以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。
[建設機械]
図1は、実施形態に係るキャブ10を備えるクレーン100を示す側面図である。クレーン100は、建設機械の一例である。図1に示すように、クレーン100は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101上に旋回可能に支持された上部旋回体102と、を備える。
上部旋回体102は、下部走行体101上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載された旋回フレーム103と、旋回フレーム103の前部に起伏可能となるように取り付けられたアタッチメント104と、アタッチメント104の先端からロープR(ワイヤロープ)を介して吊り下げられたフック105と、ウインチ装置107と、キャブ10と、を備える。
アタッチメント104は、図1に示すようにブームにより構成されていてもよく、ブームの先端部に回動可能に取り付けられたジブをさらに備えていてもよい。フック105には吊り荷106が吊り下げられる。ウインチ装置107は、フック105に繋がるロープRの巻き取り又は繰り出しを行うことにより、フック105に吊作業のための昇降動作を行わせる。キャブ10は、旋回フレーム103の左右方向の中央に対して左右方向の外側(本実施形態では右側)に偏った位置において旋回フレーム103に支持されている。
[キャブ]
図2は、実施形態に係るキャブ10を示す斜視図であり、図3は、その側面図である。図4は、図3のIV-IV線における断面図であり、図5は、図4のV-V線における断面図であり、図6は、図4のVI-VI線における断面図であり、図7は、図4のVII-VII線における断面図であり、図8は、図4のVIII-VIII線における断面図であり、図9は、図4のIX-IX線における断面図である。図10は、図3のX-X線における断面図である。
図2及び図3に示すように、キャブ10は、室内空間を囲む箱体により構成される。キャブ10の室内空間には、図略の運転席、操縦レバー、操縦ペダルなどが配置される。
キャブ10は、前面部11と、背面部12と、右側面部13と、左側面部14と、上面部15と、底面部16と、を有し、これらは、室内空間を画定する。前面部11はキャブ10の前面を含む部分を構成し、前面部11には前窓89が形成されている。背面部12はキャブ10の後面を含む部分を構成し、背面部12には図略の後窓が形成されていてもよい。右側面部13は、キャブ10の右側面を含む部分を構成し、オペレータが乗り降りすることが可能な乗降口を開閉するための図略の乗降用ドアを有していてもよい。左側面部14は、キャブ10の左側面を含む部分を構成し、左側面部14には左窓80が形成されている。上面部15は、キャブ10の上面を含む部分を構成し、底面部16は、キャブ10の底面を含む部分を構成する。
キャブ10は、当該キャブ10の骨組である複数のフレームと、これらのフレームに支持される複数のパネルと、を有する。複数のフレームは、左右一対のフロントピラー21と、左右一対のリアピラー22と、左右一対のサイドビーム23と、を含む。複数のパネルは、左側のサイドパネル24と、図略の右側のサイドパネルと、を含む。左側面部14は、左側のフロントピラー21と、左側のリアピラー22と、左側のサイドビーム23と、左側のサイドパネル24と、を含む。
左側面部14は、左窓80を画定する複数の縁と、左窓80を塞ぐことが可能な内側窓ガラス91及び外側窓ガラス92と、これらの窓ガラス91,92を支持する窓枠と、溝埋め部材98と、遮水壁50と、を備える。
図3に示すように、前記複数の縁は、前後に延びる下縁81と、下縁81よりも上方において前後に延びる上縁82と、下縁81の前端と上縁82の前端とをつなぐように上下に延びる前縁83と、下縁81の後端と上縁82の後端とをつなぐように上下に延びる後縁84と、を有する。左窓80は、下縁81、上縁82、前縁83及び後縁84により画定される開口である。
図3に示す本実施形態では、下縁81及び上縁82のそれぞれは、前下がりに傾斜するように前後に延びる形状を有する。具体的には、下縁81は、前端と後端とを有し、前端から後端まで直線状に連続し、下縁81の前端は、下縁81の後端よりも低い位置にある。同様に、上縁82は、前端と後端とを有し、前端から後端まで直線状に連続し、上縁82の前端は、上縁82の後端よりも低い位置にある。下縁81の延びる方向と上縁82の延びる方向は平行である。
本実施形態では、下縁81の前端は、上縁82の前端よりも前方に位置している。従って、前縁83は、鉛直方向に平行な方向に延びるのではなく、鉛直方向に対して傾斜する方向に延びる形状を有する。具体的には、前縁83は、上端と下端とを有し、上端から下端まで連続し、前縁83の下端は、前縁83の上端よりも前側の位置にある。ただし、前縁83が鉛直方向に平行な方向に延びるように下縁81、上縁82及び前縁83が構成されていてもよい。
前記窓枠は、下枠30と、図略の上枠と、前枠40(図10参照)と、図略の後枠と、を含む。下枠30は、窓80の下縁81に沿って前下がりに傾斜するように前後に延びる形状を有する。前記上枠は、窓80の上縁82に沿って前下がりに傾斜するように前後に延びる形状を有する。前枠40は、窓80の前縁83に沿って上下に延びる形状を有し、前記後枠は、窓80の後縁84に沿って上下に延びる形状を有する。
図4及び図6に示すように、下枠30は、底壁33、左右一対の側壁34,35、中間壁36、前壁37及び後壁38を備える。底壁33は、下縁81に沿って前下がりに傾斜するように前後に延びる板状の部分である。一対の側壁34,35は、底壁33の両サイドから上方にそれぞれ起立している。中間壁36は、一対の側壁34,35の間において、底壁33から上方に起立している。前壁37は、底壁33の前端から上方に起立し、後壁38は、底壁33の後端から上方に起立している。
図4に示すように、下枠30は、内溝31と、外溝32と、を有する。内溝31は、底壁33、一方の側壁34(内側壁)及び中間壁36により画定される溝である。外溝32は、底壁33、他方の側壁35(外側壁)及び中間壁36により画定される溝である。
内溝31は、前下がりに傾斜するように下縁81に沿って前後に延びる形状を有する。外溝32は、内溝31よりも左右方向の外側(本実施形態では、左側)において前下がりに傾斜するように下縁81に沿って前後に延びる形状を有する。本実施形態では、内溝31及び外溝32のそれぞれの傾斜状態は、窓80の下縁81の傾斜状態とほぼ同じである。すなわち、内溝31及び外溝32のそれぞれの延びる方向は、下縁81の延びる方向にほぼ平行である。
なお、前記上枠は、下枠30と同様に、図略の内溝と外溝とを有し、これらの内溝及び外溝のそれぞれは、前下がりに傾斜するように窓80の上縁82に沿って前後に延びる形状を有する。また、前枠40は、内溝41と外溝42とを有し(図10参照)、内溝41及び外溝42のそれぞれは、窓80の前縁83に沿って上下に延びる形状を有する。前記後枠は、図略の内溝と外溝とを有し、これらの内溝及び外溝のそれぞれは、窓80の後縁84に沿って上下に延びる形状を有する。
図6~図9に示すように、下枠30の内溝31には、当該内溝31に沿って前後に延びるガラスラン39が配置され、下枠30の外溝32には、当該外溝32に沿って前後に延びるガラスラン39が配置されている。また、図10に示すように、前枠40の内溝41及び外溝42のそれぞれにも、上下に延びるガラスラン39が配置されている。図示は省略するが、上枠及び後枠にも同様にしてガラスランが配置されている。
窓ガラス91,92は、左窓80を塞ぐことが可能な形状を有する。窓ガラス91,92のそれぞれは、側面視で四角形状を有する。内側窓ガラス91は、前後に延びる下辺91A(図9参照)と、当該下辺91Aの上方において前後に延びる上辺と、下辺91Aの前端と上辺の前端とを上下につなぐように上下に延びる前辺と、下辺91Aの後端と上辺の後端とを上下につなぐように上下に延びる後辺と、を含む。同様に、外側窓ガラス92は、前後に延びる下辺92A(図6参照)と、当該下辺92Aの上方において前後に延びる上辺と、下辺92Aの前端と上辺の前端とを上下につなぐように上下に延びる前辺と、下辺92Aの後端と上辺の後端とを上下につなぐように上下に延びる後辺と、を含む。
内側窓ガラス91は、この内側窓ガラス91の下辺91Aが下枠30の内溝31に配置され、上辺が上枠の内溝に配置された状態で、内溝31に沿って前後にスライド可能に下枠30に支持されている。外側窓ガラス92は、この外側窓ガラス92の下辺92Aが下枠30の外溝32に配置され、上辺が上枠の外溝に配置された状態で、外溝32に沿って前後にスライド可能に下枠30に支持されている。内側窓ガラス91は、内側透明板の一例であり、外側窓ガラス92は、外側透明板の一例である。
図4に示すように、窓ガラス91,92が左窓80を塞いだ状態で、内側窓ガラス91の前端部と外側窓ガラス92の後端部は、左右方向に重なっている。内側窓ガラス91の前端部と外側窓ガラス92の後端部との間には、これらの隙間から室内空間に水が浸入することを防ぐためのシール部材99が上下に延びるように配置されている。本実施形態では、シール部材99として、その長手方向(上下方向)に直交する断面形状が略X字形状である、いわゆるXシールが用いられているが、シール部材99は、Xシールに限られない。
図4に示すように、下枠30の内溝31は、前部31Fと、後部31Rと、を含む。下枠30の外溝32は、前部32Fと、後部32Rと、を含む。
内溝31の後部31Rは、内側窓ガラス91が窓枠内で最も後に配置されたときに内側窓ガラス91の下辺91Aが対向する部分である。内溝31の前部31Fは、後部31Rよりも前側の部分であり、内側窓ガラス91が窓枠内で最も後に配置されたときに内側窓ガラス91の下辺91Aが対向していない部分である。本実施形態では、内溝31の前部31Fは、内溝31の後部31Rよりも低い位置にある。内溝31の前部31Fは、内溝の内溝低部の一例であり、内溝31の後部31Rは、内溝の内溝高部の一例である。
外溝32の前部32Fは、外側窓ガラス92が窓枠内で最も前に配置されたときに外側窓ガラス92の下辺92Aが対向する部分である。外溝32の後部32Rは、前部32Fよりも後側の部分であり、外側窓ガラス92が窓枠内で最も前に配置されたときに外側窓ガラス92の下辺92Aが対向していない部分である。本実施形態では、外溝32の前部32Fは、外溝32の後部32Rよりも低い位置にある。外溝32の前部32Fは、外溝の外溝低部の一例であり、外溝32の後部32Rは、外溝の外溝高部の一例である。
図3及び図4に示すように、内側窓ガラス91は、内溝31の前部31F及び後部31Rのうち高い位置にある後部31R(内溝高部)に配置されることにより、窓80の後部を塞ぐことが可能な形状を有する。外側窓ガラス92は、外溝32の前部32F及び後部32Rのうち低い位置にある前部32F(外溝低部)に配置されることにより、窓80の前部を塞ぐことが可能な形状を有する。
溝埋め部材98は、内溝31の前部31Fの一部を埋めるための部材である。図4及び図6に示すように、溝埋め部材98は、内溝31の前部31Fのうちでも特に前側の部分を埋めるように設けられている。ここで、内溝31の前部31Fのうち、前部31Fの前後方向の中央と内溝31の前端との間の部分を内溝31の前端近傍部と称する。例えば、溝埋め部材98は、前端近傍部の少なくとも一部に設けられる。図4に示す本実施形態では、溝埋め部材98は、内溝31の前部31Fのうち、前部31Fの全長の1/3程度の長さを占める前側の部分に設けられているが、溝埋め部材98の長さ及び配置は、図4に示す具体例に限られない。
溝埋め部材98は、例えば、内溝31の前部31Fにおける断面形状に適合するような断面形状を有し、内溝31の前端近傍部の少なくとも一部に沿って前後に延びる形状を有する。本実施形態では、溝埋め部材98は、例えばゴムなどのような弾性体により構成されているので、内溝31の前端近傍部における断面形状に沿いやすくなる。これにより、前端近傍部に向かって斜め下方に内溝31の前部31Fを流れる水は、溝埋め部材98の後端面によってせき止められるので、内溝31において水が流れる流路として機能する部分は、溝埋め部材98が設けられた部分以外の部分となる。すなわち、溝埋め部材98は、内溝31のうち流路として機能する部分の前端を、内溝31の前端よりも後側に位置させることができる。
ここで、左窓80を画定する前記複数の縁81~84の構造についてより具体的に説明する。前記複数の縁81~84は、当該複数の縁の周りの部分よりも左右方向の内側である右側に凹むような形状を有する。具体的には次の通りである。
図5に示すように、下縁81は、例えばサイドパネル24の一部分により構成されている。図3~図5に示すように、サイドパネル24は、サイドパネル24の大半を占めるサイドパネル本体24Aと、当該サイドパネル本体24Aよりも左右方向の内側(本実施形態では右側)に凹むように形成された下縁81と、を含む。サイドパネル本体24Aは、下縁81から下方に拡がる部分、すなわち、下縁81とサイドパネル24の下部との間の部分を含む。
図5~図9に示すように、下縁81は、下枠30の下面に対して上下に対向する上面812を有する横壁81Bと、下枠30の側壁34(右側壁)に対して左右に対向する外側面811(左側面)を有する縦壁81Aと、を含む。横壁81Bは、サイドパネル本体24Aから左右方向の内側(右側)に拡がるとともに前後に延びる形状を有する。縦壁81Aは、横壁81Bにおける左右方向の内側の縁から上方に起立するとともに前後に延びる形状を有する。横壁81Bの上面812及び縦壁81Aの外側面811のそれぞれは、前下がりに傾斜するように前後に延びている。
本実施形態では、下枠30は、下縁81の縦壁81Aに支持されている。具体的に、下枠30は、この下枠30の側壁34が下縁81の縦壁81Aの外側面811に固定されることによって下縁81の縦壁81Aに支持されている。下枠30の下面は、横壁81Bの上面812に対して上下に間隔をおいて配置されている。下枠30の下面は、後述する遮水壁50の下壁部51を介して、横壁81Bの上面812に対して上下に対向している。
図4に示すように、下枠30は、前後に互いに間隔をおいて設けられた複数の内溝排水口311~315と、前後に互いに間隔をおいて設けられた複数の外溝排水口321~325と、を有する。複数の内溝排水口311~315のそれぞれは、内溝31の底部を上下に貫通する貫通孔であり、内溝31において流れる水を内溝31の下方に排出することが可能である。複数の外溝排水口321~325のそれぞれは、外溝32の底部を上下に貫通する貫通孔であり、外溝32において流れる水を外溝32の下方に排出することが可能である。なお、図7及び図9に示すように、内溝31に配置されたガラスラン39には、複数の内溝排水口311~315に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。同様に、外溝32に配置されたガラスラン39には、複数の外溝排水口321~325に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。
具体的に、複数の内溝排水口311~315のうち、第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312のそれぞれは、内溝31の前部31F(内溝低部)に設けられ、この前部31Fにおいて流れる水を前部31Fの下方に排出可能である。第1内溝排水口311は、前記溝埋め部材98と内溝31の後部31R(内溝高部の一例)との間の領域に設けられている。具体的には、第1内溝排水口311は、溝埋め部材98と後部31Rとの間の領域のうち、平面視で溝埋め部材98と前後に隣合う位置に設けられている、第1内溝排水口311は、複数の内溝排水口311~315のうち、最も低い位置に設けられた内溝排水口である。
第3~第5の内溝排水口313~315のそれぞれは、内溝31の後部31Rに設けられている。複数の外溝排水口321~325のうち、外溝排水口321,322は、外溝32の前部32Fに設けられ、外溝排水口323~325は、外溝32の後部32Rに設けられている。複数の内溝排水口311~315のそれぞれは、前後の寸法が左右の寸法よりも大きな長孔であり、複数の外溝排水口321~325のそれぞれは、前後の寸法が左右の寸法よりも大きな長孔である。ただし、内溝排水口及び外溝排水口の数、配置及び形状は、図4に示す具体例に限られない。
前記遮水壁50は、図略の洗車機から噴射された水がキャブ10の室内空間に浸入することを抑制するための部材である。遮水壁50は、下枠30の下方に設けられている。本実施形態では、遮水壁50は、下縁81と下枠30に支持されている。
図5~図9に示すように、遮水壁50は、下壁部51と、外壁部52と、を含む。遮水壁50は、下壁部51の下方及び外壁部52の側方から下枠30の第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312に向かう水の進行を遮ることができる。
下壁部51は、少なくとも第1内溝排水口311の真下の領域である第1真下領域R1(図7参照)を含む範囲及び第2内溝排水口312の真下の領域である第2真下領域(図示省略)を含む範囲に下枠30に対して下方に間隔をおいた状態で設けられている。外壁部52は、第1内溝排水口311及び第1外溝排水口321に対して左右方向の外側(本実施形態では左側)において下壁部51と下枠30とをつなぐとともに、第2内溝排水口312及び第2外溝排水口322に対して左右方向の外側において下壁部51と下枠30とをつなぐように設けられている。遮水壁50は、キャブ10の側方から下枠30付近に向けて前記洗車機から噴射された水が第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312まで直進することを阻止できる。
具体的に、下壁部51は、内溝31の前部31Fと同じ向きに傾斜するように下枠30に沿って前後に延びる板状の部分であり、下枠30の下面に上下に対向する上面を有する。図示された具体例では、下壁部51の上面は、平面であるが、少なくとも一部に曲面を含んでいてもよい。下壁部51における左右方向の内側の縁(本実施形態では右縁)は、下縁81の縦壁81Aに接続され、下壁部51における左右方向の外側の縁(本実施形態では左縁)は、外壁部52に接続されている。
外壁部52は、内溝31の前部31Fと同じ向きに傾斜するように下枠30に沿って前後に延びる板状の部分であり、下縁81の縦壁81Aの外側面811に左右に対向する内側面を有する。外壁部52は、下壁部51よりも上方において下枠30に接続される上端と、下壁部51よりも下方に位置する下端と、を有する。すなわち、外壁部52は、下壁部51よりもさらに下方まで延びている。これにより、外壁部52よりも左右方向の内側(右側)に水が浸入しにくい。外壁部52の下端と下縁81の横壁81Bの上面812との間には隙間が形成されているので、当該隙間から水が外に排出されることが可能である。
下枠30と遮水壁50との間には、下通路60が形成されている。下通路60は、下枠30の下面、下壁部51の上面、及び外壁部52の内側面を含む複数の面によって画定されている。具体的には、下通路60は、下枠30の下面、下壁部51の上面、外壁部52の内側面、及び下縁81の縦壁81Aの外側面811によって画定されている。下通路60は、内溝31の前部31Fに設けられた内溝排水口311,312を通じて前部31Fの下方に排出された水を受け入れ、受け入れた水を下壁部51に沿って斜め下方に案内することができる。下通路60は、断面が四角形の筒形状を有するが、下通路60の断面形状は、四角形に限られない。
本実施形態では、遮水壁50は、図4において矢印で示す範囲、すなわち、内溝31の前部31Fを含むような範囲に設けられている。遮水壁50における最も高い位置にある端である後端(高位置端)は、内溝31の前部31Fよりも後側に位置している。遮水壁50における最も低い位置にある端である前端(低位置端)は、下枠30における最も低い位置にある端である低位置端に対応する位置にある。遮水壁50は、後端から前端まで下枠30に沿って前後に延びている。また、図5~図8に示すように、下壁部51は、下枠30を下からカバーするような範囲に設けられている。すなわち、下壁部51は、内溝31の前部31F及び外溝32の前部32Fを下からカバーするような範囲に設けられている。
図4~図7に示すように、第2内溝排水口312の真下の領域である前記第2真下領域よりも低い位置には、遮水壁50によって形成される複数の遮水壁排水口71,72,73が設けられている。複数の遮水壁排水口71,72,73は、下壁部51に沿って斜め下方又は斜め上方に流れる水を下壁部51の下方に排出可能なように構成される。複数の遮水壁排水口71,72,73は、前後に互いにずれた位置に設けられている。複数の遮水壁排水口71,72,73のうち、第1遮水壁排水口71及び第2遮水壁排水口72は、第1内溝排水口311の真下の領域である第1真下領域R1(図7参照)よりも低い位置に形成され、第3遮水壁排水口73は、第1真下領域R1よりも高く前記第2真下領域よりも低い位置に形成されている。
第1遮水壁排水口71は、遮水壁50における最も低い位置にある端である低位置端を含む部分により画定される。第1遮水壁排水口71は、端部排水口の一例である。具体的には、図4及び図5に示すように、第1遮水壁排水口71は、下壁部51の前端、外壁部52の前端、下枠30の前端及び下縁81の縦壁81Aの外側面811により画定される。
図4及び図6に示すように、第2遮水壁排水口72は、第1遮水壁排水口71と第1真下領域R1との間に設けられている。第2遮水壁排水口72は、平面視で第1遮水壁排水口71と、第1内溝排水口311と、の間に設けられている。第2遮水壁排水口72は、中間排水口の一例である。図4に示すように、第3遮水壁排水口73は、第2遮水壁排水口72と第1真下領域R1との間に設けられている。第3遮水壁排水口73は、平面視で第1内溝排水口311と、第2内溝排水口312と、の間に設けられている。第2遮水壁排水口72及び第3遮水壁排水口73のそれぞれは、下壁部51を上下に貫通する貫通孔である。
図4に示すように、第2遮水壁排水口72及び第3遮水壁排水口73のそれぞれは、前後の寸法が左右の寸法よりも大きな長孔である。ただし、第2遮水壁排水口72及び第3遮水壁排水口73の形状は、図4に示す具体例に限られない。第2遮水壁排水口72の開口面積と第3遮水壁排水口73の開口面積の合計は、例えば、内溝31の前部31Fに設けられた内溝排水口311,312の開口面積の合計と、外溝32の前部32Fに設けられた外溝排水口321,322の開口面積の合計と、を足し合わせた値と同程度に設定されてもよい。ただし、第2遮水壁排水口72の開口面積と第3遮水壁排水口73の開口面積は、上記のような設定に限られない。
図4及び図6に示すように、第2遮水壁排水口72及び第3遮水壁排水口73のそれぞれは、平面視で内溝31の前部31Fの少なくとも一部及び外溝32の前部32Fの少なくとも一部と重なるような形状を有する。第2遮水壁排水口72及び第3遮水壁排水口73のそれぞれは、下壁部51における左右方向のほぼ中央に設けられている。
図4及び図10に示すように、前記前縁83は、第1遮水壁排水口71(端部排水口の一例)に対して前後に間隔をおいて対向する対向面83Aを有する。この対向面83Aは、後方に向く面であり、上下に延びている。本実施形態では、対向面83Aは、前記左側のフロントピラー21の後面によって構成されている。
以上説明したように、キャブ10では、遮水壁50の下壁部51は、第1内溝排水口311の真下の領域である第1真下領域R1及び第2内溝排水口312の真下の領域である第2真下領域を含む範囲に設けられ、遮水壁50の外壁部52は、第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312に対して左右方向の外側において下壁部51と下枠30とをつなぐように設けられている。従って、遮水壁50は、下壁部51の下方及び外壁部52の側方から下枠30の第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312に向かう水の進行を遮ることができる。すなわち、遮水壁50は、キャブ10の側方から下枠30付近に向けて前記洗車機から噴射された水が第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312まで直進することを阻止できる。これにより、前記洗車機から噴射された水が第1内溝排水口311及び第2内溝排水口312を通じて内溝31の前部31Fに逆流することが抑制される。従って、このキャブ10では、前下がりに傾斜するように前後に延びる下枠30の内溝31及び外溝32に内側窓ガラス91及び外側窓ガラス92が前後にスライド可能にそれぞれ支持される場合において、前記洗車機から噴射された水が室内空間に浸入することを抑制できる。
仮に、前記洗車機から噴射された水が、第1内溝排水口311の真下領域R1よりも低い位置に形成された第1遮水壁排水口71又は第2遮水壁排水口72から遮水壁の内側の空間、すなわち下通路60に浸入し、当該下通路60を第1内溝排水口311に向かって斜め上方に逆流したとしても、下通路60を画定する遮水壁50及び下枠30は、水の流れの抵抗になるので、水が前記下通路60を遮水壁50に沿って逆流する間に水の勢いを減少させることができる。仮に、前記洗車機から噴射された水が、第2内溝排水口312の前記真下領域よりも低い位置に形成された第3遮水壁排水口73から下通路60に浸入し、当該下通路60を第2内溝排水口312に向かって斜め上方に逆流したとしても、下通路60を画定する遮水壁50及び下枠30は、水の流れの抵抗になるので、水が前記下通路60を遮水壁50に沿って逆流する間に水の勢いを減少させることができる。これにより、遮水壁排水口71,72,73を通じて下通路60に浸入した水が内溝排水口311,312を通じて内溝31の前部31Fに浸入することが抑制される。また、仮に、水が内溝31の前部31Fに浸入したとしても、その水は内溝31によって斜め下方に案内され、内溝31の前部31Fに設けられた内溝排水口311,312を通じて前部31Fの下方に排出される。下方に排出された水は、遮水壁50の下壁部51に落下し、この下壁部51によって斜め下方に案内され、遮水壁排水口71,72,73を通じて下壁部51の下方に排出される。
第1遮水壁排水口71は、遮水壁50における最も低い位置にある端である前端(低位置端)を含む部分により画定される端部排水口である。遮水壁50の下壁部51に沿って斜め下方に流れて遮水壁50の前端(低位置端)に到達した水は、この前端を含む部分により画定される第1遮水壁排水口71から下壁部51の下方に排出されるので、遮水壁50の前端の付近に水が滞留することが抑制される。これにより、下壁部51によって斜め下方に案内される水の排水性が向上する。
遮水壁50は、下枠30における最も低い位置にある端である前端(低位置端)に対応する位置まで下枠30に沿って前後に延び、第1遮水壁排水口71(端部排水口)は、遮水壁50の前端と下枠30の前端とを含む部分により画定される。下枠30の前端まで延びている遮水壁50は、前記洗車機から噴射された水が前後のより広い範囲において当該遮水壁50の内側の空間に浸入することを抑制できる。
また、キャブ10の側方から前縁83の対向面83A付近に向けて洗車機から噴射された水は、前記対向面によって流れる方向が制限されるので、この対向面に対向する端部排水口から遮水壁の内側の空間に浸入しやすい。この場合であっても、本実施形態では、遮水壁50の下通路60を第1内溝排水口311に向かって斜め上方に逆流する水の少なくとも一部を、下枠30の第1内溝排水口311に到達する前に、第2遮水壁排水口72を通じて下壁部51の下方に排出することができる。
キャブ10は、内溝31の前部31Fの一部を埋める溝埋め部材98を備え、第1内溝排水口311は、溝埋め部材98と前部31Fとの間の領域のうち、平面視で溝埋め部材98と前後に隣合う位置に設けられている。従って、内溝31の前部31Fを斜め下方に向かう水の流れは溝埋め部材98によってせき止められ、せき止められた水は、この溝埋め部材98に隣合う位置に設けられた第1内溝排水口311を通じて内溝31の前部31Fの下方に効率よく排出される。そして、本実施形態では、上記のような効率のよい排水性を確保しながら、第1内溝排水口311と第1遮水壁排水口71との前後の距離を、溝埋め部材98の前後の長さに応じて容易に調節することができ、十分な距離を確保できる。
[変形例]
以上、本開示の実施形態に係る建設機械について説明したが、本開示は、これらの形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例を含む。
図11は、実施形態の変形例1を示す断面図であり、図12は、実施形態の変形例2を示す断面図である。図11及び図12のそれぞれは、図6と同様に、図4のVI-VI線における断面図である。変形例1及び変形例2は、第2遮水壁排水口72の位置が図6に示す前記実施形態と異なり、それ以外の構成は前記実施形態と同様である。
図11に示す変形例1では、第2遮水壁排水口72は、内溝31の前部31Fの真下に設けられ、平面視で内溝31の前部31Fの少なくとも一部と重なるような形状を有する。第2遮水壁排水口72は、下壁部51における左右方向の中央に対して左右方向の内側(右側)にずれた位置に設けられている。第3遮水壁排水口73の位置も第2遮水壁排水口72と同様である。
図12に示す変形例2では、第2遮水壁排水口72は、外溝32の前部32Fの真下に設けられ、平面視で外溝32の前部32Fの少なくとも一部と重なるような形状を有する。第2遮水壁排水口72は、下壁部51における左右方向の中央に対して左右方向の外側(左側)にずれた位置に設けられている。第3遮水壁排水口73の位置も第2遮水壁排水口72と同様である。
図13は、実施形態の変形例3を示す断面図であり、図14は、実施形態の変形例4を示す断面図である。図13及び図14のそれぞれは、図6と同様に、図4のVI-VI線における断面図である。変形例3及び変形例4のそれぞれは、遮水壁50の構成及び第2遮水壁排水口72の位置が図6に示す前記実施形態と異なり、それ以外の構成は前記実施形態と同様である。
図13に示す変形例3では、遮水壁50は、下壁部51と、外壁部52と、内壁部53と、を含む。遮水壁50は、下縁81に支持され、下枠30は、遮水壁50に支持されている。具体的には、下枠30は、外壁部52と内壁部53に支持されている。
下壁部51は、下枠30を下からカバーするような範囲に設けられている。すなわち、下壁部51は、内溝31の前部31F及び外溝32の前部32Fを下からカバーするような範囲に設けられている。
外壁部52は、内溝排水口311及び外溝排水口321に対して左右方向の外側(左側)において下壁部51と下枠30とをつなぐとともに、第2内溝排水口312及び外溝排水口322に対して左右方向の外側において下壁部51と下枠30とをつなぐように設けられている。
内壁部53は、内溝排水口311及び外溝排水口321に対して左右方向の内側(右側)において下壁部51と下枠30とをつなぐとともに、第2内溝排水口312及び外溝排水口322に対して左右方向の内側において下壁部51と下枠30とをつなぐように設けられている。
図13に示す第2遮水壁排水口72は、第1内溝排水口311の真下の領域である第1真下領域R1(図7参照)よりも低い位置に形成されている。図示は省略するが、第2遮水壁排水口72は、内溝排水口311,312及び外溝排水口321,322よりも左右方向の外側(左側)に設けられている。
第2遮水壁排水口72は、外壁部52によって形成されている。具体的には、第2遮水壁排水口72は、外壁部52を左右に貫通する貫通孔であってもよく、外壁部52と下壁部51とにより画定される孔であってもよい。図示は省略するが、第3遮水壁排水口73は、第2遮水壁排水口72と同様に、外壁部52によって形成されていてもよく、下壁部51を貫通する貫通孔であってもよい。
図13に示す変形例3では、下縁81、遮水壁50の下壁部51、及び遮水壁50の内壁部53は、サイドパネル24の一部によって構成されているが、このような形態に限られない。下縁81、下壁部51及び内壁部53の少なくとも一つは、サイドパネル24とは別の部材によって構成されていてもよい。
図14に示す変形例4は、外壁部52及びこれに設けられた第2遮水壁排水口72の位置が図13に示す変形例3と異なり、それ以外の構成は変形例3と同様である。この変形例4では、外壁部52は、内溝排水口311に対して左右方向の外側(左側)で、かつ、外溝排水口321に対して左右方向の内側(右側)において、下壁部51と下枠30とをつなぐとともに、第2内溝排水口312に対して左右方向の外側で、かつ、外溝排水口322に対して左右方向の内側において、下壁部51と下枠30とをつなぐように設けられている。
本開示は、さらに以下のような変形例も含む。
(A)遮水壁について
前記実施形態では、遮水壁50は、図4において矢印で示す範囲、すなわち、内溝31の前部31Fを含むような範囲に設けられているが、このような形態に限られない。遮水壁は、少なくとも内溝排水口の真下の領域である真下領域を含む範囲に設けられていればよい。
遮水壁50は、下枠30と一体的に成形されたものであってもよく、下縁81と一体的に成形されたものであってもよく、下枠30及び下縁81とは別に成形され、その後にこれらの少なくとも一方に接続されたものであってもよい。
前記実施形態では、遮水壁50は、遮水壁50の後端から前端まで連続する単一の下壁部51と、遮水壁50の後端から前端まで連続する単一の外壁部52と、により構成されるが、このような形態に限られない。下壁部51は、前後に互いに間隔をおいて並ぶ複数の板状の下壁部材を含んでいてもよく、外壁部52は、前後に互いに間隔をおいて並ぶ複数の板状の外壁部材を含んでいてもよい。この場合、例えば、第2遮水壁排水口72及び第3遮水壁排水口73の少なくとも一方は、何れかの下壁部材とその後方に配置された他の下壁部材との間の隙間によって構成されていてもよい。
(B)下縁及び上縁について
図3に示す前記実施形態では、下縁81及び上縁82のそれぞれは、前下がりに傾斜するように前後に延びる形状を有するが、後下がりに傾斜するように前後に延びる形状を有していてもよい。この場合、下縁は、前端から後端まで直線状に連続し、下縁の後端は、下縁の前端よりも低い位置にある。同様に、上縁は、前端から後端まで直線状に連続し、上縁の後端は、上縁の前端よりも低い位置にある。この場合、下枠は、下縁と同様に後下がりに傾斜するように前記下縁に沿って前後に延びる内溝と前記内溝よりも左右方向の外側において前記内溝と同じ向きに傾斜するように前記下縁に沿って前後に延びる外溝とを有する。
(C)溝埋め部材について
前記実施形態では、左側面部14は溝埋め部材98を有するが、溝埋め部材98は省略可能である。
(D)内側透明板及び外側透明板について
前記実施形態では、内側透明板及び外側透明板のそれぞれは、窓ガラスであるが、例えば樹脂製の透明板であってもよい。
(E)建設機械について
前記実施形態では、建設機械がクレーンであるが、建設機械は、油圧ショベルなどの他の機械であってもよい。
(F)側面部について
前記実施形態では、左側面部に形成された左窓を画定する下縁、これに沿って延びる下枠、この下枠に支持される内側透明板及び外側透明板、並びに前記下枠に沿って設けられる遮水壁について説明したが、前記下縁、前記下枠、前記内側透明板、前記外側透明板及び前記遮水壁は、右側面部に設けられていてもよい。