JP7223338B2 - 電動車両のバッテリユニット取付構造 - Google Patents
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Description
通常、バッテリユニットは、リチウムイオン等のバッテリセルの集合体からなる複数のバッテリモジュールと、これら複数のバッテリモジュールを収容するバッテリケースと、このバッテリケースの骨格フレーム等によって構成されている。
ドラミングノイズは、20~50Hzの低周波音であり、ロードノイズは、100~400Hzの中周波音である。ドラミングノイズを含めてロードノイズと呼ばれることもある。ドラミングノイズやロードノイズ等の走行騒音は、制振材の追加や下部車体剛性の増加によって対策されている。
そこで、バッテリユニットと走行騒音との関連性を明らかにすることを目的として、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション解析を行った。
バッテリユニットを搭載していない車両モデルA(評価基準モデル)と、バッテリユニット以外モデルAと略同仕様とされてバッテリユニットを搭載した車両モデルBとを作成し、モデルA,Bについて各周波数帯域における車体振動を夫々算出した。尚、バッテリユニットは、総重量300kgとされ、同一形状で且つ同一姿勢に整列された16個のバッテリモジュールが強固に支持されている。また、各々のモデルのフロアパネル前部、中部、及び後部を節点に設定し、車体振動の評価指標として、放射される音響パワーに対応する等価放射エネルギ(ERP:Equivalent Radiation Energy)を各節点の変位から算出した。
尚、(a)は、フロアパネル前部領域、(b)は、フロアパネル中部領域、(c)は、フロアパネル後部領域の振動特性を示している。
図12(a)~図12(c)に示すように、バッテリユニットを搭載した破線で示すモデルBは、約200Hz付近の周波数帯域で走行騒音が発生し、バッテリユニットを搭載していない実線で示すモデルAよりもロードノイズ性能が悪化することが知見された。
制振材の追加や下部車体剛性の増加、例えば、車体骨格フレームの厚肉化等、により中周波域の車体振動を抑制することも考えられる。
しかし、バッテリユニットに加えて、制振材等を追加した場合、車体重量が大幅に増加し、燃費悪化を招く虞がある。即ち、バッテリモジュールを搭載しつつ走行騒音を低減することは容易ではない。
前記フロアフレームの車幅方向の曲げ剛性に対する前記バッテリケースの車幅方向の曲げ剛性の剛性比を0.1以上に設定したため、バッテリケースを介して一方のフロアフレームの車幅方向の変位を他方のフロアフレームに伝達することにより1対のフロアフレームの車幅方向の挙動を同期させることができ、フロアパネルの面外変形を抑制してロードノイズを低減することができる。
この構成によれば、バッテリトレイの剛性に拘りなくバッテリケースの車幅方向の曲げ剛性を設定することができ、バッテリユニットの軽量化を図ることができる。
この構成によれば、連結壁部と固壁定部とが形成する屈曲部によってモジュール支持部材の車幅方向の曲げ剛性を高くすることができる。
この構成によれば、フロアフレームの車幅方向の曲げ剛性に対する取付ブラケットの車幅方向の曲げ剛性の剛性比を容易に設定することができる。
この構成によれば、複数のバッテリモジュールを支持する取付ブラケットを一体化することができ、一層モジュール支持部材の車幅方向の曲げ剛性を高くすることができる。
この構成によれば、最小限の重量増加でロードノイズを低減することができる。
本実施例1に係る車両Vは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(図示略)と車両駆動用の電動機(モータジェネレータ)(図示略)とを駆動源としたハイブリッド自動車である。
サイドシル1は、車幅方向外側壁部を構成する断面略ハット状のアウタパネルと、車幅方向内側壁部を構成する断面略ハット状のインナパネルとを備え、両パネルが協働して前後に延びる略矩形状の閉断面を形成している。このサイドシル1の前端側部分には、上下に延びるヒンジピラーが連結され、後端側部分には、上下に延びるリヤピラーが連結されている。尚、この車両Vは、フロントドアが前端部分に形成されたヒンジピラーのヒンジ中心に開閉され、リヤドアが後端部分に形成されたリヤピラーのヒンジ中心に開閉される、所謂観音開きタイプのドア構造であり、センターピラーが省略されている。
図1,図2,図8に示すように、このフロアパネル2は、前席乗員用シート(図示略)が搭載されるフロントパネル2aと、このフロントパネル2aの後端から後方上り傾斜状に上方に起立したキックアップパネル2cを介して後方に連なり後席乗員用シート(図示略)が搭載されるリヤパネル2bとを備えている。尚、前席右側シートがドライバシートとされている。
図1~図3に示すように、バッテリユニット10は、フロアパネル2の下方空間にレイアウトされている。このバッテリユニット10は、複数(例えば、16個)のバッテリモジュール11と、これら複数のバッテリモジュール11を収容するバッテリケース12によって構成されている。車両駆動用電動機に電力を供給するバッテリモジュール11は、規格電圧を有する直方体形状の複数のバッテリセル11a(図8参照)を前後に積層状に整列させた直方体形状のバッテリ集合体に形成されている。バッテリセル11aは、例えば、2次電池の一種であるリチウムイオンバッテリである。
複数のバッテリモジュール11は、縦、横及び高さ寸法を含めて同一仕様に設定され、長手方向が前後方向と平行になる姿勢でバッテリケース12に夫々収容されている。
このバッテリモジュール11の重量は、例えば、約14kgであり、バッテリユニット10の総重量は、例えば、約300kgである。
図3に示すように、バッテリケース12は、左右1対のサイドフレーム21と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の前端部を連結するフロントフレーム22と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の後端部を連結するリヤフレーム23と、各フレーム21~23に支持されると共にバッテリケース12の底部を形成する桶状のバッテリトレイ24と、このバッテリトレイ24と協働して複数のバッテリモジュール11を収容可能な密閉空間を形成する合成樹脂製のカバー部材25等を備えている。サイドフレーム21の左右方向の曲げ剛性は、フロアフレーム3の左右方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
各フレーム21~23は、取付部26~29により車体に対して取り付けられている。
左右4対の取付部26及び左右1対の取付部27は、1対のサイドフレーム21のロアパネルから車幅方向外側に夫々延びている。これらの取付部26,27は、フロアフレーム3の下壁部にボルトbを介して夫々締結固定されている。左右1対の取付部28は、フロントフレーム22のロアパネルから前側に夫々延びている。これら取付部28は、フロントパネル2aの前側部分下面にボルトbを介して締結固定されている。取付部29は、リヤフレーム23のロアパネル中央部から上方に延び、上端部が、リヤパネル2bと協働して左右に延びる閉断面を形成するクロスメンバ(図示略)にボルトbを介して締結固定されている。
図4~図6に示すように、2段支持機構40は、略π状の前支持部41と、略π状の後支持部42と、前支持部41の左右端部と後支持部42の左右端部とを夫々連結する左右1対の略T字状の側支持部43と、各支持部41~43に掛け渡された底板部材44等を備え、上段の4個のバッテリモジュール11を支持している。前支持部41の左右1対の脚部は、第2クロスフレーム32の上壁部に締結固定され、後支持部42の左右1対の脚部は、リヤフレーム23の上壁部に締結固定されている。1対の側支持部43の脚部は、バッテリトレイ24上に締結固定されている。
取付ブラケット51~53の左右方向の曲げ剛性は、バッテリトレイ24の左右方向の曲げ剛性よりも高く且つ第1~第3クロスフレーム31~33の左右方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
第1~第3取付ブラケット51~53は、板厚、締結部位置、及び位置決め部位置を除いて略同様の仕様に設定されている。
図10に示すように、車幅方向剛性比が0.1以上の領域で車体振動が抑制されている。
これは、フロアフレーム3にバッテリケース12(バッテリモジュール11の合計)の重量が作用してフロアフレーム3の左右方向の振動振幅が抑制されることに加え、一方のフロアフレーム3の左右方向の変位をモジュール支持部材(第1取付ブラケット51及び第3クロスフレーム33)が媒体となって他方のフロアフレーム3に伝達するため、1対のフロアフレーム3の左右方向の変位が同調し、フロアパネル2による面外方向の変形が抑制されたことが要因と考えられる。
これは、フロアパネル2の面外変形以外に起因した車体振動と推測される。即ち、車幅方向剛性比が0.5を超える領域では、モジュール支持部材の剛性を高くしても、車体振動抑制の効果を得ることは難しいことを示している。
作用、効果の説明に当り、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション解析を行った。バッテリユニットを搭載していない車両モデルA(評価基準モデル)と、本実施例の車両モデルCとを作成し、モデルA,Cについて各周波数帯域における車体振動を夫々算出した。尚、車両モデルAと車両モデルCは、バッテリユニットを除いて略同一仕様である。また、車体振動の評価指標として、放射される音響パワーに対応する等価放射エネルギ(ERP:Equivalent Radiation Energy)を各々のモデルの各節点の変位から算出している。
図11(a)~図11(c)に示すように、一点鎖線で示すモデルCは、フロアパネルの略全域において、一部を除き実線で示すモデルAよりも改善されたことが確認された。特に、モデルCは、ロードノイズの原因となる約200~400Hzの周波数帯域において、フロアパネル前部の車体振動を確実に抑えることができ、ロードノイズ性能を格段に向上している。尚、本実施形態において、20~50Hzの低周波音をドラミングノイズ、100~400Hzの中周波音をロードノイズとしている。
フロアフレーム3の左右方向の曲げ剛性に対するモジュール支持部材の左右方向の曲げ剛性の剛性比を0.5以下に設定したため、最小限の重量増加でロードノイズを低減することができる。
1〕前記実施形態においては、第1~第3収容領域S1~S3と第1~第3クロスフレーム31~33とを設けたバッテリケース12の例を説明したが、少なくともモジュール支持部材の各々の左右方向の曲げ剛性が、フロアフレーム3の左右方向の曲げ剛性に対して0.1以上0.5以下に設定されれば良く、単一の収容領域と単一のクロスフレームとを備えたバッテリケース12であっても良い。
3 フロアフレーム
10 バッテリユニット
11 バッテリモジュール
12 バッテリケース
21 サイドフレーム
31 第1クロスフレーム
32 第2クロスフレーム
33 第3クロスフレーム
51 第1取付ブラケット
51a 連結壁部
51b 固定壁部
52 第2取付ブラケット
52a 連結壁部
52b 固定壁部
53 第3取付ブラケット
53a 連結壁部
53b 固定壁部
V 車両
Claims (6)
- フロアパネルと、このフロアパネルの下側にフロアパネルと協働して前後に延びる閉断面を形成する左右1対のフロアフレームと、バッテリモジュールを支持すると共に前記1対のフロアフレームに取り付けられたバッテリユニットとを備えた電動車両のバッテリユニット取付構造において、
前記バッテリユニットが、前記バッテリモジュールと、前記バッテリモジュールを収容すると共に前記1対のフロアフレームに取り付けられるバッテリケースを有し、
前記フロアフレームの車幅方向の曲げ剛性に対する前記バッテリケースの車幅方向の曲げ剛性の剛性比を0.1以上に設定したことを特徴とする電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記バッテリケースが、車体前後方向に延びて前記1対のフロアフレームに取り付けられる左右1対のサイドフレームと、車幅方向に延びて前記1対のサイドフレームを連結する前後1対のクロスフレームと、前記バッテリモジュールの前端部及び後端部を支持する前後1対のモジュール支持部材とを有し、
前記クロスフレームの車幅方向の曲げ剛性が前記モジュール支持部材の車幅方向の曲げ剛性よりも高く設定され且つ前記サイドフレームの車幅方向の曲げ剛性に対する前記モジュール支持部材の車幅方向の曲げ剛性の剛性比を0.1以上に設定したことを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記モジュール支持部材が、上下方向に延びて前記バッテリモジュールに連結される連結壁部と、前記連結壁部の下端部から前記バッテリモジュールと反対方向に延びる固壁定部とを備えた取付ブラケットを有することを特徴とする請求項2に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
- 前記バッテリケースが、前記バッテリモジュールの下側を覆うバッテリトレイを有し、
前記バッテリトレイの車幅方向の曲げ剛性が前記取付ブラケットの車幅方向の曲げ剛性よりも低く設定されたことを特徴とする請求項3に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記取付ブラケットが、車幅方向に隣り合う複数の前記バッテリモジュールを支持することを特徴とする請求項3又は4に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
- 前記フロアフレームの車幅方向の曲げ剛性に対する前記モジュール支持部材の車幅方向の曲げ剛性の剛性比を0.5以下に設定したことを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
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