに効率的に変換されると、経路コストの増大が抑制される。このため、本実施形態では、障害物を大きく迂回することにより目標到達位置PEへの移動距離が長くなるような緩慢な候補経路の選択を回避することができる。
また、本実施形態の車両運転支援装置100は、走行路5上に存在する障害物(例えば、車両4)を検出する障害物検出センサ(車載カメラ21,レーダ22)を更に備え、コントローラ(ECU10)は、経路コスト計算処理(S14b)において、各経路候補RCmについて、車両1が障害物と衝突することになる場合には、所定の衝突エネルギーEcを合計値Eから差し引く。このように本実施形態では、衝突事象もエネルギーというファクタに組み込むことにより、統一的に経路コストを計算することができる。
また、本実施形態において、コントローラ(ECU10)は、選択経路上を走行するように、車両1の速度制御及び/又は操舵制御を含む運転制御処理(S16)を更に実行する。具体的には、ECU10は、エンジン制御装置31,ブレーキ制御装置32を介して車両1のエンジン,ブレーキ装置へ要求信号を出力して速度制御を実行すると共に、ステアリング制御装置33を介してステアリング装置へ要求信号を出力して操舵制御を実行する。
また、本実施形態において、コントローラ(ECU10)は、経路選択処理(S15)において、最も小さい候補経路コストEPmを有する経路候補RCmを選択経路として選択する。
また、本実施形態において、コントローラ(ECU10)は、障害物(車両3)を考慮することなく、車両1の現在位置PSから目標到達位置PEまでの車両1の位置及び速度を含む目標経路RTを計算し、目標経路RTについて、目標経路RTに沿って車両1の運動エネルギーEkと位置エネルギーEpの合計値Eを計算し、目標経路RTに沿った合計値ETの変動成分の累積値を目標経路コストETとして計算するように構成されており、コントローラは、経路選択処理(S15)において、複数の経路候補RCmのうち、目標経路コストETとの差が最も小さい候補経路コストEPmを有する経路候補RCmを選択経路として選択するように構成されている。
このように、本実施形態では、障害物とは無関係に車両1が走行すべき目標経路が計算され、この目標経路の経路コスト(目標経路コストET)に最も近い経路コストを有する経路候補が選択される。これにより、本実施形態では、経路コストは低いが緩慢な運動特性を有するような経路候補が選択されることを回避し、適切な車両挙動の走行経路を選択することができる。
1 車両
3 車両(障害物)
5 走行路
10 ECU(コントローラ)
11 プロセッサ
12 メモリ
21 車載カメラ
22 レーダ
40 グリッド領域
50 位置エネルギーの分布
100 車両運転支援装置
EP 候補経路コスト
ET 目標経路コスト
Ek 運動エネルギー
Ep 位置エネルギー
Ec 衝突エネルギー
RC 経路候補
RT 目標経路

Claims (6)

  1. 車両の走行経路を設定する車両運転支援装置であって、
    所定の目標到達位置に停止するための複数の経路候補から1つの経路候補を選択経路として選択するコントローラを備え、前記コントローラは、
    前記車両の位置及び速度を含む前記複数の経路候補を計算する経路候補計算処理と、
    前記複数の経路候補の各経路コストを計算する経路コスト計算処理と、
    前記経路コストに基づいて、前記複数の経路候補から1つの経路候補を前記選択経路として選択する経路選択処理と、を実行し、
    前記コントローラは、前記経路コスト計算処理において、
    前記車両の現在位置における運動エネルギーを基準エネルギーに設定し、
    前記目標到達位置を中心として、前記目標到達位置からの距離が大きくなるほど、エネルギー値が小さくなり、前記車両の現在位置においてゼロになるように距離エネルギーの分布を設定し、
    各経路候補に沿って前記車両の運動エネルギーと距離エネルギーの合計値を計算し、各経路候補に沿った前記合計値の前記基準エネルギーに対する変動成分の累積値を前記経路コストとして計算するように構成されている、車両運転支援装置。
  2. 走行路上に存在する障害物を検出する障害物検出センサを更に備え、
    前記コントローラは、前記経路コスト計算処理において、各経路候補について、前記車両が前記障害物と衝突することになる場合には、所定の衝突エネルギーを前記合計値から差し引く、請求項1に記載の車両運転支援装置。
  3. 前記コントローラは、前記選択経路上を走行するように、前記車両の速度制御及び/又は操舵制御を含む運転制御処理を更に実行する、請求項1に記載の車両運転支援装置。
  4. 前記コントローラは、前記経路選択処理において、最も小さい前記経路コストを有する経路候補を前記選択経路として選択する、請求項1に記載の車両運転支援装置。
  5. 前記コントローラは、
    障害物を考慮することなく、前記車両の現在位置から前記目標到達位置に停止するための前記車両の位置及び速度を含む目標経路を計算し、
    前記目標経路について、前記目標経路に沿って前記車両の運動エネルギーと距離エネルギーの合計値を計算し、前記目標経路に沿った前記合計値の前記基準エネルギーに対する変動成分の累積値を目標経路コストとして計算するように構成されており、
    前記コントローラは、前記経路選択処理において、
    前記複数の経路候補のうち、前記目標経路コストとの差が最も小さい前記経路コストを有する経路候補を前記選択経路として選択するように構成されている、請求項1に記載の車両運転支援装置。
  6. 前記距離エネルギーは、前記目標到達位置において、前記基準エネルギーと一致するように設定される、請求項1に記載の車両運転支援装置。
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