以下、本発明に係るフック付きバケットリンクの実施形態について、油圧ショベルに用いた場合を例に挙げ、図1ないし図10を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前,後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左,右方向として説明する。
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3の前側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4を用いて掘削作業等が行われる。
作業装置4は、上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム5の前端に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト6と、スイングポスト6に俯仰動可能に取付けられたブーム7と、ブーム7の先端に回動可能に取付けられたアーム8と、アーム8の先端に回動可能に取付けられたバケット9とを備えている。また、旋回フレーム5とスイングポスト6との間にはスイングシリンダ(図示せず)が設けられ、スイングポスト6とブーム7との間にはブームシリンダ10が設けられ、ブーム7とアーム8との間にはアームシリンダ11が設けられ、アーム8とバケット9との間にはバケットシリンダ12が設けられている。
ここで、バケット9の基端側には、左右方向で間隔をもって対面する一対のブラケット9A(左側のみ図示)が設けられている。一対のブラケット9Aは、支持軸13を介してアーム8の先端に回動可能に支持されている。また、支持軸13に近いアーム8の先端側には、アーム8を左右方向から挟む一対のアームリンク14の一端が、連結軸15を介して回動可能に連結されている。アームリンク14の他端は、バケットシリンダ12のロッド12Aと後述するフック付きバケットリンク17とに、連結軸16を介して連結されている。
フック付きバケットリンク17は、アームリンク14の他端およびバケットシリンダ12のロッド12Aと、バケット9のブラケット9Aとの間を連結している。従って、バケットシリンダ12のロッド12Aの伸縮動作は、アームリンク14およびフック付きバケットリンク17を介してバケット9に伝わり、バケット9は、支持軸13を中心としてアーム8に対して回動する。フック付きバケットリンク17は、図2ないし図4に示すように、後述する左リンク板18、右リンク板19、底板21、フック24、保持ピン29、圧縮ばね32、突起片33、ピン支持部材34、切欠溝36を含んで構成されている。
左リンク板18と右リンク板19とは、一対のリンク部材を構成している。左リンク板18と右リンク板19とは、それぞれ長方形状をなす鋼板等を用いて形成され、左右方向で一定の間隔をもって対面している。左リンク板18の長さ方向の一端側には、第1のボス部としての円筒状のシリンダ側ボス18Aが設けられている。右リンク板19の長さ方向の一端側には、第1のボス部としての円筒状のシリンダ側ボス19Aが設けられている。左リンク板18のシリンダ側ボス18Aと右リンク板19のシリンダ側ボス19Aとの間には、バケットシリンダ12のロッド12Aの先端が配置され、これらシリンダ側ボス18A,19Aと、ロッド12Aの先端と、アームリンク14の他端とは、連結軸16を介して回動可能に連結される。
左リンク板18の長さ方向の他端側には、第2のボス部としての円筒状のバケット側ボス18Bが設けられている。右リンク板19の長さ方向の他端側には、第2のボス部としての円筒状のバケット側ボス19Bが設けられている。左リンク板18のバケット側ボス18Bと右リンク板19のバケット側ボス19Bとの間には、後述するフック用ボス25が配置され、これらバケット側ボス18B,19Bと、フック用ボス25と、バケット9のブラケット9Aとは、図1中の連結軸20を介して回動可能に連結されている。一方、シリンダ側ボス18Aの外周面には、円弧状をなす保護凸部18Cが一体に設けられ、シリンダ側ボス19Aの外周面には、円弧状をなす保護凸部19Cが一体に設けられている。これら保護凸部18C,19Cは、シリンダ側ボス18A,19Aに先立って地面に衝突することにより、シリンダ側ボス18A,19Aを保護する。
底板21は、左リンク板18および右リンク板19の幅方向の一端側に溶接等の手段を用いて固定され、左リンク板18と右リンク板19との間を連結している。底板21は、長方形状をなす厚肉な鋼板等を用いて形成され、後述するフック格納空間23内にフック24が格納されたときに、フック24の鉤部28の外周面28Cが当接する。
補強板22は、左リンク板18および右リンク板19の幅方向の他端側に溶接等の手段を用いて固定され、左リンク板18および右リンク板19を補強している。補強板22は、左リンク板18の長さ方向に延びる長方形状の左補強板22Aと、右リンク板19の長さ方向に延びる長方形状の右補強板22Bと、左補強板22Aと右補強板22Bとの間を連結する連結板22Cとにより構成されている。補強板22は、底板21と一定の間隔をもって対面している。連結板22Cは、左リンク板18および右リンク板19の一端側(シリンダ側ボス18A,19A側)に片寄せて配置され、左補強板22Aと右補強板22Bとの間には、フック24が通過できるだけの間隔が確保されている。
フック格納空間23は、左リンク板18と右リンク板19との間に形成されている。即ち、フック格納空間23は、左リンク板18、右リンク板19、底板21、補強板22によって囲まれた空間として形成されている。例えば油圧ショベル1がバケット9を用いた掘削作業を行うときには、フック24が掘削作業の邪魔にならないように、フック格納空間23にフック24が格納される(図2、図3参照)。
フック24は、左リンク板18,右リンク板19のバケット側ボス18B,19Bに挿通された連結軸20に揺動可能に支持されている。フック24は、左リンク板18と右リンク板19との間のフック格納空間23内に配置される格納位置(図3の位置)と、フック格納空間23の外部に取出される作業位置(図1中の二点鎖線の位置)との間で移動可能となっている。フック24は、フック用ボス25、継手部材26、鉤部28を含んで構成されている。
フック用ボス25は、左リンク板18,右リンク板19のバケット側ボス18B,19B間に配置されている。フック用ボス25は円筒体からなり、フック用ボス25の内周側には、連結軸20が摺動可能に挿通される。フック用ボス25の外周面には、一対のブラケット25Aが溶接によって突設され、これら一対のブラケット25Aは一定の間隔をもって対面している。
継手部材26は、フック用ボス25の一対のブラケット25Aに取付けられている。継手部材26は、一対のブラケット25A間に配置された取付部26Aと、取付部26Aに一体形成された円筒部26Bとを有している。継手部材26の取付部26Aは、支持軸27を介して一対のブラケット25Aに揺動可能に支持されている。継手部材26の円筒部26B内にはスラスト軸受(図示せず)が配置され、この円筒部26Bには、スラスト軸受を介して鉤部28の基端側が回転可能に取付けられる。
鉤部28は、継手部材26の円筒部26Bにスラスト軸受(図示せず)を介して回転可能に取付けられている。鉤部28は、吊荷作業時に吊荷に取付けたロープ等(図示せず)を掛止めするものである。鉤部28には抜止め部材28Aが設けられ、この抜止め部材28Aによってロープ等が鉤部28から抜出すのを防止している。
保持ピン29は、右リンク板19に移動可能に支持されている。即ち、右リンク板19のうちバケット側ボス19B寄りとなる幅方向の中間部には、右リンク板19の板厚方向に貫通するピン挿通孔19Dが形成され、保持ピン29は、右リンク板19のピン挿通孔19Dに挿通されて支持されている(図4参照)。保持ピン29は、フック24をフック格納空間23内の格納位置に保持するフック保持位置(図4の位置)と、フック24が格納位置から離脱するのを許すフック離脱位置(図10の位置)との間で移動する。
保持ピン29は、図5に示すように、基端側に位置する小径部29Aと、先端側に位置する大径部29Bとを有する段付き円柱状に形成されている。小径部29Aは、右リンク板19のピン挿通孔19Dに挿通され、大径部29Bは、後述するピン支持部材34の大径ピン挿通孔35に挿通される。小径部29Aの大径部29Bとは反対側の端部には、平面部29Cが形成され、この平面部29Cには貫通孔29Dが形成されている。貫通孔29Dには、リング30が取付けられている(図4参照)。保持ピン29をフック保持位置からフック離脱位置へと移動させるときには、作業者はリング30を把持し、圧縮ばね32に抗して保持ピン29を引っ張る。また、リング30は、保持ピン29がフック格納空間23側に抜出すのを阻止している。一方、大径部29Bには環状のワッシャ31が取付けられ、このワッシャ31は、大径部29Bに固定された突起片33によって軸方向に抜止めされている。
付勢部材としての圧縮ばね32は、右リンク板19と保持ピン29との間に設けられている。圧縮ばね32は、保持ピン29の外周側に配置されたコイルばねからなり、その一端は右リンク板19に当接している。圧縮ばね32の他端は、保持ピン29の大径部29Bに挿通されたワッシャ31に当接している。これにより、圧縮ばね32は、保持ピン29をフック保持位置に向けて常に付勢している。
突起片33は、保持ピン29の大径部29Bに固定されている。突起片33は、保持ピン29をフック離脱位置に移動させたときに、圧縮ばね32によってピン支持部材34に押付けられることにより、保持ピン29をフック離脱位置に保持する。突起片33は、多角形状の板体として形成され、保持ピン29の大径部29Bに圧入、溶接等の手段を用いて固定されることにより、大径部29Bの外周面から径方向に突出している。
突起片33は、保持ピン29の小径部29A側に位置する基端部33Aと、大径部29Bの先端側に位置する先端部33Bと、基端部33Aの突出端と先端部33Bの突出端との間を保持ピン29の長さ方向に延びるフック当接部33Cとを有している。フック当接部33Cは、保持ピン29がフック保持位置に移動したときに、フック24を構成する鉤部28の内周面28Bに当接するもので、先端部33Bから基端部33Aに向けて、保持ピン29の軸中心O-Oからの距離が徐々に大きくなる傾斜面を有している。即ち、基端部33Aにおけるフック当接部33Cと保持ピン29の軸中心O-Oとの間の距離Aは、先端部33Bにおけるフック当接部33Cと保持ピン29の軸中心O-Oとの間の距離Bよりも大きく設定されている(A>B)。
ピン支持部材34は、一方のリンク板である右リンク板19と間隔をもって対面した状態で、フック格納空間23内に設けられている。ピン支持部材34は、保持ピン29の大径部29Bを軸方向に移動可能に支持する。ピン支持部材34は、図4および図6に示すように、鋼板材等を用いて断面L字型に屈曲した板体として形成され、底板21から補強板22に向けて立上がる縦板34Aと、縦板34Aの上端から右リンク板19側へと屈曲し、縦板34Aと直交する方向に延びる横板34Bとを有している。縦板34Aの下端は、底板21に溶接等の手段を用いて固定され、横板34Bの先端は、補強板22の右補強板22Bに溶接等の手段を用いて固定されている。ピン支持部材34の縦板34Aは、右リンク板19と正対(対面)し、縦板34Aのうち右リンク板19のピン挿通孔19Dに対応する部位には、後述する大径ピン挿通孔35が設けられている。
ピン挿通孔としての大径ピン挿通孔35は、ピン支持部材34の縦板34Aのうち、右リンク板19のピン挿通孔19Dに正対する部位に設けられている。大径ピン挿通孔35は、保持ピン29の大径部29Bに対応する孔径をもって縦板34Aの板厚方向に貫通し、右リンク板19のピン挿通孔19Dと同軸上に配置されている。従って、保持ピン29は、小径部29Aが右リンク板19のピン挿通孔19Dに支持されると共に、大径部29Bがピン支持部材34の大径ピン挿通孔35に支持された状態で、軸方向に移動可能となっている。
切欠溝36は、ピン支持部材34の大径ピン挿通孔35に設けられている。切欠溝36は、保持ピン29の大径部29Bを大径ピン挿通孔35に挿通したときに、突起片33が通過可能となっている。切欠溝36は、突起片33の板厚よりも僅かに大きな溝幅を有し、大径ピン挿通孔35の内周縁から底板21に向けて径方向外側へと延びている。
保持ピン29が、図4に示すフック保持位置にあるときには、突起片33が切欠溝36内に挿通されることにより、保持ピン29は、圧縮ばね32によって左リンク板18側に押圧された状態でピン支持部材34に対して廻止めされる。このとき、突起片33のフック当接部33Cは、フック格納空間23内に配置されたフック24の鉤部28の内周面28Bに当接し、圧縮ばね32の付勢力によって内周面28Bに押付けられる。一方、鉤部28の外周面28Cは、底板21に当接する。従って、フック24の鉤部28は、底板21と突起片33との間に挟込まれることにより、がたつくことなく、安定した姿勢でフック格納空間23内に保持される。
ここで、図4に示すように、突起片33のフック当接部33Cと底板21との間隔は、保持ピン29の先端側(大径部29B側)から基端側(小径部29A側)に向けて徐々に小さくなる。即ち、突起片33の基端部33Aにおけるフック当接部33Cと底板21との間隔Cは、突起片33の先端部33Bにおけるフック当接部33Cと底板21との間隔Dよりも小さくなる。従って、フック24がフック格納空間23内に移動し、鉤部28の外周面28Cが底板21に当接した状態で、保持ピン29が、圧縮ばね32によってフック保持位置へと移動するときに、突起片33のフック当接部33Cは、確実に鉤部28の内周面28Bに当接する。そして、保持ピン29は、突起片33のフック当接部33Cが鉤部28の内周面28Bに当接した位置(フック保持位置)で停止し、フック24は、保持ピン29によってフック格納空間23内に保持される。
一方、フック24をフック格納空間23から取出すときには、図10に示すように、保持ピン29を、圧縮ばね32に抗してフック離脱位置へと移動させ、突起片33を鉤部28の内周面28Bから抜取る。そして、突起片33が切欠溝36から離脱した状態で保持ピン29を回転させることにより、図8に示すように、突起片33の先端部33Bが、圧縮ばね32によってピン支持部材34の縦板34Aに押付けられる。従って、保持ピン29は、作業者によって保持されることなく、圧縮ばね32によってフック離脱位置を保持することができる。従って、作業者は、保持ピン29を把持することなく、両手でフック24を持ってフック格納空間23から取出すことができる構成となっている。
ここで、フック離脱位置に保持された保持ピン29を回転させ、突起片33を切欠溝36に係合させると、保持ピン29は、圧縮ばね32によってフック保持位置へと移動する。このとき、突起片33の基端部33Aから先端部33Bまでの長さ寸法が小さい場合には、突起片33がフック保持位置に達する前に切欠溝36から離脱する場合がある。この場合には、保持ピン29の大径部29Bが大径ピン挿通孔35内で回転してしまい、突起片33のフック当接部33Cを、鉤部28の内周面28Bに適正に当接させることができなくなる虞がある。また、保持ピン29がフック保持位置に移動したときに突起片33が切欠溝36から離脱してしまうと、保持ピン29をフック離脱位置に移動させるときには、保持ピン29を回転させて突起片33を再び切欠溝36に係合させ、圧縮ばね32に抗して保持ピン29をフック離脱位置へと引っ張る必要がある。
このため、突起片33の基端部33Aから先端部33Bまでの長さ寸法Eは、保持ピン29が図10のフック離脱位置から図4のフック保持位置へと移動する間、突起片33が常に切欠溝36に係合するだけの長さに設定されている。これにより、突起片33と切欠溝36との係合によって保持ピン29が常に廻止めされるので、保持ピン29がフック保持位置に移動するときに、突起片33のフック当接部33Cを、鉤部28の内周面28Bに適正に当接させることができる。また、保持ピン29をフック離脱位置へと移動させるときに、突起片33を切欠溝36に係合させるために保持ピン29を回転させる必要がなく、保持ピン29をフック離脱位置へと容易に移動させることができる。
フック格納空間23内には、ピン支持部材34と間隔をもって対面するガイド部材37が設けられている。ガイド部材37は、鋼板材等を用いて断面L字型に屈曲した板体として形成され、底板21から補強板22に向けて立上る縦ガイド部37Aと、縦ガイド部37Aの上端から左リンク板18側へと屈曲し、縦ガイド部37Aと直交する方向に延びる横ガイド部37Bとを有している。縦ガイド部37Aとピン支持部材34の縦板34Aとは、フック24の鉤部28の厚さ寸法よりも大きな間隔をもって対面している。
これにより、フック付きバケットリンク17の外部に取出されたフック24を、フック格納空間23内の格納位置へと移動させるときには、ピン支持部材34の縦板34Aとガイド部材37の縦ガイド部37Aとの間に鉤部28を挿入することにより、鉤部28の外周面28Cを底板21に確実に当接させることができる構成となっている。
本実施形態によるフック付きバケットリンク17は、上述の如き構成を有するもので、次に、フック付きバケットリンク17を備えた油圧ショベル1によって吊荷作業を行う場合について説明する。
フック24は、図2ないし図4に示すように、フック付きバケットリンク17のフック格納空間23内に格納された格納位置に配置され、鉤部28の外周面28Cは、底板21に当接している。このとき、保持ピン29は、圧縮ばね32によってフック保持位置に保持され、保持ピン29に固定された突起片33のフック当接部33Cは、鉤部28の内周面28Bに当接している。これにより、フック24の鉤部28は、底板21と突起片33との間に挟込まれることにより、がたつくことなく、安定した姿勢でフック格納空間23内に保持されている。
次に、油圧ショベル1の作業装置4を操作し、フック付きバケットリンク17の姿勢を、フック24を取出すためのフック取出し姿勢へと移行させる。このフック取出し姿勢は、安全なフック取出し作業を行うために推奨されるもので、例えば図9に示すように、フック付きバケットリンク17のシリンダ側ボス18A,19Aに挿通される連結軸16とバケット側ボス18B,19Bに挿通される連結軸20の軸中心を通る直線と地面とがなす角度θを90度以下とする。
フック付きバケットリンク17をフック取出し姿勢とした状態で、作業者は、保持ピン29の平面部29Cに取付けられたリング30を把持し、保持ピン29を、圧縮ばね32に抗してフック保持位置からフック離脱位置へと移動させる。これにより、保持ピン29の突起片33が、大径ピン挿通孔35の切欠溝36から離脱し、フック24の鉤部28に対する突起片33の係合状態が解除される。
突起片33が、大径ピン挿通孔35の切欠溝36から離脱すると、作業者は保持ピン29を僅かに回転させ、図8に示すように、突起片33の先端部33Bをピン支持部材34の縦板34Aに当接させた状態で、保持ピン29から手を放す。これにより、突起片33は、圧縮ばね32によってピン支持部材34の縦板34Aに押付けられ、保持ピン29は、作業者に保持されることなく、図10に示すフック離脱位置を保持する。
このようにして、保持ピン29がフック離脱位置を保持した状態では、フック24の鉤部28は自重によって底板21に当接している。このため、作業者は、両手でフック24を把持し、連結軸20を中心として回動させることにより、フック24をフック格納空間23内に配置された格納位置から、フック格納空間23の外部に取出された作業位置へと取出すことができる。このように、保持ピン29に固定された突起片33が、圧縮ばね32によってピン支持部材34に押付けられることにより、保持ピン29をフック離脱位置に保持しておくことができる。この結果、作業者は、重量物であるフック24を両手で支えた状態で、フック格納空間23の外部に取出すことができ、フック24を取出すときの作業性を高めることができる。
このようにして、図1に示すように、フック24をフック格納空間23から取出した後には、ロープ等を用いて吊荷(いずれも図示せず)をフック24に吊下げ、ブーム7、アーム8を回動させつつ上部旋回体3を旋回させることにより、吊荷を所望の位置へと搬送する吊荷作業を行うことができる。
次に、バケット9を用いた掘削作業を行うため、フック24を格納位置に移動させる作業について説明する。
この場合にも、油圧ショベル1の作業装置4を操作し、フック付きバケットリンク17をフック取出し姿勢へと移行させる(図9参照)。そして、作業者は、保持ピン29をフック離脱位置へと移動させ、突起片33が切欠溝36から離脱した状態で保持ピン29を回転させる。これにより、突起片33が、圧縮ばね32によってピン支持部材34の縦板34Aに押付けられ、保持ピン29はフック離脱位置を保持する。この状態で、作業者は、フック24を両手で支え、連結軸20を中心としてフック格納空間23内へと回動させる。このとき、フック24の鉤部28は、ピン支持部材34(縦板34A)とガイド部材37(縦ガイド部37A)との間に挿入され、フック24は、鉤部28の外周面28Cが底板21に当接した適正な姿勢で静止する。
このようにして、フック24をフック格納空間23内に配置した状態で、作業者は保持ピン29を回転させ、突起片33を切欠溝36に係合させる。これにより、保持ピン29は、圧縮ばね32によってフック離脱位置からフック保持位置へと移動し、突起片33のフック当接部33Cが、鉤部28の内周面28Bに当接する。この結果、フック24の鉤部28を、底板21と突起片33との間に挟込むことができ、フック24を、フック格納空間23内でがたつくことなく、安定した姿勢でフック格納空間23内に保持することができる。このように、フック24を格納位置に移動させる場合にも、作業者は、重量物であるフック24を両手で支えた状態で、フック格納空間23内に収容することができ、その作業性を高めることができる。
この場合、突起片33のフック当接部33Cと底板21との間隔は、保持ピン29の先端側(大径部29B側)から基端側(小径部29A側)に向けて徐々に小さくなる(図4参照)。従って、保持ピン29が、圧縮ばね32によってフック保持位置へと移動するときに、突起片33のフック当接部33Cを、確実に鉤部28の内周面28Bに当接させることができる。
また、突起片33の基端部33Aから先端部33Bまでの長さ寸法Eは、保持ピン29がフック離脱位置からフック保持位置へと移動する間、突起片33が常に切欠溝36に係合するだけの長さに設定されている。これにより、突起片33と切欠溝36との係合によって保持ピン29を常に廻止めすることができる。この結果、保持ピン29がフック保持位置に移動するときに、突起片33のフック当接部33Cを、鉤部28の内周面28Bに適正に当接させることができる。また、保持ピン29をフック離脱位置へと移動させるときに、突起片33を切欠溝36に係合させるために保持ピン29を回転させる必要がなく、保持ピン29をフック離脱位置へと容易に移動させることができる。
かくして、実施形態では、長さ方向の一端側にバケットシリンダ12に連結されるシリンダ側ボス18A,19Aが設けられると共に、長さ方向の他端側に連結軸20を介してバケット9が連結されるバケット側ボス18B,19Bが設けられ、長さ方向と直交する方向で間隔をもって対面する左リンク板18および右リンク板19と、左リンク板18,右リンク板19に設けられたバケット側ボス18B,19B間に位置して連結軸20に支持され、左リンク板18,右リンク板19間に形成されたフック格納空間23内に配置される格納位置とフック格納空間23の外部に取出された作業位置との間で移動可能となったフック24と、右リンク板19に移動可能に支持され、フック24を格納位置に保持するフック保持位置と、フック24が格納位置から離脱するのを許すフック離脱位置との間で移動する保持ピン29と、保持ピン29をフック保持位置に向けて付勢する圧縮ばね32と、を備えてなるフック付きバケットリンク17において、保持ピン29には、その外周面から径方向に突出する突起片33が設けられ、フック格納空間23には、右リンク板19と間隔をもって対面し保持ピン29が軸方向に移動可能に挿通される大径ピン挿通孔35を有したピン支持部材34が設けられ、ピン支持部材34の大径ピン挿通孔35には突起片33が通過可能な切欠溝36が設けられ、突起片33が切欠溝36から離脱したときに保持ピン29を回転させることにより、突起片33が圧縮ばね32によりピン支持部材34に押付けられて保持ピン29がフック離脱位置を保持する構成としている。
この構成によれば、フック付きバケットリンク17のフック格納空間23からフック24を取出すときには、保持ピン29の突起片33を切欠溝36から離脱させた状態で保持ピン29を回転させることにより、突起片33を圧縮ばね32によってピン支持部材34に押付けることができる。これにより、保持ピン29をフック24の鉤部28から離脱した状態に保持できるので、作業者は、フック24を両手で支えた状態でフック格納空間23から取出すことができ、フック24を取出すときの作業性を高めることができる。
実施形態では、左リンク板18,右リンク板19間を連結し、フック24が格納位置に移動したときにフック24の鉤部28が当接する底板21が設けられ、保持ピン29は、基端側が右リンク板19に支持されると共に先端側がピン支持部材34の大径ピン挿通孔35に挿通され、突起片33と底板21との間隔は、保持ピン29の先端側から基端側に向けて小さくなる。この構成によれば、フック24の鉤部28が底板21に当接した状態で、保持ピン29が、圧縮ばね32によってフック保持位置へと移動するときに、突起片33を、確実に鉤部28に当接させることができる。
実施形態では、突起片33は、保持ピン29がフック離脱位置からフック保持位置に移動する間に常に切欠溝36に係合する長さ寸法に設定されている。この構成によれば、突起片33と切欠溝36との係合によって保持ピン29を常に廻止めすることができる。この結果、保持ピン29がフック保持位置に移動するときに、突起片33を鉤部28に適正に当接させることができる。また、保持ピン29をフック離脱位置へと移動させるときに、突起片33を切欠溝36に係合させるために保持ピン29を回転させる必要がなく、保持ピン29をフック離脱位置へと容易に移動させることができる。
なお、実施形態では、左リンク板18と右リンク板19のうち一方の右リンク板19にピン挿通孔19Dを設け、このピン挿通孔19Dとピン支持部材34の大径ピン挿通孔35とに保持ピン29を挿通した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左リンク板18にピン挿通孔を設け、このピン挿通孔とピン支持部材34の大径ピン挿通孔35とに保持ピン29を挿通する構成としてもよい。
また、実施形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルにも適用することができる。