以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
先ず、本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明の課題となる運行効率の低下が生じる事象を簡単に説明する。
《エレベーターシステムにおける運行効率が低下する事象》
図18は、エレベーターシステムにおける運行効率の低下が生じる第1の事象を示している。この第1の事象は、非定常的な状況の下で利用者人数の増加を生じ、エレベーターの運行効率の低下が発生する事象を示している。
図18において、ビル内の大会議室で月に1回開催される会議に出席するために、多くの利用者(普段はこのビルに入居していない外部の利用者)がビルに入館してロビー階床24から、複数台のエレベーター群25を利用して大会議室のある階床26に移動する例である。
この事象では、外部から多くの利用者が一時的にエレベーターを利用するため、利用者人数に対してエレベーターの輸送能力が限界となり、この結果、ビルのエレベーター利用者の全体に対して、長い待ち時間が発生することになる。
特に普段からエレベーターを利用している利用者にとっては、普段の定常的な状況ではない、非定常的な状況の下での運行効率の低下のため、長い待ち時間が発生して時間を無駄にする可能性がある。更に、ロビー階床24以外の階床の利用者は、ロビー階床24での混雑状況が把握できないため、どのような理由でエレベーターが呼びに対して到着しないのかが分からず、心理的なストレスがより大きくなる恐れがある。
図19においては、図18に示す事象が発生した場合の利用者人数の推移を示しており、横軸に時間軸、縦軸にエレベーターの利用者人数をとった場合の利用者人数の時間推移を表したグラフである。ここで、曲線I3は定常的な状況の場合のエレベーター利用者人数を表し、符号I4は、上述の運行効率が低下する事象が発生した場合における、利用者人数の定常的な状況の時からの増加分を表している。この増加分の利用者人数は予測利用者人数となる。
また、符号I5は、現時点で稼働しているエレベーター、若しくは群管理されたエレベーター群の輸送能力を表している。この輸送能力は設備仕様(乗りかごの速度、定員、階床数など)から決まる、時間当たりの輸送人数の最大値となる。増加分を足し合わせた利用者人数の合計に対して、輸送能力を超過した分が斜線で塗りつぶした領域I6であり、この時間帯の領域が予測利用者人数≧輸送能力となる。
したがって、利用者人数が輸送能力を超過すると、エレベーター乗り場で乗りかごに乗り切れない利用者(設備能力的に輸送しきれない利用者)が現れ、このような乗り切れない利用者が累積することで、行列が発生するような事象が起こる。このような場合は、暫くはエレベーターを利用できないので利用者にとって長い待ち時間となる。
図20は、エレベーターシステムにおける運行効率の低下が生じる第2の事象を示している。この第2の事象は、非定常的な状況の下で利用者人数の増加を生じ、エレベーターの運行効率低下が発生する事象を示している。
図20は、ビル内で複数階床(例えば5階床分)に事務所を設けているテナント会社Aにおいて、そのテナント会社Aが隔週に1回開催の全員出席の会議を開催するため、或る時間帯に一斉に会議を開催する階床27にエレベーターで移動する場合を示している。
この事象でも隔週に1回、一時的にエレベーターの運行効率が低下するため、その時間帯にエレベーターを利用する他の階床のエレベーター利用者は、待ち時間の増加の影響を受ける。定常的な状況での運行状態とは異なり、一時的に待ち時間が長くなり、かつ、利用者は長くなる理由もわからず、しかも予測もできないため、時間の無駄に加えて心理的なストレスが増加することになる。
図21は、エレベーターシステムにおける運行効率の低下が生じる第3の事象を示している。この第3の事象は、VIP運転や保守点検運転のようなエレベーターの特殊運転によって、一般向け利用者に対して実効稼働台数が減少することで輸送能力の低下が発生して、エレベーターの運行効率の低下が発生する事象を示している。
図21において、4台の群管理されたエレベーターにおいて、1台のエレベーター28が専用運転(VIP運転等)、或いは保守点検運転のため、群管理制御から切り離された状況を想定している。これは事前に計画されているものであるが、通常のエレベーターの運行からすると、非定常的な状況の下での運行効率が低下する事象となる。
この結果、群管理で運行されているエレベーターの実効稼働台数が4台から3台に減少するため、輸送能力の低下が発生する。尚、ここでVIP運転について補足すると、例えば、ビル内に入居している或るオフィスビルの重役や重要な来客者のために、セキュリティの確保や無駄な時間短縮のために、エレベーターを専用で運転する運転モードである。
図22においては、図21に示す事象が発生した場合の利用者人数の推移を示しており、横軸に時間軸、縦軸にエレベーターの利用者人数にとった利用者人数の時間推移を表したグラフである。ここで符号J3は実効稼働台数が減少した時間帯でのエレベーター利用者人数を表している。更に、符号J4と符号J5はエレベーターの輸送能力の時間推移の値となる。
定常的な状況では符号J4で示された輸送能力の値となっているが、10時20分前後の時間帯では特殊運転が実施されて、一般向け利用者に対するエレベーターの実効稼働台数が減少するため、輸送能力が符号J5のように低下する。
この結果、特殊運転が実施される時間帯においては、符号J3で示される予測利用者人数よりも輸送能力が低くなり、この時間帯では予測利用者人数≧輸送能力となる。この場合も、利用者人数が輸送能力を超過すると、エレベーター乗り場で乗りかごに乗り切れない利用者(設備能力的に輸送しきれない利用者)が現れる。
したがって、乗り切れない利用者が累積することで、行列が発生するような事象が起こる。このような場合は、暫くはエレベーターを利用できないので利用者にとって長い待ち時間となる。
《本発明の基本的な考え方》
そして、エレベーターシステムにおける運行効率の低下が生じる事象に備えるために、本発明では以下のような考え方を提案している。先ず、本発明の実施形態を説明する前に、本発明の基本的な考え方についての要点を簡単に説明する。
上述したように、イベントの開催によるエレベーターの利用者人数の一時的な増加や、エレベーターの実効稼働台数の減少による利用者人数の一時的な増加といった原因によって、エレベーターの運行効率が低下するという課題が発生する。
そこで、本発明においては、エレベーターの運行効率が低下することを表す運行情報(実施形態ではガイダンス情報としている)を事前に利用者に提供することで、利用者はエレベーターの運行効率が低下する事象が発生する時刻に、エレベーターを使用することを避けることができるようになり、結果的にエレベーター乗り場での待ち時間を短くすることができる。
そして、本発明においては、非定常的な状況の下で生じるエレベーターの運行効率の低下を招く事象(以下、「運行効率低下事象」と表記する)に対して、運行効率低下事象が発生する「発生日」、及び「発生時刻」を事前に予測し、この運行効率低下事象の「発生日」、及び「発生時刻」より前に設定された任意の所定の「提供日」、及び所定の「提供時刻」に、運行効率低下事象が発生する「発生日」、及び「発生時刻」にエレベーターを利用すると思われる利用者を対象にして、運行効率が低下することを表す運行情報を提供するものである。
ここで着目している非定常的な状況の下における運行効率低下事象は、非定常的なイベントの開催によって利用者人数が増加する場合や、エレベーターの実効稼働台数の減少によって乗りかご1台当たりの利用者人数が増加する場合である。
例えば、上述したような、隔週や月に一度の割合で開催される、定期的な大会議のような非定常的なイベントによる利用者人数の増加に基づく混雑や、VIP向けの専用運転や保守点検運転のような非定常的なエレベーターの特殊運転による実効稼働台数の減少による利用者人数の増加に基づく混雑等がこれに該当する。尚、非定常的なイベントは、上述した定期的な会議や特殊運転だけではないことはもちろんである。
このように、定常的な運行状態の下で普段は混雑していない時間帯においても、上述した非定常的なイベントの発生によって、利用者人数の増加による混雑が一時的に発生する。したがって、この非定常的なイベントの発生を予測できれば、事前に混雑が発生することを利用者に提供することができる。
このため、この非定常的なイベントは、事前に予測することが可能なものであることが重要である。例えば、定期的に開催される会議、多人数が集まる催し、エレベーターの特殊運転等の非定常的なイベントの場合は、過去のエレベーターの利用状況の履歴、若しくはビルの利用者、テナント会社などのスケジュール等から事前に予測することが可能である。
このような非定常的なイベントの予測から、エレベーターの運行効率が低下する運行効率低下事象が発生する「発生日」、及び「発生時刻」を予測することによって、運行効率低下事象の「発生日」、及び「発生時刻」より前に設定された任意の所定の「提供日」、及び所定の「提供時刻」に、エレベーターを利用する利用者を対象にして運行効率が低下することを表す運行情報(ガイダンス情報)を提供することができる。
ここで、提供される運行情報の表示上の特徴は、運行効率低下事象の「発生日」、及び「発生時刻」における、定常的な運行状態の下での運行効率(例えば、待ち時間、利用者人数)と、非定常的な運行状態の下での運行効率(例えば、待ち時間、利用者人数)とを比較して、両者の差分等からなる運行情報を出力することである。
このように運行効率の低下による影響を比較表示することによって、その影響の度合いを明確にすることができ、利用者は的確に運行効率の低下の影響を把握できるようになる。この結果、利用者は、非定常的な状況の下におけるエレベーターの運行効率低下事象の発生を事前に把握することができるので、運行効率低下事象の「発生日」、及び「発生時刻」でのエレベーターの利用を避けることができ、利用者の時間の無駄や心理的なストレス増加を避けることが可能となる。
以上が、本発明になるエレベーターシステムの考え方の要点になる。以下では、この考え方の要点に基づいて、本発明の実施形態になるエレベーターシステムについて、図面を参照して詳細に説明する。
《本発明の第1の実施形態》
図1~図18を用いて、本発明の第1の実施形態のエレベーターシステムについて詳細に説明する。
《本実施例のエレベーターシステムの機能ブロック》
図1は本発明の第1の実施形態を示すエレベーターシステムの全体の機能ブロック(制御手段)である。この機能ブロックは、後述する図3に示すエレベーター遠隔管理システム、エレベーター群管理装置、及びエレベーター制御装置等で実行される。
機能ブロックの構成は、「(A)入力情報に関わる処理系」、「(B)エレベーターの利用者人数の予測、輸送能力の算出、及び両者に基づく運行状態の評価に関わる処理系」、「(C)運行状態に関するガイダンス情報の出力の制御に関わる処理系」、「(D)ガイダンス情報の出力に関わる処理系」に分けることができる。ここで、ガイダンス情報は、後述する運行効率の低下を表す情報であり、或いは運行効率の低下を表す情報を含む情報である。
この中で特に重要となるのが、「(C)運行状態に関するガイダンス情報の出力に関わる処理系」であり、この処理系で、運行効率の低下の影響を直接受ける利用者を対象にしたガイダンス情報の出力の制御と、その利用者に向けて効果的なガイダンス情報を提供するための表示内容の作成が実施される。
図1において、先ず「(A)入力情報に関わる処理系」は、運行状態予測条件設定部1、対象とするビルにおける過去のビル内人流に対するデータベース部3、ビルテナント・ビル利用者のスケジュールデータベース部4、ビル・エレベーター仕様データベース部6、エレベーターの運転スケジュールデータベース部7より構成される。
運行状態予測条件設定部1では、予測対象となる「日」と「時刻」を設定する。この「日」と「時刻」からループ処理(繰り返し処理)を実行して、運行効率低下事象が発生する「発生日」、及び「発生時刻」の探索処理を実施する。例えば、探索期間を1週間後や2週間後までの期間を設定して探索する。
対象とするビルにおける過去のビル内の人流に関するデータベース部3は、例えば、エレベーターの停止階データと、その階での乗降人数データ(乗りかごの荷重センサで計測)より計測されるビル内の人流データのデータベースとなる。
例えば、オフィスビルの場合、出勤時のアップピークの人流、昼食開始時のダウンピークの人流、マンションビルの場合、朝の通学・通勤のダウン交雑の人流などが代表的な人流パターンとなる。この人流データの過去の履歴より、1回/週、1回/隔週、1回/月等で開催される多くの利用者が集まるイベントを検出することができる。
ここで、過去のビル内の人流に関するデータは、請求項においては「過去のエレベーターの利用状態のデータ」として位置づけられる。尚、「過去のエレベーターの利用状態のデータ」は上述した例示以外の過去の人流データも含ませることができる。
ビルテナント・ビル利用者のスケジュールデータベース部4では、例えば、ビル内に入居しているテナント会社や、ビル内で働いたり生活している利用者、及び外部から来訪する利用者における会議やイベント等のイベントスケジュールデータが、個人情報の保護等の適正な管理、若しくはフィルタリング処理を実施された上で蓄積されている。これらの予定表のデータから大人数が集まるイベントの発生を正確に予測することができる。また、これを基礎として利用者の人数等も予測することができる。
ここで、ビルテナント・ビル利用者のスケジュールデータは、請求項においては「ビルの利用者の行動に関するスケジュールのデータ」として位置づけられる。尚、「ビルの利用者の行動に関するスケジュールのデータ」は上述した例示以外のスケジュールデータも含ませることができる。
ビル・エレベーター仕様データベース部6は、後述するエレベーター輸送能力を算出するため、ビルの階床ピッチ、エレベーターの設置台数、サービス階床、速度、乗りかごの定員等のエレベーターの仕様データが格納されている。
エレベーターの運転スケジュールデータベース部7には、例えば、そのビルのエレベーターの運転に関する運行スケジュールが格納されており、この運行スケジュールの情報からVIP向けの専用運転や保守点検運転のような、エレベーターの特殊運転が実行される日時を特定できる。
ここで、エレベーターの運転スケジュールデータは、請求項においては「エレベーターの運行に関するスケジュールのデータ」として位置づけられる。尚、「エレベーターの運行に関するスケジュールのデータ」は上述した例示以外の運行スケジュールデータも含ませることができる。
次に、「(B)エレベーター利用者人数の予測、輸送能力の算出、及び両者に基づく運行状態の評価に関わる処理系」は、「(A)入力情報に関わる処理系」より得た入力情報から、エレベーター利用者人数の予測、輸送能力の算出、及び両者に基づくエレベーターの運行状態の評価を実行する。
先ず、エレベーターの利用者の需要予測部2では、対象とするビルにおける過去のビル内の人流に対するデータベース部3とビルテナント・ビル利用者のスケジュールデータベース部4の各データから、運行状態予測条件設定部1で設定した「発生日時」におけるエレベーターの利用需要を予測する。
ここでの予測のポイントは、定常的な需要成分の予測(符号201の処理)と、非定常的な需要成分の予測(符号202の処理)の2つの需要成分を予測することであり、特に後者の需要成分の予測が重要となる。ここで、需要成分とは、例えばエレベーターを利用する利用者人数である。
更に、この非定常的な需要成分は、通常は混雑していない時間帯において、上述したような非定常的な状況の下で、エレベーターの利用者人数の増大が一時的に発生するような場合に対応し、例えば、午前中に開催される月に一度の大会議等に出席する場合等が該当する。この非定常的な状況の下での需要成分を、ビル内人流データの過去の履歴や、テナント、利用者、会議室などのスケジュールデータを解析して予測する。
エレベーターの輸送能力算出部5では、ビル・エレベーター仕様データベース部6のビル、及びエレベーターの仕様データを基に、そのエレベーターの時間当たりの輸送人数である輸送能力を算出する。ここで重要なことは、運行状態予測条件設定部1で設定された「発生日時」に対して、エレベーターの運転スケジュールデータベース部7から「発生日時」でのエレベーターの実効的な稼働台数を求める点にある。
例えば、VIP向けの専用運転や保守点検運転のような特殊運転を実施する場合は、一部のエレベーターが特殊運転のために使用されるので、一般利用者向けの実効稼働台数は減少する(群管理エレベーターのような複数台のエレベーターを想定している)。このような状況を運転スケジュールデータベース部7から検出して、実効稼働台数を算出し、これに基づいて基礎となる輸送能力の値から予測された「発生日時」の輸送能力の値を修正する。つまり、定常的な状態で稼働している設備台数が、特殊運転するために必要となる台数によって修正される。
この修正された輸送能力は定常的な輸送能力とは異なるものであり、非定常的な状況の下での輸送能力とみなすことができる。この非定常的な状況の下での実効稼働台数の変化による輸送能力の変化も本実施例での重要なポイントとなる。尚、ここでは輸送能力の算出としているが、エレベーターが一般利用者用にサービスしている実効稼働台数を代わりに用いても良い。この実効稼働台数は、例えばエレベーターの設備台数からVIP運転のような専用運転、保守点検運転などに使用している台数を差し引くことで算出できる。
需要に対するエレベーターの運行状態評価部8では、上述したように算出したエレベーターの利用者人数(需要量)とエレベーターの輸送能力を比較して、エレベーターの運行状態を評価する。ここで、利用者人数が輸送能力を超過する状況(利用者人数≧輸送能力)に近づくと、エレベーターの運行効率が低下すると判定される。
ここでは、特に非定常的な状況の下での需要成分の増加による運行効率の低下、或いは/及び非定常的な状況の下での輸送能力の減少による運行効率の低下のような、非定常的な事象による運行効率の低下の検出が重要となる。
そして、運行効率が低下すると判定された場合は、ビル管理者やテナントの情報端末9にガイダンス情報が通報される。更に、以下に述べる運行状態に関するガイダンス情報の出力を実施するかどうかをビル管理者に問い合わせる。
「(C)運行状態に関するガイダンス情報の出力の制御に関わる処理系」では、運行効率が低下すると判定された場合の運行状態に関するガイダンス情報に対する出力制御(どういう条件で出力するかの制御)を実施する。この一連の処理を実施するのが、エレベーター運行に関するガイダンス情報出力制御部10となる。
このガイダンス情報出力制御部10が、運行効率の低下が発生すると予測された「発生日時」にエレベーターを利用して影響を受ける利用者に対象を絞って、設定された所定の「提供日」の所定の「提供時刻」にガイダンス情報を提供する、という重要な処理を実行する。
また、ガイダンス情報とは、運行効率の低下に関する利用者向けに事前案内する運行効率情報であり、特に非定常的な状況の下での運行効率の低下に関する案内情報となる。このガイダンス情報(案内情報)は、例えば、利用者人数の増加に関する情報、待ち時間の増加に関する情報、エレベーターの実行可動台数の減少に関する情報、これらの情報を数値で指標化した情報等である。このガイダンス情報については後述する。
次に、エレベーターの運行に関するガイダンス情報出力制御部10について説明する。ガイダンス情報出力条件設定部101では、運行効率の低下に関わるガイダンス情報を出力するための条件を設定する。ここで設定される条件とは、運行効率の低下が発生すると予測された「発生日」と「発生時刻」を基準に、この基準より前に設定された所定の「提供日」の所定の「提供時刻」という特定日時と、更にガイダンス情報を送る情報提供の場所等の条件である。
これらの条件は、運行効率低下事象が発生すると予測された発生日時に、エレベーターを利用して運行効率の低下の影響を受ける利用者が、運行効率低下事象が発生すると予測された発生日時より前のエレベーターを利用すると予想される日時や場所となる。例えば、運行効率低下事象が発生すると予測された発生日時の、1週間前、及び前日の朝や発生時刻と同じ時刻等である。
ここで、図1に記載の通り、このガイダンス情報出力条件設定部101の処理までが、事前準備として例えば、1週間前、2週間前に実施される処理となる。この処理以降の処理(符号102の処理以降)が日々の時間の経過に合わせてリアルタイムで実行される処理となる。
ガイダンス情報出力条件判定部102では、ガイダンス情報出力条件設定部101で設定された出力条件に、現在の条件(日、時刻、呼び、場所など)が一致するかどうかを判定する。
例えば、設定された出力条件として、運行効率低下事象が発生する前日の同じ時刻で、場所は乗り場呼びが登録されている階の乗り場と、かご呼びが登録されている乗りかご内のような条件で判定される。この条件と一致する場合は、その時、その場所のエレベーターの利用者に向けてのガイダンス情報を提供する処理が進められる。
ガイダンス情報を提供すると判定された場合、ガイダンス情報内容作成部103にて、運行効率の低下に関するガイダンス情報のコンテンツが作成される。このガイダンス情報は、普段は起きていない非定常的な事象による運行効率の低下が発生することへの注意喚起を促すため、定常時(通常時)の運行状態の場合と、運行効率が低下する運行状態の場合を比較する形で、どの程度の影響度合いかを示すような情報内容を作成する。このガイダンス情報の詳細は、図11~16で説明する。
最後に「(D)ガイダンス情報の出力に関わる処理系」では、作成されたガイダンス情報を出力条件に従って出力する処理が実行される。具体的には、ガイダンス情報出力部11にて、ガイダンス情報のコンテンツのデータが、乗りかご内の情報表示装置12、エレベーター乗り場の情報表示装置13、利用者向けの情報端末14等の1つ以上の情報表示装置に出力される。
乗りかご内の情報表示装置12、エレベーター乗り場の情報表示装置13、利用者向けの情報端末14では、それぞれの装置上でエレベーターの利用者に向けて、運行効率の低下に関するガイダンス情報が出力される。
次に、図1に示した機能ブロックの制御フローについて説明する。図2は図1にて説明した機能ブロックに関する制御フローを示すものである。以下、この処理の流れを説明する。
まず、所定の起動タイミングで図2の制御フローが起動される。そして、運行状態を予測する日・時間等の条件が設定される(S2)。これは、図1の運行状態予測条件設定部1での処理に対応する。続いて、上述の予測条件におけるエレベーター利用者の需要(定常成分、非定常成分)の予測処理が実施される(S3)。これは図1のエレベーター利用者の需要予測部2にて実施される。
更に上述の予測条件におけるエレベーターの輸送能力が算出される(S4)。これは図1のエレベーターの輸送能力算出部5にて実行される。続いて、予測した需要に対するエレベーターの運行状態の評価が実施される(S5)。この評価は予測した利用者人数と輸送能力との比較によってなされ、図1の需要に対するエレベーターの運行状態評価部8にて実行される。
この評価の結果、非定常的な状況の下でのエレベーターの運行効率の低下が発生するかどうかを予測して判定する(S6)。運行効率の低下の発生が予測されない場合は、エンドに抜けて処理を終了する。
一方、運行効率の低下の発生が予測された場合は、エレベーターの運行効率の低下に対するガイダンス情報の出力条件の設定が実行される(S7)。これは図1のガイダンス情報出力条件設定部101で実行される。ここまでが事前に運行効率低下事象の発生を予測して、発生を予測した場合は出力条件を設定する処理となる。
この処理以降が日々リアルタイムに実行される処理となる。まず、現在の「日」と「時刻」の条件をチェックし、現在の日時がガイダンス情報に対する出力条件を満たすかどうかを判定する(S8)。これは図1のガイダンス情報出力条件判定部102で実施される。現在の日時がガイダンス情報に対する出力条件を満たさない場合は、エンドに抜けて処理を終了する。
一方、現在の日時がガイダンス情報に対する出力条件を満たす場合は、続いてガイダンス情報の内容が作成される(S9)。これは図1のガイダンス情報内容作成部103にて実行される。最後に作成したガイダンス情報のデータが出力される(S10)。これは図1のガイダンス情報出力部11の処理となる。
以上説明したように、図1、及び図2で説明した実施形態における機能ブロックによれば、
(1)通常はあまり生じていない非定常的な状況の下で発生する、利用者人数の一時的な増加や、エレベーターの実効稼働台数の減少によるエレベーターの運行効率の低下の発生を事前に予測できる、
(2)運行効率の低下が発生すると予測される発生日時に、影響を受けると推測される利用者を対象にして、運行効率の低下を表すガイダンス情報を出力する適切な提供日、提供時刻、提供場所等の出力条件を設定できる、
(3)運行効率の低下の影響度合いを通常時との比較で示す情報内容を作成できる、
(4)これらに基づいて適切な提供日時と提供場所において、運行効率の低下の影響を受ける利用者にガイダンス情報を提供することができる
といった作用、効果を奏することが可能となる。
その結果、エレベーターの利用者は、事前にエレベーターの運行効率低下事象の発生を把握でき、当日の該当時刻でのエレベーターの利用を避けることができ、利用者の時間の無駄や心理的なストレス増加を避けることが可能となる。
≪エレベーターシステムの構成≫
次に、本実施形態が適用されるエレベーターシステムの構成を図3、及び図4を用いて説明する。図1、及び図2で説明した機能ブロックが実施されるハード系システムの全体構成やマクロな観点での処理を説明するのがこの説明の位置付けとなる。
まず図3は、本発明の実施形態におけるシステム全体の構成を示す図になる。システム全体をマクロな観点で分類すると、「エレベーター遠隔管理系」、「群管理エレベーター系」、「ビル管理系」に分けることができる。
まず「エレベーター遠隔管理系」は、エレベーター遠隔管理システム15で構成され、多数のビルにて稼働している多数のエレベーターや群管理装置を専用の通信ネットワークなどを介して遠隔で管理・制御している。複数台のエレベーターを群として制御するエレベーター群管理装置のさらに上位制御の位置付けで管制システムのような役割を担っている。図1、及び図2で説明した機能ブロックは主にこのエレベーター遠隔管理システム15内に実装されて、この中で処理が実行される。
次に「群管理エレベーター系」は、群管理されたエレベーターと乗り場の装置群で構成される。まず複数台のエレベーターを群として統括制御するエレベーター群管理装置16、群管理されたエレベーター1号機について、制御装置171、乗りかご181、行先階呼び登録装置1811、荷重センサ1812、更に図1でも述べたかご内情報出力装置121が備えられ、同様にエレベーターM号機について、制御装置172、乗りかご182、行先階呼び登録装置1821、荷重センサ1822、かご内情報出力装置122が備えられている。
更に乗り場側は、1階乗り場191において、乗り場呼び登録装置1911と図1でも述べた乗り場内情報出力装置131が備えられ、同様にN階乗り場192には、乗り場呼び登録装置1921と乗り場内情報出力装置132が備えられている。
ここで、図1、及び図2で説明した機能ブロックは、エレベーター遠隔管理システム15ではなく、エレベーター群管理装置16に実装されて、この中で処理が実行されても良い。
また、乗りかごの行先階呼び登録装置1811、1821は、乗りかご内の乗客が行先階を登録するためのもので、荷重センサ1812、1822は、かご内の乗客の人数の推定に用いられる。
更に、かご内情報出力装置121、122が、本実施形態において乗りかご内の利用者に情報を提供する重要な役目を担っている。乗りかご内の利用者は、乗りかご内の移動中にこのかご内情報出力装置121、122を見ることが多く、ここで、運行効率が低下するというガイダンス情報が、運行効率の低下の影響を受ける利用者に対して、直接的に情報提供されることになる。
また、行先階呼び登録装置1811、1821の呼び状態が登録されているかどうか、また、かご内荷重センサ1812、1822による、乗りかご内に乗客がいるかどうかの判定などと組み合わせることにより、より適切に利用者の有無やその行先階情報に対応してガイダンス情報の提供が可能となる。
更に乗り場側についても同様で、乗り場内情報出力装置131、132が、乗り場の利用者に運行効率が低下するというガイダンス情報を提供する重要な役目を担っている。乗り場呼び登録装置1911、1921の乗り場呼び登録の有無や乗り場呼びの方向の情報と組み合わせて、乗り場に利用者がいる時やその方向に応じて、より的確に利用者にガイダンス情報の提供を行なうことができる。
「最後にビル管理系」は、ビル全体のスケジュール管理サーバー20、ビル内テナントAのスケジュールサーバー21、ビル設備管理サーバー22で構成され、これはインターネットのような広域に広がる通信ネットワーク23を介してエレベーター遠隔管理システム15と繋がっている。
更に図1で述べた利用者情報端末14も、この通信ネットワーク23を介してエレベーター遠隔管理システム15とつながっている。ここで、図1の機能ブロックとの対応付けについては、ビル全体のスケジュール管理サーバー20、ビル内テナントAのスケジュールサーバー21が、図1のビルテナント・ビル利用者のスケジュールデータベース部4に対応し、更にエレベーター群管理装置16、ビル設備管理サーバー22が、図1のビル・エレベーター仕様データベース部6、エレベーターの運転スケジュールデータベース部7に対応する。
ビル全体のスケジュール管理サーバー20は、大会議や多人数が集まる大きなイベントなどのビル全体のイベントスケジュールが管理されている。また、ビル内テナントAのスケジュールサーバー21は、ビル内に入居している各テナント会社に対する多人数が移動するようなイベントスケジュールが管理されている。更に、ビル設備管理サーバー22には、エレベーターを含めたビル設備の保守点検の予定情報などが管理されている。
これらのスケジュール情報を用いて、エレベーター遠隔管理システム15では、ビル内の非定常的な状況の下における、一時的な利用者人数の増加やエレベーターの実効稼働台数の減少を予測することができる。
図3のシステム構成による全体的なシステムの動作は以下のようになる。まずビル管理系のビル全体スケジュール管理サーバー20、ビル内テナントAのスケジュールサーバー21などから、大人数のビル内移動や多数の人が集まるような大きなイベントの情報がエレベーター遠隔管理システム15に伝送される。同様に、ビル設備管理サーバー22から、エレベーターの保守点検運転やVIP専用運転などの情報がエレベーター遠隔管理システム15に伝送される。
エレベーター遠隔管理システム15では、これらの情報から非定常な状況の下でのエレベーターの運行効率低下事象の発生と、その「発生日」と「発生時刻」を予測する。更に、この「発生日」と「発生時刻」を基準にして、エレベーターの利用者に運行効率が低下するというガイダンス情報を提供する「提供日」、「提供時刻」及び「提供場所」等の出力条件を定める。
そして、ガイダンス情報を出力する「提供日」と「提供時刻」になった時に、エレベーター遠隔管理システム15からエレベーター群管理装置16を介して、或いはエレベーター群管理装置16を介さずに直接的に、エレベーターの各号機の乗りかご内の情報出力装置121、122や、各階の乗り場の情報出力装置131、132に運行効率が低下するというガイダンス情報を提供する。
ここで、運行効率低下事象が発生すると予測された発生日時に利用者がエレベーターを利用するため、事前にこれらの利用者に対して、任意の「提供日」と「提供時刻」で運行効率の低下が発生するというガイダンス情報を提供して前もって注意喚起を行なうことができる。
このような仕組みにより、適切な利用者に適切な情報を提供して、非定常的な状況の下で発生する運行効率の低下による影響をできるだけ回避することが可能となる。
最後に、利用者情報端末14について補足すると、この利用者端末14を用いた利用者への情報提供の詳細は、第2の実施形態として図17を用いて詳しく説明する。この方法では、利用者情報端末14が、個人毎に対応できる利点を活かしてメール等を用いることで、運行効率の低下に関するガイダンス情報を個別に提供することができる。
次に図4を用いて情報提供判断処理の制御フローを説明する。この制御フローは、非定常な状況の下でエレベーターの運行効率の低下が予測される場合に、そのガイダンス情報をエレベーターの利用者に提供するかどうかを、ビル管理者に問い合わせる処理が加わった制御フローとなっている。
まず、所定の起動タイミングで図4の制御フローが起動される。そして、エレベーターの運行状態を予測して評価する処理を実行する(S13)。次に非定常な状況の下でエレベーターの運行効率の低下が予測されるか否かを判定する(S14)。運行効率の低下の発生が予測されない場合は、エンドに抜けて処理を終了する。
一方、運行効率の低下が予測される場合は、ビル管理者に、非定常な状況の下でエレベーターの運行効率の低下が発生するというガイダンス情報を提供する(S15)。更に非定常な状況の下でエレベーターの運行効率の低下が派生するというガイダンス情報を利用者に対して提供するかどうかを問合わせる(S16)。
ガイダンス情報を利用者に提供しない場合は、エンドに抜けて処理を終了する。一方、ガイダンス情報を利用者に提供する場合は、利用者に対してエレベーターの運行効率の低下に関するガイダンス情報を提供する処理を実行する(S17)。
このような処理によって、先ずビル管理者が、ビル内で運行効率低下事象が発生する可能性があることを事前に把握することができ、更に必要に応じて利用者にガイダンス情報の提供を行なうか否かを選択することができる。
例えば、ビルの重要な来客のためだけにエレベーターの1台を専用で運転して、やむを得ず非定常な状況が発生して運行効率の低下が生じる場合は、利用者に敢えてその情報を開示しないような選択もある。また、ビルの大きなイベントやエレベーターの特殊運転は、ビル側の特別な事情の場合もあるため、エレベーターシステムで勝手にガイダンス情報の提供の要否を判断できない。このような場合は、図4のような制御フローは有効である。
≪エレベーターシステムの情報出力制御≫
次に、エレベーターシステムの情報出力制御について説明する。この情報出力制御は本実施形態で特に重要な制御であり、この詳細を図5~図10に基づき説明する。
図5は、図1に示すガイダンス情報出力条件設定部101の詳細な機能ブロックである。このガイダンス情報出力条件設定部101の入力となるデータが、運行状態の評価結果と、運行効率低下事象の発生を予測した「発生日D」と「発生時刻T」のデータになる。これらの入力データは、以下の各設定部で使用される。以下、機能部ブロックの処理を説明する。
はじめに、ガイダンス情報を出力する「提供日」は、「提供日」条件設定部1011で設定され、運行効率低下事象の発生を予測した「発生日D」を基準にして、出力する条件となる「提供日」を設定する。この出力する「提供日」は、利用者にガイダンス情報を提供する上で、あまり早い時期ではなく、かつ直前のみとならないように、複数の日に分けた「提供日」で設定される。
例えば、運行効率低下事象の発生を予測した「発生日」の1週間前(D-7)、前日(D-1)、当日(D)等の3回に分けて設定される。尚、前日が土、日曜日のような休日となる場合は、営業日上の前日(D-3)に設定する。
次に、ガイダンス情報を出力する「提供時刻」条件設定部1012では、運行効率低下事象の発生を予測した「発生時刻T」を基準にして、出力する条件となる「提供時刻」を設定する。この「提供時刻」は、当日にエレベーターを利用して運行効率の低下の影響を直接受ける利用者が利用する時刻を推定して、その時刻に設定される。
例えば、運行効率の低下を予測した「発生時刻T」と同じ時刻を含めた前後の時間帯は、利用者が普段利用している時間と考えられるため、この普段利用している時間帯を、出力すべき「提供時刻」として設定する。
続いて、ガイダンス情報を出力する「提供場所」条件設定部1013では、上述の「提供日」と「提供時刻」に、ガイダンス情報を出力する「提供場所」の条件を設定する。この「提供場所」は、エレベーターを利用する利用者を主な対象としてガイダンス情報を提供するため、エレベーターの乗り場、乗りかご内となる。他に利用者の情報端末(スマートフォン、タブレット、パソコン、情報機器)、ロビー階のエントランス、食堂などが適切な場所となる。ここでディスプレイ装置やデジタルサイネージ装置のような表示装置に、予測した運行効率の低下に関するガイダンス情報を提供する。
更に、ガイダンス情報を出力する開始条件設定部1014では、ガイダンス情報の提供を開始する条件を設定する。これは上述した「提供場所」に利用者が存在していることを検出することでその開始条件としている。例えば、エレベーター乗り場の場合は、乗り場呼びが登録されたこと、乗りかご内の場合は、行先階呼びが登録されたことや荷重センサの荷重データから、乗りかごに利用者が存在していることが検出できる。
最後に、ガイダンス情報に対する出力条件テーブル作成部1015では、上述の各処理で設定された出力条件をまとめた出力条件のテーブルを作成する。このテーブルの例が符号1016に示した表となる。このテーブルでは、既に説明したガイダンス情報を提供する「提供日」、「提供時刻」、「提供場所」、及び「出力開始条件」の各項目の結果が記録されている
この出力条件を基にして、次のガイダンス情報に対する出力条件判定部102にて、ガイダンス情報の出力の条件を満たすかどうかを判定し、満たす場合には、例えば、乗りかご内の情報出力装置121、122等で運行効率の低下に関するガイダンス情報を利用者に向けて提供する。
図6は、ガイダンス情報に関する出力条件の一例を示している。この出力条件は、ガイダンス情報に対する出力条件のテーブルT1(図5の符号1016と同じ)のような内容で定められており、項目番号T2毎に、情報出力の設定条件T3であるガイダンス情報を提供する「提供日」T4、「提供時刻」T5、及びガイダンス情報を提供する「提供場所」T6の各項目で定められている。
尚、「提供時刻」T5は、所定時間長の時間帯を表すものとする。したがって、ガイダンス情報は、所定時間長の時間帯の全時間帯に亘って提供されても良いし、その時間帯の最初付近や中央付近の時間帯であっても良い。
次に、運行効率低下事象の発生を予測した「発生日」、及び「発生時刻」に対して夫々の設定条件の詳細を図6で説明する。
まず、ガイダンス情報を提供する「提供日」が1週間前(D-7)の場合、ガイダンス情報を提供する「提供時刻」は、朝の出勤時間帯(08:00-09:00)と、運行効率の低下が発生すると予測された「発生時刻」を含む時間帯との2回となる。そして、夫々のガイダンス情報を提供する「提供場所」は、ロビー階の乗り場、ロビー階から出発する乗りかご内、及び全階床の乗り場と利用者が乗車中の乗りかご内となる。
つまり、朝の出勤時間帯(08:00-09:00)の場合、利用者は必ずロビー階の乗り場からエレベーターに乗るため、ロビー階の乗り場とロビー階から出発する乗りかご内にガイダンス情報を提供すると利用者に把握されやすくなる。一方、運行効率低下事象が発生すると予測された「発生時刻」と同じ時間帯では、その時間帯にエレベーターを利用している乗り場や乗りかごの利用者全員に、ガイダンス情報を提供して把握されるようにしている。
運行効率の低下が発生した場合、全ての階床、全てのエレベーターの乗りかごで待ち時間が増大する。このため、その時間帯の利用者全員を対象にして、このようなガイダンス情報の提供を実施する。
また、ガイダンス情報を提供する「提供日」が前日(D-1、或いはD-3)の場合も、上述の1週間前と同様の「提供時刻」、及び「提供場所」に同様のガイダンス情報を提供する。
更に、ガイダンス情報を提供する「提供日」が当日(D)の場合は、ガイダンス情報を提供する「提供時刻」は、朝の出勤時間帯(08:00-09:00)と、運行効率が低下すると予測される「発生時刻」より前の時間帯(例えば、(T-15)分)と、運行効率が低下すると予測された「発生時刻」を含む時間帯との3回となる。そして、夫々のガイダンス情報を提供する「提供場所」は、ロビー階の乗り場、ロビー階から出発する乗りかご内、及び全階床の乗り場と利用者が乗車中の乗りかご内となる。
つまり、朝の出勤時間帯(08:00-09:00)の場合は上述した理由と同様である。また、運行効率が低下すると予測された「発生時刻」より前の時間帯は、当日は「発生時刻」より前にエレベーターを利用した利用者が、用事を済ませてしばらく後(例えば15分後)にまたエレベーターを利用すると考えられる。このため、その利用者を対象にしてガイダンス情報を提供することが、その理由である。
更に、運行効率の低下を発生すると予測された「発生時刻」を含む時間帯は、既に運行効率低下事象が発生している状況であり、この場合は事後となるが、運行効率の低下の状況説明と理由を、利用者に説明するためにガイダンス情報の提供を実施する。
最後にガイダンス情報を提供する情報提供の開始条件は、ガイダンス情報を提供する利用者に向けての情報提供のため、乗り場であれば乗り場呼びが登録されていること、乗りかご内であれば荷重センサやかご内の行先階呼びが登録されていることから乗客が乗っていること、を出力の条件とすることができる。
以上のような図6に示したガイダンス情報に対する出力条件の考え方は、3段階の時間的なステージに分けて利用者にガイダンス情報を提供するもので、
(1)1週間前の早い段階で最初のガイダンス情報の提供を実行して利用者に把握してもらい、
(2)更に前日に2度目のガイダンス情報の提供を実行して翌日の行動を変更してもらうように働きかけ、
(3)最後に当日の朝と、運行効率低下事象が発生する直前にガイダンス情報の提供を行なうことで、
利用者に確実に運行効率低下事象を避ける行動を促すことができる。
また、3段階に分けることで、運行効率低下事象が発生する時間帯にエレベーターを利用する利用者に、もれなくガイダンス情報を提供できるという効果も期待できる。
更に、朝の出勤時間帯では、ビル内のほとんどの利用者が集まるロビー階の乗り場と、乗りかご内にガイダンス情報を提供し、運行効率の低下が発生する時間帯では、その時間帯の利用者に向けて全階床の乗り場と、乗りかご内にガイダンス情報を提供することで、当日に運行効率の低下の影響を受ける利用者の多くに注意喚起の情報を提供することができる。
次に、図6とは異なる出力条件について図7を引用して説明する。図7において、ガイダンス情報に関する出力条件のテーブルT7(図5の符号1016と同じ)において、項目番号T8毎に、ガイダンス情報の提供の設定条件T9である、運行効率の低下レベルT10、ガイダンス情報を提供する提供日T11、及び提供時刻T12の各項目が定められている。尚、ガイダンス情報を提供する提供場所については、紙面の都合から省略している。
そして、図6で説明したガイダンス情報に対する出力条件のテーブルT1との違いは、運行効率の低下レベルT10が新たに追加されたことである。以下ではこの項目について詳しく説明する。これ以外の情報は図6で説明した内容と同じのため、ここでは説明を省略する。
運行効率の低下レベルT10の項目は、運行効率の低下が高い順に、「高」、「中」、「低」の3つのレベルに分けられており、この低下レベルに応じてガイダンス情報を出力する。低下レベルの分類分けは、例えば2週間前を判断起点として分類分けされている。尚、判断起点は任意である。
例えば、1週間前(D-7)にガイダンス情報を提供する場合は、低下レベルが高い場合のみとなる。また前日(D-1、或いはD-3)の場合は、低下レベルが中以上ならば朝の出勤時間帯(08:00-09:00)にガイダンス情報を提供する。
一方、運行効率の低下レベルが低くてもガイダンス情報を提供する条件は、前日(D-1、或いはD-3)で、運行効率の低下が発生すると予測された「発生時刻」を含む時間帯と、当日(D)の出勤時間帯(08:00-09:00)と、運行効率が低下すると予測される「発生時刻」より前の時間帯(例えば、(T-15)分)となる。
このように、運行効率の低下レベルに応じてガイダンス情報の提供条件を変える(ガイダンス情報の提供回数を変える)ことで、利用者はより的確にガイダンス情報を受け取ることができる。
例えば、運行効率の低下の影響が大きい場合は、繰り返してガイダンス情報が告知されることで、利用者は忘れずに運行効率低下事象を回避することができる。一方で、運行効率の低下の影響が小さい場合は、ガイダンス回数が少ないため、しつこくガイダンス情報を提供することよる不快感の発生を抑えることができる。
尚、この運行効率の低下レベルは、利用者人数と輸送能力の差分の大きさ、利用者人数自体の大きさ、輸送能力もしくは実効稼働台数の大きさなどによって、適宜評価することができる。
次に、ガイダンス情報に関する出力条件判定部の制御フローを図8に基づいて説明する。この制御フローのポイントは、設定した出力条件に従って、ガイダンス情報を提供する「提供日」、「提供時刻」、「提供場所」、及び出力開始条件をそれぞれリアルタイム処理でチェックすることで、運行効率の低下の影響を受ける利用者がエレベーターを利用する、と予測される状況を探索してガイダンス情報を提供するところにある。
まず、所定の起動タイミングで図8の制御フローが起動される。そして、現時点(この処理を実行している日)がガイダンス情報を提供する「提供日」であるか否かを判定する(S20)。「提供日」でないと判定されるとエンドに抜けて処理を終了する。一方、「提供日」であると判定されると、更に現時点の時刻(この処理を実行している時刻)がガイダンス情報を出力する「提供時刻」であるか否かを判定する(S21)。尚、この「提供時刻」は、先に述べたように、所定の時間長を与えられた時間帯である。
この制御ステップで、「提供時刻」でないと判定されるとエンドに抜けて処理を終了する。一方、「提供時刻」であると判定されると、まず乗り場側の判定として、ガイダンス情報を出力する階床のエレベーター乗り場であるか否かを判定する(S22)。ここで、現在の階床でない場合、すなわち「No」の場合は他の全ての階床も検索し、依然として「No」の場合はエンドに抜けて処理を終了する。
そして、ガイダンス情報を出力する階床のエレベーター乗り場と判定されると、そのエレベーター乗り場に乗り場呼びが登録されているかを判定する(S23)。この判定条件は、図5で説明したガイダンス情報の出力開始条件(符号1016の表の項目)に対応する。
ここで、ガイダンス情報の出力開始条件と判断されないと制御ステップS25に移行し、ガイダンス情報の出力開始条件と判断されると、このエレベーター乗り場の情報出力装置(ディスプレイ装置やデジタルサイネージ装置)に運行効率の低下を示すガイダンス情報を提供する(S24)。この場合は、文字情報や画像情報を情報出力装置に表示し、更には音声で報知する。
次に乗りかご側の判定として、指定した乗りかごがガイダンス情報を出力するエレベーターの乗りかごであるか否かを判定する(S25)。ここで、ガイダンス情報を出力する乗りかごでない場合、すなわち「No」の場合は他の全ての乗りかごも検索し、依然として「No」の場合はエンドに抜けて処理を終了する。
そして、ガイダンス情報を出力する乗りかごと判定されると、その乗りかごに利用客が乗車しているか否かを判定する(S26)。この判定は、その乗りかご内の行先階呼びが登録されているか、或いは乗りかご内の荷重センサから乗客が乗っているかの判定を行なうことで可能となる。これも図5で説明したガイダンス情報の出力開始条件(符号1016の表の項目)に対応する。
ここで、乗りかご内に利用客が乗車していない場合は、エンドに抜けて処理を終了するが、利用客が乗車している場合は、このエレベーターの乗りかごの情報出力装置(ディスプレイ装置やデジタルサイネージ装置)に運行効率の低下を示すガイダンス情報を提供する(S27)。この場合は、文字情報や画像情報を情報出力装置に表示し、更には音声で報知する。
以上に説明したようなガイダンス情出力条件判定部102における制御フローによって、運行効率の低下の影響を受けるエレベーターの利用者を対象にして、適切な出力条件でリアルタイムに運行効率の低下を示すガイダンス情報を提供することができる。この結果、この利用者は運行効率低下事象が生じることを前もって把握でき、運行効率低下事象が生じる時に、エレベーターを利用することを回避することができる。
次に、具体的なガイダンス情報の表示例を説明する。図9は、運行効率が低下するガイダンス情報の内容を、出力条件に対応させて分類した形式の表を示しており、符号A1で示している。
この図9で示される表A1の特徴は、出力条件に応じて出力する情報内容、及び運行効率の低下の度合いを視覚的に分かりやすく表現したものである。以下、出力条件に応じた表A1(以下、整理票A1と表記する)の内容を説明する。
まず、整理表A1について、「提供日」A2の項目は、「前日、若しくは1週間前」A3と「当日」A4との2項目に分けて、当日より前に出力(提供)する場合と、当日に出力(提供)する場合とで分類している。この2項目に対して、行方向に、「提供時刻」A5、「提供場所(対象者)」A6、「情報提供内容」A7のそれぞれの項目で整理している。「提供時刻」A5、「提供場所(対象者)」A6については既に説明済みのため、ここでは「情報提供内容」A7ついて詳しく説明する。
「情報提供内容」A7の項目には、「前日もしくは1週間前」A3の場合の「情報提供内容」A8、及び「当日」A4の場合の「情報提供内容」A9がそれぞれ示されている。どちらの提供情報も乗り場、乗りかご内の情報出力装置(図1の符号13、12)から、「エレベーターの運行状況の予報」として表示される。「エレベーターの運行状況の予報」はガイダンス情報の1つである。この情報提供内容の特徴は次のようになる。
(a) 運行効率低下事象が発生する時間情報をセットにした運行効率の低下が発生する案内メッセージ:具体的には、「明日の同時刻に…」「今から10分後に…」という表示が、運行効率低下事象が発生する時間情報の例となる。
(b)運行状態に関わる指標を用いた、通常時と運行効率低下事象の発生時の定量的比較:具体的には、エレベーターの予測利用者人数を指標にして、通常時の利用者人数と運行効率低下事象の発生時の増加分を異なる色、もしくは表示パターンで分けて示している。この表示形態により、利用者は運行効率の低下の影響度合いを現在の状況と比較することで、より分かりやすく把握できる。
(c)上述の(b)項に示す定量的比較の時間推移の状況:運行率低下事象の発生時刻を含む30分間の利用者状況を5分毎に示している。現在の時刻と同じ時刻を含むことが特徴となる。この表示形態により、利用者はどの時間帯が運行効率の低下の影響が大き
いかを関連する時間帯の全体の中で把握でき、より的確にその時刻を回避することができる。
(d)上述の(c)の時間推移での現在の時刻位置の明示:符号A10、A11の矢印マーカーによる表示がその具体例となる。これにより現在の時刻を基準にして相対的に運行効率の低下の度合いが大きくなる時刻を的確に把握でき、より正確な回避行動を取るための見通しを得ることができる。
次に、ガイダンス情報を提供する「提供日」の設定例を図10A、図10Bに基づき説明する。図10A、図10Bの夫々は、カレンダー形式の曜日毎の日程表(B1a、B1b)を基礎としている。
図10Aは、運行効率の低下が予測される日が月曜日以外の平日である場合の提供日の設定例を示している。曜日別に並んだ日程表B1aにおいて、運行効率の低下が予測される「発生日」B2aがあり、この「発生日」B2aを基準にして、「発生日」B2aを含めたその前日B3aと1週間前の日B4aとを運行効率の低下を示すガイダンス情報を提供する日に設定する。
まず、1週間前B4aをガイダンス情報が提供される日に設定する理由は、運行効率低下事象が発生する「発生日」と「発生時刻」にエレベーターを利用する利用者は、同じ曜日の同じ時刻にエレベーターを利用する可能性が高いと推測されるからである。
更に、前日をガイダンス情報が提供される日に設定する理由は、いつも「発生時刻」前後の時刻に利用している利用者は、当日にガイダンス情報を提供しては間に合わないため、「発生日」の前日にガイダンス情報を提供して、当日の利用の回避を促すためである。
一方、図10Bは運行効率の低下が予測される日が月曜日(その前日が休日)である場合の提供日の設定例を示している。曜日別に並んだ日程表B1bにおいて、運行効率の低下が予測される「発生日」B2b、この「発生日」の3日前(営業日上の前日)の日B3b、1週間前の日B4bの夫々が、運行効率の低下を示すガイダンス情報を提供する日となる。1週間前の日B4bの設定理由は図10Aと同じであるが、前日が休日の場合は、対象とするエレベーターの利用者がいないため、営業日上の前日B3bを設定している。
図10A、図10Bで説明したようなガイダンス情報を提供する「提供日」を設定することで、運行効率低下事象の「発生日」より前に、エレベーターの利用者にガイダンス情報を提供することができ、これによって、「発生日」の当日に運行効率の低下の影響を受ける多くの利用者に、事前に運行効率低下事象に関するガイダンス情報を提供することができる。したがって、運行効率低下事象の「発生日」の「発生時刻」で、エレベーターの利用を避ける利用者が増えて、運行効率の低下の影響を受ける利用者を少なくすることができる。
≪エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態≫
次に、エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態について説明する。図11Aと図11Bは、共にエレベーター予測利用者人数の時刻推移を示すことで、運行効率の低下状況を利用者に提供する内容となる。尚、図11A、図11Bは、表示画面に表示した状態を示している。
図11Aは、エレベーター予測利用者人数そのものを指標とし、図11Bはエレベーター予測利用者人数の比率を指標として用いた例である。このエレベーター予測利用者人数は、運行効率の低下を直接示す指標ではないが、運行効率の低下の重要な原因となるものであり、利用者の増加の推移を示すことで、間接的に運行効率の低下の度合いを伝えることができる。
特に、利用者人数の増加は混雑状態の指標と等価であり、利用者にとって混雑状態を把握しやすく、エレベーターの運行状況への影響も分かりやすいため、この利用者人数によるガイダンス情報は、利用者に混雑状況を伝えるのにより効果的である。尚、図11A、図11Bで示すガイダンス情報は、共に乗り場や乗りかごにある情報表示装置や個人の情報端末に表示される。
まず、図11Aで示したガイダンス情報の表示例は、横軸を時刻、縦軸をエレベーターの予測利用者人数として、エレベーターの予測利用者人数の時間経過に伴う変化を示すグラフである。ここで、定常的な状況でのエレベーターの予測利用者人数の変化を符号C3aで示しており、一方で、予測された運行効率低下事象が発生する「発生時刻」前後の予測利用者人数の増加分をグラフの斜線部の領域C4aで示している。尚、斜線部の領域C4aは、強調色、強調パターン等によって表示されている。
また、図11Aは、運行効率低下事象が発生する前日の「発生時刻」を含む時間帯のガイダンス情報を示しており、明日の「発生日」の「発生時刻」を示す時刻マーカー情報C5aが表示されている。
この表示例の特徴は、通常時と運行効率低下事象の発生時とを比較できるように、エレベーターの予測利用者人数の増加分を異なる表示形式(色、塗りつぶしパターンなど)で強調するような表示形態で示していることである。
これにより、このガイダンス情報を見た利用者は、通常時に比べて一時的な利用者人数の増加の度合いを容易に知ることができ、更にその時間経過からどの時間帯が、運行効率の低下の影響を強く受けるかを把握することができる。更に「発生時刻」を示す時刻マーカー情報C5aを確認することで、相対的に時間経過に伴う利用者人数の増加状態を具体的に把握することができる。
この結果、図11Aの表示例では、明日(発生日)の現在と同じ時間帯は、最も利用者人数が多く運行効率の低下も大きいため、例えば、明日は10分だけ遅い時刻にエレベーターを利用しようという判断ができ、適切な回避行動をとることができる。
これにより、本来ならば運行効率事象が発生する日時にエレベーターを利用することで、待ち時間の増大の影響を受ける多くの利用者が、待ち時間の増大を回避して円滑に目的の階床へ移動することができる。特に非定常的な状況の下で発生する運行効率低下事象は、一般利用者では予測ができないため、このようなガイダンス情報の提供によって上述したな効果を期待できる。
次に図11Bに示す表示例は、横軸を時刻、縦軸をエレベーターの予測利用者人数を定常時の人数に対する比率として、この比率の時間経過に伴う変化を示すグラフである。
ここで、定常的な状況でのエレベーターの予測利用者人数比率を符号C3bで示しており、一方で、予測された運行効率低下事象が発生する「発生時刻」前後の予測利用者人数比率の増加分をグラフの斜線部の領域C4bで示している。尚、斜線部の領域C4aは、強調色、強調パターン等によって表示されている。また、「発生時刻」を示す時刻マーカー情報C5bを確認することで、相対的に時間経過に伴う利用者の増加状態を具体的に把握することができる。
図11Aと比べて、縦軸の指標がエレベーター予測利用者人数の定常時との比率を表している点が異なっており、以下ではこの点による特徴のみを説明する。図11Bでは、エレベーターの予測利用者人数の定常時との比率を指標としているため、定常時の状況を示す符号C3bは100%であり、運行効率低下事象の発生時の増加分が100%を超える比率を示す領域C4bとなり、増加分が更に分かりやすいという効果が期待できる。
次に、図11A、図11Bとは異なった、エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態について説明する。図12Aと図12Bは、運行効率の低下を表す指標として、エレベーターの待ち時間を用いるものであり、この待ち時間の増加の度合いによって運行効率の低下の影響を表している。
ここで、待ち時間は乗り場呼びに対する平均乗り場呼び待ち時間である。尚、これ以外の待ち時間、例えば利用者が乗り場に到着した時からの平均待ち時間を用いることもできる。以下では単に平均待ち時間として説明する。
図12A、図12Bに示す運行効率の低下を表すガイダンス情報は、基本的に図11A、図11Bと同じである。異なる点は、指標に平均待ち時間を用いている点であり、これによる特別の効果について以下に説明する。
まず、図12Aに示したガイダンス情報の表示例は、横軸を時刻、縦軸をエレベーターの平均待ち時間として、エレベーターの平均待ち時間の時間経過に伴う変化を示すグラフである。ここで、定常的な状況でのエレベーターの平均待ち時間を符号D3aで示しており、一方で、予測された運行効率低下事象が発生する「発生時刻」前後の平均待ち時間の増加分をグラフの斜線部の領域D4aで示している。尚、斜線部の領域D4aは、強調色、強調パターン等によって表示されている。尚、明日の「発生日」の「発生時刻」を示す時刻マーカー情報D5aが表示されている。
ここで、エレベーターの待ち時間は、利用者がエレベーターに対して最も重要視する指標であり、この待ち時間をそのまま指標とすることで、より直接的かつ強く運行効率の低下の影響を利用者に伝えることが可能となる。特に、一時的な運行効率の低下の発生による待ち時間の増加分が、定常時と分けられて強調されて示されているため、運行効率の低下の影響を視覚的に容易に把握することができる。
図12Bは、運行効率の低下の指標として、エレベーターの平均待ち時間を定常時に対する比率で表したものである。横軸を時刻、縦軸をエレベーターの平均待ち時間の定常時に対する比率として、この比率の時間経過に伴う変化を示すグラフである。
定常の待ち時間は基準とするために100%として符号D3bで示してあり、運行効率が低下する時の平均待ち時間の増加分を異なる表示形式(色、塗りつぶしパターンなど)で強調するような表示形態で示している。更に「発生時刻」を示すマーカー情報D5aを確認することで、相対的に時間経過に伴う平均待ち時間の増加状態を具体的に把握することができる。
図12Bに示す表示例の特徴は、平均待ち時間を絶対値ではなく比率で表している点にある。これにより、利用者側にとっては現在の待ち時間に対して、運行効率低下事象の発生時は、どの程度の待ち時間の増加が発生するのかが比率(倍率と等価)によって感覚的に理解できる。
また、エレベーターの運用者側にとっては、待ち時間を絶対値で表すよりも精度をやや粗くできるため、実施しやすい利点があり、結果的にそれは利用者にとってのメリットにもつながる。
つまり、待ち時間の絶対値の表示による高い精度の要求に縛られて、ガイダンス情報の提供の実施が見送られると、結局、利用者には全くガイダンス情報が提供されなくなるため、利用者に対してエレベーターの長待ちの影響を受けることになる。
この比率によるガイダンス情報の表示を行えば、例えば、事前に精度の粗いことを利用者の理解を得た上で、ガイダンス情報の提供を始めるようにすることも可能である。
次に、図12A、図12Bとは異なった、エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態について説明する。図13は、運行効率の低下を表す指標をエレベーターの平均待ち時間にして、定常的な状況の下での平均待ち時間(左側)E1aと、非定常的な状況の下での運行効率低下事象が発生した時の平均待ち時間(右側)E2aを並べて比較できるようにした表示例である。
ここで、運行効率低下事象の発生時の平均待ち時間E2aとして、過去の複数の運行効率低下事象の内で、今回予測される運行効率低下事象に最も近い運行効率低下事象の平均待ち時間が用いられている。尚、図13に示す左右の2つのグラフは、一対でセットとして情報表示装置に並べて表示される。
図13の左右のグラフは共に同じ表示形態であり、横軸を時刻、縦軸をエレベーターの平均待ち時間とし、エレベーターの平均待ち時間の時間経過に伴う変化を示すグラフである。符号E4aが定常時の平均待ち時間を表し、符号E4bが運行効率低下事象の発生時の平均待ち時間を表している。また、符号E5a、E5bが運行効率低下事象の「発生時刻」を示すマーカー情報を表している。
ここで、運行効率低下事象の発生時の平均待ち時間E4bを表すグラフは、既に述べたように、過去の運行効率低下事象の発生時の平均待ち時間の中から、今回の運行効率低下事象に最も近い平均待ち時間を選択して、過去の運行効率低下事象の平均待ち時間として表示している。
これは対象としている運行効率低下事象が、非定常的な状況の下での運行効率低下事象のため、例えば、イベントの開催による利用者人数の増加の場合においては、正確な利用者人数の予測が難しいことが考えられる。
そこで、このような場合を考慮して、参照データとして過去の平均待ち時間の内で、今回の運行効率低下事象に最も近い平均待ち時間を表示することで、運行効率の低下の影響度合いを利用者に分かり易く伝える効果がある。
実際的に、大会議の開催等では、利用者人数がその時の会議テーマ等の条件によって大きく変動するケースがあり、このような場合は正確な予測は難しい。その代替案として、過去の平均待ち時間の内で、今回の運行効率低下事象に最も近い平均待ち時間を表示するこので、利用者にとっても参考になり、またエレベーターの運用側にとっても過去のデータを示すため、利用者に対して説明がしやすい利点もある。
尚、このような表示形態の場合は、図13の符号E6で示す「明日のこの時間は運行効率低下が予想されます」といったメッセージと一緒に表示することで、2つのグラフの比較の見方がより分かりやすくなる。
次に、図13とは異なった、エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態について説明する。
図14は、図13と同じく過去の平均待ち時間から今回の運行効率低下事象に最も近い平均待ち時間を選んで、その平均待ち時間を利用者に参考情報として示すものである。図14では、定常時のグラフと今回の増加分のグラフを色または表示パターンを変えて、1つのグラフオブジェクトF1で表示している。
図14の表示例において、横軸を時刻、縦軸をエレベーターの平均待ち時間の比率としており、これは定常時を基準(100%)にした比率の指標となる。符号F4が定常時の平均待ち時間の比率(100%の値)のグラフ、符号F5が運行効率低下事象の発生時の平均待ち時間の比率を表すグラフである。更に「発生時刻」を示す時刻マーカー情報F6を確認することで、相対的に時間経過に伴う平均待ち時間の増加状態を具体的に把握することができる。
この表示例の特徴は、運行効率が低下することを表す指標として、定常時の平均待ち時間を基準にした比率を待ち時間比率としたことと、今回の予測される運行効率低下事象に近い過去の運行効率低下事象の平均待ち時間を用いて、参考例として表示していることである。
利用者はこのガイダンス情報を把握することで、定常時の状況(基本的に現在の状況)と比較して、運行効率低下事象が発生する日時にどの程度の比率で待ち時間の増加が発生するかを視覚的に分かりやすく把握することができる。
また図14の表示形態の表す意味を明確にする「同じ状況での過去の例です」といったメッセージF7を同時に表示することで、利用者により分かりやすく運行効率低下事象の発生と、これのガイダンス情報が過去の参考データであることを伝えることができる。
次に、図11~図14とは異なった、エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態について説明する。
図15の表示例の特徴は、エレベーターの実効稼働台数のような輸送力に対応するエレベーターの運行状態指標を運行効率の低下を表す指標として用いることである。例えば、上述したようにVIP運転や保守点検運転等の特殊運転を行なうことによって、1台、若しくは複数台のエレベーターが、一般利用者向けの運転から切り離される場合がある。
この場合は、一般利用者向けのエレベーターの実効稼働台数が減少するので、運行状態指標の値は、この実効稼働台数の減少に応じて低下する。このため、この運行状態指標の低下度合いを示すことで、利用者にエレベーターの運行効率の低下の影響を伝えることが可能となる。このエレベーター運行状態指標には、時間当たりの輸送人数を表す輸送力、若しくは実効稼働台数に比例した指標値を用いることが有効である。
図15の表示例において、横軸を時刻、縦軸をエレベーターの輸送力(時間当たりの輸送人数)を表す運行状態指標としており、これは定常時を基準(100%)にした比率の指標となる。縦軸の100%が定常時の運行状態指標であり、符号G3が運行効率低下事象の発生時の運行状態指標を表すグラフである。尚、明日の「発生日」の「発生時刻」を示す時刻マーカー情報G4が表示されている。
図15の表示例では、時刻マーカー情報G4近辺で運行状態指標が定常状態から50%以下に低下しており、待ち時間が増大するという影響が生じることを利用者に知らせる内容となっている。この場合は、例えば、非定常的な状況の下での特殊運転により、エレベーターの実効稼働台数が半分以下に減少するような状況である。
先に述べた、大きな会議のようなエレベーターの利用者人数が一時的に増加するイベントだけではなく、エレベーターの運行状態の非定常的な状況(例えば、稼働台数の変動)の下での運行効率の低下が発生する。そして、このような運行効率の低下を利用者に正確に伝えるために図15のような表示例は有効である。
利用者は、明日(予測された運行効率低下事象の発生日)の運行状態指標G3の時間推移を把握して、時間経過に対する運行状態指標G3の変化から、どの時間帯で運行状態指標G3の低下が大きいかを認識することで、予測した運行効率低下事象の発生日の利用時間を事前に変更することができる。このように、利用者は運行効率低下事象が生じることを前もって把握でき、運行効率低下事象が生じる時に、エレベーターを利用することを回避することができる。
次に、図11~図15とは異なった、エレベーターシステムのガイダンス情報の表示形態について説明する。図16の表示例では、グラフではなく、文字と数値によって、運行効率低下事象の「発生日」、「発生時刻」、「運行効率低下度合い」等を利用者に提供する内容となっている。
これは、例えば、乗り場や乗りかご内の情報表示装置の画面サイズが小さい場合や、利用者の情報端末にメールやポップアップメッセージ等で提供するような場合にこの表示形態が効果的である。
図16Aに示す表示例において、その表示形態は情報表示装置の表示画面に表示される、表示内容部H1a、運行効率の低下に関する文字情報と「発生日」の情報を表すメッセージH2a、「発生時刻」H3a、運行効率の低下の度合いを表す文字情報H4aから構成されている。
この表示例では、明日(運行効率低下事象の発生日)にエレベーターの一時的な利用者人数の増加という運行効率低下事象が発生し、その時刻は10:10~0:30の時間帯で、利用者人数の増加率は180~250%、というガイダンス情報が利用者向けに伝えられる。
このガイダンス情報から、利用者は利用者人数が増加する時間帯、及び運行効率の低下の度合いがどの程度かを、事前に具体的に把握することができる。また、ここでは運行効率の低下の度合いを通常時を基準(100%)にした利用者人数の増加率で表しており、利用者は定常時(発生当日以外の場合は現在の状況に相当)に比べて、どの位の影響があるのかを定量的に把握することができる。
次に、図16Bに示す表示例において、その表示形態は情報表示装置の表示画面に表示される、表示内容部H1b、運行効率の低下に関する文字情報と「発生日」の情報を表すメッセージH2b、「発生時刻」H3b、運行効率の低下の度合いを表す文字情報H4bから構成されている。
この表示例では、明日(運行効率低下事象の発生日)にエレベーターの待ち時間増加という運行効率の低下が発生する事象が発生し、その時刻は10:10~0:30の時間帯で、待ち時間の増加率は最大で2倍程度、というガイダンス情報が利用者向けに伝えられる。
このガイダンス情報から、利用者は待ち時間が増加する時間帯、及び運行効率の低下の度合いがどの程度かを、事前に具体的に把握することができる。また、ここでは運行効率の低下の度合いを通常時を基準にした待ち時間の倍率で表しており、利用者は定常時(発生当日以外の場合は現在の状況に相当)に比べて、どの位の影響があるのかを定量的に把握することができる。
また、この図16Bの表示例では、運行効率の低下の指標をエレベーターの待ち時間としている。この待ち時間は、利用者がエレベーターの運行に関して最も重要視する指標であり、それを示すことで、利用者に分かりやすいガイダンス情報の提供ができる。
更に、この待ち時間の指標を定常時との比較(倍率)で表すことで、相対的な影響として認識することができる。また、ガイダンス情報を提供する運用側からは、例えば、最大2倍というような最大値で示すことで、待ち時間のように実際の時間の振れ幅が大きい場合にも対応することができる。尚、ここでの待ち時間は平均乗り場呼び待ち時間時間、若しくは利用者が乗場に到着して待機する平均待ち時間である。
《本発明の第2の実施形態》
次に上述した第1の実施形態とは異なる第2の実施形態について説明する。
図17は、本発明の第2の実施形態における利用者へのガイダンス情報の提供例を示す制御フローである。この提供例は、利用者のスマートフォン等の携帯情報端末に、運行効率低下事象のガイダンス情報を事前に直接提供することを特徴としている。
例えば、予測された運行効率低下事象の「発生日」と「発生時刻」から、その「発生時刻」にエレベーターを利用する利用者を対象にして、事前にメールやSNS、ポップアップメッセージ等でガイダンス情報を提供することが特徴となっている。以下、図17の制御フローについて説明する。
先ず、現在(現時点で処理を実施している日)において、非定常な状況の下でエレベーターの運行効率の低下が予測されているか否かを判定する(S30)。運行効率の低下が予測されていない場合はエンドに抜けて処理を終了する。一方、運行効率の低下が予測されている場合は、次に、予測された「発生時刻」にエレベーターを利用する利用者を選定する(S31)。
この時の利用者の選定条件は、過去の利用者のエレベーターの利用履歴データより、以下の条件のいずれかを満たす利用者を選定する。このような条件を満たす利用者が、運行効率低下事象が起こる時間帯にエレベーターを利用する可能性が高い利用者と推定できる。
(1)「発生時刻」にエレベーターの利用が多い利用者
(2)「発生時刻」にエレベーター利用が多いテナントに所属する利用者
(3)「発生時刻」にエレベーター利用が多い階の利用者
その次に、現在の時刻(本処理を実行している時刻)が、「発生時刻」より所定時間前(例えば20分前等)の所定時刻であるか否かを判定する(S32)。ここで、「No」の場合は所定時刻になるまで待ち状態を継続する。
所定時刻に達すると、制御ステップS31で選定した利用者に対して、登録されたメールアドレス、若しくはWebサイト(テナント会社のポータルサイト)に非定常な状況の下で発生するエレベーターの運行効率の低下に関するガイダンス情報を配信(S33)して、処理を終了する。
この図17の実施形態では、利用者のエレベーターの使用履歴データから、運行効率低下事象が発生する「発生日」の「発生時刻」に、エレベーターを利用する可能性の高い利用者を選定し、その利用者に運行効率低下事象が発生する前に、直接その利用者の携帯情報端末にガイダンス情報を提供する。尚、提供する日時は、上述した通りである。
この結果、運行効率の低下の影響を受けそうな利用者に、確実にそのガイダンス情報を提供することができ、利用者は事前にエレベーターの利用時間を変更するなどの回避行動を取ることができる。
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。