JP7212263B2 - 発泡性スチレン系樹脂粒子 - Google Patents
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Description
前記スチレン系共重合体はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であり、
前記スチレン系共重合体のガラス転移温度は103℃以上107℃未満であり、
前記環式脂肪族炭化水素、前記流動パラフィン及び前記高級脂肪酸エステル(A)の含有量の合計は前記スチレン系共重合体100質量部に対して1.5質量部以上3.5質量部以下であり、
前記流動パラフィンの含有量は前記スチレン系共重合体100質量部に対して0.5質量部以上1.2質量部以下であり、
前記流動パラフィン及び前記高級脂肪酸エステル(A)の合計に対する前記環式脂肪族炭化水素の質量比は1.0以上3.0以下であり、
前記流動パラフィンに対する前記高級脂肪酸エステル(A)の質量比は0.1以上であり、
前記粒子本体の表面は、少なくともシリコーンオイルにより被覆されている、発泡性スチレン系樹脂粒子にある。
発泡性粒子の粒子本体には、上記のように、基材樹脂としてのスチレン系共重合体と、鎖式脂肪族炭化水素と、環式脂肪族炭化水素と、流動パラフィンと、高級脂肪酸エステル(A)とが含まれている。
スチレン系共重合体は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であり、スチレン系単量体に由来する成分と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する成分とを含む。また、スチレン系共重合体のガラス転移温度は103℃以上107℃未満である。スチレン系共重合体におけるガラス転移温度は、104℃以上106℃以下であることがより好ましく、105℃以上106℃以下であることがさらに好ましい。
前記粒子本体には、環式脂肪族炭化水素と、流動パラフィンと、高級脂肪酸エステル(A)とが含まれている。環式脂肪族炭化水素、流動パラフィン及び高級脂肪酸エステル(A)は、スチレン系共重合体に含まれており、スチレン系共重合体の内部全体にわたって存在していることが好ましい。環式脂肪族炭化水素、流動パラフィン及び高級脂肪酸エステル(A)の含有量の合計は、前記スチレン系共重合体100質量部に対して1.5質量部以上3.5質量部以下である。
粒子本体には、炭素数が5~7の環式脂肪族炭化水素が含まれている。これらの環式脂肪族炭化水素は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、環式脂肪族炭化水素は、常温常圧(例えば、25℃、1気圧)で液体である。
粒子本体には、流動パラフィンが含まれている。流動パラフィンは、常温常圧(例えば、25℃、1気圧)で液体のパラフィンである。流動パラフィンとしては、JIS K 2231:1993に定められた流動パラフィンが特に好ましく使用される。
粒子本体には、アルコールと炭素数12~24の脂肪酸とのエステルである高級脂肪酸エステル(A)が含まれている。高級脂肪酸エステル(A)は、常温(例えば10~30℃)では通常固体であるため、常温においてスチレン系共重合体を可塑化する能力が比較的低い。それ故、発泡粒子成形体におけるスチレン系共重合体の過度の可塑化を抑制し、ひいては発泡粒子成形体の強度の低下を抑制することができる。また、高級脂肪酸エステル(A)は、熱によって融解するため、発泡性粒子を発泡させる際や発泡粒子を型内成形する際には、スチレン系共重合体を可塑化する能力が高くなる。従って、高級脂肪酸エステル(A)を可塑剤として使用することにより、発泡時や型内成形時においてスチレン系共重合体を十分に可塑化させて発泡性や成形性を高めることができると共に、型内成形後において成形体の強度を高めることができる。
粒子本体には、炭素数3~5の鎖式脂肪族炭化水素が含まれている。鎖式脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等を使用することができる。これらの鎖式脂肪族炭化水素は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記粒子本体の表面は、少なくともシリコーンオイルにより被覆されている。被覆剤は、本発明の所期の目的、効果を達成できる範囲であれば、粒子本体の表面の全部を覆っていてもよいし、粒子本体の表面の一部を覆っていてもよい。粒子本体の表面をシリコーンオイルで被覆することにより、粒子本体中の可塑剤の含有量を比較的少なくし、かつ、低い成形圧力で型内成形を行った場合であっても、発泡粒子同士を十分に融着させることができ、発泡粒子成形体の強度を高くすることができる。粒子本体の表面にシリコーンオイルが存在しない場合、低い成形圧力で型内成形を行った際の発泡粒子同士の融着性の低下や、得られる成形体の表面の発泡粒子間に隙間が発生することによる外観の悪化等の問題が生じるおそれがある。
粒子本体の表面は、シリコーンオイルに加え、アルコールと炭素数12~24の脂肪酸とのエステルである高級脂肪酸エステル(B)により被覆されていることが好ましい。粒子本体の表面を高級脂肪酸エステル(B)で被覆することにより、低い成形圧力で型内成形を行う場合においても発泡粒子の成形性をより高めることができる。
粒子本体の表面は、シリコーンオイルに加え、炭素数12~24の脂肪酸の金属塩である高級脂肪酸金属塩により被覆されていることが好ましい。粒子本体の表面を高級脂肪酸金属塩で被覆することにより、発泡時のブロッキング、つまり、発泡性粒子同士が融着し、塊状になる現象をより効果的に抑制することができる。
前述したシリコーンオイル、高級脂肪酸エステル(B)及び高級脂肪酸金属塩は、粒子本体の表面を被覆する被覆剤として捉えることができる。被覆剤の被覆量の合計は、粒子本体100質量部に対して0.1質量部以上0.4質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上0.3質量部以下であることがより好ましい。
被覆剤には、前述した作用効果を損なわない範囲で、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)アルキルアミン、グリセリン等の帯電防止剤等が含まれていてもよい。帯電防止剤を使用する場合、帯電防止剤の被覆量は、粒子本体100質量部に対して、概ね0.01質量部以上0.06質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上0.05質量部以下であることがより好ましい。
前記発泡性粒子は、例えば懸濁重合等の従来公知の方法によって粒子本体を作製した後、粒子本体の表面に被覆剤を被覆することによって製造することができる。
発泡粒子は、発泡性粒子を、例えば従来公知の方法により発泡させることにより得られる。発泡は、例えば発泡性粒子にスチーム等の加熱媒体を供給し、発泡性粒子を加熱することにより行うことができる。具体的には、例えば撹拌装置の付いた円筒形の発泡機を用いて、スチーム等により発泡性粒子を加熱して発泡させる方法がある。
発泡粒子成形体は、例えば次のようにして製造される。まず、所望する成形体の形状に対応したキャビティを有する金型内に発泡粒子を充填し、スチームなどの加熱媒体により金型内で多数の発泡粒子を加熱する。キャビティ内の発泡粒子は、加熱によってさらに発泡すると共に、相互に融着する。これにより、多数の発泡粒子が一体化し、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
撹拌装置の付いた内容積が1m3のオートクレーブ内に、脱イオン水350kg、懸濁剤(第3リン酸カルシウム)2.0kg、界面活性剤(α-オレフィンスルホン酸ナトリウム)0.013kg、界面活性剤(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)0.004kg、電解質(酢酸ナトリウム)0.53kgを投入した。
・重合開始剤(I):過酸化ベンゾイル(日油株式会社製「ナイパー(登録商標)」BW、水希釈粉体品)
・重合開始剤(II):t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標)E」)
・高級脂肪酸エステル(A):グリセリントリステアレート(融点60℃)
・流動パラフィン:炭素数20~35の流動パラフィン(三光化学工業株式会社製「RCMS」)
・環式脂肪族炭化水素:シクロヘキサン
・気泡核剤:ポリエチレンワックス(Baker Petrolite社製「PW1000」)
オートクレーブ内に投入する可塑剤の量及びモノマーの量を表1及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を得た。
オートクレーブ内に投入する可塑剤の量を表2に示すように変更し、粒子本体の表面を被覆する物質からメチルフェニルシリコーンオイルを除外した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を得た。
JIS Z 8801の規定に適合する試験用篩を用いて発泡性粒子をふるい分けし、発泡性粒子を粒径範囲に基づいて分級した。篩上に残った発泡性粒子の質量を測定することにより、各粒径範囲の発泡粒子の質量分率を算出した。これらの質量分率からロジン・ラムラー分布式を用いて粒径分布を決定した後、得られた粒径分布に基づいて、積算ふるい下百分率、つまり、小粒子側から積算した質量分率の累積値が63質量%となる粒径を算出した。この値を発泡性粒子の平均粒子径とした。
発泡性粒子をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた後、溶解液のガスクロマトグラフィー分析を行うことにより、発泡性粒子中の鎖式脂肪族炭化水素の含有量を測定した。そして、鎖式脂肪族炭化水素の含有量の合計を、発泡剤の含有量とした。
各成分濃度(質量%)=[(Wi/10000)×2]×[An/Ai]×Fn÷Ws×100・・・(1)
Wi:内部標準溶液中のシクロペンタノールの質量(g)
Ws:DMFに溶解させた発泡性粒子の質量(g)
An:クロマトグラムから算出した各発泡剤成分のピーク面積
Ai:クロマトグラムから算出した内部標準物質のピーク面積
Fn:あらかじめ作成した検量線より求めた各発泡剤成分の補正係数
分析装置:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフGC-6AM
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
カラム材質:内径3mm、長さ5000mmのガラスカラム
カラム充填剤:[液相名]FFAP(遊離脂肪酸)、[液相含浸率]10質量%、[担体名]ガスクロマトグラフ用珪藻土Chomasorb W、[担体粒度]60/80メッシュ、[担体処理方法]AW-DMCS(水洗・焼成・酸処理・シラン処理)、[充填量]90mL
注入口温度:250℃
カラム温度:120℃
検出部温度:250℃
キャリヤーガス:N2、流量40ml/分
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により発泡性粒子のクロマトグラムを取得し、得られたクロマトグラムから算出した重量平均分子量をスチレン系共重合体の重量平均分子量Mwとすることができる。
発泡性粒子1gをメチルエチルケトン20mLに溶解させた。次いで、メタノール500mL中に、得られたメチルエチルケトン溶液を滴下し、スチレン系共重合体を含むメタノール不溶分を沈殿させた。メタノール不溶分を濾取し、室温にて風乾し、その後、樹脂を恒量になるまで真空乾燥させた。このようにしてスチレン系重合体を含むメタノール不溶分を得た。
発泡性粒子の発泡性(発泡力)は、次のような条件で発泡性粒子を発泡させたときの発泡粒子の嵩密度に基づいて評価することができる。まず棚式発泡機を用いて、発泡性粒子を加熱スチーム温度107℃で270秒間加熱することにより、発泡性粒子を発泡させて発泡粒子を得た。次いで、発泡粒子を温度23℃で24時間乾燥させた。その後、1Lのメスシリンダーに乾燥後の発泡粒子を1Lの標線まで充填し、1Lあたりの発泡粒子の質量(g)を測定し、単位換算することで、嵩密度(kg/m3)を算出した。表1及び表2の「棚式発泡時の嵩密度」欄に、上記の方法により測定した嵩密度の値を示す。
一次発泡を行った後1日間風乾させた発泡粒子1000gを目開き10mmの篩でふるい分けし、篩上に残った発泡粒子の質量を測定した。表1及び表2の「ブロッキング」欄には、篩上に発泡粒子が残らない場合に記号「A」、篩上に残った発泡粒子の質量が1g以下の場合に記号「B」、篩上に残った発泡粒子の質量が1gを超える場合に記号「C」を記載した。
型内成形時の成形性は、ゲージ圧0.04MPa(G)の成形圧力で型内成形した発泡粒子成形体における発泡粒子同士の融着性及び外観に基づいて評価することができる。
発泡粒子同士の融着性は、以下の方法により算出した融着率に基づいて行った。まず、発泡粒子成形体(容器)から底板を切り出し、この底板を折り曲げて、略等分に破断させた。次に、破断させた底板の破断面を観察し、破断面に存在している発泡粒子の総数と、発泡粒子の内部で破断した発泡粒子の数とを数えた。そして、破断面に存在している全ての発泡粒子の数発泡粒子の内部で破断した発泡粒子の数の比率を百分率で表した値で算出し、この値を融着率とした。
ゲージ圧0.04MPa(G)の成形圧力で型内成形した発泡粒子成形体の表面を目視観察し、表面に露出した発泡粒子同士の間に隙間が存在しているか否かを評価した。表1及び表2の「外観」欄には、発泡粒子成形体の表面に隙間がほとんど存在せず、表面全体が平滑である場合に記号「A」、発泡粒子成形体の表面に発泡粒子同士の隙間が散見される場合に記号「B」、発泡粒子成形体の表面の至る所に発泡粒子同士の隙間が存在する場合に記号「C」を記載した。外観の評価においては、記号「A」及び記号「B」の場合を、外観が良好であるため合格と判定し、記号「C」の場合を、外観が悪いため不合格と判定した。
ゲージ圧0.04MPa(G)の成形圧力で型内成形した発泡粒子成形体の質量を、外形寸法に基づいて算出した見掛けの体積で除した値を発泡粒子成形体の見掛け密度とした。
ゲージ圧0.04MPa(G)の成形圧力で型内成形した、有底箱状を呈する発泡粒子成形体の底面を水平板上に載置し、万能試験機により、発泡粒子成形体の開口端面を高さ方向に圧縮速度10mm/minで圧縮した。そして、発泡粒子成形体が破壊されるまでの間における最大荷重を挫屈強度とした。なお、挫屈強度の測定には、(株)島津製作所社製「AG-Xplus 100kN」を用いた。挫屈強度の評価においては、挫屈強度が4.8kN以上である場合を合格とした。
Claims (8)
- スチレン系共重合体と、炭素数3~5の鎖式脂肪族炭化水素と、炭素数5~7の環式脂肪族炭化水素と、流動パラフィンと、アルコールと炭素数12~24の脂肪酸とのエステルである高級脂肪酸エステル(A)と、を含む粒子本体を有し、
前記スチレン系共重合体はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であり、
前記スチレン系共重合体のガラス転移温度は103℃以上107℃未満であり、
前記環式脂肪族炭化水素、前記流動パラフィン及び前記高級脂肪酸エステル(A)の含有量の合計は前記スチレン系共重合体100質量部に対して1.5質量部以上3.5質量部以下であり、
前記流動パラフィンの含有量は前記スチレン系共重合体100質量部に対して0.5質量部以上1.2質量部以下であり、
前記流動パラフィン及び前記高級脂肪酸エステル(A)の合計に対する前記環式脂肪族炭化水素の質量比は1.0以上3.0以下であり、
前記流動パラフィンに対する前記高級脂肪酸エステル(A)の質量比は0.1以上であり、
前記粒子本体の表面は、少なくともシリコーンオイルにより被覆されている、発泡性スチレン系樹脂粒子。 - 前記スチレン系共重合体中の、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する成分の割合は0.2質量%以上0.5質量%未満である、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸ブチルである、請求項1または2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 前記流動パラフィンに対する前記環式脂肪族炭化水素の質量比は1.0以上4.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 前記高級脂肪酸エステル(A)の融点は50℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 前記粒子本体の表面は、さらに、アルコールと炭素数12~24の脂肪酸とのエステルである高級脂肪酸エステル(B)により被覆されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 前記高級脂肪酸エステル(B)には、グリセリンモノステアレートと硬化ひまし油とが含まれている、請求項6に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
- 前記高級脂肪酸エステル(B)中のグリセリンモノステアレートと硬化ひまし油との質量比は、グリセリンモノステアレート:硬化ひまし油=40:60~70:30である、請求項7に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
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