JP7207663B2 - 分析チップ - Google Patents
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Description
また、抗原を定量する方法としては、競合法も知られている。競合法とは、分析対象となる溶液中に含まれる被験物質である抗原と、標識が固定された抗体とを抗原抗体反応させ、次いでこのとき発生した未反応の標識が固定された抗体を定量する方法である。
特許文献1には、コロイド金属粒子で標識した少なくとも1つの試薬と、少なくとも1つの電極、及び、前記コロイド金属粒子を化学的に溶解するための試薬を含むイムノアッセイ法が開示されている。この特許文献1に開示されているイムノアッセイ法では、標識であるコロイド金属粒子を化学的に溶解し、次いでその金属の溶液を電極に移して還元して、還元した金属を電極に堆積させた後、その電極の表面に堆積した金属を電気的に再溶解させ、その再溶解後に現れるボルタンメトリーピークを解析することによって、その金属の量を測定する。
図1は、第1実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における断面模式図である。以下において、平面模式図は、基板の面直方向から平面視したときの模式図である。図1(a)において、位置関係をわかりやすくするために、隠れていて見えない部分も点線で描いている。
図1に示す分析チップ100は、被検物質を含む液体を流すための、平均孔径が15μm以上1000μm以下の多数の孔を有する多孔体流路10と、多孔体流路10の内部(より具体的には、多孔体流路10の表面の10aの反対側の主面10b)に配置する、作用電極21、参照電極22及び対極23を有する検出部20と、を備える。
図1に示す分析チップ100は、作用電極21、参照電極22及び対極23を支持する支持体として、多孔体流路10の表面の10aの反対側の主面10bに基板11を備える例である。
図1に示す分析チップ100においては、多孔体流路10の左端(第1端)10Aが被検物質を含む液体を導入する導入口である。また、検出部20を挟んで左端(第1端)10Aとは反対側の右端(第2端)10Bを出口とすることができる。
ELISA等では操作が複雑であるが、本発明の分析チップは操作が簡単である。
多孔体流路10は、平均孔径が15μm以上1000μm以下の多数の孔を有する多孔体材料からなる。
本発明もおける多孔体流路はそれ自体、単独で流路なるものでもよいし、溝を形成した基板同士を貼り合わせる等して形成した流路に多孔体材料を詰め込んで多孔体流路を形成してもよい。
ここで、本明細書において、「平均孔径」とは、バブルポイント法により得られた平均孔径を意味する。バブルポイント法により平均孔径を得る方法は例えば、特許文献3に記載されている。このバブルポイント法を用いると、まず、測定対象となる多孔体流路の膜をよく濡らす液体(例えば、イソプロピルアルコール)を予めその膜の細孔内に吸収させておき、特許文献3の図1に示されているような器具に設置し、その膜の裏側から空気圧をかけて、その膜の表面に気泡の発生が観察できる最小圧力(バブルポイント)を測定し、液体の表面張力とバブルポイントとの関係式(1)、
孔径=4γcosθ/ΔP (1)
から孔径分布を推算する。
なお、関係式(1)において、γは液体の表面張力を表し、θは多孔体流路材料上の液体の接触角を表し、ΔPはバブルポイント圧を表す。
次に孔径分布のグラフから平均孔径を算出する。
親水性の多孔体とは、親水性をもつ高分子の不織布、スポンジ、繊維などである。親水性は、高分子に保有される水酸基、カルボキシル基、エーテル基、アミノ基、アミン基、ペプチド基、イソシアネート基、メルカプト基などの親水性の官能基によりもたらされる。親水性をもつ高分子の不織布、スポンジ、繊維などは、特に限定されないが、例えば、レーヨン不織布、アクリル不織布、ポリビニルアルコール不織布、ポリアミド不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、ポリウレタン不織布、カルボキシメチルセルロース不織布、発砲ウレタン樹脂、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、カルボキシメチルセルロース繊維、ポリアクリル酸塩樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、セルロース繊維、などが挙げられる。中でもリビニルアルコール不織布、アセタール化して水不溶化されたポリビニルアルコール不織布、デンプン-アクリロニトリル系グラフト重合樹脂を用いた繊維や不織布、デンプン-アクリル酸系グラフト重合樹脂を用いた繊維や不織布、ビニルアルコール-アクリル酸共重合体を用いた繊維や不織布など、が好ましい。
検出部20は、作用電極21、参照電極22及び対極23を有する。図1に示す分析チップ100では、検出部20は多孔体流路10の内部に配置するが、多孔体流路10の表面10aに備えてもよい。
液溜め部30は、多孔体流路10の表面10aに、被検物質を含む液体が検出部20を通過した後に、被検物質を含む液体を保持できる液溜め部30を備える。
図1に示す分析チップ100では、液溜め部30は多孔体流路10の表面10aに備えるが、多孔体流路10の内部に備えてもよい。
そのような材料としては例えば、アクリル酸ナトリウムに代表される高吸収ポリマーや、前記多抗体に用いた不織布やスポンジなどが挙げられる。
基板11は、作用電極12、対極13及び参照電極14を支持する支持体である。
基板11は、分析チップとしての使用に耐え得る物理的強度を有し、被検物質を含む液体により物理的・化学的損傷を受けなければよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、ポリエチレンオキシド、テフロン(登録商標)などの一般的な高分子が好ましい。環境調和の面からは、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂などの生分解プラスチックでも、上記条件を備えれば用いることができる。
電極支持体60は、基板11と同様の材料を用いることができる。
図2は、第2実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における断面模式図である。図2(a)において、位置関係をわかりやすくするために、隠れていて見えない部分も点線で描いている。
第1実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
本実施形態において、酸化還元が可能あるいは酸化還元反応を促進する標識は、電子を放出することで酸化が可能であるか、電子を受容することで還元が可能であるか、どちらかあるいは両方が可能か、他の酸化還元物質の酸化還元を促進する酵素や触媒であり、かつ二次抗体に固定されている化学物質を意味する。二次抗体と酸化還元が可能あるいは酸化還元反応を促進する標識とを固定化させる方法としては、特に制限はなく、物理吸着、化学吸着、水素結合、イオン結合、共有結合等を用いることができる。酸化還元が可能あるいは酸化還元反応を促進する標識は、酵素、金属錯体および金属ナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
図3は、第3実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における断面模式図である。図3(a)において、位置関係をわかりやすくするために、隠れていて見えない部分も点線で描いている。
第1実施形態又は第2実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態又は第2実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
また、図示しないが、第1基板には多孔体流路が配設される溝が形成されており、多孔体流路の少なくとも一部は溝内に配設されている。
また第1基板112についても、図2に示した基板11と同様の材料の基板を用いることができる。
図3に示す分析チップ300では、第1基板111Aにのみ、多孔体流路10が配設される溝を備える構成としたが、第1基板112も第1基板111Aと共に、多孔体流路10が配設される溝を備える構成としてもよい。
第1基板111Aと第1基板112とは、多孔体流路10を挟まない部分同士を接着剤によって接着してもよい。
また、第1基板と第2基板の間に流路を形成するための第3基板を挟んだものとしてもよい。
撥水性通気膜50は、多孔体流路10内にある空気を、液だめ部30を介して外部へ放出するためのものである。
撥水性通気膜50としては、水(液体)を通さず、気体だけを通過する膜であれば特に限定されることなく使用できる。撥水性を持つ有機ポリマーの多孔質膜、特に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、あるいは例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの多孔質膜、またこのような多孔質膜を多孔質高分子基材としてその骨格を撥水性有機ポリマーで被覆した連続多孔質膜などを用いることができる。
ここで、撥水性通気膜における撥水性とは、水滴が膜に接する際に、その接する膜上で濡れ広がらないことを意味し、膜の撥水性の高低は、その膜材料表面の液滴(純水)の接触角を測定することにより判定することができる。撥水性通気膜50構成する材料の撥水性は、液だめ部30を構成する材料の撥水性よりも高い。
図4は、第4実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における断面模式図である。図4(a)において、位置関係をわかりやすくするために、隠れていて見えない部分も点線で描いている。
第1実施形態~第3実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態~第3実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
図5は、第5実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における断面模式図であり、(c)は、(a)のY-Y線における断面模式図である。図5(a)において、位置関係をわかりやすくするために、隠れていて見えない部分も点線で描いている。
第1実施形態~第4実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態~第4実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
図6は、第6実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は、多孔体流路とその上に形成された検出部及びリード線とを平面視した平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における分析チップの断面模式図である。
第1実施形態~第5実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態~第5実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
また、多孔体流路10の表面10aの反対側の面10bに、被検物質を含む液体が検出部20を通過した後に保持される液溜め部130を備える。
また、多孔体流路10の第2端10B側に、リード線221a、222a、223aを支持すると共にコネクタと接触する支持体140を備える。支持体140の材料としては、基板11と同様の材料のものを用いることができる。
第3基板13は、図2に示した基板11と同様の材料の基板を用いることができる。
図7は、第7実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は、多孔体流路とその上に形成された検出部及びリード線とを平面視した平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における分析チップの断面模式図である。
第1実施形態~第6実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態~第6実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
図8は、第8実施形態にかかる分析チップの模式図であり、(a)は、多孔体流路とその上に形成された検出部及びリード線とを平面視した平面模式図であり、(b)は、(a)のX-X線における分析チップの断面模式図である。
第1実施形態~第7実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態~第7実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
本発明における複数の分析方法の例を以下に示す。
第一の分析方法では次の様になる。本発明の分析チップにおける導入口に被検物質を含む液体を接触させる。すると、外部からポンプ等の動力を必要とすることなく、被検物質を含む液体は多孔体流路を備える流路に導入される。次に、予めその流路内に設置された酸化還元が可能あるいは酸化還元反応を促進する標識が固定されている被検物質に特異的に結合する二次抗体(抗体-標識)に、被検物質を含む液体が達すると、被検物質とその抗体は抗原抗体反応を起こし、被検物質-抗体-標識の複合体を形成する。ここでは、全ての抗体が被検物質と抗原抗体反応するわけではなく、未反応の二次抗体-標識も共存する。更に、被検物質を含む液体は当該流路を進み、当該流路内に作用電極と参照電極と対極を有する検出機構を有する検出部に達する。検出部においては、作用電極表面に予め一次抗体が固定されている。この一次抗体と当該被検物質-抗体-標識の複合体が抗原抗体反応し、作用電極-一次抗体-被検物質-二次抗体-標識の複合体(いわゆるサンドイッチ法)を形成して作用電極に固定される。未反応の二次抗体-標識はそのまま被検物質を含む液体によって移動し、ついには流路を移動した後に液だめ部に保持され、作用電極表面からは除かれる。ここで液だめ部には外気の間に撥水性多孔膜(撥水性通気膜)があるため、予め多孔体を含む流路内にある空気は流路内から外部へ放出される。最後に、作用電極-一次抗体-被検物質-二次抗体-標識の複合体が固定された作用電極に電位操作を行い、標識を電気化学的に酸化あるいは酸化の後に電気化学的に還元し、そのとき作用電極と対極間に流れる酸化電流値あるいは還元電流値を計測する。この電流値は、被検物質の濃度に正の相関がある。
(1)分析チップの作製
図7に示すような分析チップを作製した。第1基板、第2基板及び第3基板としては、ポリスチレン製のものを用いた。多孔体流路としてはレーヨン不織布(エフスリー社製ホワイトシーツ)を幅8mm、長さ100mmに切り出して用いた。検出部と多孔体流路の第2端との間の、多孔体流路の検出部を備える主面の反対側の主面に、ポリエステル不織布(セイワ・プロ社製カラーフェルト白)を幅8mm、長さ50mmに切り出して液だめ部として備えた。液だめ部と外気の間に撥水性通気膜として、孔径5μmのフッ素樹脂多孔膜(ポアフロン、住友電工社製)を備える。
作用電極、対極とリード線にカーボンペーストのスクリーン印刷により作成したカーボン膜、参照電極にペースト化したAg/AgClのスクリーン印刷により作成したAg/AgCl膜を用いたセンサチップを用意した。このセンサチップの作用電極(電極面積S=0.0962cm2)に、一次抗体として未標識の抗ヤギIgG抗体を固定して、作用電極の表面に一次抗体が固定されている一次抗体付き分析チップを作製した。
田中貴金属株式会社製の平均粒子径18nmの金ナノ粒子分散液を用いた。この金ナノ粒子と、オボアルブミン(OA、グレードIII)と、抗ヤギIgG抗体と、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)と、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウラート(Tween20、非イオン系界面活性剤)を混合し、金ナノ粒子の表面に、抗ヤギIgG抗体(二次抗体)を固定した二次抗体付き金ナノ粒子分散液を作製した。二次抗体付き金ナノ粒子分散液の金ナノ粒子の濃度は0.007質量%とした。抗ヤギIgG抗体としては、Jackson Immunoresearch Laboratories社から市販されているポリクローナル抗体を使用した。
抗原分析用試料として、下記に示すように抗原濃度がそれぞれ異なるNo.1~No.6を用意した。下記のNo.1~No.6は、0.1%のTween20を含むPBS緩衝液と、ヤギIgG(抗原)とを抗原濃度が下記の濃度となるように混合することによって調製した。
No.1:抗原濃度=0.001ng/mL
No.2:抗原濃度=0.01ng/mL
No.3:抗原濃度=0.1ng/mL
No.4:抗原濃度=1ng/mL
No.5:抗原濃度=10ng/mL
No.6:抗原濃度=100ng/mL
分析チップの多孔体流路の導入口を、被検物質を含む液体である抗原分析用試料に接触させると、試料は多孔体流路に吸収されて移動し、予め設置された金ナノ粒子標識抗体と混合した。このとき、試料に含まれる被検物質である抗原と、金ナノ粒子標識抗体の間では抗原抗体反応が行われた。その後、試料は分析チップ内の多孔体流路に吸収され続けて移動し、抗体を固定した作用電極に達した。このとき、金ナノ粒子標識抗体-抗原の複合体は、作用電極に固定された抗体と、抗原抗体反応して、作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体を形成した。更に、試料は分析チップ内の多孔体流路に吸収され続けて移動し、ついに多孔体流路を移動した後に保持される液だめ部に達した。この時、作用電極上では作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体として作用電極に固定されなかった抗原-抗体-金ナノ粒子複合体や抗原と反応しなかった金ナノ粒子標識抗体などは、試料によって移動させられる。この結果、作用電極上には、作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体が残留した。
なお、分析チップ内の流路に設置された多孔体流路は、被検物質を含む液体である抗原分析用試料を毛細管現象によって吸収した。また、液だめ部と外気の間に設置された撥水性通気膜を通じて、分析チップ流路内の空気は流路外に出されるため、試料は分析チップ内の流路に設置された多孔体流路に吸収され続けて移動した。
(1)分析チップの作製
センサチップの作用電極(電極面積S=0.0962cm2)に、被検物質である抗原として8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)―BSAコンジュゲートを固定して、作用電極の表面に抗原が固定した以外は、実施例1と同様にして、抗原付き分析チップを作製した。
平均粒子径は40nmの田中貴金属株式会社製の金ナノ粒子を用意した。金ナノ粒子と、オボアルブミン(OA、グレードIII)と、抗8-ヒドロキシデオキシグアノシン(抗8-OHdG)抗体と、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)と、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウラート(Tween20、非イオン系界面活性剤)を混合し、金ナノ粒子の表面に、抗8-OHdG抗体(二次抗体)を固定した二次抗体付き金ナノ粒子分散液を作製した。二次抗体付き金ナノ粒子分散液の金ナノ粒子の濃度は0.007質量%とした。抗8-OHdG抗体としては、IMMUNDIAGNOSTIK GMBH社から市販されているモノクローナル抗体AA1005.1を使用した。実施例1と同様にして、多孔体流路の図1に示す位置に10μL設置した。
抗原分析用試料として、下記に示すように抗原濃度がそれぞれ異なるNo.1~No.6を用意した。下記のNo.1~No.6は、0.1%のTween20を含むPBS緩衝液と、8-OHdG(抗原)とを抗原濃度が下記の濃度となるように混合することによって調製した。
No.1:抗原濃度=0.01ng/mL
No.2:抗原濃度=0.1ng/mL
No.3:抗原濃度=1ng/mL
No.4:抗原濃度=10ng/mL
No.5:抗原濃度=100ng/mL
No.6:抗原濃度=1000ng/mL
分析チップの多孔体流路の導入口を、被検物質を含む液体である抗原分析用試料に接触させると、試料は多孔体流路に吸収されて移動し、金ナノ粒子標識抗体と混合した。このとき、試料に含まれる抗原と、金ナノ粒子標識抗体の間では抗原抗体反応が行われた。その後、試料は分析チップ内の多孔体流路に吸収され続けて移動し、抗原を固定した作用電極に達した。このとき、抗原と抗原抗体反応をしなかった金ナノ粒子標識抗体は、作用電極に固定された抗体と、抗原抗体反応して、作用電極-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体を形成した。更に、試料は分析チップ内の多孔体流路に吸収され続けて移動し、ついに流路を移動した後に保持される液だめ部に達した。この時、作用電極上では作用電極-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体として作用電極に固定されなかった抗原-抗体-金ナノ粒子複合体や金ナノ粒子標識抗体と抗原抗体反応しなかった試料に含有される抗原などは、試料によって移動させられる。この結果、作用電極上には、作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体が残留した。
なお、分析チップ内の流路に設置された多孔体流路は、被検物質を含む液体である抗原分析用試料を毛細管現象によって吸収した。また、液だめ部と外気の間に設置された撥水性通気膜を通じて、分析チップ流路内の空気は流路外に出されるため、試料は分析チップ内の流路に設置された多孔体流路に吸収され続けて移動した。
(1)分析チップの作製
図8に示すような分析チップを作製した。第1基板、第2基板及び第3基板としては、ポリスチレン製のものを用いた。多孔体流路としてはポリエステル不織布を用いた。その他は、実施例1の部材と同様の部材を用いた。
作用電極、対極とリード線に導電性DLC膜、参照電極にペースト化したAg/AgClのスクリーン印刷により作成したAg/AgCl膜を用いたセンサチップを用意した。このセンサチップの作用電極(電極面積S=0.0962cm2)に、一次抗体として未標識の抗ヤギIgG抗体を固定して、作用電極の表面に一次抗体が固定されている一次抗体付き分析チップを作製した。
田中貴金属株式会社製の平均粒子径18nmの金ナノ粒子分散液を用いた。この金ナノ粒子と、オボアルブミン(OA、グレードIII)と、抗ヤギIgG抗体と、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)と、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウラート(Tween20、非イオン系界面活性剤)を混合し、金ナノ粒子の表面に、抗ヤギIgG抗体(二次抗体)を固定した二次抗体付き金ナノ粒子分散液を作製した。二次抗体付き金ナノ粒子分散液の金ナノ粒子の濃度は0.007質量%とした。抗ヤギIgG抗体としては、Jackson Immunoresearch Laboratories社から市販されているポリクローナル抗体を使用した。
抗原分析用試料として、下記に示すように抗原濃度がそれぞれ異なるNo.1~No.6を用意した。下記のNo.1~No.6は、0.1%のTween20を含むPBS緩衝液と、ヤギIgG(抗原)とを抗原濃度が下記の濃度となるように混合することによって調製した。
No.1:抗原濃度=0.001ng/mL
No.2:抗原濃度=0.01ng/mL
No.3:抗原濃度=0.1ng/mL
No.4:抗原濃度=1ng/mL
No.5:抗原濃度=10ng/mL
No.6:抗原濃度=100ng/mL
分析チップの導入口を、被検物質を含む液体である抗原分析用試料に接触させると、試料は多孔体流路に吸収されて移動し、予め設置された金ナノ粒子標識抗体と混合した。このとき、試料に含まれる被検物質である抗原と、金ナノ粒子標識抗体の間では抗原抗体反応が行われた。その後、試料は分析チップ内の多孔体流路に吸収され続けて移動し、抗体を固定した作用電極に達した。このとき、金ナノ粒子標識抗体-抗原の複合体は、作用電極に固定された抗体と、抗原抗体反応して、作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体を形成した。更に、試料は分析チップ内の多孔体流路に吸収され続けて移動し、ついに流路を移動した後に保持される液だめ部に達した。この時、作用電極上では作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体として作用電極に固定されなかった抗原-抗体-金ナノ粒子複合体や抗原と反応しなかった金ナノ粒子標識抗体などは、試料によって移動した。この結果、作用電極上には、作用電極-抗体-抗原-抗体-金ナノ粒子の複合体が残留した。
ここで試料溶液は第1多孔体流路の端部に至り、その移動は停止した。従って、作用電極上で抗原抗体反応時間を調整することができる。ここでは30分間の抗原抗体反応時間を確保し、次いで、第2多孔体流路を第1多孔体流路に接続すると試料溶液は第2多孔体流路に移動し、液だめ部に達した。その間、未反応の金ナノ粒子標識抗体は作用電極表面から離れるため、あたかも作用電極表面は試料溶液によって洗浄された。
なお、分析チップ内の流路に設置された多孔体流路は、被検物質を含む液体である抗原分析用試料を毛細管現象によって吸収した。また、液だめ部と外気の間に設置された撥水性通気膜を通じて、分析チップ流路内の空気は流路外に出されるため、試料は分析チップ内の流路に設置された多孔体流路に吸収され続けて移動した。
流路に、GEヘルスケア社製ニトロセルロースFF80HPを用いて実施例1と同様の方法で試料中の被検物質の電気化学的検出を試みたが、ピーク電流を観測することができなかった。
20、120、220 検出部
21、121、221 作用電極
22、122、222 参照電極
23、123、223 対極
30 液だめ部
40 標識抗体配置部
50 撥水性通気膜
100、200、300、400、500、600、700、800 分析チップ
Claims (11)
- 被検物質を含む液体を流すための多数の孔を有する多孔体流路と、
前記多孔体流路の内部又は表面に配置する、作用電極、参照電極及び対極を有する検出部と、を備え、
前記作用電極、前記対極、前記参照電極がその端部に設置された第1多孔体流路と、前記第1多孔体流路と接触しない第2多孔体流路とを備え、前記作用電極上で抗原抗体反応時間を調整した後、前記第2多孔体流路を前記第1多孔体流路に接続させることができる、分析チップ。 - 前記多孔体流路を構成する多孔体が親水性をもつ高分子の不織布からなる、請求項1に記載の分析チップ。
- 前記多孔体流路の内部又は表面に、前記被検物質を含む液体が前記検出部を通過した後に、前記被検物質を含む液体を保持できる液だめ部を備える、請求項1又は2のいずれかに記載の分析チップ。
- 前記液だめ部と外気の間に撥水性通気膜を備える、請求項3に記載の分析チップ。
- 前記多孔体流路及び前記検出部を挟み込むように配置する、第1基板及び第2基板を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の分析チップ。
- 前記第1基板及び前記第2基板の一方又は両方に溝が形成され、前記第1基板及び前記第2基板が貼り合わせて前記溝からなる保持路に前記多孔体流路が配設されている、請求項5に記載の分析チップ。
- 酸化還元が可能あるいは酸化還元反応を促進する標識が固定されていると共に被検物質に特異的に結合する抗体が、前記多孔体流路の内部又は表面に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の分析チップ。
- 前記酸化還元が可能あるいは酸化還元反応を促進する標識が、酵素、金属錯体および金属ナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項7の分析チップ。
- 前記作用電極に、被検物質と特異的に結合する抗体が固定されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の分析チップ。
- 前記作用電極に、被検物質が固定されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の分析チップ。
- 前記作用電極が、カーボン電極、貴金属電極、導電性ダイヤモンド電極または導電性ダイヤモンド様炭素電極であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の分析チップ。
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