JP7485952B2 - 中空粒子及びクッション体 - Google Patents

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Description

本発明は、中空粒子及びクッション体に関する。
発泡粒子は、例えばビーズクッションやソファ、マットレスなどの、袋体と袋体の内部に充填された充填材とを備えたクッション体における充填材として使用されることがある。この種の用途には、比較的剛性に優れたスチレン系樹脂発泡粒子が用いられることが多い(例えば、特許文献1)。
特開2004-223002号公報
ビーズクッションなどのクッション体の充填材には、繰り返しの使用等により、荷重が繰り返し加わる。しかし、特許文献1に記載されているような発泡粒子は荷重が繰り返し印加された際に復元性が低下し、荷重を印加する前の状態に戻りにくい。そのため、特許文献1の発泡粒子を充填材として用いた場合、クッション体を長期間使用するとクッション性が低下しやすいという問題があった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高い剛性と復元性とを兼ね備え、クッション体用の充填材に好適な中空粒子及びこの中空粒子が充填材として用いられているクッション体を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、袋体と、前記袋体に充填されている充填材とを備えたクッション体における充填材として用いられる中空粒子であって、
樹脂膜と、前記樹脂膜によって区画された複数の気泡とを備え、平均厚みが30μm以上150μm以下である外殻層と、
前記外殻層によって取り囲まれた中空部とを有し、
前記樹脂膜の基材樹脂が(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分とを含む複合樹脂であり、
前記中空粒子の平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
前記中空粒子の見掛け密度が30kg/m以上80kg/m以下であり、
前記外殻層の平均厚みに対する前記樹脂膜の合計厚みの平均値の比が0.5以上である、中空粒子にある。
本発明の他の態様は、袋体と、前記袋体に充填されている充填材とを備えたクッション体であって、
前記充填材が、樹脂膜と、前記樹脂膜によって区画された複数の気泡とを備え、平均厚みが30μm以上150μm以下である外殻層と、
前記外殻層によって取り囲まれた中空部とを有する中空粒子であり、
前記樹脂膜の基材樹脂が(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分とを含む複合樹脂であり、
前記中空粒子の平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
前記中空粒子の見掛け密度が30kg/m以上80kg/m以下であり、
前記外殻層の平均厚みに対する前記樹脂膜の合計厚みの平均値の比が0.5以上である、クッション体にある。
前記中空粒子の樹脂膜の基材樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル成分とスチレン系成分とを含む複合樹脂である。前記中空粒子は、少なくとも、前記特定の複合樹脂を基材樹脂とすることにより、前述した外殻層の平均厚み、平均粒子径、見掛け密度及び外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比で表される構造を容易に実現することができる。かかる構造を有する中空粒子は、前記外殻層に由来する優れた復元性を有するとともに、高い剛性を有している。
それ故、前記中空粒子は、クッション体用の充填材として好適な特性を有している。
また、前記クッション体の充填材には、前記中空粒子が用いられている。それ故、前記クッション体は、軽量であり、優れたクッション性を有するとともに、長期間に亘ってクッション性を維持することができる。
以上のように、前記の態様によれば、高い剛性と復元性とを兼ね備え、クッション体用の充填材として好適な中空粒子及びこの中空粒子が充填材として用いられているクッション体を提供することができる。
図1は、実施例1の中空粒子を2分割した状態の電子顕微鏡写真(拡大倍率30倍)である。 図2は、図1における外殻層を拡大した電子顕微鏡写真(拡大倍率1000倍)である。 図3は、比較例3の中空粒子を2分割した状態の電子顕微鏡写真(拡大倍率30倍)である。 図4は、図3における外殻層を拡大した電子顕微鏡写真(拡大倍率1000倍)である。 図5は、比較例7の発泡粒子を2分割した状態の電子顕微鏡写真である。
(中空粒子)
前記中空粒子は、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。外殻層は、中空粒子の外殻を構成しており、基材樹脂から構成された樹脂膜と、樹脂膜によって区画された複数の気泡とを有している。前記中空粒子は、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とからなることが好ましい。なお、外殻層の詳細な構成については後述する。また、本発明の中空粒子は、後述する発泡性複合樹脂粒子を発泡させてなる中空粒子である。本発明の中空粒子は、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された気泡構造を有する発泡粒子とは異なる構造を有する。本発明の中空粒子は球状であることが好ましい。
中空粒子の中空部は、前記外殻層よりも中空粒子の中心部側に位置している。中空部、つまり、外殻層によって囲まれた領域は、実質的に中空であればよい。ここで、「実質的に中空」とは、中空粒子をその中心部を通る断面で切断した後、透過型電子顕微鏡等を用いて切断面を20倍から1000倍の倍率で観察した場合に、外殻層の構造と中空部の構造とが明確に異なる状態をいう。
例えば、中空部は、外殻層によって中空粒子の外部から隔てられた単一の空間であってもよい。また、中空部には、基材樹脂から構成され、中空部を複数の空間に区画する空間壁が存在していてもよい。この場合、中空部には、中空部の空間壁や、中空部の空間壁と外殻層の内表面とによって区画された数個から数十個程度の空間が形成されていてもよい。所望する物性を発現しやすくする観点から、中空粒子を二等分した際の断面において、中空部が50個以下の空間に区画されていることが好ましく、30個以下の空間に区画されていることがより好ましく、10個以下の空間に区画されていることがさらに好ましく、5個以下の空間に区画されていることが特に好ましい。
前記中空粒子は、外殻層によって囲まれた領域が実質的に中空であれば、優れた復元性を容易に実現することができる。なお、前記中空粒子の中空部は、外殻層によって中空粒子の外部から隔てられた単一の空間であることが好ましい。
[平均粒子径]
前記中空粒子の平均粒子径は2mm以上8mm以下である。前記特定の範囲の平均粒子径を備えた中空粒子は、ビーズクッション等のクッション体に用いられる充填材として好適である。かかる中空粒子を袋体に充填することにより、クッション性に優れたクッション体を得ることができる。中空粒子の平均粒子径が過度に小さい場合には、中空粒子が帯電しやすくなるため、中空粒子を袋体の内部に充填する際の作業性の悪化を招くおそれがある。また、中空粒子の平均粒子径が過度に大きい場合には、中空粒子を充填することにより得られるクッション体が使用者にとって好ましくない感触を有するおそれがある。
前述した問題をより確実に回避する観点からは、中空粒子の平均粒子径は、3mm以上7mm以下であることが好ましく、4mm以上6mm以下であることがより好ましい。
前述した中空粒子の平均粒子径は、中空粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値である。中空粒子の体積基準における粒度分布は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて取得することができる。
[見掛け密度]
前記中空粒子の見掛け密度は30kg/m以上80kg/m以下である。前記特定の範囲の見掛け密度を有する中空粒子は、軽量であると共に剛性及び復元性の両方に優れている。中空粒子の見掛け密度が小さすぎる場合には、中空粒子の剛性の低下を招くおそれがある。また、この場合には、荷重が加わった際に中空粒子が潰れやすくなり、復元性の低下を招くおそれもある。一方、中空粒子の見掛け密度が大きすぎる場合には、中空粒子の単位体積当たりの質量が大きくなり、軽量性や取り扱い性の悪化を招くおそれがある。
中空粒子の剛性及び復元性を高める観点からは、中空粒子の見掛け密度は32kg/m以上であることが好ましく、35kg/m以上であることがさらに好ましい。また、中空粒子の軽量性をより向上させる観点からは、中空粒子の見掛け密度は70kg/m以下であることが好ましく、60kg/m以下であることがより好ましく、50kg/m以下であることがさらに好ましい。
前述した中空粒子の見掛け密度は、以下の方法により算出される値である。まず、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて10日放置することにより状態が調整された、任意の量の中空粒子群を準備する。温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、金網などの道具を使用して中空粒子群をメスシリンダー内の水中に沈める。そして、メスシリンダーの水位上昇量を読み取り、水位上昇量から金網等の道具の体積を差し引くことにより中空粒子群の見掛け体積(単位:L)を算出する。メスシリンダーに入れた中空粒子群の質量(単位:g)を見掛け体積で除した後、単位を換算することにより、中空粒子の見掛け密度(単位:kg/m)を得ることができる。
[外殻層]
中空粒子の外殻層は、基材樹脂により構成されている樹脂膜と、樹脂膜によって区画された複数の気泡とを有している。外殻層は、例えば、中空部に面した中実の下層部と、中空粒子の最表面(つまり、外殻層の外表面)に露出した中実の上層部と、下層部と上層部との間に位置し、複数の気泡を備えた発泡層部とを含む多層構造を有していてもよい。なお、中実とは、樹脂中に実質的に気泡を有しない状態を意味する。
外殻層の平均厚みは30μm以上150μm以下であり、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は0.5以上である。外殻層の構造を、前述した平均厚み及び外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比によって特定される構造とすることにより、荷重に対する外殻層の耐久性を向上させることができる。これにより、繰り返し荷重に対する前記中空粒子の復元性を高めることができる。
外殻層の平均厚みが過度に薄い場合には、中空粒子の剛性が低下し、荷重に対して中空粒子が過度に変形しやすくなるおそれがある。また、荷重が加わった際に中空粒子の気泡膜が座屈しやすくなり、復元性の低下を招くおそれがある。中空粒子の復元性をより高める観点からは、外殻層の平均厚みは50μmを超えることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。
外殻層の平均厚みは、140μm以下であることが好ましく、120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。この場合には、中空粒子を充填したクッション体の感触をより改善し、使用者にとって好ましい感触を有するクッション体をより容易に得ることができる。
また、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比が過度に小さい場合にも、荷重が加わった際に中空粒子の樹脂膜が座屈しやすくなり、復元性の低下を招くおそれがある。中空粒子の復元性をより高める観点からは、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は0.50以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましい。
外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は、例えば0.90以下、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.75以下とすることができる。この場合には、中空粒子の表面が柔軟になりやすく、中空粒子を充填したクッション体の感触をより好ましいものに調整しやすくなる。
前述した外殻層の平均厚みは、以下の方法により算出される値である。まず、中空粒子を概ね2等分となるように分割し、外殻層の切断面を露出させる。走査型電子顕微鏡を用い、外殻層の切断面を概ね4等分したうちの一つの領域内において、無作為に3箇所以上の観察位置を設定する。これらの観察位置を適当な倍率(例えば、倍率1000倍)で観察することにより、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得する。
得られた拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向(つまり、中空粒子の半径方向)に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに亘って引く。以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、合計30か所以上の位置における線分の長さを測定する。このようにして得られた線分の長さの算術平均値を、個々の中空粒子の外殻層の厚みとする。そして、無作為に選択された5個以上の中空粒子について前述した外殻層の厚みを算出し、これらの外殻層の厚みの算術平均値を外殻層の平均厚みとする。
樹脂膜の合計厚みの平均値を算出するに当たっては、外殻層の平均厚みの算出方法と同様に、外殻層の切断面を概ね4等分した内の1つの領域について、無作為に3か所以上の観察位置を設定し、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得する。次いで、各拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに亘って引く。
以上の操作を各拡大写真内から無作為に選択した10か所以上の位置において行い、外殻層の厚み方向に延在する線分の長さを測定するとともに、各線分のうち、気泡と重なる部分の長さを算出する。次いで、個々の線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引き、これらの値を算術平均することにより、各中空粒子の樹脂膜の合計厚みを算出する。そして、無作為に選択された5個以上の中空粒子について前述した樹脂膜の合計厚みを算出し、これらの樹脂膜の合計厚みの算術平均値を樹脂膜の合計厚みの平均値とする。
前記中空粒子を二等分した場合、二等分された前記中空粒子の見掛け密度は、80kg/m以上200kg/m以下であることが好ましい。この場合には、中空粒子の外殻層に占める気泡の割合がより少なくなり前記中空粒子の剛性を高めることができる。また、この場合には、荷重に対する外殻層の耐久性が高められ、復元性をより高めることができる。中空粒子の復元性をより高める観点から、二等分された前記中空粒子の見掛け密度は、90kg/m以上であることが好ましく、100kg/m以上であることがより好ましく、120kg/m以上であることがさらに好ましい。また、復元性をより高める観点から、二等分された前記中空粒子の見掛け密度は、180kg/m以下であることが好ましく、170kg/m以下であることがより好ましく、160kg/m以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「中空粒子を二等分する」とは、中空粒子の質量が概ね等しくなるように、中空粒子を半割することをいう。
前記中空粒子の見掛け密度に対する二等分された前記中空粒子の見掛け密度の比は、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、3.0を超えることが特に好ましい。この場合には、前記中空粒子の構造をより確実に所望の構造とし、クッション用充填材として好適な物性を備えた中空粒子をより容易に得ることができる。
また、中空粒子の見掛け密度に対する二等分された前記中空粒子の見掛け密度の比は5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.2以下であることがさらに好ましい。この場合には、中空粒子の復元性を高めると共に、中空粒子の感触をより良好にすることができる。
なお、粒子全体にわたって多数の気泡が比較的均一に形成された気泡構造を有するような、中空部を有さない発泡粒子における、発泡粒子の見掛け密度に対する二等分された発泡粒子の見掛け密度の比は、通常、1.5未満となる。
中空粒子の樹脂膜を構成する基材樹脂の密度に対する、二等分された前記中空粒子の見掛け密度の比は0.08以上であることが好ましく、0.1以上であることが好ましい。この場合には、クッション用充填材として好適な物性を備えた中空粒子をより容易に得ることができる。また、中空粒子の樹脂膜を構成する基材樹脂の密度に対する、二等分された前記中空粒子の見掛け密度の比は0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。この場合には、中空粒子の感触をより良好にすることができる。
二等分された前記中空粒子の見掛け密度は、二等分する前の中空粒子に替えて二等分した中空粒子を用いること、及び、水に替えて界面活性剤を含有する水溶液をメスシリンダー内に入れること以外は、前述した中空粒子の見掛け密度の測定方法と同様である。なお、界面活性剤を含有する水溶液としては、外殻層における破泡した気泡内や、中空部に浸入しやすい水溶液を用いることができ、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)や、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等の界面活性剤を0.2~1質量%含有する水溶液を用いることができる。
二等分に分割した中空粒子を水溶液に沈めると、個々の中空粒子における分割前に中空部であった領域や、外殻層における破泡した気泡内に水溶液が浸入する。従って、メスシリンダーの水位上昇分より読み取られる体積は、外殻層の見掛け体積により近い値となる。
前記中空粒子の独立気泡率は、90%以上であることが好ましい。この場合には、繰り返し印加される荷重に対する外殻層の耐久性を向上させることができる。これにより、前記中空粒子の復元性をより高めることができる。中空粒子の復元性をより高める観点からは、中空粒子の独立気泡率は95%以上であることがより好ましい。
中空粒子の独立気泡率は、以下の方法により算出される値である。まず、複数の中空粒子からなる中空粒子群を大気圧下、相対湿度50%、23℃の恒温室内に10日間放置し、中空粒子群の状態を調整する。温度23℃の水が入ったメスシリンダーを用意し、状態を調整した後の中空粒子群をメスシリンダー内の水中に金網等を使用して沈める。そして、メスシリンダーの水位上昇分を読みとり、この値を中空粒子群の見掛け体積Vaとする。
見掛け体積を測定した後の中空粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、中空粒子群の真の体積の値Vxを測定する。真の体積の測定には、空気比較式比重計(例えば、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930)を用いればよい。
独立気泡率は、以上により得られた中空粒子群の見掛け体積Va及び真の体積Vxを用い、下記式(1)により算出することができる。なお、下記式(1)における記号Wは中空粒子群の質量(単位:g)であり、記号ρは中空粒子の真密度(単位:g/cm)である。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ) ・・・ (1)
[中空粒子の特性]
前記中空粒子の荷重に対する復元性は、繰り返し圧縮試験を行うことにより評価することができる。繰り返し圧縮試験の具体的な試験方法及び条件は以下の通りである。まず、容積500mLのメスシリンダーを用いて嵩体積330mL分の中空粒子を量り取る。直径78mmの円筒型容器を準備し、容器内に中空粒子を入れる。中空粒子との接触部が平板状である圧縮治具を用い、10mm/分の速度で圧縮治具を下方へ移動させることにより容器内の中空粒子を圧縮する。中空粒子に加わる荷重が650Nに達した時点で圧縮治具を上方へ移動させ、中空粒子への荷重を完全に除荷する。このサイクルを1サイクルとして、荷重の印加と除荷とを100サイクル繰り返し実施する。
前述した繰り返し圧縮試験における中空粒子の圧縮量の最大値は35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、28mm以下であることがさらに好ましい。かかる特性を有する中空粒子は、荷重が繰り返し印加された場合においても高い剛性をより長期間に渡って維持することができる。
また、前述した繰り返し圧縮試験を行った後、25℃、湿度50%、1atmの環境下で24時間静置した場合の中空粒子の体積減少率は4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。かかる特性を有する中空粒子は、荷重が繰り返し印加された場合においても高い復元性をより長期間に亘って維持することができる。
また、繰り返し圧縮試験後における中空粒子の独立気泡率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。かかる特性を有する中空粒子は、荷重が繰り返し印加された場合においても高い復元性をより長期間に渡って維持することができる。同様の観点から、繰り返し圧縮試験前における中空粒子の独立気泡率に対する繰り返し圧縮試験後の中空粒子の独立気泡率の比を百分率で表した値は、95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。
[基材樹脂]
前記中空粒子における樹脂膜の基材樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系単量体に由来する成分を含むスチレン系成分とを含む複合樹脂である。複合樹脂は、後述するように、スチレン系樹脂を基材樹脂とする核粒子に(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを含浸重合してなる複合樹脂であることが好ましい。
複合樹脂中に含まれる(メタ)アクリル酸エステル成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルに由来する成分や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルに由来する成分が挙げられる。複合樹脂中には、これらの(メタ)アクリル酸エステル成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
複合樹脂中には、(メタ)アクリル酸エステル成分として、メタクリル酸メチルに由来する成分が含まれていることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル成分中のメタクリル酸メチルに由来する成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂中に含まれるスチレン系成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸及びスチレンスルホン酸ナトリウム等のスチレン系単量体に由来する成分や、ポリスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体に由来する成分、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体等のスチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体に由来する成分等が挙げられる。複合樹脂中には、これらのスチレン系成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
複合樹脂中には、スチレン系成分として、スチレンに由来する成分が含まれていることが好ましい。この場合、スチレン系成分中のスチレンに由来する成分の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂には、(メタ)アクリル酸エステル成分及びスチレン系成分以外の他の成分が含まれていてもよい。かかる成分としては、例えば、水酸基を含有するビニル化合物、ニトリル基を含有するビニル化合物、有機酸ビニル化合物、オレフィン化合物、ジエン化合物、ハロゲン化ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、マレイミド化合物などの炭素-炭素二重結合を有するモノマーに由来する成分が挙げられる。
水酸基を含有するビニル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。ニトリル基を含有するビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
有機酸ビニル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。オレフィン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン等が挙げられる。ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル化合物としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等が挙げられる。ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン等が挙げられる。マレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド等が挙げられる。
複合樹脂中には、これらの炭素-炭素二重結合を有するモノマーに由来する成分から選択される1種の成分が含まれていてもよいし、2種以上の成分が含まれていてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル成分及びスチレン系成分以外の他の成分は、(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分との合計100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。この場合には、中空粒子の構造や物性をより確実に所望の構造や物性とすることができる。
複合樹脂は、例えば、スチレン系樹脂を基材樹脂とする核粒子に(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを含浸重合させることにより得ることができる。複合樹脂の作製に用いることができるスチレン系樹脂としては、前述したスチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体等を用いることができる。
前記複合樹脂の重量平均分子量は、30×10以上50×10以下であることが好ましく、35×10~45×10であることがより好ましい。この場合には、中空粒子の剛性や復元性をより高めることができる。なお、複合樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定されたポリスチレン換算分子量である。
前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比は、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=70:30~30:70であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=60:40~40:60であることがより好ましい。この場合には、前記特定の構造を有する中空粒子の収率をより高めることができる。
なお、(メタ)アクリル酸エステル成分及び/又はスチレン系成分を含む基材樹脂により構成された核粒子に(メタ)アクリル酸エステル及び/又はスチレン系単量体を含浸重合させることにより複合樹脂を製造する場合、前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比は、核粒子における各成分の質量と、含浸重合される各単量体の質量との関係等から求めることができる。
[添加剤]
前記中空粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。中空粒子中の添加剤の含有量は、例えば、中空粒子の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
[用途]
前記中空粒子は、袋体と、袋体の内部に充填された充填材とを備えたクッション体における充填材として用いられる。この種のクッション体としては、例えば、ビーズクッションやソファ、マットレス等が挙げられる。前述したように、前記中空粒子は、軽量であり、かつ、優れた剛性と復元性とを兼ね備えている。そのため、前記中空粒子は、これらの特性に優れていることが望まれる、クッション体用の充填材として好適に用いられる。特に、前記中空粒子は、ビーズクッション用の充填材として、好適に用いられる。なお、袋体を構成する素材としては、伸縮性を有する素材を用いることが好ましく、例えば、化学繊維、絹、木綿等により形成された布等を使用することができる。充填材として、前記中空粒子を用いたクッション体は、軽量であり、クッション性に優れると共に、優れたクッション性を長期間に亘って維持することができる。
(中空粒子の製造方法)
前記中空粒子の製造方法としては、例えば、前記複合樹脂を基材樹脂とし、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を準備した後、前記発泡性樹脂粒子を発泡させる方法を採用することができる。
発泡性樹脂粒子の製造方法としては、例えば、スチレン系樹脂を基材樹脂とするスチレン系樹脂核粒子(以下、適宜「核粒子」という。)に(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系とを含浸させ、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを重合させるとともに、発泡剤を含浸させる方法を採用することができる。
より具体的には、発泡性樹脂粒子の製造方法は、核粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、
前記水性媒体中の分散させた前記核粒子に(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを含浸させ、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを重合させて樹脂粒子を得る改質工程と、
改質工程を行う前、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも1回以上のタイミングで、前記核粒子または前記樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる含浸工程と、を有していてもよい。分散工程、改質工程及び含浸工程は、単一の密閉容器内で連続して行ってもよいし、別々の容器を用いて行ってもよい。以下、各工程について詳説する。
[分散工程]
分散工程においては、核粒子を水性媒体中に分散させて懸濁液を作製する。水性媒体としては、例えば、脱イオン水等を使用することができる。水性媒体中には、核粒子に加え、必要に応じて、懸濁剤や界面活性剤等を添加することができる。
分散工程に用いる核粒子の基材樹脂はスチレン系樹脂であることが好ましい。スチレン系樹脂としては、前述したスチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体と他のモノマーまたはポリマーとの共重合体等を用いることができる。より具体的には、スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系単量体の単独重合体や、スチレン系単量体に由来する成分を50モル%以上含む共重合体などを使用することができる。また、核粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、帯電防止剤、及び難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。
なお、核粒子には、例えばアクリル系樹脂等のスチレン系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。中空粒子の構造をより確実に所望する構造とする観点からは、核粒子におけるスチレン系樹脂以外の他の樹脂の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
核粒子の作製方法は特に限定されることはない。例えば、核粒子の作製方法としては、ストランドカット方式、アンダーウォーターカット方式、ホットカット方式等を採用することができる。また、核粒子は、例えば、水性媒体中でスチレン系単量体を重合させる懸濁重合法によって作製されていてもよい。
核粒子の平均粒子径は、0.6~1.5mmであることが好ましく、0.7~1.2mmであることがより好ましい。この場合には、改質工程における重合安定性が高められ、中空粒子の重量平均分子量を高めやすい。また、この場合には、最終的に得られる中空粒子の構造をより確実に所望の構造とすることができる。
核粒子の平均粒子径は、核粒子の体積基準における粒度分布に基づいて算出される累積63%径(つまり、d63)の値であり、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)などを用いて測定することができる。
分散工程において使用される懸濁剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第2鉄、水酸化チタン、水酸化マグネシウム、リン酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン及びベントナイト等の無機物の微粒子からなる無機懸濁剤や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機懸濁剤が挙げられる。これらの懸濁剤は、単独で使用されていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。懸濁剤には、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト及びピロリン酸マグネシウムのうち1種または2種以上であることが好ましい。
懸濁剤の添加量は、水性媒体100質量部に対して固形分量で0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。懸濁剤の添加量を0.05質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上とすることにより、後の改質工程において(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体を添加した際に、水性媒体中に核粒子やモノマー等が懸濁した状態がより維持されやすくなる。また、懸濁剤の添加量を10質量部以下、より好ましくは5質量部以下とすることにより、最終的に得られる中空粒子の粒子径分布を狭くすることができる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウムやアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテートやステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライドやステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタインやステアリルベタイン等のアルキルベタイン、及び、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いられていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
界面活性剤は、アニオン系界面活性剤であることが好ましく、炭素数8以上20以下のアルキルスルホン酸アルカリ金属塩であることがより好ましく、炭素数8以上20以下のアルキルスルホン酸ナトリウムであることがさらに好ましい。これらの界面活性剤を用いることにより、後の改質工程において(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体を添加した際に、水性媒体中に核粒子やモノマー等が懸濁した状態がより維持されやすくなる。
懸濁液には、必要に応じて、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機塩類からなる電解質を添加することができる。
[改質工程]
改質工程においては、懸濁液中に(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体を添加し、核粒子に(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを含浸させるとともに、これらのモノマーを重合させる。これにより、スチレン系成分と、(メタ)アクリル酸エステル成分とを含む複合樹脂を基材樹脂とする複合樹脂粒子が得られる。
改質工程において添加される(メタ)アクリル酸エステルの添加量とスチレン系単量体の添加量との合計は、例えば、核粒子100質量部に対して200質量部以上700質量部以下とすることが好ましく、250質量部以上600質量部以下とすることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステルの添加量とスチレン系単量体の添加量との比率は、所望する複合樹脂の組成に応じて適宜設定すればよい。良好な中空粒子を得やすくなる観点からは、(メタ)アクリル酸エステルの添加量とスチレン系単量体の添加量との比率は、質量比において、(メタ)アクリル酸エステル:スチレン系単量体=50:50~85:15であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル:スチレン系単量体=60:40~75:25であることがより好ましい。
改質工程においては、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とを重合させるために、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、スチレン系単量体の懸濁重合に適用可能な重合開始剤であれば、特に限定されることはない。重合開始剤としては、例えば、ビニルモノマーに可溶であり、10時間半減期温度が50℃以上120℃以下である重合開始剤を用いることができる。かかる重合開始剤としては、例えば、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、及びラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で使用されていてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
重合開始剤は、例えば、溶剤やモノマーに溶解させた状態で水性媒体に添加し、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体と共に核粒子に含浸させてもよい。この場合、溶剤としては、例えばエチルベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が用いられる。重合開始剤の添加量は、改質工程において添加する(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体との合計100質量部に対して0.01質量部以上3質量部以下であることが好ましい。
改質工程においては、必要に応じて、気泡調整剤、可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料等を添加することができる。気泡調整剤は、例えば、モノマー及び/または溶剤に溶解または分散させた状態で水性媒体中に添加される。気泡調整剤としては、例えば、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、タルク、シリカ、ポリエチレンワックス、メチレンビスステアリン酸、メタクリル酸メチル系共重合体、及びシリコーンなどが挙げられる。脂肪酸モノアミドとしては、例えばオレイン酸アミド、及びステアリン酸アミド等が挙げられる。脂肪酸ビスアミドとしては、例えばエチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤及び染料は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及び/またはスチレン系単量体に溶解または分散させた状態で水性媒体中に添加することができる。可塑剤としては、例えば、グリセリントリステアレート、グリセリントリオクトエート、グリセリントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノステアレート、ブチルステアレート等の脂肪酸エステルや、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド、硬化牛脂及び硬化ひまし油等の油脂類、シクロヘキサン及び流動パラフィン等の有機化合物等が挙げられる。油溶性重合禁止剤としては、例えば、パラ-t-ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン等が挙げられる。
改質工程における加熱温度や(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体の添加に要する時間は、核粒子のスチレン系樹脂の化学構造や(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体の化学構造、重合開始剤の特性、所望する複合樹脂の重合度などに応じて適宜設定すればよい。
改質工程より得られる複合樹脂粒子は、樹脂粒子の表層部に(メタ)アクリル酸エステル成分を多く含む一方、樹脂粒子の内部は、スチレン系成分を多く含む構造を有するものと考えられる。発泡工程において、(メタ)アクリル酸エステル成分とスチレン系成分とが前述したように分布した発泡性樹脂粒子を発泡させることにより、樹脂粒子の内部での発泡を促進させるとともに、樹脂粒子の表層部での発泡の進行を抑制し、外殻層と、中空部とを有する中空粒子を得ることができるものと考えられる。
[含浸工程]
含浸工程においては、改質工程を行う前、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも1回以上のタイミングで核粒子または複合樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させることにより、発泡性樹脂粒子を得る。すなわち、含浸工程は、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系単量体を含浸させる前の核粒子に対して行ってもよいし、改質工程において(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体とが重合している途中の複合樹脂粒子や、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体との重合が完了した後の複合樹脂粒子に対して行ってもよい。また、これらのタイミングのうち、2回以上のタイミングで核粒子または複合樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させてもよい。物理発泡剤を複合樹脂粒子の内部まで十分に含浸させ、中空粒子の構造を所望の構造としやすくする観点からは、含浸工程は、少なくとも改質工程の前に行うことが好ましい。同様の観点から、含浸工程は、改質工程の前に行うとともに、改質工程の途中及び改質工程の完了後のうち少なくとも一方のタイミングで行うことがより好ましい。
物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の、大気圧での沸点が90℃以下の有機化合物を用いることができる。これらの揮発性有機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。含浸工程を複数回行う場合、各含浸工程において使用する物理発泡剤は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
物理発泡剤を含浸させるに当たっては、例えば、核粒子や複合樹脂粒子が収容されている密閉容器内に物理発泡剤を供給して密閉容器内の圧力を上昇させればよい。この状態を保持することにより、核粒子や複合樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させることができる。
物理発泡剤を含浸させている間、必要に応じて、密閉容器内を加熱してもよい。密閉容器内を加熱することにより、核粒子または複合樹脂粒子への物理発泡剤の含浸をより促進させることができる。なお、発泡剤を含浸する際の温度と時間は、含浸工程のタイミングに応じて適宜設定すればよい。例えば、改質工程の前に行う含浸工程においては、概ね40~90℃の温度を0.5~3時間保持することにより物理発泡剤を含浸させることが好ましい。改質工程の途中及び/又は改質工程の完了後に行う含浸工程においては、概ね80~120℃の温度を3~5時間保持することにより物理発泡剤を含浸させることが好ましい。
含浸工程における物理発泡剤の配合量は、例えば、複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上9質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上8質量部以下であることがさらに好ましい。
前述したように含浸工程を行うことにより、発泡性樹脂粒子を得ることができる。含浸工程を行った後、得られた発泡性樹脂粒子を脱水乾燥させることが好ましい。また、発泡性樹脂粒子を乾燥させる際には、気流乾燥機を用いて、発泡性樹脂粒子に熱風を吹き付けることにより発泡性樹脂粒子を乾燥させることが好ましい。この場合、発泡性樹脂粒子に含まれる水分量を低減することができると共に、発泡性樹脂粒子の発泡性を維持しつつ、発泡性樹脂粒子の表層部に含まれる余剰の発泡剤を逸散させやすくなる。これにより、見掛け密度の低い中空粒子であっても、中空粒子に良好な外殻層が形成されやすくなる。気流乾燥機を用いる場合には、熱風温度が30~60℃であることが好ましく、また、乾燥時間は0.5~4時間であることが好ましい。
見掛け密度の低い中空粒子であっても、中空粒子に良好な外殻層を形成しやすくなる観点から、発泡性樹脂粒子の水分量は0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.03~0.4質量%であることがより好ましく、0.05~0.3質量%であることがさらに好ましい。また、含浸工程を行った後、必要に応じて、発泡性樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆する被覆工程を実施してもよい。
被覆工程において用いられる表面被覆剤としては、例えばジンクステアレート、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油などが挙げられる。また、被覆工程における表面被覆剤として、帯電防止剤などを使用することもできる。表面被覆剤の添加量は、発泡性樹脂粒子100質量部に対して0.01~2質量部であることが好ましい。
発泡性樹脂粒子を発泡させることにより、中空粒子を得ることができる。発泡性樹脂粒子を発泡させる方法としては、例えば、加熱媒体により発泡性樹脂粒子を加熱する方法を採用することができる。具体的には、スチーム等の加熱媒体を、発泡性樹脂粒子を供給した予備発泡機に導入することにより、発泡性樹脂粒子を発泡させることができる。
発泡性樹脂粒子を発泡させるに当たっては、例えば、30~80kg/m3という目的の見掛け密度の中空粒子が得られるように、一段階で発泡性樹脂粒子を発泡させてもよいし、複数の段階に分けて発泡性樹脂粒子を発泡させてもよい。後者の場合、例えば、発泡性樹脂粒子を発泡させて目的の見掛け密度よりも大きな見掛け密度の一段中空粒子を作製し、一段中空粒子をさらに発泡させることにより、目的の見掛け密度の中空粒子とすればよい。
前記中空粒子及びその製造方法の具体的な態様について説明する。なお、本発明に係る中空粒子の具体的な態様は、以下に説明する実施例1~実施例4の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
(実施例1)
本例は、懸濁重合法によりスチレン系樹脂を含む核粒子を作製した後、得られた核粒子を用いて中空粒子を作製する方法の例である。
[核粒子の作製]
攪拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブに、脱イオン水765g、懸濁剤0.84g及び界面活性剤3.2gを投入した。なお、懸濁剤としては第3リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)を使用し、界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)を使用した。
次いで、オートクレーブの内容物を攪拌しつつ、オートクレーブ内に重合開始剤、可塑剤及びスチレン848gを投入した。重合開始剤としては、2.2gのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) O」)と、0.44gのt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製「パーブチル(登録商標) E」)とを併用した。また、可塑剤としては、12.7gのシクロヘキサンと6.2gの硬化牛脂とを併用した。可塑剤は、スチレンに溶解させた状態でオートクレーブ内に投入した。
オートクレーブの内容物を室温下で30分間攪拌した後、オートクレーブ内の温度を1時間半かけて90℃まで上昇させた。オートクレーブ内の温度が90℃に到達した後、さらにオートクレーブ内を加熱し、5時間半かけて100℃までオートクレーブ内の温度を上昇させた。オートクレーブ内の温度が100℃に到達した後、さらにオートクレーブ内を加熱し、1時間半かけて110℃までオートクレーブ内の温度を上昇させた。この温度を2時間保持した後、オートクレーブ内を4時間かけて30℃まで冷却した。以上の操作により、ポリスチレンを基材樹脂とする核粒子を作製した。
冷却が完了した後、オートクレーブ内の核粒子を取り出し、硝酸を用いて核粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去した。遠心分離機を用いて核粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥装置を用いて核粒子の表面に付着した水分を除去した。以上により得られた核粒子は、平均粒子径が約0.95mmとなる粒度分布を有していた。なお、核粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)用いて取得した、体積基準の粒度分布における累積63%径(つまり、d63)の値である。
[発泡性樹脂粒子の作製]
攪拌装置の付いた内容積3Lのオートクレーブ内に、脱イオン水965g及びピロリン酸ナトリウム6.0gを投入した。次いで、オートクレーブ内に、粉末状の硝酸マグネシウム6水和物12.9gを投入し、オートクレーブの内容物を40℃で30分間攪拌した。これにより、オートクレーブの内容物を懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムのスラリーとした。
次に、オートクレーブ内に界面活性剤、核粒子200g及び重合開始剤を投入した。なお、界面活性剤としては、ラウリルスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液を使用し、界面活性剤の添加量は、ラウリルスルホン酸ナトリウムとして0.04gとした。また、重合開始剤としては、2.4gのベンゾイルパーオキサイド(日油製「ナイパー(登録商標)BW」)を使用した。
オートクレーブ内を窒素で置換した後、オートクレーブ内に物理発泡剤18gを10分かけて添加した。なお、物理発泡剤としては、ノルマルブタン約70質量%とイソブタン約30質量%との混合物を使用した。
発泡剤の添加後、オートクレーブ内の温度を40℃で1時間保持した。次いで、オートクレーブ内の温度を1時間かけて80℃まで上昇させた。この温度を保持した状態で、オートクレーブ内を450rpmの攪拌速度で攪拌しつつ、スチレン200gとメタクリル酸メチル400gと重合開始剤との混合物を6時間かけてオートクレーブ内に添加した。なお、重合開始剤としては、1.2gのt-ブチルパーオキシベンゾエート1.2g(日油株式会社製「パーブチル Z」)を使用した。
スチレン及びメタクリル酸メチルを添加してから30分後に、物理発泡剤としてのペンタン80gを30分かけてオートクレーブ内に添加した。また、スチレン及びメタクリル酸メチルを添加してから30分後にオートクレーブ内の温度を1.5時間かけて110℃まで上昇させ、この温度を4時間保持した。その後、オートクレーブ内を約6時間かけて35℃まで冷却した。以上の操作により、スチレンに由来する成分及びメタクリル酸メチルに由来する成分を含む複合樹脂を基材樹脂とし、物理発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を作製した。
冷却が完了した後、オートクレーブ内の発泡性樹脂粒子を取り出し、硝酸を用いて発泡性樹脂粒子の表面に付着した第3リン酸カルシウムを除去した。遠心分離機を用いて発泡性樹脂粒子の脱水及び洗浄を行った後、気流乾燥装置を用いて発泡性樹脂粒子の表面に付着した水分を除去した。以上により得られた発泡性樹脂粒子は、平均粒子径が約1.7mmとなる粒度分布を有していた。なお、発泡性樹脂粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)用いて取得した、体積基準の粒度分布における累積63%径(つまり、d63)の値である。
本例においては、以上により得られた発泡性樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した。具体的には、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、0.11質量部のステアリン酸亜鉛、0.053質量部のグリセリンモノステアレート、0.004質量部のタルク及び0.065質量部の帯電防止剤(第一工業製薬株式会社製「レジスタット(登録商標)PE132」の混合物を添加することにより、これらを含む表面被覆剤で発泡性樹脂粒子の表面を被覆した。
また、発泡性樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後、さらに、気流乾燥機を用い、発泡性樹脂粒子を40℃の温度で90分間加熱して余剰の水分及び発泡剤を除去する熱処理を行った。
[中空粒子の作製]
前述の方法により得られた発泡性樹脂粒子を、容積30Lの常圧バッチ発泡機に投入し、発泡機内にスチームを供給した。なお、スチームの温度は120℃とし、加熱時間は90秒とした。これにより、発泡性樹脂粒子を発泡させ、見掛け密度39kg/mの中空粒子を得た。
(実施例2-実施例4、比較例1-比較例2及び比較例5-比較例6)
実施例2-実施例4、比較例1-比較例2及び比較例5-比較例6の中空粒子の製造方法は、核粒子の平均粒子径を表1または表2に示す値に変更した点、発泡性樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後の熱処理時間を表1または表2に示す値に変更した点、及び、発泡工程における加熱時間を変更した点を除き、実施例1の中空粒子の製造方法と同様である。
(比較例3、比較例4)
比較例3及び比較例4の中空粒子の製造方法は、核粒子としてブタン(ノルマルブタン約70質量%とイソブタン約30質量%との混合ブタン)を6.1%含有する種粒子を213g用いた点、核粒子の平均粒子径を表2に示す値に変更した点、発泡性樹脂粒子の表面を表面被覆剤で被覆した後の熱処理時間を表2に示す値に変更した点及び発泡工程における加熱時間を変更した点を除き、実施例1の中空粒子の製造方法と同様である。
(比較例7)
比較例7は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(株式会社ジェイエスピー製「スチロダイア PA100」を発泡させることにより作製された発泡粒子である。なお、「スチロダイア」は株式会社ジェイエスピーの登録商標である。
[発泡性樹脂粒子の水分量]
実施例及び比較例の発泡性樹脂粒子中の水分量の測定方法は以下の通りである。まず、0.28gの発泡性樹脂粒子を秤量した。加熱水分気化装置を用いて発泡性樹脂粒子を温度160℃まで加熱することにより、発泡性樹脂粒子中の水分を気化させた。この気化させた水分を加熱水分気化装置に接続されたカールフィッシャー水分測定装置(平沼産業株式会社製「AQ-6」)へ導くことで、発泡性樹脂粒子中の水分量を測定した。
以上により得られた中空粒子の諸特性の評価方法を以下に説明する。
[中空粒子の構造]
中空粒子を概ね二等分に分割した後、電子顕微鏡を用いて中空粒子の切断面を観察した。一例として、実施例1の中空粒子の切断面を図1及び図2に示す。図1に示すように、実施例1の中空粒子1は、樹脂膜221を備えた外殻層2と、外殻層2によって取り囲まれた中空部3とを有している。
中空粒子1の中空部3は、外殻層2によって中空粒子1の外部空間から隔てられた単一の空間である。図2に示すように、中空粒子1の外殻層2は、中空部3に面した下層部21と、中空粒子1の最表面に露出した上層部23と、下層部21と上層部23との間に介在する発泡層部22とを有している。下層部21及び上層部23は、樹脂膜221からなる中実の層である。発泡層部22には、樹脂膜221によって区画された複数の気泡222が形成されている。
実施例2~実施例4及び比較例1~比較例6の中空粒子も、実施例1の中空粒子と同様に、外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。例として、比較例3の中空粒子の切断面を図3及び図4に示す。なお、実施例1~実施例4の中空粒子の中空部は単一の空間から構成されているが、中空部は、空間壁によって数個~数十個の空間に区画されていてもよい。
一方、比較例7の発泡粒子8においては、図5に示すように、粒子の内部全体にわたって気泡が比較的均一に形成されており、中空部が存在していない。
[見掛け密度]
1.5gの中空粒子または発泡粒子からなる粒子群を相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて10日放置し、状態を調整した。次に、容積200mLのメスシリンダーを用意し、メスシリンダー内に温度23℃の水を100mL入れた。金網を用いて粒子群をメスシリンダー内の水中に沈めた後、メスシリンダーの水位上昇量を読み取った。そして、水位上昇量から金網の体積を差し引くことにより粒子群の見掛け体積(単位:L)を算出した。メスシリンダーに入れた粒子群の質量を見掛け体積で除し、単位換算することにより、中空粒子または発泡粒子の見掛け密度(単位:kg/m)を算出した。実施例及び比較例の中空粒子または発泡粒子の見掛け密度(A)は、表1または表2に示した通りであった。
[重量平均分子量]
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により中空粒子のクロマトグラムを取得し、得られたクロマトグラムから算出した重量平均分子量を基材樹脂の重量平均分子量とした。
具体的には、クロマトグラムの取得には東ソー(株)製のHLC-8320GPC EcoSECを使用した。測定試料としての中空粒子をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて濃度0.1wt%の試料溶液を調製した後、TSKguardcolumn SuperH-H×1本、TSK-GEL SuperHM-H×2本を直列に接続したカラムを用い、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、THF流量:0.6ml/分という分離条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定試料を分子サイズの違いによって分離し、クロマトグラムを得た。そして、標準ポリスチレンを用いて作成した較正曲線によって、クロマトグラムにおける保持時間を分子量に換算し、微分分子量分布曲線を得た。この微分分子量分布曲線から測定試料の重量平均分子量を算出した。
実施例及び比較例の中空粒子または発泡粒子における複合樹脂の重量平均分子量は、表1または表2に示した通りであった。
[平均粒子径]
粒度分布測定装置(日機装株式会社製「ミリトラック JPA」)用いて中空粒子の体積基準における粒度分布を取得した。この粒度分布における累積63%径(つまり、d63)の値を、中空粒子の平均粒子径とした。実施例及び比較例の中空粒子または発泡粒子の平均粒子径(B)は、表1または表2に示した通りであった。
[外殻層の平均厚み]
まず、中空粒子を概ね二等分となるように分割し、外殻層の切断面を露出させた。走査型電子顕微鏡を用い、外殻層の切断面を概ね4等分したうちの一つの領域において、無作為に3箇所の観察位置を設定した。各観察位置において、外殻層の切断面を倍率1000倍で観察することにより外殻層の切断面の拡大写真を取得した。得られた拡大写真における外殻層上に、外殻層の厚み方向(つまり、中空粒子の半径方向)に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに渡って引いた。
以上の操作を、各拡大写真内について無作為に選択した10箇所の位置において行い、中空粒子1個当たり30か所の線分の長さを測定した。このようにして得られた線分の長さの算術平均値を、個々の中空粒子の外殻層の厚みとした。そして、無作為に選択された5個の中空粒子について前述した外殻層の厚みを算出し、これらの外殻層の厚みの算術平均値を外殻層の平均厚み(C)とした。実施例及び比較例の中空粒子における外殻層の平均厚み(C)は、表1または表2に示した通りであった。また、表1及び表2には、平均粒子径(B)に対する外殻層の平均厚み(C)の比(C)/(B)の値を記載した。
なお、外殻層の厚みの測定においては、外殻層の内表面付近等に、外殻層の厚み方向における長さが100μm以上となる巨大な気泡が存在している場合がある。本例においては、このような気泡は中空部として取り扱った。具体的には、外殻層の内表面付近等に前述した巨大な気泡が存在している場合、中空粒子の外表面から、前述した気泡に到達するまでの前記線分の長さを、外殻層の厚みとした。
また、比較例7の発泡粒子は、切断面の全体にわたって均一な気泡が形成されているため、外殻層の厚みを測定することができない。そのため、比較例7の「外殻層の平均厚み(C)」欄には記号「-」を記載した。比較例7の発泡粒子における、最表面に存在する樹脂膜の厚みは約2μmである。
[外殻層における樹脂膜の合計厚みの平均値]
前述した外殻層の平均厚みの測定と同様に、外殻層の切断面を概ね4等分した内の1つの領域について、無作為に3箇所の観察位置を設定し、各観察位置における外殻層の切断面の拡大写真を取得した。各拡大写真の外殻層の切断面上に、外殻層の厚み方向に延在する線分を、外殻層の外表面から内表面までに渡って引いた。そして、この線分の長さ及び線分のうち気泡と重なる部分の長さを算出し、線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引いた値を算出した。
以上の操作を、各拡大写真について無作為に選択した10か所の位置において行い、中空粒子1個当たり30か所の線分の長さ及び気泡と重なる部分の長さを測定した。そして、線分の長さから気泡と重なる部分の長さを差し引いた値の算術平均値を算出し、この値を中空粒子の樹脂膜の合計厚みとした。無作為に選択された5個の中空粒子について前述した樹脂膜の合計厚みを算出し、これらの樹脂膜の合計厚みの算術平均値を樹脂膜の合計厚みの平均値(D)とした。
実施例及び比較例の中空粒子における樹脂膜の合計厚みの平均値(D)は、表1または表2に示した通りであった。また、表1及び表2には、外殻層の平均厚み(C)に対する樹脂膜の合計厚みの平均値(D)の比(D)/(C)の値を記載した。
[二等分された中空粒子の見掛け密度]
約1gの中空粒子または発泡粒子からなる粒子群を準備し、相対湿度50%、温度23℃、1atmの条件にて10日放置して状態を調整した。状態調整後の粒子群に含まれる中空粒子または発泡粒子を概ね二等分に分割した後、粒子群の質量(単位:g)を測定した。次に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを濃度0.3質量%となるように水に溶解させ、温度23℃の界面活性剤水溶液を準備した。この界面活性剤水溶液が入ったメスシリンダーを用意し、二等分に分割した後の粒子群をメスシリンダー内の水中に金網を使用して沈めた。そして、メスシリンダーの水位上昇量を読みとり、水位上昇量から金網の体積を差し引いた値を粒子群の見掛け体積(単位:L)とした。メスシリンダーに入れた粒子群の質量を二等分された粒子の見掛け体積で除し、単位換算した値を二等分された中空粒子または発泡粒子の見掛け密度(単位:kg/m)とした。
実施例及び比較例の中空粒子または発泡粒子における二等分された粒子の見掛け密度(E)は、表1または表2に示した通りであった。また、表1及び表2には、中空粒子または発泡粒子の見掛け密度(A)に対する二等分された粒子の見掛け密度(E)の比(E)/(A)の値、及び、基材樹脂の密度(F)に対する二等分された粒子の見掛け密度(E)の比(E)/(F)の値を記載した。なお、実施例1~4の中空粒子及び比較例1~6の中空粒子の樹脂膜を構成する基材樹脂の密度(F)は1.1×10kg/mであり、比較例7の発泡粒子を構成する基材樹脂の密度は1.0×10kg/mであった。
[繰り返し圧縮試験における最大圧縮量及び体積減少率]
容積500mLのメスシリンダーを用いて嵩体積330mL分の中空粒子または発泡粒子を量り取り、直径78mmの円筒型容器に中空粒子または発泡粒子を入れた。粒子との接触部が平板状である圧縮治具を用い、10mm/分の速度で圧縮治具を下方へ移動させることにより容器内の中空粒子または発泡粒子を圧縮した。粒子に加わる荷重が650Nに達した時点で圧縮治具を上方へ移動させ、粒子への荷重を完全に除荷した。このサイクルを1サイクルとして、圧縮と除荷とを100サイクル繰り返すことにより繰り返し圧縮試験を実施した。表1及び表2に、繰り返し圧縮試験中における中空粒子または発泡粒子の圧縮量の最大値を示す。
また、繰り返し圧縮試験が完了した後の中空粒子または発泡粒子を容積500mLのメスシリンダー内に入れ、25℃、湿度50%、1atmの環境下で24時間静置した時点の嵩体積を測定した。そして、繰り返し圧縮試験前の粒子の嵩体積に対する繰り返し圧縮試験後の嵩体積の減少率を算出し、この値を体積減少率(単位:%)とした。繰り返し圧縮試験から24時間後の体積減少率は、それぞれ、表1または表2に示す通りであった。
[初期の独立気泡率]
前述した方法と同様の方法により、中空粒子群または発泡粒子群の見掛け体積Va(単位:cm)を測定した。見掛け体積を測定した後の粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、粒子群の真の体積の値Vx(単位:cm)を測定した。なお、真の体積の値Vxの測定には、空気式比重計(東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930)を使用した。
以上により得られた粒子群の見掛け体積Va及び真の体積Vxと、粒子群の質量W(単位:g)及び真密度ρ(単位:g/cm)とを用い、下記式(1)に基づいて粒子群の独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ) ・・・ (1)
そして、上記の操作を5回行い、これらの平均値を中空粒子または発泡粒子の独立気泡率とした。実施例及び比較例における中空粒子または発泡粒子の初期の独立気泡率(G)は、表1または表2に示した通りであった。
[繰り返し圧縮試験後の独立気泡率]
繰り返し圧縮試験を行った後の中空粒子または発泡粒子を使用した以外は、前述した方法と同様の方法により繰り返し圧縮試験後の粒子の独立気泡率を算出した。実施例及び比較例における繰り返し圧縮試験後の中空粒子または発泡粒子の独立気泡率(H)は、表1または表2に示した通りであった。また、表1及び表2には、初期の独立気泡率(G)に対する繰り返し圧縮試験後の独立気泡率(H)の比を百分率で表した値(H)/(G)を記載した。
Figure 0007485952000001
Figure 0007485952000002
表1、図1及び図2に示すように、実施例1~実施例4の中空粒子は、複数の気泡を備えた外殻層と、外殻層によって取り囲まれた中空部とを有している。また、これらの中空粒子は、前記特定の範囲の外殻層の平均厚み、平均粒子径、見掛け密度及び外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比により特定される構造を有している。表1に示したように、かかる構造を備えた実施例1~実施例4の中空粒子は、繰り返し圧縮試験時の圧縮量の最大値及び繰り返し圧縮試験前後での体積の減少率が小さく、高い剛性と復元性とを有している。
一方、表2に示したように、比較例1の中空粒子における外殻層の平均厚みは前記特定の範囲よりも薄い。そのため、比較例1の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験時の圧縮量の最大値が大きくなり、剛性に劣る。また、比較例1の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験前後での体積の減少率が大きくなり、復元性にも劣る。
比較例2の中空粒子における見掛け密度は前記特定の範囲よりも小さく、外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は前記特定の範囲よりも小さい。そのため、比較例2の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験時の圧縮量の最大値が大きくなり、剛性に劣る。また、比較例2の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験前後での体積の減少率が大きくなり、復元性にも劣る。
比較例3の中空粒子における外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は前記特定の範囲よりも小さい。そのため、比較例3の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験時の圧縮量の最大値が大きくなり、剛性に劣る。
比較例4及び比較例5の中空粒子における外殻層の平均厚みに対する樹脂膜の合計厚みの平均値の比は前記特定の範囲よりも小さい。そのため、これらの比較例の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験前後での体積の減少率が大きくなり、復元性に劣る。
比較例6の中空粒子における平均粒子径は前記特定の範囲よりも大きい。そのため比較例6の中空粒子は、袋体の内部に充填する際の作業性が低くなりやすい。また、比較例6の中空粒子における見掛け密度は前記特定の範囲よりも小さい。そのため、比較例6の中空粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験における圧縮量の最大値が大きくなり、剛性に劣る。
比較例7の発泡粒子は、中空部を有しておらず、実施例1~実施例4の中空粒子とは異なる構造を有している。そのため、比較例7の発泡粒子は、実施例1~実施例4の中空粒子に比べて繰り返し圧縮試験前後での体積の減少率が大きくなり、復元性に劣る。
1 中空粒子
2 外殻層
221 樹脂膜
3 中空部

Claims (7)

  1. 袋体と、前記袋体に充填されている充填材とを備えたクッション体における充填材として用いられる中空粒子であって、
    樹脂膜と、前記樹脂膜によって区画された複数の気泡とを備え、平均厚みが30μm以上150μm以下である外殻層と、
    前記外殻層によって取り囲まれた中空部とを有し、
    前記樹脂膜の基材樹脂が(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分とを含む複合樹脂であり、
    前記中空粒子の平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
    前記中空粒子の見掛け密度が30kg/m以上80kg/m以下であり、
    前記外殻層の平均厚みに対する前記樹脂膜の合計厚みの平均値の比が0.5以上である、中空粒子。
  2. 前記中空粒子の見掛け密度に対する二等分に分割された前記中空粒子の見掛け密度の比が1.5以上5.0以下である、請求項1に記載の中空粒子。
  3. 前記外殻層の平均厚みが50μmを超え150μm以下である、請求項1または2に記載の中空粒子。
  4. 前記複合樹脂の重量平均分子量が30×10以上50×10以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の中空粒子。
  5. 前記中空粒子の独立気泡率が90%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の中空粒子。
  6. 前記複合樹脂中に含まれる前記(メタ)アクリル酸エステル成分と前記スチレン系成分との質量比が、(メタ)アクリル酸エステル成分:スチレン系成分=70:30~30:70である、請求項1~5のいずれか1項に記載の中空粒子。
  7. 袋体と、前記袋体に充填されている充填材とを備えたクッション体であって、
    前記充填材が、樹脂膜と、前記樹脂膜によって区画された複数の気泡とを備え、平均厚みが30μm以上150μm以下である外殻層と、
    前記外殻層によって取り囲まれた中空部とを有する中空粒子であり、
    前記樹脂膜の基材樹脂が(メタ)アクリル酸エステル成分と、スチレン系成分とを含む複合樹脂であり、
    前記中空粒子の平均粒子径が2mm以上8mm以下であり、
    前記中空粒子の見掛け密度が30kg/m以上80kg/m以下であり、
    前記外殻層の平均厚みに対する前記樹脂膜の合計厚みの平均値の比が0.5以上である、クッション体。
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