JP7223463B1 - 米糀甘酒由来飲料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】米糀甘酒に由来する新たな飲料を提供する。【解決手段】下記(1)~(4)の工程を含む、米糀甘酒由来飲料の製造方法。(1)下記(1A)および(1B)を行う発酵(糖化)工程:(1A)アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)(いわゆる黄麹菌、好ましくはCK33株)の米糀と、蒸米と、水とを、1:0.5±0.1:5±1の比率(重量比)で混合し、55℃±5℃の温度で8時間±2時間発酵させることにより、糖化液Aを得る。(1B)アスペルギルス・ルチエンシス・カワチ(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)(いわゆる白麹菌)AOK1598株の米糀と、水とを、1:5±1の比率(重量比)で混合し、55℃±5℃の温度で8時間±2時間発酵させることにより、糖化液Bを得る工程。(2)圧搾工程:糖化液Aおよび糖化液Bをそれぞれ圧搾機により圧搾し、圧搾液Aおよび圧搾液Bを得る工程。(3)限外/精密濾過工程:圧搾液Aおよび圧搾液Bをそれぞれ限外濾過処理または精密濾過処理し、濾液Aおよび濾液Bを得る工程。(4)ブレンド工程:濾液Aと、濾液Bとを、3±2~7±2の比率(体積比)でブレンドする工程。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用 公開の事実(1) 公開日 令和2年12月11日・12日 公開場所 東京都世田谷区池尻2-4-5 世田谷ものづくり学校 公開の事実(2) 公開日 令和2年12月14日 公開場所 秋田県秋田市南通亀の町5-11 亀の町アップトゥユー 公開の事実(3) 公開日 令和2年12月15日 公開場所 秋田県南秋田郡五城目町下タ町59-6 いちカフェ 公開の事実(4) 公開日 令和2年12月18日 公開場所 秋田県大仙市大曲通町6-1 PLUS CAFE大曲駅店 公開の事実(5) 公開日 令和3年6月7日 公開場所(放送番組) ABSラジオ「まちなかSESSIONエキマイク」 公開の事実(6) 公開日 令和3年7月4日 公開場所(放送番組) ABSラジオ「のんびりズム」 公開の事実(7) 公開日 令和3年7月15日 公開場所(放送番組) ABSラジオ「まちなかSESSIONエキマイク」 公開の事実(8) 公開日 令和3年8月6日 公開場所(放送番組) AKT秋田テレビ「キャッチ・アップ」 公開の事実(9) 公開日 令和3年9月17日 公開場所(放送番組) NHK秋田放送局「ニュースこまち」 公開の事実(10) ウェブサイトの掲載日 令和3年5月25日 ウェブサイトのアドレス https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000079454.html 公開の事実(11) ウェブサイトの掲載日 令和3年6月9日 ウェブサイトのアドレス https://nanmoda.jp/2021/06/11553/(なんも大学) 公開の事実(12) ウェブサイトの掲載日 令和3年7月15日 ウェブサイトのアドレス https://www.akita-abs.co.jp/blog/radipal/archives/39446(Radipal Diary) 公開の事実(13) ウェブサイトの掲載日 令和3年5月25日 ウェブサイトのアドレス https://www.makuake.com/project/kojiclear/(Makuake) 公開の事実(14) 発行日 令和3年6月13日 刊行物 読売新聞 令和3年6月13日付け朝刊
本発明は、米糀甘酒の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、従来なかった性状
を有する米糀甘酒由来の飲料の製造方法に関する。
甘酒は、日本において長年親しまれている伝統的な甘味飲料であり、糖分、アミノ酸、
有機酸、ビタミン等の栄養分を豊富に含むことから「飲む点滴」とも呼ばれ、かつては夏
場の滋養強壮のための飲料とされていた。甘酒(米糀甘酒)に含まれる成分については、
例えば非特許文献1を参照することができる。
甘酒には、米糀(蒸米に麹菌を付着させ、繁殖させたもの)または米糀と蒸米の混合物
を原料とするもの(米糀甘酒)と、酒粕を原料とするもの(酒粕甘酒)、あるいはこれら
を混ぜたものがある。米糀甘酒は、発酵工程において麹菌の糖化酵素を米に作用させるこ
とで、澱粉を糖に変化させて甘みを与えるようにして製造され、アルコール分は含まない
。一方、酒粕甘酒は、酒粕を水に溶かし、糖分を添加することにより製造され、酒粕中の
アルコール分がわずかに含まれる。
甘酒の製造方法としては、例えば次のようなものが知られている。特許文献1には、急
速冷凍した生糀と水を、所定の重量比で混合し、所定の温度条件下および撹拌条件下に置
く糖化工程等を含む、米糀甘酒の製造方法が記載されている。このような製造方法により
得られる米糀甘酒について、特許文献1には、飲んだ後に口の中に甘みが残りにくく、雑
味が少なく、さらに残渣がドロドロせずサラリとしている(スッキリとした味わいの飲み
やすい)甘酒を製造することができるということが記載されている。なお、特許文献1に
は、生糀として用いることができるものとして、下記特許文献4に記載の菌株(あめこう
じ菌)が例示されている。
特許文献2には、a)米糀、b)米糀と米飯との混合物、c)米糀と酒粕との混合物、
d)酒粕、e)米糀と米飯と酒粕との混合物から選ばれた一種を含有する原料に水を加え
て得られた甘酒液の不溶性固形分の少なくとも一部を、遠心分離又はフィルタープレス処
理で除去することにより、不溶性固形分量が0~30%とされている甘酒が記載されてい
る。このような甘酒について、特許文献2には、粘度が低く、さらさらして喉越しが非常
に良好で飲みやすいということが記載されている。
特許文献3には、米糀甘酒(酒粕を原料に使用しないことによりアルコールを含有しな
い容器詰甘酒飲料)の製造方法として、米と米糀を含む原料に液化酵素を添加して発酵さ
せる液化酵素処理工程と、前記原料に糖化酵素を添加して発酵させる糖化酵素処理工程と
を備え、前記液化酵素処理は前記糖化酵素処理と同時もしくは前記糖化酵素処理に先行し
て行われ、前記液化酵素処理工程と糖化酵素処理工程の後に、糖酸比を調整する(例えば
、糖度を11.0~18.0、酸度を0.06~0.20、糖酸比を80~200の範囲
とする)糖酸比調整工程を備える製造方法が記載されている。このような製造方法につい
て、特許文献3には、糖化発酵の時間が短縮され、製造効率が向上するとともに、得られ
る容器詰め甘酒飲料に対して、酒粕を原料に使用した甘酒飲料と同等程度又はそれ以上の
含み香の強さと後味の爽快感を付与することができるということが記載されている。
特許文献4には、甘酒液をグルコン酸又はその塩にて、pHを3.8~4.5に調整す
る工程、及びpH調整された甘酒液を105~108℃、15~30分の条件下で加熱す
る工程を含む、甘酒の製造方法が記載されている。特許文献4には、レトルト甘酒の製造
工程において高温殺菌を行うと、メイラード反応(カルボニル化合物(還元糖等)とアミ
ノ化合物(アミノ酸等)を加熱したときなどに起きる反応)により褐色物質(メラノイジ
ン)が生成されやすく、甘酒は色が白いために変色が目立ち、少しの変色でも商品価値を
失ってしまうおそれがあること、しかしながら上記のような製造方法により、加熱殺菌に
よっても変色・変質を殆ど起こさず、高品質で甘酒本来のコクや風味が優れた甘酒が得ら
れること、などが記載されている。
一方、米糀甘酒をはじめ、日本酒(清酒)、焼酎、味噌、醤油などの製造に用いること
のできる麹菌については様々なものが知られており、新たな麹菌の菌株の開発も行われて
いる。例えば、特許文献5には、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)CK3
3-3株などが記載されている。当該菌株について、引用文献5には、グルコアミラーゼ
活性およびαアミラーゼ活性は親株(AOK3006株)と同程度の高さを維持しつつ、
米糀の褐変の原因となるチロシナーゼ活性は親株よりはるかに低く、醸造した清酒中に生
成するアミノ酸が少なく、すっきりした呈味を生じるということが記載されている。
特許文献6には、免疫作用に関係する化合物、14-デヒドロエルゴステロール(14
-DHE)を産生する麹菌が多数例示されており、その中の一つにAOK1598株が含
まれている。
特開2020-127367号公報 特開平11-196830号公報 特開2019-140992号公報 特開2008-283886号公報 特開2015-19605号公報(特許5803009号) 特開2013-138617号公報
倉橋敦・小黒芳史,麹甘酒に含まれる成分について,日本醸造協会誌 112巻10号,p.668-674,2017.
米糀甘酒は、アルコールフリーの飲料である点で、アルコール耐性を持たない人や子供
も飲用できるが、甘みが強いと感じたり、蒸米の残渣の食感が苦手で飲みにくいと感じた
りする人もいる。優れた発酵食品である米糀甘酒の魅力を、従来の米糀甘酒の需用者以外
の人にも体感してもらえるような、新たな飲料が求められている。
本発明は、米糀甘酒に由来する新たな飲料を提供することを課題とする。
本発明者は、米糀甘酒の製造方法において次のような特徴を取り入れることにより、米
糀甘酒に由来する新しいタイプの飲料(本明細書において「コージドリンク」と呼ぶ。)
が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。1点目は、発酵(糖化)工程で
用いる麹菌として特定の2種類(黄麹菌および白麹菌)を選択し、それぞれから特徴の異
なる風味を有する糖化液、すなわち比較的甘さがあり、好ましくはスッキリした味わいの
糖化液と、クエン酸を比較的豊富に含む酸味のある糖化液とを得て、ブレンドする点であ
る。2点目は、発酵工程において得られた2種類の糖化液をそれぞれ圧搾し、限外濾過ま
たは精密濾過により処理して、不溶性固形分を徹底的に除去し、透明な液体とする点であ
る。3点目は、発酵工程で用いる特定の2種類の麹菌が有するチロシナーゼ活性による作
用、さらに通常加熱殺菌工程で起きるメイラード反応を活かして、透明な液体に適度な着
色を付与する点である。これらの特徴が有機的に複合された本発明の製造方法によって、
従来の米糀甘酒のように栄養分を豊富に含みつつ、フルーツのような爽やかな酸味の中に
上品な甘さが感じられるクリアな味わいに仕上がり、かつ透明感のあるきれいな黄金色の
コージドリンクが得られることとなる。
すなわち、本発明は少なくとも下記の事項を含む。
[項1]
下記(1)~(4)の工程を含む、米糀甘酒由来飲料の製造方法。
(1)下記(1A)および(1B)を行う発酵(糖化)工程。
(1A)アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)の米糀と、蒸米と、水とを、
1:0.5±0.1:5±1の比率(重量比)で混合し、55℃±5℃の温度で8時間±
2時間 発酵させることにより、糖化液を得る(以下、得られた糖化液を「糖化液A」と
呼ぶ。)。
(1B)アスペルギルス・ルチエンシス・カワチ(Aspergillus luchuensis mut. kawa
chii)AOK1598株の米糀と、水とを、1:5±1の比率(重量比)で混合し、55
℃±5℃の温度で8時間±2時間発酵させることにより、糖化液を得る(以下、得られた
糖化液を「糖化液B」と呼ぶ。)。
(2)圧搾工程
糖化液Aおよび糖化液Bをそれぞれ圧搾し、圧搾液を得る工程(以下、得られた圧搾液
をそれぞれ「圧搾液A」および「圧搾液B」と呼ぶ。)。
(3)限外/精密濾過工程
圧搾液Aおよび圧搾液Bをそれぞれ限外濾過処理または精密濾過処理し、濾液を得る工
程(以下、得られた濾液をそれぞれ「濾液A」および「濾液B」と呼ぶ。)。
(4)ブレンド工程
濾液Aと、濾液Bとを、3±2~7±2の比率(体積比)でブレンドする工程。
[項2]
前記アスペルギルス・オリゼがCK33株またはそれに由来する変異株である、項1に
記載の製造方法。
[項3]
さらに、充填・密封工程および加熱殺菌工程を含む、項1または2に記載の製造方法。
[項4]
添加物または希釈により糖度を調製する工程、および/または添加物により酸度を調整
する工程を含まない、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
[項5]
項1~4のいずれか一項に記載の製造方法により得られる、米糀甘酒由来飲料。
[項6]
下記(i)~(iv)の性状を有する、米糀甘酒由来飲料。
(i)糖度(Brix値)が12~15の範囲である。
(ii)酸度(クエン酸換算濃度)が0.10~0.30g/100gの範囲である。
(iii)水分が80~90%の範囲である。
(iv)濁度が0.5NTU以下である。
[項7]
さらに下記(v)の性状を有する、項6に記載の米糀甘酒由来飲料。
(v)pHが3.00~4.00の範囲である。
本発明の飲料の製造方法では、発酵のために特徴の異なる2種類の麹菌(黄麹菌および
白麹菌)を用いるという特徴と、圧搾および限外/精密濾過処理を行うという特徴が相ま
って、好ましくはさらに、発酵工程における着色および加熱殺菌工程におけるメイラード
反応による着色を活かして、従来の米糀甘酒のイメージには当てはまらない、風味と見た
目の両面から斬新な米糀甘酒由来の飲料(コージドリンク)を製造することができる。ま
た、本発明では甘味料、酸味料、保存料等の添加物を用いたり、希釈して濃度を調節した
りする必要が全くなく、本発明の製造方法で規定する所定の麹菌および処理のみにより、
特長的な風味および外観を有するコージドリンクが得られる。
本発明では、糀(菌)の色からそれぞれ「黄麹菌」および「白麹菌」と呼ばれることも
ある、2種類の麹菌、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)およびアスペルギ
ルス・ルチエンシス・カワチ(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)を用いる。本明
細書において、特に断らない限り、「黄麹菌」は「アスペルギルス・オリゼ」を指し、「
白麹菌」は「アスペルギルス・ルチエンシス・カワチ」を指す。
黄麹菌(アスペルギルス・オリゼ)は、比較的高いグルコアミラーゼ活性を有するため、比較的甘さがある(糖度が高い)糖化液を産生する。黄麹菌の菌株としては様々なものが公知となっており、本発明では適切な菌株を選択して用いることができる。本発明における黄麹菌の菌株としては、例えば、アスペルギルス・オリゼの「CK33株」(「CK33-3株」と表記されることもある、特許微生物寄託センターの寄託番号「NITE P-01637」、特許文献参照)が好ましい。CK33株は、黄麹菌の中でもグルコアミラーゼ活性が比較的高く、得られる米糀の甘みが強い一方、チロシナーゼ活性が比較的低く、米糀の褐変が抑制され、またペプチダーゼ活性も比較的低く、米糀のアミノ酸度が抑制されてスッキリした香味となるなどの特徴を有する。CK33株は、秋田県総合食品研究センターから入手可能である(ただし、後述するようにCK33株を用いた米糀(あめこうじ)を製造するためには、当該センターが定めた認定基準に合格する必要がある)。また、本発明では、黄麹菌として、グルコアミラーゼ活性、チロシナーゼ活性、ペプチダーゼ活性などについてCK33株と同等またはそれより優れた形質、あるいは所望の風味、性状を有するコージドリンクを得るために適したその他の形質を有する、CK33株に由来する変異株や、CK33株およびその変異株以外の菌株を用いることも好ましい。
アスペルギルス・ルチエンシス・カワチ(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)は
、以前はアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)またはアスペルギルス・アワ
モリ(Aspergillus awamori)と分類されていたこともある菌株であり、比較的酸味のあ
る(クエン酸濃度の高い)糖化液を産生する。白麹菌の菌株としては様々なものが公知と
なっているが、本発明における白麹菌としては、アスペルギルス・ルチエンシス・カワチ
の「AOK1598株」が特に好ましい。AOK1598株は、白麹菌の中でもクエン酸
の産生能が比較的高く、得られる米糀の酸味が比較的強いなどの特徴を有する。AOK1
598株は、株式会社秋田今野商店から入手可能である。また、本発明では、白麹菌とし
て、クエン酸産生能などについてAOK1598株と同等またはそれより優れた形質、あ
るいは所望の風味、性状を有するコージドリンクを得るために適したその他の形質を有す
る、AOK1598株に由来する変異株や、AOK1598株およびその変異株以外の菌
株を用いることも可能である。
―米糀甘酒由来飲料の製造方法―
本発明の米糀甘酒由来飲料(コージドリンク)の製造方法は、少なくとも以下に記載す
る工程(1)~(4)を含み、必要に応じてその他の工程を含むことができる。
(1)発酵(糖化)工程
発酵工程は、以下に記載する工程(1A)および工程(1B)を行う工程である。
工程(1A)は、「CK33株」の米糀と、蒸米と、水とを、所定の比率で混合し、所
定の温度で所定の時間、発酵させることにより、糖化液Aを得る工程である。工程(1A
)の「所定の比率」(重量比)は、「CK33株」の米糀1に対して、蒸米が0.5±0
.1、好ましくは0.5±0.05であり、水が5±1、好ましくは5±0.5である。
工程(1A)の「所定の温度」は、55℃±5℃、好ましくは55℃±3℃である。工程
(1A)の「所定の時間」は、8時間±2時間、好ましくは8時間±1時間である。
工程(1B)は、「AOK1598株」の米糀と、水とを、所定の比率で混合し、所定
の温度で所定の時間、発酵させることにより、糖化液Bを得る工程である。工程(1B)
の「所定の比率」(重量比)は、「AOK1598株」の米糀1に対して、水が5±1、
好ましくは5±0.5である。工程(1B)の「所定の温度」は、55℃±5℃、好まし
くは55℃±3℃である。工程(1B)の「所定の時間」は、8時間±2時間、好ましく
は8時間±1時間である。
なお、上記の比率で混合される工程(1A)および(1B)の原料混合物は、通常の米
糀甘酒の原料混合物と比較して、2~2.5倍程度薄い(水の割合が相対的に多い)。本
発明では、混合比を上記の特定の範囲とすることにより、工程(1A)および(1B)に
より得られる糖化液の糖度はそれぞれ約15度またはそれ以下となり、加水等により濃度
調整をすることなく、そのまま次の圧搾工程等に用いることができる(従来の甘酒ではし
ばしば加水により糖度調整を行っている)。また、発酵(糖化)工程における、上記所定
の麹菌が有するチロシナーゼ活性の作用が、コージドリンクが有する適度な着色に寄与し
ている。
(2)圧搾工程
圧搾工程は、糖化液Aおよび糖化液Bをそれぞれ圧搾処理し、圧搾液Aおよび圧搾液B
を得る(酒粕と分離する)工程である。圧搾処理のための手段(様式、装置、フィルター
等)は特に限定されるものではないが、例えば、日本酒の製造に用いられる酒槽が挙げら
れる。酒槽を用いる場合、酒袋(例えば、木綿製、ナイロン等の化学繊維製)に糖化液を
小分けにしていれて、酒袋を酒槽に重ね、上から半手動の油圧で絞ることにより、圧搾液
を得ることができる。しかしながら、圧搾手段は酒槽に限定されるものではなく、例えば
自動圧搾機など、日本酒の製造において用いられている酒槽以外のものであってもよい。
なお、自動圧搾機の中には圧搾と濾過を兼ねた処理を行うものもあるが、一般的には、
その濾過処理は分離性能の面から限外/精密濾過処理には相当しないものである。そのよ
うな自動圧搾機を用いる場合は、圧搾工程とは別に、次に述べる限外/精密濾過工程を行
う必要がある。
(3)限外/精密濾過工程
限外/精密濾過工程は、圧搾液Aおよび圧搾液Bをそれぞれ限外濾過処理または精密濾
過処理、好ましくは限外濾過処理し、濾液Aおよび濾液Bを得る工程である。限外/精密
濾過処理のための手段(様式、装置、フィルター、処理条件等)は特に限定されるもので
はないが、例えば、日本酒の製造において用いられている限外/精密濾過処理と同様の手
段を用いることができる。日本酒の製造では、圧搾液中に含まれる微生物(直径0.5~
0.6μm程度の火落菌等)やタンパク質(酵素等)のコロイド粒子などを除去するため
に、中空糸フィルターなどを用いて限外濾過処理または精密濾過処理を行っており、本発
明でもそれに準じて限外濾過処理または精密濾過処理を行うことができる。限外濾過用の
中空糸フィルターの孔径は、一般的に0.2μm以下であり、例えば0.001~0.0
1μmである。精密濾過用の中空糸フィルターの孔径は、一般的に3~0.2μmである
。限外濾過用の分画分子量(中空糸膜で濾過した際、その90%が排除される基準蛋白質
の分子量)は、例えば3,000~200,000である。限外濾過用または精密濾過用
の中空糸フィルターの素材は、特に限定されるものではないが、例えばポリスルホン系樹
脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂
、酢酸セルローズ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコー
ル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、
ポリイミド系樹脂などが挙げられる。限外濾過用の中空糸フィルターとしては、例えば、
「YG式SFフィルター」(山中技研工業株式会社、分離特性0.02~0.85μm)
が挙げられる。
なお、日本酒等の濾過処理としては、活性炭を投入した後に濾過を行う「炭素濾過」も
知られているが、味や香りに関係する成分も吸着され、香味が調整されてしまう。本発明
における限外/精密濾過工程は、そのような炭素濾過ではなく、中空糸フィルター等を用
いたものであり、香味の調整が行われない「素濾過」に相当するものである。
(4)ブレンド工程
ブレンド工程は、濾液Aと、濾液Bとを、所定の比率でブレンドし、コージドリンクと
して得る工程である。工程(4)の「所定の比率」(体積比、ほぼ重量比に等しい)は、
3±2~7±2、好ましくは3±1~7±1である。
本発明の製造方法が、上記工程(1)~(4)以外に必要に応じて含んでいてもよい工
程としては、例えば、原料調製工程、充填・打栓工程、殺菌工程などが挙げられる。発酵
工程(1)で用いる原料、すなわち2種類の米糀および蒸米はそれぞれ、製造者が発酵工
程(1)に先立つ工程(原料調製工程)で調製してもよいし、あらかじめ別途調製された
ものを入手することで用意してもよい。また、本発明の製造方法により得られた飲料を製
品として市場に流通させる場合は、通常、ブレンド工程(4)の後、得られた飲料を適切
な容器に充填して打栓する工程および殺菌する工程が行われる。
(P1)原料調製工程
米糀は、一般的には、適切な酒米を選択し、精米し(例えば吟醸用である精米歩合60
%以下)、蒸した酒米に種糀を捲いてよく混ぜ、適切な温度で適切な時間保持することに
より調製することができる。本発明では、種糀としてCK33株およびAOK1598株
を用い、これらの菌株に応じた適切な条件下で、それぞれの米糀を得るようにすればよい
。なお、「CK33株」の米糀は、前述したような特徴から「あめこうじ」(登録商標)
と名付けられ、その製品は一定水準の品質を保持するよう管理されている。「あめこうじ
」は、秋田県総合食品研究センターが定めた認定基準に合格した製造認定事業者(例えば
秋田清酒株式会社)が製造することができ、そこから入手することもできる。一方、米飯
は、常法に従って、適切な飯米を選択し、精米し、蒸す(炊飯する)ことにより得られる
(P2)充填・密封工程
ブレンド工程により得られたコージドリンクは、一般的な飲料と同様に、常法に従って
、適切な容器(例えば瓶、ボトル、金属缶、パウチ等)に充填し、打栓、スクリュー等に
より密封することができる。
(P3)加熱殺菌工程
容器に充填・密封されたコージドリンクは、一般的な飲料(清涼飲料水)と同様に、常
法に従って、加熱殺菌(レトルト殺菌)することができる。加熱殺菌のための手段(様式
、装置等)は特に限定されるものではなく、例えば一般的な飲料用の加熱殺菌装置を用い
ることができる。加熱殺菌の温度条件および時間条件は適宜調節することができるが、例
えば、酵素および菌の不活性化を完全なものとするため、120℃で30分間、あるいは
これと同等以上の殺菌効果が得られる温度および時間とすることができる。また、コージ
ドリンクのpHは通常4.0以下(未満)であるので、65℃で10分間、あるいはこれ
と同等以上の殺菌効果が得られる温度および時間としてもよい。なお、加熱殺菌工程にお
いてメイラード反応が起きることが、コージドリンクが有する適度な着色に寄与している
。また、本発明の製造方法では、限外/精密濾過工程を行うことによっても除菌できるた
め、それに続けて充填・密封工程を自動的に行う場合は、加熱殺菌工程を行わないことも
可能である。
―米糀甘酒由来飲料(コージドリンク)―
本発明の米糀甘酒由来飲料(コージドリンク)は、本明細書に記載したような製造方法
により得られるものであり、例えば、次のような特長的な性状を有する、米糀甘酒に由来
する飲料として表すこともできる。
(i)糖度(Brix値)
コージドリンクの糖度(Brix値)、すなわち飲料中の可溶性固形分のグルコース換
算濃度は、通常、12~15の範囲である。糖度は、一般的な測定機器、例えば示差濃度
計を用いて測定することができるが、同等の測定値が得られるその他の方法、例えばHP
LCにより測定したグルコースの濃度を、上記の糖度とみなすことも可能である。なお、
従来の米糀甘酒に添加されることのあった甘味料(例えば砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化
糖、水あめ、ハチミツ、ステビア、スクラロース等)は、コージドリンクには添加する必
要がない。本発明の製造方法では、甘味料を添加することなく、また発酵工程以外の工程
により糖度を調整することなく、上記のような範囲の糖度を達成することができる。
(ii)酸度(クエン酸換算濃度)
コージドリンクの酸度、すなわち飲料中のクエン酸換算濃度は、通常、0.10~0.
30(g/100g)の範囲である。酸度は、一般的に、0.1mol/L水酸化ナトリ
ウム標準液を用いた電位差滴定法により算出され、一般的な測定機器、例えば自動滴定装
置を用いて測定することができるが、同等の測定値が得られるその他の方法、例えばHP
LCにより測定したクエン酸の濃度を、上記の酸度とみなすことも可能である。コージド
リンクに含まれる酸はほとんど(実質的に全て)クエン酸であり、乳酸、コハク酸、リン
ゴ酸などのその他の酸はほとんど(実質的に全く)含まれていない。コージドリンクの酸
度を、清酒の酸度と同様に国税庁所定分析法による測定値(水酸化ナトリウム換算)とし
て表した場合、5.0±2.0(mmol/100mL)の範囲としてもよい。なお、従
来の米糀甘酒に添加されることのあった酸味料(例えばクエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸
、酒石酸、リン酸、あるいはこれらを含む酢、レモン汁、梅エキス等)は、本発明の飲料
には添加する必要がない。本発明の製造方法では、酸味料を添加することなく、また発酵
工程以外の工程により酸度を調整することなく、上記のような範囲の酸度を達成すること
ができる。
(iii)水分
コージドリンクの水分(重量比)は、通常、80~90%の範囲である。逆に言えば、
本発明の飲料に含まれる(溶解している)固形分(重量比)は、通常10~20%の範囲
である。水分は、一般的な手法により、例えば減圧加熱乾燥法により測定することができ
る。なお、コージドリンクは不溶性固形分は実質的に全く含んでおらず(検出できない)
、上記「固形分」は実質的に全て溶解しているものである。
(iv)濁度(比濁法測定値)
コージドリンクの濁度は、通常、0.5(NTU:比濁法濁度単位)以下である。濁度
の下限値は特に限定されるものではないが、例えば0.1NTU以上である。濁度は、比
濁法、例えば、低い濁度の測定にも適し、試料(コージドリンク)の色の影響を受けにく
い、透過・散乱光方式、(90°、表面、または前方)散乱光方式、または積分球方式を
用いる一般的な測定機(濁度計)により、測定することができる。
(v)pH
コージドリンクのpH(冷蔵時の温度、例えば10℃)は、通常、3.00~4.00
、好ましくは3.25~3.75の範囲である。pHは一般的な手法により、例えばpH
測定機により、測定することができる。
コージドリンクは、原料の米糀および米に由来し、本発明で用いる特定の2種類の麹菌
が発酵工程において生成する、健康や美容によい栄養分、例えば、ブドウ糖(グルコース
)、オリゴ糖(イソマルトース等)などの糖類;ビタミンB群(ビタミンB6等)などの
水溶性ビタミン;クエン酸、コハク酸等の有機酸;各種アミノ酸などを豊富に含んでいる
。コージドリンクは、そのままストレートで飲用してもよいし、氷を入れてロックで、ま
たは炭酸水で割って飲用してもよい。スムージーやその他のフルーツジュースなどと混ぜ
たり、焼酎やウォッカなどのアルコールで割ったりして飲用することもできる。温めて飲
用した場合は、糀の香りがたち、ホットレモンのような味わいになる。
以下の工程により本発明の米糀甘酒由来飲料(コージドリンク)を製造した。
1)原料の製造および加工
「CK33株」の米糀(秋田県総合食品研究センターの認定基準を満たしたもの、以下
「あめこうじ」と呼ぶ。)と、「AOK1598株」の米糀(以下「白糀」と呼ぶ。)を
、それぞれ秋田県産の酒米を用いて製造した。また、蒸米用に、秋田県産の飯米を精米し
た。
2)発酵(糖化)
あめこうじおよび白糀をそれぞれ、水と、Aについてはさらに蒸米と、以下の比率で混
合し、55℃±5℃の温度で8時間発酵させて、糖化液を製造した。
[A]あめこうじ:蒸米:水=1:0.5:5
[B]白糀:水=1:5
3)圧搾
糖化液AおよびBをそれぞれ、圧搾機として酒槽を用いて圧搾し、圧搾液AおよびBを
得た。糖化液AおよびBをそれぞれ酒袋に小分けにして入れ、酒袋を酒槽に重ね、上から
半手動の油圧で絞った。
4)濾過
圧搾液AおよびBをそれぞれ、中空糸フィルターを用いて限外濾過処理し、濾液Aおよ
びBを得た。
5)ブレンド
濾液AおよびBを3:7の比率でブレンドし、コージドリンクを得た。
6)充填・打栓
得られたコージドリンクを瓶に充填し、打栓した。
7)殺菌
瓶詰めされたコージドリンクを加熱殺菌し、封印シールを貼付した。
上記のように製造されたコージドリンクの性状は次のようなものであった。
糖度(HPLCにより測定したグルコース濃度):12.7(g/100g)
酸度(HPLCにより測定したクエン酸濃度):0.22(g/100g)
水分(減圧加熱乾燥法により測定):85.2(g/100g)
ビタミンB6:0.011(mg/100g)
濁度(90°散乱光方式の濁度計で測定):0.18NTU
酸度(水酸化ナトリウム濃度換算値):5.3(mmol/100mL)
pH:3.55
上記のように製造されたコージドリンクを複数名に試飲してもらったところ、「イメー
ジしていた甘酒とは見た目も味も全く違い、飲みやすかった。」、「甘酒の概念を完全に
ひっくり返す飲み物。糀を使ってこんな味が作れるのは驚いた。」、「今までの甘酒はの
どに引っかかって飲みづらいけど、これは本当にすっきりしていて毎日飲みたいレベルで
感動した。」、「栄養満点、砂糖不使用、とてもヘルシーなのに、スポーツドリンクのよ
うに飲みやすくサラサラと身体に染みわたる、新感覚ドリンク。」などの感想が寄せられ
た。

Claims (6)

  1. 下記(1)~(4)の工程を含む、米糀甘酒由来飲料の製造方法。
    (1)下記(1A)および(1B)を行う発酵(糖化)工程。
    (1A)アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)の米糀と、蒸米と、水とを、1:0.5±0.1:5±1の比率(重量比)で混合し、55℃±5℃の温度で8時間±2時間発酵させることにより、糖化液を得る(以下、得られた糖化液を「糖化液A」と呼ぶ。)。
    (1B)アスペルギルス・ルチエンシス・カワチ(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)AOK1598株の米糀と、水とを、1:5±1の比率(重量比)で混合し、55℃±5℃の温度で8時間±2時間発酵させることにより、糖化液を得る(以下、得られた糖化液を「糖化液B」と呼ぶ。)。
    (2)圧搾工程
    糖化液Aおよび糖化液Bをそれぞれ圧搾し、圧搾液を得る工程(以下、得られた圧搾液をそれぞれ「圧搾液A」および「圧搾液B」と呼ぶ。)。
    (3)限外/精密濾過工程
    圧搾液Aおよび圧搾液Bをそれぞれ限外濾過処理または精密濾過処理し、濾液を得る工程(以下、得られた濾液をそれぞれ「濾液A」および「濾液B」と呼ぶ。)。
    (4)ブレンド工程
    濾液Aと、濾液Bとを、3±2~7±2の比率(体積比)でブレンドする工程。
  2. 前記アスペルギルス・オリゼがCK33株またはそれに由来する変異株である、請求項1に記載の製造方法。
  3. さらに、充填・密封工程および加熱殺菌工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  4. 添加物または希釈により糖度を調製する工程、および/または添加物により酸度を調整する工程を含まない、請求項1に記載の製造方法。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法により得られた、下記(i)~(iv)の性状を有する、米糀甘酒由来飲料。
    (i)糖度(Brix値)が12~15の範囲である。
    (ii)酸度(クエン酸換算濃度)が0.10~0.30g/100gの範囲である。
    (iii)水分が80~90%の範囲である。
    (iv)濁度が0.5NTU以下である。
  6. さらに下記(v)の性状を有する、請求項5に記載の米糀甘酒由来飲料。
    (v)pHが3.00~4.00の範囲である。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Non-Patent Citations (1)

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Title
よりすっきりとした甘さにリニューアル!「透きとおった甘酒 125ml」を2月1日より全国発売開始いたします。, ニュースリリース ハナマルキ[online ],2020年1月14日[検索日:2022年9月12日], retrieved from the internet <URL:https://www.hanamaruki.co.jp/news/202001148874.html>

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