JP6701822B2 - 溶融紡糸用パック - Google Patents
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Description
一般に熱可塑性樹脂を溶融紡糸する繊維の製造に関しては、原料であるチップを押出機で溶融混練し原料ポリマーとなし、配管を経由して溶融紡糸用パックに導く。ポリマー入り口(11)から導入されたポリマーは整流板(10)で濾層上に分配され、異物を除去するための濾過フィルター・濾材から成る濾層を通り、ポリマーを口金(2)の吐出孔から紡糸して繊維を得る。
一般に濾材は粒度、粒径などの異なるサンドを積層させ、例えば、粗い粒径のサンドを上部に、そして、順次粒径の細かいサンドを重ねることでポリマーに混入した不純物の粗大異物から順番に異物を捕捉し、急激な濾圧上昇を抑える工夫をしている。ここにおいて、何らかの要因、例えば、組み立てや締め付け時の不備、紡糸機等への運搬時の不具合、パック取り付け時の傾き、さらにはポリマーが流入する際の流動の影響等により濾材が傾くと、これに伴い濾材の上に載置した整流板も同様に傾くことになる。このように、整流板が規定の位置から傾いた状態になることで、ポリマー流入ブロックと整流板の隙間に偏りが生じる。隙間の大きい箇所では、ポリマーの流速が低下するため、異常滞留が発生しやすくなる。この異常滞留はポリマーの劣化を促進するので時間の経過とともにポリマーを変質させる。この変質ポリマーが糸条に混入することで糸切れを誘発したり、糸条の品質ムラが生じていた。
例えば、特許文献1には、整流孔が多孔板の中心から同心円を描くように配置された多孔板において、その配置を規定することで、ポリマーの異常滞留と劣化に起因する糸切れなど、糸質斑の発生を低減することのできる溶融紡糸パックが開示されている。しかしながら該技術では孔の無い外周部は異常滞留になりやすく、ポリマー孔の圧損が大きく、初期圧が大きくなり過ぎ、このため初期圧をさげるために濾過を甘くせざるを得ない。濾過強化する場合には、部材を大きくする必要があり、取り扱い性が低下し、繰り返し使用する場合には洗浄が困難になる等の問題が生じる。
近年、化学繊維の多糸条化、細繊度化、高強力化、高品質化の要求が益々高くなってきている。これらの要求を満足する、品質が均一で、良好な製糸性の得られる技術が待ち望まれていた。
5.ガスケット一体整流板の材質がアルミ材、ステンレス材、鋼材のいずれかであることを特徴とする上記1〜4のいずれか一項に記載の溶融紡糸用パック。
図1は本発明の溶融紡糸用パックの一実施態様例を示す模式図である。
溶融されたポリマーはポリマー流入部に備えられたポリマー入り口(11)から流入し、ポリマー流入部直下の濾層部をシールするガスケット一体整流板(13)に到達する。ガスケット一体整流板(13)は濾層部壁面のポリマーが異常滞留を起こさないように濾層部の外周形状に沿った形状のポリマー通路部(18)を有することで、ポリマーは濾層部の外周を経由するように整流され、濾層部に充填された濾材(9)へと流れる。
本発明のガスケット一体整流板は、ポリマー通路部を構成する形状の内、円弧の最小半径が板厚tに対して0.25t以上であることが好ましい。
冷却した糸条をローラーで引き取る前に、紡糸油剤を付与することが好ましい。油剤は給油ガイドやオイリングローラーによって糸条に付与すればよい。
給油した糸条は、好ましくは表面速度300〜5000m/分の引取りローラーで引取る。その後、一旦未延伸糸として巻き取ってから延伸する二工程法、そのまま延伸工程に給糸する直接紡糸延伸法のどちらを採用してもよい。
巻き取り工程では、延伸されたフィラメントを巻き取るが、所望のパッケージが得られれば、特に巻き取り方法については限定されるものではない。
常法によって重合およびペレット化した98%硫酸相対粘度ηr=2.64のナイロン66をエクストルーダーによって溶融させた。
その後、溶融したポリマーを、1パックあたりの吐出量50.0g/分、紡糸温度280℃、紡糸速度4000m/分で溶融紡糸し、ナイロン66フィラメントのパッケージを得た。その際の詳細条件は以下の通りである。
次に本発明のガスケット一体整流板は図7の形状のものを採用した。すなわち、板厚1.0mm、外径70.0mm、ガスケット部の幅が4.0mm、ポリマー通路部はガスケット部の内側に円周方向に幅2.0mmで2穴とし、また整流板の中心に内径2.0mmを設けて合計3穴とした。ここにおいて、幅2.0mmの結合部が2ヶ所、かつポリマー分配部を配したものを用いた。また、ガスケット一体整流板の材質はSUS304とした。
72時間連続紡糸した結果、糸切れはなく、14日間連続紡糸した結果も糸切れ回数1回と良好な紡糸結果を得た。
紡糸終了後、パック部材を解体して濾層部を確認した結果、モランダムサンドの傾きは認められず良好な状態を保っていた。また、濾層上部をブラックライト下で観察した結果、濾層上部に残留した劣化ポリマーによる蛍光物は見られなかった。
ガスケット一体整流板を図8の形状のものに変更した以外は、実施例1と同様の条件にて紡糸を行った。すなわち、ガスケット一体整流板は外径70.0mm、ガスケット部の幅が4.0mm、ポリマー通路部はガスケット部の内側に円周方向に幅2.0mmで4穴、幅2.0mmの結合部が4ヶ所、かつポリマー分配部を配したものを用いた。
72時間連続紡糸した結果、糸切れはなく、14日間連続紡糸した結果も糸切れ回数2回と良好な紡糸結果を得た。
紡糸終了後、パック部材を解体して濾層部を確認した結果、モランダムサンドの傾きは認められず良好な状態を保っていた。また、濾層上部をブラックライト下で観察した結果、濾層上部に残留した劣化ポリマーによる蛍光物は見られなかった。
ガスケット(濾層ブロック上)(7)と整流板(10)が各々別々の部材より成り立っている従来タイプのパック部材を用い、それ以外は実施例と同様の条件でナイロン66フィラメントの紡糸を行った。
なお、ガスケット(7)、および整流板(10)は図9,10の形状のものを採用した。すなわち、ガスケットの板厚は1.0mm、外径は70.0mm、内径は濾過部の直径と同じ62.0mmとした。整流板は板厚1.0mm、外径58.0mm、中心に内径2.0mmの穴を配し、外周部に直径方向に長さ1.8mm、幅2.0mmの突起を等間隔に3箇所配した。
72時間連続紡糸した結果、糸切れ3回であり、14日間連続紡糸した結果も糸切れ回数11回と糸切れが多発し、紡糸性は不良であった。
紡糸終了後、パック部材を解体して濾層部を確認した結果、整流板とモランダムサンドの傾きが認められた。また、濾層上部をブラックライト下で観察した結果、濾層上端部(12)に残留した劣化ポリマーによる蛍光物が見られた。その箇所は、整流板とモランダムサンドが傾き、整流板が沈み込んだ部分と一致した。
これは、整流板とモランダムサンドが傾き、ポリマーが流れる空間が一方で狭く、一方が反対に広くなったことにより、空間の広くなった箇所でのポリマー流速が低下し、異常滞留が発生したために起こった現象である。
2. 口金
3. 濾層ブロック
4. ポリマー流入ブロック
5. ロッキングリング
6. ガスケット(口金直上)
7. ガスケット(濾層ブロック上)
8. 濾過フィルター
9. 濾材
10. 整流板
11. ポリマー入り口
12. 濾層上端部
13. ガスケット一体整流板
14. 多孔部
15. ガスケット部
16. 分配部
17. 結合部
18. ポリマー通路部
Claims (5)
- ポリマー流入部、濾過部、および紡糸口金部の順で構成された溶融紡糸用パックにおいて、ポリマー流入部と濾過部の間をシールするガスケットを備え、かつ該ガスケットが整流板と一体で構成されたガスケット一体整流板であり、該整流板部分の板厚tが0.1〜5.0mmであることを特徴とする溶融紡糸用パック。
- ガスケット一体整流板の整流板部分が2箇所以上の結合部を有する分配部と2箇所以上のポリマー通路部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶融紡糸用パック。
- ポリマー通路部が円弧で構成され、かつ円弧の最小半径が板厚tに対して0.25t以上であることを特徴とする請求項2に記載の溶融紡糸用パック。
- ガスケット一体整流板のガスケット部、結合部の最小幅が板厚tに対して0.5t以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の溶融紡糸用パック
- ガスケット一体整流板の材質がアルミ材、ステンレス材、鋼材のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶融紡糸用パック。
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