以下、本発明の無線式の自動火災報知設備の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における無線式の自動火災報知設備の構成図である。基本的な構成は、図11の従来装置と同じであり、本発明の技術的特徴である無線通信経路の変更手順について、詳細に説明する。
図1に示したように、感知器40(1)は、火災発生を検知した場合には、リピータ30(1)に対して、無線信号a1として火災信号を送信する。図2は、本発明の実施の形態1において、無線信号の送信に用いられる無線電文構成を示した説明図である。
図2に示した無線電文構成は、ビット同期信号、フレーム同期信号、グループID、送信先AD、送信元AD、および状態情報を含んで構成される。ここで、本発明は、無線電文構成の中に、無線信号の送信先の機器アドレスに相当する送信先ADおよび無線信号の送信元の自身の機器アドレスに相当する送信元ADを含んでいる点を技術的特徴としている。
送信先ADは、無線電文の送信先の機器を特定するアドレス情報である。また、送信元ADは、無線電文の送信元の機器を特定するアドレス情報である。従って、例えば、感知器40(1)は、図1に示した無線信号a1を送信する場合には、送信先ADとしてリピータ30(1)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身の感知器40(1)のアドレスを指定する。
また、リピータ30(1)は、図1に示した無線信号a2を送信する場合には、送信先ADとして中継器20のアドレスを指定し、送信元ADとして自身のリピータ30(1)のアドレスを指定する。
さらに、中継器20は、図1に示した無線信号a3を返答する場合には、送信先ADとしてリピータ30(1)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身の中継器20のアドレスを指定する。
なお、1つの中継器20に関するグループ(無線通信グループに相当)内の通信経路は、あらかじめ規定されており、グループ内の各機器における無線信号の送信先ADは、あらかじめ記憶部に記憶されているものとする。
感知器40(1)は、火災信号がa1、a2としてリピータ30(1)の上位機器である中継器20に確実に無線伝送されたか否かを、無線信号a1を送信した後に、送信先のリピータ30(1)から無線信号a2が送信されたか否かをモニタすることで確認することができる。
すなわち、感知器40(1)とリピータ30(1)との間の無線経路に何らかの障害があり、無線信号a1がリピータ30(1)によって受信されなかった場合には、結果的に、無線信号a2がリピータ30(1)から送信されなくなる。図1では、この無線経路に何らかの障害が発生した場合を×印として例示している。
また、感知器40(1)とリピータ30(1)との間の無線経路が正常であっても、リピータ30(1)の異常、例えば、電池残量が少なく、無線信号a1の受信あるいは無線信号a2の送信が正常に行えなかった場合にも、結果的に、無線信号a2がリピータ30(1)から送信されなくなる。なお、図1では、この状態までは例示していない。
従って、感知器40(1)は、送信先の上位機器であるリピータ30(1)から無線信号a2が送信されたか否かをモニタすることで、感知器40(1)とリピータ30(1)との間の無線経路異常、およびリピータ30(1)による転送動作異常の特定まではできないものの、少なくともいずれか1つの異常の影響により、火災信号がa1、a2として中継器20に確実に無線伝送されなかったことを、容易に確認することができる。
そして、感知器40(1)は、火災信号として無線信号a1を送信したにも関わらず、無線信号a2がリピータ30(1)から送信されていないと判断した場合には、別の経路で火災信号を中継器20に伝えるために、別のリピータ30(2)に対して無線信号b1を送信する。
ここで、感知器40(1)は、無線信号b1を送信する場合には、送信先ADとしてあらかじめ記憶部に記憶していたリピータ30(2)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身の感知器40(1)のアドレスを指定する。従って、リピータ30(2)は、この無線信号b1を受信した際に送信先ADを参照することで、自身宛に送信されてきた信号であることを知ることができる。
そこで、リピータ30(2)は、無線信号b2により火災信号を中継器20に伝達することができる。さらに、リピータ30(2)は、無線信号b2を転送する際に、感知器40(1)から送られてきた火災信号であることを示す情報を無線電文構成内の状態情報として伝達することで、火災場所を特定する情報も、伝達可能となる。
なお、中継器20は、火災信号である無線信号b2を受信すると、送信元のリピータ30(2)に対して無線信号b3として応答信号を返答し、さらに、有線を介して受信機10に対して、火災信号を送信する。そして、中継器20は、図1に示した無線信号b3を返答する場合には、送信先ADとしてリピータ30(2)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身の中継器20のアドレスを指定する。
一方、リピータ30(3)は、感知器40(1)が出力した無線信号b1を受信できたとしても、送信先ADを参照することで、自身宛に送信されてきた信号でないことを知ることができる。そこで、リピータ30(3)からは、無線信号b1に対応する無線信号が中継器20に対して出力されることはない。
従って、送信先ADを含む無線電文構成とすることで、感知器と上位機器との間に通信障害等が発生し、他の経路で無線信号を伝達しても火災信号が干渉することを防止することができる。また、送信元AD、状態情報を含む無線電文構成とすることで、本来とは異なる経路で火災信号が送られた場合にも、火災発生場所を確実に特定することができる。
なお、感知器40(1)は、送信先のリピータ30(2)から無線信号b2が送信されたか否かをモニタすることで、感知器40(1)とリピータ30(2)との間の無線経路異常、およびリピータ30(2)による転送動作異常の特定まではできないものの、少なくともいずれか1つの異常の影響により、火災信号がb1、b2として中継器20に確実に無線伝送されなかったことを、容易に確認することができる。
なお、火災信号がb1、b2として中継器20に確実に無線伝送されなかった場合、感知器40(1)は、あらかじめ記憶部に記憶されている他の上位機器(例えば、リピータ30(3))を送信先ADに指定し、火災信号の出力を行う。
以上の説明では、図1に示した具体例を用いて、感知器40による火災信号の再送処理について説明した。次に、図3を用いて、リピータ30による火災信号の再送処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る無線式の自動火災報知設備の構成において、リピータ30による火災信号の再送処理機能に関する説明図である。
この図3は、リピータ30(1)が、感知器40(1)から火災信号である無線信号a1を受信し、中継器20に対して無線信号a2を送信したが、その返答として無線信号a3が受信できていない状態を示している。この原因としては、リピータ30(1)と中継器20との間の無線経路に何らかの障害が発生し、無線信号a2が中継器20に届いていない、あるいは、返答としての無線信号a3がリピータ30(1)に帰ってきていないことが考えられる。
このように、リピータ30(1)と中継器20との間の無線経路に何らかの障害が発生した場合には、感知器40(1)は、無線信号a2がリピータ30(1)から正常に出力されているため、この異常を検知することができない。一方、リピータ30(1)は、無線信号a2に対する返答としての無線信号a3を受信できないとことで、リピータ30(1)と中継器20との間の無線による火災信号の転送が正常に行われなかったと判断できる。
そこで、リピータ30(1)は、このような通信異常が発生したと判断した場合には、新たな通信経路により火災信号の伝送を行うために、リピータ30(2)に対して、火災信号としての無線信号c1を送信する。この場合、リピータ30(1)は、無線信号c1を送信する際に、送信先ADとしてあらかじめ記憶部に記憶しているリピータ30(2)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身のリピータ30(1)のアドレスを指定する。従って、リピータ30(2)は、この無線信号c1を受信した際に送信先ADを参照することで、自身宛に送信されてきた信号であることを知ることができる。
そこで、リピータ30(2)は、無線信号c2により火災信号を中継器20に伝達することができる。さらに、リピータ30(2)は、無線信号c2を転送する際に、感知器40(1)およびリピータ30(1)経由で送られてきた火災信号であることを示す情報を無線電文構成内の状態情報として伝達することで、火災場所を特定する情報も、伝達可能となる。
一方、リピータ30(3)は、この無線信号c1を受信できたとしても、送信先ADを参照することで、自身宛に送信されてきた信号でないことを知ることができる。そこで、リピータ30(3)からは、無線信号c1に対応する無線信号が中継器20に対して出力されることはない。
従って、送信先ADを含む無線電文構成とすることで、感知器の上位機器であるリピータと、該リピータのさらに上位機器との間に通信障害等が発生し、他の経路で無線信号を伝達した場合にも、火災信号が干渉することを防止することができる。また、送信元AD、状態情報を含む無線電文構成とすることで、本来とは異なる経路で火災信号が送られた場合にも、火災発生場所を確実に特定することができる。
なお、リピータ30(1)は、送信先のリピータ30(2)から無線信号c2が送信されたか否かをモニタすることで、リピータ30(1)とリピータ30(2)との間の無線経路異常、およびリピータ30(2)による転送動作異常の特定まではできないものの、少なくともいずれか1つの異常の影響により、火災信号がc1、c2として中継器20に確実に無線伝送されなかったことを、容易に確認することができる。
なお、中継器20は、火災信号である無線信号c2を受信すると、送信元のリピータ30(2)に対して無線信号c3として応答信号を返答し、さらに、有線を介して受信機10に対して、火災信号を送信する。そして、中継器20は、図3に示した無線信号c3を返答する場合には、送信先ADとしてリピータ30(2)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身の中継器20のアドレスを指定する。
以上の説明では、図3に示した具体例を用いて、リピータ30による火災信号の再送処理について説明した。次に、図4を用いて、リピータ30を介さずに、中継器20に対して火災信号を直接送信する感知器40(4)による火災信号の再送処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る無線式の自動火災報知設備の構成において、中継器20に対して火災信号を直接送信する感知器40(4)による火災信号の再送処理に関する説明図である。
この図4は、感知器40(4)が、自身で検出した火災信号を、中継器20に対して無線信号d1として送信したが、その返答として無線信号d2が受信できていない状態を示している。この原因としては、感知器40(4)と中継器20との間の無線経路に何らかの障害が発生し、無線信号d1が中継器20に届いていない、あるいは、返答としての無線信号d2が感知器40(4)に帰ってきていないことが考えられる。
このように、感知器40(4)と中継器20との間の無線経路に何らかの障害が発生した場合には、感知器40(4)は、無線信号d1に対する返答としての無線信号d2を受信できないことで、中継器20との間の無線による火災信号の転送が正常に行われなかったと判断できる。
そこで、感知器40(4)は、このような通信異常が発生したと判断した場合には、新たな通信経路により火災信号の伝送を行うために、リピータ30(3)に対して、火災信号としての無線信号e1を送信する。この場合、感知器40(4)は、無線信号e1を送信する際に、送信先ADとしてあらかじめ記憶部に記憶しているリピータ30(3)のアドレスを指定し、送信元ADとして自身の感知器40(4)のアドレスを指定する。従って、リピータ30(3)は、この無線信号e1を受信した際に送信先ADを参照することで、自身宛に送信されてきた信号であることを知ることができる。
そこで、リピータ30(3)は、無線信号e2により火災信号を中継器20に伝達することができる。さらに、リピータ30(3)は、無線信号e2を転送する際に、感知器40(4)経由で送られてきた火災信号であることを示す情報を無線電文構成内の状態情報として伝達することで、火災場所を特定する情報も伝達可能となる。
一方、リピータ30(1)およびリピータ30(2)は、この無線信号e1を受信できたとしても、送信先ADを参照することで、自身宛に送信されてきた信号でないことを知ることができる。そこで、リピータ30(1)およびリピータ30(2)からは、無線信号e1に対応する無線信号が中継器20に対して出力されることはない。
従って、送信先ADを含む無線電文構成とすることで、感知器と上位機器である中継器との間に通信障害等が発生し、他の経路で無線信号を伝達した場合にも、火災信号が干渉することを防止することができる。また、送信元AD、状態情報を含む無線電文構成とすることで、本来とは異なる経路で火災信号が送られた場合にも、火災発生場所を確実に特定することができる。
なお、感知器40(4)は、送信先のリピータ30(3)から無線信号e2が送信されたか否かをモニタすることで、感知器40(4)とリピータ30(3)との間の無線経路異常、およびリピータ30(3)による転送動作異常の特定まではできないものの、少なくともいずれか1つの異常の影響により、火災信号がe1、e2として中継器20に確実に無線伝送されなかったことを、容易に確認することができる。
次に、感知器40、リピータ30、および中継器20のそれぞれの一連動作について、フローチャートを用いて説明する。まず、図5は、本発明の実施の形態1における感知器40による火災信号の一連処理を示したフローチャートである。
なお、この図5の一連処理は、図1で説明した感知器40(1)(すなわち、リピータ30を介して中継器20に対して火災信号を送信する感知器40)、および図4で説明した感知器40(4)(すなわち、リピータ30を介さずに、中継器20に対して火災信号を直接送信する感知器40)の両方に対応するものである。そこで、図1、図4に示した無線信号の符号も参照しながら、以下に説明する。
まず始めに、ステップS501において、感知器40は、火災発生を検知する。次に、ステップS502において、感知器40は、あらかじめ決められている伝送経路に従った上位ADの機器に対して、火災信号を送信する。
ここで、感知器40が感知器40(1)である場合には、上位ADの機器は、リピータ30(1)に相当し、感知器40(1)は、送信先ADをリピータ30(1)として火災信号を送信する。一方、感知器40が感知器40(4)である場合には、上位ADの機器は、中継器20に相当し、感知器40(4)は、送信先ADを中継器20として火災信号を送信する。
次に、ステップS503において、感知器40は、上位ADの機器によって火災信号が受信できたか否かを確認する。ここで、感知器40が感知器40(1)である場合には、上位ADの機器は、リピータ30(1)に相当し、感知器40(1)は、リピータ30(1)から無線信号a2が送信されたか否かを確認する。
一方、感知器40が感知器40(4)である場合には、上位ADの機器は、中継器20に相当し、感知器40(4)は、中継器20からの返答として無線信号d2を受信できたか否かを確認する。
そして、感知器40は、上位ADの機器によって火災信号が受信できたことを確認できた場合には、ステップS506に進み、確認できなかった場合には、ステップS504に進む。
そして、ステップS504に進んだ場合には、感知器40は、あらかじめ決められている伝送経路に従った第2ADの機器に対して、火災信号を送信する。すなわち、感知器40は、本来の経路で火災信号を伝達できないと判断した場合には、別経路で火災信号を伝送するために、第2ADとして規定された機器に対して、火災信号を送信する。
ここで、感知器40が感知器40(1)である場合には、第2ADの機器は、リピータ30(2)に相当し、感知器40(1)は、送信先ADをリピータ30(2)として火災信号を送信する。一方、感知器40が感知器40(4)である場合には、第2ADの機器は、リピータ30(3)に相当し、感知器40(4)は、送信先ADをリピータ30(3)として火災信号を送信する。
次に、ステップS505において、感知器40は、第2ADの機器によって火災信号が受信できたか否かを確認する。ここで、感知器40が感知器40(1)である場合には、第2ADの機器は、リピータ30(2)に相当し、感知器40(1)は、リピータ30(2)から無線信号b2が送信されたか否かを確認する。
一方、感知器40が感知器40(4)である場合には、第2ADの機器は、リピータ30(3)に相当し、感知器40(4)は、リピータ30(3)から無線信号e2が送信されたか否かを確認する。
そして、感知器40は、第2ADの機器によって火災信号が受信できたことを確認できた場合には、ステップS506に進む。そして、ステップS506に進んだ場合には、感知器40は、火災信号の送信処理が終了したと判断し、一連処理を終了する。
一方、感知器40は、第2ADの機器によって火災信号が受信できたことを確認できなかった場合には、ステップS502に進み、再度、上位ADに対する火災信号の送信を試みる。
なお、ステップS505においてNoと判定された場合の処理は、この図5に示したフローチャートに限定されるものではない。第2ADの機器に対する無線通信も正常に行われなかった場合には、異常であることをアナウンスして一連処理を終了してもよい。あるいは、記憶部に第3AD以降の送信先ADが記憶されている場合には、さらに別の経路による無線通信を試みるといったことも可能である。
また、感知器40に音響部を備えさせておき、無線通信が最終的にうまくいかなかった場合には、感知器が鳴動するようにして、異常であることをアナウンスしてもよい。
次に、図6は、本発明の実施の形態1におけるリピータ30による火災信号の一連処理を示したフローチャートである。なお、この図6の一連処理は、図3で説明したリピータ30(1)(すなわち、自身から中継器20に対して火災信号を正常に無線通信できないため、別のリピータ30(2)を介した経路により、火災信号の伝送を試みるリピータ30)に対応するものである。そこで、図3に示した無線信号の符号も参照しながら、リピータ30が図3に示すリピータ30(1)であることを前提にして、以下に説明する。
まず始めに、ステップS601において、リピータ30(1)は、感知器40(1)から無線信号a1として火災信号を受信する。次に、ステップS602において、リピータ30(1)は、無線信号a1に含まれる送信先ADが自己のアドレスであるか否かを判断する。
そして、送信先ADが自己のアドレスでない場合には、リピータ30(1)は、火災信号の転送処理が不要であると判断し、一連処理を終了する。一方、送信先ADが自己のアドレスであった場合には、ステップS603に進み、リピータ30(1)は、中継器20に対して、火災信号を無線信号a2として送信する。
次に、ステップS604において、リピータ30(1)は、中継器20に対して無線信号a2を送信した返答として、無線信号a3の応答が受信できたか否かを判断する。そして、無線信号a3を受信できた場合には、ステップS607に進み、無線信号a3を受信できなかった場合には、ステップS605に進む。
そして、ステップS605に進んだ場合には、リピータ30(1)は、あらかじめ決められている伝送経路に従った第2ADの機器に対して、火災信号を送信する。すなわち、リピータ30(1)は、本来の経路で火災信号を伝達できないと判断した場合には、別経路で火災信号を伝送するために、第2ADとして規定された機器であるリピータ30(2)に対して、火災信号を送信する。
次に、ステップS606において、リピータ30(1)は、第2ADの機器であるリピータ30(2)によって火災信号が受信できたか否かを確認する。具体的には、リピータ30(1)は、リピータ30(2)から無線信号c2が送信されたか否かを確認することで、リピータ30(2)によって火災信号が受信できたか否かを確認する。
そして、リピータ30(1)は、第2ADの機器によって火災信号が受信できたことを確認できた場合には、ステップS607に進む。そして、ステップS607に進んだ場合には、リピータ30(1)は、火災信号の送信処理が終了したと判断し、一連処理を終了する。
一方、リピータ30(1)は、第2ADの機器によって火災信号が受信できたことを確認できなかった場合には、ステップS603に進み、再度、中継器20に対する火災信号の送信を試みる。
なお、ステップS606においてNoと判定された場合の処理は、この図6に示したフローチャートに限定されるものではない。第2ADの機器に対する無線通信も正常に行われなかった場合には、異常であることをアナウンスして一連処理を終了する、あるいは、第3ADが有る場合には、さらに別の経路による無線通信を試みるといったことも可能である。
次に、図7は、本発明の実施の形態1における中継器20による火災信号の一連処理を示したフローチャートである。なお、この図7の一連処理は、図1、図3、図4に共通する中継器20による処理であり、かつ、火災信号が正規経路あるいは別経路のいずれで送られてきたかにかかわらず、同一の処理が行われる。
まず始めに、ステップS701において、中継器20は、感知器40あるいはリピータ30から無線信号として火災信号を受信する。次に、ステップS702において、中継器20は、無線信号に含まれる送信先ADが自己のアドレスであるか否かを判断する。
そして、送信先ADが自己のアドレスでない場合には、中継器は、火災信号の転送処理が不要であると判断し、一連処理を終了する。一方、送信先ADが自己のアドレスであった場合には、ステップS703に進み、中継器20は、火災信号の送信元の機器に対して応答信号を返信する。
さらに、ステップS704において、中継器20は、受信機10に対して火災が発生した場所とともに火災が発生したことを知らせるための火災動作(火災信号の出力)を実行し、一連処理を終了する。
なお、中継器20から火災信号を受信した受信機10は、火災の報知を行うが、それだけに限らず、火災信号の伝達にかかる無線経路が正規の経路でなかった場合には、警報を発してもよい。無線電文構成の「状態情報」として、無線経路の変更に関する情報を持たせることで、受信機10は、正規の経路でないことを、状態情報により判断することができる。
以上のように、実施の形態1によれば、感知器あるいはリピータにおいて、あらかじめ決められた経路で火災信号を無線伝送できない状態が発生した場合には、無線通信可能なリピータを介した別経路による火災信号の無線伝送を試みることのできる構成を備えている。この結果、あらかじめ決められた無線通信経路により火災信号を伝達することができない状況が発生した場合にも、火災信号を受信機に伝達することが可能となり、無線式の自動火災報知設備の信頼性を向上させることが可能となる。
なお、上述した実施の形態1では、リピータ30および感知器40が、第2候補の送信先となる機器のアドレスを、第2ADとしてあらかじめ記憶部に有している場合について説明したが、本発明は、このようなケースに限定されるものではない。設備の運用中における無線信号の受信状態から、第2ADを特定することも可能である。
例えば、感知器は、設備の運用中において、あらかじめ決められた転送先であるリピータ以外のリピータを送信元とする無線信号を受信できた場合には、このリピータのアドレスを第2ADとして新たに設定することができる。また、感知器は、あらかじめ決められた転送先であるリピータ以外のリピータを送信元とする無線信号を複数受信できた場合には、複数の受信信号の電波強度の強い順に従って、火災信号を再送処理する際の第2AD以降の機器となるリピータを特定することができる。
また、リピータは、設備の運用中において、自身以外のリピータを送信元とする無線信号を受信できた場合には、このリピータのアドレスを第2ADとして新たに設定することができる。また、リピータは、自身以外のリピータを送信元とする無線信号を複数受信できた場合には、複数の受信信号の電波強度の強い順に従って、火災信号を再送処理する際の第2AD以降の機器となるリピータを特定することができる。
実施の形態2.
本発明に係る無線式の自動火災報知設備は、中継器20がグループ内に含まれるリピータ30および感知器40に対して、一定の間隔で定期通信を行うことで、通信状態の動作確認が一般的に行われている。そこで、本実施の形態2では、この定期通信を利用して第2ADの確認、あるいは更新を行う手順について説明する。
図8は、本発明の実施の形態2における無線式の自動火災報知設備で実行される定期通信に関する説明図である。構成自体は、先の実施の形態1における図1、図3、図4に示したものと同じである。
中継器20は、定期通信を行うことで、一例として、図8に示したようなt1~t14の順番で、あらかじめ決められた無線通信経路を全て経由した無線通信の動作確認を行っている。この際、本実施の形態2では、先の実施の形態1の図2で説明したような無線電文構成を採用して各機器間で無線通信を行わせる。
このような定期通信の実行時において、感知器40(1)は、自身以外に送信される無線信号を受信できるか否かを確認する再送確認機能(第1の再送確認機能に相当)を有している。具体的には、感知器40(1)は、あらかじめ決められた転送先であるリピータ30(1)以外のリピータ30(2)、30(3)を送信元とする無線信号を受信できた場合には、このリピータ30(2)、30(3)のアドレスを第2ADとして新たに設定することができる。
具体的には、感知器40(1)は、図8中の無線信号t6が受信できた場合には、リピータ30(2)のアドレスを第2ADとして設定することができる。同様に、感知器40(1)は、図8中の無線信号t10が受信できた場合には、リピータ30(3)のアドレスを第2ADとして設定することができる。
また、感知器40(1)は、無線信号t6とt10の両方が受信できた場合には、電波強度の強い順に従って、火災信号を再送処理する際のサブアドレスとして、第2ADおよび第3ADを特定することができる。感知器40(2)、感知器40(3)も、感知器40(1)と同様にして、定期通信の通信状態からサブアドレスを特定することができる。
また、リピータ30を介さずに中継器20に対して無線信号を直接送信している感知器40(4)は、リピータ30(1)~30(3)を送信元とする無線信号を受信できた場合には、このリピータ30(1)~30(3)のアドレスを第2ADとして新たに設定することができる。
具体的には、感知器40(4)は、図8中の無線信号t2が受信できた場合には、リピータ30(1)のアドレスを第2ADとして設定することができる。同様に、感知器40(4)は、図8中の無線信号t6が受信できた場合には、リピータ30(2)のアドレスを第2ADとして設定することができ、図8中の無線信号t10が受信できた場合には、リピータ30(3)のアドレスを第2ADとして設定することができる。
また、感知器40(4)は、無線信号t2、t6、t10のうちの複数の信号を受信できた場合には、電波強度の強い順に従って、火災信号を再送処理する際のサブアドレスとして、第2AD、第3AD、第4ADを特定することができる。
また、定期通信の実行時において、リピータ30(1)は、自身以外に送信される無線信号を受信できるか否かを確認する再送確認機能(第2の再送確認機能に相当)を有している。具体的には、リピータ30(1)は、自身以外のリピータ30(2)、30(3)を送信元とする無線信号を受信できた場合には、このリピータ30(2)、30(3)のアドレスを第2ADとして新たに設定することができる。
具体的には、リピータ30(1)は、図8中の無線信号t6が受信できた場合、あるいは無線信号t8が受信できた場合には、リピータ30(2)のアドレスを第2ADとして設定することができる。同様に、リピータ30(1)は、図8中の無線信号t10が受信できた場合、あるいは無線信号t12が受信できた場合には、リピータ30(3)のアドレスを第2ADとして設定することができる。
また、リピータ30(1)は、無線信号t6とt10の両方が受信できた場合には、電波強度の強い順に従って、火災信号を再送処理する際のサブアドレスとして、第2ADおよび第3ADを特定することができる。リピータ30(2)、リピータ30(3)も、リピータ30(1)と同様にして、定期通信の通信状態からサブアドレスを特定することができる。
また、上述した説明では、第2AD等のサブアドレスを定期通信の結果に基づいて規定する場合について説明したが、グループ内の感知器40およびリピータ30において、第2ADがあらかじめ記憶部に記憶されている場合には、定期通信の結果に基づいて、第2ADの機器と無線通信を行うことができるかを確認することができる。
例えば、感知器40(1)が、あらかじめ規定された送信先がリピータ30(1)であり、第2ADとしてあらかじめ規定された機器がリピータ30(2)である、先の図1のような場合を考える。この場合、感知器40(1)は、定期通信における無線信号t6を正常に受信できることで、第2ADとして設定されたリピータ30(2)を介した再送経路で火災信号を送信できることを確認することができる。
さらに、感知器40(1)は、定期通信における無線信号t6を正常に受信できない場合には、リピータ30(2)と感知器40(1)との間の無線経路に何らかの障害があると判断し、第2ADを用いた無線通信に関する予備警報を出力することができる。具体的には、感知器40(1)は、このような予備警報を状態情報に含めることで、定期通信における電文情報として、中継器20に対して予備警報が発生したことを知らせることができる。
感知器40(1)以外の他の感知器40(2)~40(4)、およびリピータ30(1)~30(3)も、感知器40(1)と同様に、第2ADの機器と無線通信を行うことができることの確認処理、および第2ADの機器と無線通信を行うことができないことを知らせる予備警報処理を実行することができる。
以上のように、実施の形態2によれば、感知器あるいはリピータは、定期通信を利用して、第2ADの新規設定、あるいは、あらかじめ設定された第2ADの確認処理、予備警報処理を行うことができる構成を備えている。この結果、あらかじめ決められた無線通信経路により火災信号を伝達することができない状況が発生した場合にも、定期通信における確認結果に基づいて、別経路を利用して火災信号を受信機に確実に伝達することが可能となり、無線式の自動火災報知設備の信頼性を向上させることが可能となる。
なお、感知器あるいはリピータは、定期通信だけではなく、火災信号においても第2ADの新規設定、あるいは、あらかじめ設定された第2ADの確認処理、予備警報処理を行えるようにしてもよい。遠隔試験機能がない無線式の自動火災報知設備の場合、保守点検時には試験器により感知器40の動作試験を行うが、試験器による感知器40の動作試験を行ったときに出力される火災信号であっても、第2ADの新規設定を行うことができる。
実施の形態3.
先の実施の形態1、2では、感知器40と中継器20との間に1台のリピータ30を設置する構成について説明した。しかしながら、多段に設けられた複数のリピータ30を介して、感知器40により検知された火災信号を中継器20に伝送する構成を採用することも可能である。そこで、本実施の形態3では、リピータを多段構成する場合について説明する。
図9は、本発明の実施の形態3における無線式の自動火災報知設備の構成図である。図9では、中継器20に対して感知器40が以下の4パターンのあらかじめ決められた火災信号送信経路に従って、接続された状態を例示している。
なお、図9および以下の説明における深度1~深度4は、以下のように定義している。
深度1:中継器20に対して火災信号を転送するように、火災信号送信経路によってあらかじめ規定されているリピータ30に割り当てられる深度情報を、深度1と定義する。
深度2以降:深度n(nは、1以上の整数)のリピータ30に対して火災信号を転送するように、火災信号送信経路によってあらかじめ規定されているリピータ30に割り当てられる深度情報を、深度n+1と定義する。
[パターン1]1段深度構成
感知器40(1、1)は、深度1に設けられた感知器であり、リピータ30を介さずに、中継器20を送信先ADとして、中継器20に対して直接、火災信号を無線送信する。
[パターン2]2段深度構成
感知器40(2、1)は、深度2に設けられた感知器であり、深度1に設けられたリピータ30(1、3)を送信先ADとして、このリピータ30(1,3)を介して、中継器20に対して火災信号を無線送信する。
[パターン3]3段深度構成
感知器40(3、1)は、深度3に設けられた感知器であり、深度2に設けられたリピータ30(2、2)を送信先ADとして、このリピータ30(2、2)および深度1に設けられたリピータ30(1、2)を介して、中継器20に対して火災信号を無線送信する。
[パターン4]4段深度構成
感知器40(4、1)は、深度4に設けられた感知器であり、深度3に設けられたリピータ30(3、1)を送信先ADとして、このリピータ30(3、1)、深度2に設けられたリピータ30(2、1)、および深度1に設けられたリピータ30(1、1)を介して、中継器20に対して火災信号を無線送信する。
ここで、図9に示したように、深度2に設けられたリピータ30(2、1)と深度1に設けられたリピータ(1、1)との間の無線経路に何らかの障害が発生し、無線信号f1が正常に伝達されない状況を考える。
感知器40と中継器20の間にリピータ30が複数設けられる状況において、電文として後述する深度情報を有しない実施の形態1、2では、リピータ30(2、1)により再送処理された無線信号が、深度2に設けられたリピータ30(2、2)によって受信され、その後、リピータ30(3、1)→リピータ30(2、1)と送られることで、図9に一点鎖線として示したループR1が発生することが考えられる。
すなわち、図9のように、リピータを多段深度構成とした場合には、再送処理において、干渉の問題以外にも、ループの発生という別の問題も考えられる。
これに対して、本発明に係る実施の形態3では、先の実施の形態1で詳述したように、送信先ADを含む電文構成を採用し、無線信号の送信先を1台に特定することに加え、多段深度構成の場合に、深度が浅いリピータに対して、優先的に火災信号を再送処理することができる。この優先処理について、以下に説明する。
図9において、リピータ30(2、1)は、あらかじめ決められた経路での上位機器(深度が浅い機器)であるリピータ30(1、1)以外に、リピータ30(1、2)、リピータ30(2、2)、リピータ30(3、1)の3台と無線通信が可能であるとする。このような通信環境において、リピータ30(2、1)は、無線信号f1を再送する際の第1優先の送信先ADとして、自身よりも浅い深度1に設けられているリピータ30(1、2)のアドレスを設定し、無線信号f2として再送する。
さらに、リピータ30(2、1)は、再送した無線信号f2も伝送できていないと判断した場合には、無線信号f1を再々送する際の第2優先の送信先ADとして、自身と同じ深度2に設けられているリピータ30(2、2)のアドレスを設定し、無線信号f3として再々送する。
さらに、リピータ30(2、1)は、再々送した無線信号f3も伝送できていないと判断した場合には、残りのリピータ30(3,1)は、自身よりも深い深度のリピータであるため、送信先ADとして設定することは不適切であると判断し、再送処置を断念することとなる。
このように、多段深度構成としてリピータが配置されている場合には、再送処理において、深度の浅いリピータを優先して選択し、再送処理を行うことで、ループの発生を防止した上で、より迅速に、より最短距離で、火災信号を中継器20まで効率よく伝達することが可能となる。
なお、以上の説明では、図9の具体例に基づいて、リピータ30による再送処理について説明したが、感知器40による再送処理においても同様の手法が適用できる。そして、多段深度構成におけるリピータ30あるいは感知器40による再送処理の内容をまとめると、以下のようになる。
・深度が下位の機器については、第2ADとして選択しない。
・再送処理の送信元ADの機器は、第2ADとして選択しない。
・深度の浅い機器を優先して、再送処置を行うための第2AD以降のサブアドレスを設定する。
図10は、本発明の実施の形態3において、無線信号の送信に用いられる無線電文構成を示した説明図である。先の図2に示した無線電文構成と比較すると、図10の構成は、「深度情報」をさらに備えている点が異なっている。この深度情報は、電文を送信する機器自身の深度が、深度1~深度4のいずれであるかを示す情報である。
先の実施の形態2で説明したように、定期通信を利用して第2ADの確認、あるいは更新を行う際には、この「深度情報」を考慮することで、第2ADの確認、更新を、適切に行うことができる。
以上のように、実施の形態3によれば、感知器あるいはリピータにおいて、あらかじめ決められた経路で火災信号を無線伝送できない状態が発生した場合には、無線通信可能なリピータを介した別経路による火災信号の無線伝送を試みることのできる構成を備えている。さらに、各機器が配置された深度を考慮することで、適切な再送経路を選択することが可能となる。
この結果、あらかじめ決められた無線通信経路により火災信号を伝達することができない状況が発生した場合にも、火災信号を受信機に伝達することが可能となり、無線式の自動火災報知設備の信頼性を向上させることが可能となる。
なお、実施の形態1~3では、通信障害が発生したときに別経路のリピータ30が代わりに電文の転送を行うものとして説明したが、感知器40にリピータの機能を搭載することで、感知器40に電文の転送を行わせることもできる。こうすることで、無線通信経路が増えるので、一部に通信障害が発生しても、より確実に火災信号を中継器20に送信することができる。
また、実施の形態3では、深度が下位の機器を送信先に指定しない場合を説明したが、本発明は、それに限らない。例えば、多段深度構成におけるリピータ30あるいは感知器40による再送処理の内容は、以下のとおりでもよい。
・深度が下位の機器については、サブアドレスの中でも優先順位を下げる。
・再送処理の送信元ADの機器は、サブアドレスの中でも優先順位を下げる。
・深度の浅い機器を優先して、再送処置を行うための第2AD以降のサブアドレスを設定する。
上記のように、上位の機器で電文の転送が行えない場合に、下位の機器にも電文の転送を行うことで、通信障害が発生している場所を迂回して中継器20まで電文を送信することができる。