以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。なお各実施の形態において、同一または対応する構成要素については同一の符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る有機薄膜トランジスタ100を示す概略断面図であり、図2は、本発明の第2の実施の形態に係る有機薄膜トランジスタ101を示す概略断面図である。なお、図1、図2には、概略断面図の点線で囲んだ領域を拡大した拡大図も示している。
有機薄膜トランジスタ100、101は、絶縁性の基板1と、ゲート電極2と、ゲート絶縁層3と、ソース電極4と、ドレイン電極5と、半導体層6とを少なくとも備えている。
図1に示すように、有機薄膜トランジスタ100は、基板1上にゲート電極2が形成されており、ゲート電極2上にゲート絶縁層3が形成されており、ゲート絶縁層3上にソース電極4およびドレイン電極5、そして半導体層6が形成されている。
図2に示すように、有機薄膜トランジスタ101は、基板1上にソース電極4、ドレイン電極5、および半導体層6が形成され、その上にゲート絶縁層3が形成されており、ゲート絶縁層3上にゲート電極2が形成されている。
ソース電極4およびドレイン電極5は、それぞれ第一の金属材料4a、5aおよび第二の金属材料4b、5bを含み、第一の金属材料4a、5aにより形成される層の上を粒子状の第二の金属材料4b、5bが覆っており、図1、図2の拡大図に示すように、第二の金属材料4b、5bの被覆率は電極パターンの少なくとも半導体層6が接する端部の方が中心部よりも高くなっている。なお、以下の説明では、第一の金属材料4a、5aにより形成される層は、単に第一の金属材料4a、5aと呼ぶ。また、第二の金属材料4b、5bにより形成される粒子や層も、単に第二の金属材料4b、5bと呼ぶ。
ソース電極4、ドレイン電極5をこのように構成することで、高い仕事関数を有するソース電極4およびドレイン電極5とすることが可能であり、正孔の注入障壁が小さくなるため、良好な特性の薄膜トランジスタ素子を得ることができる。また、第二の金属材料4b、5bを粒子状に形成することで、ソース電極4、ドレイン電極5の表面に凹凸を設けることができる。このため、ソース電極4、ドレイン電極5の表面積が大きくなり、半導体層6との接触面積を大きくすることができ、凹凸により半導体層6の印刷性および密着性を向上させることができる。
有機薄膜トランジスタ100と有機薄膜トランジスタ101との相違点は、ゲート電極2およびゲート絶縁層3が半導体層6の下層に配置されるか、上層に配置されるかの違いである。
また、有機薄膜トランジスタ100および有機薄膜トランジスタ101には、半導体保護層(図示せず)を設けることが可能である。
さらに有機薄膜トランジスタ100および101を用いて、画像表示装置やセンサーなどの電子装置とする際には、図示しない層間絶縁膜や画素電極、センサー電極、対向電極、第2の基板などを設けることにより電子装置とすることができるが、作製する電子装置の種類により、これらの構造は適宜変更することができる。
以下、有機薄膜トランジスタ100および有機薄膜トランジスタ101の各構成要素について、有機薄膜トランジスタ100の製造方法を例にして説明する。
初めに、基板1を準備する。基板1の材料としては、ポリカーボネート、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂、耐候性ポリエチレンテレフタレート、耐候性ポリプロピレン、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ガラス、石英ガラスなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を積層した複合の基板1として使用することもできる。
基板1が有機物フィルムである場合は、有機薄膜トランジスタ100、101の耐久性を向上させるために透明のガスバリア層(図示せず)を形成することもできる。ガスバリア層の材料としては酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、酸化窒化珪素(SiON)、炭化珪素(SiC)およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これらのガスバリア層は2層以上積層して使用することもできる。ガスバリア層は有機物フィルムを用いた基板1の片面だけに形成してもよいし、両面に形成しても構わない。ガスバリア層は真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、ホットワイヤーCVD法およびゾル-ゲル法などを用いて形成することができるが本発明ではこれらに限定されるものではない。
次に、基板1上に、ゲート電極2を形成する。ゲート電極2、ソース電極4、ドレイン電極5は、電極部分と配線部分とが明確に分かれている必要はなく、以下では特に各有機薄膜トランジスタ100、101の構成要素として電極と呼称している。
ゲート電極2には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
ゲート電極2の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェット成膜法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
次に、ゲート電極2上にゲート絶縁層3を形成する。ゲート絶縁層3は、ゲート電極2と、ソース電極4およびドレイン電極5などの電極とを電気的に絶縁するために、少なくともゲート電極2上に設けられるが、ゲート電極2の外部およびその他の電極との接続に使用される配線部を除いて基板1上の全面に設けても良い。
ゲート絶縁層3には、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ハフニウム(HfOx)などの酸化物系絶縁材料や窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiON)や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)などの有機系絶縁材料などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単層または2層以上積層してもよいし、無機系-有機系のハイブリッド薄膜としても良いし、成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。また、ゲート絶縁層3の表面に自己組織化単分子膜などによる表面処理を施し、ゲート絶縁層3の表面エネルギーを制御することもできる。
ゲート絶縁層3は、有機薄膜トランジスタ100、101におけるリーク電流を抑えるために、その抵抗率が1011Ωcm以上、より好ましくは1014Ωcm以上であることが望ましい。
次に、ソース電極4およびドレイン電極5を形成する。ソース電極4およびドレイン電極5は、それぞれ離間して形成されており、ソース電極4とドレイン電極5とをそれぞれ別の工程および別の材料で形成しても良いが、ゲート絶縁層3上の同層に形成される場合には、ソース電極4およびドレイン電極5を同時に形成することが好ましい。
ソース電極4およびドレイン電極5は、少なくとも第一の金属材料4a、5aおよび第二の金属材料4b、5bからなり、第二の金属材料4b、5bは第一の金属材料4a、5aよりも標準電極電位が大きい金属材料からなり、第一の金属材料4a、5a上に粒子状に形成される。
ソース電極4およびドレイン電極5の第二の金属材料4b、5bは、半導体層6との接触抵抗値を低減し、良好なトランジスタ特性を得るため、ソース電極4およびドレイン電極5の少なくとも半導体層6が接する端部における第二の金属材料4b、5bの被覆率がソース電極4およびドレイン電極5の中心部(端部以外の領域)よりも高く形成されている。特に、ソース電極4およびドレイン電極5のパターン端部から1μmの領域においては、ソース電極4およびドレイン電極5と半導体層6とが接するため、第二の金属材料4b、5bの被覆率が50%以上であることが好ましい。
また、第二の金属材料4b、5bで被覆されているソース電極4およびドレイン電極5の端面(傾斜面)の形状は、半導体層6の印刷性や素子特性の観点から、図1、図2の拡大図に示すように順テーパー形状で形成される。これにより、順テーパー形状を備えない場合と比較して、ソース電極4およびドレイン電極5のそれぞれと半導体層6とが接する面積を広くできるため、より確実にソース電極4およびドレイン電極5と半導体層6とを接続することができる。その端面形状については、順テーパー形状の角度である傾斜角θ(ソース電極4の端面と基板1に平行な面とがなす鋭角およびドレイン電極5の端面と基板1に平行な面とがなす鋭角の角度)が0度より大きく80度以下であることが好ましい。
(被覆率の測定)
被覆率の測定には、(株)日立ハイテクサイエンス製の走査型プローブ顕微鏡(AFM5400L)を用いて行った。上記第二の金属材料4b、5bで形成された金属粒子が存在する、ドレイン電極5、ソース電極4の任意の表面を測定することで、第一の金属材料4a、5a上に形成された第二の金属材料4b、5bの被覆率を算出した。具体的には、走査型プローブ顕微鏡の視野全体にドレイン電極5、ソース電極4の例えば、1μm四方~5μm四方程度を捉えて電極表面を測定した平面画像を2値化することで算出することが可能である。例えば、金属粒子を白、金属粒子のない部分を黒とし、それぞれの面積を算出する。
2値化については、例えば第一の金属材料4a、5a表面の高さを基準として、第一の金属材料4a、5a表面より高い部分を金属粒子として認識させるという2値化を行うことができる。走査型プローブ顕微鏡では、このような解析を行うソフトを備えているものがあり、利用することが可能である。
このようにして、金属粒子(第二の金属材料4b、5b)のある部分の面積を算出できる。
上記の金属粒子のある部分(2値化で白としての部分)の面積を、顕微鏡視野中に捉えた電極全体の面積で割ることで、第二の金属材料4b、5bによる、第一の金属材料4a、5aの被覆率とする。具体的には、次の式で求められる。
被覆率(%)=金属粒子のある部分の面積/顕微鏡視野全体の面積×100
(テーパー角の測定)
テーパー角の測定としては、被覆率の測定と同様の走査型プローブ顕微鏡で観察する方法や、集束イオンビーム(FIB)装置で加工して走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察する方法などによって測定することができる。走査型プローブ顕微鏡においては、ソース電極4またはドレイン電極5の電極端部が測定領域に入るように測定を行い、その高さ情報より、断面プロファイルを算出し、電極の下端面と上端面の位置をもとに、その角度を算出することができる。また、FIB装置においては、ソース電極4またはドレイン電極5の端部の領域をガリウム(Ga)のイオンビームによって切削し、その断面をSEMで観察することで、テーパー角を測定することが可能である。
ソース電極4およびドレイン電極5を形成する第一の金属材料4a、5aは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、インジウム(In)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)のうち何れか1つを主成分とする導電性材料を用いることができる。こられは単体で使用しても構わないし、複数材料を混合した合金として使用してもよい。
ソース電極4およびドレイン電極5を形成する第二の金属材料4b、5bは、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)のうち何れか1つから形成される。
ソース電極4およびドレイン電極5の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェット成膜法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
ソース電極4およびドレイン電極5の第一の金属材料4a、5aおよび第二の金属材料4b、5bについては、第一の金属材料4a、5aを成膜した後に第二の金属材料4b、5bを成膜して、同時にパターニングする方法や、第一の金属材料4a、5aのパターンを形成した後に第二の金属材料4b、5bを第一の金属材料4a、5a上に析出させる方法や、第一の金属材料4a、5aパターン上に第二の金属材料4b、5bを局所的に印刷する方法、第一の金属材料4a、5aのパターンを形成した後に、第二の金属材料4b、5bを成膜しパターニングする方法などによって形成することができるが、有機薄膜トランジスタ製造の難易度の観点から鑑みて、第一の金属材料4a、5a上に第二の金属材料4b、5bを析出させる方法を用いることが好ましい。
特に、第一の金属材料4a、5a上に第二の金属材料4b、5bを析出させる処理においては、第一の金属材料4a、5aを形成した基板を、第二の金属材料4b、5bのイオンを含有する溶液を用いて浸漬やシャワーなどの方法で処理することで第二の金属材料4b、5bの析出処理を行う方法が好適に用いられる。この際、第二の金属材料4b、5bの被覆率は、第二の金属材料4b、5bのイオンを含有する溶液の濃度や添加剤、浸漬時間を適宜調節することにより制御することが可能である。
傾斜角θを備えるソース電極4およびドレイン電極5は、特に限定されないが、例えば、パターニングにより傾斜角θを備える第一の金属材料4a、5aを形成することにより得ることができる。また、エッチング液の組成を変化させてエッチングレートを調整することによっても傾斜角θを得ることができる。さらに、第二の金属材料4b、5bの被覆率を高くすることによっても傾斜角θを形成することができ、この場合、被覆率の増加にともない傾斜角θが小さくなる傾向がある。なお、これらの方法を適宜組み合せて用いてもよい。
また、ソース電極4およびドレイン電極5の第二の金属材料4b、5b上には、半導体層6との電気的接続における接触抵抗をさらに低下させるために、表面処理を好適に用いることができる。具体的には、第二の金属材料4b、5bが形成されたソース電極4およびドレイン電極5表面に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled-Monolayer)のような分子膜を形成することにより、ソース電極4およびドレイン電極5表面の仕事関数を増加させることが可能であり、その仕事関数は、好ましくは5.1eV以上、さらに好ましくは5.3eV以上であることが望ましい。
ソース電極4およびドレイン電極5の仕事関数の測定については、紫外光電子分光法(UPS)や大気中光電子分光法など公知一般の方法を用いることが可能であるが、本発明の実施の形態にかかるパターニング済のソース電極4およびドレイン電極5はパターンサイズが小さく、仕事関数を直接測定することが困難な場合があるため、その際は別途同様の構成を有する測定用基板を用いて測定を実施し、その代替とすることができる。
ソース電極4およびドレイン電極5の第二の金属材料4b、5bの表面処理に用いるSAM材料には、第二の金属材料4b、5bの表面と接触する部位がチオール基またはジスルフィドなどの硫黄を含む化合物を好適に用いることが可能である。また、SAM材料が半導体材料と接触する部位は、フルオロアルキル基や芳香族フッ素化合物などのフッ素を官能基として有している有機化合物分子を好適に用いることができる。
また、ソース電極4およびドレイン電極5の第一の金属材料4a、5a上の第二の金属材料4b、5bに覆われていない部分にも、自己組織化単分子膜や酸化処理などの表面処理を施し、分子膜によって被覆された第一の金属材料4a、5aとしてもよいし、表面に第一の金属材料4a、5aの酸化膜を有する状態とすることもできる。
次に、ソース電極4およびドレイン電極5を接続するように、ソース電極4とドレイン電極5との間に半導体層6が形成される。ソース電極4およびドレイン電極5を半導体層6で接続し、有機薄膜トランジスタとして機能する半導体層6の領域をチャンネル領域と呼称することが一般的であり、本発明においてもこのような名称を使用することがある。
半導体層6には、ペンタセン、およびそれらの誘導体のような低分子半導体やポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体、およびそれらの誘導体のような高分子有機半導体材料などを用いることがきるが、これらに限定されるものではない。
半導体層6は、有機半導体材料を溶解または分散させた溶液をインクとして用いる凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、ノズルプリンティングなどのウェット成膜方法で形成することもできるし、有機半導体材料の粉末や結晶を真空状態で蒸着する方法などで形成することもできる。半導体層6は、これらに限定されるものではなく、公知一般の方法を使用することも可能である。
この際、第二の金属材料4b、5bで被覆されたソース電極4およびドレイン電極5の端部が順テーパー形状で形成されていることにより、ソース電極4およびドレイン電極5と半導体6を確実に接続することができる。
有機薄膜トランジスタ100の素子特性を良好に保つために、半導体層6上には、半導体保護層を形成することができる。特に半導体層6上に何らかの材料を積層する際には、半導体保護層を形成することが好ましい。
半導体保護層は、有機薄膜トランジスタ素子の動作に影響を及ぼさないよう前記ゲート絶縁層3で示したような絶縁性の材料を用いて形成することが好ましい。具体的には、その抵抗率が1011Ωcm以上、より好ましくは1014Ωcm以上であることが望ましい。
有機薄膜トランジスタ100および有機薄膜トランジスタ101を用いて画像表示装置やセンサー素子などの電子装置とする際は、上記以外の絶縁層、電極、対向基板などが適宜形成される。これらの材料については、特に限定されないが、絶縁層においては、ゲート絶縁層3と同様に形成しても良いし、電極については、ゲート電極2と同様に形成することが可能である。また、対向基板においても基板1と同様のものを使用することができるが、この限りではない。
有機薄膜トランジスタ100および有機薄膜トランジスタ101を用いた電子装置が画像表示装置である場合は、その表示要素として、液晶、電気泳動粒子、または電気泳動粒子を含んだマイクロカプセルや有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる。画像表示装置においては、反射型、透過型のどちらに限定されることなく、これら公知一般の表示要素を使用することが可能である。また、使用する表示要素によっては、1画素内に有機薄膜トランジスタ100、101を複数設置する構成を利用することも可能である。
また、有機薄膜トランジスタ100および有機薄膜トランジスタ101を用いた電子装置がセンサー素子である場合は、センサー活性層として、温度や圧力に反応する材料を有機薄膜トランジスタの任意の電極に接続しても良いし、有機薄膜トランジスタの任意の電極に自己組織膜などによる官能膜を形成し、生体分子や金属イオンなどに反応する電極として利用することも可能である。
(実施例1)
実施例1として、図1に示す有機薄膜トランジスタ100を作製した。
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、DCマグネトロンスパッタ法を用いてモリブデン(Mo)合金を200nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングを行った。具体的には、感光性ポジ型フォトレジストを塗布後、マスク露光、アルカリ現像液による現像を行い、所望の形状のレジストパターンを形成した。さらにエッチング液によりエッチングを行い、不要なMo合金を溶解させた。その後、レジスト剥離液によりフォトレジストを除去し、所望の形状のゲート電極2を形成した(以下、このようなパターニング方法をフォトリソグラフィ法として省略する)。
ゲート電極2を形成した基板上に、スリットコート法を用いて光硬化性アクリル樹脂を塗布し、マスク露光、アルカリ現像液による現像を行い、その後150℃で焼成し、ゲート絶縁層3を形成した。焼成後におけるゲート絶縁層の膜厚は、1μmとした。
ゲート絶縁層3を形成した基板に、DCマグネトロンスパッタ法により、Mo合金を100nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、第一の金属材料4a、5aを形成した。
その後、第一の金属材料4a、5aを形成した基板を金属量として濃度1mmol/LのAgイオンを含む水溶液に添加剤を加えた溶液に浸漬し、第一の金属材料4a、5a上にそれぞれ第二の金属材料4b、5bである銀(Ag)を析出させ、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した。なお、Agを析出したソース電極4およびドレイン電極5のパターン端部のテーパー角を測定したところ、その角度は30~40度であった。
その後、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した基板を濃度1mmol/Lに調整したペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に浸漬した後、IPAで洗浄し、ソース電極4およびドレイン電極5上に表面処理を行った。
続いて、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した基板に、有機半導体材料として6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-ペンタセン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体層6を形成した。
半導体層6を形成した基板に、フッ素樹脂材料Cytop(旭硝子製)をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体保護層(図示せず)を形成し、実施例1に係る有機薄膜トランジスタ100を作製した。
(実施例2)
実施例2として、図2に示す有機薄膜トランジスタ101を作製した。
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、DCマグネトロンスパッタ法により、Mo合金を100nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、第一の金属材料4a、5aを形成した。
続いて、第一の金属材料4a、5aを形成した基板を金属量として濃度1mmol/LのAgイオンを含む水溶液に添加剤を加えた溶液に浸漬し、第一の金属材料4a、5a上にそれぞれ第二の金属材料4b、5bである銀(Ag)を析出させ、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した。なお、Agを析出したソース電極4およびドレイン電極5のパターン端部のテーパー角を測定したところ、その角度は、30~40度であった。
ソース電極4およびドレイン電極5を形成した基板を、濃度1mmol/Lに調整したペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に浸漬した後、IPAで洗浄し、ソース電極4およびドレイン電極5上に表面処理を行った。
その後、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した基板に、有機半導体材料としてTIPS-ペンタセンを0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体層6を形成した。
半導体層6を形成した基板に、フッ素樹脂材料Cytop(旭硝子製)をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体保護層(図示せず)を形成した。
その後、スリットコート法を用いて光硬化性アクリル樹脂を塗布し、マスク露光、アルカリ現像液による現像を行い、その後150℃で焼成し、ゲート絶縁層3を形成した。焼成後におけるゲート絶縁層の膜厚は、1μmとした。
続いて、DCマグネトロンスパッタ法により、Mo合金を200nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、ゲート電極2を形成し、本発明の実施例2に係る有機薄膜トランジスタ101を形成した。
(実施例3)
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、DCマグネトロンスパッタ法を用いてモリブデン(Mo)合金を200nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、所望の形状のゲート電極2を形成した。
ゲート電極2を形成した基板上に、スリットコート法を用いて光硬化性アクリル樹脂を塗布し、マスク露光、アルカリ現像液による現像を行い、その後150℃で焼成し、ゲート絶縁層3を形成した。焼成後におけるゲート絶縁層の膜厚は、1μmとした。
ゲート絶縁層3を形成した基板に、DCマグネトロンスパッタ法により、Mo合金を100nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、第一の金属材料4a、5aを形成した。
その後、第一の金属材料4a、5aを形成した基板を金属量として濃度0.1mmol/LのAgを含む水溶液に浸漬し、第一の金属材料4a、5a上にそれぞれ第二の金属材料4b、5bである銀(Ag)を析出させ、ソース電極4およびドレイン電極5を形成し、ソース電極4およびドレイン電極5とした。なお、Agを析出したソース電極4およびドレイン電極5のパターン端部のテーパー角を測定したところ、その角度は、70~80度であった。また、ソース電極4およびドレイン電極5における第二の金属材料4b、5bの被覆率が実施例1よりも低くなった。なお、実施例3に係る有機薄膜トランジスタのソース電極4およびドレイン電極5の半導体層6側の端部における第二の金属材料4bおよび5bの被覆率被覆率は、約50%であった。
その後、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した基板を濃度1mmol/Lに調整したペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に浸漬した後、IPAで洗浄し、ソース電極4およびドレイン電極5上に表面処理を行った。
続いて、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した基板に、有機半導体材料としてTIPS-ペンタセンを0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体層6を形成し、実施例3に係る有機薄膜トランジスタ100を作製した。
(比較例1)
比較例1として、図3に示す有機薄膜トランジスタ200を作製した。
基板21として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板21上に、Mo合金を200nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、ゲート電極22を形成した。
ゲート電極22を形成した基板上に、スリットコート法を用いて光硬化性アクリル樹脂を塗布し、マスク露光、アルカリ現像液による現像を行い、その後150℃で焼成し、ゲート絶縁層23を形成した。焼成後におけるゲート絶縁層の膜厚は、1μmとした。
ゲート絶縁層23を形成した基板に、DCマグネトロンスパッタ法により、Mo合金を100nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、ソース電極24およびドレイン電極25を形成した。
その後、有機半導体材料としてTIPS-ペンタセンを0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体層26を形成し、比較例1に係る有機薄膜トランジスタ200を作製した。
(比較例2)
比較例2として、図3に示す有機薄膜トランジスタ200を作製した。
基板21として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板21上に、Mo合金を200nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、ゲート電極22を形成した。
ゲート電極22を形成した基板上に、スリットコート法を用いて光硬化性アクリル樹脂を塗布し、マスク露光、アルカリ現像液による現像を行い、その後150℃で焼成し、ゲート絶縁層23を形成した。焼成後におけるゲート絶縁層の膜厚は、1μmとした。
ゲート絶縁層23を形成した基板に、DCマグネトロンスパッタ法により、Auを100nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングし、ソース電極24およびドレイン電極25を形成した。
その後、ソース電極24およびドレイン電極25を形成した基板を濃度1mmol/Lに調整したペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に浸漬した後、IPAで洗浄し、ソース電極24およびドレイン電極25上に表面処理を行った。
その後、有機半導体材料としてTIPS-ペンタセンを0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法により塗布、パターニングし、半導体層26を形成し、比較例2に係る有機薄膜トランジスタ200を作製した。
以上の工程により、実施例1~3および比較例1、2に係る有機薄膜トランジスタを作製した。実施例1においては、ゲート絶縁層3上に形成された第一の金属材料4a、5aと、それぞれ第一の金属材料4a、5aを覆うように形成された第二の金属材料4b、5bとを含むソース電極4およびドレイン電極5を有するボトムゲート型・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ100を作製した。実施例1では、ソース電極4およびドレイン電極5は、中心部に比べて端部における第二の金属材料4bおよび5bの被覆率が高くなるように形成した。
また、実施例2においては、基板1上に、第一の金属材料4a、5aと、それぞれ第一の金属材料4a、5aを覆うように形成された第二の金属材料4b、5bとを含むソース電極4およびドレイン電極5を有するトップゲート型・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ101を作製した。実施例2では、ソース電極4およびドレイン電極5は、中心部に比べて端部における第二の金属材料4bおよび5bの被覆率が高くなるよう形成した。
実施例3と実施例1との相違は、実施例3のソース電極4およびドレイン電極5における第二の金属材料4b、5bの被覆率が全体的に実施例1よりも低い点と、実施例3のソース電極4およびドレイン電極5の端部におけるテーパー角が実施例1よりも大きい点である。なお、実施例3においても、ソース電極4およびドレイン電極5は、中心部に比べて端部における第二の金属材料4bおよび5bの被覆率が高くなるように形成した。
また、比較例1と実施例1との相違は、比較例1が、ソース電極24およびドレイン電極25の材料としてMo合金のみを用いて第二の金属材料4b、5bを形成しなかった点、および表面処理を行わなかった点である。また、比較例2と実施例1との相違は、比較例2が、ソース電極24およびドレイン電極25の材料として金(Au)のみを用い第二の金属材料4b、5bを形成しなかった点である。
図4は、本発明の実施例1、2に係る有機薄膜トランジスタの伝達特性の図であり、Vgsはゲート電極-ソース電極間の電圧を、Idsはドレイン電極-ソース電極間の電流を示している。なお、伝達特性の測定には半導体パラメーターアナライザーB1500A(アジレント・テクノロジー製)を用いた。また、図5は、本発明の比較例1~3に係る有機薄膜トランジスタの伝達特性の図である。
図6は、本発明の実施例1に係るソース電極4ないしドレイン電極5の端部をAFMで観察したAFM像であり、電極端部において、第二の電極材料4bないし5bとして形成したAgの被覆率が高くなっていることが分かる。一方、図7は本発明の実施例3のソース電極4ないしドレイン電極5の端部のAFM像であり、図6の本発明の実施例1に係るソース電極4ないしドレイン電極5の観察結果と比較すると、電極端部におけるAgの被覆率が低くなっていることが分かる。
また、図8はAFM測定結果より抽出した実施例1および実施例3に係るソース電極4ないしドレイン電極5の端部の断面プロファイルである。実施例1と実施例3の電極の端部(図8において「Thickness[nm]」が、0nm近くから増加し始める位置)のテーパー角を見ると、実施例1は実施例3に比べて、なだらかになっており、実施例3は電極端部の角度が急峻になっている。
表1は、本発明の実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、および実施例3の有機薄膜トランジスタの特性値を抜き出し、それぞれ比較するものである。トランジスタ特性については、伝達特性の測定結果から、オン電流については、Vgs=-30Vにおけるドレイン電流の値(Ids)を、しきい値(Vt)については、MOSFETにおける飽和領域のドレイン電流の式である式1(数1参照)を平方根とした式2(数2参照)を元に算出した。
移動度については、式2をVgsで微分し、2乗した式3(数3参照)から算出した。ここで、W,Lはそれぞれ薄膜トランジスタのチャネル幅およびチャネル長を表しており、Ciはゲート絶縁層の単位面積当たりの容量、μはキャリア移動度である。これらの結果から、実施例1および実施例2において、特に良好な特性を示す有機薄膜トランジスタが作製可能であることが示されている。また、実施例3においては、実施例1と比較して特性が若干劣っているものの、良好な特性を示す有機薄膜トランジスタが作製可能であることが確認された。この差は、実施例3において、実施例1と比較して、ソース電極4およびドレイン電極5の端部における第二の電極材料4b、5bの被覆率が低く、テーパー角が大きいことが原因であると言える。一方、本発明の比較例1においては、十分な特性が得られておらず、比較例2においては、良好な特性が得られているものの、そのソース電極およびドレイン電極にはAuを用いており、その作製コストが非常に高価となり、実用化が困難であることは容易に想像できる。
これらの結果から、現在主流として用いられているシリコン系および酸化物系の有機薄膜トランジスタ製造にすでに用いられている汎用の金属材料を用い、それらに簡便な処理を施すことで有機薄膜トランジスタに適用可能なソース電極およびドレイン電極とし、容易に作製可能かつ、良好なトランジスタ特性を有する有機薄膜トランジスタ100および101を形成することができた。
いずれの実施例においても、Ag、Au、およびPtなどの貴金属材料の真空成膜およびフォトリソパターニングを行うことなく、現在広く普及しているフォトリソグラフィ装置による汎用金属材料による電極形成と、簡便な処理法により、有機半導体との良好な接触抵抗値を有するソース電極およびドレイン電極の作製が可能となった。
したがって、本発明によれば、良好なトランジスタ特性を有し、かつ容易に作製可能な有機薄膜トランジスタおよびそれを用いた電子装置を提供することが可能である。