ところで、上記先行技術では、中間床の床上に形成される居室と収納室の間で物の出し入れをするために中間床に開口部が設けられている。通常、建物の床へ開口部を設ける場合、床材への負担や床梁の構造を考慮するため一定の制約がある。一方、上記中間床における開口部のレイアウトは、収納室への荷物の出し入れの際の利便性等を考慮して、自由に設計されることが望ましい。しかし、上記先行技術には、中間床の床構造と開口部構造についての記載がされていない。
本発明は上記事実を考慮し、床の一部の上方に、この床より高い中間床を形成し、中間床の床下が収納室とされる建物において、中間床に形成される開口部の設計自由度を向上させることのできる建物を得ることが目的である。
第1の態様に係る建物は、床の一部の上方に設けられ、複数の床梁と該床梁に支持された床板部を備える中間床と、前記中間床の床下に設けられた収納室と、前記中間床の一対の前記床梁の間に配置され、外枠連結部材を介して該一対の床梁に支持された外枠部と、前記外枠部の内側に配置され、内枠連結部材を介して該外枠部に支持された内枠部と、前記内枠部の内側に形成され、前記収納室と連通された開口部と、を有する。
第1の態様に係る建物では、一対の床梁に支持された外枠部の内側に、この外枠部に支持された内枠部が配置され、内枠部の内側に中間床の床下へと連通された開口部が設けられている。これにより、中間床の骨格部材である床梁に内枠部が支持されているため、中間床に開口部を設けても中間床に対する構造上の負担が少ない。
さらに、外枠部を一対の床梁に支持される構造とすれば、外枠部の内側では、任意の位置に適当な形状の内枠部を設けて開口部を形成することができる。これにより、開口部の設計自由度が向上される。
第2の態様に係る建物は、第1の態様に記載の構成において、前記床板部は、前記複数の床梁の上方に敷設された複数の矩形板状のパネル部材を含む床下地を備えており、前記外枠部は、複数の該パネル部材で囲まれた矩形状の穴部の内側に配置されている。
第2の態様に係る建物では、外枠部が床板部の床下地を構成する複数のパネル部材で囲まれた矩形状の穴部の内側に配置されている。このように、外枠部の形状がパネル部材のサイズに合わせて設定されると、外枠部の周囲に敷設されたパネル部材に切欠き加工等を加えて外枠部とのサイズ調整を行う処理が不要となる。これにより、床下地の強度を均一に保つことが可能となり、中間床に開口部を設けても床板部に対する負担を軽減させることができる。
第3の態様に係る建物は、第2の態様に記載の構成において、前記外枠部の上面には、野地板が載置され、前記外枠部の上端は前記床梁の上端に対して建物上方側にオフセットされており、前記外枠部の上方側に載置された前記野地板の上面は前記床板部における前記床下地の上面と略面一に形成されている。
第3の態様に係る建物では、外枠部の上面に野地板が載置される構成としたので、開口部が設けられる外枠部の内側領域の表面材の加工が容易になる。これにより、複数の配置バリエーションが想定される内枠部の設計に対し容易に対応することができる。
また、外枠部の上端が床梁の上端に対して建物上方側にオフセットとされることにより、外枠部の上方側に載置された野地板の上面が床下地の上面と略面一に形成されている。これにより、床下地と野地板の上方側に共通の仕上げ材を設定することができ中間床の施工が容易になる。
第4の態様に係る建物は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記内枠部に、前記開口部を通って前記収納室へ出入り可能な昇降手段が設けられており、前記内枠部の下面には、該内枠部の内周縁よりも外側にオフセットして配置された昇降手段設置枠部が固定され、前記昇降手段は、前記昇降手段設置枠部を介して前記内枠部に取り付けられている。
第4の態様に係る建物では、中間床の上方の居室空間と収納室とを昇降手段を用いて容易に行き来することができる。ここで、昇降手段は、内枠部の下面に固定された昇降手段設置枠部を介して内枠部に取り付けられている。また、昇降手段設置枠部は、内枠部の内周縁よりも外側にオフセットして配置されているため、昇降手段も内枠部の内周縁よりも外側にオフセットした位置に取り付けられている。これにより、開口部から収納室へ物を出し入れする際に、昇降手段によって物の運搬が阻害されず、利用者の利便性を向上させることができる。
第5の態様に係る建物は、第1の態様~第4の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記中間床は、建物の一階部分を構成する前記床の一部の上方に設けられ、前記収納室の収納室床は、建物の一階部分を構成する前記床よりも建物下方側に設けられている。
第5の態様に係る建物では、収納室の収納室床が一階部分の床よりも建物下方側に設けられているため、建物の地下に収納室の空間が拡大されている。これにより、例えば収納室の収納室床を一階部分の床と同じレベルに設定する場合と比べて、建物の高さを抑えつつ、収納スペースを拡大させることが可能となる。
第6の態様に係る建物は、平面視で略矩形状をなす1階部分と、前記一階部分の長辺側の一端に設けられた玄関部と、前記玄関部に隣接して配置され、一階と上階とを繋ぐ階段部と、前記一階部分の長辺側の他端において、該一階部分の床の一部の上方に設けられ、かつ、少なくとも一対の床梁で支持された中間床と、前記中間床の床下に設けられた収納室と、前記中間床において一対の前記床梁の間に形成され、前記収納室と連通された開口部と、前記開口部を通って前記収納室に出入り可能な昇降手段と、を有する。
第6の態様に係る建物では、一階部分の長辺側の一端に設けられた玄関部に隣接して一階と上階とを繋ぐ階段部が配置されているため、階段部が玄関部と屋内側の居室空間を隔てる間仕切りの役割を呈している。また、一階部分の長辺側の他端では、床の一部の上方に中間床が設けられている。このように、一階部分の床と異なる床レベルの中間床を設けることで、間仕切りを設けることなく2つの居室空間を形成しつつ、居住者が空間の広がり又は奥行を感じながら過ごすことができる。さらに、中間床には、収納室へ連通する開口部が設けられ、当該開口部から昇降手段を用いて収納室への出入りが可能とされている。これにより、中間床の上で過ごす居住者は、開口部を通じて収納室への空間の広がりを感じながら過ごすことができる。さらに、当該開口部は、中間床を支持する一対の床梁の位置決めを行うことで一対の床梁の間に自由に形成することができるため、設計自由度が高められている。
以上説明したように、第1の態様に係る建物によれば、中間床に対する構造上の負担を抑えつつ、中間床に形成される開口部の設計自由度を向上させることができるという優れた効果を有する。
第2の態様に係る建物によれば、中間床の床板部に対する負担を軽減させつつ、中間床に開口部を設けることができるという優れた効果を有する。
第3の態様に係る建物によれば、複数の配置バリエーションが想定される内枠部の設計に対し容易に対応することができると共に、中間床の施工が容易になるという優れた効果を有する。
第4の態様に係る建物によれば、中間床の上方の居室空間を容易に行き来することができると共に、開口部から収納室へ物を出し入れする際に、昇降手段によって物の運搬が阻害されず、利用者の利便性を向上させることができるという優れた効果を有する。
第5の態様に係る建物によれば、建物の高さを抑えつつ、収納スペースを拡大させることができるという優れた効果を有する。
第6の態様に係る建物によれば、住空間の拡大を図りつつ、中間床に形成される開口部の設計自由度を高めることができるという優れた効果を有する。
以下、図1~図6を用いて、本実施形態に係る建物10について説明する。なお、図1には、建物10を正面側から見た部分断面斜視図が示されている。また、図2には、建物10を図1の2-2線で切断した切断面が示されている。また、図6には、建物10の一階部分の間取り図が示されている。なお、図1では、説明の便宜上、蓋部44の図示を省略している。また、図6に示した間取りは一例を示したものに過ぎないので任意に変更される。
(全体構成)
これらの図に示されるように、建物10は、平面視で略矩形状に形成された二階建ての住宅である。建物10は、一例として鉄骨軸組工法により建設されており、基礎12の上に建物10の一階部分が設けられている。基礎12は、平面視で格子状に形成された内側基礎14と、当該内側基礎14を囲むように枠状に形成された外側基礎16とを備えている。なお、内側基礎14と外側基礎16は、地盤18に埋設されたフーチング部20とフーチング部20の幅方向中央部から垂直に立ち上げられた立ち上がり部22とによって縦断面視で凸字状に構成されている。
本実施形態の建物10は、所謂狭小建物とされており、狭い敷地に建てられた床面積の小さな建物とされている。一例として、建物10は、15坪(約50平米)以下の細長い土地に建てられている。
(一階部分)
図1及び図6に示されるように、建物10の一階部分10Aには、建物10の正面側(長辺側の一端)の短辺方向の一端に玄関部24が形成されている。また、玄関部24に隣接して、建物10短辺方向の一側部に階段部26が形成されている。階段部26は、建物10の短辺方向を昇降方向とするU字階段とされており、建物10の一階のフロアと二階のフロアとを連通させている。この階段部26を境に建物10の奥側には、居室28が形成されている。さらに、居室28の奥側には後述する中間床34の上方に中間階居室30が設けられている。
中間階居室30は、建物10の奥側(長辺側の他端)の角部に形成されている。この中間階居室の床となる中間床34は、居室28の床32の一部に隣接して設けられ、床32よりも、建物10高さ方向の上方に形成されている。床32と中間床34の間には、壁36が設けられており、居室28と中間階居室30との間に段差部が形成されている。なお、居室28と中間階居室30との間は、床32から中間床34に至る図示しない階段部を用いて出入り可能とされている。
中間床34の一部には、平面視で略矩形状をなす開口部38が設けられており、中間床34の床下に設けられた収納室40への出入口とされている。開口部38には、昇降手段(一例として梯子)42が設けられており、中間階居室30と収納室40とを昇降手段42を用いて行き来することができる構成となっている。なお、開口部38には、開閉可能な蓋部44が設けられている。
図2に示されるように、収納室40は、一部が建物10の地下に埋設された状態とされており、中間床34の下方側で、壁36と基礎12(外側基礎16及び内側基礎14)に囲まれた空間とされている。上記構成により、収納室40の床である収納室床41は、建物10の一階部分10Aの床32よりも建物下方側に設けられている。収納室床41は、基礎12のフーチング部20の上に形成されたコンクリート製の床スラブ46の上に形成されている。また、収納室40の側壁43は、基礎12の立ち上がり部22に沿って設けられている。
以上説明した建物10の一階部分10Aの特筆すべき点は、第1に、階段部26に下階と上階のフロアとを連通させる機能の他、空間の間仕切りとしての機能を付加した点である。図6に示されるように、一階部分10Aでは、階段部26が玄関部24に隣接して配置されている。このため、玄関部24にいる居住者が、居室28側を眺める場合には、階段部26によって視界の一部が遮られることになる。これにより、階段部26が、玄関部24と居室28とを仕切る間仕切りとしての機能を備えることとなる。
第2に、居室28の奥側に、居室28の床32よりも床レベルの高い中間床34を設けて、間仕切りを設けることなく居室28と中間階居室30を形成した点である。居室28と中間階居室30の境には間仕切りが設けられていないため、各居室の空間は連続している。しかし、中間床34を床32よりも高い位置に形成することで、居室28と中間階居室30との境が明確に判別できるため、それぞれの空間を別用途の居室として活用可能とされている。また、間仕切りを削減した分、一階部分10Aの床面積を最大限広げて住空間が拡大されている。さらに、一階部分10Aは、居室28の奥側に中間階居室30が設けられており、一階部分10Aの住空間が建物10の奥側で建物上方に拡張されている。
第3に、中間床34の床下空間の使い方である。図2に示されるように、中間床34の床下には収納室40が設けられている。これにより、居室28及び中間階居室30の床面積を縮小することなく、大容量の収納スペースが確保されている。また、収納室40は、一部が地下に埋設された状態とされ、建物下方側へスペースが拡大されている。これにより、建物10の高さを抑えつつ、収納スペースが拡大されている。また、開口部38に昇降手段42を設けて中間階居室30と収納室40との行き来ができる構造とすることで、中間階居室にいる居住者は、開口部38を通して収納室40への空間の広がりを感じながら過ごすことができる。
(中間床)
次に、中間床34の構造を説明する。
中間床34は、互いに所定の間隔を空けて平行に配置された複数の床梁48と、床梁48に下方側から支持された床板部50と、床板部50の一部に床下の収納室40へ貫通する開口部38を形成する開口部ユニット52とを備えている。
図2及び図4に示されるように、複数(本実施形態では3本)の床梁48は、建物10の図示しない躯体フレームに連結され、中間床34の骨格部材とされている。床梁48はH型鋼で構成されており、高さ方向に沿って配置されるウエブ部48Aと、ウエブ部48Aの上端からそれぞれ略水平に張り出す上フランジ部48Bと、ウエブ部48Aの下端からそれぞれ略水平に張り出し上フランジ部48Bと対向して形成された下フランジ部48Cと、を含んで構成されている。この床梁48の上方側には、床板部50が形成されている。なお、図2では、説明の便宜上、仕上げ材60の図示を省略している。
床板部50は、複数のパネル部材56と下地材58によって構成された床下地54と、中間床34の意匠面を構成する仕上げ材60を備えている。床板部50は、所謂ALC床とされており、平面視で略矩形状をしたALC製のパネル部材56を床梁48の上方側に敷設し、その上に板状の下地材58を敷いて、床下地54が形成されている。なお、下地材58は、一例として、パーチクルボートや、合板とされている。
より具体的に説明すると、図3に示されるように、複数のパネル部材56を敷設すると、平面視で格子状の目地ライン62が形成される。各パネル部材56を接着する際には、当該目地ライン62に図示しない鉄筋が通され、さらに、目地ライン62に図示しないモルタル等の接着剤が充填される。また、パネル部材56の形状はメータモジュールに対応した規格とされている。このため、複数のパネル部材56を敷設すると、格子状の目地ライン62が建物10のモジュールラインLに沿って配置されている。なお、パネル部材56の形状を尺モジュールに対応した規格としてもよい。
図3及び図4に示されるように、開口部ユニット52は、平面視で矩形枠状に形成された外枠部64と、外枠部64の内側に配置された平面視矩形枠状の内枠部66と、内枠部66の下方側に固定される昇降手段設置枠部68を備えている。また、外枠部64と床梁48とを連結する外枠連結部材70と、外枠部64と内枠部66を連結する内枠連結部材72、外枠部64と内枠部66の上方に載置される野地板74と、を備えている。なお、図3では、説明の便宜上、昇降手段設置枠部68の図示を省略している。
外枠部64は、隣り合って配置された一対の床梁48間に配置されている。また、外枠部64と床板部50の関係に言及すると、外枠部64の周囲は、床下地54を構成する複数のパネル部材56で囲まれている。すなわち、外枠部64は、平面状にパネル部材56を敷設してなる床下地54の一部から所定のパネル部材56を排除して形成される矩形状の穴部76の内側に配置されている。これにより、外枠部64は、その外形線がモジュールラインLに沿って配置されている。
外枠部64は、4本の溝形鋼を溶接等の方法で連結させて、平面視で矩形枠状に形成されている。これにより、外枠部64の構造は、縦断面視で高さ方向に沿って配置されるウエブ部64Aと、ウエブ部64Aの上下両端からそれぞれ内枠部66側に略水平に張り出す上フランジ部64Bと下フランジ部64Cと、を含んで構成されている。
外枠部64と、この外枠部64の両側に配置された一対の床梁48との間には、形鋼からなる複数の外枠連結部材(一例として溝形鋼)70が架け渡されている。この複数(本実施形態では4本)の外枠連結部材70は、長手方向の両端部が溶接等の方法により外枠部64及び床梁48に接合されている。これにより、隣り合って配置された一対の床梁48によって、外枠部64が支持されている。また、この状態において、外枠部64の上端(上フランジ部64B)は床梁48の上端(上フランジ部48B)よりも建物上方側にオフセットされている。
内枠部66は、外枠部64の内側に配置され、外枠部64と同様に4本の溝形鋼を溶接等の方法で連結させて、平面視で矩形枠状に形成されている。内枠部66の構造は、縦断面視で高さ方向に沿って配置されるウエブ部66Aと、ウエブ部66Aの上下両端からそれぞれ外枠部64側に略水平に張り出す上フランジ部66B及び下フランジ部66Cと、を含んで構成されている。そして、この内枠部66の内周縁が、開口部38とされている。また、内枠部66の一側には、図示しないヒンジ等の取付部材を用いて、開口部38を開閉可能な蓋部44が取り付けられている。
内枠部66と外枠部64との間には、形鋼からなる複数の内枠連結部材(一例として溝形鋼)72が架け渡されている。この複数(本実施形態では6本)の内枠連結部材72は、長手方向の両端部が溶接等の方法により外枠部64及び内枠部66に接合されている。これにより、外枠部64によって、内枠部66が支持されている。また、この状態において、内枠部66の上端(上フランジ部66B)は外枠部64の上端の高さ位置と略一致している。
上記構成の外枠部64の上面(上フランジ部64B)及び内枠部66の上面(上フランジ部66B)には野地板74が載置されている。野地板74は、一例として、パーチクルボートや合板等で構成されている。この状態において、野地板74の上面74Aは床板部50における床下地54の上面(下地材58の上面58A)と略面一に形成されている。さらに、野地板74の上方側には、床板部50と同様の仕上げ材60が配置されている。なお、本実施形態では、上記外枠部64と内枠部66の上面に載置された野地板74に収納室40内の換気を行う吸気口78が形成されている(図3参照)。
図5に示されるように、内枠部66の下面(下フランジ部66C)には、昇降手段設置枠部68が固定されている。昇降手段設置枠部68は、4本の山型鋼を溶接等の方法で連結させて、平面視で矩形枠状に形成されている。昇降手段設置枠部68の構造は、縦断面視で高さ方向に沿って配置されるウエブ部68Aと、ウエブ部68Aの上端から外枠部64側に略水平に張り出す上フランジ部68Bと、を含んで構成されている。そして、上フランジ部68Bが内枠部66の下フランジ部66Cにボルト締結又は溶接等の方法で固定されている。なお、図5では、説明の便宜上、蓋部44の図示を省略している。
また、昇降手段設置枠部68の内周縁は、平面視で内枠部66の内周縁(開口部38)よりも一回り大きく形成されている。換言すると、昇降手段設置枠部68の内周縁は、内枠部66の内周縁よりも外側にオフセットされている。そして、この昇降手段設置枠部68のウエブ部68Aの下端に図示しないブラケット等を介して昇降手段42が取り付けられている。
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態に係る建物10は、一階部分10Aの床32の一部の上方に中間床34が設けられており、中間床34の床下に収納室40が設けられた構造とされている。また、中間床34には、上述した開口部ユニット52により収納室40へ貫通する開口部38が設けられている。
ここで、当該開口部ユニット52によれば、一対の床梁48に支持された外枠部64の内側に、この外枠部64に支持された内枠部66が配置され、内枠部66の内側に開口部38を設ける構成とされている。これにより、内枠部66は、中間床34の骨格部材である床梁48に支持されているため、中間床34の一部に開口部ユニット52を設けて開口部38を設ける構造としても、中間床34に対する構造上の負担が少なくなっている。
さらに、外枠部64を床梁48に支持される構造としているため、外枠部64の内側では、任意の位置に適当な形状の内枠部66を設けて開口部38を形成することができる。これにより、開口部38の設計自由度が向上される。
また、本実施形態では、上記外枠部64が床板部50の床下地54を構成する複数のパネル部材56で囲まれた矩形状の穴部76の内側に配置されている。このように、外枠部64の形状がパネル部材56のサイズに合わせて設定されると、外枠部64の周囲に敷設されたパネル部材56に切欠き加工等を加えて外枠部64とのサイズ調整を行う処理が不要となる。これにより、床下地54の強度を均一に保つことができ、中間床34に開口部38を設けても床板部50に対する負担を軽減させることができる。
また、本実施形態では、パネル部材56間の目地ライン62は、モジュールラインLに沿って配置されている(図3参照)。つまり、複数のパネル部材56で囲まれてなる外枠部64は、その外形線がモジュールラインLに沿って配置されることとなる。これにより、外枠部64の設計が建物10全体の設計に与える負担を少なくしつつ、外枠部64の内側では何ら制約を受けることなく開口部38を形成することができる。その結果、開口部38の設計自由度が向上されている。
また、本実施形態では、パネル部材56がALC製であるため、例えばパネル部材がコンクリート製とされる場合に比べて、中間床34の軽量化及び断熱性能の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、外枠部64の上面に野地板74が載置される構成としたので、開口部38が設けられる外枠部64の内側領域において表面材の加工が容易になる。これにより、複数の設計バリエーションが想定される内枠部66の配置構造に容易に対応することができる。
また、本実施形態では、外枠部64の上端が床梁48の上端に対して建物上方側にオフセットされ、かつ、外枠部64上方側に載置された野地板74の上面74Aが床下地54の上面と略面一に形成されている。これにより、床下地54と野地板74の上方側に共通の仕上げ材60を設定することができ中間床34の施工を容易にさせることができる。
また、本実施形態では、内枠部66に開口部38を開閉可能な蓋部44が取り付けられているため、蓋部44を閉じた状態では、中間床34全体を中間階居室30の床面として利用でき、床面積を広く確保することができる。また、蓋部44の上面が床板部50の上面と略面一に形成されているため、蓋部44を閉じた状態で中間床34全体の見栄えが良くなる。
また、本実施形態では、内枠部66に、開口部38を通って収納室40へ出入り可能な昇降手段42が設けられているため、中間階居室30と収納室40とを昇降手段42を用いて容易に行き来することができる。
さらに、昇降手段42は、内枠部66の下面に固定された昇降手段設置枠部68を介して内枠部66に取り付けられている。ここで、本実施形態では、昇降手段設置枠部68が内枠部66の内周縁よりも外側にオフセットしているため、これに伴って昇降手段42も内枠部66の内周縁より外側方向へ移動した位置に取り付けられている。これにより、開口部38から収納室40へ物を出し入れする際に、昇降手段42によって物の運搬が阻害されず、利用者の利便性を向上させることができる。
当該効果についてより詳細に説明すると、図7に示す昇降手段(一例として梯子)80のように、内枠部66に図示しないブラケット等を介して昇降手段80が取り付けられる構造においては、昇降手段80が開口部38の内側に侵入するため、中間床34の床上から開口部38を通って物Bを収納室40に運搬する際に、物Bの運搬が昇降手段42によって阻害される場合がある。
これに対して、本実施形態では、図5に示されるように、昇降手段設置枠部68が内枠部66の内周縁よりも外側にオフセットされているため、昇降手段42が開口部38の内側へ侵入することが抑制されている。これにより、物Bの運搬が昇降手段42に阻害されることがない。
また、本実施形態では、収納室40の収納室床41が一階部分10Aの床32よりも建物下方側に設けられているため、建物10の地下に収納室40の空間が拡大されている。これにより、例えば収納室40の収納室床41を一階部分10Aの床32と同じレベルに設定する場合と比べて、建物10の高さを抑えて、収納スペースを拡大させることができる。
また、本実施形態では、一階部分10Aの長辺側の一端に設けられた玄関部24に隣接して一階と上階とを繋ぐ階段部26が配置されているため、階段部26が玄関部24と屋内側の居室空間を隔てる間仕切りの役割を呈している。また、一階部分10Aの長辺側の他端では、床32の一部の上方に中間床34が設けられている。このように、一階部分10Aの床32と異なる床レベルの中間床34を設けることで、間仕切りを設けることなく居室28と中間階居室30を形成しつつ、居住者が空間の広がり又は奥行を感じながら過ごすことができる。さらに、中間床34には、収納室40へ連通する開口部38が設けられ、当該開口部38から昇降手段42を用いて収納室40への出入りが可能とされている。これにより、中間床34の上で過ごす居住者は、開口部38を通じて収納室40への空間の広がりを感じながら過ごすことができる。さらに、当該開口部38は、中間床34を支持する一対の床梁48の位置決めを行うことで一対の床梁48の間に自由に形成することができるため、設計自由度が高められている。
[補足説明]
上記実施形態では、床下地54にALC製のパネル部材56を適用したが、他のコンクリート材料を使用したパネル部材を適用してもよい。
また、上記実施形態では、収納室40の収納室床41を一階部分10Aの床32よりも建物下方側に形成したが、本発明はこれに限らず、収納室床41の床レベルを床32の床レベルと一致させてもよい。
また、本実施形態では、建物10の一階部分10Aに中間床34を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、多層階造りの建物の2階部分や3階部分に中間床を設ける構成としてもよい。例えば、2階部分の床の一部に中間床を設ける構成とし、当該中間床の下方側に、建物の一階と二階との間に配置される収納室を設ける構成としてもよい。
また、本実施形態では、開口部38に、当該開口部38を開閉可能とする蓋部44を設ける構成としたが、これに限らず、蓋部44を有しない構成としてもよい。
また、本実施形態では、昇降手段設置枠部68が内枠部66の内周縁よりも外側にオフセットされる構成としたが、これに限らず、昇降手段設置枠部68の内周縁と内枠部66の内周縁が平面視で略一致する構成としてもよい。
また、本実施形態では、建物10を鉄骨軸組工法で建設された建物としたが、これに限らず、ユニット工法や、木造建築により建設された建物としてもよい。