以下、本発明による油圧ショベルのフロント装置の実施の形態について、図1ないし図14を参照しつつ詳細に説明する。
図1において、油圧ショベル1は、土砂等の掘削作業の他に、吊荷作業を行うことができるクレーン機能付きの油圧ショベルである。そして、油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3、上部旋回体3の前部に設けられたフロント装置4等を含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、本実施の形態による油圧ショベル1の車体を構成している。
フロント装置4は、上部旋回体3に俯仰の動作が可能に接続されたブーム5、ブーム5の先端側に回動が可能に接続されたアーム6、アーム6の先端側に回動が可能に設けられたバケット7、ブーム5を駆動するブームシリンダ8、アーム6を駆動するアームシリンダ9、バケット7を駆動するバケットシリンダ10を含んで構成されている。
ここで、本実施の形態に用いられるバケット7は、バックホウ式バケットとして構成され、バケットシリンダ10の駆動によって回動される。このバケット7の底板には、左,右方向に離間した2枚のブラケット7A(図1で1枚のみ図示)が設けられている。そして、バケット7は、各ブラケット7A間に挿通された連結軸11Aによってアーム6の先端側に回動可能に支持されると共に、各ブラケット7A間に挿通された連結軸11Bによって後述のバケットリンク装置15に接続されている。
第1のバケットリンク12は、アーム6とバケットシリンダ10のロッド10Aとの間に設けられている。第1のバケットリンク12の基端側は、連結軸13によってアーム6に連結され、先端側は連結軸14によってバケットシリンダ10のロッド10A先端に連結されている。
次に、本実施の形態に係るフック付きのバケットリンク装置15について説明する。このフック付きのバケットリンク装置15は、バケットシリンダ10のロッド10Aとバケット7との間に設けられ、後述の第2のバケットリンク16、フック24、フック保持具30等を含んで構成されている。
第2のバケットリンク16は、後述する左,右のシリンダ側ボス20,21と左,右のバケット側ボス22,23との間を連結し内部にフック格納空間S1を形成するもので、本発明のバケットリンクを構成している。そして、第2のバケットリンク16は、互いに間隔をもって配設され左,右のシリンダ側ボス20,21から左,右のバケット側ボス22,23に向けて延びる一対の連結板17,18と、各連結板17,18の幅方向の一側を閉塞する閉塞板19と、各連結板17,18の幅方向の他側が開口することにより形成されたフック出入口16Aとを有する箱状となっている。
左連結板17は、左シリンダ側ボス20と左バケット側ボス22との間を延びる長方形状の板体として形成されている。左連結板17の長さ方向の一端側には、左シリンダ側ボス20が設けられ、他端側には左バケット側ボス22が設けられている。そして、左連結板17の幅方向の一端側には、閉塞板19が設けられ、幅方向の他端側はフック出入口16Aとなっている。
右連結板18は、左連結板17と左,右方向に間隔をもって配設され、この右連結板18は、右シリンダ側ボス21と右バケット側ボス23との間を延びる長方形状の板体として形成されている。右連結板18の長さ方向の一端側には、右シリンダ側ボス21が設けられ、他端側には右バケット側ボス23が設けられている。そして、右連結板18の幅方向の一端側には、閉塞板19が設けられ、幅方向の他端側はフック出入口16Aとなっている。
閉塞板19は、各連結板17,18の幅方向の一側を閉塞している。この閉塞板19は、図2に示すように、各連結板17,18間を接続し、左,右のシリンダ側ボス20,21から左,右のバケット側ボス22,23に向けて延びている。そして、閉塞板19には、厚さ方向に貫通する3個のめねじ孔(図示せず)が設けられ、これらめねじ孔を用いて後述のフック保持具30が取付けられている。
左シリンダ側ボス20は、左連結板17のバケットシリンダ10側に設けられている。一方、右シリンダ側ボス21は、右連結板18のバケットシリンダ10側に設けられている。これら左,右のシリンダ側ボス20,21は、本発明の第1の連結部を構成している。そして、左シリンダ側ボス20と右シリンダ側ボス21との間に、バケットシリンダ10のロッド10A先端側を挿入し、第1のバケットリンク12によって各シリンダ側ボス20,21を挟んだ状態で、これらシリンダ側ボス20,21、バケットシリンダ10のロッド10A、第1のバケットリンク12が連結軸14によって連結される。
左バケット側ボス22は、左連結板17のバケット7側に設けられている。一方、右バケット側ボス23は、右連結板18のバケット7側に設けられている。これら左,右のバケット側ボス22,23は、本発明の第2の連結部を構成している。そして、左バケット側ボス22と右バケット側ボス23との間に、後述するフック用ボス25を挿入し、バケット7に設けた左,右のブラケット7Aによって各バケット側ボス22,23を挟んだ状態で、これらバケット側ボス22,23、フック用ボス25、左,右のブラケット7Aが連結軸11Bによって連結される。
フック24は、左,右のバケット側ボス22,23間に配置され、連結軸11Bにより左,右のバケット側ボス22,23に揺動可能に支持されている。このフック24は、例えば油圧ショベル1の掘削作業時には、後述するフック保持具30によって第2のバケットリンク16のフック格納空間S1内に格納された格納位置(図2、図3の位置)を保持し、吊荷作業時には、図1中の二点鎖線で示すように第2のバケットリンク16のフック格納空間S1から離脱した作業位置へと移動するものである。そして、フック24は、後述のフック用ボス25、ブラケット26、継手部27、支持軸28、鉤部29等を含んで構成されている。
フック用ボス25は、左バケット側ボス22と右バケット側ボス23との間に配置されている。このフック用ボス25は、本発明の支持部を構成するもので、連結軸11Bを介して左,右のバケット側ボス22,23に格納位置と作業位置との間で揺動可能に支持されている。そして、フック用ボス25の外周側には、フック格納空間S1に向けて突出し、一定の間隔をもって対面する一対のブラケット26が設けられている。
継手部27は、フック用ボス25のブラケット26と後述する鉤部29との間を連結するものである。この継手部27は、各ブラケット26間に配置されるボス部27Aと、ボス部27Aに一体形成された円筒部27Bとにより構成されている。ボス部27Aは、連結軸11Bに対して直交する方向に延びる支持軸28によって各ブラケット26間に回動可能に支持されている。これにより、継手部27は、フック用ボス25に左,右の連結板17,18間(連結軸11Bの軸方向)で揺動可能に支持されている。一方、継手部27の円筒部27B内には、スラスト軸受(図示せず)が配置され、このスラスト軸受を介して後述する鉤部29の基端側が回転可能に取付けられる。
鉤部29は、基端側29Aが継手部27の円筒部27Bにスラスト軸受(図示せず)を介して回転可能に取付けられている。また、鉤部29の先端側29Bの開口には、吊荷作業時に掛けられたワイヤロープ等が不用意に鉤部29から外れるのを抑制する外れ止め29Cが設けられている。図4に示すように、後述のフック保持具30のロック部材36に対応する位置で、鉤部29の基端側29Aの内周面29A1と外周面29A2との厚さ寸法Aは、鉤部29の先端側29Bの内周面29B1と外周面29B2との厚さ寸法Bよりも大きく(厚く)なっている。
次に、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入したときのみに、フック24を格納位置に保持するフック保持具30について説明する。
フック保持具30は、第2のバケットリンク16の閉塞板19に取付けられている。このフック保持具30は、例えば油圧ショベル1の掘削作業時等にフック24を格納位置に保持するためのものである。そして、フック保持具30は、取付板部31、左フックガイド33、右フックガイド34、ロック部材36、ばね37、フック先端側支持突起38、フック基端側当接突起39を含んで構成されている。この場合、取付板部31、左フックガイド33、右フックガイド34、フック先端側支持突起38、およびフック基端側当接突起39は、鋳造および鍛造により一体的に形成されている。
これにより、複数枚の金属板を溶接等により固着させたフック保持具と比較して、部品点数を削減することができると共に、大量生産が可能となり、コストを削減させることができる。また、鋳造および鍛造により一体的に形成することで、フック保持具30の寿命を向上させることができる。
取付板部31は、フック格納空間S1内に位置して第2のバケットリンク16の閉塞板19に3個のボルト32を用いて取付けられている。図9に示すように、取付板部31は、長方形状に形成され、角隅部にはボルト32がそれぞれ挿通する3個のボルト挿通孔31Aが穿設されている。
また、取付板部31の中央部には、フック24を鉤部29の先端側29Bから格納位置に移動したときに、鉤部29の先端側29Bが挿入可能なフック先端側挿入孔31Bが穿設されている。具体的には、フック先端側挿入孔31Bは、後述の左フックガイド33と右フックガイド34との間に形成された鉤部格納空間S2の底部側に形成されている。これにより、フック24を作業位置から格納位置に移動させたときに、フック24の鉤部29の先端側29Bが取付板部31に衝突(干渉)しないので、取付板部31およびフック24の寿命を向上させることができる。
左フックガイド33は、取付板部31の左端側に位置してフック出入口16Aに向けて延びている。この左フックガイド33は、フック格納空間S1内に位置して、取付板部31からフック24の格納位置と作業位置との間の移動方向に沿って延びる柱状体として形成されている。
図10、図14に示すように、左フックガイド33のうちフック出入口16A側である自由端(先端)は、凸状に湾曲した湾曲面33Aとして形成されている。これにより、左フックガイド33の剛性を向上させることができる。従って、フック24を作業位置から格納位置に移動するときに、フック24の鉤部29が左フックガイド33の湾曲面33Aに衝突した場合の衝撃力を湾曲面33Aで分散させることができるので、左フックガイド33の寿命を向上させることができる。
右フックガイド34は、左フックガイド33と左,右方向で対面し取付板部31の右端側に位置してフック出入口16A側に向けて延びている。左フックガイド33と右フックガイド34とは、本発明の一対のフックガイドを構成するもので、両者の間にはフック24の移動方向に延びる鉤部格納空間S2が形成されている。この鉤部格納空間S2内にフック24の鉤部29を鉤部29の先端側29Bから挿入することにより、左フックガイド33と右フックガイド34とがフック24の鉤部29を左,右両側から挟む構成となっている。
右フックガイド34は、フック格納空間S1内に位置して、取付板部31からフック24の格納位置と作業位置との間の移動方向に沿って延び、互いに前,後方向に一定間隔をもって対面する前板部34A,後板部34Bと、前板部34Aの右面と後板部34Bの右面との間を接続する接続部34Cとにより一体的に構成されている。前板部34Aは、フック格納空間S1内の右シリンダ側ボス21側に設けられ、後板部34Bは、フック格納空間S1内の右バケット側ボス23側に設けられている。そして、前板部34Aと後板部34Bとの間には、後述のロック部材36が配設されている。
図10、図14に示すように、右フックガイド34の前板部34Aと後板部34Bとのうちフック出入口16A側である自由端(先端)は、凸状に湾曲した湾曲面34A1,34B1として形成されている。これにより、右フックガイド34の剛性を向上させることができる。従って、フック24を作業位置から格納位置に移動するときに、フック24の鉤部29が右フックガイド34の湾曲面34A1,34B1に衝突した場合の衝撃力を湾曲面34A1,34B1で分散させることができるので、右フックガイド34の寿命を向上させることができる。
また、図10、図11に示すように、後板部34Bの取付板部31からの高さ寸法Cは、前板部34Aの高さ寸法Dと後述のロック部材36の高さ寸法Eよりも大きく(高く)なっている。これにより、後板部34Bは、ロック部材36を保護している。即ち、フック24を作業位置から格納位置に移動させたときに、フック24の鉤部29がロック部材36に衝突する前に後板部34Bに衝突する構成となっている。
また、前板部34Aの高さ寸法Dは、ロック部材36の高さ寸法Eよりも低くなっている。これにより、ロック部材36の操作部36Cは、前板部34Aよりも突出するので、作業者によるロック部材36の操作がし易くなっている。また、右フックガイド34の前板部34Aと後板部34Bとの湾曲面34A1,34B1側には、ロック部材36を回動可能に支持する支持ピン35が設けられている。
右フックガイド34の接続部34Cは、前板部34Aと後板部34Bとの間を接続することにより、右フックガイド34を補強している。また、接続部34Cのうちフック出入口16A側の端面は、後述のロック部材36のストッパ部36Dが当接するストッパ当接面34C1となっている。一方、接続部34Cのうち取付板部31側の端面は、後述のばね37の両端側が掛止めされる掛止め面34C2となっている。
ロック部材36は、右フックガイド34の前板部34Aと後板部34Bとの間に設けられている。このロック部材36は、例えば鋳造または鍛造により板体として形成され、右フックガイド34の前板部34Aと後板部34Bとに取付けられた支持ピン35に回動(進退)可能に支持されている。具体的には、ロック部材36は、支持ピン35を回動中心として、フック24を格納位置に保持する保持位置(図5、図6の位置)と、フック24を格納位置から解除する解除位置(図8の位置)との間で移動可能となっている。
そして、ロック部材36は、フック24の鉤部29の先端側29Bが後述のフック挿入部40に挿入したときのみに、フック24を格納位置に保持する保持部36Aと、フック24の鉤部29によって押圧される被押圧部36Bと、被押圧部36Bから第2のバケットリンク16のフック出入口16A側に向けて延びる操作部36Cと、ロック部材36が保持位置にあるときに右フックガイド34の接続部34Cに当接してロック部材36がこれ以上回動するのを抑制するストッパ部36Dとを備えている。
ロック部材36は、支持ピン35を中心としてフック24の作業位置と格納位置との間の移動方向と直交方向に回動する。ロック部材36は、左フックガイド33に向けて進出した保持位置では、フック24を左フックガイド33と右フックガイド34との間に固定して格納位置に保持する。また、左フックガイド33から後退した解除位置では、フック24が作業位置に向けて移動するのを許容する。
即ち、ロック部材36は、鉤部格納空間S2内に突出した保持位置と、鉤部格納空間S2内から引込んだ解除位置との間で変位する。ロック部材36の保持部36Aは、鉤部29の先端側29Bの内周面29B1に当接する当接面36A1が、鉤部29の内周面29B1に沿うように傾斜して形成されている。これにより、フック24を格納位置に保持させたときに、保持部36Aの当接面36A1が鉤部29の先端側29Bの内周面29B1に沿うように当接するので、フック24からのロック部材36に対する面圧を低減させることができると共に、フック24のがたつきを抑制することができる。
図10、図11に示すように、操作部36Cは、右フックガイド34の後板部34Bよりもフック出入口16A側に突出している。これにより、ロック部材36を保持位置から解除位置に移動させるときの操作の操作性を向上させている。また、操作部36Cは、右フックガイド34の前板部34Aよりも低くなっている。これにより、フック24を作業位置から格納位置に移動させるときに、前板部34Aによりフック24が操作部36Cに衝突するのが抑制されるので、ロック部材36の寿命を向上させることができる。
ばね37は、右フックガイド34の前板部34Aと後板部34Bとの間に設けられ、ロック部材36を保持位置に向けて常時付勢する付勢部材である。このばね37は、支持ピン35の外周側に巻回された状態で、前板部34Aと後板部34Bとの間に配設されている。具体的には、ばね37は、一端側が前板部34A側に位置して接続部34Cの掛止め面34C2に掛止めされ、支持ピン35の外周側をロック部材36に向けて巻回している。そして、ばね37は、ロック部材36の右側面に当接した状態でロック部材36を跨ぎ、支持ピン35の外周側を後板部34Bに向けて巻回し、他端側が後板部34B側に位置して接続部34Cの掛止め面34C2に掛止めされている。これにより、ばね37は、ロック部材36を保持位置に向けて常時付勢している。
フック先端側支持突起38は、取付板部31に形成されたフック先端側挿入孔31Bの前側に位置して取付板部31からフック出入口16A側に向けて突出している。具体的には、フック先端側支持突起38は、左フックガイド33と右フックガイド34との間で左,右のシリンダ側ボス20,21側に位置して、取付板部31からフック出入口16A側に向けて突出している。このフック先端側支持突起38は、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入したときに、フック24の鉤部29の先端側29Bが当接してフック24を格納位置に支持するものである。
図4、図13に示すように、フック先端側支持突起38のうちフック出入口16A側である自由端(先端)は、鉤部29の先端側29Bの外周面29B2に沿った凹湾曲面38Aとして形成されている。これにより、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入したときに、鉤部29の先端側29Bの外周面29B2が凹湾曲面38Aに沿うように当接するので、フック24からのフック先端側支持突起38に対する面圧を低減させることができる。
フック基端側当接突起39は、取付板部31に形成されたフック先端側挿入孔31Bの後側に位置して取付板部31からフック出入口16A側に向けて突出している。具体的には、フック基端側当接突起39は、左フックガイド33と右フックガイド34との間で左,右のバケット側ボス22,23側に位置して、取付板部31からフック出入口16A側に向けて突出している。このフック基端側当接突起39は、フック24を鉤部29の基端側29Aから鉤部格納空間S2内に挿入したときに、フック24の鉤部29の基端側29Aが当接してフック24の格納位置への移動を阻止するものである。
図4、図13に示すように、フック基端側当接突起39のうちフック出入口16A側である自由端(先端)には、左,右方向に延びる平坦面39Aが形成されている。この平坦面39Aは、フック24を鉤部29の基端側29Aから鉤部格納空間S2内に挿入したときに、鉤部29の基端側29Aの外周面29A2が当接する部位である。これにより、フック24の鉤部29の基端側29Aがフック基端側当接突起39(平坦面39A)に衝突した場合の衝撃を分散させることができるので、フック基端側当接突起39の変形を抑制させることができる。
フック挿入部40は、左フックガイド33と右フックガイド34の間に形成された鉤部格納空間S2の底部側に設けられている。具体的には、フック挿入部40は、フック先端側支持突起38とフック基端側当接突起39との間に形成され、フック24の鉤部29の先端側29Bのみが挿入する凹溝部からなっている。また、フック挿入部40の底部側には、取付板部31のフック先端側挿入孔31Bが設けられている。
即ち、図4、図5に示すように、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入した場合には、フック24の先端側29Bがフック挿入部40に挿入され、鉤部29の先端側29Bがフック先端側支持突起38に支持される。そして、ロック部材36は、保持位置に進出して保持部36Aの当接面36A1がフック24の先端側29Bの内周面29B1に当接することによりフック24を格納位置に保持する。
一方、図7、図8に示すように、フック24を鉤部29の基端側29Aから鉤部格納空間S2内に挿入した場合には、フック24の基端側29Aがフック基端側当接突起39に当接する。これにより、フック24は、フック挿入部40への挿入が阻止される。また、ロック部材36は、被押圧部36Bがフック24の基端側29Aに当接しているので、ロック部材36の解除位置から保持位置への移動が阻止されている。
本実施の形態による油圧ショベルのフロント装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1による掘削作業と吊荷作業とについて述べる。
まず、油圧ショベル1により吊荷作業を行う場合には、格納位置で保持されているフック24を作業位置に移動させる。この場合、作業者がロック部材36の操作部36Cを把持し、ばね37の付勢力に抗してロック部材36を解除位置へと回動変位させる。これにより、ロック部材36の保持部36Aをフック24の鉤部29から離脱させることができ、連結軸11Bを中心にしてフック24を格納位置から作業位置へと移動させることができる。
そして、作業位置へと移動したフック24にワイヤロープ等を介して吊荷(いずれも図示せず)を吊下げ、例えばブーム5を俯仰動させつつ上部旋回体3を旋回させることにより、吊荷を所望の位置へと搬送する吊荷作業を行うことができる。
次に、バケット7を用いた掘削作業を行う場合には、フック24を作業位置から格納位置に移動させる。この場合、作業者がフック24を把持して、このフック24を左,右のバケット側ボス22,23(連結軸11B)を中心として左,右のシリンダ側ボス20,21側に向けて揺動させる。これにより、フック24を第2のバケットリンク16のフック出入口16Aからフック格納空間S1内へと移動させる。
ところで、上述した従来技術に記載されたフックは、フックの先端側および基端側の両方向からフック格納空間内の格納位置に格納することができる構成となっている。この場合、フックの先端側は、基端側よりも断面(厚み)が小さくなっている。従って、フックの先端側をフック保持具のロック部材により保持させた場合には、ロック部材とフックとの間のがたつきが大きくなり、フックがフック保持具に衝突してフック保持具の寿命が低下する虞がある。特に、油圧ショベルの掘削作業では、振動、揺れが大きいので、フックがフック保持具に頻繁に衝突してフック保持具の寿命が低下する虞がある。また、フック保持具は、複数枚のプレートを溶接により固着させた溶接構造となっているので、部品点数が多く、コストが増加する虞がある。
そこで、本実施の形態では、フック保持具30は、フック24を鉤部29の先端側29Bからのみ格納位置に保持することができる構成としている。即ち、フック保持具30の左フックガイド33と右フックガイド34との間に形成された鉤部格納空間S2には、フック24を作業位置から格納位置に向けて移動したときに、フック24の鉤部29の先端側29Bのみが挿入可能なフック挿入部40が設けられている。そして、ロック部材36には、フック24の鉤部29の先端側29Bがフック挿入部40に挿入したときのみに、フック24を格納位置に保持する保持部36Aが設けられている。
具体的には、図4、図5に示すように、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入した場合には、フック24の先端側29Bがフック挿入部40に挿入され、鉤部29の先端側29Bがフック先端側支持突起38に支持される。そして、ロック部材36は、ばね37の付勢力により、保持位置に進出して保持部36Aの当接面36A1がフック24の先端側29Bの内周面29B1に当接することによりフック24を格納位置に保持する。
一方、図7、図8に示すように、フック24を鉤部29の基端側29Aから鉤部格納空間S2内に挿入した場合には、フック24の基端側29Aがフック基端側当接突起39に当接する。これにより、フック24は、フック挿入部40への挿入が阻止される。また、ロック部材36は、被押圧部36Bがフック24の基端側29Aに当接しているので、ロック部材36の解除位置から保持位置への移動が阻止されている。
かくして、本実施の形態によれば、フック保持具30は、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2に挿入した場合にのみ、フック24を格納位置に保持することができる構成としている。これにより、フック保持具30のロック部材36は、フック24との間に隙間を発生させることなく、フック24を保持することができる。従って、フック24のがたつきを低減して、フック24がフック保持具30に衝突するのを抑制することができ、フック保持具30の寿命を向上させることができる。
また、フック保持具30の取付板部31には、左フックガイド33と右フックガイド34との間で左,右のシリンダ側ボス20,21側に位置し、フック24を鉤部29の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入したときに、フック24の鉤部29先端側29Bが当接してフック24を格納位置に支持するフック先端側支持突起38と、左フックガイド33と右フックガイド34との間でフック先端側支持突起38よりも左,右のバケット側ボス22,23側に位置し、フック24を鉤部29の基端側29Aから鉤部格納空間S2内に挿入したときに、フック24の鉤部29基端側29Aが当接してフック24の格納位置への移動を阻止するフック基端側当接突起39とが備えられている。
この場合、フック先端側支持突起38のうちフック24と接触する部位(自由端側)は、フック24の先端側29Bの外周面29B2に対応した形状の凹湾曲面38Aとなっている。これにより、フック24をフック挿入部40に挿入したときに、フック24の先端側29Bをフック先端側支持突起38の凹湾曲面38Aにより受承させることができる。従って、フック24からのフック先端側支持突起38に対する面圧を低減させることができるので、フック先端側支持突起38の寿命を向上させることができる。
また、フック24をフック挿入部40に挿入したときに、フック24の先端は、取付板部31のフック先端側挿入孔31B内に位置する構成となっている。これにより、フック24をフック挿入部40に挿入したときに、フック24の先端が取付板部31に衝突(接触)しないので、取付板部31の寿命を向上させることができる。
一方、フック基端側当接突起39のうちフック24と接触する部位(自由端側)は、フック24の基端側29Aの外周面29A2に接触する平坦面39Aとなっている。これにより、フック24をフック挿入部40に挿入したときに、フック24の基端側29Aをフック基端側当接突起39の平坦面39Aにより受承させることができる。従って、フック24からのフック基端側当接突起39に対する面圧を低減させることができるので、フック基端側当接突起39の寿命を向上させることができる。
また、フック挿入部40は、フック先端側支持突起38とフック基端側当接突起39との間に形成され、フック24の鉤部29の先端側29Bのみが挿入する凹溝部となっている。これにより、フック24は、フック24の先端側29Bから鉤部格納空間S2内に挿入したときに格納位置に移動可能となり、ロック部材36によりフック24を保持させることができる。
一方、フック24は、フック24の基端側29Aから鉤部格納空間S2内に挿入したときに格納位置に移動不可となり、ロック部材36によりフック24を保持させることができない。従って、作業者はフック24の挿入向きが異なっている(逆である)ことを認識することができる。
また、左,右のフックガイド33,34のうちフック出入口16A側である自由端は、それぞれ凸状に湾曲した湾曲面33A,34A1,34B1として形成されている。これにより、左,右のフックガイド33,34の剛性を向上させることができる。従って、フック24を作業位置から格納位置に移動させるときに、フック24が湾曲面33A,34A1,34B1に衝突した場合の衝撃力を分散させることができるので、左,右のフックガイド33,34の寿命を向上させることができる。
また、フック保持具30の取付板部31、左フックガイド33、右フックガイド34、フック先端側支持突起38、およびフック基端側当接突起39は、鋳造および鍛造により一体的に形成されている。これにより、フック保持具30の強度を向上させることができる。また、フック保持具30の部品点数を削減することができると共に、大量生産が可能となるのでコストを低減させることができる。さらに、左,右のフックガイド33,34の湾曲面33A,34A1,34B1およびフック先端側支持突起38の凹湾曲面38A等の形状を容易に形成することができる。
また、上述した実施の形態では、ロック部材36は、支持ピン35を介して右フックガイド34に設けられた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばロック部材は、支持ピンを介して左フックガイドに設けられていてもよい。