JP7223339B2 - 電動車両のバッテリユニット取付構造 - Google Patents
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Description
通常、バッテリユニットは、リチウムイオン等のバッテリセルの集合体からなる複数のバッテリモジュールと、これら複数のバッテリモジュールを収容するバッテリケースと、このバッテリケースの骨格フレーム等によって構成されている。
ドラミングノイズは、20~50Hzの低周波音であり、ロードノイズは、100~400Hzの中周波音である。ドラミングノイズを含めてロードノイズと呼ばれることもある。ドラミングノイズやロードノイズ等の走行騒音は、制振材の追加や下部車体剛性の増加によって対策されている(例えば、特許文献2)。
図13(a)に示すように、左側及び右側バッテリモジュールBL,BRを車体下部の左半部と右半部とに搭載した場合、これらのバッテリモジュールBL,BRは、各々の重心を通る回転軸線G回りに独立した回転運動を行うことから、これらの回転運動に起因したフロアパネルの面外変形が誘発される。それ故、バッテリモジュールBL,BRの取付剛性を高くして各々の回転軸線G回りの回転運動を抑制することにより、フロアパネルの面外変形を抑制し、ロードノイズを改善することが可能である。
車両走行時、乗員の操舵に伴う車両のロール運動が大きい程、乗員が車両の振動減衰性を認識することができ、乗り心地が向上する。図13(b)に示すように、左側及び右側バッテリモジュールBL,BRを車体下部の左半部と右半部とに搭載した場合、これらのバッテリモジュールBL,BRを両者の中間に設定された前後に延びるロール軸線R回りに一体的にロール運動させることで、車両のロール運動が助長(増幅)される。それ故、バッテリモジュールBL,BRの取付剛性を低くしてロール軸線R回りのロール運動を助長することにより、車両の振動減衰性を高め、乗り心地を改善することが可能である。
即ち、バッテリモジュールの取付剛性という側面において、ロードノイズ改善と乗り心地改善とは相反する要求である。
前記フロアパネルが20~50Hzの周波数で振動すると共に前記バッテリモジュールが車幅方向中央部を車体前後方向に延びる軸線回りにロール運動する際、前記バッテリモジュールの車幅方向端部の上下方向の振れ幅を振動振幅としたとき、前記バッテリケースに取り付けられる一部のバッテリモジュールの取付剛性を前記振動振幅のピーク値を低下させるように前記バッテリケースに取り付けられる他のバッテリモジュールの取付剛性に対して低下させているため、一部のバッテリモジュールの取付剛性を用いて車両の振動減衰性を高くすることができ、他のバッテリモジュールの取付剛性を用いて車両のロードノイズを抑制することができる。
この構成によれば、車体振動に対して影響の大きい一端側の列のバッテリモジュールの取付剛性を変更することにより、振動減衰性を高くすることができる。
この構成によれば、同一のバッテリモジュールの取付部のうち乗り心地に対して影響の大きい端部側の取付部の取付剛性を低下させることにより、振動減衰性を高くすることができる。
この構成によれば、取付部の位置変更で振動減衰性を高くすることができる。
この構成によれば、取付部の数で振動減衰性を高くすることができる。
この構成によれば、前席乗員の乗り心地性能を集中的に改善することができる。
この構成によれば、前席乗員の乗り心地性能に対して影響が大きい前席乗員の足元の振動減衰性を高くすることができる。
この構成によれば、簡単な構成で前席乗員の足元の振動減衰性を高くすることができる。
本実施例1に係る車両Vは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(図示略)と車両駆動用の電動機(モータジェネレータ)(図示略)とを駆動源としたハイブリッド自動車である。
サイドシル1は、車幅方向外側壁部を構成する断面略ハット状のアウタパネルと、車幅方向内側壁部を構成する断面略ハット状のインナパネルとを備え、両パネルが協働して前後に延びる略矩形状の閉断面を形成している。このサイドシル1の前端側部分には、上下に延びるヒンジピラーが連結され、後端側部分には、上下に延びるリヤピラーが連結されている。尚、この車両Vは、フロントドアが前端部分に形成されたヒンジピラーのヒンジ中心に開閉され、リヤドアが後端部分に形成されたリヤピラーのヒンジ中心に開閉される、所謂観音開きタイプのドア構造であり、センターピラーが省略されている。
図1,図2,図8に示すように、このフロアパネル2は、前席乗員用シート(図示略)が搭載されるフロントパネル2aと、このフロントパネル2aの後端から後方上り傾斜状に上方に起立したキックアップパネル2cを介して後方に連なり後席乗員用シート(図示略)が搭載されるリヤパネル2bとを備えている。尚、前席右側シートがドライバシートとされている。
図1~図3に示すように、バッテリユニット10は、フロアパネル2の下方空間にレイアウトされている。このバッテリユニット10は、複数(例えば、16個)のバッテリモジュール11と、これら複数のバッテリモジュール11を収容するバッテリケース12によって構成されている。車両駆動用電動機に電力を供給するバッテリモジュール11は、規格電圧を有する直方体形状の複数のバッテリセル11a(図8参照)を前後に積層状に整列させた直方体形状のバッテリ集合体に形成されている。バッテリセル11aは、例えば、2次電池の一種であるリチウムイオンバッテリである。
複数のバッテリモジュール11は、縦、横及び高さ寸法を含めて同一仕様に設定され、長手方向が前後方向と平行になる姿勢でバッテリケース12に夫々収容されている。
このバッテリモジュール11の重量は、例えば、約14kgであり、バッテリユニット10の総重量は、例えば、約300kgである。
図3に示すように、バッテリケース12は、左右1対のサイドフレーム21と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の前端部を連結するフロントフレーム22と、左右に延びて1対のサイドフレーム21の後端部を連結するリヤフレーム23と、各フレーム21~23に支持されると共にバッテリケース12の底部を形成する桶状のバッテリトレイ24と、このバッテリトレイ24と協働して複数のバッテリモジュール11を収容可能な密閉空間を形成する合成樹脂製のカバー部材25等を備えている。サイドフレーム21の上下方向の曲げ剛性は、フロアフレーム3の上下方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
各フレーム21~23は、取付部26~29により車体に対して取り付けられている。
左右4対の取付部26及び左右1対の取付部27は、1対のサイドフレーム21のロアパネルから車幅方向外側に夫々延びている。これらの取付部26,27は、フロアフレーム3の下壁部にボルトbを介して夫々締結固定されている。左右1対の取付部28は、フロントフレーム22のロアパネルから前側に夫々延びている。これら取付部28は、フロントパネル2aの前側部分下面にボルトbを介して締結固定されている。取付部29は、リヤフレーム23のロアパネル中央部から上方に延び、上端部が、リヤパネル2bと協働して左右に延びる閉断面を形成するクロスメンバ(図示略)にボルトbを介して締結固定されている。
図4~図6に示すように、2段支持機構40は、略π状の前支持部41と、略π状の後支持部42と、前支持部41の左右端部と後支持部42の左右端部とを夫々連結する左右1対の略T字状の側支持部43と、各支持部41~43に掛け渡された底板部材44等を備え、上段の4個のバッテリモジュール11を支持している。前支持部41の左右1対の脚部は、第2クロスフレーム32の上壁部に締結固定され、後支持部42の左右1対の脚部は、リヤフレーム23の上壁部に締結固定されている。1対の側支持部43の脚部は、バッテリトレイ24上に締結固定されている。
取付ブラケット51~53の上下方向の曲げ剛性は、バッテリトレイ24の上下方向の曲げ剛性よりも高く且つ第1~第3クロスフレーム31~33の上下方向の曲げ剛性よりも低くなるように設定されている。
第2,第3収容領域S2,S3に収容された12個のバッテリモジュール11は、6組の前後1対の第3取付ブラケット53によってクロスフレーム31,32及びリヤフレーム23に取り付けられているため、全て同じ取付剛性である。
バッテリモジュール11の取付剛性とは、バッテリモジュール11を第1~第3取付ブラケット51~53を介して取り付けるときの取付剛性である。
それ故、本実施形態では、バッテリモジュール11の取付剛性を、第1~第3取付ブラケット51~53の板厚及び固定形態によって設定している。
第1~第3取付ブラケット51~53の板厚を厚くすることにより、バッテリモジュール11の取付剛性を増加し、また、第1~第3取付ブラケット51~53の固定形態の変更により、バッテリモジュール11の取付剛性を調整している。
第1取付ブラケット51の締結部51s,51tを、第3クロスフレーム33に対して車幅方向内側に相対移動する場合である。図10に示すように、第1取付ブラケット51L,51Rの締結部51s,51tを仮想線の位置から実線の位置に変更した場合、締結部51tが車幅方向内側方向に移動したため、バッテリモジュール11の車幅方向外側部分の見掛け上の取付剛性が低下する。また、締結部51sが車幅方向内側方向に移動したため、バッテリモジュール11の車幅方向内側部分の見掛け上の取付剛性が上昇する。
尚、第1~第3取付ブラケット51~53は、板厚、締結部位置、及び位置決め部位置を除いて略同様の仕様に設定されている。また、符号Rは、左側バッテリモジュール11(BL)と右側バッテリモジュール11(BR)の中間に設定された前後に延びるロール軸線、符号Gは、第1取付ブラケット51L,51Rが夫々連結する隣接したバッテリモジュール11を一塊としたときの重心を通る回転軸線である。
尚、締結部51tは、第2,第3取付ブラケット52,53の車幅方向外側に配設された締結部52s,52t,53s,53tよりも車幅方向外側端部から車幅方向内側に離隔していることから、最小限のバッテリモジュール11の取付剛性低下で前席乗員の乗り心地を改善している。
作用、効果の説明に当り、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション解析を行った。第1~第3収容領域S1~S3に収容された全てのバッテリモジュール11を第3取付ブラケット53を用いて取り付けた車両モデルA(評価基準モデル)と、本実施例の車両モデルBとを作成し、フロントパネル2aの振動減衰性(イナータンス)について解析を行った。
図12に示すように、車両モデルBの振動減衰性は、全領域において車両モデルAの振動減衰性を下回り、前席乗員が知覚する振動減衰性(乗り心地)が改善されたことが確認された。特に、ドラミングノイズに関連する40~50Hz領域において、車両モデルBの振動振幅のピーク値を大幅に低下され、前席乗員が知覚する振動減衰性の改善が顕著であった。尚、本実施形態において、20~50Hzの低周波音をドラミングノイズ、100~400Hzの中周波音をロードノイズとしている。
1〕前記実施形態においては、第1~第3収容領域S1~S3を形成した例を説明したが、収容領域を2つ形成しても良く、4つ以上形成しても良い。また、後端の第3収容領域S3に2段支持機構40を設けた例を説明したが、3段以上の支持機構を設けても良く、第2収容領域S2にも、2段支持機構又は3段以上の支持機構を設けても良い。
3 フロアフレーム
10 バッテリユニット
12 バッテリケース
51 第1取付ブラケット
51s,51t 締結部
51p 位置決め部
52 第2取付ブラケット
52s,52t,52u 締結部
53 第3取付ブラケット
53s,53t 締結部
V 車両
S1~S3 第1~第3収容領域
Claims (8)
- フロアパネルと、このフロアパネルの下側にフロアパネルと協働して前後に延びる閉断面を形成する左右1対のフロアフレームと、バッテリモジュールを支持すると共に前記1対のフロアフレームに取り付けられたバッテリユニットとを備えた電動車両のバッテリユニット取付構造において、
前記バッテリユニットが、前記バッテリモジュールと、複数の前記バッテリモジュールを収容すると共に前記1対のフロアフレームに取り付けられるバッテリケースを有し、
前記フロアパネルが20~50Hzの周波数で振動すると共に前記バッテリモジュールが車幅方向中央部を車体前後方向に延びる軸線回りにロール運動する際、前記バッテリモジュールの車幅方向端部の上下方向の振れ幅を振動振幅としたとき、前記バッテリケースに取り付けられる一部のバッテリモジュールの取付剛性を前記振動振幅のピーク値を低下させるように前記バッテリケースに取り付けられる他のバッテリモジュールの取付剛性に対して低下させたことを特徴とする電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記複数のバッテリモジュールは、同一姿勢で支持されると共に車幅方向に延びる列が3列以上に配置され、
一端側の列のバッテリモジュールの取付剛性を他の列のバッテリモジュールの取付剛性に対して低下させたことを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記複数のバッテリモジュールは、同一姿勢で支持されると共に車幅方向に延びる列が複数列に配置され、
所定の列のバッテリモジュールは、列方向に複数の取付部を有すると共に列の端部側の取付部の取付剛性が列の内側の取付部の取付剛性よりも低下されたことを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記所定の列の端部側の取付部を前記所定の列以外の列の端部側の取付部よりも車幅方向内側に形成したことを特徴とする請求項3に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
- 前記バッテリモジュールの取付部の数を減少することにより取付剛性を低下させることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
- 前記バッテリユニットが、フロントシート下方に対応する第1位置からフロントシートよりも後側の下方に対応する第2位置に亙って配設され、
前記第1位置に対応するバッテリモジュールの取付剛性を前記第2位置に対応するバッテリモジュールの取付剛性に対して低下させたことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。 - 前記第1位置に対応するバッテリモジュールの前側取付剛性を前記第1位置に対応するバッテリモジュールの後側取付剛性に対して低下させたことを特徴とする請求項6に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
- 前記第1位置に対応するバッテリモジュールの前側取付部の数は前記第1位置に対応するバッテリモジュールの後側取付部の数よりも少なく設定され、
列の端部側の前記前側取付部が列の端部側の前記後側取付部よりも車幅方向内側に配設されたことを特徴とする請求項7に記載の電動車両のバッテリユニット取付構造。
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