以下、図面を用いて本開示の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料及び個数は、説明のための例示であって、施錠装置を含む宅配ボックスの仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
以下の説明及び図面で、Rは、宅配ボックスに向かって見た場合の右側であり、Lは、同じく左側であり、Fは、宅配ボックスの正面側であり、Bは、宅配ボックスの裏側である。R及びLを結ぶ方向と、F及びBを結ぶ方向とは、互いに直交する。
図1は、実施形態の宅配ボックス12の斜視図である。宅配ボックス12は、例えば戸建住宅等で使用され、宅配荷物を無人で受け取り可能である。宅配ボックス12は、ユーザとしての宅配業者が荷物を入れた状態で、扉を施錠するとともに伝票に受領印を押印することができる。
宅配ボックス12は、略直方体状の外装体(本体)13と、外装体13の内側に設けられた荷物室14と、荷物室の開口15を開閉する扉16と、施錠装置20とを備える。荷物室14は、荷物100(図11参照)を出し入れ可能に収容する略直方体の箱状である。
扉16は、荷物室14の正面側Fの開口15を塞いでいる。扉16は、宅配ボックス12に取り付けられる片開き型であり、上下方向の軸(図示せず)を中心として回動することで、荷物室14の開口15を開閉可能である。扉16は、鍵穴部を有する錠装置40の解錠状態、及び後述の荷受の待機状態で開放可能である。
扉16の先端部の上下2つの位置には、プッシュオープン式のマグネットキャッチの磁石側部材17が取り付けられ、外装体13の開口縁部には、磁石側部材17と対向する鉄板等の金属板(図示せず)が固定される。荷受の待機状態で、扉16はマグネットキャッチの磁力により閉鎖されており、扉16の外側から荷物室側である裏側Bに押すことで扉16が開放される。また、扉16がマグネットキャッチで閉状態が保持される構成としたことで、施錠装置20が解錠された状態で扉16を荷物室側から押せば磁石側部材17から金属板が外れて扉16を開放することができる。
以下、図2~図16を用いて施錠装置20を詳しく説明する。図2は、荷受の待機状態において、図1から施錠装置20を取り出して示す斜視図である。図3は、図2に示す施錠装置20から、内側カバー21を取り外して示す斜視図である。図4は、図3において、扉内側から見た斜視図である。図5は、図4において、ドアロックプレート23を取り外して扉内側から見た図である。図6は、図3のA-A断面図である。
施錠装置20は、扉16の内側に設けられている。施錠装置20は、金属板製のベースプレート25、内側カバー21、鍵穴部41、施錠ピン45(図4)、操作レバー50、レバーロック60(図4)、ドアロック70(図5)、スタンプレバー75(図6)、及びスタンプケース80(図4)を含んで構成される。
ベースプレート25は、十字の箱形状の本体部26と、本体部26の先端周縁部に形成されたフランジ部23aとを有する。本体部26は、上下方向に延びる垂直部26aと、垂直部26aの上下方向中間部の扉先端側である左側Lに突出する第1突部26bと、扉先端側と反対側の右側Rに突出する第2突部26cとを有する。垂直部26a、第1突部26b及び第2突部26cは、それぞれ略直方体形状である。第2突部26cは、第1突部26bより突出長さが大きい。フランジ部23aには、内側カバー21の周縁部に形成された壁部がネジ結合で固定される。
ベースプレート25は、垂直部26aの正面側Fの矩形状面27が扉16の開口から外側に露出するように、扉16に取り付けられる。矩形状面27には、上端部に鍵穴部41が露出して配置される。矩形状面27の下側半部にはスリット28が形成され、鍵穴部41とスリット28との間には矩形状の窓29が形成される。
窓29は、後述の操作レバー50の上端部を露出させるために用いられる。スリット28は、上下方向に伸びる略矩形に形成される。スリット28には、伝票102(図11参照)を差込み可能である。
図4に示すように、ベースプレート25の裏側面(図4の紙面の表側面)において、スリット28の開口周縁部には、断面矩形の筒部30が突出している。筒部30の右側Rの壁部31aの先端には上下に離れた2つの突板32が突出して形成される。この壁部31aの先端で2つの突板32に挟まれた部分には円弧形の凹部33が形成される。この凹部33を通じて後述するシートストッパ90(図8~図10参照)の先端が、筒部30を横切って、筒部30の左側Lの壁部31bの側面に押し付けられる。
また、ベースプレート25の裏側面において、筒部30の左側Lには金属板製のドアロックプレート23(図4)が固定される。ドアロックプレート23は、断面略L字形であり、後述のドアロック70(図5、図6)を覆う。ドアロックプレート23のスリット28側端(R端)の上下方向中間部には受け板部24が裏側に突出するように形成される。後述のスタンプ手段88(図4)の先端は、押印時にこの受け板部24の側面に押し付けられることで、伝票に受領印を印字されやすくする。
鍵穴部41は、ベースプレート25に固定された錠装置40に形成される。鍵穴部41はベースプレート25の正面側Fに露出する。鍵穴部41に専用の鍵が入れられ回転部分が回転された場合には、この回転部分の裏側Bに固定されたアーム42(図4)も回転する。アーム42には、先端部に、裏側(図4の紙面の表側)に突出するように施錠ピン45が固定される。このため、施錠ピン45は、鍵穴部41に入れられた鍵に連動して回転する。図2~図6、図8に示す荷受の待機状態では、鍵穴部41が鍵により施錠方向(図5)に回転されていることで、アーム42及び施錠ピン45も施錠方向に回転した位置となっている。
操作レバー50は、ベースプレート25の垂直部26aに対し上端部が窓29から露出した状態で、上下方向に移動可能に支持される。操作レバー50は、宅配業者等のユーザが荷物室14内に荷物を入れて扉16を閉じた状態で押し下げ操作することで錠装置40を施錠状態とするための操作部材である。
図7は、レバーロック60及び操作レバー50を分離して示す図である。操作レバー50は、上端部に天板51aを有し断面が略半円形の筒部51を有し、筒部51の下端の左右方向両端位置に、上下方向に延びる2つの脚部53,54が形成される。筒部51の裏側(図7の紙面の表側)の外面には、後述のレバーロック60を係合するための円筒状の柱部55が突出している。
図6に示すように、筒部51の内側には付勢部材56が配置される。付勢部材56は、例えば2つのバネと、2つのバネで挟まれた座金とにより形成される。付勢部材56の上端は操作レバー50の天板51aに突き当てられ、下端はスリット28周縁部の筒部30の上端に突き当てられる。これにより、操作レバー50は、上側に付勢される。操作レバー50の2つの脚部53,54には、上下方向に延びる長孔が形成され、ベースプレート25に固定されたピンがそれらの長孔に挿入される。これにより、操作レバー50の移動範囲が規制される。このような操作レバー50は、図2および図3に示すように、上端部がベースプレート25の窓29から露出し、ユーザがこの上端部を付勢部材56(図5、図6)の付勢力に逆らって押し下げるように操作することにより、下側に移動させることが可能である。
図4、図5に示すように、レバーロック60は、操作レバー50の上端部に連結される。図7に示すように、レバーロック60は、互いに直交する直線部62,63を有するL字形部61と、L字形部61の上端部から曲がりながら上側に延びる係止アーム64とを含む。略上下方向に延びる直線部62の中間部には円孔62aが形成され、円孔62aに操作レバー50の柱部55が嵌合状態で挿入されることにより、レバーロック60と操作レバー50とが連結される。これにより、レバーロック60は、操作レバー50に連動する。この状態で、レバーロック60は、柱部55を中心として揺動移動が可能である。ベースプレート25の垂直部26aの裏側面にはレバーカバー66が固定されており、レバーカバー66の下端部には断面略矩形のトンネル部67が形成される。レバーロック60の直線部62の下側部分は、このトンネル部67に挿入される。直線部62は、トンネル部67により揺動移動の範囲が制限されるとともに、L字形部61の略左右方向に延びる直線部63がトンネル部67の上端に対向することで、レバーロック60の下側への移動が規制される。
図4に示すように、レバーロック60の係止アーム64は、施錠ピン45の左側Lに配置される。係止アーム64の上端部には、施錠ピン45の先端部と係止可能な溝部65が形成される。係止アーム64において、溝部65から離れた下側部分の側面64aには、鍵が施錠方向(図5)に回転したときに施錠ピン45が対向する。この側面64aの上側部分は、上側に向かって右側Rに傾斜した傾斜面が形成される。これにより、図4、図5に示すように、施錠ピン45が施錠方向に回転し、施錠ピン45が側面64aに接近して配置された場合でも、操作レバー50の押し下げに連動して施錠ピン45を側面64aの傾斜面に滑らせるように、レバーロック60を揺動させながら下側に移動させることができる。一方、後述の図15に示すように施錠ピン45が施錠方向に回転した状態で、操作レバー50が押し下げられ、レバーロック60の溝部に施錠ピン45が係止された場合には、操作レバー50及びレバーロック60の上側への移動が阻止される。これにより、付勢部材56の付勢力による操作レバー50の上側への戻りが阻止される。このため、後述のように扉16の施錠状態が維持される。
図5、図6に示すように、ドアロック70は、略V字形の板部71と山形の板部(図示せず)とを一端側(図5の左端側)の連結部73により連結したもので、2つの板部71の上端部に円孔72が形成される。ベースプレート25の第1突部26bの裏側面(図5の紙面の表側面)において、スリット28より扉先端側である左側Lの部分には円柱状の柱部34が突出する。その柱部34がドアロック70の各円孔72に嵌合状態で挿入されることで、ドアロック70がベースプレート25に柱部34を中心として揺動移動可能に支持される。2つの板部71の間で柱部34の周囲には付勢部材としてのコイルバネ74(図6)が配置され、そのコイルバネ74によりドアロック70が、スリット28側である右側R(扉先端側とは反対側)に付勢される。図6に示す待機状態で、ドアロック70の一方の板部71の先端部(図5の下端部)は、ベースプレート25の左側Lの端とほぼ同じ位置にある。
さらに、ドアロック70の上端部には、操作レバー50の一方の脚部53の下端が対向する。これにより、操作レバー50が下側に移動することに連動して、ドアロック70が揺動移動する。具体的には、後述の図12、図13に示すように操作レバー50が押し下げられた場合に、操作レバー50の一方の脚部53の下端がドアロック70の上端部を押し下げて、ドアロック70の先端部がベースプレート25の左側Lの端より大きく突出するようにドアロック70を揺動移動させることが可能となる。この状態で、外装体13の開口周縁部に形成された係止部(図示せず)にドアロック70の先端部が係止されることで、扉16が閉鎖状態でロックされる。
図8は、図5からスタンプ手段88を取り外して示す図である。図9は、図8からスタンプケースユニット79を取り出して示す斜視図である。図10は、スタンプケースユニット79を扉外側から見た斜視図である。
ベースプレート25には、スタンプケースユニット79のスタンプケース80が左右方向の移動可能に支持され、スタンプケース80には、スタンプ手段88(図5)が保持可能である。具体的には、図9、図10に示すように、スタンプケースユニット79は、スタンプケース80と、スタンプケース80に支持されたシートストッパ90とを含む。スタンプケース80は、台形状の板部81と、板部81の裏側B面に形成されたホルダ82とを有する。ホルダ82は、上下2つの壁部83と壁部83の右端(R端)を連結する端壁部84とから形成される。ホルダ82には、スタンプ手段88を保持可能である。スタンプ手段88は、例えばインク浸透式のはんこであり、スタンプ手段88の先端(L端)が伝票に押し付けられた場合に伝票に受領印を押印する。
さらに、板部81においてホルダ82より上側及び下側のそれぞれには、左右方向に長い長孔81a、81bが形成される。これらの長孔81a、81bには、後述の柱部35,36(図6)が挿入される。
図10に示すように、板部81の正面側F面において、左側Lの部分には、2つのU字形部85と、壁部86とが、左右方向に並んで突出している。2つのU字形部85には、左右方向へ移動可能に、シートストッパ90が挿入される。シートストッパ90は、細長で略直方体形状の部材である。板部81のU字形部85と壁部86との下側には、柱部87が形成され、柱部87の周囲には、付勢部材としてのコイルバネ92が配置される。コイルバネ92の一端は、壁部86の側面に押し付けられ、他端はシートストッパ90の右側R端部の孔に挿入される。これにより、シートストッパ90は、左側Lに付勢され、その先端部(左側L端部)は、板部81の左端(L端)より突出する。このため、後述の図15に示すように、施錠ピン45が施錠方向に回転した状態で、スタンプケース80のスリット28側への移動後に、シートストッパ90の先端部が、スリット28の裏側を左右に横切ることで、スリット28への伝票の差し込みを妨害する。したがって、後述のように、宅配業者が宅配ボックス12で受領印を押印できるのは扉施錠時(ロック時)の1回限りとなり、受領印による荷物の配送の証明性が高くなる。
図4に示すように、ベースプレート25の扉先端側とは反対側の第2突部26c側の部分において、裏側面(図4の紙面の表側面)の長孔81a、81bに整合する位置には、円柱状の柱部35,36が突出する。長孔81a、81bに柱部35,36が挿入され、柱部35,36の先端部にネジが結合されることで、ベースプレート25に対しスタンプケース80が左右方向の移動可能に支持される。さらに、図10に示すように、スタンプケース80において、板部81の正面側F面の中央部には、スタンプレバー75(図6)を揺動移動させるための円柱状の柱部81cが突出する。
図6に示すように、スタンプケース80の板部81とベースプレート25(図4)との間には、略L字形のスタンプレバー75が配置される。スタンプレバー75の中間部には円孔76が形成され、両端部には、長孔77,78が形成される。一方の長孔77には、板部81に形成された柱部81cが挿入される。円孔76には、ベースプレート25に形成された柱部36が嵌合状態で挿入される。さらに、他方の長孔78には、操作レバー50の他方の脚部54の下端部に形成された円柱状の柱部54a(図5-図8)が挿入される。これにより、スタンプレバー75は、操作レバー50に連動して柱部36を中心に回転する。具体的には、操作レバー50が図6の下側に押し下げられると、柱部36の下降に伴って、スタンプレバー75が柱部36を中心に、図6の反時計方向に回転する。これにより、スタンプケース80がスリット28側である左側Lに移動し、スタンプ手段88(図5)の先端がスリット28の裏側を通過する。このため、スタンプケース80は、スタンプレバー75に連動してスリット28側に移動可能である。したがって、配送業者がスリット28に伝票を差し込んだ状態で、操作レバー50の1回の押し下げ操作を行うだけで機械的に扉16の施錠と伝票への受領印の押印を行える。このため、扉16の施錠と押印を簡単な操作で行えるとともに、施錠と押印に電池等の電源を必要としない。
図11は、宅配ボックス12において、荷物100を収容し、伝票102への押印及び施錠を行い、その後、扉16を開放する方法を示している。上記のように、宅配ボックス12の荷受待機時には、扉16は、プッシュオープン式のマグネットキャッチで開口15を塞いでいる。宅配業者が宅配ボックス12に荷物100を配送するときには、宅配業者が扉16を荷物室14側に押すことで図11(a)に示すように荷物室14を開放する。そして、図11(b),(c)に示すように宅配業者が荷物室14に荷物100を入れた後、扉16を閉める。その後、図11(d)に示すように、宅配業者が施錠装置20のスリット28に伝票102を差し込む。次いで、この状態で、図11(e1),(e2),(e3)に示すように、施錠装置20の操作レバー50を押し下げ、ドアロック70を外装体13の係止部に係止させる。これと同時に、スタンプ手段88がスリット28側に移動することで伝票102に受領印が押印される。その後、図11(f)に示すように、荷物の受取人が、専用の鍵を鍵穴部41に入れて解錠方向に回すことで、扉16を解錠して、荷物100を取り出すことができる。図11(e2),(e3)では、扉16の外側から内部の一部を透視して示している。
図12~図16を用いて、図11(e1)~図11(f)の施錠装置20の動作を詳しく説明する。図12は、施錠と押印のための操作レバー50押し下げ状態を示す図3に対応する図である。図13は、図12の状態における図5に対応する図である。
図11(a)~(e1)に示すように、宅配業者が荷物室14に荷物100を入れて扉16を閉じ、スリット28に伝票102を差し込んだ状態で、図12に示すように操作レバー50を押し下げる。これにより、図13に示すように、操作レバー50に押されてドアロック70が柱部34を中心に図13の反時計方向に揺動し、ドアロック70の先端部がベースプレート25の左端(L端)より大きく突出する。これにより、外装体13の係止部にドアロック70が係止されることで、扉16が閉鎖状態でロックされ、扉16が施錠される。これと同時に、操作レバー50の下降によりスタンプレバー75が柱部36(図4)を中心に図13の時計方向に回転することでスタンプケース80がスリット28側に移動し、スタンプ手段88の先端部がスリット28の裏側を通過する。これにより、スタンプ手段88がスリット28に差し込まれた伝票に受領印を押印する。このとき、シートストッパ90(図8)の先端部はスリット28の裏側を横切って、筒部30の左側Lの壁部31bの側面に、コイルバネ92(図10)の付勢力で押し付けられる。
図14は、操作レバー50の押し下げ力が解除されてドアロック70がロックされた状態を示す図3に対応する図である。図15は、図14の状態における図5に対応する図である。
宅配業者による操作レバー50の押し下げ力が除かれると、図15に示すようにレバーロック60の溝部65(図4)に施錠ピン45が係止されるまで、付勢部材56の付勢力によって操作レバー50が上昇する。これにより図14に示す場合には、図12の状態よりも、操作レバー50が少し上昇する。これに伴って、図15に示すように、スタンプ手段88が右側Rに移動するので、スタンプ手段88が伝票から離れて、スリット28から伝票を容易に取り出すことができる。このとき、ドアロック70の先端部の突出量は、図13の状態に比べて小さくなるが、外装体13の係止部に係止され扉16が施錠された状態は維持される。さらにこの状態では、図13、図14に示した場合と同様に、シートストッパ90の先端部がスリット28の裏側を横切って、筒部30の左側Lの壁部31bの側面にコイルバネ92(図10)の付勢力で押し付けられた状態も維持される。これにより、宅配業者がスリット28から伝票を抜き取った後、別の人が再度スリット28に別の用紙を入れて押印しようとしても、その用紙をスリット28に入れることはできない。このため、宅配業者が宅配ボックス12で受領印を押印されることが扉ロック時の1回限りとなり、受領印による荷物の配送の証明性が高くなる。
一方、従来から知られている宅配ボックスとして、宅配ボックスの内部にスタンプ手段を置いておき、宅配業者が荷物を宅配ボックスに収容するときにそのスタンプ手段を用いて伝票に受領印を押すことが可能な構造がある。このような従来構造では、宅配ボックスを開けたときに施錠せずに何回でも押印が可能であるため、受領印による荷物の配送の証明性が低い。実施形態によれば、このような不都合を防止できる。
図16は、鍵解錠状態における図5に対応する図である。図16では、ドアロック70(図5)及びコイルバネ74(図5)を省略して示している。荷物の受取人が、宅配ボックス12から荷物を受け取るときには、専用の鍵を鍵穴部41に入れて解錠方向に回すことで、施錠ピン45が解錠方向に回転する。このときには、レバーロック60の溝部65(図4)から施錠ピン45が離れるので、レバーロック60及び操作レバー50は、付勢部材56の付勢力によって上昇する。これにより、図2、図3に示した荷受の待機状態と同様の位置に、操作レバー50が上昇する。このとき、ドアロック70(図5)は、図5に示した待機状態の場合と同様に、コイルバネ74(図5)の付勢力によりスリット28側に戻り、ベースプレート25の左端Lからは突出しない。これにより、扉16の開放が可能となる。
本例の宅配ボックス12の施錠装置20は、簡易な構造により低コスト化を図れる。また、ユーザの操作が簡単であるため、操作性を高くできる。また、施錠装置20の主要構成を、スタンプ手段88及びスタンプケースユニット79を除いて、上下方向に長い配置構成とできるので、多くの部分で左右方向長さを小さくできる。これにより、多くの種類の宅配ボックスへの適用の容易化を図れるとともに、意匠性を高くできる。
図17は、別例の施錠装置20aにおいて、荷受の待機状態における図3に対応する図である。図18は、図17を扉内側から見て一部を省略して示す図である。本例の施錠装置20aの場合には、レバーロック110に、略左右方向に延びる直線部は形成されない。レバーロック110は、略上下方向に延びる直線部111の上端に上下方向に対し傾斜した傾斜部112が形成され、その傾斜部112の上端に係止アーム113が形成される。係止アーム113の上端には、断面L字形の係止部114が形成される。図18では、操作レバー50と筒部30との間の係止部材、ドアロック、ドアロックを付勢するコイルバネ、スタンプ手段の図示を省略している。また、スタンプケース80を構成する板部81の正面側(図18の紙面の裏側)には突部(図示せず)が形成され、突部とシートストッパ90との間に付勢部材115が配置されることで、シートストッパ90がスリット28側に付勢されている。
施錠装置20aでは、レバーロック110に解錠部材120が取り付けられている。解錠部材120は、軸部120aと先端部120bとを一体的に有し、軸部120aの端部がレバーロック110に例えばボルト等によって固定されている。解錠部材120は、樹脂成型部品によって好適に構成される。解錠部材120は、後付けでレバーロック110に取り付けられてもよく、これにより宅配ボックス12に閉じ込められた際の脱出機構を簡単で安価に付加することができる。
解錠部材120は、扉16が閉じた状態でレバーロック110から荷物室14側に突出して設けられている。解錠部材120のレバーロック110の突出寸法は、例えば数cm程度とすることができる。解錠部材120の突出寸法がこれより小さいと荷物室14に閉じ込められた子供K(図23参照)の手が触れ難くなって解錠操作が行われにくくなり、他方、突出寸法が大きくなると荷物室14内に収容される荷物100に干渉しやすくなり荷物室14の収容可能空間を狭めてしまうからである。
また、解錠部材120の先端部120bは、略球状に形成されている。これにより、解錠部材120の先端部120bは、荷物室14内の子供Kの手が触れても安全な形状となっている。ただし、解錠部材120の先端部120bの形状は、略球状に限定されるものではなく、例えば半球状等の他の形状であってもよい。
図19は、施錠装置20aにおいて、操作レバー50押し下げ状態における図17に対応する図である。図20は、図19を扉内側から見て一部を省略して示す図である。図17、図18の待機状態から図19、図20に示すように操作レバー50が押し下げられた場合には、レバーロック110が下降する。これと同時に操作レバー50の一方の脚部53も下降してドアロック70(図5)の先端部を、ベースプレート25の左端(L端)より大きく突出させることで、扉が施錠される。さらに、スタンプケース80がスリット28側(図20の矢印α側)に移動することで、スタンプケース80に保持されたスタンプ手段により、スリット28に挿入された伝票が押印される。このとき、スタンプケース80の正面側に保持されたシートストッパ90もスリット28側に移動して、スリット28の裏側にシートストッパ90の先端部が突出する。
図21は、施錠装置20において、操作レバー50の押し下げ力が解除されてドアロックがロックされた状態における図17に対応する図である。図22は、図21を扉内側から見て一部を省略して示す図である。図21、図22に示すように操作レバー50の押し下げ力が解除された状態では、付勢部材の付勢力により操作レバー50及びレバーロック110が上昇し、レバーロック110の係止部114が施錠ピン45に係止されることでそれ以上の上昇が阻止される。また、この状態でスタンプケース80はスリット28と反対側(図22の矢印β側)に移動するが、シートストッパ90の先端がスリット28の裏側に突出した状態が維持される。これにより、宅配業者が宅配ボックスで受領印を押印されることが扉ロック時の1回限りとなり、受領印による荷物の配送の証明性が高くなる。本例において、解錠部材120を除くその他の構成は、図1~図16の構成と同様である。
図23は、宅配ボックス12の荷物室14内に子供Kが閉じ込められた状態を示す図である。子供Kが遊びやいたずらなどで荷物室14内に入り、別の子供(図示せず)が扉16を閉じて操作レバー50を押し下げ操作して扉16が施錠されたとき、このような事態が起こりうる。その場合、閉じ込められた子供Kは、扉16が開かないことに気がついたとき、扉16の内側(すなわち施錠装置20の辺り)を手で触って扉16を開けようとすることが想定される。このとき、子供Kの手が解錠部材120に触る(或いは当たる)と、解錠部材120が取り付けられたレバーロック110が、図24中の矢印γ方向に回動する。なお、図24に示す施錠状態にあるとき、レバーロック110は施錠ピン45が係止部114に係止しているため、矢印γとは反対方向に回動することはない。
上記のような解錠部材120の操作によってレバーロック110が矢印γ方向に回動すると、施錠ピン45が係止部114から外れることによって、レバーロック110および操作レバー50が付勢部材56の付勢力で図22に示す状態から図18に示す状態に押し上げられる。その結果、ドアロック70(図5)がベースプレート25の左端Lからは突出しない状態に引っ込んだ状態となって扉16が解錠される。この状態で、子供Kが扉16を荷物室14側から押すと、マグネットキャッチの磁力による扉16の保持が外れて扉16が開放される。これにより、子供Kは宅配ボックス12から脱出できる。
ここで、解錠部材120は、荷物室14の底面から天井部までの高さをHとしたとき、高さHの上側半分の範囲内の高い位置に設けられるのが好ましい。具体的には、宅配ボックス12のサイズによっても変わるが、底面から30~60cmの範囲、より好ましくは40~50cmの高さ位置とすることができる。このような高さ位置に解錠部材120を設けることで、子供Kの手が触れやすくなり解錠操作が容易となる。
上述したように、本実施形態の施錠装置20aを備えた宅配ボックス12によれば、扉16の内側に解錠部材120を荷物室14側に突出して設けたことで、荷物室14内に閉じ込められた子供Kの手が触れることによって扉16を容易に解錠することができ、扉16を開放して宅配ボックス12から脱出することができる。したがって、宅配ボックス12の安全性が向上する。
図24は、さらに別例の施錠装置20bにおいて、荷受の待機状態における図4に対応する図である。図25は、施錠装置20bにおいて、操作レバー50a押し下げ状態における図23に対応する図である。
本例の場合には、上記の各例と異なりシートストッパは設けられていない。スタンプ手段88は、スタンプケース116に保持されている。スタンプケース116の正面側Fに形成された壁部117,118に孔が形成されるとともに、ベースプレート25の裏側Bに固定された左右方向に延びるロッド119(図25)がこの孔に挿入されることで、スタンプケース116の左右方向の移動が案内される。また、操作レバー50aの一方の脚部53の下端部にはベースプレート25の左端(L端)から突出する突部57が形成される。本例の場合、この突部57が下降した場合に、外装体の開口周縁部に形成された係止部に突部57が係止されることで扉が施錠される。また、ベースプレート25に形成された筒部30の右側Rの壁部31aには先端から突出する突板は形成されず、この壁部31aの先端の上下方向中間部には凹部37が形成される。スタンプ手段88の先端は、この凹部37の内側を通じて筒部30に挿入可能である。
図24の待機状態から図25のように操作レバー50aを押し下げると、スタンプケース116とともにスタンプ手段88がスリット28側(L側)に移動する。これと同時に、操作レバー50aに形成された突部57が下降して扉が施錠される。本例において、その他の構成と作用は、図1~図16の構成、または図17~図23の構成と同様である。
なお、本開示に係る宅配ボックスは、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更や改良が可能である。
例えば、図1~16を参照して説明した宅配ボックス12の施錠装置20において、レバーロック60に解錠部材120を取り付けてもよい。