添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るレーザー加工装置2の斜視図である。第1実施形態では、レーザー加工装置2(即ち、第1のレーザー加工装置)を用いて被加工物11を試験的に加工した上で、このレーザー加工装置2のレーザービームの集光点の形状及び大きさ等を調整する。
レーザー加工装置2で試験的に加工される被加工物11は、例えば、シリコンで形成された100μm程度の厚さを有する円盤形状のウェーハである。なお、ウェーハの一面には、例えば数μmの厚さのポリイミド膜が設けられている。
被加工物11は試験加工用のウェーハであるので、この被加工物11にはデバイス等は形成されていない。しかし、被加工物11にはデバイスや配線層が形成されていてもよい。また、ウェーハの一面に形成されたポリイミド膜は、パッシベーション膜として機能してもよい。なお、被加工物11は、シリコンに限定されず、他の半導体材料、サファイア又は各種ガラス等で形成されていてもよい。
被加工物11は、樹脂製のダイシングテープ13を介して金属製の環状フレーム15の開口部に固定される。環状フレーム15の開口部は、被加工物11の外径よりも大きな径を有している。この開口部に被加工物11を配置し、ウェーハの他面と環状フレーム15の一面とにダイシングテープ13を貼り付ける。
これにより、被加工物ユニット17が形成される。ダイシングテープ13を介して被加工物11を環状フレーム15で支持することにより、環状フレーム15で支持しない場合に比べて、被加工物11の搬送等が容易になる。
ところで、被加工物11を加工する場合に、必ずしも被加工物ユニット17を形成する必要はない。例えば、ダイシングテープ13が貼り付けられていない被加工物11をレーザー加工装置2で加工してもよい。
なお、本明細書では、便宜上、ダイシングテープ13に接触するウェーハの他面を被加工物11の下面11bと称し、ダイシングテープ13に接触することなく露出されるポリイミド膜の表面を被加工物11の上面11aと称する。
次に、レーザー加工装置2の構成について説明する。レーザー加工装置2は、各構造を支持する直方体状の基台4を備える。基台4の上面には、Y軸移動ユニット10が設けられている。
Y軸移動ユニット10は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール12を有する。各Y軸ガイドレール12は、基台4の上面に固定されている。各Y軸ガイドレール12には、Y軸移動テーブル14がスライド可能に取り付けられている。
Y軸移動テーブル14の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール12と平行に配置されたY軸ボールネジ16が回転可能な態様で結合されている。
Y軸ボールネジ16の一端には、Y軸パルスモータ18が連結されている。Y軸パルスモータ18でY軸ボールネジ16を回転させれば、Y軸移動テーブル14は、Y軸ガイドレール12に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動テーブル14の上面側には、X軸移動ユニット20が設けられている。X軸移動ユニット20は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール22を有する。各X軸ガイドレール22は、Y軸移動テーブル14の上面に固定されている。
各X軸ガイドレール22には、X軸移動テーブル24がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル24の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール22と平行に配置されたX軸ボールネジ26が回転可能な態様で結合されている。
X軸ボールネジ26の一端には、X軸パルスモータ28が連結されている。X軸パルスモータ28でX軸ボールネジ26を回転させれば、X軸移動テーブル24は、X軸ガイドレール22に沿ってX軸方向に移動する。X軸移動テーブル24の上面側には、円筒形状の支持部材30が固定されている。
支持部材30の上方には、チャックテーブル32が配置されている。ここで、図2を参照してチャックテーブル32等の構造について説明する。図2は、チャックテーブル32の一部断面側面図である。
チャックテーブル32は、可視光に対して透明又は半透明の材料(例えば、石英ガラス)で形成された円盤形状の保持部材34を有する。保持部材34の上面側には、保持部材34の円形の表面の外周を横断する様に形成された互いに平行な直線状の複数の溝34aが設けられている。
保持部材34の下面側は、枠体36の上面側で支持されている。枠体36は、保持部材34の外周よりも大きい外径を有し、金属で形成された円筒形状の部材である。枠体36は、上面側に凹部36aを有する。凹部36aは、円盤形状の空間から成る。凹部36aの上側の内周縁部には、環状の段差部(即ち、棚部)(不図示)が形成されており、この段差部には、上述の保持部材34の下面側が支持されている。
凹部36aの底面には、それぞれLEDを有する複数の発光体38が略等間隔に配置されている。発光体38が点灯されると、発光体38の上方に位置する保持部材34を透過して保持部材34の外部へ光(例えば、可視光)が照射される。
凹部36aの底面と枠体36の底面との間には、底部吸引路36bが形成されている。底部吸引路36bは、枠体36の底面の中心から外周側面近傍まで形成されている。枠体36の外周側の底部吸引路36bには、枠体36の厚さ方向に沿って形成された外周吸引路36cの下方側が接続している。
外周吸引路36cは、枠体36の内周側面と外周側面との間に形成されている。また、外周吸引路36cは、枠体36の上面側で、保持部材34の外周側面に露出する各溝34aに接続している。
枠体36の下方には、略円柱形状のテーブル基台40が設けられている。テーブル基台40は、円形の底面の中心を通り且つ円柱の高さ方向に沿う様に形成された吸引路40aを有する。吸引路40aの一端は、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されており、吸引路40aの他端は、枠体36の底部吸引路36bに接続している。
吸引源を動作させると、吸引路40a、底部吸引路36b及び外周吸引路36cを介して、保持部材34の各溝34aには負圧が発生する。この負圧により、保持部材34の上面側の表面は、被加工物11等を保持可能な保持面32aとして機能する。
テーブル基台40は、テーブル基台40の外周側面から突出する態様で設けられた環状凸部42を有する。環状凸部42は、枠体36の下方に設けられている。環状凸部42の内径は、テーブル基台40の外径と同じであり、環状凸部42の外径は、枠体36の外径と同じである。
環状凸部42の下方には、上述の支持部材30が配置されている。支持部材30の円筒の空間には環状凸部42よりも下方に位置するテーブル基台40の一部が挿入されている。
支持部材30の円筒の空間内に挿入されているテーブル基台40の一部の外周側面と、支持部材30の内周側面との間には、ボールベアリング等の軸受44が設けられている。軸受44の内輪(インナーリング)には、テーブル基台40の外周側面が固定されており、軸受44の外輪(アウターリング)には、支持部材30の内周側面が固定されている。
テーブル基台40の下方には、回転駆動源(不図示)が設けられており、チャックテーブル40本体は、この回転駆動源と連結されている。回転駆動源によりテーブル基台40を回転させると、テーブル基台40は支持部材30に対して回転する。
環状凸部42の上面と、テーブル基台40よりも外側に位置する枠体36の底面との間には、枠体36から外側に向かって突出する態様で、複数のロッド46が設けられている。各ロッド46の一端側は、環状凸部42の上面に固定されている。
各ロッド46の他端側には、クランプユニット32bが取り付けられている。例えば、環状凸部42の上面には、4組のクランプユニット32b及びロッド46が設けられている。各クランプユニット32bは、被加工物ユニット17の環状フレーム15の位置を固定する機能を有する。
ここで、図1に戻って、レーザー加工装置2の他の構成について説明する。基台4のY軸方向の一方(例えば、+Y方向)側の端部近傍の基台4の上面には、上方に突出する四角柱状の支持部50が固定されている。
この支持部50の一側面にはZ軸移動ユニット52が設けられている。Z軸移動ユニット52は、Z軸方向(例えば、保持面32aに垂直な方向)に平行な一対のZ軸ガイドレール(不図示)を有する。各Z軸ガイドレールは、支持部50の一側面に固定されている。
各Z軸ガイドレールには、Z軸移動板52aがスライド可能に取り付けられている。Z軸移動板52aの裏面側(即ち、支持部50側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレールと平行に配置されたZ軸ボールネジ(不図示)が回転可能な態様で結合されている。
Z軸ボールネジの一端には、Z軸パルスモータ54が連結されている。Z軸パルスモータ54でZ軸ボールネジを回転させれば、Z軸移動板52aは、Z軸ガイドレールに沿ってZ軸方向に移動する。
Z軸移動板52aの表面側(即ち、支持部50とは反対側)には、ホルダ56が固定されている。ホルダ56は、円柱形状の空洞部を有する。円柱形状の空洞部は、空洞部の高さ方向がY軸方向と平行となる様に配置されており、この空洞部には、Y軸方向に沿う様に円筒形状のケーシング62が固定されている。
ケーシング62は、Y軸方向に沿って延伸しており、Y軸方向の他方(例えば、-Y方向)側の端部には、集光器64が設けられている。ケーシング62及び集光器64は、レーザービーム照射ユニット60の一部である。ここで、図3、図4(A)及び図4(B)を用いて、レーザービーム照射ユニット60の構成について説明する。
図3は、レーザービーム照射ユニット60の構成例を模式的に示す図である。なお、図3では、被加工物ユニット17の被加工物11及びダイシングテープ13のみが、断面図で示されている。
レーザービーム照射ユニット60は、レーザー発振によりレーザービームLを生じさせるレーザー発振器60aを有する。レーザー発振器60aは、例えば、Nd:YAG又はNd:YVO4で形成されたロッド状のレーザー媒質を含む。レーザー発振器60aは、例えば、出力がパルス状であるレーザービームLを外部に出射させる。
レーザー発振器60aには、レーザービームLのパルスの繰り返し周波数を設定する周波数設定ユニット(不図示)や、パルスの幅を調整するパルス幅調整ユニット(不図示)が接続されている。周波数設定ユニットは、パルスの繰り返し周波数を例えば20kHzに設定する。
レーザー発振器60aから出射されたレーザービームLは、レーザービーム調整ユニット(不図示)に入射する。レーザービーム調整ユニットは、例えば、レーザービームLの波長を変換する波長変換部を有する。
波長変換部は、例えば、レーザービームLの高調波を発生させる非線形光学結晶を有する。波長変換部は、例えば、レーザービームLを被加工物11に対して吸収される所定の波長(例えば、355nm)に変換する。
また、レーザービーム調整ユニット(不図示)は、例えば、レーザービームLの出力を調整する出力調整部を有する。出力調整部は、例えば、減衰器(アッテネータ)である。出力調整部は、レーザー発振器60aから入射したレーザービームLを、例えば、出力6.0Wに調整する。
レーザービーム調整ユニットから出射されたレーザービームLは、集光状態調整ユニット60bに入射する。集光状態調整ユニット60bは、例えば、レーザービームLの直径を拡大又は縮小する。集光状態調整ユニット60bは、また、例えば、レーザービームLの形状(即ち、断面形状)を変更する。
集光状態調整ユニット60bから出射されたレーザービームLは、ミラー60cで反射された後、集光器64内に固定された集光レンズ64aにより集光され、保持面32aに向かって略垂直に照射される。
保持面32aには、被加工物11の下面11b側が保持されており、集光器64から出射されたレーザービームLは被加工物11の上面11a側に略垂直に照射される。次に、図4(A)及び図4(B)を用いて、集光状態調整ユニット60bの構成について説明する。
集光状態調整ユニット60bは、例えば、ビームエキスパンダ60b-1とビーム形状修正ユニット60b-2との少なくともいずれかを有する。図4(A)は、ビームエキスパンダ60b-1の構成例を示す図であり、図4(B)は、ビーム形状修正ユニット60b-2の構成例を示す図である。
図4(A)に示すビームエキスパンダ60b-1は、レーザー発振器60a側に配置された第1レンズA1と、第1レンズA1に対してレーザー発振器60aとは反対側に配置された第2レンズA2とを有する。
第1レンズA1は、例えば、石英ガラスで形成された球面平凹レンズである。第1レンズA1の凹面側はレーザー発振器60a側に配置されており、第1レンズA1の平面側は第2レンズA2側に配置されている。第1レンズA1から光軸方向に所定距離だけ離れた位置には、第2レンズA2が配置されている。第2レンズA2は、例えば、石英ガラスで形成された球面両凸レンズである。
レーザービームL(例えば、断面が直径D1の円形状を有する)は、第1レンズA1の凹面側に入射した後、第1レンズA1の平面側から出射される。第1レンズA1の平面側から出射されたレーザービームLは、第2レンズA2の一面側に入射し、その後、第2レンズA2の他面側から平行光として出射される。
第2レンズA2から出射されるレーザービームLの直径は、直径D1よりも大きい直径D2に拡大される。レーザービームLの直径は、例えば、第1レンズA1及び第2レンズA2間の距離によって調整できる。
例えば、マイクロモータ等の移動機構(不図示)を用いて、第1レンズA1及び第2レンズA2が光軸方向に沿って近接する様に、第1レンズA1及び第2レンズA2の少なくともいずれかを動かすと、レーザービームLの直径は、移動前の直径に比べて縮小する。
これに対して、移動機構を用いて、第1レンズA1及び第2レンズA2が光軸方向に沿って離れる様に、第1レンズA1及び第2レンズA2の少なくともいずれか動かすと、レーザービームLの直径は、移動前の直径に比べて拡大する。
この様に、ビームエキスパンダ60b-1を用いて、レーザービームLの直径D2は、移動の前後で拡大又は縮小可能である。なお、レーザービームLの直径を拡大した場合、レーザービームLの集光点の直径は小さくなり、レーザービームLの直径を縮小した場合、レーザービームLの集光点の直径は大きくなる。
但し、ビームエキスパンダ60b-1は、球面平凹レンズ(第1レンズA1)及び球面両凸レンズ(第2レンズA2)の組み合わせに限定されない。また、ビームエキスパンダ60b-1を構成するレンズの数は、2つに限定されない。ビームエキスパンダ60b-1は3つ以上のレンズから構成されてもよい。
なお、説明を簡単にするために、レーザービームLの進行方向に直交する平面でのレーザービームLの断面が円形状である場合について説明したが、レーザービームLの断面は円形状に限定されない。レーザービームLの断面は、楕円形状であってもよい。
図4(B)に示すビーム形状修正ユニット60b-2は、レーザー発振器60a側に配置された第1のシリンドリカルレンズB1と、第1のシリンドリカルレンズB1に対してレーザー発振器60aとは反対側に配置された第2のシリンドリカルレンズB2とを有する。
第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2は、例えば、石英ガラスで形成された非球面シリンドリカルレンズである。第1のシリンドリカルレンズB1は、平凹シリンドリカルレンズであり、平面側がレーザー発振器60a側に配置され、凹面側が第2のシリンドリカルレンズB2側に配置されている。
第1のシリンドリカルレンズB1の平面は、矩形形状であり、例えば、第1方向C1と平行な長辺を有し、第1方向C1に直交する第2方向C2と平行な短辺を有する。また、第1のシリンドリカルレンズB1の凹面は、第1方向C1及び第2方向C2に直交する第3方向C3で陥没している曲面である。
第1のシリンドリカルレンズB1の凹面側と向かい合う様に、第2のシリンドリカルレンズB2が配置されている。第2のシリンドリカルレンズB2は、平凸シリンドリカルレンズであり、凸面側が第1のシリンドリカルレンズB1と対面する様に配置されている。
第2のシリンドリカルレンズB2の凸面とは反対側に位置する平面は、矩形形状であり、長辺が第1方向C1と平行になり、且つ、短辺が第2方向C2と平行になる様に配置されている。
第1のシリンドリカルレンズB1の平面側から入射した平行光の第2方向C2の長さが長さE1である場合に、第2のシリンドリカルレンズB2の平面側から出射した平行光の第2方向C2の長さは、長さE1よりも小さい長さE2に縮小される。但し、第1のシリンドリカルレンズB1に入射する前と第2のシリンドリカルレンズB2から出射した後とで、第1方向C1における平行光の長さは、変わらない。
それゆえ、レーザービームLがビーム形状修正ユニット60b-2を透過すると、第2方向C2のレーザービームLの長さが、長さE1から長さE2に縮小される。但し、第1方向C1のレーザービームLの長さは、ビーム形状修正ユニット60b-2を透過する前後で同じである。
第2のシリンドリカルレンズB2から出射されたレーザービームLの第2方向C2の長さE2は、光軸方向(即ち、第3方向C3)における第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2間の距離によって調整できる。
例えば、マイクロモータ等の移動機構(不図示)を用いて、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2が光軸方向に沿って近づく様に、両者のうち少なくともいずれかを動かす。これにより、第2方向C2のレーザービームLの長さE2は、移動前の第2方向C2の長さに比べて拡大する。
これに対して、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2が光軸方向に沿って離れる様に、両者のうち少なくともいずれかを動かすと、第2方向C2のレーザービームLの長さE2は、移動前の第2方向C2の長さに比べて縮小する。
この様に、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2のうち少なくともいずれかを光軸方向に沿って動かすことで、レーザービームLの第2方向C2の長さE2は、光軸方向に動かす前の長さE2と比べて拡大又は縮小可能である。
例えば、第1方向C1及び第2方向C2と平行な平面でのレーザービームLの断面が、第1方向C1に短軸を有し且つ第2方向C2に長軸を有する楕円形状である場合について説明する。
この場合に、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2のうち少なくともいずれかを光軸方向に沿って近づく様に動かすと、長軸の長さE2を移動前よりも長くできる。これにより、例えば、レーザービームLの断面を移動前よりも細長い楕円形状に補正できる。
また、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2のうち少なくともいずれかを光軸方向に沿って離れる様に動かすと、長軸の長さE2を移動前よりも短くできる。これにより、例えば、レーザービームLの断面を円形状に修正できる。
なお、レーザービームLの断面の形状は、シリンドリカルレンズの光軸方向に平行な直線を回転中心として、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2を回転させることで変更されてもよい。
例えば、回転機構(不図示)を用いて、光軸方向に平行な直線を回転中心として、第1のシリンドリカルレンズB1及び第2のシリンドリカルレンズB2を回転させる。これにより、第3方向C3を回転中心として、長さE1から長さE2に縮小されるレーザービームLの領域を回転できる。
なお、ビーム形状修正ユニット60b-2は、平凹シリンドリカルレンズ(第1のシリンドリカルレンズB1)及び平凸シリンドリカルレンズ(第2のシリンドリカルレンズB2)の組み合わせに限定されない。また、ビーム形状修正ユニット60b-2を構成するレンズの数は、2つに限定されない。ビーム形状修正ユニット60b-2は3つ以上のレンズから構成されてもよい。
再び図1に戻って、レーザー加工装置2の他の構成について説明する。ケーシング62のX軸方向の他方(+X方向)側には、撮像ユニット66が設けられている。撮像ユニット66は、例えば、保持面32a側に配置された対物レンズ(不図示)と、対物レンズを介して被写体を撮像する撮像素子(不図示)とを有する。
基台4の上方にはカバー部(不図示)が設けられており、このカバー部のY軸方向の他方(例えば、-Y方向)側の側面には、表示装置68が設けられている。表示装置68は、例えばタッチパネルである。
タッチパネルは、オペレーターがレーザー加工装置2に加工条件等を入力するときに使用される入力部と、加工条件や上述の撮像ユニット66で撮像された画像等を表示する表示部とを兼ねている。
また、レーザー加工装置2には、Y軸移動ユニット10、X軸移動ユニット20、チャックテーブル32、Z軸移動ユニット52及びレーザービーム照射ユニット60等の動作を制御する制御部70が設けられている。
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置や、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部70は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
次に、レーザー加工装置2を用いて被加工物11を加工する際における、集光レンズ64aの位置とレーザービームLの集光位置との関係について説明する。本実施形態では、被加工物11に吸収される波長を有するレーザービームLを被加工物11に照射する。
これにより、被加工物11の厚さ方向に貫通する様に形成された貫通溝や、被加工物11を貫通せず且つ被加工物11の上面11aから所定の深さの位置まで形成された非貫通溝(即ち、所謂ハーフカット溝)が、被加工物11に形成される。
貫通溝や非貫通溝の深さは、例えば、集光器64(即ち、集光レンズ64a)のZ軸方向の高さ位置等によって決まる。図5は、集光レンズ64aの位置とレーザービームLの集光位置との関係を示す図である。
図5に示す様に、被加工物11の下面11b側は、チャックテーブル32の保持面32aで保持されている。また、被加工物11の上面11a等には、レーザービームLの集光点が位置付けられる。
図5に示す3つの集光レンズ64aの位置のうち中央に位置する集光レンズ64aの中心は、高さ位置Z0(基準位置)に配置されている。集光レンズ64aの中心が高さ位置Z0に配置されているとき、レーザービームLの集光点P0は被加工物11の上面11aに位置する。
この様に、レーザービームLの集光点P0が被加工物11の上面11aにある(即ち、集光点が上面11aにジャストフォーカスした状態である)とき、集光点P0と上面11aとの距離によって規定されるデフォーカス(defocus)量はゼロである。
これに対して、3つの集光レンズ64aの位置のうち左側に描かれた集光レンズ64aの中心は、高さ位置Z0(基準位置)よりも所定距離Fだけ保持面32aに近い高さ位置Z1(第1位置)に配置されている。このとき、レーザービームLの集光点P1は、被加工物11の上面11aよりも下方である被加工物11の内部に位置付けられる。
この様に、集光点P1が被加工物11の内部に位置するとき、レーザービームLは、例えば、上面11aに対して負のデフォーカス状態であると称される。負のデフォーカス状態の場合、上面11aでのレーザービームLの被照射領域は、集光点が上面11aにジャストフォーカスした状態での被照射領域の面積よりも大きくなる。
また、3つの集光レンズ64aの位置のうち右側に描かれた集光レンズ64aの中心は、高さ位置Z0(基準位置)よりも同じ所定距離Fだけ保持面32aから遠い高さ位置Z2(第2位置)に配置されている。このとき、レーザービームLの集光点P2は、被加工物11の上面11aよりも上方に位置付けられている。
この様に、集光点P2が被加工物11の上方に位置するとき、レーザービームLは、例えば、上面11aに対して正のデフォーカス状態であると称される。正のデフォーカス状態の場合、上面11aでのレーザービームLの被照射領域は、集光点が上面11aにジャストフォーカスした状態での被照射領域の面積よりも大きくなる。
この様に、集光点P0、P1及びP2の各位置は、集光レンズ64aのZ軸方向の位置を被加工物11に対してZ軸移動ユニット52で相対的に動かすことにより調整される。レーザー加工装置2(第1のレーザー加工装置)を用いて被加工物11に所定深さの加工溝を形成する場合、集光器64は、例えば、高さ位置Z0に位置付けられる。
但し、複数のレーザー加工装置2において、レーザー発振器60a間の差異に起因して、レーザービームLの各ビーム径には、例えば、数μmから数十μm程度の差異がある。また、例えば、集光レンズ64a間の凸面形状の固体差に起因して、各集光レンズの収差等の集光性能にも差異がある。
それゆえ、複数のレーザー加工装置2において、各集光器64を同じ高さ位置Z0に配置した場合に、同じ加工結果が得られない(例えば、加工溝の深さや幅が異なる)場合がある。また、仮に、各集光器64を同じ高さ位置Z0に配置した場合に同じ加工結果が得られたとしても、高さ位置Z1及びZ2等では同じ加工結果が得られない場合がある。
そこで、複数のレーザー加工装置2(例えば、第1及び第2のレーザー加工装置)間の差異を吸収して、集光器64が同じ高さ位置にある場合は同じ加工結果が得られる様に、レーザービームLの集光点の形状及び大きさの少なくともいずれかを調整する。
次に、本実施形態に係るレーザービームLの集光点の形状及び大きさの少なくともいずれかを調整する調整方法について説明する。図6は、加工後の被加工物11等の一部断面側面図である。なお、図9は、調整方法のフロー図である。
まず、レーザー加工装置2(第1のレーザー加工装置)を用いて、被加工物11をレーザービームLで加工する(加工ステップ(S10))。加工ステップ(S10)では、被加工物11(第1の被加工物)を用いて被加工物ユニット17を形成した上で、被加工物11(第1の被加工物)を加工する。
まず、被加工物ユニット17のダイシングテープ13側を、チャックテーブル32(第1のチャックテーブル)の保持面32a上に載置する。そして、吸引源を動作させて、被加工物11の下面側を保持面32aで保持する。更に、クランプユニット32bで環状フレーム15を四方から固定する。
次に、集光器64(第1の集光器)のZ軸方向の位置を高さ位置z1(上述の高さ位置Z1に対応する)に配置する。そして、被加工物11の上面11a側にレーザービームLを照射しながら、X軸移動ユニット20を用いて、集光器64に対してチャックテーブル32をX軸方向に移動させる。
例えば、出力6.0W及び繰り返し周波数10kHzのレーザービームLを集光器64から出射させ、チャックテーブル32を133.3mm/sで移動させる。これにより、上面11a側には、X軸方向(加工送り方向)に沿って線状の加工溝19-1が形成される。
次に、集光器64(第1の集光器)をZ軸方向に沿って所定距離だけ上方に移動させ、高さ位置z1よりも高い高さ位置z2に集光レンズ64aの中心を位置付ける。また、Y軸移動ユニット10を用いて、Y軸方向(割り出し送り方向)に沿って所定距離だけチャックテーブル32を移動させる。
そして、X軸移動ユニット20を用いて、再び、集光器64に対してチャックテーブル32をX軸方向に移動させながら、被加工物11の上面11a側にレーザービームLを照射する。これにより、加工溝19-1に隣接した領域に、X軸方向に沿う線状の加工溝19-2が形成される。
この様に、集光器64の上方への移動と、チャックテーブル32の加工送りと、チャックテーブル32の割り出し送りとを繰り返して、X軸方向に沿う線状の加工溝19を順次形成する。
図6では、上述の手順で形成された複数の加工溝19(即ち、加工領域)を示す。複数の加工溝19-1から19-9を形成する際の集光レンズ64aのZ軸方向の高さ位置は、高さ位置z1からz9に対応する。
高さ位置z1は、高さ位置z1からz9のうちで最も下方に位置し、最も保持面32aに近い。なお、高さ位置z1は、例えば、図5の高さ位置Z1(第1位置)に対応する。高さ位置z5は、集光点が上面11aに位置するときの集光レンズ64aの中心の高さ位置Z0(即ち、基準位置)に対応する。また、高さ位置z9は、高さ位置z1からz9のうちで最も上方に位置し、最も保持面32aから遠い。なお、高さ位置z9は、例えば、図5の高さ位置Z2(第2位置)に対応する。
図6に示す高さ位置z2は、高さ位置z1とz5との間に位置し、位置z3は、高さ位置z2とz5との間に位置し、高さ位置z4は、高さ位置z3とz5との間に位置する。更に、高さ位置z6は、高さ位置z5とz9との間に位置し、位置z7は、高さ位置z6とz9との間に位置し、高さ位置z8は、高さ位置z7とz9との間に位置する。なお、高さ位置ziとz(i+1)とは、各々同じ距離だけ離れている(但し、iは、1から8の自然数)。
複数の加工溝19-1から19-9を形成する際の集光レンズ64aのデフォーカス量のうち、加工溝19-1及び19-9を形成する際のデフォーカス量は最大である。なお、本実施形態では、正負を記載せずにデフォーカス量と記載する場合、デフォーカス量そのもの、即ち、集光点から上面11aまでの距離を意味する。
デフォーカス量が大きいほど、被加工物11の上面11aにおける集光点の径は大きくなる。それゆえ、加工溝19-1及び19-9の溝の幅(即ち、図6に示すY軸方向の長さ)は、複数の加工溝19のうちで最も広くなる。
なお、集光点の径が大きいほど、上面11aにおける単位面積当たりのエネルギーが小さくなるので、加工溝19-1及び19-9の溝の深さは、複数の加工溝19のうちで最も浅くなる。
加工溝19-2及び19-8を形成する際のデフォーカス量は、加工溝19-1及び19-9を形成する場合に比べて小さい。それゆえ、加工溝19-2及び19-8の溝の幅は、加工溝19-1及び19-9の幅よりも狭くなる。また、加工溝19-2及び19-8の溝の深さは、加工溝19-1及び19-9の深さよりも深くなる。
同様に、加工溝19-3及び19-7を形成する際のデフォーカス量は、加工溝19-2及び19-8を形成する場合に比べて小さい。それゆえ、加工溝19-3及び19-7の溝の幅は、加工溝19-2及び19-8の幅よりも狭くなる。また、加工溝19-3及び19-7の溝の深さは、加工溝19-2及び19-8の深さよりも深くなる。
加工溝19-4及び19-6を形成する際のデフォーカス量は、加工溝19-3及び19-7を形成する場合に比べて小さい。それゆえ、加工溝19-4及び19-6の溝の幅は、加工溝19-3及び19-7の幅よりも狭くなる。また、図6に示す例では、加工溝19-4及び19-6の溝の深さは、下面11bに到達する。つまり、加工溝19-4及び19-6は、被加工物11を貫通する貫通溝となる。
加工溝19-5を形成する際のデフォーカス量は、ゼロ(即ち、複数の加工溝19のうちで最小)である。加工溝19-5の溝の幅は、複数の加工溝19の幅のうちで最小となる。また、図6に示す例では、加工溝19-5の溝の深さは、下面11bに到達する。つまり、加工溝19-5は、被加工物11を貫通する貫通溝となる。
加工ステップ(S10)の後、上述の撮像ユニット66で、被加工物11の加工溝19-1から加工溝19-9(即ち、加工領域)を、上面11a側から撮像する(撮像ステップ(S20))。
図7(A)は、加工後の被加工物11を上面11a側から撮像する様子を示す図である。撮像ステップ(S20)では、被加工物ユニット17を保持面32aで保持し、且つ、発光体38を点灯させた状態で被加工物11の加工領域を撮像し、加工結果画像を得る。
図7(B)は、被加工物11の加工領域の画像(即ち、加工結果画像)の例である。加工溝19-4、19-5及び19-6は貫通溝であるので、発光体38からの光を上方に通過させる。それゆえ、加工結果画像において、加工溝19-4、19-5及び19-6は明るく表示される。なお、図7(B)では、光が通過した領域を白色で示している。
これに対して、貫通溝でない加工溝19-1、19-2、19-3、19-7、19-8及び19-9は、加工溝19-4、19-5及び19-6に比べて、加工結果画像において暗く表示される。なお、図7(B)では、貫通溝でない加工溝19を黒色で示している。
撮像ステップ(S20)の後、例えば、オペレーターが、予め得られている基準画像と加工結果画像とを比較する(比較ステップ(S30))。図8(A)は、基準画像の第1例を示す図であり、図8(B)は、基準画像の第2例を示す図である。
基準画像は、上述のレーザー加工装置2(第1のレーザー加工装置、つまり、調整対象のレーザー加工装置)とは異なる他のレーザー加工装置2(第2のレーザー加工装置、つまり、基準となるレーザー加工装置)を用いて、他の被加工物11(第2の被加工物)を加工することにより得られた加工領域の画像である。
基準画像を得るには、まず、他のレーザー加工装置2(第2のレーザー加工装置)のチャックテーブル32(第2のチャックテーブル)の保持面32aで他の被加工物11を保持する。そして、他の被加工物11の上面11aに、他のレーザー加工装置2が備える他のレーザー発振器60a(第2のレーザー発振器)から出射されたレーザービームLを照射する。
そして、上述の加工ステップ(S10)と同様に、レーザービームLの集光点を、高さ位置z1からz9にそれぞれ位置付けて他の被加工物11を加工する。高さ位置ziとz(i+1)とは、各々同じ距離だけ離れている(但し、iは、1から8の自然数)。
レーザー加工装置2(第1のレーザー加工装置)と他のレーザー加工装置2(第2のレーザー加工装置)とでは、各チャックテーブル32の保持面32aから基準位置(高さ位置z5)までの距離が同じである。それゆえ、他のレーザー加工装置2の集光器64(第2の集光器)の高さ位置z1からz9は、レーザー加工装置2の集光器64(第1の集光器)の高さ位置z1からz9に対応する。
従って、レーザー加工装置2(第1のレーザー加工装置)と他のレーザー加工装置2(第2のレーザー加工装置)とにおいて、高さ位置z5(基準位置)から高さ位置z1(即ち、第1位置)までの距離は、共に所定距離Fであり、高さ位置z5(基準位置)から高さ位置z9(即ち、第2位置)までの距離は、共に所定距離Fである。
加工ステップ(S10)後、上述の撮像ステップ(S20)と同様に、他の被加工物11の上面11a側から他の被加工物11の加工領域を撮像することで、基準画像が得られる。
図8(A)に示す基準画像では、加工溝19-14(高さ位置z4)、19-15(高さ位置z5)及び19-16(高さ位置z6)が貫通溝であり、発光体38からの光は加工溝19-14、19-15及び19-16を通過している。これに対して、図8(B)に示す基準画像では、加工溝19-25(高さ位置z5)のみが貫通溝である。
オペレーターは、加工結果画像と基準画像とにおいて、例えば、貫通溝の数を比較する。基準画像の第1例を用いる場合、オペレーターは、図7(B)の加工結果画像と、図8(A)の基準画像とを比較する。また、基準画像の第2例を用いる場合、オペレーターは、図7(B)の加工結果画像と、図8(B)の基準画像とを比較する。
比較ステップ(S30)の後、加工結果画像と基準画像との比較結果が所定の条件を満たすかどうかを、例えば、オペレーターが判定する(判定ステップ(S40))。判定ステップ(S40)での所定の条件は、例えば、貫通溝の数が同じであるということである。
加工結果画像と基準画像との比較結果が所定の条件を満たす(例えば、貫通溝の数が同じである)場合(S40でYES)、加工結果画像を得たレーザー加工装置2と、基準画像を得たレーザー加工装置2との間には、差異が無いと見なすことができる。
図7(B)に示す加工結果画像と、図8(A)に示す基準画像の第1例とを比較する場合、両者の貫通溝の数は同じ(共に3本)であるので、所定の条件は満たされる。それゆえ、レーザービームLの集光点の形状及び大きさは調整されず、レーザービームLの調整は終了する。
これに対して、比較結果が所定の条件を満たさない(貫通溝の数が異なる)と判断された場合(S40でNO)、比較結果が所定の条件を満たす様に、集光状態調整ユニット60b(第1の集光状態調整ユニット)を調整する。これにより、レーザー加工装置2(第1のレーザー加工装置)が備えるレーザー発振器60a(第1のレーザー発振器)から出射されたレーザービームLの集光点の形状及び大きさの少なくともいずれかを変更する(変更ステップ(S50))。
図7(B)に示す加工結果画像と、図8(B)に示す基準画像の第2例とを比較する場合、両者の貫通溝の数は異なるので、所定の条件は満たされない。それゆえ、変更ステップ(S50)を行う。
変更ステップ(S50)では、例えば、オペレーターが、表示装置68を介して制御部70に指令を送る。そして、制御部70が上述の移動機構等の動作を制御することにより、第1レンズA1及び第2レンズA2間の距離、第1のシリンドリカルレンズB1と第2のシリンドリカルレンズB2間の距離等が調整される。
これにより、レーザービームLの集光点の大きさや形状が自動的に調整される。なお、S40で、加工結果画像と基準画像との比較結果が所定の条件を満たさないと判定された場合、オペレーターが指令を送ること無く、制御部70が、集光点の大きさや形状を自動的に調整してもよい。
但し、制御部70が集光点の大きさや形状を自動的に調整するようにレーザー加工装置2が構成されていない場合には、オペレーターが、手作業で、第1レンズA1及び第2レンズA2間の距離等を調整してもよい。
変更ステップ(S50)の後、他の被加工物11又は同じ被加工物11の未加工の領域を利用して、加工ステップ(S10)、撮像ステップ(S20)、比較ステップ(S30)及び判定ステップ(S40)を順次行う。判定ステップ(S40)でYESの場合、レーザービームLの調整は終了する。
しかし、判定ステップ(S40)でNOの場合、再び、変更ステップ(S50)、加工ステップ(S10)、撮像ステップ(S20)、比較ステップ(S30)及び判定ステップ(S40)を再度順次行う。このプロセスは、判定ステップ(S40)でYESとなるまで繰り返される。
本実施形態では、比較結果が所定の条件を満たす様に、集光状態調整ユニット60bを調整してレーザービームLの集光点の形状及び大きさの少なくともいずれかを変更するので、レーザー加工装置2間の差異を集光状態調整ユニット60bで吸収できる。
それゆえ、各レーザー加工装置2で集光レンズ64aの中心のZ軸方向の高さ位置を同じ高さ位置とすれば、どのレーザー加工装置2を使用しても同じ深さ(又は、同じ深さ及び同じ幅)の加工溝19を形成できる。
また、各レーザー加工装置2で、集光レンズ64aを所定の基準位置からZ軸方向に同じ移動距離だけ移動させれば、同じ所定深さの加工溝19を形成できる。それゆえ、Z軸方向の移動距離に対する被加工物11の加工溝の深さを示す回帰直線等のグラフを作成する必要もない。
なお、加工ステップ(S10)で形成される加工溝19は、線状の貫通溝に限定されない。例えば、レーザービームLのパルスの繰り返し周波数が10kHz、チャックテーブル32のX軸方向の移動速度が300mm/sの場合、線状の貫通溝ではなく、X軸方向に沿って離散的に並んだ複数の貫通孔が形成される。複数の貫通孔は、被加工物11を上面11a側から見た場合に、点線(ドットライン)状の貫通溝として視認される。
この様に、貫通溝が点線状の貫通溝となる場合、オペレーターは、比較ステップ(S30)で、例えば、加工結果画像と基準画像とにおいて発光体38からの光が通過する点線状の貫通溝のY軸方向の数を比較する。
ところで、画像比較部が比較する対象は、貫通溝の数に限定されない。画像比較部は、貫通溝の幅を比較してもよい。例えば、オペレーターは、加工結果画像及び基準画像において同じ高さ位置の集光器64により形成された貫通溝の幅同士を比較する。また、画像比較部は、貫通溝の数を比較した上で、更に、貫通溝の幅を比較してもよい。
なお、判定ステップ(S40)での所定の条件も、貫通溝の数が同じであることに限定されない。所定の条件は、加工結果画像及び基準画像において集光器64のZ軸方向の位置がそれぞれ同じ高さ位置に配置された貫通溝の幅同士が同じであることであってもよい。また、所定の条件は、貫通溝の数が同じであることに加えて、加工結果画像及び基準画像において同じ高さ位置の集光器64により形成された貫通溝の幅同士が同じであることであってもよい。
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るレーザー加工装置2の基本的な構成は、第1実施形態のレーザー加工装置2と同じである。それゆえ、第1実施形態のレーザー加工装置2と共通する構成要素には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、発光体38を有するチャックテーブル32に代えて、発光体38を有さないチャックテーブル82を用いる。チャックテーブル82の表面側には、可視光を透過させないポーラスセラミックス等の多孔質材料で形成された円盤形状のポーラス板(不図示)が設けられている。
ポーラス板はチャックテーブル82に形成された流路(不図示)を通じてエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引源が発生する負圧により、ポーラス板の表面(即ち、保持面82a)には吸引力が発生する。
次に、第2実施形態に係る調整方法について説明する。まず、チャックテーブル82で被加工物ユニット17を保持し、被加工物11(第1の被加工物)を加工する(加工ステップ(S10))。但し、第2実施形態の加工ステップ(S10)では、レーザービームLの出力等を調節し、被加工物11を貫通しない加工溝19(即ち、ハーフカット溝)を形成する。
加工溝19を形成する際には、集光器64(即ち、集光レンズ64a)のZ軸方向の位置を所定の高さ位置(例えば、上述の高さ位置Z1)とする。そして、被加工物11の上面11a側にレーザービームLを照射しながら、X軸移動ユニット20を用いて、集光器64に対してチャックテーブル82をX軸方向に移動させる。
次いで、集光レンズ64aのZ軸方向の位置を所定距離だけ上方に移動させ、且つ、Y軸方向に沿って所定距離だけチャックテーブル82を移動させた上で、X軸方向に沿う線状の加工溝19を形成する。同様にして、複数の加工溝19(即ち、加工領域)を上面11a側に順次形成する(図10(A)参照)。この様にして、例えば、集光器64のZ軸方向の高さ位置z1からz9に対応する、加工溝19-31から19-39が形成される。
複数の加工溝19-31から19-39を形成する際の集光レンズ64aのデフォーカス量のうち、加工溝19-31及び19-39を形成する際のデフォーカス量は最大である。それゆえ、加工溝19-31及び19-39の溝の幅(Y軸方向の長さ)は、複数の加工溝19のうちで最も広くなり、加工溝19-31及び19-39の溝の深さは、複数の加工溝19のうちで最も浅くなる。
加工溝19-32及び19-38を形成する際のデフォーカス量は、加工溝19-31及び19-39を形成する場合に比べて小さい。それゆえ、加工溝19-32及び19-38の溝の幅は、加工溝19-31及び19-39よりも狭くなり、加工溝19-32及び19-38の溝の深さは、加工溝19-31及び19-39よりも深くなる。
同様に、加工溝19-33及び19-37を形成する際のデフォーカス量は、加工溝19-32及び19-38を形成する場合に比べて小さい。それゆえ、加工溝19-33及び19-37の溝の幅は、加工溝19-32及び19-38よりも狭くなり、加工溝19-33及び19-37の溝の深さは、加工溝19-32及び19-38よりも深くなる。
また、加工溝19-34及び19-36を形成する際のデフォーカス量は、加工溝19-33及び19-37を形成する場合に比べて小さい。それゆえ、加工溝19-34及び19-36の溝の幅は、加工溝19-33及び19-37よりも狭くなる。
また、加工溝19-34及び19-36の溝の深さは、加工溝19-33及び19-37よりも深くなる。但し、加工溝19-34及び19-36は非貫通溝であり、加工溝19-34及び19-36の底部は、被加工物11の下面11bには達しない。
加工溝19-35を形成する際のデフォーカス量は、ゼロ(即ち、複数の加工溝19のうち最小)である。それゆえ、加工溝19-35の溝の幅は、複数の加工溝19-31から19-39の幅のうちで最小となる。但し、第2実施形態では、加工溝19-35が非貫通溝となり、加工溝19-35の底部が被加工物11の下面11bに達しない。
加工ステップ(S10)の後、保持面82aで被加工物11を保持した状態で複数の加工溝19を上面11a側から撮像する(撮像ステップ(S20))。撮像ステップ(S20)では、撮像ユニット66の近傍に配置された照明装置(不図示)から上面11a側に光を照射し、その反射光を撮像ユニット66で撮像する。
これにより、被加工物11の加工結果画像を得る。図10(A)は、第2実施形態に係る加工後の被加工物11を上面側から撮像する様子を示す図であり、図10(B)は、第2実施形態に係る被加工物11の加工領域の画像(即ち、加工結果画像)の例である。
撮像ステップ(S20)の後、例えば、オペレーターが、予め得られた基準画像と加工結果画像とを比較する(比較ステップ(S30))。オペレーターは、例えば、加工結果画像と基準画像とにおいて明度が所定値以下の加工溝19(即ち、非貫通溝)の数を比較する。
図10(B)に示す様に、比較的浅い加工溝19-31及び19-39では、明度は高くなり、画像では明るく表示される。これに対して、比較的深い加工溝19-35では、明度は低くなり、画像では暗く表示される。
比較ステップ(S30)の後、例えば、オペレーターが、加工結果画像と基準画像との比較結果が所定の条件を満たすかどうかを判定する(判定ステップ(S40))。第2実施形態の判定ステップ(S40)の所定の条件は、加工結果画像のうち明度が所定値G以下の非貫通溝の数が、基準画像のうち明度が所定値G以下の非貫通溝の数と同じであることである。なお、明度が所定値G以下の加工溝19の数が同じか否かを判定することは、明度が所定値Gよりも大きい加工溝19の数が同じか否かを判定することでもある。
比較結果が所定の条件を満たす場合(S40でYES)、加工結果画像を得たレーザー加工装置2と、基準画像を得た他のレーザー加工装置2との間には、差異が無いと見なすことができる。それゆえ、レーザービームLの集光点の形状及び大きさは調整されず、レーザービームLの調整は終了する。
これに対して、比較結果が所定の条件を満たさないと判断された場合(S40でNO)、比較結果が所定の条件を満たす様に、集光状態調整ユニット60b(第1の集光状態調整ユニット)を調整する。これにより、レーザー発振器60a(第1のレーザー発振器)から出射されたレーザービームLの集光点の形状及び大きさの少なくともいずれかを変更する(変更ステップ(S50))。
変更ステップ(S50)では、例えば、オペレーターが、表示装置68を介して制御部70に指令を送る。そして、制御部70がビームエキスパンダ60b-1及びビーム形状修正ユニット60b-2の少なくともいずれかを自動的に調整する。
なお、オペレーターが指令を送ることなく、制御部70が、加工結果画像と基準画像との差異に基づいて、ビームエキスパンダ60b-1及びビーム形状修正ユニット60b-2の少なくともいずれかを自動的に調整してもよい。また、オペレーターが、手作業で、ビームエキスパンダ60b-1及びビーム形状修正ユニット60b-2の少なくともいずれかを調整してもよい。
次いで、変更ステップ(S50)の後、判定ステップ(S40)でYESとなるまで、加工ステップ(S10)、撮像ステップ(S20)、比較ステップ(S30)及び判定ステップ(S40)は繰り返される。
ところで、比較ステップ(S30)で比較する対象は、明度が所定値G以下の非貫通溝の数に限定されない。明度が所定値G以下の非貫通溝の幅が比較されてもよい。例えば、オペレーターは、加工結果画像及び基準画像において同じ高さ位置の集光器64により形成された非貫通溝の幅同士を比較する。また、オペレーターは、明度が所定値G以下の非貫通溝の数を比較した上で、更に、非貫通溝の幅を比較してもよい。
また、判定ステップ(S40)で採用される所定の条件は、明度が所定値G以下の非貫通溝の数が同じであることに限定されない。所定の条件は、加工結果画像及び基準画像において同じ高さ位置の集光器64により形成された非貫通溝の幅同士が同じであることであってもよい。また、所定の条件は、明度が所定値G以下の非貫通溝の数が同じであることに加えて、加工結果画像及び基準画像において同じ高さ位置の集光器64により形成され非貫通溝の幅同士が同じであることであってもよい。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、制御部70が、基準画像と加工結果画像とを比較する画像比較部(不図示)を有する場合、制御部70が比較ステップ(S30)を行ってよい。この場合、画像比較部は、例えば、上述の記憶装置に記憶された画像を比較するプログラムである。
また、制御部70が、画像比較部で比較された2つの画像が所定の条件を満たすか否か判定する判定部(不図示)を有する場合、制御部70が判定ステップ(S40)を行ってよい。この場合、判定部も、例えば、上述の記憶装置に記憶された所定の条件を満たすか否かを判定するプログラムである。