JP7225761B2 - 金属濾過フィルター - Google Patents

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本発明は、主に熱可塑性樹脂を溶融紡糸する繊維の製造工程に用いられる濾過フィルターに関するものである。さらに詳しくは、溶融紡糸用パック(以下パックと記す)内で溶融ポリマーを濾過するために使用される金属濾過フィルターに関するものである。
溶融紡糸に用いられる従来の金属濾過フィルターとしては、図1に示すような構造のもが一般的である。この金属濾過フィルターは、金属繊維がポーラス状に焼結された焼結金属繊維フィルター(1)と、この焼結金属繊維フィルターの両面または片方に重ねられた金網(2)とを有し、これら焼結金属繊維フィルターと金網とが、周囲に配設した金属リム(3)を介して一体的に形成された構成である。また、図2に示すような一般に用いられるパックは、ボデー(4)の中に下部から順に口金(5)、濾層ブロック(6)、ポリマー流入ブロック(7)を積層し、ロッキングリング(8)で固定するように構成されている。口金(5)と濾層ブロック(6)の間および濾層ブロック(6)とポリマー流入ブロック(7)の間には、それぞれガスケット(9)が備わっている。また、濾層ブロック(6)の内側には、下部から順に周囲に金属リム(3)を配設した金属濾過フィルター(10)、細粒砂等の濾材(11)が置かれている。
複数のポリマーを同時に溶融紡糸する場合(以下複合紡糸と記す)に用いられるパックは、図3に示すような構成が一般的であり、ボデー(4)の中に下部から順に口金(5)、下部濾層ブロック(12)、通路ブロック(13)、上部濾層ブロック(14)、ポリマー流入ブロック(7)を積層し、ロッキングリング(8)で固定するように構成されている。口金(5)と下部濾層ブロック(12)の間および下部濾層ブロック(12)と通路ブロック(13)の間、さらに通路ブロック(13)と上部濾層ブロック(14)の間および上部濾層ブロック(14)とポリマー流入ブロック(7)の間には、それぞれガスケット(9)が備わっている。また、下部濾層ブロック(12)と上部濾層ブロック(14)の内側には、下部から順に金属濾過フィルター(10)、細粒砂等の濾材(11)が置かれている。
一般に熱可塑性樹脂を溶融紡糸する繊維の製造に関しては、原料であるチップを押出機で溶融混練し原料ポリマーとし、配管を経由してパックに導く。ポリマー入り口(15)から導入されたポリマーは異物を除去するための金属濾過フィルター・濾材から成る濾層を通り、ポリマーを口金の吐出孔から紡糸して繊維を得る。
しかし、従来の金属濾過フィルターと上記構成のパックは、紡糸時に金属リムの空隙部分にポリマーが滞留し易く、この滞留したポリマーが高温下で長時間保持されると、化学分解あるいは熱変性が起こってガスの発生や粘度変化を生じる。このようにガスを発生したり、粘度変化したポリマーが経時的に蓄積されてパック内を流れる正常なポリマーに少量ずつ混入すると、紡出糸に強度低下等の物性変化を起し、糸切れ(単糸切れ)が生じ易くなったり、糸条の品質ムラが生じるという問題があった。
金属リムで生じるポリマーの異常滞留を解消し、高品質で良好な製糸性が得られる金属濾過フィルターに関しては従来から種々の検討がなされてきている。
例えば、特許文献1には、金属濾過フィルター外周縁部の全周を金属リムを介することなく耐圧板(図4の16)とシールリング(図4の17)間で押圧挟持し、その挟持された部分の厚みを挟持していない部分の厚みよりも薄くなるように圧潰状態にすることで、金属リムを設けた場合のような空隙部分を排除し、空隙部分に起因したポリマーの異常滞留の発生を解消するパックが開示されている。
特許文献2には、パック本体内部にノズル、フィルター、濾過部材、トップインサート等を収納した後、プレスにてトップインサートを上方から押し付けることにより金属濾過フィルターを変形して、前記パック本体内部に強制的なシール力を発生させることで、ポリマーの滞留部がなく、劣化ポリマーを生じさせないパック構造が開示されている。
特許文献3には、複合紡糸パックの構成と通路ブロックの位置決めをする方法が開示されている。
近年、化学繊維の高度化要求が益々高くなってきており、複合紡糸によって製造される複合繊維が益々要求されてきている。そのため、複合紡糸の製糸性向上と、品質の均一化が強く待ち望まれている。
特開平7-90711号公報 特開2000-273715号公報 特開2009-197354号公報
特許文献1および特許文献2のパックの構成は、1つのポリマーを溶融紡糸する場合の構成が開示されているのみであり、複数のポリマーを同時に溶融紡糸する場合のパック構成および金属濾過フィルターの構成については開示されていないばかりか、複合紡糸に適したパック構成および金属濾過フィルターの構成に応用することは不可能である。
特許文献3の複合紡糸パックは、金属濾過フィルターの周囲に配設した金属リムを介して形成された構成であり、金属リムの空隙部分にポリマーが滞留し易い構造となっている。
本発明は、前記従来技術の課題を解決し、複合紡糸パックの金属濾過フィルターにおいて、ポリマーの異常滞留の発生と劣化に起因する糸切れ、さらには品質ムラの発生を低減せしめる。
すなわち、本発明の課題は、以下の構成により解決できる。
1.金属繊維または金属線からなるフィルターにおいて、シール部と濾過部から構成され、シール部に、当該濾過部を通過しない溶融物が通過するための孔が1つまたは複数あいていることを特徴とする金属濾過フィルター。
2.前記シール部の空隙率が6~25%であることを特徴とする前記1.に記載の金属濾過フィルター。
本発明の金属濾過フィルターは、金属繊維または金属線からなるフィルターであって、シール部と濾過部から構成され、該シール部に、当該濾過部を通過しない溶融物が通過するための孔が1つまたは複数あいているため、フィルターの周囲に配設された金属リムを介することなくパック構成部材の間をシールすることができ、更に複合流路を構成することができ、複合紡糸においてポリマーの異常滞留の発生と劣化に起因する糸切れ、さらには品質ムラの発生を低減することができる。
また、本発明は溶融紡糸に限らず、複数の溶融物を流動させる複合流路を構成する場合において、その分野を問わず同様の効果を得ることができる。
図1は、従来の紡糸用パックに用いられる金属濾過フィルターの模式図である。 図2は、従来の紡糸パックにおける概略正面図である。 図3は、従来の複合紡糸パックにおける概略正断面図である。 図4は、特許文献1に記載の紡糸パックにおける概略正面図である。 図5は、本発明の金属濾過フィルターにおける、濾過部、シール部、ポリマー通過孔、ピン穴を説明するための模式図である。 図6は、本発明の金属濾過フィルターを、複数のポリマー流路を有する複合流路ブロックに使用する場合の一実施態様例を示す概略正面図である。 図7は、本発明の金属濾過フィルターを、複数のポリマーを同時に溶融紡糸するパック構成に使用する場合の一実施態様例を示す概略正面図である。
次に、本発明の実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
図5は本発明の金属濾過フィルターにおける、濾過部、シール部、ポリマー通過孔、ピン穴を説明するための上面模式図である。
図5において、18はシール部、19は濾過部、20はポリマー通過孔、21はピン穴孔である。シール部18と濾過部19は連続した金属線または金属繊維からなるフィルター材から構成される事が好ましい。また、片面、または両面に金属線または金属繊維からなるフィルターの脱落防止用の金網が配されていてもよい。またピン穴孔21は、フィルターの位置決めを行うための手段であり、その必要性に応じて、必ずしも設ける必要はない。さらには、ピン穴以外のフィルター位置決め方法を採用してもよい。
図6は本発明の金属濾過フィルターを、複数のポリマー流路を有する複合流路ブロックに使用する場合の一実施態様例を示す概略図である。
図6において、10は金属濾過フィルター、22はポリマー流路ブロック、23は主ポリマー流路、24は副ポリマー流路である。
次に本発明の金属濾過フィルターの製作手順における代表例を説明する。
使用する箇所に適した外形に切り出されたステンレス材やハステロイ、インコネル等の金属線または金属繊維からなるフィルターは、ポリマー通過孔と位置決め用のピン穴孔を、打ち抜きなどによる方法で、穴開けする。ここで、ポリマー流路ブロックによって挟持される箇所、つまりシール部をあらかじめ金型により押圧しておくことが好ましい。その際、シール部の空隙率が6~25%になることが好ましい。あらかじめシール部の空隙率を6~25%にすることで、ポリマーがその空隙に入り込むことを防ぎ、ポリマーの異常滞留をより低減することができる。更に好ましくはシール部の空隙率が6~16%になることが好ましい。また、あらかじめ押圧することで、組立時の圧力によるポリマー通過孔の変形を最小限に留めることができ、組立時に生じるポリマー流路の僅かな段差に生じる異常滞留を最小限に抑えることができる。なお、濾過部はポリマーの濾過性と濾圧の観点から、押圧することは好ましくなく、濾過部の空隙率が50~90%であることが好ましい。
使用する金属線または金属繊維からなるフィルターとしては、空隙率が50~90%で、濾過精度が5~50μmのものが好ましく、また、片面、または両面に配する金網は、20~325メッシュのものを好ましく用いることができる。更に好ましくは、フィルターの空隙率60~89%、濾過精度5~20μmであり、金網は20~150メッシュが好ましい。
ここで、フィルターの空隙率(%)は、焼結した金属線あるいは金属繊維の見かけの密度をρa、真の金属密度をρとすると、下記の式で定義される。
(1-ρa/ρ)×100 。
また、フィルターの濾過精度は、JIS規格B8356(1976)によりフィルターメディアを透過した最大ガラスビーズ粒径より測定されるものである。
続いて、図6におけるポリマーの流れを説明する。ポリマー流路ブロックに供給された2つの溶融ポリマー(以下主ポリマーと副ポリマー)はそれぞれ、主ポリマーは金属濾過フィルターの濾過部を通過し、副ポリマーは金属濾過フィルターのシール部に開けられたポリマー通過孔を通過する。このとき、それぞれのポリマーはシール部に進入することができないため、ポリマー流路ブロックの外に漏れ出すことも無く、また、主ポリマーと副ポリマーが行き来して混ざり合うこともない。さらに、ポリマー流路に金属リムなどといった空隙が構成されないことから、異常滞留の恐れがない。
図7は本発明の金属濾過フィルターを、複数のポリマーを同時に溶融紡糸するパック構成に使用する場合の一実施態様例を示す模式図である。
図7において、4はボデー、5は口金、25は下部耐圧板、26は下部シールリング、13は通路ブロック、27は上部耐圧板、28は上部シールリング、7はポリマー流入ブロック、8はロッキングリング、9はガスケット、10は金属濾過フィルター、11は濾材である。
本発明で適用する熱可塑性樹脂は、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンナフタレート、などに代表されるポリエステル、あるいはナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド、ポリフェニレンサルファイドなどを例示することができる。その中でも特に、本発明の金属濾過フィルターは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維とナイロン6、ナイロン66を主成分とするナイロン繊維の製造において良好な結果が得られる。前記熱可塑性樹脂は本発明の効果を損なわない限り共重合成分を加えてもよい。ポリエステル系の熱可塑性樹脂の場合には共重合成分の例として、酸成分にはイソフタル酸、フタル酸、ジブロモテレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルキシエンタンカルボン酸、オキシエトキシ安息香酸等の二官能性芳香族カルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸等の二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。グリコール成分にはプロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。さらに、添加物として酸化防止剤、制電剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を適宜添加してもよい。
次に一例として本発明を用いた複合ナイロン66フィラメントの製造方法について説明する。複合ナイロン66フィラメントの製造工程は、主に複数のナイロン66または一方にナイロン66とは異なる熱可塑性樹脂を溶融させ、紡糸パック内の金属フィルターで濾過し、口金部で合流させて吐出し、冷却させた上、一定速度のローラーで引き取る紡糸工程、引き取った未延伸糸を延伸・熱処理する延伸工程、延伸した糸条を巻き取る巻取工程、の3つ工程に分かれる。
紡糸工程は公知の溶融紡糸方法を採用すればよく、押出機によって溶融させた複数の熱可塑性樹脂を所望の繊度となるように計量ポンプを用いて本発明の溶融紡糸用パックに供給し糸条を吐出させる。
冷却方式はチムニーエアーによる冷却を採用することが好ましい。チムニーエアーによる冷却は、例えば糸条の走行方向に対して略直角方向かつ一方向から吹き付ける方式や糸条の走行と略直角方向かつ全周方向から吹き付ける方式を用いることができる。
冷却した糸条をローラーで引き取る前に、紡糸油剤を付与することが好ましい。油剤は給油ガイドやオイリングローラーによって糸条に付与すればよい。
給油した糸条は、好ましくは表面速度300~5000m/分の引取りローラーで引取る。その後、一旦未延伸糸として巻き取ってから延伸する二工程法、そのまま延伸工程に給糸する直接紡糸延伸法のどちらを採用してもよい。
延伸工程では、均一延伸を目的に、冷ローラーまたは糸条をガラス転移点以上に加熱するホットローラーと、このホットローラーよりも表面速度が速く、結晶化温度以上に加熱するホットローラーに順次引き回し延伸を施す方法が好ましい。ホットローラーの温度や延伸倍率は目標とする物性によって選択すればよい。また、そのホットローラー間に、さらにホットローラーを設置し、いわゆる多段延伸とすれば延伸均一性が向上するためより好ましい。延伸された糸条がモノフィラメントであればそのまま巻き取り工程へと進む。マルチフィラメントの場合は糸条の収束性を増しバラケをなくし、取り扱い性を向上させ、糸切れを減少させるためにエアーノズルにて交絡処理を行うのが一般的である。
巻き取り工程では、延伸されたフィラメントを巻き取るが、所望のパッケージが得られれば、特に巻き取り方法については限定されるものではない。
以下本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
濾過精度10ミクロンの焼結金属繊維フィルターと、その両面に50メッシュの金網とが各1枚積層された、空隙率73%、全厚みが1.0mmの金属濾過フィルターを、シール部の空隙率が16%になるよう押圧した後、打ち抜きによりφ6.0mmのポリマー通過孔をシール部に開けた金属濾過フィルターを2枚製作し、それぞれを上部と下部のシールリングおよび耐圧板の間に配することで、図7に示す紡糸用パックを製作した。濾材として200メッシュのアルミナサンドを用い、口金は吐出孔径0.15mmで98ホール×2群のものを使用した。
この溶融紡糸用パックを用い、主ポリマーおよび副ポリマー共に酸化チタンを0.4wt%、98%硫酸相対粘度2.6のナイロン66を紡糸温度290℃で溶融し、口金内部で主ポリマーと副ポリマーを合流させてから吐出孔より溶融紡糸し、その紡糸された糸条を巻取速度4600m/minで巻取り、56dtex、98フィラメントの糸条を7日間連続製糸した。このとき、主ポリマーと副ポリマーの比率は1:1とした。この期間中の糸切れ回数を測定したところ、その糸切れは、0.5回/トンであった。
実施例2
金属濾過フィルターのシール部の空隙率を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の条件にて連続製糸を行い、その時のポリマー漏れ、製糸後の金属濾過フィルターの状態、紡糸された糸条の糸切れ状況を観察した。その結果も表1に示す。
Figure 0007225761000001
表1から明らかなように、金属濾過フィルターのシール部の空隙率は6~25%にすることで糸切れ頻度は減少できる。
本発明の金属線フィルターを用いることで、複合紡糸においても、金属濾過フィルター部におけるポリマーの異常滞留の発生と劣化に起因する糸切れ、さらには品質ムラの発生を低減することができる。
1. 焼結金属繊維フィルター
2. 金網
3. 金属リム
4. ボデー
5. 口金
6. 濾層ブロック
7. ポリマー流入ブロック
8. ロッキングリング
9. ガスケット
10. 金属濾過フィルター
11. 濾材
12. 下部濾層ブロック
13. 通路ブロック
14. 上部濾層ブロック
15. ポリマー入り口
16. 耐圧板
17. シールリング
18. シール部
19. 濾過部
20. ポリマー通過孔
21. ピン穴孔
22. ポリマー流路ブロック
23. 主ポリマー流路
24. 副ポリマー流路
25. 下部耐圧板
26. 下部シールリング
27. 上部耐圧板
28. 上部シールリング

Claims (2)

  1. 金属繊維または金属線からなるフィルターにおいて、シール部と濾過部から構成され、シール部に、当該濾過部を通過しない溶融物が通過するための孔が1つまたは複数あいていることを特徴とする金属濾過フィルター。
  2. 前記シール部の空隙率が6~25%であることを特徴とする請求項1に記載の金属濾過フィルター。
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