JP7213005B2 - 非発酵ビールテイスト飲料 - Google Patents

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本発明は、非発酵ビールテイスト飲料およびその製造方法に関する。
近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化など道路交通法の改正により、自動車等の運転に従事する者のアルコール摂取に対する関心が高まっている。このような中でアルコールをほとんど含まないビールテイスト飲料への需要が一段と高まっている。
ビールの香味の特徴の一つとして飲み応えがあり、いくつかの飲み応えのあるビールテイスト飲料が報告されている。例えば、発酵させたアルコール含有ビールテイスト飲料においては、特許文献1のように、飲料中の麦芽比率を高めることによって飲み応えを付与する方法が開示されている。しかし、非発酵のビールテイスト飲料において、飲み応えを付与するために麦芽などの穀物に由来するエキスを多量に用いると、発酵工程を経ないために、通常ビールには残らない麦汁臭と呼ばれるような独特の不快な臭気が残ってしまうという問題が生ずる。
また、非発酵のビールテイスト飲料にビールらしい風味を付与する方法として、デンプン分解物と甘味料を用いる方法が報告されている(例えば、特許文献2)。さらに、低アルコールビールテイスト飲料の麦芽臭を低減し、後味を改善する方法として、難消化デキストリンを用いる方法が報告されている(例えば、特許文献3)。このようにビールテイスト飲料にビールらしい風味、特に飲み応えを付与するために、数多くの取り組みがなされているものの、コク(ボディ感)とキレ(適度な抑揚)が両立されたビール本来のビールらしい飲み応えを実現する手段は未だ見出されていない。
国際公開第2005/056746号 国際公開第2013/080354号 国際公開第2014/057954号
本発明者らは、非発酵ビールテイスト飲料の製造において、リンゴ酸とクエン酸を所定の含有量で配合することにより、コク(ボディ感)とキレ(適度な抑揚)を両立し、ビールらしい飲み応えを付与することができることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
従って、本発明は、コクとキレを両立し、ビールらしい飲み応えを有する非発酵ビールテイスト飲料とその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmである、非発酵ビールテイスト飲料。
(2)リンゴ酸含有量が30ppm~200ppmであり、クエン酸含有量が30~300ppmである、(1)に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
(3)リンゴ酸含有量が30ppm~100ppmであり、クエン酸含有量が50~200ppmである、(1)に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
(4)クエン酸含有量/リンゴ酸含有量比が1.67~5.00である、(1)~(3)のいずれかに記載の非発酵ビールテイスト飲料。
(5)非発酵ビールテイスト飲料を製造する方法であって、リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmとなるように、リンゴ酸含有量およびクエン酸含有量を調整する工程を含んでなる、方法。
(6)非発酵ビールテイスト飲料におけるビールらしい飲み応えを増強する方法であって、リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmとなるように、リンゴ酸含有量およびクエン酸含有量を調整することを含んでなる、方法。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料は、ビール本来のビールらしい飲み応えを奏する点で有利である。特に、本発明によれば、アルコールをほとんど含まない点と豊かなビール風味という需要者のニーズに同時に応えることができる点で有利であるといえる。
発明の具体的説明
本発明において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ飲料をいう。「ビール様の風味」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを、その飲料が呈することを意味する。
本発明において「非発酵ビールテイスト飲料」とは、発酵工程を経ずに製造されたビールテイスト飲料をいう。ここで「発酵工程」とは、酵母等の微生物が有機物を分解することによってアルコール等の代謝産物を生成する工程をいう。
本明細書において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義である。また、「クエン酸含有量/リンゴ酸含有量比」は、飲料中のクエン酸含有量(ppm)をリンゴ酸含有量(ppm)で除した数値である。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料は、リンゴ酸およびクエン酸をそれぞれ所定の濃度範囲で含んでいる。これにより、コク(ボディ感)とキレ(適度な抑揚)を両立したビールらしい飲み応えを得ることが可能となる。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料は、リンゴ酸含有量およびクエン酸含有量を調整することにより製造することができる。リンゴ酸含有量およびクエン酸含有量の調整は、例えば、非発酵ビールテイスト飲料の製造過程においてリンゴ酸および/またはクエン酸を添加することによって行ってもよく、また、非発酵ビールテイスト飲料にリンゴ酸および/またはクエン酸を与える原材料を増減することにより行ってもよい。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料の製造においてリンゴ酸またはクエン酸を添加する場合には、これらは食品製造に適しているものであればよい。その形態も、水性溶媒に容易に溶解するものであればよく、液状、粉末状、固形状などのいかなる形態のものであってもよい。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料におけるリンゴ酸含有量は10ppm~250ppmとされ、好ましくは30ppm~200ppm、より好ましくは30ppm~100ppmとされる。本発明の非発酵ビールテイスト飲料におけるクエン酸含有量は15~350ppmとされ、好ましくは30~300ppm、より好ましくは50~200ppmとされる。
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の非発酵ビールテイスト飲料におけるリンゴ酸含有量とクエン酸含有量の重量比が1.67~5.00とされ、好ましくは2.00~5.00とされる。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料中のリンゴ酸およびクエン酸の含有量は、BCOJビール分析法-2003 8.24.2キャピラリー電気泳動法により測定することができる。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料は、非アルコール飲料、およびアルコール(エタノール)含有材料を添加することにより製造されるアルコール飲料のいずれであってもよいが、好ましくは非アルコール飲料とされる。ここで、「非アルコール飲料」とは、アルコール濃度が1%(v/v)未満の飲料を意味し、好ましくはアルコール濃度が0.005%(v/v)未満の飲料とされる。本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明の非発酵ビールテイスト飲料は、アルコール濃度が0.00%(v/v)であるアルコールゼロの飲料とされる。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料には、本発明の効果を妨げない範囲でその他の原料を配合してもよい。すなわち、本発明の非発酵ビールテイスト飲料では、着色料(例えば、カラメル色素)、甘味料(例えば、高甘味度甘味料)、調味成分(例えば、アミノ酸)、香料(例えば、ビールの代表的な香気成分である酢酸エチル、酢酸イソアミル、イソアミルアルコールなどを含んだ市販のビールフレーバー)、異性化ホップエキスなどの苦味成分、酵母エキスなどを原料として使用することができる。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料のpHは、好ましくは3.5以上4.5以下とされ、より好ましくはpH3.5以上pH4.2以下、さらに好ましくはpH3.7以上pH4.2以下、最も好ましくはpH3.8以上pH4.2以下とされる。本発明の非発酵ビールテイスト飲料のpH調整はpH調整剤を用いて行うことができる。
本発明の非発酵ビールテイスト飲料は、当技術分野においてよく知られている一般的な方法において、いずれかの段階でリンゴ酸およびクエン酸の含有量を調整することによって製造することができる。このような一般的な方法としては、例えば、麦汁の調製工程および濾過工程を含む方法が挙げられ、この方法は、例えば、(a)麦芽粉砕物と水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得る工程、(b)得られた麦汁にホップを添加した後、煮沸する工程、(c)煮沸した麦汁を冷却する工程、および(d)冷却した麦汁を濾過する工程を順次行うことによって実行することができる。
本発明の他の態様によれば、非発酵ビールテイスト飲料におけるビールらしい飲み応えを増強する方法が提供され、該方法は、リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmとなるようにリンゴ酸含有量およびクエン酸含有量を調整することを含んでなる。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:非発酵ビールテイスト飲料におけるリンゴ酸およびクエン酸の濃度調整による風味への影響(その1)
(1)サンプルの調製
麦芽1kgを適当な粒度に粉砕して仕込槽に入れ、これに3Lの温水を加え、65℃で30分保持後、徐々に昇温して76℃で30分間、糖化を行った。糖化終了後、82℃まで昇温後、濾紙を用いて濾過を行い、濾液を得た。この濾過液1Lにホップを約1g添加し、100℃で60分間煮沸した。煮沸後の液を濾紙を用いて濾過を行い、約5℃に冷却した。適宜、糖度が7.0°Pになるよう、湯を加えて麦汁を調整した。この麦汁に炭酸水および炭酸ガスを加え、2~4℃で24時間貯蔵し、その後濾過を行った。この濾過後の液に、所定の濃度となるようリンゴ酸およびクエン酸、並びにビール風味香料を添加した。こうして、試験区1~6の各サンプルを得た。
(2)官能評価
官能評価の評価項目として、ビールらしい飲み応えを設定した。ここでは、ビールらしい飲み応えを、コク(ボディ感)とキレ(適度な抑揚)の強度であると定義し、この強度を1(弱い)~9(強い)の9段階で評価した。官能評価は、訓練された6名のパネルによって実施し、各パネルの評価の平均値を算出した。この評価結果の平均値から導き出される総合評価は以下の通りである:
A:平均値が7.0以上:優れた飲み応えが認められる。
B:平均値が5.5以上7.0未満:良好な飲み応えが認められる。
C:平均値が3.5以上5.5未満:飲み応えは認められるが弱い。
D:平均値が3.5未満:飲み応えは認められない。
(3)結果
上記の官能評価の結果を、各試験区におけるリンゴ酸およびクエン酸の濃度並びにリンゴ酸/クエン酸濃度比とともに表1に示す。
Figure 0007213005000001
官能評価の結果、リンゴ酸とクエン酸の一方または両方が全く添加されていない試験区1~3においては、飲み応えは認められなかった(D)。次に、リンゴ酸を300ppmおよびクエン酸を400ppm添加した試験区4においては、飲み応えは認められなかった(D)。次に、リンゴ酸を30ppmに固定し、クエン酸を50ppm、150ppmと変化させて添加した場合には、クエン酸50ppmの試験区5では良好な飲み応え(B)が、クエン酸150ppmの試験区6では優れた飲み応え(A)が認められた。
実施例2:非発酵ビールテイスト飲料におけるリンゴ酸およびクエン酸の濃度調整による風味への影響(その2)
(1)サンプルの調製
リンゴ酸およびクエン酸の濃度を以下の表2の通りに変更した以外は、実施例1の方法に従って、試験区7~14のサンプルを調製した。
(2)官能評価
サンプルの官能評価は、実施例1と同じ手法を用いて、訓練された5名のパネルによって実施した。
(3)結果
上記の官能評価の結果を、各試験区におけるリンゴ酸およびクエン酸の濃度並びにリンゴ酸/クエン酸濃度比とともに表2に示す。
Figure 0007213005000002
官能評価の結果、リンゴ酸の添加濃度を0ppm、クエン酸の添加濃度を150ppmとした場合(試験区7)は、飲み応えは認められなかった(D)。次に、リンゴ酸の添加濃度を30ppmに固定し、リンゴ酸の添加濃度を、0、150、および300ppmと変動させたところ(試験区8~10)、クエン酸添加濃度が150ppmの場合(試験区9)に優れた飲み応えが認められ、飲み応えのピークが認められた。次に、クエン酸/リンゴ酸比に注目して、リンゴ酸、クエン酸の添加濃度を変化させたところ(試験区11~14)、クエン酸/リンゴ酸比が2.0の場合(試験区12)は良好な飲み応え(B)が認められ、クエン酸/リンゴ酸比が2.69の場合(試験区11)は優れた飲み応え(A)が認められるのに対し、クエン酸/リンゴ酸比が0.15の場合(試験区13)およびクエン酸/リンゴ酸比が1.5の場合(試験区14)には、飲み応えは認められるものの弱い(C)と評価された。
実施例1および実施例2の官能評価の結果より、リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmである場合に、良好な飲み応え、あるいは優れた飲み応えが認められると考えられる。

Claims (6)

  1. リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmであり、クエン酸含有量/リンゴ酸含有量比が1.67~5.00である、非アルコールの非発酵ビールテイスト飲料。
  2. リンゴ酸含有量が30ppm~200ppmであり、クエン酸含有量が30~300ppmである、請求項1に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
  3. リンゴ酸含有量が30ppm~100ppmであり、クエン酸含有量が50~200ppmである、請求項1に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
  4. クエン酸含有量/リンゴ酸含有量比が2.00~5.00である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
  5. 非アルコールの非発酵ビールテイスト飲料を製造する方法であって、リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmであり、クエン酸含有量/リンゴ酸含有量比が1.67~5.00となるように、リンゴ酸含有量およびクエン酸含有量を調整する工程を含んでなる、方法。
  6. 非アルコールの非発酵ビールテイスト飲料におけるビールらしい飲み応えを増強する方法であって、リンゴ酸含有量が10ppm~250ppmであり、クエン酸含有量が15~350ppmであり、クエン酸含有量/リンゴ酸含有量比が1.67~5.00となるように、リンゴ酸含有量およびクエン酸含有量を調整することを含んでなる、方法。
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